(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】マイクロ構造を製造する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/302 20060101AFI20241007BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
B81C1/00
(21)【出願番号】P 2022527998
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 GB2020052885
(87)【国際公開番号】W WO2021094762
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-11-10
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521078528
【氏名又は名称】メムススター リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEMSSTAR LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】オハラ,アンソニー
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-545460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0106318(US,A1)
【文献】特開2010-245512(JP,A)
【文献】特開平4-22123(JP,A)
【文献】特開2004-230546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/304
H01L 21/3065
H01L 21/461
B81B 1/00-7/04
B81C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ構造を製造する方法であって、
二酸化シリコン(SiO
2)の犠牲層をエッチングするためにフッ化水素(HF)蒸気を利用することと、
HF蒸気エッチングが完了すると、続いて、二酸化シリコンの前記層をHF蒸気エッチングするときに形成された
固体の残留物層を除去することと
を含
み、
除去される固体の残留物層はシリコンを含み、
前記固体の残留物層を除去することが、
前記シリコンを水素ガスと反応させてシラン(SiH
4
)を生成することと、
前記シリコンをフッ素ガスと反応させて四フッ化シリコン(SiF
4
)を生成することと、
二フッ化キセノン(XeF
2
)蒸気を用いて前記シリコンをエッチングすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
二酸化シリコン(SiO
2)の前記犠牲層の前記蒸気エッチングおよび前記
固体の残留物層の前記除去が、共通処理チャンバ内で逐次的
に実行される、請求項1に記載のマイクロ構造を製造する方法。
【請求項3】
二酸化シリコン(SiO
2)の前記犠牲層の前記蒸気エッチングおよび前記
固体の残留物層の前記除去が、別々の処理チャンバ内で逐次的に実行される、請求項1に記載のマイクロ構造を製造する方法。
【請求項4】
前記残留物層を除去するときに形成された副生成物を除去するために真空引きシステムを利用することをさらに含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載のマイクロ構造を製造する方法。
【請求項5】
前記マイクロ構造が、微小電気機械システム(MEMS)を備える、請求項1から
4のいずれか一項に記載のマイクロ構造を製造する方法。
【請求項6】
前記マイクロ構造が、半導体デバイスを含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載のマイクロ構造を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ構造の製造する際の使用のための方法に関する。典型的には、マイクロ構造は、基板または他の堆積した材料に対してある材料の除去を必要とする微小電気機械システム(MEMS)の形態をしている。特に、この発明は、フッ化水素(HF)蒸気を用いて二酸化シリコンをエッチングするステップを利用するマイクロ構造を製造するための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン酸化物の等方性エッチングは、半導体およびMEMS処理において、主にウェハ洗浄および剥離プロセスにおいて広く使用されている。マイクロ構造、例えば、
図1に示されそして全体として参照番号1により表されたタイプの微小電気機械構造(MEMS)の製造では、エッチングプロセスが、材料2の犠牲(すなわち、望まれない)領域または層を除去するために使用される。MEMS1は、慣性測定、圧力検知、熱測定、マイクロ流体工学、光学、および無線周波数通信において用途を見出されており、そしてこれらの構造に関する可能性の範囲は成長し続けている。犠牲層2は、MEMSの構築の際に基板3上に初めに堆積され、次いで、エッチングステップを用いてその後除去され、上記エッチングステップは、剥離された構造4が設計されたように、例えば、マイクロミラー、加速度計またはマイクロホンとして動作することを可能にする。信頼性のある構造を製作するために、剥離エッチングステップは、周囲の材料をエッチングせずに犠牲層2を除去することを必要とする。理想的には、犠牲層2のエッチングは、後に残る構造にまったく影響を与えないはずである。
【0003】
犠牲層2として使用される最も一般的な材料の1つは、二酸化シリコンであり、これは次いでフッ化水素(HF)蒸気を使用してエッチングされる、例えば、英国特許番号GB2,487,716B参照。HF蒸気エッチングは、プラズマレス化学エッチングであり、反応式:
【0004】
【0005】
水(H2O)は、式(1)により記述されたように、HF蒸気をイオン化することが見出され、そしてイオン化したHF蒸気
【0006】
は、次いで水(H
2O)が触媒として作用する状態で、二酸化シリコン(SiO
2)をエッチングする。式(2)から、水(H
2O)がエッチング反応それ自体から生成されることも明らかである。
【0007】
MEMS1の製作に利用されると同様に、二酸化シリコン層はまた、半導体デバイス内にも存在する。これゆえ、フッ化水素(HF)蒸気エッチング技術が標準的な半導体デバイスにおいて使用されるマルチレベル金属構造内にエアギャップ構造を作り出すために利用されることもまた知られている、例えは、米国特許第7,211,496号参照。
【0008】
HF蒸気エッチングを、いわば30nm/minよりも大きい使用可能なエッチング速度で進めるために、凝集した流体層5がエッチングしようとする表面上に存在することが必要であることが普遍的に受け入れられている、例えば、Helmsらによる「Mechanisms of the HF/H2O vapor phase etching of SiO2」という名称のJournal of Vaccum Science and Technology A、10(4)July/Aug 1992を参照。上に記載したHF蒸気エッチングプロセスに関係するすべての化合物のうちで、水(H2O)が最も低い蒸気圧を有し、それゆえ凝集した流体層5の主成分を形成する。欧州特許番号EP2046677B1は、凝集した流体層5の形成および組成のどのような制御が二酸化シリコンのHF蒸気エッチングを管理することに対して鍵であるかを開示している。正確なエッチング制御は、真空チャンバ内でHFエッチングを実行すること、チャンバ圧力、温度およびチャンバへのガス流を制御することにより達成される。HF蒸気エッチングに影響する他のパラメータは、エッチングされる二酸化シリコン層の組成および二酸化シリコン層の堆積の方法である。
【0009】
化学気相堆積(CVD)プロセスが、基板上へと二酸化シリコン(SiO2)を堆積するために通常利用される。これらのプロセスでは、化学的前駆物質、1つがシリコン源で他方が酸素源、は、反応して、基板3上へと二酸化シリコン層2を堆積する。これらのプロセスのうちの最も一般的なものは、プラズマCVD(PECVD)であり、このプロセスは堆積が低温、<450℃、で実行されることを可能にするためである。
【0010】
酸化物層(例えば、PECVDプロセスを介して二酸化シリコン層2)を堆積するときに、不純物が、意図的であっても偶発的であってもいずれかで、層へと取り込まれることがある。これが意図的に行われるときには、二酸化シリコン層2のドーピングとして知られる。ドーピング層(例えば、リンケイ酸塩ガラス(PSG)層およびホウリンケイ酸塩ガラス(BPSG)層)を利用することもまた、ドーパント材料の存在が優れたステップカバレッジ、熱特性、電気的改善およびバリア性能を提供するので半導体製造プロセス内では普通である。しかしながら、HF蒸気エッチングプロセスが化学エッチングであるので、上記プロセスは、二酸化シリコンをエッチングするが、不純物物質を含有したものを多くの場合にはエッチングしない。これゆえ、ドープト二酸化シリコンがエッチングされるにつれて、不純物物質は、エッチングプロセス中に存在する凝集した流体層5に顕われるようになる。エッチングが進行するにつれて、不純物物質がHF蒸気によってそれ自体エッチングされないのであれば、顕われたものが揮発性物質ではないときには、不純物物質は凝集した流体層5内に集まるだろう。化学的特性、不純物物質に依存して、エッチングプロセスが停止しそして凝集した流体層5が蒸発するまで、不純物物質が凝集した流体層5に留まることがある。この点で、不純物物質は、最終のMEMSまたは半導体マイクロ構造内では極めて望ましくない形質である残留物を形成する。
【発明の概要】
【0011】
これゆえ、本発明の実施形態の目的は、この分野において知られている技術と比較したときに残留物層または膜のレベルの低減を示す犠牲層二酸化シリコンをHFエッチングするステップを利用するマイクロ構造を製作する方法を提供することである。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、マイクロ構造を製作する方法であって、
- 二酸化シリコン(SiO2)の犠牲層をエッチングするためにフッ化水素(HF)蒸気を利用することと、
- 二酸化シリコンの上記層をHF蒸気エッチングするときに形成された残留物層を除去することと
を含む方法が提供される。
【0013】
二酸化シリコン(SiO2)の上記犠牲層の上記蒸気エッチングおよび上記残留物層の上記除去が、共通処理チャンバ内で逐次的にまたは同時に実行されることがある。あるいは、二酸化シリコン(SiO2)の上記犠牲層の上記蒸気エッチングおよび上記残留物層の上記除去が、別々の処理チャンバ内で逐次的に実行されることがある。
【0014】
任意選択で、上記残留物層を除去することが、上記残留物層を第1の追加のガスと反応させることを含む。
【0015】
最も好ましくは、上記残留物層を除去することが、シリコンを含む残留物層を除去することを含む。あるいは、上記残留物層を除去することが、アンモニウム塩を含む残留物層を除去することを含む。さらに代替の実施形態では、上記残留物層を除去することが、炭素を含む残留物層を除去することを含む。
【0016】
任意選択で、上記残留物層を除去することが、上記シリコンを水素ガスと反応させてシラン(SiH4)を生成することを含む。
【0017】
あるいは、上記残留物層を除去することが、上記シリコンを酸素ガスと反応させて二酸化シリコン(SiO2)を生成することを含むことができる。上記残留物層を除去することは、そのときには、上記二酸化シリコン(SiO2)をエッチングするためにフッ化水素(HF)蒸気を利用することをさらに含むことができる。
【0018】
さらなる代替形態では、上記残留物層を除去することが、上記シリコンをフッ素ガスと反応させて四フッ化シリコン(SiF4)を生成することを含む。
【0019】
さらなる代替形態では、上記残留物層を除去することが、二フッ化キセノン(XeF2)蒸気を用いて上記シリコンをエッチングすることを含むことができる。
【0020】
上記残留物層を除去することが、上記炭素を酸素ガスと反応させて二酸化炭素(CO2)およびまたは一酸化炭素(CO)を生成することを含むことができる。あるいは、上記残留物層を除去することが、上記炭素を水素ガスと反応させてメタン(CH4)を生成することを含む。あるいは、上記残留物層を除去することが、上記炭素をフッ素ガスと反応させて四フッ化物(CF4)およびまたは六フッ化エタン(C2F6)を生成することを含む。
【0021】
さらなる代替形態では、上記残留物層を除去することが、上記アンモニウム塩を160℃よりも高い温度まで加熱することを含むことができる。
【0022】
マイクロ構造を製作する上記方法が、上記残留物層を除去するときに形成された副生成物を除去するために真空引きシステムを利用することをさらに含むことができる。
【0023】
最も好ましくは、上記マイクロ構造が、微小電気機械システム(MEMS)を備える。あるいは、上記マイクロ構造が、半導体デバイスを含む。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、マイクロ構造を製作する方法であって、
-二酸化シリコン(SiO2)の犠牲層をエッチングするためにフッ化水素(HF)蒸気を利用することと、
-二酸化シリコンの上記層をHF蒸気エッチングするときに形成されたシリコンを含む残留物層を除去することと
を含む方法が提供される。
【0025】
発明の第2の態様の実施形態は、発明の第1の態様またはその実施形態の1つまたは複数の特徴を含むことができる、あるいは逆も同様である。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、マイクロ構造を製作する方法であって、
- 二酸化シリコン(SiO2)の犠牲層をエッチングするためにフッ化水素(HF)蒸気を利用することと、
- 二酸化シリコンの上記層をHF蒸気エッチングするときに形成されたアンモニウム塩を含む残留物層を除去することと
を含む方法が提供される。
【0027】
発明の第3の態様の実施形態は、発明の第1もしくは第2の態様またはその実施形態の1つまたは複数の特徴を含むことができる、あるいは逆も同様である。
【0028】
本発明の第4の態様によれば、マイクロ構造を製作する方法であって、
- 二酸化シリコン(SiO2)の犠牲層をエッチングするためにフッ化水素(HF)蒸気を利用することと、
- 二酸化シリコンの上記層をHF蒸気エッチングするときに形成された炭素を含む残留物層を除去することと
を含む方法が提供される。
【0029】
発明の第4の態様の実施形態は、発明の第1、第2もしくは第3の態様またはその実施形態の1つまたは複数の特徴を含むことができる、あるいは逆も同様である。
【0030】
単に例として、図面を参照して発明の様々な実施形態をここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】基板と剥離層との間に位置する二酸化シリコン層を含むMEMSのHF蒸気エッチングの模式図である。
【
図2】
図1のMEMSのHF蒸気エッチングを実行するために適したプロセスチャンバシステムの模式図である。
【
図3】HF蒸気エッチングプロセスに続く
図1のMEMSの模式図である。
【
図4】本発明にしたがってMEMSを製作するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図2は、
図1のMEMS1をエッチングするために適したエッチング装置6の模式的な表示を表す。エッチング装置6は、6個の入力ライン8、9、10、11、12および13、ならびに出力真空ライン14が取り付けられたエッチングチャンバ7を備えることが分かる。
【0033】
エッチングチャンバ7内部にあるものは、エッチングチャンバ7内部でエッチングされるべきMEMS構造1を設置するために適した温度制御されたペデスタル15である。6個の入力ライン8、9、10、11、12および13から供給される流体は、蓋17、エッチングチャンバ7の内部に設置された流体注入システム16を介してエッチングチャンバ7の内容積へ入る。
【0034】
MEMS1が上に設置されるペデスタル15は、温度コントローラによりペデスタル温度Tpに設定されそして維持されることがある。この温度は、室温よりも高くても低くてもよく、特定の温度がエッチングプロセスを最適化するために選択される(典型的には5~25℃)。加えて、エッチングプロセス中に、エッチングチャンバ7の壁が、典型的には20~70℃付近まで加熱される。
【0035】
エッチングチャンバ内部のエッチングャントガスの圧力、Pc、が、チャンバ圧力コントローラ18によりモニタされる。圧力コントローラ18はまた、出力真空ライン14上に設置された真空引きシステム19の動作を制御することによってエッチングチャンバ7内部の圧力を制御する手段を与えるために利用されるガスフローコントローラも組み込む。
【0036】
HF蒸気20は、調節器21および第1のマスフローコントローラ(MFC)22を通って第1の入力ライン8によりエッチングチャンバ7へ制御可能に供給される。
【0037】
制御された量の水が、第2の入力ライン9によりエッチングチャンバ7へ供給される。特に、第2の入力ライン9内に設置された液体流体コントローラ(LFC)23および気化器24が、水貯蔵部25から制御されたレベルの水蒸気を生成するために利用される。窒素ガス源26から気化器24までの窒素の流れが、第2のMFC22により制御される。窒素キャリアガスは、流体注入システム16を介してエッチングチャンバ7の内容積へと水蒸気を運ぶために利用される。
【0038】
第3の入力ライン10、第4の入力ライン11および第5の入力ライン12は、追加のガス源27、28および29、例えば、水素(H2)、酸素(O2)またはフッ素(F2)をエッチングチャンバ7の内容積へ接続するための手段を提供する。これらのガスの流れの制御は、マスフローコントローラ(MFC)22によって再び提供される。
【0039】
二フッ化キセノン(XeF2)蒸気30は、第2の調節器21およびマスフローコントローラ(MFC)22を通って第6の入力ライン13によりエッチングチャンバ7へ制御可能に供給される。
【0040】
コンピュータコントローラ31は、エッチングチャンバ7の様々な構成要素およびパラメータ、例えば、窒素キャリアガスの供給、HF蒸気の供給、チャンバ温度および圧力、等の調整を自動化するために利用される。
【0041】
エッチングの説明した方法が進行することを可能にするために、凝集した流体層5を正確にモニタリングすることを可能にする診断を得ることが必要である。上に説明したように、凝集した流体層5の物理的な特性は、MEMS1上のエッチング速度に直接影響を及ぼし、したがってエッチング速度をモニタリングすることによって凝集した流体層5の物理的な特性の直接的な診断が得られる。
【0042】
実際には、エッチング速度は、数多くの方法で、例えば、生成される副生成物のレベルをモニタリングすることによって、直接ウェハエッチングをモニタリングすることによって、またはチャンバ状態の変化をモニタリングすることによってモニタされることがある。
【0043】
図3は、
図2のエッチング装置6の内部で実行されるHF蒸気エッチングプロセスに続く
図1のMEMS1の模式的な表示を表す。見られるように、一旦HFプロセスが完了すると、典型的にはシリコンまたはアルミニウムから形成された剥離構造4が基板3に対して自由に動くように、そして必要に応じてそのように動作するように、二酸化シリコン層2が除去される。運悪く、参照番号32により一般的に表される残留物層が、MEMS1の露出した表面上に存在する。残留物層32は、粒子残留物のランダムな分布の外観を有する。
【0044】
二酸化シリコン層2を堆積するためにこれまでに論じたPECVDプロセス内で利用される化学前駆物質のうちで、2つの最も一般的に使用されるシリコン源は、シラン(SiH4)またはテトラエチルオルソシリケート(TEOS)、正式にはテトラエトキシシランと名付けられる、(Si(OC2H5)4)である。
【0045】
シリコン源がシラン(SiH4)であるときには、酸素源は、通常亜酸化窒素である。このケースにおいて、出願人は、窒素が二酸化シリコン層へと取り込まれることがあり、そのためHF蒸気を用いてエッチングしたときに、生成される残留物層32がアンモニウム塩を含むことを見出した。
【0046】
TEOSがシリコン源として利用されるときには、出願人は、HF蒸気を用いるMEMS1のその後のエッチングが、炭素不純物を含む残留物層32を生成することを見出した。
【0047】
出願人はまた、MEMS1のHF蒸気エッチング中に生成される残留物層32が、シリコン源とは無関係にシリコン不純物をしばしば含むことも見出した。残留物層32の内部のシリコン不純物の存在は、シリコンリッチ二酸化シリコン層2を生成するPECVD条件の結果であり得る。このケースでは、HF蒸気が二酸化シリコン層2をエッチングするときに、HF蒸気はシリコン汚染物をエッチングしないだろう、したがってシリコン汚染物が残留物として残る。現在まで、MEMS1のいずれかのエッチング後分析の範囲内でシリコンの存在は、シリコンがデバイスの他の領域、例えば、基板3内に位置するという事実のためであると当業者により常に考えられてきたので、シリコン系の残留物層32は本技術では完全に見逃されてきている。
【0048】
本発明にしたがって残留物層32を除去することを含むマイクロ構造、例えば、半導体デバイスまたはMEMS1を製作するための様々な方法が、
図4を参照してここで説明されるだろう。
【0049】
プロセスは、
図1~3に関して上に詳細に説明したように、犠牲二酸化シリコン層2のHF蒸気エッチングを含む。プロセスは、次いで下記の複数の技術のうちの1つまたは複数を利用することによりマイクロ構造から残留物層32を除去することを含む。
【0050】
残留物層32がシリコンを含むときには、第3の入力ライン10が、水素ガス源27をエッチングチャンバ7へ接続するために利用されることがある。水素ガスは、エッチングチャンバ7へ供給される前に、例えば、遠隔プラズマシステムによりイオン化されることがある。あるいは、水素ガスは、エッチングチャンバ7それ自体の内部でイオン化されることがある。残留物層32内のシリコンは、そのときには水素と反応してシラン(SiH4)を生成する。シラン(SiH4)が揮発性物質であるので、シランは真空引きシステム19によってエッチングチャンバ7の外へ単純に排気されることがある。
【0051】
あるいは、第4の入力ライン11が、酸素ガス源28をエッチングチャンバ7へ接続するために利用されることがある。酸素ガスは、エッチングチャンバ7へ供給される前に、例えば、遠隔プラズマシステムによりイオン化されることがある。あるいは、酸素ガスは、エッチングチャンバ7それ自体の内部でイオン化されることがある。残留物層32内のシリコンは、そのときには酸素と反応して二酸化シリコン(SiO2)を生成する。上に説明したHF蒸気エッチングプロセスは、次いで、犠牲二酸化シリコン層2に関して説明したものと類似の方式で残留物層32を除去するために繰り返されることがある。この第2のHF蒸気エッチングプロセスの副生成物は、真空引きシステム19によってエッチングチャンバ7の外へ再び単純に排気されることがある。
【0052】
残留物層32がシリコンを含むときには、第5の入力ライン12が、フッ素ガス源29をエッチングチャンバ7へ接続するために利用されることがある。フッ素ガスは、エッチングチャンバ7へ供給される前に、例えば、遠隔プラズマシステムによりイオン化されることがある。あるいは、フッ素ガスは、エッチングチャンバ7それ自体の内部でイオン化されることがある。残留物層32内のシリコンは、そのときにはフッ素と反応して四フッ化シリコン(SiF4)を生成する。四フッ化シリコン(SiF4)が揮発性物質であるので、四フッ化シリコンは、真空引きシステム19によってエッチングチャンバ7の外へ単純に排気されることがある。
【0053】
残留物層がシリコンを含むときに残留物層32を除去するために利用されることある第4の技術は、エッチングチャンバ7の内部で二フッ化キセノン(XeF
2)蒸気エッチングプロセスを実行することである。ここでは、第6の入力ライン13が、二フッ化キセノン(XeF
2)蒸気30をエッチングチャンバ7へ接続するために利用されることがある。出願人は、欧州特許番号EP1,766,665B1およびEP2,480,493B1を所有し、両者とも
図2のエッチング装置6を適応させることにより実行され得る二フッ化キセノン(XeF
2)蒸気を用いてシリコンをエッチングするための技術を開示する。
【0054】
残留物層がシリコンを含むときに残留物層32を除去するための上に説明した方法は、動作するMEMS1または半導体デバイスを形成するシリコン材料の他の露出された領域が普通にはあるので、問題を含むことがあり得ることが認識されるだろう。これゆえ、残留物層32の除去のための上に説明した技術のうちのいずれかは、上記の周辺領域内のシリコンもまた除去することが予想されるはずである。しかしながら、出願人は、残留層がシリコンを含むときに残留物層32のエッチングの速度がデバイスの周辺領域内に見出されるいずれのシリコンに対してよりも一般にはるかに大きいことを発見している。結果として、上記の技術は、周辺シリコン領域のいずれかの顕著なエッチングが行われる前に実行されることがある。シリコンエッチング速度におけるこれらの著しい違いについての理由は、露出した残留物層32内のシリコンが、十分に構造化された固体ではなく、代わりに非晶質の非常に多孔質構造を含むという事実のためであることを、出願人は確信する。
【0055】
残留物層32が炭素を含むときには、第4の入力ライン11が、酸素ガス源28をエッチングチャンバ7へ接続するために利用されることがある。酸素ガスは、エッチングチャンバ7へ供給される前に、例えば、遠隔プラズマシステムにより再びイオン化されることがある。残留物層32内の炭素は、そのときには酸素と反応して二酸化炭素(CO2)およびまたは一酸化炭素(CO)を生成する。二酸化炭素(CO2)および一酸化炭素(CO)が両者とも揮発性物質であるので、これらは真空引きシステム19によってエッチングチャンバ7の外へ両者とも単純に排気されることがある。
【0056】
あるいは、残留物層32が炭素を含むときには、第3の入力ライン10が、エッチングチャンバ7へ水素ガス供給を提供するために利用されることがある。水素ガスは、エッチングチャンバ7へ供給される前に、例えば、遠隔プラズマシステムによりイオン化されることがある。あるいは、水素ガスは、エッチングチャンバ7それ自体の内部でイオン化されることがある。残留物層32内の炭素は、そのときには水素と反応してメタン(CH4)を生成する。メタン(CH4)が揮発性物質であるので、メタンは真空引きシステム19によってエッチングチャンバ7の外へ単純に排気されることがある。
【0057】
あるいは、残留物層32が炭素を含むときには、第5の入力ライン12が、エッチングチャンバ7へフッ素ガス供給を提供するために利用されることがある。フッ素ガスは、エッチングチャンバ7へ供給される前に、例えば、遠隔プラズマシステムによりイオン化されることがある。あるいは、フッ素ガスは、エッチングチャンバ7それ自体の内部でイオン化されることがある。残留物層32内の炭素は、そのときにはフッ素と反応して四フッ化物(CF4)およびまたは六フッ化エタン(C2F6)を生成する。四フッ化物(CF4)および六フッ化エタン(C2F6)が両者とも揮発性物質であるので、これらは真空引きシステム19によってエッチングチャンバ7の外へ単純に排気されることがある。
【0058】
残留物層32がアンモニウム塩を含むときには、代替技術が利用される必要がある。アンモニウム塩が温度>160℃で分解することが知られているので、出願人は、MEMS1を加熱するためにエッチングチャンバ7内部で加熱素子を利用することによって、そのときはアンモニウム塩が気化させられその後真空引きシステム19によってエッチングチャンバ7の外へ排気され得ることを実現した。
【0059】
MEMSを形成する上に説明した方法は、このプロセスの副生成物として形成された残留物層の削減または除去のための手段を提供する点で、二酸化シリコン(SiO2)犠牲層を除去するためにHF蒸気エッチングステップを利用する技術で知られているこれらのシステムよりも著しい利点を有する。最も重要なことに、上に説明した方法は、これまでは認識されていなかったシリコン系の残留物層の除去のための手段を提供する。
【0060】
上に説明した技術が、MEMSを参照して具体的に説明されてきているとはいえ、上記の技術は、マイクロ構造の製作が二酸化シリコン(SiO2)犠牲層を除去するためにHF蒸気エッチングステップを利用する代替のマイクロ構造(例えば、半導体デバイス)に当てはまる。
【0061】
上記の検討では、シリコン、炭素およびアンモニウム塩を含む残留物層の除去が、上に別々に説明されてきている。しかしながら、これらの不純物のうちの2つ以上が単一の二酸化シリコン(SiO2)犠牲層内に存在することがあり得ることが当業者には認識されるだろう。上に説明した技術は、HF蒸気が二酸化シリコン(SiO2)犠牲層をエッチングするために利用されるときにマイクロ構造上に形成されたこのような複雑な残留物層を除去するためにマイクロ構造に同時にまたは逐次的に適用されることがある。さらにその上、上に説明した技術のうちの1つまたは複数が、マイクロ構造の蒸気エッチングと同時に適用されることがある。
【0062】
上に説明したHF蒸気エッチングおよび残留物層の除去はさらに、共通プロセスチャンバ内部で行われるように説明されてきている。代替の実施形態が、残留物層の除去のために上に説明した技術のうちの1つまたは複数を実行するために、HF蒸気エッチングが内部で実行される第1のプロセスチャンバから第2の処理チャンバへマイクロ構造を移動するだろうことが当業者にはさらに認識されるだろう。
【0063】
二酸化シリコン(SiO2)の犠牲層をエッチングするためにフッ化水素(HF)蒸気を利用すること、そしてその後、二酸化シリコンをHF蒸気エッチングするときに形成された残留物層を除去することを含むマイクロ構造を製作する方法が提供される。残留物層は、シリコン、アンモニウム塩または炭素を含むことがあり、そして様々な技術がこのような層を除去するために開示される。これらの技術は、マイクロ構造に同時にまたは逐次的に適用されることがある。説明した方法は、これゆえこの分野で知られているこれらの技術と比較したときに残留物のレベルの低減を示すマイクロ構造を製作する。
【0064】
発明の前述の説明は、例示および説明の目的で提示されてきており、網羅的であるものでも、開示した正確な形態に発明を限定するものでもない。説明した実施形態は、発明の原理および発明の実際的な用途を最も良く説明するために、これにより他の当業者が様々な実施形態においてそして考えられる特定の使用に適しているような様々な変更をともなって発明を最も良く利用することを可能にするために、選択されそして説明された。これゆえ、さらなる変更または改善が、別記の特許請求の範囲により規定されるような発明の範囲から乖離せずに組み込まれてもよい。