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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】静電アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/00 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
H02N1/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021528276
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2020023659
(87)【国際公開番号】W WO2020255977
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019112669
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310001067
【氏名又は名称】ストローブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】実吉 敬二
(72)【発明者】
【氏名】奥田 一雄
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-057321(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04127860(DE,A1)
【文献】特開2003-199365(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207707(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02136418(EP,A2)
【文献】特表2018-527874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00
H01L 41/09
H01L 41/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボン状の第1の電極フィルムとリボン状の第2の電極フィルムとを備えた静電アクチュエータにおいて、
前記第1の電極フィルムで形成された複数の第1の電極と前記第2の電極フィルムで形成された複数の第2の電極とが前記静電アクチュエータの一端と他端との間で折り重なって積層されており、
複数の前記第1の電極は、前記第1の電極フィルムと前記第2の電極フィルムとが積層されたときに前記一端と前記他端とにそれぞれ位置する一対の端部電極と、前記第1の電極フィルムと前記第2の電極フィルムとが積層されたときに一対の前記端部電極の間に位置する中間電極とで構成され、
前記第1の電極フィルムは、折り重ねられる前の真っ直ぐなリボン状の状態で、一対の前記端部電極に相当する部分が前記第1の電極フィルムがリボン状に延びる方向に沿って隣り合うとともに、前記中間電極に相当する部分が一対の前記端部電極に相当する部分の間には位置しておらず、
前記第1の電極フィルムは、リボン状に延びる方向に沿って繰り返し同じ向きに折れ曲がって渦巻き形状を有して、一対の前記端部電極間に前記中間電極が形成され、
前記第2の電極フィルムは、リボン状に延びる方向に沿って山折り及び谷折りに交互に折れ曲がってジグザグ形状を有して、前記第1の電極フィルムの前記第1の電極の各々の間を通る複数の前記第2の電極が形成され、
渦巻き形状の前記第1の電極フィルムとジグザグ形状の前記第2の電極フィルムとが交互に配列されるように、前記第2の電極フィルムが前記第1の電極フィルムの前記中間電極間を順次通るように設けられたことを特徴とする、静電アクチュエータ。
【請求項2】
請求項に記載の静電アクチュエータにおいて、前記第1の電極フィルムは、リボン状に延びる方向に沿って繰り返し同じ向きに折れ曲がって、複数の前記中間電極が重なるように形成されたことを特徴とする、静電アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の静電アクチュエータにおいて、前記第1の電極フィルムの先端は、前記一端と前記他端との中間位置で前記第2の電極フィルムに接合されたことを特徴とする、静電アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極間に生じる静電引力に基づく発生力を駆動力として用いる静電アクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の静電アクチュエータは、発生力が電極の面積に比例するため、大きな発生力を得るには電極の面積を大きくする必要があった。
【0003】
また、2本のリボン状の電極フィルムを折り重ねて構成された静電アクチュエータでは、リボン状の電極フィルムの電極部を厚くするとともにヒンジ部を薄くすることにより、電圧を印加したときに収縮する駆動領域では柔らかく,大きな荷重が掛かると伸びる過負荷領域では硬くなるばね特性を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017‐22926
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術による2本のリボン状の電極フィルムを折り重ねて構成された静電アクチュエータは、紙ばね状の構造を有することから,長いストロークを得ることはできるが、大きな静電力を発生させることは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、リボン状の電極フィルムで構成されていても大きな静電力を発生させることのできる静電アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リボン状の第1の電極フィルムとリボン状の第2の電極フィルムとを備えた静電アクチュエータにおいて、前記第1の電極フィルムで形成された複数の第1の電極と前記第2の電極フィルムで形成された複数の第2の電極とが前記静電アクチュエータの一端と他端との間で折り重なって積層されており、複数の前記第1の電極は、前記第1の電極フィルムがリボン状に延びる方向に沿って隣り合うとともに積層されたときに前記一端と前記他端とにそれぞれ位置する一対の端部電極と、積層されたときに前記端部電極間に位置する中間電極とを含むことを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記第1の電極フィルムは、リボン状に延びる方向に沿って繰り返し同じ向きに折れ曲がって、一対の前記端部電極間に前記中間電極が形成されていてもよい。前記第1の電極フィルムは、リボン状に延びる方向に沿って繰り返し同じ向きに折れ曲がって、複数の前記中間電極が重なるように形成されていてもよい。前記中間電極は、リボン状に延びる方向に沿って山折り及び谷折りに交互に折れ曲がって、複数の前記第1の電極が重なるように形成されていてもよい。前記第2の電極フィルムは、リボン状に延びる方向に沿って山折り及び谷折りに交互に折れ曲がって、前記第1の電極フィルムの前記第1の電極の各々の間を通る複数の前記第2の電極が形成されていてもよい。前記第1の電極フィルムの先端は、前記一端と前記他端との中間位置で前記第2の電極フィルムに接合されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、リボン状の電極フィルムで構成されていても大きな静電力を発生させることのできる静電アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る静電アクチュエータの斜視図を示す。
図2図2(a)は静電アクチュエータの正面図を示し、図2(b)は静電アクチュエータの側面図を示す。
図3】静電アクチュエータが縮んだ様子の斜視図を示す。
図4】静電アクチュエータが伸びた様子の斜視図を示す。
図5】静電アクチュエータのばね特性のグラフを示す。
図6】第1実施形態に係る静電アクチュエータの斜視図を示す。
図7図7(a)は静電アクチュエータの正面図を示し、図7(b)は静電アクチュエータの側面図を示す。
図8】静電アクチュエータが縮んだ様子の斜視図を示す。
図9】静電アクチュエータが伸びた様子の斜視図を示す。
図10】静電アクチュエータのばね特性のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る静電アクチュエータの斜視図を示し、図2は、図2(a)に静電アクチュエータの正面図を示すとともに図2(b)に静電アクチュエータの側面図を示す。
本実施形態に係る静電アクチュエータ10は、図1に示すように、リボン状の第1の電極フィルム11とリボン状の第2の電極フィルム12とを折り重ねたり接合したりして積層させた積層型静電アクチュエータである。
【0012】
第1の電極フィルム11及び第2の電極フィルム12は、電気伝導体を電気絶縁体で絶縁したフィルム状の電極であり、リボン状に細長く形成されている。すなわち、第1の電極フィルム11及び第2の電極フィルム12は、折り重ねられていない状態では細長い矩形形状に形成されている。電気伝導体には、例えば、銅箔等が使用されており、また電気絶縁体には、PET(Polyethylene Terephthalate)等が使用されている。
【0013】
静電アクチュエータ10のストローク量は、電極積層枚数に比例するため、複数の電極を積層させることによりロングストロークを得ることができる。静電アクチュエータ10は、積層された第1の電極フィルム11及び第2の電極フィルム12に電圧が印加されたときに、第1の電極フィルム11及び第2の電極フィルム12間に静電力が発生し、第1の電極フィルム11及び第2の電極フィルム12に印加された電圧の極性に応じて静電アクチュエータ10の全体が伸びたり縮んだりするようになっている。
【0014】
以下、本実施形態に係る静電アクチュエータ10の構造について具体的に説明する。
静電アクチュエータ10は、リボン状の第1の電極フィルム11とリボン状の第2の電極フィルム12とが、静電アクチュエータ10の一端13と他端14との間で折り重なって形成されている。これにより、静電アクチュエータ10は、第1の電極フィルム11で形成された複数の第1の電極1と第2の電極フィルム12で形成された複数の第2の電極2とが積層された構造を有している。第1の電極1どうしは、第1の電極1と同様に第1の電極フィルム11の一部であるヒンジ部3で接続されている。同様に第2の電極2どうしは、第2の電極2と同様に第2の電極フィルム12の一部であるヒンジ部4で接続されている。
【0015】
複数の第1の電極1は、図2(a)に示すように、一対の端部電極1a,1aと5つの中間電極1bとで構成されている。
【0016】
端部電極1a,1aは、第1の電極フィルム11と第2の電極フィルム12とが積層されたときに静電アクチュエータ10の一端13と他端14とにそれぞれ位置するようになっている。これら端部電極1a,1aは、第1の電極フィルム11のリボン状に延びる方向に沿って隣り合っている、すなわち第1の電極フィルム11を折り重ねる前の真っ直ぐなリボン状の状態で端部電極1a,1aに相当する部分どうしの間に中間電極1bに相当する部分が位置しないように第1の電極フィルム11上に形成されている。
【0017】
中間電極1bは、第1の電極フィルム11と第2の電極フィルム12とが積層されたときに端部電極1a,1a間に位置するように第1の電極フィルム11上に形成されている。
【0018】
第1の電極フィルム11は、リボン状に延びる方向に沿って繰り返し同じ向きに折れ曲がって、一対の端部電極1a,1a間に中間電極1bが形成されている。すなわち、第1の電極フィルム11は、側方から見たときに渦巻き状に巻かれた形状を有している。ここで、第1の電極フィルム11は、リボン状に延びる方向に沿ってさらに繰り返し同じ向きに渦巻き状に折れ曲がっていることにより、複数の中間電極1bが重なるように形成されている。
【0019】
静電アクチュエータ10は、外側の外側ヒンジ部3aで結合された一対の端部電極1aで構成された外側部分5と、内側の内側ヒンジ部3bで結合された複数の中間電極1bで構成された内側部分6とが入れ子式に構成されている。
【0020】
一方、第2の電極フィルム12は、図2(b)に示すように、第2の電極フィルム12のリボン状に延びる方向に沿って山折り及び谷折りにより交互に折れ曲がっている。すなわち、第2の電極フィルム12は、側方から見たときにジグザグに折り返された形状を有している。第2の電極フィルム12は、第1の電極フィルム11の第1の電極1の各々の間を通る6つの第2の電極2が形成されている。
【0021】
第1の電極フィルム11の先端11a(図2(a)参照)は、静電アクチュエータ10の一端13と他端14との中間位置で第2の電極フィルム12に接合されている。すなわち、第1の電極フィルム11と第2の電極フィルム12とは、折り重ねられる前の接合された状態で、第1の電極フィルム11の先端11aが第2の電極フィルム12の中央に垂直に接合されてT字形状になっている。
【0022】
図3は静電アクチュエータが縮んだ様子の斜視図を示し、図4は静電アクチュエータが伸びた様子の斜視図を示す。このシミュレーションに用いたリボン状の電極フィルムは、幅0.5mm,厚さ4μmのものを用いている。
【0023】
静電アクチュエータ10は、第1の電極フィルム11及び第2の電極フィルム12に異なる極性の電圧が印加されたときに、図3に示すように、第1の電極1と第2の電極2とが静電力で引っ張られて縮むようになっている。
【0024】
一方、静電アクチュエータ10は、第1の電極フィルム11及び第2の電極フィルム12に同じ極性の電圧が印加されたときに、図4に示すように、第1の電極1と第2の電極2とが静電力で反発して伸びるようになっている。
【0025】
図5は、静電アクチュエータのばね特性のグラフを示す。この図において、縦軸はばね定数をmNの単位で示し、横軸は一端13または他端14の変位量をμmの単位で示している。
静電アクチュエータ10は、図5に示すように、一端13または他端14の変位量の小さな駆動領域のバネ定数は小さく、一端13または他端14の変位量の大きな過負荷領域のバネ定数は大きくなる構造となっており、駆動領域と過負荷領域との比は5倍以上で皿ばねのような理想的なばね特性が得られる。
【0026】
本実施形態に係る静電アクチュエータ10は、第1の電極フィルム11のリボン状に延びる方向に沿って隣り合い、積層されたときに静電アクチュエータ10の一端13と他端14とにそれぞれ位置する一対の端部電極1a,1aと、積層されたときに端部電極1a,1a間に位置する中間電極1bとを含んでいる。これにより、過負荷領域のばね特性が大きく改善され、リボン状の電極フィルムも薄くすることができるため、リボン状の電極フィルムで構成されていても大きな静電力を発生させることができる。
【0027】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る静電アクチュエータの斜視図を示し、図7(a)は、第2実施形態に係る静電アクチュエータの正面図を示し、図7(b)は、第2実施形態に係る静電アクチュエータの側面図を示す。
【0028】
以下、第1実施形態と実質的に同じ部材に同じ符号を用いて説明する。
第2実施形態に係る静電アクチュエータ20は、図6に示すように、第1の電極フィルム1の外側部分5は第1実施形態と同じであるが、内側部分6が第1実施形態と異なっている。具体的には、第2実施形態に係る静電アクチュエータ20は、図7(a)に示すように、内側部分6が、第1の電極フィルム11のリボン状に延びる方向に沿って山折り及び谷折りにより交互に折れ曲がっている。このとき、図7(b)に示すように、第2の電極フィルム12もリボン状に延びる方向に沿って山折り及び谷折りにより交互に折れ曲がっている。このため、第1の電極フィルム11の中間電極1bは、第2の電極フィルム12の第2の電極2と交互に間隔を空けて積層されるように構成されている。
【0029】
図8は静電アクチュエータが縮んだ様子の斜視図を示し、図9は静電アクチュエータが伸びた様子の斜視図を示す。
【0030】
静電アクチュエータ20は、第1の電極フィルム11及び第2の電極フィルム12に異なる極性の電圧が印加されたときに、図8に示すように、第1の電極1と第2の電極2とが静電力で引っ張られて縮むようになっている。
【0031】
一方、静電アクチュエータ20は、第1の電極フィルム11及び第2の電極フィルム12に同じ極性の電圧が印加されたときに、図9に示すように、第1の電極1と第2の電極2とが静電力で反発して伸びるようになっている。
【0032】
図10は、第2実施形態に係る静電アクチュエータのばね特性のグラフを示す。この図において、縦軸はばね定数をmNの単位で示し、横軸は一端13または他端14の変位量をμmの単位で示している。
静電アクチュエータ20は、図10に示すように、一端13または他端14の変位量の小さな駆動領域のバネ定数は小さく,一端13または他端14の変位量の大きな過負荷領域のバネ定数は大きくなる構造となっており、駆動領域と過負荷領域との比は5倍以上で皿ばねのような理想的なばね特性が得られる。
【0033】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明はこれに限定しない。例えば、上記実施形態では、第2の電極フィルム12は、第2の電極フィルム12のリボン状に延びる方向に沿って山折り及び谷折りにより交互に折れ曲がっているが、これに限定されない。第2の電極フィルム12は、第1実施形態に係る第1の電極フィルム11と同じようにリボン状に延びる方向に沿って繰り返し同じ向きに渦巻き状に折れ曲がっていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…第1の電極
1a…端部電極
1b…中間電極
2…第2の電極
3…ヒンジ部
3a…外側ヒンジ部
3b…内側ヒンジ部
4…ヒンジ部
5…外側部分
6…内側部分
10…静電アクチュエータ
11…第1の電極フィルム
11a…先端
12…第2の電極フィルム
13…一端
14…他端
20…静電アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10