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特許7566290多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20241007BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20241007BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20241007BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20241007BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20241007BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241007BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241007BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20241007BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20241007BHJP
   G06F 111/04 20200101ALN20241007BHJP
   G06F 113/10 20200101ALN20241007BHJP
   G06F 119/18 20200101ALN20241007BHJP
【FI】
G06F30/20
B29C64/106
B29C64/209
B29C64/245
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
G06F30/10 100
G06F111:04
G06F113:10
G06F119:18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023183328
(22)【出願日】2023-10-25
(65)【公開番号】P2024062968
(43)【公開日】2024-05-10
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】202211307783.9
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520448452
【氏名又は名称】浙大城市学院
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王震
(72)【発明者】
【氏名】葉俊
(72)【発明者】
【氏名】趙陽
(72)【発明者】
【氏名】陸泓家
(72)【発明者】
【氏名】郭啓▲チン▼
(72)【発明者】
【氏名】湯慧萍
(72)【発明者】
【氏名】全冠
(72)【発明者】
【氏名】丁智
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-203031(JP,A)
【文献】国際公開第2019/216221(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0073349(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105904729(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114474741(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110502822(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
B29C 64/00 - 64/393
B33Y 10/00 - 50/02
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法であって、
SIMPモデルに基づく構造のトポロジー最適化方法を採用して、複雑な構造の最適な構成設計を実現し、次に画像を2値画像に変換し、トポロジー最適化の結果に対して後処理を行う、オーバーハング制約なしのトポロジー最適化ステップS1と、
まず構造境界を抽出し、次に構造境界のオーバーハング角度を決定し、構造に対してプリントパーティションを分割し、プリントパーティションを分類し、タイプに従って、異なるプリントパーティションのプリント方向を決定し、角度制約の統合最適化を行う、多軸3Dパーティションプリントの最適化ステップS2と、
最適化結果から構造情報を抽出し、部材の組み立て及びノードの生成処理後、3D実体モデルを確立し、実体モデルのパーティションスライスを行い、且つプリント経路を生成し、支持なしの多軸3Dプリント製造を行う、3Dプリントの統合製造ステップS3と、を含むことを特徴とする、自己支持構造の最適化設計及び製造方法。
【請求項2】
ステップS1は具体的には、
S1.1、構造のトポロジー最適化設計:密度に基づくSIMPモデルを採用してトポロジー最適化方法として、4つのノードの矩形ユニットを利用して設計ドメインを離散し、特定の負荷条件と境界条件の場合、設計ドメイン内の各ユニットの密度ρe=ρ1,ρ2、…ρneleを設計変数として、構造のトポロジー最適化の式は式(1)であり、
【数1】
トポロジー最適化により得られた構造に対して、heaviside投影変換を行い、次にユニット密度ρeが0~1の間にあるユニットに対して、閾値δ=0.5を設定し、ユニット密度ρeの二値化処理式は式(2)であり、
【数2】
S1.2、トポロジー最適化後処理接続ドメイン識別により、得られた2値画像における孤立ユニット及び小さな穴に対して、後処理を行うことであることを特徴とする、請求項1に記載の自己支持構造の最適化設計及び製造方法。
【請求項3】
ステップS2は具体的には、
S2.1、構造境界オーバーハング角度の決定:マトリックス形式で、ステップS1で取得された2値画像を入力し、各ユニットの隣接ドメイン内の密度値を取得し、あるユニット領域内の密度が0である場合、該ユニットは、境界ユニットであり、境界ユニットの、隣接ドメイン内において二値化処理されていない時のユニット密度をフィッティングし、境界ユニットの勾配法線ベクトルを得て、勾配法線ベクトルの直交方向を境界オーバーハング方向として、最小自乗法を採用して隣接ドメイン内のユニット密度をフィッティングし、ユニット密度の勾配方向を取得し、
S2.2、パーティションプリント方向の決定:グラフィック特徴ポイントを抽出し、特徴ポイントを利用してグリッドを分割して、設計ドメインを離散し、異なるプリントパーティションを得て、プリントパーティション内に含まれたユニットタイプに応じてプリントパーティションを分類し、それぞれ異なる領域のプリント方向を決定し、
S2.3、角度制約統合最適化:ステップS2.2で決定された構造部分プリント方向により各パーティション内のユニットに対して、角度制約を行い、プリント不十分領域の補足最適化設計及びプリントを実現することを特徴とする、請求項1に記載の自己支持構造の最適化設計及び製造方法。
【請求項4】
ステップS2.1において、6つのユニットモード又は9つのユニットモードで各ユニット支持ドメインを分割し、各ユニット支持ドメインを左支持ドメインと右支持ドメインに分割し、それぞれ最小二乗法によりユニット密度をフィッティングして構造左境界と右境界の法線量を取得し、左境界及び右境界の法線量をそれぞれ構造成形方向と、内積にし、構造左境界及び右境界の、臨界オーバーハング角度に違反する大きさは式(3)であり、
【数3】
【数4】
【数5】
ユニットが構造臨界オーバーハング角度に違反する場合、λi値が1であり、逆の場合、0であって式(6)である
【数6】
ことを特徴とする、請求項3に記載の自己支持構造の最適化設計及び製造方法。
【請求項5】
ステップS2.1において、構造トポロジー最適化の式に境界ユニットオーバーハング角度の制約項及びユニット水平隣接ドメインユニット密度の制約項を添加して、該制約項は、トポロジー最適化を特徴付けた後に構造境界ユニットオーバーハング特徴のパラメータ値λiを考慮し、
境界ユニットオーバーハング角度の制約項、および、ユニット水平隣接ドメインユニット密度の制約項を考慮した後の最適化式は、式(7)であり、
【数7】
γiは、トポロジー最適化を特徴付けた後の構造境界ユニットオーバーハング特徴を考慮したパラメータ値であり、γiは、λiの解を求めるプロセスを参照して得られ、構造左境界及び右境界がオーバーハング特徴に違反する大きさは式(8)であり、
【数8】
境界ユニットオーバーハング特徴状況を特徴付けたパラメータ値γiは式(9)であり、
【数9】
ユニットが構造オーバーハング特徴に違反する場合、γi値が1であり、逆の場合、γi値が0であって、式(10)である
【数10】
ことを特徴とする、請求項4に記載の自己支持構造の最適化設計及び製造方法。
【請求項6】
ステップS2.2において、プリントパーティションを3つのクラスにまとめ、プリントパーティションは、クラスI領域、クラスII領域、およびクラスIII領域を含み、クラスI領域は、構造ユニットのみを含み、クラスII領域は、境界ユニットを含み、クラスIII領域は、境界ユニットを含まないだけでなく構造ユニットも含まず、ここで、構造における、垂直支持を有する部分に対してプリントパーティションのタイプ判断を行う時、垂直支持部分におけるすべてのユニットは、境界ユニットと見なさず、
クラスI領域の部分プリント方向は、オーバーハング角度範囲内において、任意に調整され、クラスII領域の部分プリント方向は、境界ユニットの傾斜方向によって決定され、クラスIII領域の部分プリント方向は、任意に設定されることを特徴とする、請求項5に記載の自己支持構造の最適化設計及び製造方法。
【請求項7】
ステップS2.2において、水平に隣接する領域内のプリント方向の角度差値は、最大偏向角より大きく、異なるプリントパーティションの部分最適なプリント方向は、式(11)によって決定される
【数11】
ことを特徴とする、請求項6に記載の自己支持構造の最適化設計及び製造方法。
【請求項8】
ステップS2.3において、各パーティションにおける境界ユニットの傾斜方向により、各パーティションの最適な部分プリント方向を決定し、各パーティション内のユニット最適な部分プリント方向の線形角度制約項において、構造部分プリント方向でユニットオーバーハング角度状況を特徴付けるパラメータ値λi(φi)を採用し、各プリントパーティション内のユニットの線形角度制約を考慮した式は、式(12)である
【数12】
ことを特徴とする、請求項7に記載の自己支持構造の最適化設計及び製造方法。
【請求項9】
ステップS3において、Rhinoソフトウェアにより3Dモデリングを行い、Curaソフトウェアにより、3Dモデリングで得られた実体モデルをスライスし且つプリント経路を生成することを特徴とする、請求項1に記載の自己支持構造の最適化設計及び製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造工学の技術分野に属し、特に多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法に関する。多軸とは、3Dプリント回転軸の総数が、プリントヘッドの回転軸及びベースの回転軸を含む3軸より大きいことを指す。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリング構造の複雑さの増加につれて、複雑な構造の3Dプリントの需要は増加し続け、従来の構造設計方法は競合しにくいことがよくあり、トポロジー最適化はこのために、有効な解決手段を提供する。トポロジー最適化後の構造は、優れた機械的性質、合理的な材料分布を有するが、幾何学的構造はより複雑である場合がよくあり、従来の製造プロセスによって推奨および適用しにくい。
【0003】
3Dプリント技術は、従来の製造プロセスに比べて、高効率、高精度等の利点があり、複雑な構造の加工と製造によりよく適応する。しかしながら、プリントプロセスの成功を確保するために、3Dプリントはやはり、構造が対応する製造上の制約を満たす必要があり、多くの製造制約において、重力によるオーバーハング効果は、3Dプリントの主な製造制約の1つである。オーバーハング効果とは、構造境界と水平面の夾角が臨界値以下である(例えば:DMLSの臨界角は45°)場合、重力が存在するため、材料堆積プロセスに、崩れ落ちる現象があり、構造プリント品質に影響を与え、さらにプリントの失敗をもたらす。この制約は、3Dプリントによって、幾何学的形状部材を製造する能力を大幅に制限する。
【0004】
オーバーハング効果を克服するために、構造のオーバーハング部位に支持構造を添加して、プリントが完了した後に、物理又は化学手段を利用して支持を除去することができる。しかしながら支持構造の使用により、追加の材料消費をもたらし、金属構造をプリントに添加する必要がある支持は、除去しにくい場合が多い。構造成形方向を調整することにより、支持構造体積の最小化を実現できるが、やはり支持構造の使用を完全に回避することができない。
【0005】
オーバーハング効果を克服する別の方法は、構造の設計上の見地から、構造最適化設計に角度制約を導入して角度製造制約を満たす最適な機械的性質構造を取得し、即ち3Dプリント向けの自己支持構造トポロジー最適化設計である。現在では、この方法に関する関連研究は主に、3軸3Dプリントに集中し、製造制約を満たす自己支持構造を取得することができ、支持の使用を回避するが、材料の使用量の大幅な増加及び構造性能の大幅な降下をもたらす場合が多い。
【0006】
機械産業の急速な発展に伴い、航空宇宙および車両工学の分野で多軸3Dプリント技術が広く使用されている。3軸3Dプリンターに比べて、多軸3Dプリンターは、自由に回転するベースを有するため、プリントプロセスにプリント方向を動的調整することにより、プリントプロセスに、構造にオーバーハング効果が現れることを回避し、3軸3Dプリント向けの自己支持構造の体積の増加及び性能の大幅な降下という問題を効果的に解決する。したがって、合理的、有効な多軸3Dプリント製造と自己支持構造の最適化設計の結合は、複雑な構造の統合最適化設計及び製造の重要な要素である。
【0007】
以上より、多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法を研究し、任意の傾斜角での複雑な自己支持構造の最適な構成である多軸3Dプリントの統合設計及び製造を実現することは、非常に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は従来技術における欠点を克服し、多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法は、ステップS1、S2、S3を含み、
S1、オーバーハング制約なしのトポロジー最適化:SIMPモデルに基づく構造のトポロジー最適化方法を採用して、複雑な構造の最適な構成設計を実現し、次に画像を2値画像に変換し、トポロジー最適化の結果に対して後処理を行う。
S2、多軸3Dパーティションプリントの最適化:まず構造境界を抽出し、次に構造境界のオーバーハング角度を決定し、構造に対してプリントパーティションを分割し、プリントパーティションを分類し、タイプに従って、異なるプリントパーティションのプリント方向を決定し、角度制約の統合最適化を行う。
S3、3Dプリントの統合製造:最適化結果から構造情報を抽出し、部材の組み立て及びノードの生成処理後、3D実体モデルを確立し、実体モデルのパーティションスライスを行い、且つプリント経路を生成し、支持なしの多軸3Dプリント製造を行う。
【0010】
好ましくは、ステップS1は具体的には、
S1.1、構造のトポロジー最適化設計:密度に基づくSIMPモデルを採用してトポロジー最適化方法として、4つのノードの矩形ユニットを利用して設計ドメインを離散し、特定の負荷条件と境界条件の場合、設計ドメイン内の各ユニットの密度ρe=ρ1,ρ2、…ρneleを設計変数として、構造のトポロジー最適化の式は、式(1)である。
【0011】
【数1】
【0012】
トポロジー最適化により得られた構造に対して、heaviside投影変換を行い、次にユニット密度ρeが0~1の間にあるユニットに対して、閾値δ=0.5を設定し、ユニット密度ρeの二値化処理式は、式(2)である。
【0013】
【数2】
【0014】
S1.2、トポロジー最適化後処理:接続ドメイン識別により、得られた2値画像における孤立ユニット及び小さな穴に対して、後処理を行うことである。
【0015】
好ましくは、ステップS2は具体的には、
S2.1、構造境界オーバーハング角度の決定:マトリックス形式で、ステップS1で取得された2値画像を入力し、各ユニットの隣接ドメイン内の密度値を取得し、あるユニット領域内の密度が0である場合、該ユニットは、境界ユニットであり、境界ユニットの、隣接ドメイン内において二値化処理されていない時のユニット密度をフィッティングし、境界ユニットの勾配法線ベクトルを得て、勾配法線ベクトルの直交方向を境界オーバーハング方向として、最小自乗法を採用して隣接ドメイン内のユニット密度をフィッティングし、ユニット密度の勾配方向を取得し、
S2.2、パーティションプリント方向の決定:グラフィック特徴ポイントを抽出し、特徴ポイントを利用してグリッドを分割して、設計ドメインを離散し、異なるプリントパーティションを得て、プリントパーティション内に含まれたユニットタイプに応じてプリントパーティションを分類し、それぞれ異なる領域のプリント方向を決定し、
S2.3、角度制約統合最適化:ステップS2.2で決定された構造部分プリント方向により各パーティション内のユニットに対して、角度制約を行い、プリント不十分領域の補足最適化設計及びプリントを実現することである。
【0016】
好ましくは、ステップS2.1において、6つのユニットモード又は9つのユニットモードで各ユニット支持ドメインを分割し、各ユニット支持ドメインを左支持ドメインと右支持ドメインに分割し、それぞれ最小二乗法によりユニット密度をフィッティングして構造左境界と右境界の法線量を取得し、左境界及び右境界の法線量をそれぞれ構造成形方向と、内積にし、構造左境界及び右境界の、臨界オーバーハング角度に違反する大きさは、式(3)である。
【0017】
【数3】
【0018】
【数4】
【0019】
【数5】
【0020】
ユニットが構造臨界オーバーハング角度に違反する場合、λi値が1であり、逆の場合、0であり、即ち式(6)である。
【0021】
【数6】
【0022】
好ましくは、ステップS2.1において、構造トポロジー最適化の式に境界ユニットオーバーハング角度の制約項及びユニット水平隣接ドメインユニット密度の制約項を添加して、該制約項は、トポロジー最適化を特徴付けた後に構造境界ユニットオーバーハング特徴のパラメータ値γiを考慮する。境界ユニットオーバーハング角度の制約項、および、ユニット水平隣接ドメインユニット密度の制約項を考慮した後の最適化式は、式(7)である。
【0023】
【数7】
【0024】
γiは、トポロジー最適化を特徴付けた後の構造境界ユニットオーバーハング特徴を考慮したパラメータ値であり、γiは、λiの解を求めるプロセスを参照して得られ、構造左境界及び右境界がオーバーハング特徴に違反する大きさは式(8)である。
【0025】
【数8】
【0026】
境界ユニットオーバーハング特徴状況を特徴付けたパラメータ値γiは式(9)である。
【0027】
【数9】
【0028】
ユニットが構造オーバーハング特徴に違反する場合、γi値が1であり、逆の場合、γi値が0であり、即ち式(10)である。
【0029】
【数10】
【0030】
好ましくは、ステップS2.2において、プリントパーティションを3つのクラスにまとめ、プリントパーティションは、クラスI領域、クラスII領域、およびクラスIII領域を含み、クラスI領域は、構造ユニットのみを含み、クラスII領域は、境界ユニットを含み、クラスIII領域は、境界ユニットを含まないだけでなく構造ユニットも含まず、ここで、構造における、垂直支持を有する部分に対してプリントパーティションのタイプ判断を行う時、垂直支持部分におけるすべてのユニットは、境界ユニットと見なさず、
クラスI領域の部分プリント方向は、オーバーハング角度範囲内において、任意に調整され、クラスII領域の部分プリント方向は、境界ユニットの傾斜方向によって決定され、クラスIII領域の部分プリント方向は、任意に設定される。
【0031】
好ましくは、ステップS2.2において、水平に隣接する領域内のプリント方向の角度差値は、最大偏向角より大きく、異なるプリントパーティションの部分最適なプリント方向は、式(11)によって決定される。
【0032】
【数11】
【0033】
好ましくは、ステップS2.3において、各パーティションにおける境界ユニットの傾斜方向により、各パーティションの最適な部分プリント方向を決定し、境界ユニットオーバーハング角度の制約項において、構造部分プリント方向を採用してユニットオーバーハング角度状況を特徴付けるパラメータ値λi(φi)を採用し、各プリントパーティション内のユニットの線形角度制約を考慮した式は、式(12)である。
【0034】
【数12】
【0035】
好ましくは、ステップS3において、Rhinoソフトウェアにより3Dモデリングを行い、Curaソフトウェアにより、3Dモデリングで得られた実体モデルをスライスし且つプリント経路を生成する。
【発明の効果】
【0036】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
1)本発明によって提供される多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法は、最適化中に自己支持構造を生成し、プリント中に、支持を追加する必要がなく、材料コスト及びプリント時間を節約し、支持構造なしの多軸3Dプリント統合成形設計及び製造を実現する。
2)本発明によって提供される多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法は、オーバーハング制約なしのトポロジー最適化、多軸3Dパーティションプリントの最適化の結合に基づき、密度に基づくSIMPモデルトポロジー最適化により、オーバーハング制約なしの構造の最適な構成を実現し、プリントヘッド、底部の回転軸付きの多軸パーティション3Dプリントを考慮することにより、任意の傾斜角での複雑な自己支持構造の最適な構成プリントを実現し、角度制約統合最適化によりプリント不十分な領域の補足最適化設計及びプリントを実現し、3Dモデリング、実体モデルパーティションのスライス、プリント経路の生産により、複雑な自己支持構造の最適な構成の多軸3Dプリント統合設計及び製造を実現する。
3)本発明は、プリントヘッド、ベース回転軸を考慮した多軸パーティション3Dプリントに基づき、プリントプロセスにプリント方向を動的調整することにより、プリントプロセスに、構造にオーバーハング効果が現れることを回避し、任意の傾斜角での複雑な自己支持構造の最適な構成のプリントを実現し、角度制約統合最適化によりプリント不十分な領域の補足最適化設計及びプリントを実現し、自己支持構造を3Dプリントする時に体積の増加とパフォーマンスの大幅な低下という問題を効果的に解決する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明による、多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法の具体的なフローチャートである。
図2】トポロジー最適化のチェスボードパターンの密度分布現象の概略図である。
図3】ユニットの円形隣接ドメイン概略図である。
図4a図4aは、トポロジー最適化後の構造の小さな欠点の概略図である。
図4b図4bは、修復処理後構造の2値画像概略図である。
図5】ユニット隣接ドメインモード概略図である。
図6a図6aは、トポロジー最適化後の構造概略図である。
図6b図6bは、構造境界ユニットによる判別操作後に抽出された構造境界ユニット概略図である。
図7a図7aは、「6つのユニットモード」のユニット支持ドメイン概略図である。
図7b図7bは、「9つのユニットモード」のユニット支持ドメイン概略図である。
図8a図8aは、「6つのユニットモード」の左支持ドメイン概略図である。
図8b図8bは、「6つのユニットモード」の右支持ドメイン概略図である。
図9】トポロジー最適化後の構造にオーバーハング特徴が現れる概略図である。
図10a図10aは、トポロジー最適化後の元の構造概略図である。
図10b図10bは、垂直方向に沿ってプリントできる部分の概略図である。
図11】グラフィック特徴を抽出した後に得られたパーティション概略図である。
図12】プリントプロセスにおける衝突現象概略図である。
図13a図13aは、MBB梁の設計ドメイン概略図である。
図13b図13bは、MBB梁の最適なトポロジー構成の結果概略図である。
図13c図13cは、MBB梁のプリントパーティション概略図である。
図13d図13dは、MBB梁のプリント曲線概略図である。
図14a図14aは、片持梁の設計ドメイン概略図である。
図14b図14bは、片持梁の最適なトポロジー構成結果概略図である。
図14c図14cは、片持梁のプリントパーティション概略図である。
図14d図14dは、片持梁のプリント曲線概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。 下記実施例の説明は、本発明を理解するのを助けるためだけである。当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、本発明に対していくつかの修正を行うこができ、これらの改良および修正も本発明の特許請求の範囲の保護範囲に含まれることを指摘すべきである。
【0039】
実施例1
実施例の1種として、図1に示すように、多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法は、以下のステップを含む。
S1、オーバーハング制約なしのトポロジー最適化:SIMPモデルに基づく構造のトポロジー最適化方法を採用して、複雑な構造の最適な構成設計を実現し、次に画像を2値画像に変換し、トポロジー最適化の結果に対して後処理を行う。具体的には
S1.1、構造のトポロジー最適化設計:密度に基づくSIMPモデルを採用してトポロジー最適化方法として、4つのノードの矩形ユニットの離散設計ドメインを利用してし、与えられた負荷条件と境界条件の場合、設計ドメイン内の各ユニットの密度密度ρe=ρ1,ρ2、…ρneleを設計変数として、構造のトポロジー最適化の式は、式(13)である。
【0040】
【数13】
【0041】
ユニット密度を離散値0又は1に近づかせるために、SIMPモデルは、式(14)のように、材料の弾性率に密度のペナルティ項を導入する。
【0042】
【数14】
【0043】
pの値が小さすぎる場合、離散値に近づく設計変数値を取得しにくく、pの値が大きすぎる場合、最適化問題の非線形程度を高め、理想的な収束結果を取得にくく、本実施例において、実際のエンジニアリングで一般的に使用されるpの値を3にする。
【0044】
図2図3に示すように、最適化プロセスに、常にチェスボードパターン密度分布の現象が現れ、且つ最適化のグリッド依存性をもたらし、即ち最適化結果は、グリッドの分割方式に関連し、したがって、最適化プロセスに、密度濾過を行う必要があり、表現式は式(15)である。
【0045】
【数15】
【0046】
第e個ユニット質量中心を中心に、Heiの計算式は、式(16)である。
【0047】
【数16】
【0048】
heaviside投影変換により、さらに密度濾過で得られたユニット密度を0及び1の離散値に変換し、heaviside投影変換の関数式は、式(17)である。
【0049】
【数17】
【0050】
ηの取り得る値は、ユニット密度をheaviside関数変換した後に、構造空間割合が、元の構造と同じであるように保証すべきであり、一般的には、二分法で決定され、パラメータβは、曲線滑らかさを特徴付け、取り得る値が大きすぎると、最適化プロセスに、悪条件のマトリックスが現れる。
【0051】
heaviside投影変換後にユニット密度ρeが依然として、0~1の間にあるユニットに対して、閾値δ=0.5を設定し、ユニット密度ρeに対して以下の処理を行う。
【0052】
【数18】
【0053】
S1.2、トポロジー最適化後処理:図4aに示すように、式(18)において、構造の力学的制約を考慮しないため、構造の部分に小さな欠点が存在し、構造境界の勾配方向への決定に不利であり、構造の小さな欠点を前処理する必要があり、接続ドメイン識別により、得られた2値画像における孤立ユニット及び小さな穴に対して、後処理を行い、図4bに示す画像を得ることである。
【0054】
S2、多軸3Dパーティションプリントの最適化:まず構造境界を抽出し、次に構造境界のオーバーハング角度を決定し、構造に対してプリントパーティションを分割し、プリントパーティションを分類し、タイプに従って、異なるプリントパーティションのプリント方向を決定し、角度制約の統合最適化を行う。具体的には
S2.1、構造境界オーバーハング角度の決定:図6a及び図6bに示すように、マトリックス形式で、ステップS1で取得された2値画像を入力し、各ユニットの隣接ドメイン内の密度値を取得し、あるユニット領域内の密度が0である場合、該ユニットは、境界ユニットであり、境界ユニットの、隣接ドメイン内において二値化処理されていない時のユニット密度をフィッティングし、境界ユニットの勾配法線ベクトルを得て、勾配法線ベクトルの直交方向を境界オーバーハング方向として、該方法は、構造が滑らかな境界について、より満足した結果をフィッティングできるが、構造境界がより鋭い部分のユニットへのフィッティング効果は理想的ではない場合が多いが、このようなユニットは、境界ユニット総数の1%以下を占めるため、全体への影響が小さい。
6つのユニットモード又は9つのユニットモードで各ユニット支持ドメインを分割し、各ユニット支持ドメインを左支持ドメインと右支持ドメインに分割し、6つのユニットモード及び9つのユニットモードのユニット支持ドメイン及び左右支持ドメインの分割は、図7a~図8bに示すに示す。それぞれ最小二乗法によりユニット密度をフィッティングして構造左境界と右境界の法線量を取得し、左境界及び右境界の法線量をそれぞれ構造成形方向と、内積にし、構造左境界及び右境界の、臨界オーバーハング角度に違反する大きさは、式(19)である。
【0055】
【数19】
【0056】
ilとtirに対して罰関数処理を行い、0~1範囲内の離散値に変換する。
【0057】
【数20】
【0058】
ユニットのオーバーハング角度状況を特徴付けるパラメータ値λiは、式(21)である。
【0059】
【数21】
【0060】
ユニットが構造臨界オーバーハング角度に違反する場合、λi値が1であり、逆の場合、λi値が0であり、すなわち式(22)である。
【0061】
【数22】
【0062】
したがって、構造トポロジー最適化の表現式に境界ユニットオーバーハング角度の制約項を添加する必要がある。
【0063】
最適化プロセスに、図9に示すオーバーハング特徴が現れることを回避するために、さらにユニット水平隣接ドメインユニット密度の制約項を添加する必要があり、該制約項は、トポロジー最適化後の構造境界ユニットオーバーハング特徴を特徴付けるパラメータ値γiを考慮した。
【0064】
境界ユニットオーバーハング角度の制約項及びユニット水平隣接ドメインユニット密度の制約項を考慮した後の最適化式は、式(23)である。
【0065】
【数23】
【0066】
γiの解を求めることは、λiの解を求めるプロセスを参照して得られ、構造左境界及び右境界がオーバーハング特徴に違反する大きさは、式(24)に示す通りである。
【0067】
【数24】
【0068】
境界ユニットオーバーハング特徴状況を特徴付けたパラメータ値γiは式(25)である。
【0069】
【数25】
【0070】
ユニットが構造オーバーハング特徴に違反する場合、γi値が1であり、逆の場合、γi値が0であり、すなわち式(26)である。
【0071】
【数26】
【0072】
S2.2、パーティションプリント方向の決定:グラフィック特徴ポイントを抽出し、特徴ポイントを利用してグリッドを分割して、設計ドメインを離散し、異なるプリントパーティションを得て、プリントパーティションを3つのクラスにまとめ、プリントパーティションは、クラスI領域、クラスII領域、およびクラスIII領域を含み、クラスI領域は、構造ユニットのみを含み、クラスII領域は、境界ユニットを含み、クラスIII領域は、境界ユニットを含まないだけでなく構造ユニットも含まず、ここで、構造における、垂直支持を有する部分に対してプリントパーティションのタイプ判断を行う時、構造における垂直支持がある部分を排除すべきであり、図10aと図10bの比較に示すように、垂直支持部分におけるすべてのユニットは、境界ユニットと見なさず、プリントパーティションへの分割は、人工的な方法で決定することができ、グラフィック特徴ポイントを抽出することもでき、グラフィック特徴ポイントを抽出して得られたプリントパーティション分割は、図11に示す。
【0073】
クラスI領域内に、境界ユニットが存在しないため、部分プリント方向は、オーバーハング角度範囲内において、任意に調整され、クラスII領域は、境界ユニットが存在するため、部分プリント方向は、境界ユニットの傾斜方向によって決定され、クラスIII領域の部分プリント方向は、構造を順調にプリントできるかどうかに影響せず、任意に設定できる。
【0074】
図12に示すように、プリントプロセスに、プリントヘッドと構造が衝突しないように保証するために、水平に隣接する領域内のプリント方向の角度差値は、最大偏向角より大きいことを確保すべきであり、領域の部分最適なプリント方向は、式(27)によって決定される。
【0075】
【数27】
【0076】
S2.3、角度制約統合最適化:パーティションプリント方向によりプロセスのパーティションを決定し且つ部分プリント方向を決定し、ある特殊な状況で構造が十分にプリントされることを確保できないため、ステップS2.2で決定された構造部分プリント方向φiを角度制約として各パーティション内のユニットの線形角度制約項に添加し、各パーティションにおける境界ユニットの傾斜方向が、各パーティションの最適な部分プリント方向を決定するため、各パーティション内のユニットの線形角度制約項において、構造部分プリント方向を採用してユニットオーバーハング角度状況のパラメータ値λi(φi)を特徴付けて、プリント不十分な領域の補足最適化設計及びプリントを実現することができる。各プリントパーティション内のユニットの線形角度制約を考慮する表現式は、式(28)である。
【0077】
【数28】
【0078】
S3、3Dプリントの統合製造:最適化結果から構造情報を抽出し、部材の組み立て及びノードの生成処理後、Rhinoソフトウェアにより3D実体モデルを確立し、Curaソフトウェアにより実体モデルパーティションのスライスを行い、プリント経路を生成し、支持なしの多軸3Dプリント製造を行う。
【0079】
実施例2
実施例1により提供される、多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法に基づき、本実施例は、MBB梁モデルの、多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造のテスト実施例を提供し、本発明の最適化設計及び製造方法の有効性を検証する。
【0080】
図13aに示すように、MBB梁モデルの梁長さは120、高さは40であり、材料の弾性ヤング率は1.0、体積割合制約は0.3、罰係数は3、荷重、境界条件及びトポロジー最適化後に得られた構造の最適なトポロジー構成は図13bに示すように、最適化後の最終的なターゲット関数値は339.4であり、MBB梁のプリントパーティション、MBB梁のプリント曲線はそれぞれ図13c、図13dに示す。
【0081】
本実施例において、多軸トポロジー最適化を考慮した後、構造のすべてのユニットは完全にプリントされ、角度制約の統合最適化を行う必要がない。
【0082】
実施例3
実施例1により提供される、多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法に基づき、本実施例は、片持梁モデルの、多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造のテスト実施例を提供し、本発明の最適化設計及び製造方法の有効性を検証する。
【0083】
図14aに示すように、片持梁モデルの梁長さは120、高さは60であり、ヤング率、体積割合及び罰係数は、実施例1におけるMBB梁モデルのパラメータと同じであり、左端は固定端であり、荷重は、梁の右境界の中点に印加され、トポロジー最適化後に得られた最適なトポロジー構成は図14bに示すように、最適化後の最終的なターゲット関数値は121.03である。片持梁のプリントパーティション、片持梁のプリント曲線はそれぞれ、図14c、図14dに示す。
【0084】
本実施例において、多軸トポロジー最適化を考慮した後、構造のすべてのユニットは同様に、完全にプリントされ、角度制約の統合最適化を行う必要がない。
【0085】
実施例2、3から、本発明により提供された多軸3Dプリントに基づく自己支持構造の最適化設計及び製造方法は、複雑な構造の設計及び3Dプリント時、重力によるオーバーハング効果により、プリントプロセスに、支持を追加する必要があり、及び追加の材料消費及び支持を除去する必要がある等の欠点という問題を解決し、それにより複雑な自己支持構造の最適な構成の多軸3Dプリント統合設計及び製造を実現する。プリントプロセスに、プリント方向を動的調整することにより、構造に、プリントプロセスに、オーバーハング効果が現れることを回避し、角度制約の統合最適化によりパーティションが不十分なプリント領域の補足最適化設計及びプリントを実現し、自己支持構造を3春3Dプリントする時に体積の増加とパフォーマンスの大幅な低下という問題を効果的に解決する。且つ実際の検証により、本発明の方法は有効である。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10a
図10b
図11
図12
図13a
図13b
図13c
図13d
図14a
図14b
図14c
図14d