IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シンクサイト株式会社の特許一覧

特許7566302フローサイトメータ、観測対象物判別方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】フローサイトメータ、観測対象物判別方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/1429 20240101AFI20241007BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20241007BHJP
   G01N 15/14 20240101ALI20241007BHJP
   G01N 15/1434 20240101ALI20241007BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20241007BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20241007BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G01N15/1429 200
G01N37/00 101
G01N15/14 C
G01N15/1434
G01N21/64 F
G01N21/49 Z
G01N21/05
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020116570
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014302
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-04-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517110494
【氏名又は名称】シンクサイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】今井 亨
(72)【発明者】
【氏名】安達 啓晃
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073737(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/145836(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/1492、21/00-21/01、21/03-21/15、21/17-21/61、21/62-21/74、37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象物が流体と共に流れ得る流路を備えるマイクロ流体装置と、
前記流路に照明光を照射する光源と、
前記流路を流れる前記観測対象物に照明光が照射されて前記観測対象物から発せられる信号光の強度を時系列に検出する光検出器と、
前記光源と前記光検出器との間の光路に設置されて、前記照明光または前記信号光のいずれかを構造化する空間光変調部と、
前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物の形状、形態、または構造のうちいずれか1以上を示す光学情報を生成するために前記流路に配置される光学情報生成位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第1信号光の強度に基づいて、前記観測対象物についての前記光学情報を生成する情報生成装置と、
前記流路の深さ方向の位置を制御する流路位置制御装置と、
前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物が前記流路を通過する際の前記流路の深さ方向についての位置である深さ方向位置を検出するために、前記流路において予め定められた位置であって前記流路において前記光学情報生成位置よりも上流側または下流側のいずれか一方の位置に配置される検出位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第2信号光の強度の時系列変化に基づいて、前記観測対象物についての前記深さ方向位置を検出する演算装置と、
を備え、
前記光学情報生成位置及び記検出位置が、前記光源と前記流路との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記照明光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光源は前記空間光変調部により構造化される前記照明光を前記流路に照射する、
または前記光学情報生成位置及び前記検出位置が、前記流路と前記光検出器との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記信号光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光検出器は前記信号光が構造化された信号光の強度を時系列に検出する
フローサイトメータであって、
前記演算装置は、
前記信号光のうち、前記検出位置において検出する前記第2信号光の強度の時間変化の電子データを取得する信号強度取得部と、
前記流路位置制御装置を介して前記流路を深さ方向に移動させて異なった深さ位置で前記電子データを取得するためのスキャン処理を行うスキャン部と、
前記電子データに基づいて前記深さ方向位置を算出する位置算出部と、
前記位置算出部が算出した前記深さ方向位置を示す位置情報を出力する出力部と、
前記情報生成装置が生成する前記光学情報に基づいて前記観測対象物を判別する判別部と、
を備え
前記流路位置制御装置は、前記出力部が出力する前記深さ方向位置を示す位置情報に基づいて、前記流路の深さ方向の位置を制御する
フローサイトメータ。
【請求項2】
前記演算装置は
記出力部が出力する前記位置情報が示す前記深さ方向位置が前記流路における深さ方向について所定の範囲内であるか否かを判定する位置判定
さらに備え、
前記判別部は、前記位置判定部の判定結果に基づいて、前記所定の範囲内を流れる前記観測対象物を判別対象とする
請求項1に記載のフローサイトメータ。
【請求項3】
前記判別部は、学習用の観測対象物と、前記学習用の観測対象物についての前記光学情報との関係が学習されることにより作成される推論モデルと、前記情報生成装置が生成する前記光学情報とに基づいて前記観測対象物を判別し、
前記学習用の観測対象物が前記所定の範囲内を流れる観測対象物である
請求項に記載のフローサイトメータ。
【請求項4】
観測対象物が流体と共に流れ得る流路を備えるマイクロ流体装置と、
前記流路に照明光を照射する光源と、
前記流路を流れる前記観測対象物に照明光が照射されて前記観測対象物から発せられる信号光の強度を時系列に検出する光検出器と、
前記光源と前記光検出器との間の光路に設置されて、前記照明光または前記信号光のいずれかを構造化する空間光変調部と、
前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物の形状、形態、または構造のうちいずれか1以上を示す光学情報を生成するために前記流路に配置される光学情報生成位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第1信号光の強度に基づいて、前記観測対象物についての前記光学情報を生成する情報生成装置と、
前記流路の深さ方向の位置を制御する流路位置制御装置と、
前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物が前記流路を通過する際の前記流路の深さ方向についての位置である深さ方向位置を検出するために、前記流路において予め定められた位置であって前記流路において前記光学情報生成位置よりも上流側または下流側のいずれか一方の位置に配置される検出位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第2信号光の強度の時系列変化に基づいて、前記観測対象物についての前記深さ方向位置を検出する演算装置と
を備え、
前記光学情報生成位置及び記検出位置が、前記光源と前記流路との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記照明光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光源は前記空間光変調部により構造化される前記照明光を前記流路に照射する、
または前記光学情報生成位置及び前記検出位置が、前記流路と前記光検出器との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記信号光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光検出器は前記信号光が構造化された信号光の強度を時系列に検出する
フローサイトメータにおいて、
前記観測対象物を判別するための観測対象物判別方法であって、
前記信号光のうち、前記検出位置において検出する前記第2信号光の強度の時間変化の電子データを取得する過程と、
前記流路位置制御装置を介して前記流路を深さ方向に移動させて異なった深さ位置で前記電子データを取得するためのスキャン処理を行う過程と、
前記電子データに基づいて前記深さ方向位置を算出する位置算出の過程と、
前記位置算出の過程において算出された前記深さ方向位置を示す位置情報を出力する出力過程と、
前記情報生成装置が生成する前記光学情報に基づいて前記観測対象物を判別する判別過程と、
前記流路位置制御装置が、前記出力過程が出力する前記深さ方向位置を示す位置情報に基づいて、前記流路の深さ方向の位置を制御する流路位置制御過程と、
を有する観測対象物判別方法。
【請求項5】
観測対象物が流体と共に流れ得る流路を備えるマイクロ流体装置と、
前記流路に照明光を照射する光源と、
前記流路を流れる前記観測対象物に照明光が照射されて前記観測対象物から発せられる信号光の強度を時系列に検出する光検出器と、
前記光源と前記光検出器との間の光路に設置されて、前記照明光または前記信号光のいずれかを構造化する空間光変調部と、
前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物の形状、形態、または構造のうちいずれか1以上を示す光学情報を生成するために前記流路に配置される光学情報生成位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第1信号光の強度に基づいて、前記観測対象物についての前記光学情報を生成する情報生成装置と、
前記流路の深さ方向の位置を制御する流路位置制御装置と、
前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物が前記流路を通過する際の前記流路の深さ方向についての位置である深さ方向位置を検出するために、前記流路において予め定められた位置であって前記流路において前記光学情報生成位置よりも上流側または下流側のいずれか一方の位置に配置される検出位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第2信号光の強度の時系列変化に基づいて、前記観測対象物についての前記深さ方向位置を検出する演算装置と
を備え、
前記光学情報生成位置及び記検出位置が、前記光源と前記流路との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記照明光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光源は前記空間光変調部により構造化される前記照明光を前記流路に照射する、
または前記光学情報生成位置及び前記検出位置が、前記流路と前記光検出器との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記信号光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光検出器は前記信号光が構造化された信号光の強度を時系列に検出する
フローサイトメータにおいて、
記演算装置に、
前記信号光のうち、前記検出位置において検出する前記第2信号光の強度の時間変化の電子データを取得するステップと、
前記流路位置制御装置を介して前記流路を深さ方向に移動させて異なった深さ位置で前記電子データを取得するためのスキャン処理を行うステップと、
前記電子データに基づいて前記深さ方向位置を算出する位置算出のステップと、
前記位置算出のステップにおいて算出された前記深さ方向位置を示す位置情報であって、前記流路位置制御装置が前記流路の深さ方向の位置を制御するための位置情報を出力する出力ステップと、
前記情報生成装置が生成する前記光学情報に基づいて前記観測対象物を判別する判別ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローサイトメータ、観測対象物判別方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、観測対象物を蛍光染色し、この蛍光輝度や散乱光の総量によって観測対象物の特徴を評価するフローサイトメトリー法や、このフローサイトメトリー法を用いたフローサイトメータが知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、こうした蛍光輝度や散乱光の総量など限定的な情報に基づく測定法では、細胞の形態情報や細胞内のオルガネラの形状等の二次元空間的な測定対象の特徴を捉え評価に利用することが困難であった。一方、観測対象物となる細胞・細菌等の微粒子を画像によって評価する蛍光顕微鏡やイメージングサイトメータが知られているが、こうしたイメージング装置は、撮像速度に限界があり、また高価でサイズも大きいという問題点があった。
【0003】
そこで、高速、高感度、低コストかつコンパクトなイメージング装置を提供するため、観測対象物が所定の照明パターンをもつ構造化された照明光によって照明され観測対象物が検出されるフローサイトメータやイメージングサイトメータが開発されている。この方法の一例として、例えば、ゴーストサイトメトリー技術が知られている(特許文献2)。ゴーストサイトメトリー技術では、流路中を移動する観測対象物にランダムに構造化された照明パターンを照射することにより、従来のフローサイトメータより高い解像度で観測対象物の形態情報を高速に取得できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-099848号公報
【文献】国際公開第2017/073737号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ランダムな構造化された照明パターンによる検出は、流線の位置ずれに対して特に敏感である。ここで流線の位置ずれとは、流路を流れる流体と共に流れる観測対象物の位置が構造化された照明パターンに対して流路の幅方向に相対的にずれること、または、観測対象物の位置が流路の深さ方向に相対的にずれることをいう。フローサイトメータのように観測対象物を流体と共に流して測定する測定方法では、観測対象物が流れる流線は流体の圧力変動などにより影響されるため、その挙動を精密に制御することは非常に難しい。そこでフローサイトメータにおける測定に際しては、観測開始時や観測途中において、流線の位置ずれを検知し、流線の位置ずれに対して流路の位置を補正することが求められている。特に、ランダムに構造化された照明光により観測対象物を照射して観測対象物から発せられる光を信号光として検出することで測定の精密化と高速化が実現されているフローサイトメータでは、流線の位置ずれをリアルタイムにモニターし、生じている流線の位置ずれを補正して測定を行うこと、あるいは流路の位置ずれを補正して流路の位置を修正することは、測定結果のばらつきを抑えデータの再現性を担保するために必要であった。なお本発明において問題にしている流線の位置ずれの程度は、例えば流路に照射される構造化照明パターンが流路の深さ方向にピクセルサイズ程度変化するずれである。本発明において問題にしている流線の位置ずれとは、流路上の構造化された検出位置のピクセルサイズ程度のずれであり、流線が流路の深さ方向に数マイクロメートル程度ずれることである。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、観測対象物の流路における深さ方向の通過位置を検出できるフローサイトメータ、流路における深さ方向位置算出の方法、及びプログラムを提供する。ここで本発明における流路の深さ方向とは、観測対象物が流れる流路において、流体が流れる長さ方向及び流路の幅方向と直交する方向である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、観測対象物が流体と共に流れ得る流路を備えるマイクロ流体装置と、前記流路に照明光を照射する光源と、前記流路を流れる前記観測対象物に照明光が照射されて前記観測対象物から発せられる信号光の強度を時系列に検出する光検出器と、前記光源と前記光検出器との間の光路に設置されて、前記照明光または前記信号光のいずれかを構造化する空間光変調部と、前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物の形状、形態、または構造のうちいずれか1以上を示す光学情報を生成するために前記流路に配置される光学情報生成位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第1信号光の強度に基づいて、前記観測対象物についての前記光学情報を生成する情報生成装置と、前記流路の深さ方向の位置を制御する流路位置制御装置と、前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物が前記流路を通過する際の前記流路の深さ方向についての位置である深さ方向位置を検出するために、前記流路において予め定められた位置であって前記流路において前記光学情報生成位置よりも上流側または下流側のいずれか一方の位置に配置される検出位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第2信号光の強度の時系列変化に基づいて、前記観測対象物についての前記深さ方向位置を検出する演算装置と、を備え、前記光学情報生成位置及び記検出位置が、前記光源と前記流路との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記照明光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光源は前記空間光変調部により構造化される前記照明光を前記流路に照射する、または前記光学情報生成位置及び前記検出位置が、前記流路と前記光検出器との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記信号光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光検出器は前記信号光が構造化された信号光の強度を時系列に検出するフローサイトメータであって、前記演算装置は、前記信号光のうち、前記検出位置において検出する前記第2信号光の強度の時間変化の電子データを取得する信号強度取得部と、前記流路位置制御装置を介して前記流路を深さ方向に移動させて異なった深さ位置で前記電子データを取得するためのスキャン処理を行うスキャン部と、前記電子データに基づいて前記深さ方向位置を算出する位置算出部と、前記位置算出部が算出した前記深さ方向位置を示す位置情報を出力する出力部と、前記情報生成装置が生成する前記光学情報に基づいて前記観測対象物を判別する判別部と、を備え、前記流路位置制御装置は、前記出力部が出力する前記深さ方向位置を示す位置情報に基づいて、前記流路の深さ方向の位置を制御するフローサイトメータである。
【0014】
また、本発明の一態様は、上記のフローサイトメータにおいて、前記演算装置は、前記出力部が出力する前記位置情報が示す前記深さ方向位置が前記流路における深さ方向について所定の範囲内であるか否かを判定する位置判定部をさらに備え、前記判別部は、前記位置判定部の判定結果に基づいて、前記所定の範囲内を流れる前記観測対象物を判別対象とする。
【0015】
また、本発明の一態様は、上記のフローサイトメータにおいて、前記判別部は、学習用の観測対象物と、前記学習用の観測対象物についての前記光学情報との関係が学習されることにより作成される推論モデルと、前記情報生成装置が生成する前記光学情報とに基づいて前記観測対象物を判別し、前記学習用の観測対象物が前記所定の範囲内を流れる観測対象物である。
【0016】
また、本発明の一態様は、観測対象物が流体と共に流れ得る流路を備えるマイクロ流体装置と、前記流路に照明光を照射する光源と、前記流路を流れる前記観測対象物に照明光が照射されて前記観測対象物から発せられる信号光の強度を時系列に検出する光検出器と、前記光源と前記光検出器との間の光路に設置されて、前記照明光または前記信号光のいずれかを構造化する空間光変調部と、前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物の形状、形態、または構造のうちいずれか1以上を示す光学情報を生成するために前記流路に配置される光学情報生成位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第1信号光の強度に基づいて、前記観測対象物についての前記光学情報を生成する情報生成装置と、前記流路の深さ方向の位置を制御する流路位置制御装置と、前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物が前記流路を通過する際の前記流路の深さ方向についての位置である深さ方向位置を検出するために、前記流路において予め定められた位置であって前記流路において前記光学情報生成位置よりも上流側または下流側のいずれか一方の位置に配置される検出位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第2信号光の強度の時系列変化に基づいて、前記観測対象物についての前記深さ方向位置を検出する演算装置とを備え、前記光学情報生成位置及び記検出位置が、前記光源と前記流路との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記照明光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光源は前記空間光変調部により構造化される前記照明光を前記流路に照射する、または前記光学情報生成位置及び前記検出位置が、前記流路と前記光検出器との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記信号光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光検出器は前記信号光が構造化された信号光の強度を時系列に検出するフローサイトメータにおいて、前記観測対象物を判別するための観測対象物判別方法であって、前記信号光のうち、前記検出位置において検出する前記第2信号光の強度の時間変化の電子データを取得する過程と、前記流路位置制御装置を介して前記流路を深さ方向に移動させて異なった深さ位置で前記電子データを取得するためのスキャン処理を行う過程と、前記電子データに基づいて前記深さ方向位置を算出する位置算出の過程と、前記位置算出の過程において算出された前記深さ方向位置を示す位置情報を出力する出力過程と、前記情報生成装置が生成する前記光学情報に基づいて前記観測対象物を判別する判別過程と、前記流路位置制御装置が、前記出力過程が出力する前記深さ方向位置を示す位置情報に基づいて、前記流路の深さ方向の位置を制御する流路位置制御過程と、を有する観測対象物判別方法である。
【0017】
また、本発明の一態様は、観測対象物が流体と共に流れ得る流路を備えるマイクロ流体装置と、前記流路に照明光を照射する光源と、前記流路を流れる前記観測対象物に照明光が照射されて前記観測対象物から発せられる信号光の強度を時系列に検出する光検出器と、前記光源と前記光検出器との間の光路に設置されて、前記照明光または前記信号光のいずれかを構造化する空間光変調部と、前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物の形状、形態、または構造のうちいずれか1以上を示す光学情報を生成するために前記流路に配置される光学情報生成位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第1信号光の強度に基づいて、前記観測対象物についての前記光学情報を生成する情報生成装置と、前記流路の深さ方向の位置を制御する流路位置制御装置と、前記光検出器が検出する前記信号光のうち、前記観測対象物が前記流路を通過する際の前記流路の深さ方向についての位置である深さ方向位置を検出するために、前記流路において予め定められた位置であって前記流路において前記光学情報生成位置よりも上流側または下流側のいずれか一方の位置に配置される検出位置を前記観測対象物が通過する際に、前記観測対象物から発せられる第2信号光の強度の時系列変化に基づいて、前記観測対象物についての前記深さ方向位置を検出する演算装置とを備え、前記光学情報生成位置及び記検出位置が、前記光源と前記流路との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記照明光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光源は前記空間光変調部により構造化される前記照明光を前記流路に照射する、または前記光学情報生成位置及び前記検出位置が、前記流路と前記光検出器との間の光路に配置される前記空間光変調部により構造化される前記信号光により前記流路において同時に配置され、かつ前記光検出器は前記信号光が構造化された信号光の強度を時系列に検出するフローサイトメータにおいて、前記演算装置に、前記信号光のうち、前記検出位置において検出する前記第2信号光の強度の時間変化の電子データを取得するステップと、前記流路位置制御装置を介して前記流路を深さ方向に移動させて異なった深さ位置で前記電子データを取得するためのスキャン処理を行うステップと、前記電子データに基づいて前記深さ方向位置を算出する位置算出のステップと、前記位置算出のステップにおいて算出された前記深さ方向位置を示す位置情報であって、前記流路位置制御装置が前記流路の深さ方向の位置を制御するための位置情報を出力する出力ステップと、前記情報生成装置が生成する前記光学情報に基づいて前記観測対象物を判別する判別ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、観測対象物の流路における深さ方向の通過位置を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係るフローサイトメータの一例を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る空間光変調部の一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るキャリブレーションパターンの正面図の一例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るキャリブレーションパターンの側面図の一例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係るキャリブレーションパターンと光検出用光学系を構成する結像レンズとの位置関係の側面図の一例を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る信号光の強度の時間変化を示す計測信号の一例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る深さ方向位置と信号光の強度の指標との関係の一例を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る演算装置の構成の一例を示す図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る位置算出処理の一例を示す図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係るキャリブレーションパターンの正面図の一例を示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係るキャリブレーションパターンの側面図の一例を示す図である。
図12】本発明の第2の実施形態に係る信号光の強度の時間変化を示す計測信号の一例を示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係るピーク値比率と深さ方向位置との関係、及び幅比率と深さ方向位置との関係の一例を示す図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係る位置算出処理の一例を示す図である。
図15】本発明の第3の実施形態に係るキャリブレーションパターンの側面図の一例を示す図である。
図16】本発明の第4の実施形態に係るマスクの配置の側面図の一例を示す図である。
図17】本発明の第4の実施形態に係るマスクの正面図の一例を示す図である。
図18】本発明の第4の実施形態に係るマスクの側面図の一例を示す図である。
図19】本発明の第5の実施形態に係るマスクの配置の側面図の一例を示す図である。
図20】本発明の第5の実施形態に係るマスクの正面図の一例を示す図である。
図21】本発明の第5の実施形態に係るマスクの側面図の一例を示す図である。
図22】本発明の第6の実施形態に係る演算装置の構成の一例を示す図である。
図23】本発明の第6の実施形態に係る領域の一例を示す図である。
図24】本発明の第6の実施形態に係る学習用の細胞の領域の一例を示す図である。
図25】本発明の第6の実施形態に係る細胞判別処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係るフローサイトメータ1の一例を示す図である。フローサイトメータとは、観測対象物が流体と共に流れ得る流路を備えるマイクロ流体装置と、流路に照明光を照射する光源と、流路を流れる観測対象物に照明光が照射されて観測対象物から発せられる信号光を検出する光検出器とを少なくとも備える測定機器であり、流路を流体とともに流れる観測対象物は流路内を移動しながら光学的に測定される。本実施形態に係るフローサイトメータ1は、マイクロ流体装置2と、光源3と、空間光変調部4と、光検出用光学系5と、光検出器6、DAQ(Data Acquisition)デバイス7と、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)8とを備える。
【0021】
マイクロ流体装置2は、細胞Cが流体と共に流れ得る流路20を備える。流路20を流れる流体の流速は、流す細胞Cの種類や個体差によらず一定の流速である。また、マイクロ流体装置2は、流路20に複数の細胞を逐次流すが、流路20の照明光の照射位置を一度に通過する細胞の個数は1個である。細胞Cは、観測対象物の一例である。なお、観測対象物は、細胞Cに限られず、他の例として微粒子などであってもよい。
【0022】
ここで図1には、3次元直交座標系として、xyz座標系を示す。本実施形態において、x軸方向は、流路20の幅方向である。また、y軸方向は、流路20の長さ方向である。z軸方向は、流路20と直交する方向であって、流路20の深さ方向である。流路20内の流体の流れは、y軸方向の+y方向に細胞Cを移動させる。すなわち、流路20の長さ方向は流路20を流体の流れとともに細胞Cが移動する方向である。また、流路20の幅方向は、換言すれば、流路に照射される照明光の光軸と、流体が流れる長さ方向との両方に垂直な方向と表現できる。
【0023】
光源3、及び空間光変調部4は、構造化照明として機能する。この構造化照明は、以下で説明するように流路20に対して構造化照明光SLEを照射する。
光源3から発せられた照明光LEは、空間光変調部4を通じて構造化された構造化照明光SLEに変換され、流路20の照射位置に照射される。照明光LEは空間光変調部4により光源3が発する照明光LEは、コヒーレント光であっても、インコヒーレント光であってもよい。本実施形態では、光源3が発する照明光LEは、一例として、コヒーレント光である。
【0024】
空間光変調部4は、光源3と、光検出器6との間の光路上に配置される。本実施形態では、空間光変調部4は、光源3と流路20との間の光路上に配置される。この配置の構成を、構造化照明の構成とも記載する。光源3から照射される照明光LEは空間光変調部4によって構造化され、構造化照明光SLEが流路20に照射される。ここで構造化照明は、流路20の照射位置において、構造化照明光SLEを構造化照明パターン21として結像させる。図1では、照射位置に結像する構造化照明パターン21が配置される焦点面が焦点面FP1として示されている。
【0025】
本実施形態における構造化照明パターン21には、光学情報生成パターンと、キャリブレーションパターンCPとが含まれる。光学情報生成パターンは、観測対象物である細胞Cの形態情報を示す光学情報ICを生成するため流路20に照射されるパターンである。細胞Cの形態情報とは、細胞Cの形状、形態、または構造のうちいずれか1以上である。キャリブレーションパターンCPは、観測対象物である細胞Cが流路20において通過する深さ方向位置PPを検出するための検出位置に配置されるパターンである。深さ方向位置PPとは、細胞Cが流路20を通過する際の位置のうち流路20の深さ方向についての位置であり、観測対象物である細胞Cが流路20において通過する位置のうち深さ方向についてのずれを示す位置である。本実施形態では、流路20における深さの方向は光検出用光学系5の光軸OXの方向と一致しており、z軸の方向である。なお、以降この光検出用光学系5の光軸OXの方向を単に光軸OXの方向と呼ぶことがある。
【0026】
上述したように、本実施形態では、キャリブレーションパターンCPは、構造化照明光SLEが流路20において結像される構造化照明パターン21に含まれる。光源3、及び空間光変調部4によって構成される構造化照明は、光検出器6が深さ方向位置PPを検出するための複数の検出位置を構造化された光によってそれぞれ照明する照明光学系の一例である。光検出器6が深さ方向位置PPを検出するためのキャリブレーションパターンCPを照明する光と、観測対象物である細胞Cの形態情報を示す光学情報ICを生成するための照明に用いられる光とには、構造化された共通の光が用いられる。
【0027】
以下の説明では、観測対象物である細胞Cの深さ方向位置PPを検出するため流路20においてキャリブレーションパターンCPが配置される位置を、検出位置ともいう。キャリブレーションパターンCPの詳細については後述する。
【0028】
ここで図2を参照し、空間光変調部4について説明する。図2は、本実施形態に係る空間光変調部4の一例を示す図である。空間光変調部4は、空間光変調器40と、第1レンズ41と、空間フィルター42と、第2レンズ43と、対物レンズ44とを備える。空間光変調部4において、空間光変調器40と、第1レンズ41と、空間フィルター42と、第2レンズ43と、対物レンズ44とは、光源3に近い側からこの順に光源3と光検出器6との間の光路上に配置される。
【0029】
空間光変調器40は、入射光を構造化する。入射光を構造化するとは、入射光の入射面に含まれる複数の領域ごとに入射光の光特性を変化させることである。空間光変調器40は、照明光LEを構造化し、構造化照明光SLEに変換する。空間光変調器40は、入射される光の空間的な分布を変化させ入射光の光特性を変化させる光学素子で、光照射のパターンを制御して光を照射することを可能にする。空間光変調器40の光が入射する面は、複数の領域を有しており、照明光LEの光特性は通過する複数の領域でそれぞれ個別に変換される。すなわち、空間光変調器40を透過した光では、入射光の光特性に対して、透過光の光特性が複数の領域で互いに異なるように変化している。入射光の光特性とは、例えば、強度、波長、位相、及び偏光状態のいずれか1つ以上に関する特性である。なお、光特性は、これらに限定されない。空間光変調器40は、例えば、回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)、デジタルミラーデバイス(DMD:Digital Micromirror Device)や、光特性が異なる複数の領域が表面に印刷されるフィルムなどが含まれる。なお、光源3が発する照明光LEがインコヒーレント光である場合、空間光変調器40は、DMDである。
【0030】
本実施形態では、空間光変調器40は、一例として、形成された微細形状によって光の回折現象を制御する光学素子であるDOEである。ここで光とは、照明光LEである。以下の説明では、空間光変調器40の光を透過させる領域を透過領域と記載する。
【0031】
以下の説明では、流路20における構造化照明光SLEが照射される位置のことを、照射位置とも記載する。本実施形態では、照射位置は、空間光変調器40の透過領域に対応する。この空間光変調器40の透過領域の形状及び大きさは、空間光変調器40が有する透過領域について共通である。透過領域の形状は、一例として、正方形である。この正方形は、空間光変調器40が有する透過領域では等しい長さの1辺をもつ。照射位置を通過した細胞Cは、構造化照明光SLEによって蛍光分子が励起されることにより発光する。この発光による蛍光は、流路20を流れる細胞Cに構造化照明光SLEが照射されて細胞Cから発せられる信号光LSの一例である。信号光LSの別の例には、構造化照明光SLEが細胞Cを透過した透過光、構造化照明光SLEが細胞Cによって散乱された散乱光、構造化照明光SLEと他の光との干渉光が含まれる。
【0032】
なお、空間光変調器40の透過領域の形状及び大きさは、透過領域内で統一されていれば形状は正方形に限らず、大きさも自由に変えられる。透過領域の形状は、例えば他の多角形や円などであってもよい。
【0033】
第1レンズ41は、空間光変調器40を透過した構造化照明光SLEを空間フィルター42に集光する。
空間フィルター42は、第1レンズ41によって集光された構造化照明光SLEを、空間的に変化する雑音に相当する成分を除去することによって、構造化照明光SLEの強度分布をガウス分布に近づける。
第2レンズ43は、空間フィルター42によって雑音が除去された構造化照明光SLEを平行光にする。
対物レンズ44は、第2レンズ43によって平行光にされた構造化照明光SLEを集光し、流路20の照射位置に合焦させる。
なお、対物レンズ44は、ドライ対物レンズあっても、液浸対物レンズであってもよい。液浸対物レンズとは、油浸レンズや、水浸レンズなどである。
【0034】
図1に戻ってフローサイトメータ1の構成の説明を続ける。
光検出用光学系5は、細胞Cからの信号光LSを光検出器6に集光させるための光学的な仕組みであり、結像レンズ50(不図示)を構成に含む。細胞Cからの信号光LSは、蛍光や、透過光、散乱光、干渉光である。結像レンズ50は細胞Cからの信号光LSを光検出器6の位置に集光する。なお、結像レンズ50は、細胞Cからの信号光LSを光検出器6の位置に集光しさえすれば結像させなくてもよいが、信号光LSを光検出器6の位置に結像させる位置に配置されるのがより好ましい。また、光検出用光学系5は、さらにダイクロイックミラーや波長選択的なフィルターを備えてもよい。
【0035】
光検出器6は、結像レンズ50によって集光された信号光LSを検出する。ここで光検出器6は、信号光LSを検出して電気信号に変換する。光検出器6は、一例として、光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)である。光検出器6は、結像レンズ50によって集光された信号光LSの強度を時系列に検出する。上述したように信号光LSは、流路20を流れる細胞Cに構造化照明光SLEが照射されて細胞Cから発せられる。つまり、光検出器6は、流路20を流れる細胞Cに構造化照明光SLEが照射されて細胞Cから発せられる信号光LSの強度を時系列に検出する。光検出器6は、単一の受光素子で構成されるシングルセンサーであってもよいし、複数の受光素子で構成されるマルチセンサーであってもよい。
【0036】
DAQデバイス7は、光検出器6が出力する電気信号パルスを、パルス毎に電子データに変換する。電子データには、時間と、電気信号パルスの強度との組が含まれる。DAQデバイス7は、一例として、オシロスコープである。
【0037】
本実施形態で、PC8は情報生成装置と演算装置との機能を備える。情報生成装置として、PC8は、DAQデバイス7から出力される電子データに基づいて、細胞Cの形態に関する光学情報ICを生成する。光学情報ICは細胞の形態情報を示す光学情報である。PC8は、さらに生成した光学情報ICを記憶する。以下の説明では、PC8が生成した光学情報ICを記憶する処理をレコーディングとも記載する。PC8は、情報生成装置の一例である。
【0038】
本実施形態では構造化照明の構成により流路20を通過する細胞Cが照射され、細胞Cからの信号光LSが光検出器6により検出される。光学情報ICは、本実施形態では、この細胞Cからの信号光LSの強度の時系列変化を波形として示す情報である。この波形と細胞Cの形態とは対応しており、光学情報ICは細胞Cを識別するために用いることができる。光学情報ICは、例えば機械学習において、細胞Cの形態と波形信号との関係を学習するための教師データとして用いられ、得られた推論モデルを用いて推論時に測定した波形信号から細胞Cの識別が行われる。
【0039】
本実施形態では、構造化照明の構成により光源3とマイクロ流体装置2との間に設置される空間光変調部4により照明光を構造化照明に変換する構造化処理が施されている。構造化照明はマイクロ流体装置2に含まれる流路20に照射され、観測対象物(細胞C)が発する信号光LSを光検出器6で検出し細胞Cを識別する光学情報ICが取得される。前記のように空間光変調部による光の構造化を経て細胞Cを識別する光学情報を取得することを、以降の説明では空間光変調部による構造化処理を経て光学情報が取得されるあるいは生成されるとも記載する。本実施形態は、空間光変調部4による構造化処理が構造化照明の構成により照明光LEを構造化照明光SLEに変換する処理として施されている。また、PC8は、光検出器6が検出する信号光LSの強度に基づいて観測対象物の形態情報を示す光学情報ICを生成する情報生成装置の一例として記載されている。
【0040】
またPC8は、演算装置として、深さ方向位置PPを検出する検出位置において検出される信号光LSの強度の時間変化のパラメータに基づいて細胞Cが流路を移動する際に通過する深さ方向位置PPを算出する。ここで前記検出位置は、流路内を通過する細胞Cの深さ方向位置PPを検出するためキャリブレーションパターンCPの照明が流路に照射される位置であり、キャリブレーションパターンCPの照射により細胞Cから発せられる信号光LSは光検出用光学系5を介し光検出器6で検出される。本実施形態では、キャリブレーションパターンCPの照明は光学情報ICを取得するための構造化照明に含まれて構造化照明パターン21として流路20に照射される。PC8は、演算装置の一例であり、検出される信号光LSの強度の時間変化に基づいて細胞Cの深さ方向位置PPを算出する。
【0041】
流路位置制御装置9は、流路20の深さ方向の位置を制御する。本実施形態では、光軸OXの方向と、流路20の深さ方向とは一致している。図1に示す例では、流路20の深さ方向は、z軸の方向である。流路位置制御装置9は、一例として、流路20が載置されるピエゾステージを駆動するドライバである。流路位置制御装置9により流路20を光軸OX方向に移動させ、流路20の光軸方向の様々な位置において信号光LSの強度の時間変化のシグナルを連続的に取得して深さ方向位置PPが算出される。さらに流路位置制御装置9は、PC8が算出した細胞Cの深さ方向位置PPに基づいて、細胞Cが移動する流線FXの流路の深さ方向の位置ずれに対してフィードバック制御を行なう。
【0042】
[キャリブレーションパターン]
上述したように、本実施形態では、流路20において細胞Cが流路を移動する際に通過する深さ方向(図1のz軸の方向)の位置である深さ方向位置PPを検出するために、流路20の予め定められた位置にキャリブレーションパターンCPが配置される。
ここで図3から図5を参照し、本実施形態に係るキャリブレーションパターンCP1について説明する。図3は、流路20に照射されるキャリブレーションパターンCP1の正面図の一例を示す図である。正面図とは、キャリブレーションパターンCP1を光軸OXの方向(z軸方向)からみた場合の図である。図4は、流路20に照射されるキャリブレーションパターンCP1の側面図の一例を示す図である。側面図とは、キャリブレーションパターンCP1を水平方向HX(x軸方向)からみた場合の図である。図5は、本実施形態に係るキャリブレーションパターンCP1と光検出用光学系5(不図示)を構成する結像レンズ50との位置関係の側面図の一例を示す図である。
【0043】
本実施形態では、上述したようにキャリブレーションパターンCP1は、流路20に照射される構造化照明パターン21に含まれ、流路20において構造化照明パターン21の一部として結像される。図3に示すように、キャリブレーションパターンCP1は、光軸OXの方向(z軸方向)からみると水平方向HX(x軸方向)に平行な直線上のパターンとして流路20に照射される。なお、図3には構造化照明パターン21に含まれる光学情報生成パターンの位置は示されていない。
【0044】
図4では、水平方向HX(x軸方向)からみた場合のキャリブレーションパターンCP1の位置が示されている。キャリブレーションパターンCP1は水平方向HXから見ると焦点面FP1上で結像しており、図4では簡単のために円で示されている。焦点面FP1とは、流路20においてキャリブレーションパターンCP1が結像される焦点面である。図4では、流路20を流線FX2に沿って移動する細胞C2の深さ方向位置PPである位置P2にキャリブレーションパターンCP1が結像している。なお、同様に図4には構造化照明パターン21に含まれる光学情報生成パターンの位置は示されていない。
【0045】
図4及び図5は、水平方向HX(x軸方向)から流路20を見た場合の図であり、細胞Cが検出位置付近を通過する場合に、いずれの深さの位置を通過するかを3通りの例で示している。細胞Cは流れる流体の流線に沿って流路20を移動するが、細胞C1、細胞C2、細胞C3は、それぞれ検出位置付近において深さ方向位置PPが異なる位置P1、位置P2、位置P3を通過する流線(それぞれ流線FX1、流線FX2、流線FX3)により移動する細胞Cである。図4では位置P2に、キャリブレーションパターンCP1が流路内で結像し、位置P1は、位置P2よりも結像レンズ50から遠い位置(即ち、光軸OX方向に流路の浅い位置)となる。位置P3は、位置P2よりも結像レンズ50に近い位置(即ち、光軸OX方向に流路の深い位置)となる。本実施形態では、簡単のため、位置P2は位置P1と位置P3との中間にあるとして説明する。
【0046】
なお、本実施形態では、キャリブレーションパターンCPは、一例として流線FXで示される流路の方向(y軸方向)について光学情報生成パターン(不図示)よりも流線FXの上流側に配置されているが、光学情報生成パターンよりも流線FXの下流側に配置されてもよい。
【0047】
[信号光と深さ方向位置との関係]
ここで図6及び図7を参照し、信号光LSと深さ方向位置PPとの関係について説明する。図6は、本実施形態に係る信号光LSの強度の時間変化を示す計測信号SGの一例を示す図である。なお、信号光LSの強度の時間変化を波形として示した電子データを計測信号SGという。図6(A)は、流線FX3に沿って流路20内を移動し、位置P3を通過した細胞C3の場合の計測信号SG3を示す。図6(B)は、流線FX2に沿って流路20内を移動し、位置P2を通過した細胞C2の場合の計測信号SG2を示す。図6(C)は、流線FX1に沿って流路20内を移動し、位置P1を通過した細胞C1の場合の計測信号SG1を示す。
【0048】
本実施形態では深さ方向位置の算出に用いられる信号光LSの強度の指標として計測信号のピーク値およびピーク幅が用いられる例について説明する。計測信号のピーク値とは、計測信号の振幅の大きさの最大値である。計測信号のピーク幅とは、例えば、半値幅(FWHM:full width half maximum)などシグナル振幅が所定の閾値以上となる時間幅である。計測信号のピーク幅は、カーブフィッティングをして得られる計測信号の時間方向の広がりを示す特徴量(例えば、ガウシアンカーブフィッティングにおける分散)などであってもよい。なお、信号光LSの強度の指標としてピークの面積(ピークエリア)など他の指標を用いることもできる。なお以下の説明では、深さ方向位置の算出に用いられる信号光LSの強度の指標をパラメータとも記載する。
【0049】
計測信号SG3のピーク値H3は、計測信号SG2のピーク値H2よりも小さい。一方、計測信号SG3の幅W3は、計測信号SG2の幅W2よりも広い。計測信号SG1の形状と、計測信号SG3の形状とは同じであり、計測信号SG1のピーク値H1は計測信号SG3のピーク値H3と等しく、計測信号SG1の幅W1は計測信号SG3の幅W3と等しい。
以下の説明においては、計測信号SGのピーク値と幅とをまとめて、計測信号SGのプロファイルという場合がある。
【0050】
計測信号SG1、計測信号SG2、及び計測信号SG3のプロファイルに含まれる値の大きさと、細胞Cの深さ方向位置PPとの関係を図7に示す。図7は、本実施形態に係る深さ方向位置PPと計測信号SGのプロファイルに含まれる値の大きさとの関係の一例を示す図である。図7では、計測信号SGのプロファイルに含まれる値がピーク値、及び幅である場合の一例が示されている。細胞Cの深さ方向位置PPが、深さ方向において、キャリブレーションパターンCPが流路内で結像する位置である位置P2から離れるほど、細胞Cの深さ方向位置PPが位置P2と一致している場合に比べて、計測信号SGのピーク値は小さくなり、幅は広くなる。
【0051】
計測信号SGのピーク値が最大となりかつ幅が最小となる深さ方向位置PPが、流路20においてキャリブレーションパターンCPが結像する位置P2に対応する。図5の例では、深さ方向位置PPが位置P2の位置にキャリブレーションパターンCP1が結像している。したがって、計測信号SGのピーク値の最大値との差、及び/または幅の最小値との差を検出することによって、細胞Cが流れる流線の位置P2からの深さ方向の位置ずれを検出できる。流線の深さ方向の位置ずれとは、流路を流れる流体と共に流れる観測対象物の流路20における通過位置が深さ方向位置PPの方向に相対的にずれることであり、本実施形態では同時に光検出用光学系の光軸OX方向に相対的にずれることである。
【0052】
また、流路20において観測対象物が流れる位置の光軸OX方向の位置ずれは、計測信号SGのピーク値とピーク幅の二つのパラメータを使って演算をした結果得られる新たなパラメータを使って検出してもよい。例えば、ピーク値に幅の逆数をかけた値を、新たなパラメータとして使用する。この場合、この新たなパラメータが最大値となる深さ方向位置PPが流路20においてキャリブレーションパターンの照射光が結像する深さ方向の位置に対応し、その位置(図5では位置P2)を通過する流線FXに沿って移動する細胞Cから発せられる信号光LSの計測信号SGが最もピーク値が大きく幅が狭いシャープな形状になる。この新たなパラメータの最大値との差を検出することによって、流線の光軸OX方向の位置ずれを検出できる。さらに、二つのパラメータのうちいずれか一方、またはそれらの組み合わせと、二つのパラメータを使って演算をした得られる新たなパラメータとを組み合わせて流線の光軸OX方向の位置ずれを検出してもよい。
【0053】
以上のように、細胞Cが通過する流路20に構造化照明光SLEを照射し、構造化照明光SLEに含まれるキャリブレーションパターンCPの照射により細胞Cから発せられる信号光LSを光検出器で検出することで、細胞Cの光学情報ICと同時に細胞Cの深さ方向位置PPを算出することができる。その際、構造化照明光SLEに含まれる細胞Cの深さ方向位置PPを検出するためのキャリブレーションパターンCPは、流路20内の焦点面FP1で結像される。キャリブレーションパターンCP1は、流路20内の流線FXに沿ってある深さ方向位置を移動する細胞Cに照射され、細胞Cが流路20を通過する際の流路の深さ方向の位置である深さ方向位置PPを検出するための検出位置として機能する。本明細書中では、このように流路20を通過する細胞CにキャリブレーションパターンCPを照射し、細胞Cからの信号光LSの強度の時間変化を波形として示す計測信号SGのピーク値や幅等のパラメータを用いて細胞Cの深さ方向位置PPを算出することを、流路20に深さ方向位置PPを検出するための検出位置を予め定められた位置に設置し、その検出位置において検出する信号光LSの強度の時間変化のパラメータに基づいて流路内を細胞Cが通過する深さ方向位置を算出するとも表現する。
【0054】
[演算装置]
ここで図8を参照し、検出位置において検出する信号光LSの強度の時間変化のパラメータに基づいて細胞Cの深さ方向位置PPを算出する演算装置10の構成について説明する。図8は、本実施形態に係る演算装置10の構成の一例を示す図である。本実施形態では、演算装置10は、PC8の機能として実現される。
【0055】
演算装置10は、制御部11を備える。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)や、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)などを備えており、種々の演算や情報の授受を行う。制御部11は、信号強度取得部110と、位置算出部111と、出力部112と、スキャン部113とを備える。信号強度取得部110と、位置算出部111と、出力部112と、スキャン部113とはそれぞれ、例えばCPUがROM(Read Only Memory)からプログラムを読み込んで処理を実行することにより実現されるモジュールである。
【0056】
信号強度取得部110は、DAQデバイス7から出力される電子データDを取得する。電子データDは、光検出器6がキャリブレーションパターンCPにおいて検出する信号光LSの強度の時間変化である計測信号SGの電子データである。以下の説明では、電子データDを取得することを、シグナルを取得するとも記載する。
位置算出部111は、信号強度取得部110が取得する電子データDに基づいて細胞Cの深さ方向位置PPを算出する。
出力部112は、位置算出部111が算出した深さ方向位置PPを示す位置情報IPを流路位置制御装置9に出力する。
【0057】
スキャン部113は、深さ方向位置PPを算出するためのスキャン処理を行う。このスキャン処理とは、流路位置制御装置9を介して流路20を光軸OX方向に移動させ、流路20の光軸方向の様々な位置において連続的にシグナルを取得する処理である。なお、光軸OX方向とは、本実施形態では、流路20の深さ方向であり、シグナルを取得するとは計測信号SGの電子データDを取得することである。
【0058】
[演算装置の位置算出処理]
次に図9を参照し、演算装置10の位置算出処理について説明する。図9は、本実施形態に係る位置算出処理の一例を示す図である。演算装置10は、以降に説明する位置算出処理の各ステップを流路20に細胞Cが流され始めてから所定の周期ごとに実行する。所定の周期とは、例えば10分間などの一定の時間の周期である。また、演算装置10は、所定の周期に代えて、細胞Cが所定の個数だけ流路20を流れる度に位置算出処理を実行してもよい。所定の個数とは、例えば1000個である。これら所定の周期や所定の個数は、流路20を流れる流体の流速に応じて設定されてよい。
【0059】
ステップS10:スキャン部113は、流路20の光軸OX方向のある所定の位置をスキャン位置として設定する。スキャン部113は、スキャン位置を設定すると、流路位置制御装置9を介して流路20の光軸方向の位置を設定したスキャン位置に移動する。スキャン部113は、流路20を光軸OX方向についてスキャン位置に移動させる処理が完了すると、処理が完了したことを示す信号を信号強度取得部110に供給する。
【0060】
スキャン部113は、位置算出処理が開始されて初めて実行されるステップS10において、スキャン位置を流路20が現在設定されている光軸OX方向の位置に設定する。スキャン部113は、2回目以降のステップS10において、スキャン位置を前回のスキャン位置から所定の距離だけ変化させる。スキャン部113は、例えば、スキャン位置を前回のスキャン位置から所定の距離だけ増加させる。所定の距離とは、例えば、5マイクロメートル程度の距離である。スキャン部113は、前回のスキャン処理から前記距離だけスキャン位置を光軸方向に移動させて次回のシグナル取得を行う。
スキャン部113は、スキャン位置が流路20の光軸OX方向の位置について設定された最も高い位置に達した場合、例えば、次回のスキャン位置を流路20の光軸OX方向の位置について設定された最も低い位置に設定する。これにより、スキャン開始位置から高い位置と低い位置の両方の方向についてスキャン処理してシグナル取得を行うことができる。
【0061】
なお、スキャン部113は、2回目以降のステップS10において、スキャン位置を前回のスキャン位置から所定の距離だけ減少させてもよい。
スキャン部113は、位置算出処理が開始されて初めて実行されるステップS10において、スキャン位置を流路20の光軸OX方向の位置について設定可能な最も高い位置、または最も低い位置に設定してもよい。
【0062】
ステップS20:信号強度取得部110は、流路20を光軸OX方向についてスキャン位置に移動させる処理が完了すると、DAQデバイス7から出力されるシグナルを取得する。つまり、信号強度取得部110は、計測信号SGの電子データDを取得する。信号強度取得部110は、取得した電子データDを位置算出部111に供給する。
【0063】
ステップS30:ステップS20においてシグナルの取得が終了すると、スキャン部113は、スキャン処理が完了したか否かを判定する。スキャン部113は、スキャン処理が完了したと判定する場合(ステップS30;YES)、流路位置制御装置9を介して流路20の光軸OX方向の位置を、スキャン処理を開始する前の位置に戻す。その後、制御部11は、ステップS40の処理を実行する。
一方、スキャン部113が、スキャン処理が完了していないと判定する場合(ステップS30;NO)、制御部11は、ステップS10に戻り、スキャン位置を変更しシグナル取得のステップを再度実行する。なおスキャン処理におけるシグナル取得は予め設定される回数だけ行われる。予め設定される回数とは例えば5回程度の回数である。
【0064】
ステップS40:位置算出部111は、スキャン処理において信号強度取得部110が取得する電子データDに基づいて細胞Cの深さ方向位置PPを算出する。位置算出部111は、算出した深さ方向位置PPを示す位置情報IPを出力部112に供給する。信号強度取得部110は、信号光強度の経時的な波形を示す電子データとして、1個の細胞Cについて1つの計測信号SGを生成する。
【0065】
位置算出部111は、電子データDに基づいて、計測信号SGのピーク値が最大となる深さ方向位置PPにおける計測信号SGのピーク値と、流路20の光軸方向の現在の位置において得られた計測信号SGのピーク値とを比較する。また、位置算出部111は、電子データDに基づいて、計測信号SGの幅が最小となる深さ方向位置PPにおける計測信号SGの幅と、流路20の深さ方向の現在の位置において得られた計測信号SGの幅とを比較する。
【0066】
位置算出部111は、それらの比較結果に基づいて、流路20においてキャリブレーションパターンCPが結像する位置P2に対する相対位置として、細胞Cの深さ方向位置PPを算出する。ここで上述したように、計測信号SGのピーク値は、深さ方向位置PPが流路20においてキャリブレーションパターンCPが結像する位置P2と一致する場合に最大となる。また、計測信号SGの幅は、深さ方向位置PPが流路20においてキャリブレーションパターンCPが結像する位置P2と一致する場合に最小となる。
【0067】
ここで上述したように、位置算出部111は、電子データDに基づいて細胞Cの深さ方向位置PPを算出する。ここでの電子データDは、キャリブレーションパターンCPの検出位置において検出する信号光LSの強度の時間変化の波形に関する電子データである計測信号SGである。つまり、位置算出部111は、細胞Cの流路20における光軸OXの方向についての相対的位置である深さ方向位置PPを、検出位置において検出する信号光LSの強度の時間変化のパラメータを用いて算出する。
【0068】
なお、本実施形態では、位置算出部111が計測信号SGのピーク値と、幅との両方に基づいて深さ方向位置PPを算出する場合の一例について説明したが、これに限らない。位置算出部111は、位置算出部111が計測信号SGのピーク値、または幅のうち少なくとも一方に基づいて深さ方向位置PPを算出してもよい。
【0069】
ステップS50:出力部112は、位置算出部111が算出した深さ方向位置PPを示す位置情報IPを流路位置制御装置9に出力する。
以上で、演算装置10は、位置算出処理を終了する。
【0070】
流路位置制御装置9は、出力部112から位置情報IPを取得すると、取得した位置情報IPに基づいて流路20の深さ方向の位置、即ち光軸OX方向の位置を制御する。流路位置制御装置9は、位置情報IPが示す深さ方向位置PPが流路20に照射されるキャリブレーションパターンCPが結像する位置P2からずれている場合、例えば、流路の深さ方向の位置が焦点面FP1の位置と一致するように流路20の深さ方向の位置を変更する。つまり、流路位置制御装置9は細胞が移動する流線FXの流路の深さ方向の位置ずれに対してフィードバック制御を行う。
上述したように、流路位置制御装置9は、出力部112が出力する深さ方向位置PPを示す位置情報IPに基づいて流路20の深さ方向の位置を制御して、例えば、位置情報IPが示す深さ方向位置PPが流路20に照射された照明光が結像するキャリブレーションパターンCP1の位置と一致するように流路20の深さ方向の位置を変更する。
【0071】
なお、上述した位置算出処理においては、スキャン処理が終了した後に、位置算出部111が深さ方向位置PPを算出する場合の一例について説明したが、これに限らない。位置算出部111は、スキャン処理に並行して信号強度取得部110がシグナルを取得する度に深さ方向位置PPを算出してもよい。
その場合、位置算出部111は、スキャン処理に並行して、計測信号SGのプロファイルについて、ピーク値の最大値、または幅の最小値を判定する。スキャン部113は、位置算出部111が計測信号SGのプロファイルについて、ピーク値の最大値、または幅の最小値が判定できた場合に、スキャン処理を終了する。
【0072】
また、位置算出部111がスキャン処理に並行して深さ方向位置PPを算出する場合、スキャン部113は、計測信号SGのピーク値または幅の増減に応じて、スキャン位置を変更してもよい。その場合、例えば、スキャン部113は、計測信号SGのピーク値が減少する傾向にある場合、次回のスキャン位置を、現在変化させている方向とは逆の方向に設定する。あるいは、スキャン部113は、計測信号SGの幅が増加する傾向にある場合、次回のスキャン位置を、現在変化させている方向とは逆の方向に設定する。
【0073】
また、位置算出部111は、計測信号SGのプロファイルについて、ピーク値の最大値、または幅の最小値に代えて、ピーク値の極大値、または幅の極小値を判定してもよい。その場合、スキャン部113は、位置算出部111が計測信号SGのプロファイルについて、ピーク値の極大値、または幅の極小値が判定できた場合に、スキャン処理を終了する。
【0074】
また、上述した位置算出処理においては、1個の細胞Cについて1つの計測信号SGが生成される場合の一例について説明したが、これに限らない。位置算出部111は、所定の数の細胞Cについての計測信号の平均を計測信号SGとして生成してもよい。
【0075】
深さ方向位置PPは、これまで流路20に照射されるキャリブレーションパターンCPが結像する位置に対する相対位置として算出される場合の例について説明したが、これに限らない。深さ方向位置PPは、予め測定された計測信号SGのプロファイルと比較して絶対位置として算出されてもよい。その場合、一例として、予め測定される計測信号SGのプロファイルは、キャリブレーションパターンCPが流路内で結像する位置に細胞が流線FXに沿って移動する位置が一致するように予め流路20の深さの方向の位置を設定して測定される。演算装置10は、予め測定された計測信号SGのプロファイルをそれぞれ記憶しておく。
【0076】
またなお、上述した位置算出処理においては、位置情報IPが流路位置制御装置9に出力されて、流線の位置ずれに対してフィードバック制御が実行される場合の例について説明したが、これに限らない。流線の位置ずれに対するフィードバック制御の代わりに、流線の位置ずれが報知される処理が実行されてもよい。流線の位置ずれが報知される処理が実行される場合、出力部112は、流線の位置ずれを報知する報知部に位置情報IPを出力する。報知部は、位置情報IPに基づいて、流線の位置ずれが発生していると判定した場合、流線の位置ずれを報知する。
【0077】
なお本実施形態では、構造化照明パターン21に、光学情報生成パターンと、キャリブレーションパターンCPとが含まれて、光学情報生成パターンのための照明光とキャリブレーションパターンCPのための照明光とが同時に照射される場合の一例について説明したが、これに限らない。本実施形態の変形例として光学情報生成パターンのための照明光とキャリブレーションパターンCPのための照明光とは互い異なる時期において照射されてもよい。例えば、構造化照明パターン21のうちキャリブレーションパターンCPを細胞Cの流路20における流線ずれを測定するキャリブレーション時のみ使用し、細胞Cの判別時には光学情報生成パターンのみを使用して構造化照明パターン21を分けて照射することも可能である。つまり、キャリブレーション時にはキャリブレーションパターンCPのための照明光が照明され、細胞Cの判別時には光学情報生成パターンのための照明光が照明されてもよい。なお本変形例における照明光の照射では、キャリブレーションパターンCPを構造化されていない照明パターンとして照明することも可能である。この変形例の構成により、細胞Cの判別時に照射される構造化照明の範囲を、光学情報生成パターンのための照明光とキャリブレーションパターンCPのための照明光とが同時に照射される場合に比べてより短い領域とすることができ、フローサイトメータ1のスループット向上が可能になる。
【0078】
[第1の実施形態のまとめ]
以上に説明したように、本実施形態に係るフローサイトメータ1は、観測対象物(本実施形態において細胞C)が流体と共に流れ得る流路20を備えるマイクロ流体装置2と、観測対象物(本実施形態において細胞C)からの信号光LSを結像する結像レンズ50と、観測対象物(本実施形態において細胞C)からの信号光LSの強度を時系列に検出する光検出器6と、光検出器6が検出する信号光LSの強度に基づいて観測対象物(本実施形態において細胞C)の形状、形態、または構造のうちいずれか1以上を示す光学情報ICを生成する情報生成装置(本実施形態においてPC8)と、演算装置(本実施形態においてPC8)と、を備えるフローサイトメータである。
マイクロ流体装置2は、流路20において、観測対象物(本実施形態において細胞C)が流路20において通過する際の深さ方向についての位置である深さ方向位置PPを検出するための検出位置(本実施形態においてキャリブレーションパターンCP)が配置される。
演算装置(本実施形態においてPC8)は、信号強度取得部110と、スキャン部113と、位置算出部111と、出力部112とを備える。
信号強度取得部110は、深さ方向位置PPを検出するために流路20において予め定められた検出位置(本実施形態においてキャリブレーションパターンCP1の位置)において検出する信号光LSの強度の時間変化(本実施形態において計測信号SG)の電子データDを取得する。
スキャン部113は、流路位置制御装置9を介して流路20を深さ方向に移動させて異なった深さ位置で電子データDを取得するためのスキャン処理を行う。
位置算出部111は、電子データDに基づいて深さ方向位置PPを算出する。
出力部112は、位置算出部111が算出した深さ方向位置PPを示す位置情報IPを出力する。
【0079】
この構成により、本実施形態に係るフローサイトメータ1では、流路20内の予め定められた位置に深さ方向位置PPを検出するための検出位置が設置され、検出位置において検出する信号光LSの強度の時間変化のパラメータを用いて深さ方向位置PPを算出できるため、観測対象物が流路を通過した際における通過位置の深さ方向の変動を検出できる。
本実施形態に係るフローサイトメータ1では、流路20において深さ方向位置PPを検出するための検出位置を設置し、その位置に結像する照明光を観測対象物に照射してそこから発せられる信号光LSの強度の時間変化を検出することによって、簡便な構成を用いて観測対象物が流路内を通過する際における深さ方向位置PPを直接的に測定できる。
【0080】
また、本実施形態に係るフローサイトメータ1では、位置算出部111は、信号光LSの強度の時間変化(本実施形態において計測信号SG)のピーク値、幅、または面積等のパラメータうちいずれか1以上を用いて深さ方向位置PPを算出する。
【0081】
この構成により、本実施形態に係るフローサイトメータ1では、深さ方向位置PPに対応する情報として信号光LSの強度の時間変化のピーク値、または幅のうち少なくとも一方に基づいて深さ方向位置PPを算出できるため、信号光LSの強度の時間変化のピーク値、または幅のうち少なくとも一方に基づかない場合に比べて、簡便に観測対象物が流路を通過する際における深さ方向の通過位置を検出できる。
【0082】
また、本実施形態に係るフローサイトメータ1では、光検出器6が深さ方向位置PPを検出するための検出位置(本実施形態においてキャリブレーションパターンCP1の位置)を照明する光と、観測対象物(本実施形態において細胞C)の形態情報を示す光学情報ICを生成するための照明に用いられる光とには、構造化された共通の光が用いられる。
【0083】
この構成により、本実施形態に係るフローサイトメータ1では、深さ方向位置PPを検出するための検出位置を観測対象物の光学情報ICを取得する構造化照明に含めて設置できるため、深さ方向位置PPを検出するための複数の検出位置を設置するための光学系を別途備えることなく深さ方向位置PPを検出するための複数の検出位置を設置できる。
【0084】
また、本実施形態に係るフローサイトメータ1では、流路位置制御装置9を備える。フローサイトメータ1では、流路位置制御装置9により流路20を光軸OX方向に移動させ、流路20の光軸方向の様々な位置において連続的にシグナルを取得するスキャン処理を行い深さ方向位置PPが算出される。流路位置制御装置9は、さらに、出力部112が出力する深さ方向位置PPを示す情報に基づいて流路20の深さ方向の位置を制御する。
【0085】
この構成により、本実施形態に係るフローサイトメータ1では、深さ方向位置PPを示す情報に基づいて流路20の深さ方向の位置を制御できるため、測定対象物の測定において深さ方向について生じる位置ずれを、適時に補正することができる。
【0086】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。
上記第1の実施形態では、流路20において細胞が通過する深さ方向位置PPを検出するために、検出位置にキャリブレーションパターンCPが、流路において1つ配置される場合について説明をした。本実施形態では、キャリブレーションパターンCPが、流路において複数配置される場合について説明をする。
本実施形態に係るフローサイトメータをフローサイトメータ1aといい、流路を流路20aという。また、本実施形態に係る光検出用光学系を光検出用光学系5aといい、光検出用光学系5aに含まれる結像レンズを結像レンズ50aという。また、本実施形態に係る演算装置を演算装置10aという。
【0087】
本実施形態に係るフローサイトメータ1aの構成と、第1の実施形態に係るフローサイトメータ1の構成とは、流路20aにおけるキャリブレーションパターンCPaの数が異なる点、及び流路20aに照射される構造化照明光が流路内において結像する互いに異なる焦点面の位置にそれぞれのキャリブレーションパターンCPaが配置されている点、及び演算装置10aの位置算出処理が演算装置10の位置算出処理とは異なる点以外は同様である。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0088】
[キャリブレーションパターン]
図10は、本実施形態に係るキャリブレーションパターンCPaの正面図(流路20aをz軸方向から見た図)の一例を示す図である。図11は、本実施形態に係るキャリブレーションパターンCPaの側面図(流路20aをx軸方向から見た図)の一例を示す図である。これらの図10及び図11では流路20aに照射されるキャリブレーションパターンCPaが2つある例が示されている。なお、上述した図3と同様に図10には構造化照明パターン21に含まれる光学情報生成パターンの位置は示されていない。
【0089】
図10に示すように、キャリブレーションパターンCPaは、キャリブレーションパターンCP1aとキャリブレーションパターンCP2aとの2つからなる。キャリブレーションパターンCP1aとキャリブレーションパターンCP2aとは、それぞれ流路20aの幅方向に直線状のパターンであり、水平方向HX(x軸方向)に略平行に配置されている。キャリブレーションパターンCP1aとキャリブレーションパターンCP2aとは、流路の長さ方向である細胞Cが流路20a内を移動する流線FXの方向(y軸方向)について互いに異なる位置に配置されている。
なお、キャリブレーションパターンCP1aとキャリブレーションパターンCP2aは、流路の長さ方向について、光学情報生成パターン(不図示)の上流側あるいは下流側のいずれに配置されていてもよいが、キャリブレーションパターンCP1aとキャリブレーションパターンCP2aとの間に、光学情報生成パターンが配置されることが好ましい。
【0090】
図11は、流路20aに照射されるキャリブレーションパターンCPaの側面図の一例を示す図である。なお、図10と同様に図11には構造化照明パターン21に含まれる光学情報生成パターンの位置は示されていない。
水平方向HX(x軸方向)からみた場合のキャリブレーションパターンCPaはそれぞれ流路内において異なった焦点面FPaで結像されており、焦点面FP1aに結像するキャリブレーションパターンCP1aと焦点面FP2aに結像するキャリブレーションパターンCP2aが図中にその位置が簡単のために円で示されている。焦点面FPaとは、キャリブレーションパターンCPaが流路20aで結像される焦点面である。キャリブレーションパターンCP1aとキャリブレーションパターンCP2aは、流路20a内において光軸OXの方向(z軸方向)について互いに異なった焦点面に配置され、流路の深さ方向位置PPがそれぞれ異なる。図11には、深さ方向位置PPが位置P1である流線FX1に沿って流路20aを通過する細胞C1と、深さ方向位置PPが位置P2である流線FX2に沿って流路20aを通過する細胞C2と、深さ方向位置PPが位置P3である流線FX3に沿って流路20aを通過する細胞C3の例が示されている。ここでキャリブレーションパターンCP1aの深さ方向位置PPは流路内を流線FX3により細胞C3が通過する位置P3である。キャリブレーションパターンCP2aの深さ方向位置PPは、流線FX1により細胞C1が通過する位置P1である。流線FX2により細胞C2が通過する位置P2は流路20aの深さ方向位置PPにおいて、位置P1と位置P3の中間の深さの位置である。
【0091】
上述したように、本実施形態では、流路20aにおいて、流路20aの深さ方向(この実施形態では光軸OXの方向)及び流路20aの長さ方向について互いに異なる位置に、深さ方向位置PPを検出するための複数の検出位置として、キャリブレーションパターンCP1a及びキャリブレーションパターンCP2aが配置される。
【0092】
[信号光と深さ方向位置との関係]
ここで図12及び図13を参照し、第2の実施形態における信号光LSと深さ方向位置PPとの関係について説明する。図12は、第2の本実施形態に係る信号光LSの強度の時間変化を示す計測信号SGの一例を示す図である。なお、ここでの信号光LSは、キャリブレーションパターンCPaの照射により流路20aを移動する細胞Cから発せられる信号光である。
図12(A)は、細胞Cが流路20a内の深さ方向位置PPとして位置P3を通過した場合に、流路20aに設置されるキャリブレーションパターンCP1aにより検出された計測信号SG13と、キャリブレーションパターンCP2aにより検出された計測信号SG23とを示す。図12(B)は、細胞Cが流路20a内の深さ方向位置PPとして位置P2を通過した場合に、流路20aに設置されるキャリブレーションパターンCP1aにより検出された計測信号SG12と、キャリブレーションパターンCP2aにより検出された計測信号SG22とを示す。図12(C)は、細胞Cが流路内の深さ方向位置PPとして位置P1を通過した場合に、流路20aに設置されるキャリブレーションパターンCP1aにより検出された計測信号SG11と、キャリブレーションパターンCP2aにより検出された計測信号SG21とを示す。ここで流路20aに設置されるキャリブレーションパターンCPaにより検出された計測信号SGとは、流路20aの予め設定された位置で結像する細胞Cの深さ位置測定のためのキャリブレーションパターンCPaの照明光を流路20aの照射位置に照射し、前記照明光の照射により細胞から発せられる信号光を光検出器で検出して得られる計測信号SGである。
【0093】
図12の例では、計測信号SG13と、計測信号SG21とは、互いに同じ形状である。計測信号SG12と、計測信号SG22とは、互いに同じ形状である。計測信号SG11と、計測信号SG23とは、互いに同じ形状である。
計測信号SG13、計測信号SG12、及び計測信号SG11それぞれのピーク値は、計測信号SG13、計測信号SG12、計測信号SG11の順に高い。計測信号SG13、計測信号SG12、及び計測信号SG11それぞれの幅は、計測信号SG13、計測信号SG12、計測信号SG11の順に狭い。
【0094】
キャリブレーションパターンCP1aにより検出された計測信号SGと、キャリブレーションパターンCP2aにより検出された計測信号SGとについて、計測されるシグナルのピーク値と幅は、細胞Cが流路内を通過する深さ方向位置PPによってそれぞれ異なる。
以下の説明では、キャリブレーションパターンCP1aにより検出された計測信号SGのピーク値の、キャリブレーションパターンCP2aにより検出された計測信号SGのピーク値に対する比率を、ピーク値比率R1という。また、キャリブレーションパターンCP1aにより検出された計測信号SGの幅の、キャリブレーションパターンCP2aにより検出された計測信号SGの幅に対する比率を、幅比率R2という。
【0095】
複数の検出位置において検出された計測信号SGのピーク値比率R1と深さ方向位置PPとの関係、及び幅比率R2と深さ方向位置PPとの関係を図13に示す。図13は、本実施形態に係る計測信号SGのピーク値比率R1と深さ方向位置PPとの関係、及び幅比率R2と深さ方向位置PPとの関係の一例を示す図である。
【0096】
図13から計測信号SGのピーク値比率R1、及び幅比率R2はそれぞれ細胞Cの深さ方向位置PPに応じて変化することがわかる。計測信号SGのピーク値比率R1は、細胞Cの深さ方向位置PPが位置P3から位置P1と浅くなるにつれて単調に減少する。一方、計測信号SGの幅比率R2は、細胞Cの深さ方向位置PPが位置P3から位置P1と浅くなるにつれて単調に増加する。
つまり、計測信号SGのピーク値比率R1、及び幅比率R2とはそれぞれ、細胞Cの深さ方向位置PPと1対1に対応している。したがって、計測信号SGのピーク値比率R1、及び幅比率R2に基づいて、細胞Cの深さ方向位置PPを算出できる。
【0097】
なお、上述した説明では深さ方向位置の算出に用いる信号光LSの強度の指標として計測信号のピーク値およびピーク幅が用いられる例について記載されているが、これに限らない。信号光LSの強度の指標としては他にピークエリアを用いることもできる。また、キャリブレーションパターンについては2本の例が記載されているが、さらに多くの数のキャリブレーションパターンを用いることも可能である。
【0098】
[演算装置の位置算出処理]
次に図14を参照し、演算装置10aの位置算出処理について説明する。図14は、本実施形態に係る位置算出処理の一例を示す図である。なお、ステップS110、及びステップS130の各処理は、図9におけるステップS20、及びステップS50の各処理と同様であるため、説明を省略する。演算装置10aが備える位置算出部を位置算出部111aという。演算装置10aの位置算出部111a以外の各部については演算装置10と同様である。
【0099】
ステップS120:位置算出部111aは、信号強度取得部110が取得する電子データDに基づいて細胞Cの深さ方向位置PPを算出する。位置算出部111aは、算出した深さ方向位置PPを示す位置情報IPを出力部112に供給する。
【0100】
位置算出部111aは、電子データDに基づいて、ピーク値比率R1、または幅比率R2の少なくとも一方に基づいて深さ方向位置PPを算出する。位置算出部111aは、ピーク値比率R1と、ピーク値比率R1に対する所定の値とを比較して、ピーク値比率R1と、ピーク値比率R1に対する所定の値との差に基づいて深さ方向位置PPを算出する。また、位置算出部111aは、幅比率R2と、幅比率R2に対する所定の値とを比較して、幅比率R2と、幅比率R2に対する所定の値との差に基づいて深さ方向位置PPを算出する。
ここで演算装置10aは、ピーク値比率R1に対する所定の値、及び幅比率R2に対する所定の値として、予め測定されたピーク値比率あるいは幅比率の値を使用することができ、その場合それらの値を記憶しておく。
なお、位置算出部111aは、電子データDに基づいて、ピーク値比率R1と幅比率R2とを使って演算をした結果得られる新たなパラメータを算出し、算出したパラメータに基づいて深さ方向位置PPを算出してもよい。新たなパラメータとは、例えば、ピーク値比率R1に幅比率R2の逆数を乗じた値である。
【0101】
位置算出部111aは、例えば、ピーク値比率R1に基づいて算出した深さ方向位置PPと、幅比率R2に基づいて算出した深さ方向位置PPとの平均値を、深さ方向位置PPとして算出する。なお、位置算出部111aは、ピーク値比率R1に基づいて算出した深さ方向位置PPと、幅比率R2に基づいて算出した深さ方向位置PPとの少なくとも一方を深さ方向位置PPとしてもよい。
【0102】
ここで上述したように、ピーク値比率R1及び幅比率R2は、キャリブレーションパターンCP1aにおいて検出された計測信号SGと、キャリブレーションパターンCP2aにおいて検出された計測信号SGとに基づく値である。したがって、本実施形態に係るフローサイトメータ1aでは、深さ方向位置PPを検出するための複数の検出位置においてそれぞれの信号光LSが検出され、検出された複数の計測信号SG導かれるパラメータを用いて位置算出部111が深さ方向位置PPを算出する。
【0103】
[第2の実施形態のまとめ]
以上に説明したように、本実施形態に係るフローサイトメータ1aでは、流路20aにおいて、光軸OXの方向及び流路20aの長さ方向について互いに異なる複数の検出位置(本実施形態においてキャリブレーションパターンCP1a及びキャリブレーションパターンCP2aの位置)が配置され、細胞Cの深さ方向位置PPを検出するため照射されるキャリブレーションパターンCPaの照明光がその位置に結像される。
キャリブレーションパターンCPaの照射により細胞Cから発せられる信号光LSは、複数の検出位置(本実施形態においてキャリブレーションパターンCP1a及びキャリブレーションパターンCP2aの位置)においてそれぞれ検出され、光検出器6により検出される信号光LSの強度の時間変化(本実施形態において計測信号SG)のパラメータを用いて位置算出部111が観測対象物の深さ方向位置PPを算出する。
【0104】
この構成により、本実施形態に係るフローサイトメータ1aでは、光軸OXの方向及び流路20aの長さ方向について互いに異なる位置に配置された複数の検出位置に結像されたキャリブレーションパターンCPaが照射され、それぞれの検出位置において検出された信号光LSの強度の時間変化に基づいて深さ方向位置PPを算出できるため、検出位置が1つしか配置されない場合に比べて深さ方向位置PPの変動を正確に捉えられ、観測対象物の構造を示す光学情報を生成する際に流線の位置ずれの影響を精度よく補正すること、及びまたは流路位置の修正を効果的に行うことができる。
【0105】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第3の実施形態について詳しく説明する。
上記第2の実施形態では、流路20aは光軸OXの方向と直交するように設置され、流路を通過する観測対象物に光軸OXの方向及び流路20aの長さ方向について互いに異なる複数の測定位置(前記第2の実施形態ではキャリブレーションパターンCP1a及びキャリブレーションパターンCP2aの位置)で結像する深さ方向位置PPを検出するためのキャリブレーションパターンCPaを照射して、観測対象物が発する信号光LSの強度の時間変化(本実施形態において計測信号SG)を検出し深さ方向位置PPを算出する場合の例について説明をした。本実施形態では、流路が光軸OXの方向に対して傾いて設置されている。その構造により、本実施形態では、深さ方向位置PPを検出するために照射されるキャリブレーションパターンについて、流路上の照明光が結像する同じ焦点面上に、異なった深さ方向位置PPを検出できる複数の検出位置を設置することができる。
本実施形態に係るフローサイトメータをフローサイトメータ1bといい、流路を流路20bという。本実施形態に係るキャリブレーションパターンをキャリブレーションパターンCPbという。また、本実施形態に係る光軸を光軸OXbといい、演算装置を演算装置10bという。
【0106】
本実施形態に係るフローサイトメータ1bの構成と、第1の実施形態に係るフローサイトメータ1の構成とは、流路20bが光軸OXbの方向に対して傾いて設置されている点以外は同様である。流路20bが光軸OXbの方向に対して傾いるため、流路20の深さ方向は、光軸OXbの方向に対して傾いる。また、本実施形態に係る演算装置10bの構成は、第2の実施形態に係る演算装置10aの構成と同様である。第1の実施形態及び第2の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第3の実施形態では、第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0107】
[キャリブレーションパターン]
図15は、本実施形態に係る流路20bにおけるキャリブレーションパターンCPbの側面図(流路20bをx軸方向から見た図)の一例を示す図である。なお、同様に図15には構造化照明パターン21に含まれる光学情報生成パターンの位置は示されていない。
流路20bの長さ方向(y軸方向)は、光軸OXbの方向に対して傾いている。キャリブレーションパターンCPbは光軸OXbの方向から斜めに流路20bに照射され、流路内の焦点面FP1bで結像される。図15では、観測対象物としては、流路の異なる深さ位置を通過する流線FX1、FX2、FX3の流れに沿って移動する細胞C1、細胞C2、細胞C3が例示されている。ここで流線FX1、FX2、FX3が流路20bにおける深さ方向位置PPは、図11においての流線FX1、FX2、FX3の流れに沿って細胞C1、細胞C2、細胞C3が通過する位置と同じである。流路20bの深さ方向(z軸方向)の深さ方向位置PPを検出する検出位置は、同じ焦点面FP1b上のキャリブレーションパターンCP1bとキャリブレーションパターンCP2bの位置に設置され、その位置が簡単のために図中に円で示されている。本実施形態では、第1の実施形態と異なり、流路20bの深さ方向(z軸方向)は光軸OXbの方向に対して傾いている。
【0108】
図15に示すように、キャリブレーションパターンCPbは、キャリブレーションパターンCP1bとキャリブレーションパターンCP2bとの2つ位置で結像する。図中でキャリブレーションパターンCP1bの位置あるいはキャリブレーションパターンCP2bの位置に照射されるキャリブレーションパターンCPbは、それぞれ水平方向HX(x軸方向)には平行な直線上のパターンとして照射される。キャリブレーションパターンCP1bとキャリブレーションパターンCP2bとは、流路20bの長さ方向について互いに異なる位置に配置されている。
【0109】
キャリブレーションパターンCP1bとキャリブレーションパターンCP2bとは、光軸OXbの方向に対して共通の焦点面FP1b上に結像されるが、本実施形態では流路20bが焦点面FP1bに対して所定の角度だけ傾いて配置されている。そのため、キャリブレーションパターンCP1bとキャリブレーションパターンCP2bとは、流路20bの深さ方向(z軸方向)について互いに異なる位置に配置される。
【0110】
ここで図15に示されるキャリブレーションパターンCP1bとキャリブレーションパターンCP2bの結像位置の流路20bに対する相対的な位置関係は、図11で示されたキャリブレーションパターンCP1aとキャリブレーションパターンCP2aの結像位置の流路20aに対する相対的な位置関係と同じである。上述したように、図15に示すキャリブレーションパターンCP1bとキャリブレーションパターンCP2bとは、流路20bの深さ方向に互いに異なる位置に配置されるが、光軸OXbの方向について流路20bを照射する照明光の共通の焦点面FP1b上に配置される。一方、図11に示したキャリブレーションパターンCP1aとキャリブレーションパターンCP2aは、光軸OXの方向について流路20bを照射する照明光のそれぞれ別の焦点面上に位置する。
【0111】
演算装置10bは、位置算出処理を、図14に示した演算装置10aの位置算出処理と同様に実行する。なお、図15に示すキャリブレーションパターンCP1b及びキャリブレーションパターンCP2bの検出位置において計測信号SGは、細胞Cが流路の同じ深さ方向位置PPの位置を通過した場合であっても、図12に示すキャリブレーションパターンCP1a及びキャリブレーションパターンCP2aの検出位置において検出される計測信号SGとはシグナルの形状が異なる。そのため、演算装置10bの位置算出処理では、ピーク値比率R1に対する所定の値、及び幅比率R2に対する所定の値は、図14に示した演算装置10aの位置算出処理において用いられる値とは異なる値が用いられる。
【0112】
[第3の実施形態のまとめ]
以上に説明したように、本実施形態に係るフローサイトメータ1bでは、流路20bが照明光の光軸OXbの方向に対して傾いて設置されている。
この構成により、本実施形態に係るフローサイトメータ1bでは、深さ方向位置を検出するための複数の検出位置を流路20bに照射されるキャリブレーションパターンCPbの1つの焦点面FP1上の異なる深さ方向位置PPの位置に設置できるため、光源3や空間光変調部4を複雑に配置して流路20bの深さ方向位置PPおよび流路20bの長さ方向の位置が異なる複数の位置に焦点面が異なる複数の検出位置を設置する場合に比べて、簡便により簡易な構造で深さ方向位置を検出するための複数の検出位置を設置できる。
【0113】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第4の実施形態について詳しく説明する。
上記第1、第2、及び第3の実施形態では、構造化照明の構成により観測対象物からの光学情報を生成する実施形態において、キャリブレーションパターンが光学情報を生成するための光学情報生成パターンと組み合わされて流路上の照射位置に照射され、流路上のキャリブレーションパターンが結像する位置に細胞が流路を通過する深さ方向位置PPを検出する検出位置が配置される場合について説明をした。本実施形態では、空間光変調部が流路と光検出器との間に設置され、細胞の流路における深さ方向位置が、流路と光検出器との間に備えられる空間光変調部を構成するマスクが有する光透過領域の配置パターンを利用して検出される場合について説明する。なお、本実施形態のように、空間光変調部が流路と光検出器との間の光路上に配置される配置の構成を、以降構造化検出の構成とも記載する。
【0114】
構造化検出の構成では、空間光変調部を構成するマスクに配置される光透過領域を介して検出される信号光により観測対象物の形態情報に関する光学情報を取得することができる。即ち、本実施形態では、信号光の構造化処理が構造化検出の構成により施され、情報生成装置は前記構造化処理を経て構造化された信号光を用いて光学情報を取得する。本実施形態のように、流路と光検出器との間の光路上に配置される空間光変調部により構造化処理を施される信号光を構造化された信号光とも記載する。
また本実施形態では、観測対象物が流路において通過する深さ方向位置が、流路と光検出器との間に備えられる空間光変調部を構成するマスクの光透過領域の配置パターンを利用して検出されるので、以下の説明ではこの実施形態をキャリブレーションパターンがマスクにより配置される形態とも呼ぶことがある。即ち本実施形態では、流路を観測対象物が通過する深さ方向位置を検出する検出位置が構造化検出の構成により配置される空間光変調部により設置される。
【0115】
本実施形態に係るフローサイトメータをフローサイトメータ1cといい、流路を流路20cという。本実施形態では、光学情報を取得するための構造化照明の構成や深さ方向位置PPを検出するための検出位置を流路に照射する照明としてフローサイトメータに設置する必要はない。本実施形態に係るフローサイトメータ1cの構成と、第1の実施形態に係るフローサイトメータ1の構成とは、流路20cに照射される構造化照明パターン21に光学情報を取得するための光学情報生成パターンや深さ方向位置を検出するためのキャリブレーションパターンCPが含まれていない点、及び流路20cから光検出器6の間の光路にマスク51cが配置される点以外の基本的な構成は同様である。すなわち、フローサイトメータ1は構造化照明の構成となっているが、フローサイトメータ1cでは構造化検出の構成となっている。
【0116】
また、本実施形態のフローサイトメータでは、検出された細胞Cの深さ方向位置PPに基づいて流路20cの深さ方向の位置を流路位置制御装置により制御することができる。さらにまた、本実施形態のフローサイトメータでは、細胞Cの流路20における深さ方向における流線ずれを補正する別の方法として、検出された深さ方向位置PPに基づいてマスクの位置を制御する機構を備えることができる。
【0117】
図16は、本実施形態に係るマスク51cの配置の側面図(流路20cをx軸方向から見た図)の一例を示す図である。なお図16では、キャリブレーションパターンがマスクにより配置される実施形態の説明のため、マスク51cの光学情報ICの生成のための信号光が透過するマスク51cにおける光透過部については図中には記載されていない。
マスク51cは、流路20cと光検出器6との間に備えられる。マスク51cと流路20cとの間にはレンズ49が、マスク51cと光検出器6との間には結像レンズ50が、それぞれ備えられる。レンズ49とマスク51cは空間光変調部4c(不図示)を構成する。また、図16に示す例では、光検出用光学系5は結像レンズ50により構成されているが、さらにダイクロイックミラーや波長選択的なフィルターを備えてもよい。
【0118】
光源からの照明光LEは、照射位置を通過する細胞Cに照射され、細胞Cから発せられる信号光LSは空間光変調部4c(不図示)を介して光検出器6により検出される。その際、信号光LSは空間光変調部4c(不図示)により構造化処理を施される。即ち、信号光LSは空間光変調部4cを介して構造化信号光に変換される。光検出器6により出力される電気信号パルスはさらに電子データに変換され、細胞の形態情報を示す光学情報ICが生成される。
【0119】
一方本実施形態では、細胞Cの流路20cを通過する深さ方向位置PPが、空間光変調部4c(不図示)に備えられるマスク51cが有する光透過領域の配置パターンを利用して検出される。マスク51cのレンズ49側の面は光を透過させる領域を有しており、マスク51cの光透過領域は流路20cに設置される深さ方向位置PPを検出するための流路内の検出位置とレンズ49を介して光学的に共役な位置に配置される。上記構成により、流路20cを通過する細胞Cが発する信号光LSは、空間光変調部4c(不図示)を介して構造化された信号光として光検出器6で検出される。構造化された信号光LSはさらに電子データに変換され、信号光強度の時間変化が計測信号SGとして取得される。流路20cを流線FXに沿って移動する細胞Cは、検出位置の近傍を通過する際にマスク51cの光透過領域でより鮮明な像を結び、検出位置から離れた流線FX上を移動する際にはマスク51cの光透過領域における像がより不鮮明となるため、光検出器6で検出される信号光LSの強度の時間変化も流路20cを通過する細胞の深さ方向位置PPに応じて変化する。
【0120】
本実施形態では、マスク51cに配置される光透過領域の配置パターンであるマスクパターンにより光透過領域と共役な流路内の位置に深さ方向位置PPを検出する検出位置が設定される。マスク51cの光透過領域を介し検出された信号光LSにもとづく計測信号SGは、検出位置と通過する細胞Cとの距離に依存してその形状が変わるため、計測信号SGに基づいて流路20c内を通過する細胞Cの深さ方向位置PPを算出することができる。本明細書中では、本実施形態をキャリブレーションパターンがマスクにより配置される形態と呼び、マスクパターンにより流路に配置される検出位置をキャリブレーションパターンの位置と表現する。また、マスク51cの光透過領域が配置される側の面をマスクパターン面MP1cと表現する。また図16では、流路20cの深さ方向位置PPが異なる位置P1、位置P2、位置P3を流れる流線FXにより移動する細胞Cがそれぞれ細胞C1、細胞C2、細胞C3と記載されている。
【0121】
マスク51cは、そのマスクパターン面MP1cに光を透過させる領域と、光を透過させない領域とを有する。マスクパターン面MP1cは、図16では、レンズ49により、流線FX1上の1つの検出位置であるキャリブレーションパターンの位置CP1cと光学的に共役な位置ICP1cと、流線FX3c上のもう1つの検出位置であるキャリブレーションパターンの位置CP2cと光学的に共役な位置ICP2cに光を透過させる領域が配置され、それ以外の部分は、光学情報ICを取得するための光透過領域(不図示)を除けば、光を透過させない領域となっている。即ち、マスク51cのマスクパターン面MP1の面には、流線FX1c上のキャリブレーションパターンの位置CP1cと光学的に共役な位置であるICP1cの位置と、流線FX3c上キャリブレーションパターンの位置CP2cと光学的に共役な位置であるICP2cの位置とに、光を透過させる領域を配置するようにマスクパターンが設計されている。つまり、キャリブレーションパターンがマスクにより配置される形態では、マスク51cの光透過領域の位置(図16ではICP1cとICP2cの位置)が、流路20cの異なった流線上の予め定められた検出位置(図16ではキャリブレーションパターンの位置CP1cとCP2c)と光学的に共役な位置関係に設置されているため、細胞Cが検出位置近傍を通過する際に発する信号光LSが光検出用光学系5を介して光検出器6で検出される。それにより、異なった流線上に配置される検出位置に深さ方向位置PPを検出するための照明光を照射して通過する細胞Cの深さ方向位置PPを算出する第1から第3までの実施形態の場合と同様に、予め定められた位置を検出位置として通過する細胞の深さ位置を検出することができる。
【0122】
マスク51cの光透過領域を透過した光は、さらに結像レンズ50を介して光検出器6に集められ、光検出器6は信号光LSの強度を時系列に検出する。ここで、光検出器6は、マスク51cが有する領域のうち流路20cの複数の検出位置であるキャリブレーションパターンの位置CPcと結像関係を成す位置にある光を透過させる領域を介して、信号光LSの強度を時系列に検出する。ここで光検出器6が配置される位置は、マスク51cのマスクパターンが結像レンズ50によって結像される位置であることが好ましいが、マスク51cを介した光(例えば透過領域を透過した光)が十分量集光される位置であればよい。
【0123】
ここで図17及び図18を参照し、マスク51cについて説明する。図17は、本実施形態に係るマスク51cの正面図の一例を示す図である。正面図とは、流路20cの側(z軸方向)から見た図である。図18は、本実施形態に係るマスク51cの側面図の一例を示す図である。側面図とは光軸OXに沿って横側(x軸方向)から見た図である。図17に示すように、マスク51cは、レンズ49側の面である表面515cに光を透過させる領域として開口部511cと、開口部512cとを有する。マスク51cでは、表面515cの面がマスクパターン面MP1cとなる。なお図17及び18においても、キャリブレーションパターンがマスクにより配置される実施形態の説明のため、マスク51cの光学情報ICの生成のための信号光が透過する光透過部の位置は図中には記載されていない。従って、図中のマスク51cはマスクパターン面MP1cにおいて開口部511c、及び開口部512c以外の領域は光を透過しない構成として記載されているが、実際の構成では光学情報ICの生成のための信号光が透過する光透過部が存在する。
【0124】
図18に示すように、マスク51cは、表面515cの裏側に溝部513c、及び溝部514cを有する。開口部511cと、開口部512cの表面515cと反対の面には、それぞれ溝部513cと溝部514cとが設けられる。マスク51cにおいて開口部と溝部は共に信号光が透過する領域であるが、開口部は溝部よりも光を透過する領域が小さく設計されている。
【0125】
図16に戻ってマスク51cの配置の説明を続ける。
流路20cは、マスク51cの表面に対して所定の角度だけ傾いて配置される。流路20cを通過する細胞Cが流路20の深さ方向に異なる流線FX(図16では、流線FX1、流線FX2、流線FX3として例示)に沿って移動する場合、上述の通り、光検出器6により検出された信号光LSの強度の時間変化である計測信号SGは、検出位置である流路20c内のキャリブレーションパターンの位置CPcと通過する細胞Cとの距離に依存してその形状が変わる。
ここでマスク51cの流線FX1上のキャリブレーションパターンの位置CP1cと光学的に共役な位置とである位置ICP1cを透過した信号光LSを光検出器6で計測した場合、第1の実施の例と同様に、流路20を通過する細胞Cの深さ方向位置PPが流線FX1から離れるほど、細胞Cの深さ方向位置PPが流線FX1と一致している場合に比べて、マスク51cを介して光検出器6で検出される計測信号SGのピーク値は小さくなり、幅は広くなる。
マスク51cの流線FX3上の検出位置であるキャリブレーションパターンの位置CP2cと光学的に共役な位置とである位置ICP2cを透過した光を光検出器6で計測した場合にも、同様に、流路20c内を通過する細胞Cの深さ方向の通過位置が流線FX3に近い深さ方向位置PPを通過した時ほど、マスク51cを介して光検出器6で計測される計測信号SGのピーク値は高くなり、幅は狭くなる。
演算装置10cは、位置算出処理を、図13に示した演算装置10aの位置算出処理と同様に実行する。
【0126】
[第4の実施形態のまとめ]
以上に説明したように、本実施形態に係るフローサイトメータ1cでは、流路20cと光検出器6との間にマスク51cをさらに備える。マスク51cに配置される複数の光透過領域は、流路20cの深さ方向位置PPを検出するための検出位置とレンズ49を介して光学的に共役な位置に配置され、光検出器6は検出位置近傍を通過する細胞Cから発せられる信号光LSの強度を、マスク51cの光を前記透過させる領域を介して時系列に検出する。この構成により、本実施形態に係るフローサイトメータ1cでは、流路20cと光検出器6との間に備えられたマスク51cの構造により、上記予め定められた複数の位置を検出位置として、細胞Cが通過する流路の深さ方向位置PPを検出することが可能となる。上記実施形態で示されたフローサイトメータ1cの例では、マスク51cのマスクパターン面MP1cにおける開口部の配置パターンにより、流路20cにおいて細胞Cが通過する深さ方向位置PPを検出する検出位置であるキャリブレーションパターンの位置が設定される。
【0127】
本実施形態に係るフローサイトメータ1cでは、深さ方向位置PPを、流路20と光検出器6との間にマスク51cを設置することによって検出できるため、構造化照明の構成により光学情報ICを生成するための光学情報生成パターンと深さ方向位置PPを検出するためキャリブレーションパターンとを設置する必要がなく、照明光学系の設計の自由度を増すことができると共に装置をより小型化できる。
【0128】
(第5の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第5の実施形態について詳しく説明する。
上記第4の実施形態では、キャリブレーションパターンがマスクにより配置される形態の一例について説明した。第4の実施形態では、マスクの光透過領域である開口部はマスクの片側のマスクパターン面に複数設置され、流路を細胞が移動する流線の向きがマスクのマスクパターン面に対して傾いて備えられていた。本実施形態では、流路の流線の向きはマスクのマスクパターン面の方向と平行に設置され、マスクの複数の開口部は光検出用光学系の光軸の方向について互いに異なる位置に設けられている場合について説明する。
本実施形態に係るフローサイトメータをフローサイトメータ1dといい、流路を流路20dという。本実施形態に係るマスクを、マスク51dという。
【0129】
本実施形態に係るフローサイトメータ1dの構成と、第4の実施形態に係るフローサイトメータ1cの構成とは、マスク51dの複数の開口部の位置が光検出用光学系の光軸の方向に互いに異なる点と、流路20dがマスク51dのマスクパターン面MPd面の方向に略平行に備えられる点以外は同様である。第4の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第5の実施形態では、第4の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0130】
図19は、本実施形態に係るマスク51dの配置の側面図(流路20dをx軸方向から見た図)の一例を示す図である。なお図19でも、キャリブレーションパターンがマスクにより配置される実施形態の説明のため、マスク51dの光学情報ICの生成のための信号光が透過するマスク51dにおける光透過部については図中には記載されていない。
本実施形態では、流路20dから光検出器6の間の光路に、レンズ49、マスク51d、結像レンズ51がこの順に配置される。図19の例では、レンズ49とマスク51dが空間光変調部4dを、結像レンズ50が光検出用光学系5を構成する。本実施形態では、流路の深さ方向と光検出用光学系の光軸OXの方向(Z軸方向)が一致する。
【0131】
ここで図20及び図21を参照し、マスク51dについて説明する。図20は、本実施形態に係るマスク51dの正面図の一例を示す図である。正面図とは、マスク51dを流路20dの側(z軸方向)から見た図である。図21は、本実施形態に係るマスク51dの側面図である。側面図とは、マスク51dを光軸OXに沿って横側(x軸方向)から見た図である。図17と同様に、マスク51dは、表面515d側において光を透過させる領域として開口部511dを有する。一方、マスク51dは、表面515dの裏側の面にも光を透過させる領域として開口部512dを有する。なお図20及び21においても、キャリブレーションパターンがマスクにより配置される実施形態の説明のため、マスク51dの光学情報ICの生成のための信号光が透過する光透過部の位置は図中には記載されていない。従って、図中のマスク51dは、開口部511d、及び開口部512d以外は光を透過しない構成として記載されているが、実際の構成では光学情報ICの生成のための信号光が透過する光透過部が存在する。
【0132】
図21に示すように、マスク51dは、表面515dの裏側に溝部513dを有する。開口部511dは、表面515dの面の溝部513dに対応する位置に設けられる。一方、マスク51dは、表面515dの面に溝部514dを有する。開口部512dは、表面515dの裏側面の溝部514dに対応する位置に設けられる。マスク51dでは、表面515dの面がマスクパターン面MP1dに、表面515dの裏側の面がマスクパターン面MP2dに対応する。即ち、マスク51cでは、表面515dの面と表面515dの裏側の面の両方がマスクパターン面MPdとなる。マスク51dにおいて開口部と溝部は共に信号光が透過する領域であるが、いずれのマスクパターン面においても開口部は溝部よりも光を透過する領域が小さく設計されている。
【0133】
開口部511dと、開口部512dとは、マスク51dの厚みの方向において互いに異なる深さの位置に設けられている。ここでマスク51dの厚みの方向は、光軸OXの方向であり、マスク51dは、複数の光透過領域が光軸OXの方向について互いに異なる位置に設けられている。本実施形態では、流路の深さ方向と光軸OXの方向(z軸方向)が一致するので、マスク51dは、光を透過させる領域として、流路の深さ方向について互いに異なる位置に設けられた複数の開口部を有することになる。
【0134】
図19に戻ってマスク51dの配置の説明を続ける。
本実施形態に係るフローサイトメータ1dでは、マスク51d上のマスクパターン面MPdは細胞Cから発せられる信号光LSが進む光軸OXの方向と直交する向きに設置されている。マスク51dと流路20dとの間にはレンズ49が、マスク51dと光検出器6との間には結像レンズ50が、それぞれ備えられる。図19に記載される例では、空間光変調部5d(不図示)はレンズ49とマスク51dにより、光検出用光学系5(不図示)は結像レンズ50により構成されるが、光検出用光学系5(不図示)はさらにダイクロイックミラーや波長選択的なフィルターを備えてもよい。
【0135】
流路20dには光源(不図示)からの照明光LE(不図示)が照射される。照明光LEが照射される位置を通過する細胞から発せられる信号光LSは空間光変調部4d及び光検出用光学系5を介して光検出器6に集光される。空間光変調部4dを構成するマスク51dは、流路20dを通過する細胞の深さ方向位置PPを検出する位置であるキャリブレーションパターンの位置CPdと光学的に共役な位置に開口部を有しており、その構成により、細胞Cが発する信号光LSは、マスク51dの光透過領域である開口部を介して光検出器6で検出される。上述のように、マスク51dは、光を透過させる領域として、流路の深さ方向について互いに異なる位置に設けられた開口部511dと開口部512dを有する。マスク51dは、図19に示すように、マスクパターン面MP1dの面においては流線FX1上のキャリブレーションパターンの位置CP1dと光学的に共役な位置であるICP1dの位置に開口部511dが、マスクパターン面MP2dの面においては流線FX3上キャリブレーションパターンの位置CP2dと光学的に共役な位置であるICP2dの位置に開口部512dが、それぞれ設置されている。すなわち、本実施形態では、フローサイトメータ1dは、流路20dの異なった深さ方向位置PPの予め定められた位置に設置される検出位置(図19ではキャリブレーションパターンの位置CP1dとCP2d)と結像関係を成す位置に、マスク51dの光透過領域の位置(図19ではマスク51dの開口部にあたるICP1dとICP2dの位置)が設置される。そのため、異なった深さ方向位置PPに設置される検出位置にキャリブレーションパターンを照射して細胞Cの深さ方向位置PPを算出する場合と同様に、マスク51dの光透過領域を透過する信号光LSを光検出器6で検出することで、予め定められた位置を検出位置として通過する細胞の深さ方向位置PPを検出することが可能になる。その場合、先の実施形態と同様に、流線FX1上のキャリブレーションパターンの位置CP1dに対応する位置ICP1dに備えられる開口部511dを介する計測信号SGを計測した場合、流路20dを通過する細胞Cの深さ方向位置PPが流線FX1の位置から離れるほど、細胞Cの深さ方向位置PPが流線FX1の位置と一致している場合に比べて、光検出器6で計測される計測信号SGのピーク値は小さくなり、幅は広くなる。また、流線FX3上のキャリブレーションパターンの位置CP2dに対応する位置ICP2dに備えられる開口部512dを介する計測信号SGを計測した場合、細胞Cの深さ方向位置PPが流線FX3の位置から離れるほど、深さ方向位置PPが流線FX3の位置と一致している場合に比べて、光検出器6で計測される計測信号SGのピーク値は小さくなり、幅は広くなる。このように、フローサイトメータ1dでは、マスク51dの異なるマスクパターン面MPdにそれぞれ開口部を設け、流路を流れる細胞Cから発せられた信号光LSを、光軸OX方向について異なる位置に設置されている開口部を介して光検出器6で検出することで、流路20dにおける細胞Cの深さ方向位置PPが検出される。
【0136】
[第5の実施形態のまとめ]
以上に説明したように、本実施形態に係るフローサイトメータ1dでは、マスク51dは、光透過領域として、光軸OXの方向について互いに異なる位置に設けられた複数の開口部(本実施形態において開口部511d及び開口部512d)を有する。
【0137】
この構成により、本実施形態に係るフローサイトメータ1dでは、流路20dをマスク51dのマスクパターン面MPdに対して傾けることなく、流路20dにおいて細胞Cが通過する深さ方向位置PPを検出するための複数の検出位置(図19では流線FX1上のキャリブレーションパターンの位置CP1dと流線FX3上のキャリブレーションパターンの位置CP2d)を光軸OXの方向について互いに異なる位置に設置でき、その構成により流路20dにおいて細胞Cが通過する深さ方向位置PPを検出することができる。
【0138】
(第6の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第6の実施形態について詳しく説明する。
本実施形態では、情報生成装置が生成する光学情報に基づいて流路を流れる細胞を判別する場合について説明をする。
本実施形態に係るフローサイトメータをフローサイトメータ1eといい、演算装置を演算装置10eという。フローサイトメータ1eの構成は、一例として、上記第1の実施形態に係るフローサイトメータ1の構成と、演算装置10が異なる以外は同様である。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第6の実施形態では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、フローサイトメータ1eの構成は、演算装置10e以外の構成については、上記第1の実施形態以外の第2、第3、第4、及び第5の実施形態に係るフローサイトメータの構成と同様であってもよい。
【0139】
[演算装置]
図22は、本実施形態に係る演算装置10eの構成の一例を示す図である。本実施形態に係る演算装置10e(図22)と第1の実施形態に係る演算装置10(図8)とを比較すると、光学情報取得部114e、位置判定部115e、判別部116e、学習部117e、及び記憶部118eが異なる。ここで、他の構成要素(信号強度取得部110、位置算出部111、出力部112、及びスキャン部113)が持つ機能は第1の実施形態と同じである。
【0140】
制御部11eは、信号強度取得部110、位置算出部111、出力部112、及びスキャン部113に加え、光学情報取得部114e、位置判定部115e、判別部116e、学習部117e、及び記憶部118eを備える。
【0141】
光学情報取得部114eは、PC8によって生成される光学情報ICを取得する。
位置判定部115eは、出力部112が出力する位置情報IPが示す細胞Cの深さ方向位置PPが光軸OXの方向について流路内の所定の範囲内であるか否かを判定する。光軸OXの方向とは流路の深さ方向である。
判別部116eは、機械学習に基づいて、PC8が生成する光学情報ICに基づいて細胞Cを判別する。判別部116eは、位置判定部115eの判定結果に基づいて、所定の範囲である領域Z1内を流れる細胞Cを判別対象とする。
【0142】
ここで図23を参照し、領域Z1について説明する。図23は、本実施形態に係る領域Z1の一例を示す図である。図23では、流路20を流れる細胞Cについて、流路20を通過する際の深さ方向位置PPを測定し、流路20の深さ方向位置について取り得る値の範囲を所定の区間に区切った場合に、所定の区間に深さ方向位置の測定値が含まれる細胞Cの数を所定の区間毎に示すヒストグラムである。判別部116eは、流路20を通過する細胞Cのうち、領域Z1内に含まれる範囲の区分を通過する測定値に対応する細胞Cの光学情報ICを判別対象とする。
領域Z1は、例えば図23で示されるように、流路20を通過する細胞Cの深さ方向位置PPにおいて、初期の細胞Cの通過位置を中心に所定の距離だけずれた位置を含む区分までの線分である。
【0143】
なお、位置判定部115eは、深さ方向位置PPの測定値に代えて、深さ方向位置PPに関する量の測定値に基づいて、流路20を流れる細胞Cが領域Z1に対応する領域に含まれるか否かを判定してもよい。領域Z1に対応する領域とは、深さ方向位置PPに関する測定値が表示される線分において、領域Z1に対応する領域である。
【0144】
図22に戻って演算装置10eの構成の説明を続ける。
学習部117eは、機械学習を実行する。学習部117eは、学習用の細胞と、学習用の細胞についての光学情報ICとの関係を学習する。学習部117eが実行する機械学習とは、一例として、深層学習である。
【0145】
本実施形態では、フローサイトメータ1eを用いて細胞Cを測定し、測定時に流路20の領域Z1内を流れる細胞Cの測定値を用いて機械学習が実行される。以降本明細書では、フローサイトメータ1eを用いて学習用の細胞Cを測定した際に流路20の領域Z1内を流れた細胞について学習用細胞とも呼ぶことがある。
【0146】
ここで図24を参照し、学習用細胞についての領域Z1についてさらに説明する。図24は、本実施形態に係る学習用細胞についての領域Z1の一例を示す図である。図24(A)には、細胞Cについて機械学習を実行するため、フローサイトメータ1eを用いて学習用の測定を行った際に、細胞Cが流路20内を通過した深さ方向位置PPを測定し、流路の深さ方向位置について取り得る値の範囲を所定の区間に区切った場合に、所定の区間に深さ方向位置の測定値が含まれる細胞Cの数を所定の区間毎に示すヒストグラムである。比較のために図24(B)に、機械学習の推論時において細胞Cが通過した深さ方向位置を測定し、深さ方向位置について取り得る値の範囲を所定の区間に区切った場合に、所定の区間に深さ方向位置の測定値が含まれる細胞Cの数を所定の区間毎に示すヒストグラムを示す。
【0147】
本実施形態では、学習部117eが学習時に用いる学習用の細胞Cに関する情報は、領域Z1内を流れる細胞Cから取得した光学情報ICである。またこの領域Z1は、判別部116eが推論時に判別対象とする細胞Cが流れる領域Z1と同じである。つまり、学習用細胞とは、判別部116eが判別対象とする細胞Cが流れる領域Z1と同じ領域Z1内を流れる細胞Cである。
【0148】
図22に戻って演算装置10eの構成の説明を続ける。
記憶部118eは、種々の情報を記憶する。記憶部118eが記憶する情報には、学習結果LDeが含まれる。学習結果LDeは、学習部117eによって学習が実行された結果である。学習結果LDeは、予め学習が実行されて記憶部118eに記憶される。
【0149】
[細胞判別処理]
次に図25を参照し、演算装置10eが細胞Cを判別する処理である細胞判別処理について説明する。図25は、本実施形態に係る細胞判別処理の一例を示す図である。図25に示す細胞判別処理は、1個の細胞Cに対して実行される。流路20を流れる複数の細胞に対して実行される細胞判別処理は、図25に示す細胞判別処理を1単位として複数の細胞に対して繰り返し実行される。
【0150】
ステップS210:位置判定部115eは、出力部112が出力する位置情報IPを取得する。
ステップS220:位置判定部115eは、出力部112が出力する位置情報IPが示す細胞Cの深さ方向位置PPが流路20の深さ方向において所定の範囲である領域Z1内であるか否かを判定する。
【0151】
位置判定部115eが、細胞Cの深さ方向位置PPが流路20の深さ方向について領域Z1内であると判定した場合(ステップS220;YES)、制御部11eはステップS230の処理を実行する。一方、位置判定部115eが、流路20を通過する細胞Cの深さ方向位置PPが流路20の深さ方向について領域Z1内でないと判定した場合(ステップS220;NO)、制御部11eは、細胞判別処理を終了する。
【0152】
ステップS230:光学情報取得部114eは、PC8によって生成される光学情報ICを取得する。光学情報取得部114eは、取得した光学情報ICを判別部116eに供給する。
【0153】
ステップS240:判別部116eは、学習結果LDeと、PC8が生成する光学情報ICとに基づいて細胞Cを判別する。ここで上述したように、学習結果LDeは、学習用細胞と、学習用細胞についての光学情報との関係が学習された結果である。例えば、機械学習として深層学習が用いられる場合、学習結果LDeは、光学情報を入力すると細胞の種類を出力するように学習が行われたニューラルネットワークを示す。
【0154】
判別部116eは、PC8が生成する光学情報ICを学習結果LDeが示すニューラルネットワークに入力する。判別部116eは、学習結果LDeが示すニューラルネットワークが出力する細胞の種類が、所望の細胞の種類であるか否かを判定する。
【0155】
ステップS240における処理は、ステップS220の処理において位置判定部115eが、流路20を通過する細胞Cの深さ方向位置PPが光軸OXの方向について領域Z1内であると判定した場合に実行される。つまり、判別部116eは、位置判定部115eの判定結果に基づいて、所定の範囲である領域Z1内を流れる細胞Cを判別対象とする。
【0156】
ステップS250:判別部116eは、判別結果を、出力部112を介して外部装置に出力する。ここで外部装置とは、例えば、細胞Cを分取する分取部である。フローサイトメータ1eが分取部を備える場合、フローサイトメータ1eは、セルソータとして機能する。
以上で、演算装置10は、細胞判別処理を終了する。
【0157】
なお、本実施形態では、学習部117eが演算装置10eに備えられて、演算装置10が機械学習を実行する場合の一例について説明したが、これに限らない。機械学習は、外部装置によって実行されてもよい。機械学習が外部装置によって実行される場合、演算装置10eは、外部装置によって機械学習が実行された学習結果を、外部装置から取得して記憶部118eに記憶させて、細胞判別処理に用いる。
【0158】
[第6の実施形態のまとめ]
以上に説明したように、本実施形態に係るフローサイトメータ1eでは、
演算装置(本実施形態においてPC8)は、判別部116eと、位置判定部115eとを備える。
判別部116eは、情報生成装置(本実施形態においてPC8)が生成する光学情報ICに基づいて観測対象物(本実施形態において細胞C)を判別する。
位置判定部115eは、出力部112が出力する位置情報IPが示す流路20を通過する細胞Cの深さ方向位置PPが、光軸OXの方向について所定の範囲(本実施形態において領域Z1)内であるか否かを判定する。
判別部116eは、位置判定部115eの判定結果に基づいて、所定の範囲(本実施形態において領域Z1)内を流れる観測対象物(本実施形態において細胞C)を判別対象とする。
【0159】
この構成により、本実施形態に係るフローサイトメータ1eでは、流路20において所定の範囲内を流れる観測対象物のみを判別対象とできるため、観測対象物を判別するための解析結果(光学情報IC)が流線の深さ方向の位置ずれに依存してばらつくことを低減できる。本実施形態に係るフローサイトメータ1eでは、深さ方向位置PPを示す位置情報IPを元にゲーティングを行い揃ったデータを得ることができるので、位置情報IPに基づいたゲーティングを行わない場合に比べてよりばらつきが抑えられた安定したデータ解析を実現できる。
【0160】
また、本実施形態に係るフローサイトメータ1eでは、判別部116eは、学習用の観測対象物(本実施形態において学習用細胞)と、学習用の観測対象物についての光学情報ICとの関係が学習された学習結果LDeに基づく推論モデルと、情報生成装置(本実施形態においてPC8)が生成する光学情報ICとに基づいて観測対象物(本実施形態において細胞C)を判別する。
また、学習用の観測対象物(本実施形態において学習用細胞)とは、所定の範囲(本実施形態において領域Z1)内を流れる観測対象物(本実施形態において細胞)である。
【0161】
この構成により、本実施形態に係るフローサイトメータ1eでは、所定の範囲内を流れる観測対象物と、学習用の観測対象物についての光学情報ICとの関係が学習された学習結果LDeに基づく推論モデルに基づいて判別処理を実行できるため、学習結果LDeにおける流線の光軸方向の位置ずれの影響を、学習用の観測対象物を所定の範囲内を流れる観測対象物に限定しない場合に比べて小さくできるため、学習結果LDeに基づく機械学習の精度が流線の光軸方向の位置ずれのために低下することを抑制できる。
【0162】
なお、上述した実施形態における演算装置10、または演算装置10eの一部、例えば、信号強度取得部110、位置算出部111、出力部112、スキャン部113、光学情報取得部114e、位置判定部115e、判別部116e、及び学習部117eをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、演算装置10、または演算装置10eに内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
また、上述した実施形態における演算装置10、または演算装置10e一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。演算装置10、または演算装置10eの各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0163】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0164】
1…フローサイトメータ、20…流路、2…マイクロ流体装置、50…結像レンズ、6…光検出器、8…PC、10…演算装置、CP…キャリブレーションパターン、C…細胞、OX…光軸、PP…深さ方向位置、SG…計測信号、LS…信号光、IC…光学情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25