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特許7566339調整可能な瞳孔間距離機構を有する両眼タイプのヘッドマウントディスプレイシステム
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  • 特許-調整可能な瞳孔間距離機構を有する両眼タイプのヘッドマウントディスプレイシステム 図1A
  • 特許-調整可能な瞳孔間距離機構を有する両眼タイプのヘッドマウントディスプレイシステム 図1B
  • 特許-調整可能な瞳孔間距離機構を有する両眼タイプのヘッドマウントディスプレイシステム 図2
  • 特許-調整可能な瞳孔間距離機構を有する両眼タイプのヘッドマウントディスプレイシステム 図3A
  • 特許-調整可能な瞳孔間距離機構を有する両眼タイプのヘッドマウントディスプレイシステム 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】調整可能な瞳孔間距離機構を有する両眼タイプのヘッドマウントディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20241007BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021557248
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 IL2020050621
(87)【国際公開番号】W WO2020245824
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】62/856,759
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518010049
【氏名又は名称】ルムス エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
【住所又は居所原語表記】8 Pinchas Sapir Street, 7403631 Ness Ziona, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,マイケル
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0212776(US,A1)
【文献】国際公開第2013/135943(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視聴者によって着用されるように構成されたヘッドマウントディスプレイ装置であって、
湾曲したレールに移動可能に結合された一対のディスプレイモジュールであって、前記ディスプレイモジュールが、前記視聴者に向けて立体画像を投影するように構成され、第1の1つのディスプレイモジュールが、第1の立体画像を投影し、第2の1つのディスプレイモジュールが、第2の立体画像を投影し、前記第1および第2の立体画像が、前記視聴者の前の所定の収束距離で収束する単一の統合された仮想ステレオ画像を作成する、一対のディスプレイモジュールと、
前記湾曲したレールに沿って、前記レールの中点について対称的に前記ディスプレイモジュールの各々を移動し、それによって、前記所定の収束距離を維持しながら、前記ディスプレイモジュール間の距離を変えるように構成された調整機構と、を備える、ヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項2】
前記湾曲したレールおよび前記調整機構を支持するフレームをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記調整機構が、前記ディスプレイモジュール間の距離を40mm~80mmで変えるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記所定の収束距離が、0.2メートルから無限大の範囲にある、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ディスプレイモジュールが、前記所定の収束距離で収束する仮想ステレオ画像を提供する角度配向で前記湾曲したレールに結合される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記湾曲したレールが、前記一対のディスプレイモジュールが前記所定の収束距離で収束する仮想ステレオ画像を提供することを容易にする曲率を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記収束距離は、前記湾曲したレールの弧によって定義される円の半径にほぼ等しい、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ディスプレイモジュールの各々が、コンバイナモジュールに結合されたコンパクトプロジェクタモジュールを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記コンバイナモジュールが、透明基板から作製され、かつ一対の平行な外面と、前記一対の平行な外面に対して斜めに角度付けられた複数の相互に平行な部分反射内面と、を有する、光ガイド光学素子を備える、請求項に記載の装置。
【請求項10】
ヘッドマウントギアをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の主題は、ヘッドマウントディスプレイ、特に、両眼タイプのヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
拡張現実(AR)用途用の両眼タイプのヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、ユーザの実世界環境の上に表示される仮想画像を表示する。仮想画像は、両眼内に取り付けられた2つのディスプレイモジュールを使用してステレオで表示され、各ディスプレイモジュールは、瞳孔に立体画像を独立して表示するため、HMDの着用者は、知覚された奥行きを有する単一の統合された仮想画像が見える。実世界の人間のステレオビジョンを正しく模倣するために、2つの立体画像、したがってディスプレイモジュールは、所望の画像を達成するために正しく位置合わせされなくてはならない。したがって、適切な奥行き知覚のために、ディスプレイモジュールおよび/またはそこから出る画像は、視聴者が、着用者の前の所定の距離における空間に位置された統合された仮想ステレオ画像を見ることができるよう、各画像がそれぞれの瞳孔に正確な角度で当たるように、配向されるべきである。
【0003】
通常、最小のHMDシステムは、ほとんどの着用者およびほとんどの用途に好適な工場レベルの初期較正を含む。さらに、一部の堅牢なHMDシステムは、一連のセンサ(例えば、カメラ、慣性測定ユニット(IMU)、視線追跡センサなど)と、ユーザの関与の有無にかかわらず、オンデマンドでディスプレイモジュールを自動的に較正するように構成された計算ユニットと、を含む。本文脈における「較正」とは、上記のように、特定の用途について最適な収束距離を達成するためにステレオ画像間の角度を設定することを指す。
【0004】
較正の他、適切なHMD設計では、ユーザ間の瞳孔間距離(IPD)の変動も考慮する必要があり、通常、成人では55~74mmで変動し、子供では40mmまで小さくすることができる。IPDの変動は、通常、2つの方法のいずれかを使用して説明される。最初の方法は、広い水平方向の眼球運動ボックスにわたって画像を送信するディスプレイモジュールを設計することを伴う。しかしながら、この方法は、光学モジュールの複雑性および寸法が増加させ、光の効率性および明るさを低減させる。
【0005】
さまざまなIPDとの互換性を達成するための別のオプションは、手動または自動で(例えば、1つ以上のセンサおよび計算ユニットを使用して)、ディスプレイモジュール間の距離を調整する機械的機構を提供することである。この後者の方法によると、光学モジュールの設計要件が簡略化され、光効率性が改善され、モジュールの寸法が低減され得る。
【0006】
上記の機械的機構は、特定のHMDによって使用される較正システムと相互運用可能でなくてはならず、つまり、ディスプレイモジュール間の距離を変えても、画像の収束距離に悪影響を与えることはないことを意味する。前述の2つのタイプのHMDシステムを鑑みて、堅牢なHMDは、ディスプレイ間の距離をユーザのIPDに調整した後、それ自体を単に再較正することができる。しかしながら、最小のHMDシステムでは、移動機構は収束距離を含む工場出荷時の較正条件を維持しなくてはならない。そのため、一旦モジュール間の距離がIPDに対して調整されると、収束距離を維持するために、ステレオ画像間の相対角度も調整する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ディスプレイモジュール間の距離が変化するときに、ステレオ画像の収束角を自動調整するためのシステムおよび方法を提供する。角度調整は、ディスプレイモジュールが移動する湾曲したレールを使用することによって達成される。レールの曲率は、システムに対して定義され、かつシステムの工場較正中に使用される、必要な収束距離に応じて設計されるべきである。
【0008】
したがって、本開示の主題の一態様によれば、視聴者によって着用されるように構成されたヘッドマウントディスプレイ装置であって、湾曲したレールに移動可能に結合された一対のディスプレイモジュールであって、ディスプレイモジュールが視聴者に向けて立体画像を投影するように構成され、第1の1つのディスプレイモジュールが第1の立体画像を投影し、第2の1つのディスプレイモジュールが第2の立体画像を投影し、第1および第2の立体画像が視聴者の前の所定の収束距離で収束する単一の統合された仮想ステレオ画像を作成する、一対のディスプレイモジュールと、湾曲したレールに沿って、レールの中点について対称的にディスプレイモジュールの各々を移動し、それによって、所定の収束距離を維持しながら、ディスプレイモジュール間の距離を変えるように構成された調整機構と、を含む、ヘッドマウントディスプレイ装置が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、装置は、湾曲したレールおよび調整機構を支持するフレームを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、調整機構は、ディスプレイモジュール間の距離を40mm~80mmで変えるように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、所定の収束距離は、0.2メートルから無限大の範囲にある。
【0012】
いくつかの実施形態では、ディスプレイモジュールは、所定の収束距離で収束する仮想ステレオ画像を提供する角度配向で湾曲したレールに結合される。
【0013】
いくつかの実施形態では、湾曲したレールは、一対のディスプレイモジュールが所定の収束距離で収束する仮想ステレオ画像を提供することを容易にする曲率を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、収束距離は、湾曲したレールの弧によって定義される円の半径にほぼ等しい。
【0015】
いくつかの実施形態では、ディスプレイモジュールの各々は、コンバイナモジュールに結合されたコンパクトなプロジェクタモジュールを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、コンバイナモジュールは、透明基板から作製され、かつ一対の平行な外面と、一対の外面に対して斜めに角度付けられた複数の相互に平行な部分反射内面と、を有する、光ガイド光学素子を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、装置は、ヘッドマウントギアを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明を理解し、それを実際にどのように実施することができるかを確認するために、実施形態を非限定的な実施例として添付の図面を参照して説明する。
【0019】
図1A】本開示の主題の実施形態によるHMDの上面図を概略的に示す。
図1B】本開示の主題の実施形態によるHMDの上面図を概略的に示す。
図2】本開示の主題の実施形態によるHMDの内斜視図を概略的に示す。
図3A】本開示の主題の実施形態による例示的なディスプレイモジュールの正面斜視図を概略的に示す。
図3B】本開示の主題の実施形態による例示的なディスプレイモジュールの側面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の詳細な説明には、本発明の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が示されている。しかしながら、本開示の主題は、これらの特定の詳細なしで実施され得ることが、当業者によって理解されるであろう。他の場合では、本開示の主題を曖昧にしないように、周知の方法、手順、および構成要素は、詳細には説明されていない。本説明を通して、「ヘッドマウントディスプレイ」および「HMD」という用語は、両眼タイプのHMDを指すと理解されるべきであり、「ユーザ」、「着用者」および「視聴者」という用語はすべて、HMDによって投影された画像を見る人を指す。
【0021】
図1A~1Bは、開示された主題の実施形態による両眼タイプのHMDの上面図を概略的に示す。HMDは、各ディスプレイモジュールがレールの中点11からほぼ等距離になるように、外向きに(HMD着用者に対して)弧状の湾曲したレール12に移動可能に結合された一対のディスプレイモジュール10を含む。ディスプレイモジュールのうちの第1の1つは、HMD着用者の第1の眼に向けて第1の立体画像を投影し、一方、ディスプレイモジュールの第2の1つは、HMD着用者の他方の眼に向けて第2の立体画像を投影する。例えば、湾曲したレールの左側にあるディスプレイモジュールは、着用者の左目に画像を投影し、右側にあるディスプレイモジュールは、着用者の右目に画像を投影する。
【0022】
システムの組み立て中、HMDは、ディスプレイモジュールが、所定の収束距離22で、投影されたステレオ画像を単一の統合された仮想画像に組み合わせる角度でレールに取り付けられるように較正される。湾曲したレールに対するディスプレイモジュールの正確な取り付け角度は、使用中のディスプレイモジュールの特定の光学設計パラメータ(視線)に依存する。アセンブリが1つのIPDについて検証されると、任意の他のIPDに対するディスプレイモジュールの調整により、収束距離が一定に保たれる。
【0023】
図1A~1Bの角度24は、本明細書では、所望の収束距離を達成するために必要な「収束角」と称される。上記のように、収束角24は、通常、較正中に(すなわち、最初の使用の前に、通常、消費者に到達する前に)設定され、瞳孔に対して画像投影軸を回転させることによって操作することができる。収束角を設定した後、ユーザが見ると、2つの立体画像が組み合わされて、視聴者の前の収束距離22の空間に配置されているように見える単一の統合された仮想ステレオ画像が作成される。AR用途などのいくつかの実施形態では、ディスプレイモジュールは、知覚された奥行きを有する投影された仮想画像と実世界の「画像」とが組み合わさって、AR効果を創出するように、視聴者の前の外界を直視することを追加的に容易にし得る。他の場合では、仮想ステレオ画像が視聴者に見える唯一の画像である仮想現実効果をより多く創出するために、外界の視界が遮られ得る。
【0024】
視聴者IPDにおける変動に対応するようにディスプレイモジュール間の距離20を変えるために、HMDはさらに、両方のディスプレイモジュールを湾曲したレールに沿って反対方向に、かつ、レールの中点を中心に対称的に同時に移動し、それによって、ディスプレイモジュール間の距離20を増加および減少させるように構成された調整機構14を含む。レールの曲率により、ディスプレイモジュール間の距離の増加(すなわち、20から20’)は、収束角の対応する増加(すなわち、24から24’)をもたらし、それによって、所定の収束距離22が維持される。同様に、ディスプレイモジュール間の距離の減少は、収束角24の対応する減少をもたらし、ここでも所定の収束距離22がほぼ維持される。レールまたはトラックに沿って反対方向において対称的に物体を移動させるための調整機構は、当業者に既知であり、本明細書で詳細に説明する必要はない。
【0025】
非限定的な例として、図1Aは、IPDの範囲の下限に対応する、55mの距離20によって分離されたディスプレイモジュール10を有するHMDの概略図を示す。この場合、湾曲したレール12の事前構成された曲率により、距離20が55mmであるとき、収束角24は、約0.79度であり、これは、正確には2mの収束距離22を提供するために要求される収束角である。
【0026】
図1Bは、74mmのIPDについて調整された同じHMDを示す。この場合、距離20’が74mmの場合、収束角24’は約1.06度であり、これも、2mの収束距離22を提供するために要求される正確な角度である。
【0027】
上記の例は非限定的であり、実際、HMDは、IPDの範囲全体で必要な収束角を提供するために要求される正確な曲率を決定することにより、0.2m~∞の範囲におけるいかなる要求される収束距離もサポートするように設計され得ることが理解されるべきである。所望の曲率は、湾曲したレールを円の弧と見なすことにより、任意の収束距離に対して設定することができ、円の半径は、収束距離22によって定義される。
【0028】
さらに、上記の例は54mm~79mmの範囲のIPDを提供するが、同じ原理を適用して、40mm~80mmを含むが、これに限定されない、はるかに広い範囲のIPDをサポートすることができることが理解されるべきである。
【0029】
図2は、湾曲したレール12および調整機構14を支持および/または収容するための任意選択的なフレーム26を含む、本明細書に開示される実施形態によるHMDの内斜視図を概略的に示す。いくつかの実施形態(図示せず)では、HMDは、着用者の頭の所定の位置にHMDを保持するためのヘッドマウントギアをさらに含み得る。ヘッドマウントギアには、ストラップ、眼鏡、および/またはヘルメットが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0030】
図3A~3Bは、いくつかの実施形態による例示的なディスプレイモジュール10の斜視図および側面図をそれぞれ示す。ディスプレイモジュール10は、例えば、コンパクト画像プロジェクタモジュール30およびコンバイナモジュール32を含み得る。プロジェクタモジュール30は、立体画像をコンバイナモジュール32に注入するように構成される。コンバイナモジュール32は、注入された画像を受信し、投影された画像を実世界の画像と組み合わせ、組み合わされた画像を視聴者に結合出力するように構成される。いくつかの例では、コンバイナ32は、一対の平行な外面と、一対の外面に対して斜めに角度付けられ、組み合わされた画像を視聴者に結合出力するように構成された複数の相互に平行な部分反射内面(「ファセット」)34と、を有する、透明基板からなる光ガイド光学素子(または「導波路」)を使用して実装され得る。導波路に注入された立体画像は、全反射を介して導波路を伝搬され、ファセットを介して視聴者に結合出力される。実世界の画像は、コンバイナ基板の透明度を介して、視聴者に直接送信される。上記に提供されるものなどのディスプレイモジュールは、当業者に既知であり、本明細書で詳細に説明する必要はない。
【0031】
図面に示されている湾曲したレールは、説明を明確にするために誇張された曲率で示されていること、および実際には、湾曲したレールははるかに緩やかな曲線を有することが理解されるべきである。さらに、湾曲したレールは、その全長に沿って形状が弧状である必要はなく、ディスプレイモジュールが沿って移動するように構成された部分のみであり、これは通常、必ずしもではないが、HMDが収容するように設計された最大のIPDに対応することが理解されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B