IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

特許7566357耐熱性が向上したリチウム二次電池用分離膜
<>
  • 特許-耐熱性が向上したリチウム二次電池用分離膜 図1
  • 特許-耐熱性が向上したリチウム二次電池用分離膜 図2
  • 特許-耐熱性が向上したリチウム二次電池用分離膜 図3
  • 特許-耐熱性が向上したリチウム二次電池用分離膜 図4
  • 特許-耐熱性が向上したリチウム二次電池用分離膜 図5
  • 特許-耐熱性が向上したリチウム二次電池用分離膜 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】耐熱性が向上したリチウム二次電池用分離膜
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/449 20210101AFI20241007BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20241007BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20241007BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241007BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241007BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20241007BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241007BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20241007BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20241007BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20241007BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/451
H01M50/414
H01M50/434
H01M50/403 D
H01M50/107
H01M10/052
H01M10/0587
H01M50/457
H01M50/443 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022569193
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2022003842
(87)【国際公開番号】W WO2022197156
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】10-2021-0035591
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0033523
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・シン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・リュン・カ
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ミ・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・アン・イ
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-231897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/449
H01M 50/451
H01M 50/414
H01M 50/434
H01M 50/403
H01M 50/107
H01M 10/052
H01M 10/0587
H01M 50/457
H01M 50/443
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性の高分子樹脂からなる分離膜基材と、
前記分離膜基材の少なくとも一側に設けられ、加熱時に硬化反応が起こるレゾール系フェノール樹脂を含む耐熱層と、
を含み、
前記耐熱層において、前記レゾール系フェノール樹脂を、固形分の総含量に対して0.5wt%~2.0wt%含む、リチウム二次電池用分離膜。
【請求項2】
前記分離膜基材と前記耐熱層との間には無機物層が形成されている、請求項1に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項3】
前記リチウム二次電池用分離膜は、150℃でMD方向及びTD方向の熱収縮率が60%以下である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項4】
前記耐熱層のロード量は2.0g/m以下である、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項5】
前記分離膜基材の第1面及び第2面のいずれか一つに無機物層が形成され、
前記無機物層の上面、及び前記無機物層が形成されなかった分離膜基材の上面に耐熱層が設けられる、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項6】
前記分離膜は水系分離膜である、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜を含む電極組立体が円筒形電池ケースに収容されている、円筒型リチウム二次電池。
【請求項8】
請求項に記載の円筒型リチウム二次電池を単位セルとして含む電池パックであって、
前記電池パックは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車または電力貯蔵装置のエネルギー源として使われる、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年3月19日付の韓国特許出願第2021-0035591号及び2022年3月17日付の韓国特許出願第2022-0033523号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は耐熱性が向上したリチウム二次電池用分離膜に関するものである。具体的には、高温での熱収縮が減少することによって耐熱性が向上したリチウム二次電池用分離膜に関するものである。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は正極と負極との間に分離膜を介在させて製造した電極組立体を電池ケースに収納し、電解液を注入してから密封することで製造することができる。
【0004】
前記分離膜は正極と負極との間の電気的な連結を遮断して絶縁性を確保するためのものであり、リチウムイオンが移動することができるように、多孔性素材からなるポリオレフィン系の基材上に無機物及びバインダーを含むコーティング層が形成された構造を有することができる。前記ポリオレフィン系の素材は熱に弱い性質があるので、前記コーティング層の付加によって高温安全性及び機械的特性を向上することができる。
【0005】
分離膜の強度を高めるとともに薄膜化するために、分離膜を1軸方向または2軸方向に延伸することができる。しかし、リチウム二次電池の温度が増加すると、延伸した方向に分離膜が収縮し得る。よって、電極組立体内の正極と負極との間に接触が生じて短絡が発生することがあり、これはリチウム二次電池の発火及び爆発の原因になることがある。
【0006】
リチウム二次電池の体積当たりの容量が増加する場合、内部短絡時の発熱量も増加するので、高容量リチウム二次電池において安全性問題を解決するための多様な研究が実施されている。
【0007】
特許文献1は、多孔性基材の単面に水系無機物分散液をコーティングして無機物層を形成し、前記無機物層が形成された多孔性基材の両面に水系バインダー組成物からなる電極接着層を形成することで、電極に対する接着力が向上した分離膜の製造方法を開示する。
【0008】
特許文献1は分離膜と電極との間の接着力を向上させることにより正極と負極との間の短絡を防止することができるが、電極接着層によって分離膜の抵抗が増加することがあり、分離膜自体の収縮を抑制することができる技術を提示することはできない。
【0009】
特許文献2は、多孔性基材層の片面または両面に形成される耐熱層、及び前記耐熱層上に形成される接着層を含み、前記耐熱層は無機粒子がバインダー高分子によって連結及び固定され、前記接着層は高分子粒子を含む二次電池用複合分離膜を開示する。
【0010】
特許文献2の分離膜は耐熱層及び接着層を備えることで、高温で分離膜と電極との間の接着強度が向上し、熱収縮率が減少した結果を示しているが、耐熱層の付加によって気体透過度が増加するので、電解液含浸率が減少し、抵抗が増加する問題を解決することができない。
【0011】
したがって、リチウム二次電池用分離膜において、接着層を備えなくても分離膜自体の熱収縮率が減少することにより、正極と負極との内部短絡を防止することができ、分離膜自体の耐熱性が向上する技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国登録特許第1888732号公報
【文献】韓国公開特許第2016-0109669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記のような問題を解決するためのものであり、高温で正極と負極との間の短絡を防止して安全性及び耐熱性が向上したリチウム二次電池用分離膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するための本発明によるリチウム二次電池用分離膜は、多孔性の高分子樹脂からなる分離膜基材と、前記分離膜基材の少なくとも一側に設けられ、加熱時に硬化反応が起こるフェノール樹脂を含む耐熱層とを含むことができる。
【0015】
前記分離膜基材と前記耐熱層との間には無機物層が形成されることができる。
【0016】
前記耐熱層は、レゾール(resol)系フェノール樹脂を含むことができる。
【0017】
前記耐熱層において、前記レゾール系フェノール樹脂を、固形分の総含量に対して0.5wt%~2.0wt%含むことができる。
【0018】
前記リチウム二次電池用分離膜は、150℃でMD方向及びTD方向の熱収縮率が60%以下であることができる。
【0019】
前記耐熱層のロード量は2.0g/m以下とすることができる。
【0020】
前記分離膜基材の第1面及び第2面のいずれか一つに無機物層が形成され、前記無機物層の上面、及び前記無機物層が形成されなかった分離膜基材の上面に耐熱層が設けられることができる。
【0021】
前記分離膜は水系分離膜であってもよい。
【0022】
本発明は、前記リチウム二次電池用分離膜を含む電極組立体が円筒形電池ケースに収容されている円筒型リチウム二次電池を提供する。
【0023】
本発明は、前記円筒型リチウム二次電池を単位セルとして含み、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車または電力貯蔵装置のエネルギー源として使われる電池パックを提供する。
【0024】
また、本発明は、前記課題の解決手段を多様に組み合わせた形態としても提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上で説明したように、本発明によるリチウム二次電池用分離膜は、高温での熱収縮率が著しく向上するので、リチウム二次電池が高温環境にあるとき、分離膜の収縮によって正極と負極との間の内部短絡が発生することを防止することができる。
【0026】
また、耐熱層が形成された状態でも分離膜の抵抗を低く維持することができるので、リチウム二次電池の性能が低下することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】レゾール系フェノール樹脂の構造式である。
図2】実施例1で製造された分離膜の表面のFE-SEM写真である。
図3】実施例2で製造された分離膜の表面のFE-SEM写真である。
図4】実施例3で製造された分離膜の表面のFE-SEM写真である。
図5】比較例1で製造された分離膜の表面のFE-SEM写真である。
図6】DMA評価グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる実施例を詳細に説明する。ただ、本発明の好適な実施例に対する動作原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにする可能性があると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0029】
また、図面全般にわたって類似の機能及び作用をする部分に対しては同じ図面符号を使う。明細書全般で、ある部分が他の部分と連結されていると言うとき、これは直接的に連結されている場合だけではなく、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むというのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0030】
また、構成要素を限定するか付け加えて具体化する説明は、特別な制限がない限り、すべての発明に適用可能であり、特定の発明に限定されない。
【0031】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示したものは、別に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0032】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって「または」は、別に言及しない限り、「及び」を含むものである。したがって、「AまたはBを含む」はAを含むか、Bを含むか、A及びBの両者を含む3種の場合を意味する。
【0033】
本発明によるリチウム二次電池用分離膜は、多孔性構造を有し、高分子樹脂からなる分離膜基材と、前記分離膜基材の少なくとも一側に設けられ、加熱時に硬化反応が起こるフェノール樹脂を含む耐熱層とを含むことができる。
【0034】
前記分離膜基材は、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキサイド(polyphenylene oxide)、ポリフェニレンスルフィドロ(polyphenylenesulfidro)、ポリエチレンナフタレン(polyethylene naphthalene)及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上からなることができる。
【0035】
リチウム二次電池は、繰り返し充放電のような正常な使用過程でも電池セルの内部で発生する熱によって電池セルの温度が増加する。前記分離膜基材は一軸または二軸延伸することによって製造することができ、このように延伸された分離膜は、温度が増加すれば元の大きさに収縮することができる。
【0036】
このように、熱収縮性の高い素材を使う場合、リチウム二次電池の使用中に分離膜が収縮すれば、正極と負極とが接触して内部短絡が発生することがある。
【0037】
したがって、本発明は分離膜基材の少なくとも一側面に耐熱層を設けることで分離膜の熱収縮性を減らすことができる。
【0038】
一具体例で、前記耐熱層は高温で硬化反応が起こるレゾール系フェノール樹脂を含むことができる。図1はレゾール系フェノール樹脂の構造式を示す。
【0039】
具体的には、前記耐熱層は高温で下記のような硬化反応が起こるレゾール系フェノール樹脂を含むことができる。このように、本発明は、リチウム二次電池の温度が増加する場合、分離膜の最外側にあるレゾール系フェノール樹脂を含む耐熱層が硬化することによって分離膜が収縮することを防止することができるので、耐熱性が向上した分離膜を提供することができる。
【0040】
【化1】
【0041】
一般に、ポリオレフィン系高分子樹脂を含む分離膜基材のみを分離膜として使用する場合、分離膜の耐熱性が問題となるのみならず、分離膜の機械的強度も低い問題がある。このような問題を補うために、分離膜基材の片面または両面に無機物及びバインダーを含む無機物層を含むことができる。
【0042】
本発明は、分離膜基材の少なくとも一側に耐熱層が設けられ、前記分離膜基材の第1面及び第2面のうちのいずれか一面に無機物層が形成され、前記無機物層の上面、及び前記無機物層が形成されなかった分離膜基材の上面に耐熱層が設けられることができる。すなわち、分離膜基材の第1面及び第2面のうちで無機物層が形成される面では分離膜基材と前記耐熱層との間に無機物層が形成されることができる。
【0043】
もしくは、前記分離膜基材の第1面及び第2面のそれぞれに第1無機物層及び第2無機物層が形成されることができ、前記第1無機物層及び前記第2無機物層のそれぞれに耐熱層が設けられることができる。
【0044】
例えば、円筒型二次電池用電極組立体を製造する場合には、円筒型二次電池の特性上、安全性確保の基準が相対的に低いので、分離膜基材の一面にのみ無機物層が形成される単面コーティング分離膜を使うことで電池の容量及びエネルギー密度を増加させることができる。
【0045】
もしくは、パウチ型二次電池用電極組立体を製造する場合には、安全性確保の基準が相対的に高いので、分離膜基材の両面に無機物層が形成される両面コーティング分離膜を使って耐熱性向上の効果を得ることができる。
【0046】
前記無機物層は無機物及びバインダーを含むことができ、前記バインダーは無機物粒子間の結合を維持させ、電極と分離膜との間の接着力を向上させることができる。
【0047】
このようなバインダーの種類は、分離膜コーティング層に化学的な変化を引き起こさなければ特に限定されず、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素含有樹脂;フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体及びエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体などのフッ素含有ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体及びその水素化物;メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリルアクリル酸エステル共重合体及びスチレンアクリル酸エステル共重合体などの(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレンプロピレンゴムなどのゴム類;ポリ酢酸ビニル;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド、ポリエステル、芳香族ポリエステル及びポリエーテルエーテルケトンなどの融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂;ポリカーボネート;ポリアセタール;及び、カルボキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、澱粉、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、セルロースエステル、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及びポリメタクリル酸などの水溶性樹脂からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0048】
前記無機物層を構成する無機物は、BaTiO、Pb(Zr、Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)(0<x<1、0<y<1)、Pb(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、SiC、リチウムフォスフェイト(LiPO)、リチウムチタンフォスフェイト(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、(LiAlTiP)系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムゲルマニウムチオフォスフェイト(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、SiS系ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P系ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上であることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0049】
前記無機物層のコーティング方法及び前記耐熱層のコーティング方法は特に限定されず、当該分野に知られたた通常のコーティング法を使うことができる。例えば、ディップ(Dip)コーティング、ダイ(Die)コーティング、ロール(Roll)コーティング、コンマ(Comma)コーティング、スピン(Spin)コーティング、スプレー(Spray)コーティングまたはこれらの混合方式などの多様な方式を用いることができる。
【0050】
前記耐熱層に含まれるレゾール系フェノール樹脂は、前記耐熱層の固形分総含量に対して0.5wt%~2.0wt%含むことができ、具体的には、1.0wt%~2.0wt%含むことができる。
【0051】
前記レゾール系フェノール樹脂の含量が、耐熱層の固形分総含量に対して0.5wt%より少ない場合には、耐熱性を向上させる効果を得ることが難しく、2.0wt%を超える場合には、分離膜の抵抗が増加する問題があるので好ましくない。
【0052】
本発明による分離膜において、無機物層または分離膜基材上に塗布される耐熱層は、ロード量があまりにも高い場合には抵抗増加の原因になることがあるので、例えば、ロード量を2.0g/m以下とすることができ、具体的には1.0g/m以下とすることができ、より具体的には0.5g/m以下とすることができる。
【0053】
一具体例で、分離膜の最外側に耐熱層を形成するために、アセトンのような非水系有機溶媒にレゾール系フェノールを溶解してコーティングスラリーを製造し、前記コーティングスラリーに分離膜を含浸してディップコーティングすることができる。
【0054】
前記分離膜は分離膜基材の少なくとも一面に無機物層が形成された状態を有し、前記無機物層の溶媒として油系溶媒を使った油系分離膜を前記コーティングスラリーに含浸すれば、前記無機物層が溶けて分離され得る。
【0055】
したがって、本発明は、無機物層の溶媒として水を使用した水系分離膜を使うことで、耐熱層形成過程で無機物層が溶けることを防止することができる。
【0056】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用分離膜を正極と負極との間に介在した電極組立体を含む電池セルを提供し、前記電池セルは電極組立体がリチウム塩含有非水系電解液に含浸されている構造を有するリチウム二次電池とすることができる。
【0057】
前記リチウム二次電池は、電池ケースの形態によって、パウチ型二次電池、円筒型二次電池または角型二次電池であることができる。
【0058】
前記正極は、例えば、正極集電体上に正極活物質を含んでいる正極合剤を塗布した後、乾燥して製造され、前記正極合剤には、必要によって、バインダー、導電材、充填剤などが選択的にさらに含まれてもよい。
【0059】
前記正極集電体は、一般に3μm乃至500μmの厚さに作る。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、高い導電性を有するものであれば特に限定されず、前記正極集電体としては、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。また、正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成することによって正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0060】
前記正極活物質は、電気化学的反応を起こし得る物質であって、リチウム遷移金属酸化物として2以上の遷移金属を含み、例えば、Li1+zNiMnCo1-(b+c+d)(2-e)(ここで、-0.5≦z≦0.5、0.1≦b≦0.8、0.1≦c≦0.8、0≦d≦0.2、0≦e≦0.2、b+c+d<1である。M=Al、Mg、Cr、Ti、Si又はYであり、A=F、P又はClである。)で表現されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物;化学式Li1+x1-yM’PO4-z(ここで、M=遷移金属、好ましくはFe、Mn、Co又はNiであり、M’=Al、Mg又はTiであり、X=F、S又はNであり、-0.5≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1である。)で表現されるオリビン系リチウム金属ホスフェートなどを挙げることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0061】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物の全体の重量を基準にして1重量%乃至30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、導電性を有するものであれば特に限定されず、前記導電材としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材または炭素ナノチューブなどを使用することができる。
【0062】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合に役立つ成分であって、通常、正極活物質を含む混合物の全体の重量を基準にして1重量%乃至30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。
【0063】
前記充填剤は電極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、繊維状材料であれば特に限定されず、前記充填剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0064】
前記負極は、例えば、負極集電体上に負極活物質を含んでいる負極合剤を塗布した後、乾燥して製造され、前記負極合剤には、必要によって、上記で説明したような導電材、バインダー、充填剤などの各成分を含むことができる。
【0065】
前記負極集電体は、一般に3μm乃至500μmの厚さに作る。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、高導電性を有するものであれば特に限定されず、前記負極集電体としては、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、前記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することによって負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を使用することができる。
【0066】
前記負極活物質としては、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me=Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、及びBiなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料などを使用することができる。
【0067】
前記バインダー、導電材、及び必要によって添加される各成分は、正極での説明と同一である。
【0068】
また、粘度調節剤、接着促進剤などのその他の各成分を選択的に又は2種以上の組合せでさらに含むことができる。
【0069】
前記粘度調節剤は、電極合剤の混合工程とその集電体上の塗布工程が容易になるように電極合剤の粘度を調節する成分であり、負極合剤の全体の重量を基準にして30重量%まで添加され得る。このような粘度調節剤の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニリデンフルオライドなどがあるが、これらのみに限定されることはない。場合によっては、前述した溶媒が粘度調節剤としての役割を兼ねることができる。
【0070】
前記接着促進剤は、集電体に対する活物質の接着力を向上させるために添加される補助成分であって、バインダーに比べて10重量%以下で添加されてもよく、前記接着促進剤としては、例えば、シュウ酸(oxalic acid)、アジピン酸(adipic acid)、ギ酸(formic acid)、アクリル酸(acrylic acid)誘導体、イタコン酸(itaconic acid)誘導体などを挙げることができる。
【0071】
前記分離膜は正極と負極との間に介在され、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄膜が使用される。分離膜の気孔直径は、一般に0.01μm~10μmで、厚さは、一般に5μm~300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維又はポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合は、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0072】
前記リチウム塩含有非水系電解液は電解液とリチウム塩とからなり、前記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などを使用することができる。
【0073】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を使用することができる。
【0074】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを使用することができる。
【0075】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを使用することができる。
【0076】
前記リチウム塩は前記非水系電解液に溶解しやすい物質であり、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを使用することができる。
【0077】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的で、例えば、ピリジン、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどを添加することもできる。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含むこともでき、高温保存特性を向上させるために、二酸化炭酸ガスをさらに含むこともでき、フルオロ-エチレンカーボネート(FEC;Fluoro-Ethylene Carbonate)、プロペンスルトン(PRS;Propene sultone)などをさらに含むことができる。
【0078】
好適な一例で、LiPF、LiClO、LiBF、LiN(SOCFなどのリチウム塩を、高誘電性溶媒であるエチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)またはプロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)の環状カーボネートと低粘度溶媒であるジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)またはエチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate、EMC)の線形カーボネートの混合溶媒に添加してリチウム塩含有非水系電解液を製造することができる。
【0079】
また、本発明は前記二次電池を単位セルとして含む電池パックを提供し、前記電池パックを含むデバイスを提供する。
【0080】
前記デバイスの具体例としては、コンピュータ、携帯電話、動力工具(power tool)などの小型デバイスと、電池モーターによって動力を受けて作動する動力工具(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵装置、電力貯蔵用システムなどの中大型デバイスを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0081】
前記電池パック及びデバイスの構造などは当該分野に公知となっているので、本明細書ではそれについての詳細な説明を省略する。
【0082】
以下では、本発明の実施例を参照して説明するが、これは本発明のより容易な理解のためのものであり、本発明の範疇がこれに限定されるものではない。
【0083】
<実施例1>
ポリオレフィン系高分子材料を含む多孔性の分離膜基材を準備し、無機物粒子としてAlとアクリル系バインダー樹脂を99:1の重量比で水に溶解して製造した無機物スラリーを前記多孔性の分離膜基材の一側面に1.5μmの厚さでコーティングして片面コーティング水系分離膜を製造した。前記片面コーティング水系分離膜の厚さは12μmである。
【0084】
耐熱層を形成するために、固形分に対して、レゾール系フェノールを0.5wt%含むコーティングスラリーを準備する。前記片面コーティング水系分離膜を前記コーティングスラリーでディップコーティングすることで、全厚が12.1μm、耐熱層のロード量が0.47g/mの分離膜を製造した。
【0085】
<実施例2>
前記実施例1で固形分に対してレゾール系フェノールを1.0wt%含むことを除き、前記実施例1と同様な方法で全厚が12.1μm、耐熱層のロード量が0.95g/mの分離膜を製造した。
【0086】
<実施例3>
前記実施例1で固形分に対してレゾール系フェノールを2.0wt%含むことを除き、前記実施例1と同様な方法で全厚が12.1μm、耐熱層のロード量が1.79g/mの分離膜を製造した。
【0087】
<比較例1>
前記実施例1で耐熱層を形成しなかったことを除き、前記実施例1と同様な方法で全厚が12.0μmの分離膜を製造した。
【0088】
<比較例2>
前記実施例1で固形分に対してレゾール系フェノールを2.5wt%含むことを除き、前記実施例1と同様な方法で全厚が12.1μm、耐熱層のロード量が2.2g/mの分離膜を製造した。
【0089】
<抵抗測定実験>
2016サイズのコインセルを製造するために、前記比較例1、比較例2及び実施例1~実施例3で製造した分離膜を19φに打抜し、電解液1滴を入れてコインセルを製作した。
【0090】
前記コインセルを3時間放置した後、電気化学的インピーダンス分光(EIS;Electrochemical Impedance Spectroscopy)装置を用いてコインセルの抵抗を測定した。
【0091】
前記EIS装置としてはSolartron社の1255Bモデルを使用し、10~10Hzの周波数を印加し、測定されたグラフのX切片値を記録して得た値を次の表1に記載した。
【0092】
前記電解液はエチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)が3:4:3の比で混合されたものであり、添加剤として、ビニレンカーボネート(VC)3mol、プロパンスルトン(PS)1.5mol、エチレンスルフェート(ESa)1mol及びリチウム塩(LiPF)1molを含む。
【0093】
<熱収縮率測定実験>
前記実施例1~実施例3及び比較例1及び2で製造した分離膜を150℃の温度で30分間放置した後、分離膜の収縮率を測定した。
【0094】
前記収縮率は、分離膜のMD方向及びTD方向にそれぞれ任意の2点を表示し、これらの間の距離(標点距離)の増減率を次の式1によって計算した結果である。
【0095】
[式1]
収縮率(%)={(B-A)/A}×100
【0096】
前記式で、Aは高温放置前の初期状態の標点距離であり、Bは高温放置後の最終状態の標点距離である。
【0097】
通気度測定結果及び熱収縮率測定結果を次の表1に記載した。
【0098】
【表1】
【0099】
前記表1を参照すると、耐熱層が形成されなかった比較例1と耐熱層が形成された実施例の分離膜の抵抗を比較すると、実施例の分離膜の抵抗と比較例1の分離膜の抵抗との間には大きな差がないことが分かり、特に実施例1及び実施例2の場合には同等な抵抗を有することを確認することができる。
【0100】
レゾール系フェノールを2.5wt%含む比較例2の分離膜は抵抗があまりにも高いので、イオン伝導度が低下して電池セルで正常機能を果たしにくいと思われる。
【0101】
熱収縮率を検討すると、実施例1~実施例3の分離膜は、150℃でMD方向及びTD方向の熱収縮率が60%以下と測定され、特に実施例2は50%以下、実施例3は10%以下と測定された。したがって、耐熱層においてレゾール系フェノール樹脂の含量が増加するほど熱収縮率が向上する効果があることが分かり、本発明の分離膜を使って製造した電池セルは高温で分離膜の収縮を防止して短絡防止効果が著しく向上することを予測することができる。
【0102】
比較例2のように、レゾール系フェノール樹脂を2.5wt%含む場合には、MD方向の熱収縮率は2%であり、TD方向の熱収縮率は0%であることから、耐熱性は非常に優れるが、抵抗が高いので、電池セルの性能を正常に発揮しにくいと思われる。
【0103】
図2は実施例1で製造した分離膜の表面のFE-SEM写真であり、図3は実施例2で製造した分離膜の表面のFE-SEM写真であり、図4は実施例3で製造した分離膜の表面のFE-SEM写真であり、図5は比較例1で製造した分離膜の表面のFE-SEM写真である。
【0104】
図2図5を参照すると、耐熱層においてレゾール系フェノールの含量が増加するほど上面(Top)では無機物層が耐熱層によってコーティングされる面積が増加し、下面(Back)ではポリオレフィン系分離膜基材の表面に耐熱層がコーティングされる面積が増加していることを確認することができる。ただ、図5に示す比較例1の分離膜は耐熱層がコーティングされなかった状態であるので、無機物粒子及びポリオレフィン系分離膜基材が見られる。
【0105】
図4は分離膜の上面及び下面のほとんど全体部分が耐熱層でコーティングされた状態を示す。比較例2のように、レゾール系フェノールの含量がより高い場合には、前記表1に記載した測定値のように抵抗があまりにも高くなって電池の性能が低下することがある。
【0106】
したがって、耐熱層に含まれたレゾール系フェノールの含量が2wt%より少なく、選択的にロード量が2.0g/mより少ない場合には、イオン伝導度を確保して低抵抗を有し、耐熱特性が向上した分離膜を提供することができる。
【0107】
<動的機械分析(DMA;Dynamic Mechanical Analysis)評価実験>
前記比較例1及び実施例1~実施例3で製造した分離膜の高温特性を評価するために、温度変化による応力を測定した。図6はDMA評価グラフを示す。
【0108】
DMA評価実験はTA社のDMA850モデルを使って遂行した。
【0109】
分離膜を幅0.5mm、長さ約5cmに裁断してロードセルに連結した。DMA装備を用い、イソストレインモード(isostrain mode)で0.01mNのプレロードを印加し、温度を25℃から200℃まで10℃/min速度で昇温させた。このとき、分離膜試料のストレイン(strain)変化率を測定した。
【0110】
図6を参照すると、比較例1の分離膜は約220℃で破断された一方で、耐熱層を含む実施例1~実施例3で製造した分離膜は250℃以上の温度まで破断が遅延されることを確認することができる。
【0111】
したがって、本発明による分離膜を使う場合には、耐熱性が著しく向上することを確認することができる。
【0112】
本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形が可能であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6