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特許75663113次元対象物を外観検査するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】3次元対象物を外観検査するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
G01B11/30 102G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020194056
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022082895
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】597103528
【氏名又は名称】株式会社ダイワメカニック
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 政宏
(72)【発明者】
【氏名】原川 良介
(72)【発明者】
【氏名】磯部 忠明
(72)【発明者】
【氏名】細川 哲夫
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-221811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/84-21/658
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元対象物を外観検査する方法であって、
(a)前記3次元対象物に対して所定の範囲の波長の電磁波を照射するステップと、
(b)前記3次元対象物によって反射された電磁波をスクリーンに投影するステップと、
(c)前記スクリーンに投影された投影像を撮影するステップと
を含み、
(d)前記投影像から前記3次元対象物に関連する関心領域を抽出し、前記関心領域を所定の数の画素に分割するステップと、
(e)前記投影像を前記所定の数の画素の各々が有する特性に応じて二値画像に変換し、横方向に沿って縦方向にある前記二値画像の一方の値を有する画素の数を順次カウントして横方向のヒストグラムを形成し、縦方向に沿って横方向にある前記二値画像の一方の値を有する画素の数を順次カウントして縦方向のヒストグラムを形成し、前記横方向のヒストグラム及び前記縦方向のヒストグラムの形状から、少なくとも4つの統計的データである前記投影像の形状特徴量を計算するステップと、
(f)前記少なくとも4つの統計的データに基づいて、前記3次元対象物の表面の状態を判定するステップと
を更に含む方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)は、研磨された前記3次元対象物に対して電磁波を照射するステップを含み、前記ステップ(f)は、前記3次元対象物の表面の研磨状態を判定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記研磨状態が所定の条件を満たさない場合には、前記ステップ(a)の前に前記3次元対象物を研磨した研磨装置によって前記3次元対象物を再度研磨させて前記ステップ(a)~(f)を繰り返す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(f)の前に、入力層、隠れ層、及び出力層の3層から構成されているニューラルネットワークモデルを構築し、既存の少なくとも4つの統計的データの値及びそれらに対応する判定の値を前記入力層及び前記出力層に入力して訓練済みニューラルネットワークモデルを構築し、前記ステップ(f)は、前記訓練済みニューラルネットワークモデルの入力層に前記ステップ(e)において計算された前記少なくとも4つの統計的データの値を入力して前記3次元対象物の表面の状態を判定するステップを含む、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~の何れか一項に記載の方法を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項6】
3次元対象物を外観検査するシステムであって、
前記3次元対象物に対して所定の範囲の波長の電磁波を照射する光源と、
前記3次元対象物によって反射された電磁波を投影するスクリーンと、
前記スクリーンに投影された投影像を撮影するカメラと
を備え、
前記システムは、前記投影像に関連するデータを受信する処理装置を更に備え、前記処理装置は、前記投影像から前記3次元対象物に関連する関心領域を抽出し、前記関心領域を所定の数の画素に分割し、前記投影像を前記所定の数の画素の各々が有する特性に応じて二値画像に変換し、横方向に沿って縦方向にある前記二値画像の一方の値を有する画素の数を順次カウントして横方向のヒストグラムを形成し、縦方向に沿って横方向にある前記二値画像の一方の値を有する画素の数を順次カウントして縦方向のヒストグラムを形成し、前記横方向のヒストグラム及び前記縦方向のヒストグラムの形状から、少なくとも4つの統計的データである前記投影像の形状特徴量を計算し、前記少なくとも4つの統計的データに基づいて、前記3次元対象物の表面の状態を判定する、システム。
【請求項7】
前記光源は、研磨された前記3次元対象物に対して電磁波を照射し、前記処理装置は、前記3次元対象物の表面の研磨状態を判定する、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理装置が前記研磨状態が所定の条件を満たしていないと判定した場合には、前記処理装置は、前記3次元対象物を研磨した研磨装置に前記3次元対象物を再度研磨させるようにする、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理装置は、入力層、隠れ層、及び出力層の3層から構成されているニューラルネットワークモデルを構築し、既存の少なくとも4つの統計的データの値及びそれらに対応する判定の値を前記入力層及び前記出力層に入力して訓練済みニューラルネットワークモデルを構築し、前記処理装置は、前記訓練済みニューラルネットワークモデルの入力層に計算された前記少なくとも4つの統計的データの値を入力して前記3次元対象物の表面の状態を判定する、請求項の何れか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的に3次元対象物の外観を検査して、3次元対象物を分類するシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋食器、器物、等の製造工程は、フォークを例にすると、トリムプレス(外形抜き)、平面研磨、刃抜き・曲げプレス(成形)、端面研磨(コバ擦り・刃擦り)、洗浄の順番で行われる。最終仕上げである端面研磨工程は、ほぼ職人の手作業に依存するが、職人の高齢化及び後継者不足のために年々に人手が不足しており、その結果、大量受注に対応できず、失注する場合もあるので、早急に自動化が求められている。また、仕上がりの評価は、職人によってフォークに光を当てた際の光沢の状態を基に目視で判断されており、上記のような研磨作業を含めて熟練を要する作業であり、更には技能差による個人間のばらつきが品質低下の要因となる場合もある。従って、仕上がりの評価を自動的に行うことは、人手不足解消、品質維持、等から重要である。
【0003】
非特許文献1には、レーザービームを試料に対して照射し、試料によって反射されたレーザービームをカメラによって直接撮影し、撮影された試料に対応する干渉縞の画像を分析する方法が開示され、画像におけるコントラストと二乗平均表面粗さとの間の関係から表面粗さを測定する。
【0004】
非特許文献2には、レーザービームを試料に対して照射し、試料によって反射されたレーザービームをスクリーンに投影し、スクリーンに投影された試料に対応する干渉縞をカメラによって撮影し、撮影された干渉縞の画像を分析する方法が開示され、画像から関心領域を抽出し、干渉縞の画素値のばらつき度合いである分散と二乗平均表面粗さとの間の関係から表面粗さを測定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】D. Xu, Q. Yang, F. Dong, and S. Krishnaswamy, “Evaluation of surface roughness of a machined metal surface based on laser speckle pattern,”The Journal of Engineering, vol. 2018, no. 9, pp. 773-778, 2018.
【文献】X. Zhao and Z. Gao, “Surface roughness measurement using spatial average analysis of objective speckle pattern in specular direction,” Optics and Lasers in Engineering, vol. 47, no. 11, pp. 1307-316, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1による反射されたレーザービームを直接撮影する方法は、フォーク等の金属製品にレーザービームを照射すると、金属光沢によって輝度が変化し、また解像度が低いために、試料の表面の状態を精確に判定することができないという問題点がある。
【0007】
カメラによって画像を撮影する際、画像にはカメラのダイナミックレンジの限界を超えていわゆる白飛びが発生する場合がある。非特許文献2のよるスクリーンに投影された干渉縞を撮影する方法は、撮影された画像には白飛びが発生する場合があり、特にレーザービームを試料に照射することによる露光時間を長くするほど白飛びの影響を受けて、その撮影された干渉縞の画素値の分散を計算しても、試料を精確に分類することができないという問題点がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決して、自動的に3次元対象物の外観を検査して、3次元対象物を分類するシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの観点によれば、3次元対象物を外観検査する方法が、3次元対象物に対して所定の範囲の波長の電磁波を照射するステップ(a)と、3次元対象物によって反射された電磁波をスクリーンに投影するステップ(b)と、スクリーンに投影された投影像を撮影するステップ(c)とを含み、投影像から3次元対象物に関連する関心領域を抽出し、関心領域を所定の数の画素に分割するステップ(d)と、所定の数の画素に関連する少なくとも4つの統計的データを計算するステップ(e)と、少なくとも4つの統計的データに基づいて、3次元対象物の表面の状態を判定するステップ(f)とを更に含む。
【0010】
本発明の一具体例によれば、この方法において、ステップ(a)が、研磨された3次元対象物に対して電磁波を照射するステップを含み、ステップ(f)が、3次元対象物の表面の研磨状態を判定するステップを含む。
【0011】
本発明の一具体例によれば、この方法が、研磨状態が所定の条件を満たさない場合には、ステップ(a)の前に3次元対象物を研磨した研磨装置によって3次元対象物を再度研磨させてステップ(a)~(f)を繰り返す。
【0012】
本発明の一具体例によれば、この方法において、ステップ(e)が、投影像を所定の数の画素の各々が有する特性に応じて二値画像に変換して、二値画像に基づいて少なくとも4つの統計的データを計算するステップを含む。
【0013】
本発明の一具体例によれば、この方法において、ステップ(e)が、横方向に沿って縦方向にある二値画像の一方の値を有する画素の数を順次カウントして横方向のヒストグラムを形成し、縦方向に沿って横方向にある二値画像の一方の値を有する画素の数を順次カウントして縦方向のヒストグラムを形成し、横方向のヒストグラム及び縦方向のヒストグラムの形状に基づいて少なくとも4つの統計的データを計算するステップを含む。
【0014】
本発明の一具体例によれば、この方法において、ステップ(e)が、横方向のヒストグラム及び縦方向のヒストグラムの形状から少なくとも4つの統計的データである投影像の形状特徴量を計算するステップを含む。
【0015】
本発明の一具体例によれば、この方法において、ステップ(f)の前に、入力層、隠れ層、及び出力層の3層から構成されているニューラルネットワークモデルを構築し、既存の少なくとも4つの統計的データの値及びそれらに対応する判定の値を入力層及び出力層に入力して訓練済みニューラルネットワークモデルを構築し、ステップ(f)が、訓練済みニューラルネットワークモデルの入力層にステップ(e)において計算された少なくとも4つの統計的データの値を入力して3次元対象物の表面の状態を判定するステップを含む。
【0016】
本発明の一具体例によれば、この方法が、コンピュータプログラムによって実行される。
【0017】
本発明の別の観点によれば、3次元対象物を外観検査するシステムが、3次元対象物に対して所定の範囲の波長の電磁波を照射する光源と、3次元対象物によって反射された電磁波を投影するスクリーンと、スクリーンに投影された投影像を撮影するカメラとを備え、システムが、投影像に関連するデータを受信する処理装置を更に備え、処理装置が、投影像から3次元対象物に関連する関心領域を抽出し、関心領域を所定の数の画素に分割し、所定の数の画素に関連する少なくとも4つの統計的データを計算し、少なくとも4つの統計的データに基づいて、3次元対象物の表面の状態を判定する。
【0018】
本発明の一具体例によれば、このシステムにおいて、光源が、研磨された3次元対象物に対して電磁波を照射し、処理装置が、3次元対象物の表面の研磨状態を判定する。
【0019】
本発明の一具体例によれば、このシステムにおいて、処理装置が研磨状態が所定の条件を満たしていないと判定した場合には、処理装置が、3次元対象物を研磨した研磨装置に3次元対象物を再度研磨させるようにする。
【0020】
本発明の一具体例によれば、このシステムにおいて、処理装置が、投影像を所定の数の画素の各々が有する特性に応じて二値画像に変換して、二値画像に基づいて少なくとも4つの統計的データを計算する。
【0021】
本発明の一具体例によれば、このシステムにおいて、処理装置が、横方向に沿って縦方向にある二値画像の一方の値を有する画素の数を順次カウントして横方向のヒストグラムを形成し、縦方向に沿って横方向にある二値画像の一方の値を有する画素の数を順次カウントして縦方向のヒストグラムを形成し、横方向のヒストグラム及び縦方向のヒストグラムの形状に基づいて少なくとも4つの統計的データを計算する。
【0022】
本発明の一具体例によれば、このシステムにおいて、処理装置が、横方向のヒストグラム及び縦方向のヒストグラムの形状から少なくとも4つの統計的データである投影像の形状特徴量を計算する。
【0023】
本発明の一具体例によれば、このシステムにおいて、処理装置が、入力層、隠れ層、及び出力層の3層から構成されているニューラルネットワークモデルを構築し、既存の少なくとも4つの統計的データの値及びそれらに対応する判定の値を入力層及び出力層に入力して訓練済みニューラルネットワークモデルを構築し、処理装置が、訓練済みニューラルネットワークモデルの入力層に計算された少なくとも4つの統計的データの値を入力して3次元対象物の表面の状態を判定する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、人間の眼で3次元対象物の外観を確認することなく、自動的に3次元対象物の外観を検査して3次元対象物を分類することができる。
【0025】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態としての、3次元対象物を外観検査するシステムの概略図である。
図2図1の3次元対象物への電磁波の入射及び反射を示す拡大図である。
図3図1のシステムが使用される研磨工程の概略図である。
図4】本発明の一実施形態としての、3次元対象物を外観検査する方法のフローチャートである。
図5図4の方法で使用されるヒストグラムの概略図である。
図6図4の方法で使用されるニューラルネットワークの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
図1及び図2を参照して、3次元対象物107を外観検査するシステム101について説明する。システム101は、3次元対象物107に対して所定の範囲の波長の電磁波103を照射する光源102と、3次元対象物107によって反射された電磁波103を投影するスクリーン104と、スクリーン104に投影された投影像を撮影するカメラ105とを備える。光源102から3次元対象物に対して照射される電磁波103は、3次元対象物107の表面の凹凸状態(粗さ)を検査するために適する波長であることが好ましく、細かい凹凸状態を検査するためには波長が短い電磁波103を照射することが好ましい。例えば、電磁波103は可視光であってもよく、細かい凹凸状態まで検査するためには赤色の光より青色の光が照射されてもよい。光源102は、検査される3次元対象物107の表面の凹凸状態に応じて、照射する電磁波103の波長を調整することができる。また、光源102から3次元対象物107に対して照射される電磁波103は、コヒーレント性が高いコリメート・レーザービームであることが好ましい。電磁波103は、θの角度で3次元対象物107に対して入射して、3次元対象物107においてθの角度で反射した後、スクリーン104を露光する。カメラ105は、露光されたスクリーン104を撮影する。スクリーン104には、3次元対象物107の表面の状態に対応する投影像である干渉縞が投影され、カメラ105によって、投影された干渉縞が撮影される。
【0029】
3次元対象物としては、例えば、スプーン、フォーク、ナイフ、等のカトラリー、ピンセット、メス、トング、ペンチ、ニッパのような食卓用製品、医療用製品、台所用製品、作業用製品、等であってもよく、鋳造製品、鍛造製品、溶接製品、等であってもよい。光源102は、プレス機によって打抜き加工された後に研磨されたカトラリー等の3次元対象物107、鋳造加工後にバリ取りされたプラスチック成形品等の3次元対象物107、鍛造加工後にバリ取りされた作業工具類、自動車部品、等の3次元対象物107、溶接加工後にビード取りされた3次元対象物に対して電磁波103を照射してもよい。カメラ105は、このような3次元対象物107によって反射された電磁波103に露光されたスクリーン104を撮影してもよい。3次元対象物107がスプーン、フォーク、ナイフ、等のカトラリーである場合には、コバと呼ばれるカトラリーの縁部が研磨され、図2に示すように、カトラリーのコバを外観検査するために、コバに対して電磁波103が照射される。光源102は、例えば、コバの基準平面108の法線方向から45°の入射角θで電磁波103を照射してもよいが、入射角θはこれに限定されない。
【0030】
システム101は、スクリーン104に投影された投影像に関連するデータをカメラ105から受信する処理装置106を更に備える。処理装置106は、スクリーン104に投影された投影像から3次元対象物107に関連する関心領域を抽出し、関心領域を所定の数の画素に分割する。処理装置106は、例えば、関心領域を横方向及び縦方向に沿って碁盤目状に分割して各目が各画素になるように所定の数の画素を構成してもよい。そして、処理装置106は、各画素の特性を抽出し、抽出された各画素の特性に関連する少なくとも4つの統計的データを計算し、少なくとも4つの統計的データに基づいて、3次元対象物107の表面の状態を判定する。処理装置106は、3次元対象物107の表面が所定の条件を満たすか否かに基づいて3次元対象物107を分類する。処理装置106は、例えば、撮影された干渉縞から3次元対象物107の表面の凹凸状態が所定の粗さ未満であるか否かを判定し、所定の粗さ未満である3次元対象物107を分類してもよい。
【0031】
光源102は、研磨されたカトラリー等の3次元対象物107に対して所定の範囲の波長の電磁波103を照射し、処理装置106は、各画素の特性に関連する少なくとも4つの統計的データに基づいて、打抜き加工されたカトラリー等の3次元対象物107の表面の研磨状態、鋳造加工されたプラスチック成形品等の3次元対象物107の表面のバリ取り状態、鍛造加工された作業工具類、自動車部品、等の3次元対象物107の表面のバリ取り状態、溶接加工された3次元対象物107の表面のビード取り状態、等を判定することができる。処理装置106は、例えば、研磨、バリ取り、ビード取り、等が行われた3次元対象物107の表面が所定の凹凸状態(粗さ)未満であるか否かを判定してもよい。そして、処理装置106は、3次元対象物107の表面が所定の凹凸状態を満たしていないと判定した場合には、処理装置106は、3次元対象物107の表面に対して研磨、バリ取り、ビード取り、等を行った装置に再度3次元対象物107に対して研磨、バリ取り、ビード取り、等を行わせるようにしてもよい。
【0032】
図3に、システム101を使用することによる、3次元対象物107としてのスプーン、フォーク、ナイフ、等のカトラリーのコバの研磨工程の一例としての概略図を示す。プレス機によって打抜き加工された研磨前の生地状態の3次元対象物107の表面は、コバスリ工程の呼ばれる第1の研磨工程において粗粒の砥石で研磨された後、第1の工程中検査においてシステム101を使用して外観検査される。第1の工程中検査においてシステム101によって3次元対象物107の表面が所定の条件を満たさないと判定された場合には、3次元対象物107の表面は、再度第1の研磨工程において研磨され、第1の工程中検査において外観検査される。システム101によって3次元対象物107の表面が所定の条件を満たすと判定された場合には、第1の研磨工程後のコバスリ状態の3次元対象物107の表面は、コバミガキ工程の呼ばれる第2の研磨工程において微粒の砥石で研磨された後、第2の工程中検査においてシステム101を使用して外観検査される。第2の工程中検査においてシステム101によって3次元対象物107の表面が所定の条件を満たさないと判定された場合には、3次元対象物107の表面は、再度第2の研磨工程において研磨され、第2の工程中検査において外観検査される。システム101によって3次元対象物107の表面が所定の条件を満たすと判定された場合には、3次元対象物は、コバミガキ状態として研磨工程を終了する。
【0033】
図4に、3次元対象物107を外観検査する方法の一例としてのフローチャートを示す。この方法は、例えば、図3の第1の工程中検査及び/又は第2の工程中検査で使用されることができる。3次元対象物107は、STEP101においてその表面が研磨された後、STEP102において3次元対象物107に対して所定の範囲の波長の電磁波を照射する。なお、STEP101においては、3次元対象物107に対して、バリ取り、ビード取り、等が行われてもよい。STEP103において、3次元対象物107によって反射された電磁波103がスクリーン104に投影される。STEP104において、スクリーン104に投影された投影像がカメラ105によって撮影される。図5の左側の列に、カメラ105によって撮影された3次元対象物107であるカトラリーのコバの投影像(最上の図が、図3における研磨前の生地状態のコバの投影像、中央の図が、図3における第1の研磨工程後のコバスリ状態のコバの投影像、最下の図が、図3における第2の研磨工程後のコバミガキ状態のコバの投影像)を示す。なお、この場合、光源102から赤色のレーザービームがカトラリーのコバに対して照射されている。
【0034】
STEP105において、スクリーン104に投影された投影像に関連するデータを受信した処理装置106によって、投影像から3次元対象物107に関連する関心領域が抽出され、関心領域が所定の数の画素に分割される。関心領域は、横方向であるX軸方向に沿って一定の間隔でW個に区切り、且つ縦方向であるY軸方向に沿って一定の間隔でH個に区切るようにして碁盤目状に分割されて、碁盤目状の各目が各画素を構成してもよい。このように、関心領域は、X軸方向に沿ってW個の画素及びY軸方向に沿ってH個の画素を有するようにW×H個の画素に分割される。
【0035】
STEP105において、処理装置106によって、スクリーン104に投影された投影像が、各画素が有する特性に応じて変換されてもよい。例えば、投影像が、各画素の明るさ度合い(明度)に応じて変換されてもよい。また、スクリーン104に投影された投影像が、各画素が有する特性が所定の値以上であるか所定の値未満であるかを判定して、二値画像に変換されてもよい。例えば、投影像が、各画素が有する明度が所定の値以上であるか所定の値未満であるかを判定して、二値画像に変換されてもよい。光源102から赤色のレーザービームが3次元対象物107に対して照射される場合には、RGB成分のうちの赤色の成分の明度を抽出してもよい。図5の中央の列に、図5の左側の列のカトラリーのコバの投影像が明度に応じて変換された二値画像(最上の図が、図3における研磨前の生地状態のコバの二値画像、中央の図が、図3における第1の研磨工程後のコバスリ状態のコバの二値画像、最下の図が、図3における第2の研磨工程後のコバミガキ状態のコバの二値画像)を示す。
【0036】
STEP106において、処理装置106によって、投影像から分割された所定の数の画素に関連する統計的データが計算される。上記のように関心領域がW×H個の画素に分割された場合、各画素(座標として(x,y)で表す(1≦x≦W、1≦y≦H))は特定の特性を有する。各画素の特定の特性が所定の値以上である場合にはその画素は1の値を有し、各画素の特定の特性が所定の値未満である場合にはその画素は0の値を有するように、投影像が二値画像に変換されてもよい。STEP106において、処理装置106によって、二値画像に基づいて統計的データが計算されてもよい。処理装置106は、横方向である任意のX軸の座標xにおいて、その縦方向にある座標1≦y≦Hの画素の二値画像のうちの一方の値を有する画素の数をカウントするように、横方向であるX軸に沿って座標1≦x≦Wについてそれぞれ画素の数を順次カウントして、以下の式の横方向のヒストグラムhhorizontalを作成する。
【数1】

横方向のヒストグラムhhorizontalはベクトルで表され、Ibinary(x,y)は、座標(x,y)の二値画像の値を示す。ベクトルの各要素の値は、座標xにおける座標yの1からHまでの画素の二値画像のうちの一方の値(例えば、0及び1のうちの1)を有する画素の合計数である。同様に、処理装置106は、縦方向であるY軸の座標yにおいて、その横方向にある座標1≦x≦Wの画素の二値画素のうちの一方の値を有する画素の数をカウントするように、縦方向であるY軸に沿って座標1≦y≦Hについてそれぞれ画素の数を順次カウントして、以下の式の縦方向のヒストグラムhverticalを作成する。
【数2】

縦方向のヒストグラムhverticalはベクトルで表される。ベクトルの各要素の値は、座標yにおける座標xの1からWまでの画素の二値画像のうちの一方の値(例えば、0及び1のうちの1)を有する画素の合計数である。図5の右側の列に、図5の中央の列のカトラリーのコバの二値画像から得られた横方向のヒストグラムhhorizontal及び縦方向のヒストグラムhvertical(最上の図が、図3における研磨前の生地状態のコバの各ヒストグラム、中央の図が、図3における第1の研磨工程後のコバスリ状態のコバの各ヒストグラム、最下の図が、図3における第2の研磨工程後のコバミガキ状態のコバの各ヒストグラム)を示す。STEP106において、処理装置106によって、横方向のヒストグラムhhorizontal及び縦方向のヒストグラムhverticalの形状に基づいて統計的データが計算されてもよい。横方向のヒストグラムhhorizontal及び縦方向のヒストグラムhverticalは、投影像を分割することによって得られた画素の数であるH×W個に依存するので、横方向のヒストグラムhhorizontal及び縦方向のヒストグラムhverticalをそれぞれ正規化することによって、座標x及び座標yにおける干渉縞の出現確率を表す規格化された横方向のヒストグラムphorizontal及び規格化された縦方向のヒストグラムpverticalのベクトルをそれぞれ計算してもよい。そして、規格化された横方向のヒストグラムphorizontal及び規格化された縦方向のヒストグラムpverticalの形状に基づいて統計的データが計算されてもよい。
【0037】
3次元対象物107に電磁波103を照射すると、図2に示すように、3次元対象物107の表面において鏡面反射が起こり、その鏡面反射によってスクリーン104に投影された投影像をカメラ105によって撮影すると、撮影された投影像には、カメラ105のダイナミックレンジの限界を超えていわゆる白飛びが発生する場合があり、カメラ105が、3次元対象物107の表面の状態に対応する干渉縞を撮影することができない場合がある。特に、3次元対象物107に電磁波103を照射することによる露光時間を長くするほど、白飛びの影響を受けて3次元対象物107の表面の状態に対応する干渉縞を撮影することができなくなる。白飛びの影響を抑制するために、STEP106において、規格化された横方向のヒストグラムphorizontal及び規格化された縦方向のヒストグラムpverticalの形状から統計的データである投影像の形状特徴量が計算されてもよい。
【0038】
形状特徴量として、例えば、以下のF1~F12がある。F1は、縦方向に沿った二値画像の重心(1次のモーメント)である。
【数3】

F2は、縦方向に沿った二値画像の重心の周りの広がり度合い(2次のモーメント)である。
【数4】

F3は、縦方向に沿った二値画像の広がり度合い(2次のモーメント)である。
【数5】

F4は、縦方向に沿った二値画像の重心の周りの偏り度合い(3次のモーメント)である。
【数6】

F5は、縦方向に沿った二値画像の重心の周りの集中度合い(4次のモーメント)である。
【数7】

F6は、縦方向に沿った二値画像の集中度合いである。
【数8】

F7は、横方向に沿った二値画像の重心(1次のモーメント)である。
【数9】

F8は、横方向に沿った二値画像の重心の周りの広がり度合い(2次のモーメント)である。
【数10】

F9は、横方向に沿った二値画像の広がり度合い(2次のモーメント)である。
【数11】

F10は、横方向に沿った二値画像の重心の周りの偏り度合い(3次のモーメント)である。
【数12】

F11は、横方向に沿った二値画像の重心の周りの集中度合い(4次のモーメント)である。
【数13】

F12は、横方向に沿った二値画像の集中度合いである。
【数14】

なお、規格化された横方向のヒストグラムphorizontal及び規格化された縦方向のヒストグラムpverticalの形状から計算される形状特徴量は、F1~F12に限定されず、例えば5次以上のモーメントを含んでもよい。
【0039】
STEP107において、少なくとも4つの統計的データに基づいて、3次元対象物107の表面の状態が判定される。上記のように計算されたF1~F12の統計的データである形状特徴量から少なくとも4つを選択して、その選択された4つの形状特徴量に基づいて3次元対象物107の表面の状態が判定されてもよい。3次元対象物107の表面、電磁波103の波長、等に応じて、3次元対象物107の表面の状態を判定するために適切な形状特徴量が選択される。また、F1~F12以外の形状特徴量が選択されてもよい。このような形状特徴量に基づいて判定することによって、3次元対象物107に電磁波103を照射することによる白飛びの影響及び露光時間の影響を抑制することができ、3次元対象物107の自動的な分類を可能にする。
【0040】
STEP107において、ニューラルネットワークモデルが使用されてもよい。一般的なニューラルネットモデルは、複数の隠れ層を有し、大量の訓練データを使用して訓練することによって構築されるが、このような3次元対象物107の表面の状態を判定するための訓練データは一般的に少ない。従って、STEP107において、隠れ層ができるだけ少ないニューラルネットワークモデルが使用されてもよい。例えば、図6に示すように、入力層、隠れ層、及び出力層の3層を有するニューラルネットワークモデルであるエクストリーム・ラーニング・マシン(Extreme Learning Machine:ELM)モデルが構成されてもよい。入力層には少なくとも4つの統計的データが入力され、出力層から3次元対象物107の表面の状態の判定結果が出力される。例えば、ELMモデルは、入力層のニューロンの数Dを4つ以上に設定し、統計的データとしてF1~F12のうちの4つ以上の形状特徴量を選択して、各ニューロンに対応する形状特徴量を入力するように構成されてもよい。隠れ層は、以下の式によって計算される。
【数15】

はD次元の重み付けパラメータベクトルであり、bはバイアスパラメータであり、fはD次元の形状特徴量ベクトル、すなわち、入力層に入力される統計的データである。なお、jは1~Lの整数であり、Lは隠れ層のニューロンの数であって、構築されるELMモデルによって変動する任意のパラメータである。nは1~Nの整数であり、準備される訓練データの数であって、任意のパラメータである。gは活性化関数である。活性化関数として、ステップ関数、シグモイド関数、ReLU関数、等が選択されてもよい。
【0041】
このように構成されたELMモデルを使用して、STEP107の前に、訓練データ、すなわち、既存の少なくとも4つの統計的データの値及びそれらに対応する判定の値をそれぞれ入力層及び出力層に入力して訓練済みニューラルネットワームモデルを構築する。N個の訓練済みデータを準備して、各要素が訓練データ(f~f)による隠れ層の各ニューロンの上記式から得られる計算値を表す、以下の行列式が得られる。
【数16】

訓練データ(f~f)による出力層は、以下の式によって計算される。
【数17】

βは、L次元の重み付けパラメータベクトルである。tは、訓練データ(f~f)によるN次元の出力ベクトルであり、ベクトルの各要素は、訓練データである各3次元対象物107の表面が所定の条件を満たすか否かを示す出力層の判定結果であり、例えば、所定の条件を満たす場合には1、所定の条件を満たさない場合には0であってもよい。上記式から、ムーア・ペンローズ逆行列を使用して、βは以下の式によって計算される。
【数18】

H(F)がH(F)のムーア・ペンローズ逆行列である。このようにして、訓練済みELMモデルが構築される。
【0042】
STEP107において、構築された訓練済みニューラルネットワークモデルの入力層に、STEP106において計算された少なくとも4つの統計的データの値を入力して3次元対象物107の表面の状態が判定される。例えば、訓練済みELMモデルの入力層に、統計的データとしてのF1~F12のうちの4つ以上の形状特徴量を対応する入力層のニューロンに入力すると、訓練済みELMモデルの出力層から1又は0の出力され、3次元対象物107の表面の凹凸状態が判定される。そして、STEP108において、1が出力される場合には3次元対象物107の表面の凹凸状態が所定の粗さ未満であると判定されて研磨、バリ取り、ビード取り、等の工程を終了させ、0が出力される場合には3次元対象物107の表面の凹凸状態が所定の粗さ以上であると判定されて研磨、バリ取り、ビード取り、等の工程を再度行わせるように、3次元対象物107が分類されてもよい。このようにELMモデルを使用することによって、訓練データの数が充分でなくても3次元対象物107の表面の状態を判定することができる。
【0043】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0044】
101 システム
102 光源
103 電磁波
104 スクリーン
105 カメラ
106 処理装置
107 3次元対象物
108 基準平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6