(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】軒先構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
E04D13/04 Z
(21)【出願番号】P 2020102962
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2020055405
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-280160(JP,A)
【文献】特開2019-007253(JP,A)
【文献】実開平04-129232(JP,U)
【文献】実開昭59-033940(JP,U)
【文献】実開平03-075221(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
E04D 3/00
E04D 13/072
E04D 13/064
E04D 13/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板屋根における折板屋根板の内部に位置される支持部材と、該支持部材に固定される横部材と、該横部材の水下端から更に垂下する
L字状材又はコ字状材である縦部材と、からなる軒先納め材、該軒先納め材の軒先側に配設される軒樋、該軒樋の上面を覆うカバー材を用いた軒先構造であり、
前記縦部材には、
前記カバー材の上端が連絡されると共に、前記軒樋の建築物側の側面を受支する樋受け材が取り付けられ、帯状の補強材の一端が前記軒樋の軒先側へ、他端が前記折板屋根板又は前記縦部材に取り付けられていることを特徴とする軒先構造。
【請求項2】
前記横部材及び前記縦部材には、それぞれの基端に接面する重合取付部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の軒先構造。
【請求項3】
前記軒樋の軒先側の側面上端が、前記カバー材の下端と係合され
ていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軒先構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新築、既設を問わず各種の折板屋根に容易に適用され、安定に各種の軒樋を取り付けることができる軒先構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折板屋根等に適用される樋等の排水部材を用いた構造としては、特許文献1,2等に示される構造が知られている。
前記特許文献1に記載の構造は、軒部の底面に雨水落し用の開口部を有し、該開口部の水下側に雪止め用突出部を備えた構成である。
前記特許文献2に記載の樋受具は、抜け止めを防止する部材であり、抜止め部材を上下動自在に取付けた構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-60222号公報
【文献】特開2000-204729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の構造では、雪止め用突出部のみが雪の塊が侵入することを防止する部位であって、当該部分に落ち葉等の時間が経っても消失しない物品が詰まった際には排水機能も消失してしまうという問題があった。また、前記特許文献2に記載の樋受具は、落ち葉等の詰まりを防止する機能自体が存在しないので、雨水と共に落ち葉等が侵入した場合に排水機能が損なわれてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、用いる部材作成が容易であるため、各種の折板屋根等の縦葺き屋根構造に容易に適用され、軒樋や内樋へ落ち葉等による樋詰まりを防止することなく雨水等を導くことができる軒先構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであって、折板屋根における折板屋根板の内部に位置される支持部材と、該支持部材に固定される横部材と、該横部材の水下端から更に垂下するL字状材又はコ字状材である縦部材と、からなる軒先納め材、該軒先納め材の軒先側に配設される軒樋、該軒樋の上面を覆うカバー材を用いた軒先構造であり、前記縦部材には、前記カバー材の上端が連絡されると共に、前記軒樋の建築物側の側面を受支する樋受け材が取り付けられ、帯状の補強材の一端が前記軒樋の軒先側へ、他端が前記折板屋根板又は前記縦部材に取り付けられていることを特徴とする軒先構造を提案するものである。
【0008】
また、本発明は、前記軒先構造において、前記横部材及び前記縦部材には、それぞれの基端に接面する重合取付部が設けられていることを特徴とする軒先構造をも提案する。
【0009】
さらに、前記軒先構造において、軒樋の軒先側の側面上端が、軒樋の上面を覆うカバー材の下端と係合されていることを特徴とする軒先構造をも提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の軒先構造は、折板屋根板の内部に位置される支持部材と、該支持部材に固定される横部材と、該横部材の水下端から更に垂下するL字状材又はコ字状材である縦部材と、からなる軒先納め材、該軒先納め材の軒先側に配設される軒樋、該軒樋の上面を覆うカバー材を用いた軒先構造であり、前記縦部材には、カバー材の上端が連絡されると共に、軒樋の建築物側の側面を受支する樋受け材が取り付けられ、帯状の補強材の一端が前記軒樋の軒先側へ、他端が前記折板屋根板又は前記縦部材に取り付けられているので、新築、既設を問わず各種の折板屋根に容易に適用され、安定に各種の軒樋を取り付けることができる。また、この軒樋やカバー材及び樋受け材の荷重(正荷重)や下方からの吹き上げ荷重(負荷重)に対する補強材が取り付けられているので、例えば多量の降雪が前記カバー材の上面に堆積したり、軒樋の内部に多量の雨水が流れることがあっても、該正荷重によって軒樋が変形したり或いは下方へ傾倒したり落下することを防止でき、下方から吹き付ける吹き上げ風(負荷重)をも受けるため、軒樋が持ち上げられたりして変形或いは落下等を防止できる。さらに、縦部材には、カバー材の上端が連絡されるため、軒樋の軒先側の側面上端がカバー材の下端と係合していると、このカバー材は軒樋の荷重を保持するアームの作用をも果たす。
【0012】
また、横部材及び縦部材には、それぞれの基端に接面する重合取付部が設けられている場合、重合取付部にて一体的に固定されるので、任意の傾斜角度で安定に配設されるものとなる。
【0013】
さらに、軒樋の軒先側の側面上端が、軒樋の上面を覆うカバー材の下端と係合されている場合、軒樋にカバー材を容易に配設でき、カバー材は、軒樋の軒先端を折板屋根側へ引っ張るように保持する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)
参考例1の
軒先構造を示す側面図、(b)該軒先構造を水下側から見た正面図である。
【
図2】(a)前記軒先構造に用いたカバー材、樋受け材、及び軒樋を示す側面図、(b)
参考例1の軒先納め材を構成する支持部材、縦部材、及び横部材を示す側面図、(c)
参考例1の軒先納め材を構成する支持部材、縦部材、及び横部材を示す正面図である。
【
図3】(a)
参考例2の軒先構造を示す側面図、(b)該軒先構造を水下側から見た正面図である。
【
図4】(a)本発明
の一実施例(
実施例1)
の軒先構造を示す側面図、(b)それに用いた縦部材及び横部材を示す側面図である。
【
図5】本発明の他の一実施例(
実施例2)
の軒先構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の軒先構造に用いられる軒先納め材は、折板屋根における折板屋根板の内部に位置される支持部材と、該支持部材に固定される横部材と、該横部材の水下端から更に垂下するL字状材又はコ字状材である縦部材と、からなる。
【0016】
本発明の軒先構造は、前記軒先納め材、該軒先納め材の軒先側に配設される軒樋、該軒樋の上面を覆うカバー材を用いたものであって、前記縦部材には、カバー材の上端が連絡されると共に、軒樋の建築物側の側面を受支する樋受け材が取り付けられ、帯状の補強材の一端が前記軒樋の軒先側へ、他端が前記折板屋根板又は前記縦部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
前記軒先納め材を取り付ける折板屋根は、前述のように面板部の両側縁を表面側に立ち上げた折板屋根板にて形成され、例えばハゼ締め式、嵌合式等の各種の折板屋根板が知られているが、特に限定されるものではない。
【0018】
前記支持部材は、前述のように前記折板屋根板の裏面側に位置されるように配されて前記軒樋を支持する部材であって、後述する図示実施又は参考例に示すように一般的に水平方向に配設される躯体上にタイトフレーム等を介して固定されている保持部材も折板屋根板の内部には存在するが、この本発明における前記支持部材は、躯体上に固定されていない点で明らかに相違する部材であって、一つ又は二つ以上の部材を指し、その形状についても、前記軒樋を支持可能な形状であればよい。
なお、本発明の軒先構造は、新設、既設を限定されるものではないので、仮に既設屋根の折板屋根の水下端に当該支持部材を組み付けるには、キャップの取付前であれば下方から嵌合させるようにしてもよいし、屋根の軒端から嵌入させるようにしてもよい。また、この支持部材は、タイトフレーム等に固定する保持部材と全く同じものを用いてもよいし、屋根内部から外れない形状であればよい。
【0019】
前記支持部材に固定される横部材は、流れ方向に延在する横部分を含む部材であって、前記横部分が一つの支持部材に固定されるか、二つ以上の支持部材に跨るように固定される。この横部材としては、後述する図示実施又は参考例のように前記横部分を含むL字状材を用いてもよいが、その具体的な構成については特に限定するものではない。
【0020】
前記横部材に取り付けられる縦部材は、前記横部材の水下端から更に垂下する部材であって、後述する図示実施又は参考例のように軒樋を配設するスペースを確保するために下方へ延在させている。この縦部材としては、L字状材又はコ字状材を用いる。また、この縦部材には、樋受け材を取り付けるための位置規制や目印を意図する爪(切り起こし状)等を設けるようにしてもよい。
なお、この「L字状材」は、正面から見て略水平状に配される横片と正面から見て略鉛直状に配される縦片とからなるL鋼等の素材からなることを意味している。また、「コ字状材」は、正面から見て略垂直状に配される縦面が前後に備えられるコ字状に形成されている。
【0021】
前記縦部材における切り起こし状の爪は、上下方向に段階的に設けることで、樋受け材を取り付けるための位置規制や目印とすることができる。また、爪に代えて取付用の複数の孔を設けることで、同様の目的に用いることもできる。
【0022】
これらの横部材及び縦部材には、それぞれの配設(拡開)角度を調整することができる角度調整機構を設けるようにしてもよい。
この場合、流れ方向に沿うように延在させる横部材と、そこから垂下状に延在させる縦部材とを任意の角度で配設できるため、折板屋根の各種の屋根勾配に容易に対応させることができる。
【0023】
前記角度調整機構としては、後述する図示参考例(参考例1,2)のように、これらの横部材及び縦部材には、それぞれの基端に接面する重合取付部が設けられる態様を採用してもよい。この態様における重合取付部としては、各部材の基端に、扇状部分を形成し、それらを接面(合わせ状に重合)させるようにしてもよいし、特にこれに限定されるものではない。この場合、重合取付部にて一体的に固定されるので、任意の傾斜角度で安定に配設されるものとなる。また、それぞれの重合取付部間に、例えば弾性を有する板状材を介在させることで、締着効果や補強効果を向上させることができる。
【0024】
或いは、後述する図示実施例(実施例1,2)のように、横部材に設けた縦部分と縦部材との間に、ボルト状の調整具を架け渡して連結し、ナット状部分を回動させるだけで架け渡し間隔を調整できる態様を採用してもよい。この態様における縦部分や調整具については、特に限定するものではない。
【0025】
これらの支持部材、横部材、及び縦部材からなる軒先納め材は、新設又は既設の折板屋根に対して容易に適用することができ、安定に各種の軒樋を取り付けることができる。
【0026】
これらの軒先納め材を新設又は既設の折板屋根に配設する手順としては、予め前記支持部材、横部材、縦部材を組み付けておき、これらを折板屋根に取り付け、それと同時に、或いはその後に、樋受け部材や軒樋、及びカバー材を取り付けるようにしてもよい。
なお、折板屋根の内部に支持部材を位置させるには、前述のようにキャップ材の配設前に下方から嵌合状に取り付けてもよいし、折板屋根の先端(軒先端)からの嵌入状(挿嵌状)に取り付けてもよい。その支持部材には、前述のように予め横部材及び縦部材が組み付けられているが、折板屋根の内部に支持部材を位置させる操作に特に支障を生ずることなく容易に施工作業を行うことができる。
【0027】
前記支持部材に支持される軒樋は、内部に雨水等の排水路が設けられているものであれば、その材質や寸法、形状等は限定するものではなく、樋として汎用されているU字状、半円状、角状(コ字状)等を用いることができる。また、建築物側の側面下端には、前記樋受け材の受支部に支持される被支持部が形成されていることが望ましく、例えば後述する図示実施又は参考例のように隅部状又は角状のものを例示することができる。
【0028】
この軒樋は、前記折板屋根の軒先から延出状に位置し、内部に雨水等の排水路が設けられている部材であって、荷重(積雪、雨水の重量や屋根材、樋材の材質、板厚、設置方法、配設位置)を勘案した汎用品を設置することができる。なお、この軒樋は、通し材でも、水漏れ等を生じないものであれば複数部材を連結した構成でもよい。長さ方向に雨水を排水することができれば、特にその材質を限定するものでもない。そのため、各種の金属板材の成型品でも、硬質の樹脂成型品でもよい。
なお、この軒樋の開放上面には前記カバー材が配設され、この軒樋を受支する前記樋受け材が配設されているが、その荷重(正荷重)や下方からの吹き上げ荷重(負荷重)に対する補強材を取り付けるようにしてもよい。
【0029】
前記樋受け材は、前記軒樋の建築物側の側面を受支する部材であって、後述する図示実施又は参考例のように前記縦部材に取り付けられる取付部と、軒樋の建築物側の側面を受支する受支部と、を備え、折曲加工にて形成されていることが望ましい。
前記取付部は、ビスによる締着にて取り付けられるものでもよいし、前記縦部材に設けた位置規制や目印を意図する爪(切り起こし状)等により係合状に取り付けられるものでもよい。
前記受支部は、軒樋の建築物側の側面下端が支持される構成(図示実施又は参考例では支持部)のみでもよいし、側面上端が取り付けられる取付部と併せたものでもよい。
なお、前記樋受け材が形成される「折曲加工」としては、ロール成形やプレス加工、ベンダー加工等、各種の成形法が知られているが、金属板材を折り曲げ可能なものであればよい。また、このように折曲加工にて形成される特性は、現場においても容易に形状の調整を行うことができる(加工性が高い)と共に、押し出し成形材等に比べて軽量な部材となる。
【0030】
前記カバー材は、軒樋の開放上面を覆うことで、内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積したり、鳥類等が巣作りすることを防止する作用をも果たし、その表面には雨水を内部へ導く導水口、例えば小径のスリット孔が形成されて雨水のみを軒樋内に導く作用をも果たす部材である。
また、このカバー材の望ましい態様としては、後述する図示実施又は参考例のようにその下端が軒樋の軒先端と係合して取り付けられ、且つその上端が前記縦部材に連絡されて取り付けられる。このカバー材の下端には、後述する図示実施又は参考例に示すように下方へ更に内側へ折曲した略コ字状の係合部が設けられることで、その裏面側に位置する軒樋の軒先端を係合させ、折板屋根側へ引っ張るように保持するため、このカバー材は軒樋の荷重を保持するアームの作用をも果たす。
【0031】
この補強材としては、上方から樋自体にかかる荷重や吹き上げ荷重に対する強度を備えるものであれば、その素材や形状について特に限定するものではなく、後述する図示実施例(実施例1,2)のように、帯状であって、その下端を軒樋の軒先側の側面に固定させると共にその上端を折板屋根又は前記縦部材に固定させる。
この補強材は、軒樋に生ずる正荷重を受けるため、例えば多量の降雪が前記カバー材の上面に堆積したり、軒樋の内部に多量の雨水が流れることがあっても、該正荷重によって軒樋が変形したり或いは下方へ傾倒したり落下することを防止できる。また、軒樋には下方から吹き付ける吹き上げ風(負荷重)をも受けるため、持ち上げられたりして変形或いは落下等を防止できる。
【0032】
本発明の軒先構造は、これらの各部材から構成されるものであって、新設又は既設の折板屋根に対し、前記軒先納め材が取り付けられ、該軒先納め材の縦部材に対して樋受け材やカバー材及び軒樋が取り付けられ、帯状の補強材の一端が前記軒樋の軒先側へ、他端が前記折板屋根板又は前記縦部材に取り付けられている構成であるから、新築、既設を問わず各種の折板屋根に容易に適用され、安定に各種の軒樋を取り付けることができる。
【実施例1】
【0033】
図1(a),(b)に示す軒先構造は、折板屋根における折板屋根板Aの内部に位置される支持部材3と、該支持部材3に固定され、流れ方向に延在する横部分16を有する横部材1と、該横部材1の水下端から更に垂下する
L字状材又はコ字状材である縦部材2と、からなる参考例1であり、軒先納め材Iを用いたものである。
この軒先構造には、軒樋4の建築物側の側面43を受支する樋受け材6が用いられている。
【0034】
この
参考例1の軒先納め材Iは、
図2(b),(c)に示す支持部材3、横部材1,縦部材2の三部材からなり、前記
図1(a)に示す軒先構造に適用する際には予め一体的に組み付けた状態(分断しない状態)で施工することが多い。
【0035】
まず、前記支持部材3は、図示するように底面の左右の側縁を立ち上げて折板屋根板Aが弾性嵌合される部材であって、厚肉の成形材からなり、タイトフレームDを介して躯体C及びH躯体Fに固定される保持部材Bは、底面の前後面を立ち上げて折板屋根板Aが弾性嵌合される部材であって、金属板材を折り曲げた成形材である。したがって、この保持部材Bは、側面から見てU字状(但し、前後面の上端に外方へ延在する横片を設けているため、逆ハット状)であるのに対し、前記支持部材3は、正面から見てU字状である。
なお、支持部材3は、折板屋根板Aの内部に配置可能であって、その組み付け後に容易に外れない形状であればよく、折板屋根板Aに対して嵌合状であっても、折板屋根板Aの先端(軒先端)からの嵌入、挿嵌状であってもよい。
【0036】
次に、前記横部材1は、図示するように基端に扇状部分11を備えて流れ方向に延在するL字状材である。
続いて、前記縦部材2は、図示するように基端に扇状部分21を備えて上下方向に延在するL字状材である。
なお、これらの「L字状材」は、正面から見て略水平状に配される横片と正面から見て略鉛直状に配される縦片とからなるL鋼等の素材からなることを意味し、前記扇状部分11,21は、それぞれの縦片に形成されている。
それぞれの扇状部分11,21を接面状に重合させ、少なくとも一箇所に固定具を打ち込むことにより、横部材1と縦部材2との傾斜角度を調整することができる。即ちこれらの構成は、前記角度調整機構の一態様である。この態様では、扇の要になる位置を、第1の固定部14とし、該固定部を軸として回動でき、周囲に相当する位置を第2の固定部15a、15bとしたので、適宜に回動させて固定具を打ち込んで容易に角度調整することができる。
【0037】
この第1実施例の軒先納め材Iを取り付ける前記折板屋根は、水平方向に延在する躯体C上にタイトフレームDが固定され、該タイトフレームDに保持部材Bが固定され、該保持部材Bに折板屋根板Aが保持される嵌合式構造であって、隣り合う折板屋根板A,A間には、キャップ材Eが取り付けられている。また、図中、躯体Cは、C型鋼であって、H躯体Fの上面に固定されている。
なお、前記折板屋根板Aは、面板部(谷部g)の両側縁を表面側に立ち上げた折板屋根を構築する部材であって、立ち上がり部hの高さの中程には保持部材Bに弾性的に係合されるく字状の係合部が形成され、左右に隣り合う折板屋根板A,A間を覆うようにキャップ材Eが弾性嵌合にて取り付けられている。
このような折板屋根においては、山部は立ち上がり部hやキャップ材Eが相当し、谷部は面板部gが相当し、雨水等は谷部である面板部gを流れ方向に流下する。
【0038】
そして、この
参考例1の軒先納め材Iを前記折板屋根に取り付けるには、前述のように予め三部材を一体的に組み付けた状態で施工するが、前記支持部材3が、屋根の軒端から嵌入するように組み付けた。即ち
図1(a)に示す側面図では支持部材3が左方から右方へ、
図1(b)に示す正面図では支持部材3が手前側から奥側へ挿嵌されるようにスライドさせて取り付けられる。なお、
図1(b)における躯体Cは、支持部材3とは固定されていない部材であって、
図1(a)に示されるように図面の奥側に配設されている。
【0039】
この参考例1の軒先納め材Iを前記折板屋根に固定するには、所定位置にて固定具12,13を締着して固定する。
続いて、固定した支持部材3及び横部材1に対し、縦部材2を直交状になるように微調整して臨ませ、それぞれの扇状部分11,21を接面状に重合させた状態で固定部15a,15bを固定する。
その後、固定した縦部材2に対し、樋受け部材6や軒樋4、及びカバー材7を取り付ければよい。
【0040】
このように参考例1の軒先納め材Iは、折板屋根板Aの内部に位置される支持部材3と、前記横部材1と、前記縦部材2とからなり、該縦部材2に対して樋受け材6やカバー材7及び軒樋4を取り付けることができるため、新築、既設を問わず各種の軒樋4を取り付けることができる。
【0041】
さらに、この参考例1では、横部材1と縦部材2のそれぞれの基端に接合状に配される扇状の重合取付部11,21を設けた態様の角度調整機構を採用したので、任意の角度で配設でき、折板屋根の各種の屋根勾配に容易に対応させることができる。
【0042】
前記樋受け材6は、
図2(a)に示すように軒樋4の側面部43から前記縦部材2への固定部61(固定ビス4b)と、軒樋4の建築物側の側面43の下端を受支する受支部62と、を備え、折曲加工にて形成されている。この受支部62は、軒樋4の建築物側の側面431を支持する受支部62の他に、縦片部分の中程に、側方へ垂れ下がる膨出部64を設けることで、下方が開放する溝状63をも含まれ、軒樋4の建築物側の側面上端432を下方から差し込むように取り付けることができる。なお、この受支部62は、折返し状に形成することで軒樋4を受ける強度を向上させている。
【0043】
前記軒樋4は、
図2(a)に示すように前記樋受け材6に受支されて内部に雨水等の排水路が設けられる部材であって、内部に導かれた雨水等は排水路から底面部41に連結された縦樋5へと流下される。
この軒樋4は、長さ方向に延在して略平坦状の底面部41の側端が立ち上げられ、軒先側(図面では左側)に、三つの傾斜面と二つの略水平面とで構成される側面部42が設けられ、建築物側(図面では右側)には、略垂直状に起立する側面部43が設けられ、これらの底面部41及び側面部42,43にて排水路が形成されている。
前記軒先側の側面部42の上端に位置する傾斜面と略水平面は、カバー材7の係合部72に保持(係合)される軒先端421である。
また、前記側面43の下端には、隅部状の被保持部431が設けられ、前記樋受け材6の横片状の支持部62に、上方から載置状に配置されて支持される部位である。
さらに、この側面部43の上端には、差込状の被取付部432が、前記樋受け材6の溝状の取付部63に、下方から挿入状に差し込まれて取り付けられる部位である。
【0044】
前記軒樋4の上面を覆うカバー材7は、
図2(a)に示すようにその下端(軒先端)72が前記軒樋4の軒先端421と係合され、その上端73が前記縦部材2に連絡されている。
このカバー材7は、軒樋4の内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積したり、鳥類等が巣作りすることを防止する部材であって、その表面(化粧面71)には雨水を内部へ導く導水口711として複数の小径のスリット孔が形成され、その下端には略コ字状に形成された下端(係合部)72が、前記軒樋4の軒先端421と係合して取り付けられ、その上端付近に固定部73が形成され、該固定部73が、前記縦部材2に固定されている。
前記係合部72は、化粧面71の軒先端から斜め上方へ延在し、その先端を下方へ折曲し、更にその下端を内側へ折曲した略コ字状に形成され、化粧面71と係合部72との境界には下方へ凹む排水溝712が形成され、所定間隔で導水口が形成されている。
前記固定部73は、化粧面71の建築物側端付近に位置する部位であって、前記縦部材2にビス7bにて固定されている。
【0045】
このように参考例1の軒先納め材Iを用いた軒先構造は、折板屋根板Aの内部に位置される支持部材3へ、前記横部材1及び前記縦部材2が取り付けられ、該縦部材2に対して樋受け材6やカバー材7及び軒樋4が取り付けられた構成であるから、新築、既設を問わず各種の折板屋根に容易に適用され、安定に各種の軒樋4を取り付けることができる。
【0046】
この軒先構造では、折板屋根を流れる雨水等は、前述のように谷部に相当する面板部gを流れ方向に流下するので、図示するようにその水下端g1を下方へ折り曲げることでカバー材7や軒樋4へ雨水を円滑に導くことができる。
【0047】
図3(a)に示す
参考例2の軒先納め材IIは、折板屋根板Aの内部に位置される支持部材3'が、流れ方向に隣り合うように配設され、横部材1'が、前記支持部材3',3'に跨がるように固定されている点が前記
参考例1と異なる。そのため、この軒先納め材IIは、少なくとも前記
参考例1の軒先納め材Iよりも安定に取り付けられる。
【0048】
図4(a)に示す本発明の
実施例1の軒先納め材IIIは、折板屋根板Aの内部に位置される支持部材3"に流れ方向に延在する横部材1"が固定され、該横部材1"の水下端から更に垂下する縦部材2"に、軒樋4の建築物側の側面43を受支する樋受け材6が取り付けられるように固定されている点では、前記
参考例1と共通するが、横部材1"と縦部材2"の具体的構成、及び横部材1"と縦部材2"との間に設けられる角度調整機構の態様が相違する。
【0049】
この実施例1における支持部材3"は、部材自体の構成については、この実施例1でもタイトフレームDや躯体Fと接続している保持部材Bと同様であるが、保持部材BがタイトフレームDを介して躯体Fに固定されているのに対し、支持部材3"はそれらに固定されていない点で明らかに相違する。
【0050】
この
実施例1における横部材1"は、
図4(b)に示すように正面から見て略水平状に配される横片と正面から見て略鉛直状に配される縦片とを備える点では前記
参考例1と共通するが、該縦片を下方へ長く延在させると共にその奥端を略直角状に折り曲げて折り曲げ縦片17を形成している。なお、該折り曲げ縦片17には、予め挿通孔171が形成(穿設)されている。また、横部分16を形成する縦片にも、予め取付孔161が形成されている。
【0051】
また、この実施例1における縦部材2"は、L字状ではなく、正面から見て略垂直状に配される縦面23が前後に備えられる略コ字状に形成されている。なお、該縦面23には、上方及び中程にそれぞれ予め取付孔231,232が形成されている。
【0052】
さらに、この実施例1における角度調整機構は、前記横部材1"に設けた縦部分17と縦部材2"との間に、ボルト状の調整具8を架け渡して連結し、ナット状部分8bを回動させて架け渡し間隔を調整する態様を採用している。
前記調整具8は、縦部材2"に一端を枢着させたボルト杆8aの他端にナット状部分8bと締着させた構成であって、該ナット状部分8bは縦部材2"の折り曲げ縦片17の奥側から取り付けられているので、該ナット状部分8bを締め付けることにより、架け渡し間隔が調整されて横部材1"と縦部材2"との拡開角度を調整することができる。
より具体的には、まず前記横部材1"の横部分16に設けた取付孔161と、前記縦部材2"の縦面23に設けた取付孔231とが連通するように両部材を組み付け、図示しない固定具にて回動自在に固定する。
次に、前記縦部材2"の縦面に設けた取付孔232に調整具8の先端を枢着させ、そのボルト杆8aを、前記横部材1"の折り曲げ縦片17に設けた挿通孔170に挿通させ、その奥端からナット状部分8bを螺合させる。
この状態でナット状部分8bを締め付けると、横部材1"(の縦片)と縦部材2"との架け渡し間隔が調整されるので、その拡開角度を容易に調整することができる。
【0053】
また、この実施例1では、前記軒樋4の荷重を受けて変形或いは下方への落下等を防止する補強材9を取り付けている。
この補強材9としては、略帯状の金属ベルト材を用い、その下端を軒樋4の軒先側の側面42に固定(図中9bは固着具)させると共にその上端を折板屋根板Aに固定(図中9cは固着具)させるようにしている。
【0054】
この実施例1の軒先構造でも、軒先納め材IIIを用い、折板屋根板Aの内部に位置される支持部材3"へ、前記横部材1"及び前記縦部材2"が取り付けられ、該縦部材2"に対して樋受け材6やカバー材7及び軒樋4が取り付けられた構成であるから、新築、既設を問わず各種の折板屋根に容易に且つ安定に各種の軒樋4を取り付けることができ、折板屋根板Aを流れる雨水等は、前述のように谷部に相当する面板部gを流れ方向に流下するので、図示するようにその水下端g1を下方へ折り曲げることでカバー材7や軒樋4へ雨水を円滑に導くことができる。
【0055】
また、この実施例1では、横部材1"に設けた縦部分と縦部材2"との間に、ボルト状の調整具8Aを架け渡して連結し、ナット状部分8bを回動させるだけで架け渡し間隔を調整できる角度調整機構を採用したので、任意の角度で配設でき、折板屋根板Aの各種の屋根勾配に容易に対応させることができる。
【0056】
さらに、この実施例1では、補強材9が軒樋4に生ずる荷重を受けるため、例えば多量の降雪が前記カバー材7の上面に堆積したり、軒樋4の内部に多量の雨水が流れることがあっても、該荷重によって軒樋4が変形したり或いは下方へ傾倒したり落下することを防止できる。
【0057】
図5に示す本発明の
実施例2の軒先納め材IVは、支持部材3°が、正面から見てU字状である点で前記支持部材3と共通するが、底面から立ち上げられた側面形状が相違するものであり、該支持部材3°には横部材1"及び縦部材2"が取り付けられる点では共通する。なお、タイトフレームDを介して躯体Fに固定される保持部材Hも、部材構成としては共通する。
【0058】
この実施例2の軒先納め材IVを用いた軒先構造は、前記実施例1と同様に補強材9'を取り付けている点では共通するが、この実施例2における補強材9'は、その上端が折板屋根板Aではなく、縦部材2"に固定(固着具9c)させている分だけ短く形成されている点で相違するが、それ以外の構成は殆ど前記実施例1と同様であるから図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
この軒先構造でも、前記実施例1と同様に補強材9'が軒樋4に生ずる荷重を受けるため、例えば多量の降雪が前記カバー材7の上面に堆積したり、軒樋4の内部に多量の雨水が流れることがあっても、該荷重によって軒樋4が変形したり或いは下方へ傾倒したり落下することを防止できる。
【符号の説明】
【0060】
I,II,III,IV 軒先納め材
1,1',1" 横部材
11 重合取付部
16 横部分
17 折り曲げ縦片
2,2" 縦部材
21 重合取付部
3,3',3",3° 支持部材
4 軒樋
41 底面部
42 (軒先側の)側面部
421 軒先端
43 (建築物側の)側面部
431 被支持部
432 側面上端(被取付部)
5 縦樋
6 樋受け材
62 支持部
63 取付部
7 カバー材
71 化粧面
711 導水口
712 排水溝
72 係合部
73 固定部
8 調整具
8a ボルト杆
8b ナット状部分
A 折板屋根板
B,H 保持部材
C,F 躯体
D タイトフレーム
g 面板部