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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】レール錆取り装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 31/17 20060101AFI20241007BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20241007BHJP
   B24B 29/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
E01B31/17
B24B27/00 E
B24B29/00 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021078486
(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公開番号】P2022172576
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000190172
【氏名又は名称】信号器材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】中井 実
(72)【発明者】
【氏名】菊池 則充
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112697(JP,A)
【文献】特開2018-071177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 31/17
B24B 27/00
B24B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道のレール上面の錆を研磨して取り除くためのレール錆取り装置において、
レール上をレールに沿って移動可能な台車と、
回動軸部と、軸受け穴に取り付けられた当該回動軸部を回動可能に支持する軸受け部とを備え、前記台車上面の前方または後方に配置された回動機構と、
前記回動軸部の長手方向の一方の端部に回動可能に支持され、さらに、棒状の軸部を回転可能に支持する構造を有するサイドフレームと、
前記棒状の軸部に回転可能に保持された円盤状の研磨部材と、
前記サイドフレームに固定され、所定の駆動源により動力を与えることによって前記棒状の軸部を回転させる研磨部材駆動手段と、
を備え、
前記台車上面に前記研磨部材が通り抜けられるように切込み穴部を形成することとし、
前記サイドフレーム、前記研磨部材駆動手段および前記研磨部材の荷重によって前記回動軸部を下方へ回動させ、前記サイドフレームの軸部に保持された研磨部材が前記切込み穴部を通り抜け、当該研磨部材の周面下端が前記荷重によりレール上面に圧接する、
ことを特徴とするレール錆取り装置。
【請求項2】
前記サイドフレームを逆サイドから補強するための補強用フレームとして、前記回動軸部の長手方向の他方の端部に回動可能に支持されたL字フレームを設け、
前記回動軸部の左右の端部にそれぞれ支持された前記L字フレームと前記サイドフレームが正面から見て平行となるように、両フレームにて棒状の補強バーを挟持する、
ことを特徴とする請求項1に記載のレール錆取り装置。
【請求項3】
前記L字フレームは、前記研磨部材全体を装置側面から目視可能に構成する、
ことを特徴とする請求項2に記載のレール錆取り装置。
【請求項4】
前記回動機構の回動軸部に、前記研磨部材がレール上面に圧接する際の衝撃を緩和するためのねじりコイルばねを取り付ける、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載のレール錆取り装置。
【請求項5】
前記ねじりコイルばねは、前記研磨部材がレール上面に圧接する際の圧接の強さを調整可能とする、
ことを特徴とする請求項4に記載のレール錆取り装置。
【請求項6】
前記サイドフレームは、
前記棒状の軸部の先端部から前記研磨部材を着脱可能とし、かつ前記研磨部材を回転可能に保持する構成とし、
前記棒状の軸部を支持する片側面で前記研磨部材を保持する片持ち構造とする、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載のレール錆取り装置。
【請求項7】
前記研磨部材駆動手段は、前記所定の駆動源をモータとする、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載のレール錆取り装置。
【請求項8】
前記円盤状の研磨部材としてフラップホイールを採用する、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載のレール錆取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道のレール上面の錆を研磨して取り除くためのレール錆取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のレール上面(頭面)に錆が付着していると、その錆が絶縁体となって信号電流の流れに支障をきたし、車輌の運行の妨げとなる。そのため、従来から、錆を取り除くための手段として、たとえば、レール上面に沿って円盤状の研磨(研削)部材を転動させる錆取り機が用いられている。
【0003】
たとえば、特許文献1に開示されているレール錆取り機は、図7に示すように、レールR上を転動する前後の車輪51,52に保持された機台53と、機台53の後輪52上方に立てた状態で設けられたハンドル枠54とを備える。機台53の前部側には、研削した錆を集塵する集塵装置60が設けられ、後部側には、レールR上面を研磨する研磨装置70、およびこの研磨装置70と集塵装置60とを駆動するためのエンジン56が設けられている。
【0004】
エンジン56は、上下二段の階段状の枠体である揺動台57の上段に支持され、この揺動台57は、その前端側が前輪51の車軸に回動可能に支持され、その後端側はハンドル枠54に支持された棒状の調整杆58に連結されている。
【0005】
また、研磨装置70は、円盤状の研磨部材55を備え、この研磨部材55は、エンジン56の下方(揺動台57の下方)に吊り下げられた状態で回転可能に設けられ、その下端面がレールR上面に接した状態となっている。
【0006】
また、集塵装置60は第1ベルト伝達機構63を介してエンジン56によって駆動し、研磨装置70は第2ベルト伝達機構64を介して同じくエンジン56によって駆動する。
【0007】
また、調整杆58の上端には、操作ハンドル59が設けられ、この操作ハンドル59を回すと、調整杆58の下端部のねじ杆部58aに沿ってナット材61が上下動し、揺動台57が前輪51を軸に上下に移動するようになっている。そして、この揺動台57が上下に移動すると、研磨部材55がレールR上面に適宜圧接され、さらに、ハンドル枠54を押圧してレールRに沿って機台53を移動させつつエンジン56を駆動すると、研磨部材55の回転によりレールR上面に付着した錆取りが行われる。このとき、研磨による粉塵は集塵装置60によって集塵される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-240813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されたレール錆取り機は、研磨作業が進み、研磨部材55の周面がある程度摩耗すると、研磨部材55の径寸法が縮小し、研磨部材55のレールR上面に対する圧接の強さが低下する。そのため、頻繁に調整杆58を操作して研磨部材55の高さを低くし、圧接の強さを調整する必要があり、研磨作業が煩雑になる、という課題があった。
【0010】
また、特許文献1に開示されたレール錆取り機においては、作業者によって上記圧接の強さを調整するタイミング(時間的間隔)や調整の度合いが異なるため、作業者によってレールR上面の研磨仕上がりにばらつきが出やすい、という課題もあった。
【0011】
さらには、錆によってレールR上面には凹凸があるため、研磨部材55がレールR上面に対して跳ねる等の挙動が生じ易く、研磨が不十分な箇所が多くなる、という課題もあった。
【0012】
本発明は、上記課題に着目してなされたものであって、レール上面に対して研磨部材の圧接の強さを調整する作業を不要とするとともに、作業者の技術によらず安定した研磨仕上がりを得ることができるレール錆取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかるレール錆取り装置は、鉄道のレール上面の錆を研磨して取り除くためのレール錆取り装置であって、たとえば、レール上をレールに沿って移動可能な台車と、回動軸部と軸受け穴に取り付けられた当該回動軸部を回動可能に支持する軸受け部とを備え台車上面の前方または後方に配置された回動機構と、当該回動軸部の長手方向の一方の端部に回動可能に支持されさらに棒状の軸部を回転可能に支持する構造を有するサイドフレームと、当該棒状の軸部に回転可能に保持された円盤状の研磨部材と、当該サイドフレームに固定され所定の駆動源により動力を与えることによって棒状の軸部を回転させる研磨部材駆動手段と、を備える。そして、台車上面に上記研磨部材が通り抜けられるように切込み穴部を形成することとし、上記サイドフレーム、上記研磨部材駆動手段および上記研磨部材の荷重によって上記回動軸部を下方へ回動させ、上記サイドフレームの軸部に保持された研磨部材が上記切込み穴部を通り抜け、当該研磨部材の周面下端が上記サイドフレーム等の荷重によりレール上面に圧接する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明にかかるレール錆取り装置を使用することにより、上記研磨部材駆動手段等による下方への付勢力によって常に略一定かつ特定値以上の圧力で研磨部材が下方に押圧されるため、当該研磨部材の摩耗が進行した場合であっても、レール上面に対する荷重を維持しながら、当該研磨部材により研磨作業を行うことが可能となる。これにより、従来から作業者が手作業で行っていた、研磨部材の圧接の強さを調整する操作を不要とすることができ、さらに、作業者の技術によらず安定した研磨仕上がりを得ることができる。すなわち、作業者の技術力の違いによる研磨仕上がりのばらつきをなくすことができる。
【0015】
また、本発明にかかるレール錆取り装置は、補強用フレームとして、上記回動軸部の長手方向の他方の端部に回動可能に支持されたL字フレームを設け、上記回動軸部の左右の端部にそれぞれ支持された当該L字フレームと上記サイドフレームが正面から見て平行となるように、両フレームにて棒状の補強バーを挟持する、ことが望ましい。これにより、上記研磨部材駆動手段および上記研磨部材を保持するサイドフレームにかかる荷重をL字フレームと分担することができる。すなわち、負荷を分担することでサイドフレームを補強することが可能となる。
【0016】
また、本発明にかかるレール錆取り装置おいて、上記L字フレームは、上記研磨部材全体を装置側面から目視可能に構成する、ことが望ましい。これにより、上記L字フレームを一度取り外すことなく上記研磨部材の交換が可能となる。
【0017】
また、本発明にかかるレール錆取り装置は、上記回動機構の回動軸部にねじりコイルばねを取り付ける、ことが望ましい。これにより、上記研磨部材がレール上面に圧接する際の衝撃を緩和することができる。
【0018】
本発明にかかるレール錆取り装置において、上記ねじりコイルばねは、上記研磨部材がレール上面に圧接する際の圧接の強さを調整可能とする、ことが望ましい。これにより、上記研磨部材がレール上面に圧接する際の衝撃をさらに精度よく緩和することができる。
【0019】
また、本発明にかかるレール錆取り装置において、上記サイドフレームは、上記棒状の軸部の先端部から上記研磨部材を着脱可能とし、かつ当該研磨部材を回転可能に保持する構成とし、上記棒状の軸部を支持する片側面で上記研磨部材を保持する片持ち構造とすることが望ましい。これにより、上記研磨部材の交換が容易となる。
【0020】
また、本発明にかかるレール錆取り装置において、上記研磨部材駆動手段は、上記所定の駆動源をモータとする、ことが望ましい。これにより、従来と比較して大幅な軽量化を実現することができる。
【0021】
また、本発明にかかるレール錆取り装置は、上記円盤状の研磨部材としてフラップホイールを採用する、ことが望ましい。これにより、装置本体の軽量化が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかるレール錆取り装置によれば、レール上面に対して研磨部材の圧接の強さを調整する作業を不要とすることができ、さらに、作業者の技術によらず安定した研磨仕上がりを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明にかかるレール錆取り装置の第1の実施形態の構成の一例を模式的に示す側面図である。
図2図2は、本発明にかかるレール錆取り装置の第1の実施形態の構成の一例を示す平面図である。
図3図3は、本発明にかかるレール錆取り装置の第1の実施形態の構成の一例を示す正面図である。
図4図4は、本発明にかかるレール錆取り装置の第1の実施形態の構成の一例を示す斜視図である。
図5図5は、本発明にかかるレール錆取り装置の第1の実施形態の構成の一例を示す斜視図である。
図6図6は、本発明にかかるレール錆取り装置の第2の実施形態の構成の一例を示す側面図である。
図7図7は、従来のレール錆取り機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかるレール錆取り装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本願の明細書および図面において、同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0025】
<第1の実施形態>
本発明にかかるレール錆取り装置の第1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
<第1の実施形態の全体構成>
図1は、本発明にかかるレール錆取り装置の第1の実施形態の構成の一例を模式的に示す側面図である。図2は、本発明にかかるレール錆取り装置の第1の実施形態の構成の一例を示す平面図である。図3は、本発明にかかるレール錆取り装置の第1の実施形態の構成の一例を示す正面図である。また、図4および図5は、本発明にかかるレール錆取り装置の第1の実施形態の構成の一例を示す斜視図である。
【0027】
本実施形態のレール錆取り装置1は、レールRの上面に付着している錆を研磨(研削)し除去するための装置であって、並行して敷設された一対の鉄道レールRのうち、一方のレールR上に配置され、レールRに沿って移動しながらレールR上面を研磨する。すなわち、レール錆取り装置1は、片側ずつ1本のレールRを研磨する。
【0028】
具体的に説明すると、レール錆取り装置1は、レールRに沿ってレールR上面を移動可能な台車2を備え、その台車2上面の後端部にはハンドル部3が着脱可能に設けられている。この台車2は、上面がレール長手方向横長の長方形に形成されるとともにA-A断面が逆U字形に形成され、台車2の両側面の前端および後端にはそれぞれ車軸受け穴2aが設けられている。これらの車軸受け穴2aには、回動可能に支持された前輪2bおよび後輪2cが設けられている。すなわち、このレール錆取り装置1は、前輪2bと後輪2cがレールR上を転動することによって、レールRに沿って移動する。
【0029】
また、台車2上面後端部のハンドル部3の直前には、台車2上面に回動可能に支持された回動機構4が設けられている。具体的には、回動機構4は、回動軸4aと、左右に突出するように軸受け穴に取り付けられた回動軸4aを回動可能に支持する軸受け部4bとを備え、たとえば、軸受け部4bが、台車2上面後端部のハンドル部3の直前に配置されている。この軸受け部4bは、たとえば、溶接等によって台車2上面に固定される。
【0030】
また、回動機構4の回動軸4a長手方向左端部には、後述する研磨部材を下方へ移動させレールR上面に接触させるために回動可能に支持されたサイドフレーム5が設けられている。さらに、回動機構4の回動軸4aには、後述する研磨部材がレールR上面に圧接する際の衝撃を緩和するために、ねじりコイルばね4cが取り付けられている。具体的には、ねじりコイルばね4cの一端は台車2の上面に係止され、他端は、たとえば、サイドフレーム5の逆サイドに設けられたサイドフレーム(後述するL字フレーム5b)に係止されている。
【0031】
また、サイドフレーム5は、棒状の軸部5aを貫通させて回転可能に支持する構造を有し、たとえば、外側(図3に示すように正面から見て左側側面)に突出した軸部5aによって研磨部材側プーリ6が回転可能に設けられている。また、内側(研磨部材側プーリ6の逆側側面)に突出した軸部5aには、前輪2bと後輪2cとの間に、円盤状の研磨部材7が回転可能に保持されている。すなわち、本実施形態のサイドフレーム5は、軸部5aを支持する片側面で研磨部材7を保持する片持ち構造とする。なお、本実施形態では、円盤状の研磨部材7の一例としてフラップホイール(下記参考文献参照)を採用する。これにより、装置本体の軽量化を図る。
<参考文献1>
株式会社スリーエフ技研のホームページ 製品情報 オリジナル研磨材 FPホイール(フラップホイール) 2021年4月9日検索
https://tfg.co.jp/product/item/abrasive/fp_wheel/?pathinfo=product/item/abrasive/fp_wheel
<参考文献2>
理研コランダム株式会社のホームページ 製品情報 ホイール 2021年4月30日検索
https://www.rikencorundum.co.jp/product/getTypeData/5
【0032】
また、サイドフレーム5には、回動機構4から遠ざかる方向に向かって駆動ユニット8が取り付けられ、固定されている。この駆動ユニット8は、研磨部材7の駆動源であるモータ8aとギアボックス8bとを含む構成とし、たとえば、サイドフレーム5とギアボックス8bとを締め付け部材で螺合することにより固定する。また、ギアボックス8bの出力軸にはギアボックス側プーリ9が設けられ、そのギアボックス側プーリ9と研磨部材側プーリ6との間には駆動ベルト10が張架されている。そのため、モータ8aを駆動すると、ギアボックス側プーリ9が回転するとともに、駆動ベルト10を介して研磨部材側プーリ6が回転し、さらに研磨部材側プーリ6の回転動作に連動して軸部5aが回転する。これにより、研磨部材7は、たとえば、レール錆取り装置1が前進する方向に回転する。また、本実施形態においては、研磨部材7の駆動源を、従来のエンジン56からモータ8aへ切り替えることにより、従来と比較して大幅な軽量化が実現できた。
【0033】
また、本実施形態においては、サイドフレーム5を逆サイドから補強するための補強用フレームとして、回動機構4の回動軸4a長手方向右端部に、回動軸4aに回動可能に支持されたL字フレーム5bを設けることとした。具体的には、回動軸4aの左右の端部を支持するL字フレーム5bとサイドフレーム5とを、両フレームが正面から見て平行となるように棒状の補強バー5cにより接続して螺合する(両フレームで補強バー5cを挟持する)構造とした。すなわち、本実施形態においては、駆動ユニット8および研磨部材7を保持するサイドフレーム5にかかる荷重をL字フレーム5bと分担する構造とすることにより、サイドフレーム5を補強することとした。
【0034】
また、上記補強用フレームをサイドフレーム5と同一形状にすると、研磨部材7を両側から挟み込む構造となってしまい、研磨部材7を交換する際に一度補強用フレームを取り外さないと交換が行えないことから、本実施形態では、補強用フレームを、たとえば、研磨部材7全体を装置側面から目視可能なL字構造を有するL字フレーム5bとし、研磨部材7の取り付け交換位置を確保することを可能とした。これにより、逆サイドからサイドフレーム5を補強しつつ、L字フレーム5bを取り外すことなく研磨部材7の交換が可能となる。
【0035】
また、台車2上面には、下方への付勢力によってレールR上面まで移動する研磨部材7が通り抜けられるように切込み穴部11が形成されている。これにより、駆動ユニット8やサイドフレーム5等の荷重によって回動機構4の回動軸4aが下方へ回転し、サイドフレーム5に取り付けられた研磨部材7が切込み穴部11を通り抜け、研磨部材7の周面下端がレールR上面に圧接する。このとき、レールR上面に対する圧接の強さ(荷重)は、駆動ユニット8やサイドフレーム5やL字フレーム5b、および研磨部材7等の荷重による付勢力、さらには、ねじりコイルばね4cの反発力によって決まる。なお、本実施形態のねじりコイルばね4cは、たとえば、研磨部材7がレールR上面に圧接する際の圧接の強さを調整するために交換可能とする。
【0036】
また、研磨部材7の周面の幅寸法については、レールRを充分に研磨可能に設けられていれば特に限定するものではないが、本実施例では、一例として、レールR上面の幅寸法65mmに対し、研磨部材7の周面の幅寸法を50mmとしている。
【0037】
<錆取り作業の詳細>
つづいて、上記のように構成された本実施形態のレール錆取り装置1を用いた錆取り作業の詳細について説明する。
【0038】
たとえば、作業者がレールR上面の錆取り作業を行う場合には、まず、レールR上にレール錆取り装置1の前輪2bと後輪2cを載せるとともに、研磨部材7の周面下端を駆動ユニット8等の荷重による付勢力によってレールR上面に圧接する。これにより、作業者が研磨部材7の圧接の強さを調整する操作を行うことなく、駆動ユニット8等の荷重によって常に略一定かつ特定値以上の圧力をレールR上面に加えることができる。
【0039】
つぎに、モータ8aを駆動すると、これに連動して研磨部材7が回転を開始する。このとき、研磨部材7は、所定の回転数を維持しながら回転する。そして、作業者は、立った状態でレール錆取り装置1の後方からハンドル部3を把持するとともに、レール錆取り装置1を前方に押圧して前輪2bおよび後輪2cを転動させ、レール錆取り装置1のバランスを取りながら前進する。
【0040】
研磨作業を開始すると、研磨部材7がレールR上面に対し常に略一定の荷重をもって圧接しながら回転するため、レールR上面に付着していた錆は、上からの圧力と研磨部材7の回転力によって研磨除去される。また、本実施形態では、研磨部材7が駆動ユニット8等の荷重によって常に特定値以上の圧力でレールR上面に押し付けられた状態となるため、研磨部材7が跳ねる等の挙動を抑制することができる。
【0041】
その後、ある程度、研磨部材7による研磨作業が進行すると、研磨部材7の周面の摩耗も進行することになる。ここで、摩耗により研磨部材7の径寸法は縮小することになるが、駆動ユニット8等による下方への付勢力によって常に略一定かつ特定値以上の圧力で研磨部材7が下方に押圧されるため、研磨部材7の周面は、レールR上面に対する荷重を維持した状態でレールR上面に圧接する。すなわち、本実施形態のレール錆取り装置1にあっては、たとえば、研磨作業の継続により研磨部材7が摩耗した場合であっても、研磨部材7が研磨可能な状態を維持している間は、常に、研磨部材7の周面がレールR上面に駆動ユニット8等の重荷をもって圧接することになる。
【0042】
<第1の実施形態の効果>
以上のように、本実施形態によれば、駆動ユニット8等による下方への付勢力によって常に略一定かつ特定値以上の圧力で研磨部材7が下方に押圧されるため、研磨部材7の摩耗が進行した場合であっても、レールR上面に対する荷重を維持しながら、研磨部材7により研磨作業を行うことが可能となる。これにより、従来から作業者が手作業で行っていた、研磨部材7の圧接の強さを調整する操作を不要とすることができ、さらに、作業者の技術によらず安定した研磨仕上がりを得ることができる。すなわち、作業者の技術力の違いによる研磨仕上がりのばらつきをなくすことができる。
【0043】
なお、本実施形態では、サイドフレーム5を回動機構4の回動軸4a長手方向左端部に取り付けることとしたが、これに限るものではなく、たとえば、回動機構4の回動軸4a長手方向右端部に取り付けることとしてもよい。この場合、サイドフレーム5を含むすべての構成要素(サイドフレーム5,L字フレーム5b,研磨部材側プーリ6,研磨部材7,駆動ユニット8,ギアボックス側プーリ9,駆動ベルト10)が図3(正面図)と比較して左右反転の位置に設けられる。
【0044】
また、本実施形態においては、駆動ユニット8、ギアボックス側プーリ9、駆動ベルト10および研磨部材側プーリ6で、研磨部材駆動手段を構成する。具体的には、この研磨部材駆動手段において、モータ8aを駆動すると、ギアボックス側プーリ9が回転するとともに、駆動ベルト10を介して研磨部材側プーリ6が回転する。これにより、研磨部材側プーリ6の回転動作に連動する軸部5aが回転し、さらに軸部5aの回転に連動して研磨部材7が回転する。
【0045】
また、本実施形態では、円盤状の研磨部材7の一例としてフラップホイールを採用することとしたが、これに限るものではなく、円盤状でかつサイドフレーム5に脱着可能であれば、どのような研磨部材であってもよい。また、このフラップホイールは、一般的な研磨部材である砥石等とは異なり、たとえば、研磨作業の継続により研磨面の摩耗が進んだ場合であっても、回転によって径が広がるため、長期間に渡り一定以上の径を維持することができ、常に均一の研磨仕上がりを得ることができる。
【0046】
また、本実施形態においては、回動機構4の回動軸4aが必要以上に勢いよく回転し駆動ユニット8(モータ8a)が台車2に直接接触する状況や、レール錆取り装置1がレールR上に載せられていない状態および研磨部材7がサイドフレーム5に取り付けられていない状態等を考慮し、たとえば、駆動ユニット8と台車2が接触する位置にクッション材12を設置することとした。これにより、たとえば、台車2との接触による駆動ユニット8のダメージを軽減することが可能となり、ひいては、レール錆取り装置1本体を保護することが可能となる。ここで、駆動ユニット8等を保護する手段については、これに限るものではなく、どのような手段を用いることとしてもよい。
【0047】
<第2の実施形態>
つづいて、本発明にかかるレール錆取り装置の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0048】
図6は、本発明にかかるレール錆取り装置の第2の実施形態の構成の一例を示す側面図である。本実施形態のレール錆取り装置1aは、台車2に搭載されるハンドル部3以外の構成要素を、上述した第1の実施形態のレール錆取り装置1と比較して前後逆向きとなるように配置したものである。すなわち、本実施形態のレール錆取り装置1aは、台車2上面前端部に回動機構4が配置され、また、下方への付勢力によってレールR上面まで移動する研磨部材7が通り抜けられるように第1の実施形態とは異なる位置に切込み穴部11が形成されたものである。
【0049】
なお、その他の構成要素については、第1の実施形態のレール錆取り装置1と比較して前後逆向きとなるように配置したこと以外、同様に説明することが可能であるため、重複した説明を省略する。
【符号の説明】
【0050】
1,1a レール錆取り装置
2 台車
2a 車軸受け穴
2b 前輪
2c 後輪
3 ハンドル部
4 回動機構
4a 回動軸
4b 軸受け部
4c ねじりコイルばね
5 サイドフレーム
5a 軸部
5b L字フレーム
5c 補強バー
6 研磨部材側プーリ
7 研磨部材
8 駆動ユニット
8a モータ
8b ギアボックス
9 ギアボックス側プーリ
10 駆動ベルト
11 切込み穴部
12 クッション材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7