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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ソレノイドコイル
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20241007BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
A61M37/00
A61B17/56
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020219610
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104409
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-10-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、大学発新産業創出プログラム(START)プロジェクト支援型「変形性膝関節症を対象とした骨髄間葉系幹細胞の磁気ターゲティングによる軟骨再生治療の事業化」に関する研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】521195331
【氏名又は名称】株式会社Flying Cell
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】亀井 直輔
(72)【発明者】
【氏名】島上 正人
(72)【発明者】
【氏名】越智 光夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 義和
(72)【発明者】
【氏名】平見 尚隆
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 太一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎一
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-30393(JP,A)
【文献】特開2007-267875(JP,A)
【文献】特開2017-45792(JP,A)
【文献】特開2005-288044(JP,A)
【文献】国際公開第2011/049236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に投与された磁性複合体に磁場を印加するソレノイドコイルであって、
n個(nは、2以上の整数)のサブソレノイドコイルSC~SCであって、最も内側に位置し、且つ、空芯である1番目のサブソレノイドコイルSCと、i-1番目(iは2以上n以下の整数)のサブソレノイドコイルSCi-1を取り囲むi番目のサブソレノイドコイルSCと、からなるサブソレノイドコイルSC~SCと、
サブソレノイドコイルSCi-1とサブソレノイドコイルSCとの間に介在し、一部が当該間から引き出された金属製の板状部材と、
前記板状部材のうち前記一部に接合された金属製の管状部材と、を備えている、
ことを特徴とするソレノイドコイル。
【請求項2】
前記板状部材は、第1のサブ板状部材と、第2のサブ板状部材とにより構成されており、
前記第1のサブ板状部材は、一対の両端面のうち一方の端面からサブソレノイドコイルSCi-1とサブソレノイドコイルSCとの間に挿入されるとともに、前記一方の端面の側の一部が当該間から引き出されており、
前記第2のサブ板状部材は、前記一対の両端面のうち他方の端面から前記間に挿入されるとともに、前記他方の端面の側の一部が前記間から引き出されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のソレノイドコイル。
【請求項3】
前記管状部材は、第1のサブ管状部材と、第2のサブ管状部材とにより構成されており、
前記第1のサブ板状部材のうち前記一部には、前記第1のサブ管状部材が接合されており、
前記第2のサブ板状部材のうち前記一部には、前記第2のサブ管状部材が接合されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のソレノイドコイル。
【請求項4】
前記板状部材及び前記管状部材の各々を、それぞれ、第1の板状部材及び第1の管状部材として、
サブソレノイドコイルSCの内側面に沿って設けられ、一部が前記内側面から引き出された金属製の板状部材である第2の板状部材と、
前記第2の板状部材のうち前記一部に接続された金属製の管状部材である第2の管状部材と、を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のソレノイドコイル。
【請求項5】
サブソレノイドコイルSCの外側面に沿って設けられ、一部が前記外側面から引き出された金属製の板状部材である第3の板状部材と、
前記第3の板状部材のうち前記一部に接続された金属製の管状部材である第3の管状部材と、を更に備えている、
ことを特徴とする請求項4に記載のソレノイドコイル。
【請求項6】
前記第3の管状部材の直径は、前記第1の管状部材の直径よりも大きく、
前記第1の管状部材、前記第2の管状部材、及び前記第3の管状部材のうち径方向において隣接する2本の管状部材同士を比較した場合、外側に設けられた管状部材の直径は、内側に設けられた管状部材の直径以上である、
ことを特徴とする請求項5に記載のソレノイドコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流を流すことによって内部の空洞に磁場を発生させる空芯のソレノイドコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節における軟骨の損傷に対して間葉系幹細胞等を用いた再生医療の開発が多く行われている。その中でも骨髄間葉系幹細胞に超常磁性ナノ粒子を取り込ませて磁性複合体とし、患部近傍投与後に磁場により患部に誘導する方法は、投与した幹細胞を確実に患部に留めることができ、治療効果が期待されている。
【0003】
磁性複合体に対して体外から磁場を作用させる方法としては、体表面に強力な磁石(永久磁石、超電導磁石)を近接させる方法が考えられる。しかし、この方法では軟骨損傷の位置によっては、望ましい方向に磁場を作用させることが困難である場合がある。例えば、変形性膝関節症は、大腿骨内側顆の軟骨に障害が起きている場合が多い。そのため、体表面に磁石を近接させる方法では、意図した方向に磁性化細胞を誘導することが困難である。
【0004】
できるだけ意図した方向に磁性化細胞を誘導させようとする場合、治療部位から離れた位置に磁石を置くことになるが、そうすると磁性化細胞に作用する磁場が弱くなってしまう。
【0005】
このように、従来の磁石を用いた方法では、磁性化細胞を誘導する方向(すなわち、磁石が発生させる磁場の方向)と、磁場の強さとを両立させることが難しい場合がある。
【0006】
このような課題を解決するため、特許文献1には磁石の一態様として空芯のソレノイドコイルを用いる方法が開示されている。空芯のソレノイドコイルに電流を流すことにより、ソレノイドコイルの内部に設けられた空洞には、ソレノイドコイルの軸方向に沿った磁場が発生される。そのため、ソレノイドコイルの軸方向を調整することにより、空洞に患部(例えば膝)を挿入した状態において、膝に印加される磁場の方向を調整することができる。この磁場の方向の調整は、体表面と磁石との距離とは無関係に実施可能である。したがって、空芯のソレノイドコイルを用いることにより、磁性複合体を患部に誘導することが容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-151605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、投与された磁性複合体を患部に誘導させる場合における効率を高めるためには、できるだけ強い磁場を用いることが好ましい。
【0009】
また、磁性複合体を患部に定着させるためには、磁性複合体と患部との間で細胞間の相互作用が生じる必要がある。その相互作用が生じるための時間は、10分間程度であると理解されている。したがって、磁性複合体を患部に定着させるためには、所望の強さの磁場を10分間程度に亘って印加し続けることが求められる。
【0010】
ソレノイドコイルに電流を流すことにより生じる磁場は、単位長さ当たりの導線の巻き数と、電流値と、ソレノイドコイルの横断面における形状により決まる。すなわち、形状が同じであるソレノイドコイルを用いてより高い磁場を得るためには、巻き数を多くするとともに、高い電流を流せばよい。
【0011】
しかしながら、ソレノイドコイルの線材として超伝導材料ではなく常伝導材料(例えば銅)を用いる場合、ソレノイドコイルは、流される電流に依存したジュール熱を発する。このジュール熱の熱量Qは、ソレノイドコイルの抵抗Rと、流す電流Iを用いて、Q=R×Iで表される。
【0012】
この式からは、熱量Qを抑制するという観点では、高い電流を用いるよりも、導線を細くして巻き数を多くすることが有利であることが分かる。しかしながら、この場合、ソレノイドコイルの抵抗Rが高くなる。そのため、ソレノイドコイルに所望の電流を流すためにより高い電圧が必要となる。
【0013】
このようなジュール熱は、ソレノイドコイルにおける大きな課題の一つである。磁場コイルで発生した熱を取り除く(抜熱する又は排熱する)方法としては、空冷式及び水冷式が用いられる。
【0014】
空冷式は冷却のために特別な構造が不要であるか、比較的シンプルな構成とできるため、多くの磁場コイルで使われている。しかし空冷式のうち自然空冷では、抜熱できる熱量が少なく小型または低磁場のコイルに適用が限定される。ファン等で空気を送る強制空冷であっても抜熱効率は高いとは言えず、室内の温度上昇などの屋内環境への影響もある。
【0015】
水冷式は、冷媒の一態様である水を用いてソレノイドコイルを冷却する方式である。水冷式には、直接冷却方式と、間接冷却方式とがある。直接冷却方式は、ソレノイドコイルの線材を直接水で冷却する方式である。間接冷却方式は、ソレノイドコイルの線材と水との間に金属製の板状部材及び管状部材を介在させることにより、線材を間接的に水で冷却する方式である。
【0016】
直接冷却方式の一態様としては、中空導体であるホローコンダクター線を線材として用いてソレノイドコイルを構成し、ホローコンダクター線の内部に水を流すことによりソレノイドコイルを冷却する態様が考えられる。この方式においては、水が線材を直接冷却するため優れた抜熱効率を示す。しかしながら、導体内部が中空であるためホローコンダクター線は太くなりがちである。そのため、この方式においては、巻き数を多くすることが難しい。また、水の流路が長くなることに伴い流路抵抗が大きくなる。そのため、十分な流量の水を流すために磁場コイルを分割するなどの工夫が必要となる。また、それに伴い、ソレノイドコイルの構成が複雑化する。
【0017】
間接冷却方式は、直接冷却方式よりも構造が単純であることから多く利用されている。間接冷却方式の一態様としては、図12に示すようなソレノイドコイル110が考えられる。図12の上段の図は、ソレノイドコイル110の斜視図であり、図12の下段の図は、ソレノイドコイル110の縦断面図である。なお、縦断面図とは、ソレノイドコイル110の中心軸Ac(図12のF-F線)を含む断面における断面図である。
【0018】
ソレノイドコイル110は、複数のサブソレノイドコイルと、複数の板状部材と、複数の板状部材の各々に接合された管状部材と、を備えたソレノイドコイルである。ソレノイドコイル110は、中心軸Acの回りに空洞Cvが形成されている空芯のソレノイドコイルである。
【0019】
ここでは、複数のサブソレノイドコイルとして、2つのサブソレノイドコイル1111,1112を採用し、複数の板状部材として、3枚の板状部材1121,1122,1123を採用している。また、図12において図示を省略しているものの、板状部材1121,1122,1123の各々には、それぞれ、水を流すための管状部材が接合されている。なお、板状部材1121,1122,1123と、管状部材とは、何れも金属製(例えば銅製)である。
【0020】
サブソレノイドコイル1111,1112は、同じ構成を有するソレノイドコイルであり、中心軸Acの方向である軸方向に沿って配列されている。
【0021】
板状部材1121,1122,1123は、サブソレノイドコイル1111,1112において生じるジュール熱を抜熱する冷却板として機能する。板状部材1121は、サブソレノイドコイル1111の一方の端面に接合されている。板状部材1122は、サブソレノイドコイル1111とサブソレノイドコイル1112との間に介在するように、サブソレノイドコイル1111の他方の端面とサブソレノイドコイル1112の一方の端面とに接合されている。板状部材1123は、サブソレノイドコイル1112の他方の端面に接合されている。
【0022】
ソレノイドコイル110においては、板状部材1122がサブソレノイドコイル1111とサブソレノイドコイル1112との間に介在している。そのため、ソレノイドコイルの表面である一対の端面からだけなく、ソレノイドコイルの内部からも抜熱することができる。すなわち、ソレノイドコイル110は、内部を冷却することができる。
【0023】
しかしながら、図12の下段の図に示すように、中心軸Acと直交する状態で板状部材1121,1122,1123を設けることに伴い、ソレノイドコイル110の軸長Lscは、伸びてしまう。具体的には、軸長Lscは、サブソレノイドコイル1111,1112の軸方向の長さ(L2の2倍)と比較して、板状部材1121,1122,1123の軸方向の長さ(L1の3倍)だけ伸びてしまう。
【0024】
上述したようにソレノイドコイル110は、空洞Cvに患部(例えば膝)を挿入して用いることを想定している。したがって、空洞Cvの直径Dinは患部(例えば膝)の直径を上回るように構成されており、例えば20cmである。この場合、ソレノイドコイル110の軸長が長くなることは、患部に印加する磁場における調整可能な範囲が狭くなることを意味するので、好ましくない。
【0025】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑み成されたものであり、軸長を延ばすことなく内部を冷却可能なソレノイドコイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るソレノイドコイルは、n個(nは、2以上の整数)のサブソレノイドコイルSC~SCであって、最も内側に位置し、且つ、空芯である1番目のサブソレノイドコイルSCと、i-1番目(iは2以上n以下の整数)のサブソレノイドコイルSCi-1を取り囲むi番目のサブソレノイドコイルSCと、からなるサブソレノイドコイルSC~SCと、サブソレノイドコイルSCi-1とサブソレノイドコイルSCとの間に介在し、一部が当該間から引き出された金属製の板状部材と、前記板状部材のうち前記一部に接合された金属製の管状部材と、を備えている。
【0027】
板状部材は、各サブソレノイドコイルSCにおいて生じたジュール熱を抜熱する冷却板として機能する。また、管状部材は、管内に抜熱用の冷媒を流すことによって、前記ジュール熱を板状部材から抜熱する冷却管として機能する。
【0028】
上記の構成によれば、各サブソレノイドコイルSCが同軸状に、且つ、径方向に沿って内側から順番に配置されており、隣接するサブソレノイドコイルSCi-1とサブソレノイドコイルSCとの間に冷却板の本体が介在する。したがって、従来のソレノイドコイル(図12参照)と比較して、本ソレノイドコイルは、軸長を延ばすことなくソレノイドコイルの内部を冷却することができる。
【0029】
なお、ソレノイドコイルの内部に板状部材を挿入することによって、ソレノイドコイルの外径は、大きくなる。しかし、ソレノイドコイルの空洞に患部(例えば膝)を挿入して用いることを想定した場合、ソレノイドコイルの外径は、患部に印加する磁場の方向における調整可能な範囲に影響を及ぼさない。したがって、本ソレノイドコイルは、このような用途に好適である。
【0030】
また、本発明の第2の態様に係るソレノイドコイルにおいては、上述した第1の態様に係るソレノイドコイルの構成に加えて、前記板状部材は、第1のサブ板状部材と、第2のサブ板状部材とにより構成されており、前記第1のサブ板状部材は、一対の両端面のうち一方の端面からサブソレノイドコイルSCi-1とサブソレノイドコイルSCとの間に挿入されるとともに、前記一方の端面の側の一部が当該間から引き出されており、前記第2のサブ板状部材は、前記一対の両端面のうち他方の端面から前記間に挿入されるとともに、前記他方の端面の側の一部が前記間から引き出されている、構成が採用されている。
【0031】
上記の構成によれば、第1のサブ板状部材及び第2のサブ板状部材の各々を、ソレノイドコイルの各端面から挿入できる。したがって、挿入すべき距離が短縮されるので、第1のサブ板状部材及び第2のサブ板状部材の各々を容易に所定の位置に設けることができる。
【0032】
板状部材が第1のサブ板状部材と第2のサブ板状部材とに二分割されていない場合、ソレノイドコイルの一方の端面から他方の端面に至るように板状部材を前記間に挿入することになる。この場合、挿入すべき距離が長いことに起因して、板状部材が所定の位置に達する前にサブソレノイドコイルSCi-1及びサブソレノイドコイルSCの少なくとも何れかが崩れる可能性が高い。
【0033】
また、上記の構成によれば、第1のサブ板状部材及び第2のサブ板状部材の各々のうちサブソレノイドコイルSCi-1とサブソレノイドコイルSCとの間から引き出された一部に管状部材を溶接することができる。この場合、板状部材が第1のサブ板状部材と第2のサブ板状部材とに分割されていることにより、管状部材があらかじめ溶接された第1のサブ板状部材及び第2のサブ板状部材の各々を、前記間に挿入できる。したがって、第1のサブ板状部材及び第2のサブ板状部材の各々を上記間に挿入したあとに管状部材を溶接することを避けられるので、ソレノイドコイルの各端面の近くに管状部材を設けることができる。すなわち、ソレノイドコイルの軸長を無闇に延ばすことなくソレノイドコイルの内部を冷却することができる。
【0034】
例えば、サブソレノイドコイルSCi-1とサブソレノイドコイルSCとの間に1枚ものである板状部材を挿入しておき、前記間から引き出された一部に管状部材を溶接する場合、ソレノイドコイルの各端面の近くに管状部材を設けることができない。ソレノイドコイルの各端面の近くに管状部材を溶接しようとした場合、溶接時に生じる熱により、ソレノイドコイルを構成する線材を覆う絶縁被覆が破壊される虞があるためである。したがって、前記間に1枚ものである板状部材が介在する構成を採用する場合には、ソレノイドコイルの軸長を延ばさざるを得ない。
【0035】
また、本発明の第3の態様に係るソレノイドコイルにおいては、上述した第2の態様に係るソレノイドコイルの構成に加えて、前記管状部材は、第1のサブ管状部材と、第2のサブ管状部材とにより構成されており、前記第1のサブ板状部材のうち前記一部には、前記第1のサブ管状部材が接合されており、前記第2のサブ板状部材のうち前記一部には、前記第2のサブ管状部材が接合されている、構成が採用されている。
【0036】
上記の構成によれば、第1のサブ板状部材及び第2のサブ板状部材の各々を、それぞれ、第1のサブ管状部材及び第2のサブ管状部材の各々を用いて、独立して冷却することができる。換言すれば、各ソレノイドコイルSCを、一方の端面側及び他方の端面側の各々から冷却することができる。また、板状部材において、管状部材が接合されている箇所と、管状部材から最も離れた箇所との距離を短くすることができる。したがって、ソレノイドコイルを冷却する効率を高めることができる。
【0037】
また、本発明の第4の態様に係るソレノイドコイルにおいては、上述した第1の態様~第3の態様の何れか一態様の構成に加えて、前記板状部材及び前記管状部材の各々を、それぞれ、第1の板状部材及び第1の管状部材として、サブソレノイドコイルSCの内側面に沿って設けられ、一部が前記内側面から引き出された金属製の板状部材である第2の板状部材と、前記第2の板状部材のうち前記一部に接続された金属製の管状部材である第2の管状部材と、を更に備えている、構成が採用されている。
【0038】
上記の構成によれば、サブソレノイドコイルSCの内側面を確実に冷却することができる。本ソレノイドコイルの一使用例として、サブソレノイドコイルSCの空芯である芯部分(空洞)に膝を差し込んだ状態で、この膝に磁場を印加することが挙げられる。このような使用例において、内側面は、人体に最も近接する部分であるため、確実に冷却することが好ましい。
【0039】
また、本発明の第5の態様に係るソレノイドコイルにおいては、上述した第4の態様に係るソレノイドコイルの構成に加えて、サブソレノイドコイルSCの外側面に沿って設けられ、一部が前記外側面から引き出された金属製の板状部材である第3の板状部材と、前記第3の板状部材のうち前記一部に接続された金属製の管状部材である第3の管状部材と、を更に備えている、構成が採用されている。
【0040】
上記の構成によれば、サブソレノイドコイルSCの外側面を確実に冷却することができる。
【0041】
また、本発明の第6の態様に係るソレノイドコイルにおいては、上述した第5の態様に係るソレノイドコイルの構成に加えて、前記第3の管状部材の直径は、前記第1の管状部材の直径よりも大きく、前記第1の管状部材、前記第2の管状部材、及び前記第3の管状部材のうち径方向において隣接する2本の管状部材同士を比較した場合、外側に設けられた管状部材の直径は、内側に設けられた管状部材の直径以上である、構成が採用されている。
【0042】
管状部材を流れる流体(例えば冷媒)に生じる流路抵抗(換言すれば損失)は、その長さに比例し、その直径に反比例する。第1の管状部材、第2の管状部材、及び第3の管状部材のうちソレノイドコイルの径方向において隣接する2本の管状部材を比較した場合、外側に設けられた管状部材の長さは、内側に設けられた管状部材の長さよりも長くなる。上記の構成によれば、第1の管状部材、第2の管状部材、及び第3の管状部材の全ての直径が等しい場合と比較して、第1の管状部材、第2の管状部材、及び第3の管状部材の各々に生じ得る流路抵抗のばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の一態様によれば、軸長を延ばすことなく内部を冷却可能なソレノイドコイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の一実施形態に係るソレノイドコイルの斜視図である。
図2図1に示したソレノイドコイルの一部を拡大した断面図である。
図3図1に示したソレノイドコイルが備えている板状部材及び管状部材の三面図である。
図4図1に示したソレノイドコイルの製造工程を示す模式図である。
図5】本発明の一実施例に係るソレノイドコイルの平面図である。
図6図5に示したソレノイドコイルの中心における磁束の電流依存性を示すグラフである。
図7図5に示したソレノイドコイルにおいて200mTを発生させた場合における各部の温度変化を示すグラフである。
図8図5に示したソレノイドコイルにおいて200mTを発生させた別の場合における各部の温度変化を示すグラフである。
図9図5に示したソレノイドコイルにおいて210mTを発生させた場合における各部の温度変化を示すグラフである。
図10図5に示したソレノイドコイルにおいて190mTを発生させた場合における各部の温度変化を示すグラフである。
図11図5に示したソレノイドコイルのうち最も温度が高くなるホットスポットの温度変化を示すグラフである。190mT,200mT,210mTを発生させた各場合について、冷却水の流量として10L/分及び20L/分の各々を採用した場合について図示している。
図12】従来のソレノイドコイルの斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
〔ソレノイドコイルの構成〕
以下、本発明の一実施形態に係るソレノイドコイル10の構成について、図1図3を参照して説明する。
【0046】
図1は、ソレノイドコイル10の斜視図である。
【0047】
図2は、ソレノイドコイル10の一部の断面であって図1に示すB断面を拡大した断面図である。図1に示すB断面は、縦断面に含まれるソレノイドコイル10の2つの断面(図1における上側の断面及び下側の断面)のうち一方の断面(図1における上側の断面)である。なお、ソレノイドコイル10の縦断面とは、中心軸Ac(図1のA-A線)を含む断面である。また、ソレノイドコイル10の横断面とは、中心軸Acに直交する断面である。また、図2においては、図面の見やすさを優先したため、各部材の材質を示すハッチングを省略している。
【0048】
図3は、ソレノイドコイル10が備えている第1のサブ板状部材1221及び第1のサブ管状部材1321の三面図である。
【0049】
なお、以下において、中心軸Acと平行な方向を軸方向と呼び、軸方向に直交する方向を径方向と呼び、横断面内において径方向に直交する方向を円周方向と呼ぶ。
【0050】
図1に示すように、ソレノイドコイル10は、サブソレノイドコイル群11と、板状部材群12と、管状部材群13と、マニホールド14,15と、ホース16,17と、ケーシング18と、を備えている。また、図2に示すように、ソレノイドコイル10は、封止部材19を更に備えている。
【0051】
<サブソレノイドコイル群>
図1に示すように、サブソレノイドコイル群11は、4個(n=4)のサブソレノイドコイル111,112,113,114により構成されている。サブソレノイドコイル111~114は、n個(nは、2以上の正の整数)のサブソレノイドコイルSC~SCの一例である。なお、以下において、サブソレノイドコイル112,113,114の各々をサブソレノイドコイル11i(iは2以上n以下の整数、nは2以上の正の整数)とも記載する。サブソレノイドコイル11iは、サブソレノイドコイルSCの一例である。なお、サブソレノイドコイル111は、サブソレノイドコイルSCの一例である。
【0052】
サブソレノイドコイル111~114の各々は、導電性を有する線材Wをらせん状且つ複数重に巻くことによって構成されている。本実施形態においては、線材Wとして、導線が銅製であり、外側面が絶縁体により被覆された平角ホルマール線を採用している。この平角ホルマール線は、厚みが2.8mmであり、幅が3.2mmである。ただし、線材Wの種類、横断面形状、及びサイズは、これに限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0053】
本実施形態においては、図2に示すように、1層の巻き数を222回とし、6層重ねたコイルをサブソレノイドコイル111として採用している。また、1層の巻き数を185回とし、5層重ねたコイルをサブソレノイドコイル112~114の各々として採用している。
【0054】
1番目のサブソレノイドコイルであり、最も内側に位置するサブソレノイドコイル111は、内側面の直径である内径として約210mmを採用し、外側面の直径である外径が約227mmである。
【0055】
2番目のサブソレノイドコイルであり、サブソレノイドコイル111を取り囲むように設けられたサブソレノイドコイル112は、内側面の直径である内径として約231mmを採用し、外側面の直径である外径として約245mmを採用している。
【0056】
3番目のサブソレノイドコイルであり、サブソレノイドコイル112を取り囲むように設けられたサブソレノイドコイル113は、内側面の直径である内径として約249mmを採用し、外側面の直径である外径として約263mmを採用している。
【0057】
4番目のサブソレノイドコイルであり、サブソレノイドコイル113を取り囲むように設けられたサブソレノイドコイル114は、内側面の直径である内径として約267mmを採用し、外側面の直径である外径として約281mmを採用している。サブソレノイドコイル114は、最も外側に位置するサブソレノイドコイルである。
【0058】
サブソレノイドコイル群11においては、このように構成されたサブソレノイドコイル111~114の各々が、同軸状に、且つ、径方向に沿って内側から順番に配置されている。
【0059】
なお、サブソレノイドコイル111の内側面の内径を初めとする各サブソレノイドコイルのサイズは、上述したものに限定されるものではなく、想定する患部の大きさなどに合わせて適宜設計することができる。
【0060】
<冷却機構>
ソレノイドコイル10が備えている板状部材群12と、管状部材群13と、マニホールド14,15と、ホース16,17とは、冷却機構を構成する。この冷却機構は、ソレノイドコイル10の内側面、外側面、及び内部からソレノイドコイル10を冷却する。
【0061】
図1及び図2に示すように、板状部材群12は、板状部材121,122,123,124,125により構成されている。図2に示すように、板状部材121,125は、1枚の板状部材である。一方、図2に示すように、板状部材122,123,124の各々は、それぞれ、第1のサブ板状部材1221,1231,1241と、第2のサブ板状部材1222,1232,1242とにより構成されている(図2参照)。すなわち、板状部材122,123,124の各々は、それぞれ、二分割されている。
【0062】
図1及び図2に示すように、管状部材群13は、管状部材131,132,133,134,135により構成されている。また、図2に示すように、管状部材131,132,133,134,135の各々は、それぞれ、第1のサブ管状部材1311,1321,1331,1341,1351と、第2のサブ管状部材1312,1322,1332,1342,1352とにより構成されている。
【0063】
本実施形態において、板状部材121~125の各々、及び、管状部材131~135の各々は、銅製である。ただし、板状部材121~125、及び、管状部材131~135を構成する金属は、銅に限定されるものではなく、熱伝導率が比較的高く、価格が比較的安価な金属の中から適宜選択することができる。このような金属の例としては、銅以外に、アルミニウムが挙げられる。
【0064】
(ソレノイドコイルの内部)
板状部材122,123,124の各々は、サブソレノイドコイルSCi-1とサブソレノイドコイルSCとの間に介在し、一部が当該間から軸方向に沿って引き出された金属製の板状部材(第1の板状部材とも称する)の一例である。板状部材122~124の各々の軸方向の長さ(第1のサブ板状部材1221,1231,1241の各々の軸方向の長さと第2のサブ板状部材1222,1232,1242の各々の軸方向の長さとの和)は、サブソレノイドコイル112~114の軸方向の長さよりも長い。したがって、軸方向に沿ってみた場合(図2参照)、板状部材122~124の前記一部である両端部は、サブソレノイドコイル112~114の両端面から突出している。板状部材122~124の各々は、ソレノイドコイル10の内部に介在するので、ソレノイドコイル10の内部を効率よく冷却することができる。
【0065】
第1のサブ板状部材1221は、ソレノイドコイル10の一対の端面(図2においては、左端に位置する端面及び右端に位置する端面)のうち一方の端面(図2においては、左端に位置する端面)からサブソレノイドコイル111とサブソレノイドコイル112との間に挿入されるとともに、前記一方の端面の側の一部が当該間から引き出されている。
【0066】
前記間に挿入される前の状態における第1のサブ板状部材1221の形状を、図3に示す。このように、第1のサブ板状部材1221は、長方形である板状部材を所定の半径を有する円柱の側面に沿うように成形することによって得られる。第1のサブ板状部材1221は、側面の一部に切り欠きが設けられた円筒状部材とも言える。
【0067】
第2のサブ板状部材1222は、ソレノイドコイル10の一対の端面のうち他方の端面(図2においては、右端に位置する端面)からサブソレノイドコイル111とサブソレノイドコイル112との間に挿入されるとともに、前記他方の端面の側の一部が当該間から引き出されている。
【0068】
第2のサブ板状部材1222は、円筒状部材である第1のサブ板状部材1221の一方の底面を対称面として、第1のサブ板状部材1221と鏡映対称になるように構成されている。
【0069】
第1のサブ板状部材1231,1241の各々は、第1のサブ板状部材1221と同様に構成された円筒状部材である。ただし、第1のサブ板状部材1231,1241の各々は、第1のサブ板状部材1221と比較して、円筒状である側面の半径がそれぞれ異なる。第1のサブ板状部材1231の半径は、サブソレノイドコイル112とサブソレノイドコイル113との間の半径に対応している。また、第1のサブ板状部材1241の半径は、サブソレノイドコイル113とサブソレノイドコイル114との間の半径に対応している。
【0070】
また、第2のサブ板状部材1232,1242の各々は、第2のサブ板状部材1222と同様に構成された円筒状部材である。ただし、第2のサブ板状部材1232,1242の各々は、第1のサブ板状部材1231,1241の各々と同様に、第2のサブ板状部材1222と比較して、円筒状である側面の半径がそれぞれ異なる。
【0071】
管状部材132,133,134の各々は、それぞれ、板状部材122,123,124のうちサブソレノイドコイルSCi-1とサブソレノイドコイルSCとの間から軸方向に沿って引き出された一部に接合されている。例えば、管状部材132は、板状部材122のうちサブソレノイドコイル111とサブソレノイドコイル112との間から軸方向に沿って引き出された一部に接合されている。
【0072】
上述したように、管状部材132は、第1のサブ管状部材1321と、第2のサブ管状部材1322とにより構成されている。
【0073】
第1のサブ管状部材1321は、第1のサブ板状部材1221のうち、サブソレノイドコイル111とサブソレノイドコイル112との間から引き出されている一部に接合(本実施形態においては溶接)されている(図2参照)。図3に示すように、第1のサブ管状部材1321は、側面の一部に切り欠きが設けられた円筒状部材である第1のサブ板状部材1221の側面のうち一方の底面近傍に接合されている。
【0074】
なお、第1のサブ管状部材1321を第1のサブ板状部材1221に接合する方法は、溶接に限定されるものではない。ただし、第1のサブ管状部材1321と第1のサブ板状部材1221との間における熱伝導性を高めるためには、溶接が好ましい。
【0075】
また、第2のサブ管状部材1322は、第2のサブ板状部材1222のうち、サブソレノイドコイル111とサブソレノイドコイル112との間から引き出されている一部に接合(本実施形態においては溶接)されている。この点について、第2のサブ管状部材1322は、第1のサブ管状部材1321と同様である。
【0076】
更に、管状部材133,134は、管状部材132と同様に、第1のサブ管状部材1331,1341と、第2のサブ管状部材1332,1342とにより構成されている。第1のサブ管状部材1331,1341及び第2のサブ管状部材1332,1342の各々については、それぞれ、第1のサブ管状部材1321及び第2のサブ管状部材1322と同様に構成されている。
【0077】
(ソレノイドコイルの内側面)
板状部材121は、サブソレノイドコイル111の内側面に沿って設けられ、一部が前記内側面から軸方向に沿って引き出された金属製の板状部材である第2の板状部材の一例である。板状部材121の軸方向の長さは、サブソレノイドコイル111の軸方向の長さよりも長い。したがって、軸方向に沿ってみた場合(図2参照)、板状部材121の前記一部である両端部は、サブソレノイドコイル111の両端面から突出している。板状部材121は、ソレノイドコイル10の内側面を効率よく冷却することができる。
【0078】
管状部材131は、板状部材121のうちサブソレノイドコイル111の内側面から軸方向に沿って引き出された一部に接合されている。管状部材131は、第2の管状部材の一例である。
【0079】
管状部材131を構成する第1のサブ管状部材1311は、サブソレノイドコイル111の一方の端面側(図2においては左側)において板状部材121の一部に接合されている。管状部材131を構成する第2のサブ管状部材1312は、サブソレノイドコイル111の他方の端面側(図2においては右側)において板状部材121の一部に接合されている。
【0080】
板状部材121及び管状部材131は、サブソレノイドコイル111の内側面に設けられている点を除けば、板状部材122,123,124及び管状部材132,133,134と同様に構成されている。したがって、ここでは、板状部材121及び管状部材131の詳しい説明を省略する。
【0081】
(ソレノイドコイルの外側面)
板状部材125は、サブソレノイドコイル114外側面に沿って設けられ、一部が前記外側面から軸方向に沿って引き出された金属製の板状部材である第3の板状部材の一例である。板状部材125の軸方向の長さは、サブソレノイドコイル114の軸方向の長さよりも長い。したがって、軸方向に沿ってみた場合(図2参照)、板状部材125の前記一部である両端部は、サブソレノイドコイル114の両端面から突出している。板状部材125は、ソレノイドコイル10の外側面を効率よく冷却することができる。
【0082】
管状部材135は、板状部材125のうちサブソレノイドコイル114の外側面から軸方向に沿って引き出された一部に接合されている。管状部材135は、第3の管状部材の一例である。
【0083】
管状部材135を構成する第1のサブ管状部材1351は、サブソレノイドコイル114の一方の端面側(図2においては左側)において板状部材125の一部に接合されている。管状部材135を構成する第2のサブ管状部材1352は、サブソレノイドコイル114の他方の端面側(図2においては右側)において板状部材125の一部に接合されている。
【0084】
板状部材125及び管状部材135は、サブソレノイドコイル114の外側面に設けられている点を除けば、板状部材122,123,124及び管状部材132,133,134と同様に構成されている。したがって、ここでは、板状部材125及び管状部材135の詳しい説明を省略する。
【0085】
(管状部材の直径)
図2に示すように、本実施形態において、管状部材134,135の直径は、管状部材131,132,133の直径よりも大きい。なお、管状部材134,135の直径は、互いに同じであり、管状部材131,132,133の直径は、何れも同じである。なお、ここでいう直径が同じという意味は、管状部材の製造公差の範囲内において同じということである。
【0086】
このように、本実施形態において、最も外側に位置する管状部材135の直径は、最も内側に位置する管状部材131の直径よりも大きい。また、本実施形態において、管状部材134の直径は、管状部材133の直径よりも大きい。
【0087】
すなわち、管状部材131(第1の管状部材)、管状部材132~134(第2の管状部材)、及び管状部材135(第3の管状部材)のうち、径方向において隣接する2本の管状部材同士を比較した場合、外側に設けられた管状部材の直径は、内側に設けられた管状部材の直径以上である。
【0088】
なお、本実施形態においては、管状部材131~133の直径としてφd1を採用しており、管状部材134,135の直径としてφd2を採用している。φd2は、φd1よりも大きい。すなわち、径方向に沿ってみた場合に、管状部材133と管状部材134との間において直径が大きくなる構成を採用している。
【0089】
ただし、径方向に沿ってみた場合に直径が大きくなる境界は、管状部材133と管状部材134との間に限定されるものではなく、何れの境界であってもよい。また、本実施形態においては、管状部材131~135の各々を構成する直径は、φd1及びφd2の2種類に限定されるものではなく、3~5種類の何れかであってもよい。例えば、管状部材131,132の直径としてφd1を採用し、管状部材133,134の直径としてφd2を採用し、管状部材135の直径としてφd2よりも大きいφd3を採用してもよい。
【0090】
(マニホールド及びホース)
マニホールド14,15は、一方の入出力ポートが1つであり、他方の入出力ポートが10個である冷媒20の分岐部である。本実施形態においては、マニホールド14を冷媒20の供給側として用い、マニホールド15を冷媒20の排出側として用いる。ただし、管状部材131~135及びマニホールド14,15は、冷媒20の流路に沿ってみた場合に対称に構成されている。したがって、マニホールド15を供給側として用い、マニホールド14を排出側として用いることもできる。
【0091】
マニホールド14の一方のポートには、ホース16が接続されている。また、マニホールド14の他方のポートの各々には、それぞれ、管状部材131~135を構成する第1のサブ管状部材1311,1321,1331,1341,1351及び第2のサブ管状部材1312,1322,1332,1342,1352(以下において、各サブ管状部材と称する)の一方の端部が接続されている。
【0092】
マニホールド15の一方のポートには、ホース17が接続されている。また、マニホールド15の他方のポートの各々には、それぞれ、各管状部材の他方の端部が接続されている。
【0093】
ホース16に供給された冷たい冷媒20は、各管状部材の内部を流れることによって各板状部材121~125から抜熱し、抜熱により温度が上昇した冷媒20は、ホース17から排出される。
【0094】
なお、本実施形態においては、冷媒20として水を採用している。ただし、冷媒20は、市販されている冷媒から適宜選択することができる。水以外の冷媒の一例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールの混合物、及び、シリコーンオイルが挙げられる。また、ソレノイドコイル10においては、マニホールド15から排出された温度が上昇した冷媒20を冷却したうえで、冷却された冷媒20を再びマニホールド14に供給する循環冷却器を用いてもよい。
【0095】
<樹脂モールド及びケーシング>
図2に示すように、上述したように構成されたサブソレノイドコイル群11、板状部材群12、及び管状部材群13は、封止部材19により封止されるとともに固定されている。封止部材19は、液状である樹脂(本実施形態においてはエポキシ樹脂)を硬化させることによって得られる。
【0096】
図1に示すように、ソレノイドコイル10の内側面は、内側ケーシング181により覆われており、ソレノイドコイル10の外側面は、外側ケーシング182により覆われている。また、図1では図示を省略しているものの、ソレノイドコイル10の両端面は、端面ケーシングにより覆われている。端面ケーシングは、内側ケーシング181及び外側ケーシング182と同じ材料により構成されている。これらのケーシングは、ある程度の断熱性を有する材料(すなわち、熱伝導性が低い材料)を含むことが好ましい。また、これらのケーシングは、クッション性及びある程度の機械的強度を有する材料を含むことが好ましい。また、これらのケーシングは、見栄えがよい材料により覆われていることが好ましい。ある程度の断熱性とある程度の機械的強度とを併せもつ材料としては、ポリ塩化ビニルやポリウレタンなどに代表される樹脂が挙げられる。また、断熱性が高い材料としては、発泡オレフィンや発泡ウレタンなどに代表される発泡樹脂が挙げられる。また、見栄えがよく丈夫な材料としては、合成皮革や天然皮革などが挙げられる。また、ケーシングは、内側(ソレノイドコイル10に接する側)に設けられた樹脂製(例えばポリ塩化ビニル製)の板状部材と、その板状部材の表面を覆う合成皮革とからなる二層構造であってもよいし、三層以上からなる積層構造であってもよい。
【0097】
以上のように、内側ケーシング181、外側ケーシング182、及び端面ケーシングにより構成されたケーシング18は、ソレノイドコイル10の表面を一様に覆っている。
【0098】
〔ソレノイドコイルの製造方法〕
図4を参照してソレノイドコイル10の製造方法について説明する。図4は、本製造方法を示す模式図である。なお、図4においては、各ステップにおいて新たに設けられる部材の符号のみを記載している。図4に示すように,本製造方法は、ステップS11~S22を含んでいる。
【0099】
ステップS11~S14の各々は、それぞれ、サブソレノイドコイル111~114を製造する工程である。例えば、ステップS11においては、円筒状の芯材111cの外側に、所定の巻き数及び層数の線材Wを巻くことによってサブソレノイドコイル111を製造する。ステップS12~S14においても同様に、芯材112c~114cを用いてサブソレノイドコイル112~114を製造する。
【0100】
ステップS15では、まず、サブソレノイドコイル111の内側から芯材111cを抜き取る。そのうえで、サブソレノイドコイル111の内側面に沿って、管状部材131が接合された板状部材121を載置する。
【0101】
ステップS16では、まず、サブソレノイドコイル112の内側から芯材112cを抜き取る。そのうえで、サブソレノイドコイル111の外側にサブソレノイドコイル112を載置する。これにより、サブソレノイドコイル112は、サブソレノイドコイル111を取り囲む。
【0102】
ステップS17では、サブソレノイドコイル111とサブソレノイドコイル112との間に、第1のサブ管状部材1321が接合された第1のサブ板状部材1221を挿入する。
【0103】
ステップS18では、ステップS17と同様に、サブソレノイドコイル111とサブソレノイドコイル112との間に、第2のサブ管状部材1322が接合された第2のサブ板状部材1222を挿入する。
【0104】
ステップS19では、サブソレノイドコイル113について、ステップS16~S18と同様のステップを繰り返す。すなわち、サブソレノイドコイル113の内側から芯材113cを抜き取る。そのうえで、サブソレノイドコイル112の外側にサブソレノイドコイル113を載置する。そのうえで、サブソレノイドコイル112とサブソレノイドコイル113との間に、第1のサブ管状部材1331が接合された第1のサブ板状部材1231と、第2のサブ管状部材1332が接合された第1のサブ板状部材1232とを挿入する。
【0105】
ステップS20では、サブソレノイドコイル114について、ステップS16~S18と同様のステップを繰り返す。ステップS20は、ステップS19と同様のステップなので説明を省略する。
【0106】
ステップS21では、サブソレノイドコイル115の内側面に沿って、管状部材135が接合された板状部材125を載置する。
【0107】
ステップS22では、ステップS21において得られたサブソレノイドコイル群11、板状部材群12、及び管状部材群13を取り囲むように型をセットし、その型の内部に液状である樹脂を充填する。その後、充填した樹脂を硬化させることによって封止部材19が得られる。以上の工程によりソレノイドコイル10は、製造される。
【0108】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0109】
本発明の一実施例について、図5図11を参照して説明する。図5は、本実施例において用いたソレノイドコイル10の平面図である。ソレノイドコイル10の各部のサイズは、図5に記載の通りである。図6は、本実施例のソレノイドコイル10の中心における磁束の電流依存性を示すグラフである。ソレノイドコイル10の中心とは、図1に図示した中心軸Ac上の点であり、ソレノイドコイル10の両端面の各々から等距離な点である。図7は、本実施例のソレノイドコイル10において200mTを発生させた場合における各部(図5に示したP1~P4)の温度変化を示すグラフである。図8は、本実施例のソレノイドコイル10において200mTを発生させた別の場合における各部の温度変化を示すグラフである。図9は、本実施例のソレノイドコイル10において210mTを発生させた場合における各部の温度変化を示すグラフである。図10は、本実施例のソレノイドコイル10において190mTを発生させた場合における各部の温度変化を示すグラフである。図11は、本実施例のソレノイドコイル10のうち最も温度が高くなるホットスポット(図5に示したP5)の温度変化を示すグラフである。190mT,200mT,210mTを発生させた各場合について、冷却水の流量として10L/分及び20L/分の各々を採用した場合について図示している。
【0110】
図6からは、ソレノイドコイル10がその中心において発生させる磁束密度が、ソレノイドコイル10に流す電流におよそ比例していることが分かった。また、58.6Aで190mTが、62Aで200mTが、65Aで210mTが、それぞれ得られることが分かった。
【0111】
図7は、ソレノイドコイル10に62Aの電流を16分間通電し、図5に示した各点P1~P4における温度を測定した結果である。この場合、ソレノイドコイル10が発生する磁束密度は、200mTである。また、冷媒20として水道水を採用し、その流量として20L/分を採用した。なお、図7に付した1点鎖線の直線は、ソレノイドコイル10に供給する電流を0Aにしたタイミングを示す。この点については、後述する図8図11においても同様である。
【0112】
図7からは、ソレノイドコイル10の内側面(点P1,P2)における温度は、16分間通電した時点においても50℃以下に抑えられていることが分かった。また、16分間通電した時点におけるソレノイドコイル10の外側面の温度は、マニホールド14,15から遠い側の外側面(点P4)において55℃程度であり、マニホールド14,15に近い側の外側面(点P3)において75℃程度であることが分かった。点P3には、管状部材群13及びマニホールド14,15が密集した状態で配置されている。また、ソレノイドコイル10は、ケーシング18により覆われている。したがって、ユーザや患者などが点P3に触れる可能性はない。
【0113】
図8は、図7において測定した条件をベースにし、冷媒20の流量を10L/分に変更した場合について点P1~P4における温度を測定した結果である。
【0114】
図8からは、冷媒20の流量を10L/分に変更した場合であっても、点P1,P2,P4の温度は、60℃以下に抑制され、点P3の温度は、80℃以下に抑制されていることが分かった。
【0115】
図9及び図10の各々は、図7において測定した条件をベースにし、ソレノイドコイル10に流す電流をそれぞれ65A及び58.6Aに変更した場合について点P1~P4における温度を測定した結果である。これらの場合、ソレノイドコイル10が発生する磁束密度は、それぞれ、190mT(図9)及び210mT(図10)である。
【0116】
図9からは、210mTを発生させる場合であっても、16分間の通電が可能であることが分かった。
【0117】
図10からは、190mTを発生させる場合、各点P1~P4における温度は、ほぼ平衡状態に達していることと、点P3における温度が80℃以下に抑制されていることとが分かった。以上のことから、190mTを発生させる場合においては、通電時間を更に延長することができることが分かった。
【0118】
図11は、電流を58.6A、62A、及び65Aの何れかから選択し、冷媒20の流量を20L/分及び10L/分の何れかから選択した6通りの場合について、ホットスポット(図5に示したP5)における温度を測定した結果である。
【0119】
図11からは、冷媒20の流量を10L/分から20L/分に増量することによって、点P5の温度を10℃程度抑制可能なことが分かった。また、電流として65Aを選択し、冷媒20の流量として10L/分を選択した場合であっても、点P5の最高温度は130℃程度であった。また、電流の供給を遮断した後にはすぐに温度が低下し始め、遮断から15分程度経過した後には、室温に戻ることが分かった。
【0120】
本実施例のソレノイドコイル10において採用している線材W(ホルマール線)の絶縁等級はH種以上、すなわち、被覆材の耐熱温度は220℃である。したがって、ソレノイドコイル10に電流を供給する電流源として更に大電流を供給可能な電流源を採用することによって、更に高い磁束密度を発生させた状態で16分間通電可能なことが分かった。
【符号の説明】
【0121】
10 ソレノイドコイル
11 サブソレノイドコイル群
111,112,113,114 サブソレノイドコイル
12 板状部材群
121,122,123,124,125 板状部材
1211,1221,1231,1241,1251 第1のサブ板状部材
1212,1222,1232,1242,1252 第1のサブ板状部材
13 管状部材群
131,132,133,134,135 管状部材
1311,1321,1331,1341,1351 第1のサブ管状部材
1312,1322,1332,1342,1352 第2のサブ管状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12