(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】水流方向切替装置
(51)【国際特許分類】
E02B 7/40 20060101AFI20241007BHJP
E02B 5/00 20060101ALI20241007BHJP
E03F 5/04 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
E02B7/40
E02B5/00 B
E03F5/04 A
(21)【出願番号】P 2023101391
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2022102648の分割
【原出願日】2022-06-27
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】517146035
【氏名又は名称】株式会社ジェック
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】山岸 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真依
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-309664(JP,A)
【文献】特開平9-025660(JP,A)
【文献】特開平03-147907(JP,A)
【文献】実開昭63-104480(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/40
E02B 5/00
E03F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流雪溝の分岐点に設けられ該分岐点における流水の流れ方向を制御する水流方向切替装置であって、作動することで前記流水の流れ方向を制御する制御板を備え、この制御板は、垂直板に構成されて鉛直軸に支持され、駆動装置の作動により回動し前記分岐点における所定の流雪溝の流入口を閉塞若しくは開放するように構成され、さらに、前記制御板は、下部に高さ調整板が上下移動自在に設けられ、この高さ調整板を移動させることで高さ方向の寸法を調整できるように構成されていることを特徴とする水流方向切替装置。
【請求項2】
請求項1記載の水流方向切替装置において、前記制御板には、ほぼ水平状態にして外方に向かって突出する雪切り板が設けられていることを特徴とする水流方向切替装置。
【請求項3】
流雪溝の分岐点に設けられ該分岐点における流水の流れ方向を制御する水流方向切替装置であって、作動することで前記流水の流れ方向を制御する制御板を備え、この制御板は、垂直板に構成されて鉛直軸に支持され、駆動装置の作動により回動し前記分岐点における所定の流雪溝の流入口を閉塞若しくは開放するように構成され、さらに、前記制御板には、ほぼ水平状態にして外方に向かって突出する雪切り板が設けられていることを特徴とする水流方向切替装置。
【請求項4】
請求項1記載の水流方向切替装置において、前記駆動装置はストロークモータであることを特徴とする水流方向切替装置。
【請求項5】
請求項2記載の水流方向切替装置において、前記駆動装置はストロークモータであることを特徴とする水流方向切替装置。
【請求項6】
請求項3記載の水流方向切替装置において、前記駆動装置はストロークモータであることを特徴とする水流方向切替装置。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載の水流方向切替装置において、制御板動作判断機能を備え、この制御板動作判断機能は、前記制御板が所定位置まで正常に回動動作したか否かを判断するように構成されていることを特徴とする水流方向切替装置。
【請求項8】
請求項1~6いずれか1項に記載の水流方向切替装置において、前記制御板は、板面に開口部が設けられ、この開口部を介して前記制御板で流入口を閉塞した流雪溝にも少量の流水が流れるように構成されていることを特徴とする水流方向切替装置。
【請求項9】
請求項7記載の水流方向切替装置において、前記制御板は、板面に開口部が設けられ、この開口部を介して前記制御板で流入口を閉塞した流雪溝にも少量の流水が流れるように構成されていることを特徴とする水流方向切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流雪溝の分岐点に設けられ、この分岐点における流水の流れ方向を制御する水流方向切替装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
降雪量が多い地域では、消雪パイプだけでは降り積もった雪を消雪することが困難なため、消雪しきれない雪を除去するための「流雪溝」と称する排雪施設が整備されている。
【0003】
この流雪溝は、河川等を水源とする流水を利用したものであり、降り積もった雪を投入するだけで、流水により雪が下流側の河川等に運搬され排雪される仕組みになっている。
【0004】
このような流雪溝は、多くの分岐点を介して地域内に縦横無尽に設けられ、地域内の人々が誰でも利用できるようになっているが、大きな雪の塊を運搬するにはそれなりの流水量が必要となるため、流雪溝の利用に際しては、流雪溝の各分岐点において、流水の流れを制御する制御板(止水板)を用いて一方の流雪溝への流水の流れを堰止め、他方の流雪溝に全ての流水が流れるように制御し、流水の流れを一本化する(一筋の流れとする)ことで流水量を確保し、時間により制御板の位置を変えて通水区間を変更し、地域全体が流雪溝を利用できるように運用されている。
【0005】
しかしながら、上述した流水の流れを制御するための制御板の位置変え作業は、重い止水板を上下方向に抜き差ししなければならず、非常に労力を要する厄介な作業である。
【0006】
従来、このような厄介な作業を軽減することを目的とし、特許文献1,2に示すような制御板(特許文献1では扉体、特許文献2では堰止板)の位置変え、すなわち、通水区間の切り替えを容易にする装置(以下、「従来例」という。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-309664号公報
【文献】実開昭63-104480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来例は、制御板を鉛直軸に軸着し回動操作により位置変えを行うことで、制御板の切り替え作業を簡易にするものである。
【0009】
しかしながら、従来例においては、制御板の回動操作は手動操作であり、制御板を流水の流れに逆らって移動させるため、作業者にかかる負荷はそれほど軽減されず、未だに厄介な作業となっているのが現状である。
【0010】
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、作業者による手動での制御板の切り替え作業を不要とし、容易に切り替え操作を行うことができる水流方向切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
流雪溝60の分岐点61に設けられ該分岐点61における流水の流れ方向を制御する水流方向切替装置であって、作動することで前記流水の流れ方向を制御する制御板1を備え、この制御板1は、垂直板に構成されて鉛直軸3に支持され、駆動装置2の作動により回動し前記分岐点61における所定の流雪溝60の流入口を閉塞若しくは開放するように構成され、さらに、前記制御板1は、下部に高さ調整板1cが上下移動自在に設けられ、この高さ調整板を移動させることで高さ方向の寸法を調整できるように構成されていることを特徴とする水流方向切替装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1記載の水流方向切替装置において、前記制御板1には、ほぼ水平状態にして外方に向かって突出する雪切り板4が設けられていることを特徴とする水流方向切替装置に係るものである。
【0014】
また、流雪溝60の分岐点61に設けられ該分岐点61における流水の流れ方向を制御する水流方向切替装置であって、作動することで前記流水の流れ方向を制御する制御板1を備え、この制御板1は、垂直板に構成されて鉛直軸3に支持され、駆動装置2の作動により回動し前記分岐点61における所定の流雪溝60の流入口を閉塞若しくは開放するように構成され、さらに、前記制御板1には、ほぼ水平状態にして外方に向かって突出する雪切り板4が設けられていることを特徴とする水流方向切替装置に係るものである。
【0015】
また、請求項1記載の水流方向切替装置において、前記駆動装置2はストロークモータであることを特徴とする水流方向切替装置に係るものである。
【0016】
また、請求項2記載の水流方向切替装置において、前記駆動装置2はストロークモータであることを特徴とする水流方向切替装置に係るものである。
【0017】
また、請求項3記載の水流方向切替装置において、前記駆動装置2はストロークモータであることを特徴とする水流方向切替装置に係るものである。
【0018】
また、請求項1~6いずれか1項に記載の水流方向切替装置において、制御板動作判断機能を備え、この制御板動作判断機能は、前記制御板1が所定位置まで正常に回動動作したか否かを判断するように構成されていることを特徴とする水流方向切替装置に係るものである。
【0019】
また、請求項1~6いずれか1項に記載の水流方向切替装置において、前記制御板1は、板面に開口部6が設けられ、この開口部6を介して前記制御板1で流入口を閉塞した流雪溝60にも少量の流水が流れるように構成されていることを特徴とする水流方向切替装置に係るものである。
【0020】
また、請求項7記載の水流方向切替装置において、前記制御板1は、板面に開口部6が設けられ、この開口部6を介して前記制御板1で流入口を閉塞した流雪溝60にも少量の流水が流れるように構成されていることを特徴とする水流方向切替装置に係るものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述のように構成したから、作業者による手動での制御板の切り替え作業を不要とし、容易に切り替え操作を行うことができる水流方向切替装置となる。
【0022】
しかも、本発明は、制御板の下部に高さ調整板が上下移動自在に設けられているから、この高さ調整板を移動させることで制御板の高さ方向の寸法を、流雪溝の深さに適した高さ寸法に設定することができ、流雪溝を流れる流水の流れ方向を適正に制御することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施例における流雪溝通水区間切替システムの概略図である。
【
図2】本実施例の水流方向切替装置を示す斜視図である。
【
図3】本実施例の水流方向切替装置の設置状態を示す説明斜視図である。
【
図4】本実施例の水流方向切替装置の動作説明図である。
【
図5】本実施例における三方向分岐点での制御板の動作例を示す説明図である。
【
図6】本実施例の水流方向切替装置の別例を示す説明側面図である。
【
図7】本実施例における水位異常の有無の状態を示す説明図である。
【
図8】本実施例の通水区間表示機能により通水区間が表示された端末機器の画面を示す図である。
【
図9】本実施例の水位異常通知機能により水位異常発生箇所が表示された端末機器の画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0025】
本発明は、垂直板に構成された制御板1が鉛直軸3に支持され、駆動装置2の作動により回動し、分岐点61における所定の流雪溝60の流入口を閉塞若しくは開放するように構成されているから、切り替え作業に人力を要せず、これにより、作業者の切り替え作業にかかる労力が可及的に軽減される。
【0026】
さらに、本発明は、制御板1の下部に高さ調整板1cが上下移動自在に設けられているから、この高さ調整板1cを移動させることで制御板1の高さ方向の寸法を、流雪溝60の深さに適した高さ寸法に設定することができ、これにより、流雪溝60を流れる流水の流れ方向を適正に制御することができるものとなる。
【実施例】
【0027】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0028】
本実施例は、本発明に係る水流方向切替装置を、複数の分岐点61を有する流雪溝60の通水区間を切替制御する流雪溝通水区間切替システムに用いた場合であり、前記分岐点61に設けられ該分岐点61における流水の流れ方向を制御する水流方向切替装置10と、この水流方向切替装置10の動作を制御する水流方向切替装置制御ユニット20と、前記水流方向切替装置10の切り替えスケジュールが登録されるサーバ30とを備え、前記サーバ30に登録された前記切り替えスケジュールに基づき前記水流方向切替装置制御ユニット20を介して前記水流方向切替装置10が作動し通水区間が適宜切り替わるように構成されているものである。
【0029】
具体的には、
図1に示すように、流水の流れが二方向若しくは三方向に分岐する分岐点61に水流方向切替装置10及び水流方向切替装置制御ユニット20が配設され、サーバ30に予め登録された通水区間の切り替えスケジュールに基づき、水流方向切替装置制御ユニット20が作動し水流方向切替装置10を動作させて、通水区間の切り替えが行われるように構成されている。
【0030】
なお、前記切り替えスケジュールとは、流雪溝60において、いつ(日にち、曜日など)、どの時間帯に(何時~何時までの間に)、どの区間に流水が流れるか、すなわち、例えば、月曜日の9時~12時はA区間、12時~15時はB区間が通水区間となることが設定されたものである(所謂、通水区間の時間割である。)。
【0031】
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。
【0032】
本実施例の水流方向切替装置10は、流水の流れを制御する制御板1と、この制御板1を動作させる駆動装置2とを備え、制御板1は、垂直板に構成されて鉛直軸3に支持され、駆動装置2の作動により回動し分岐点61における所定の流雪溝60の流入口61を閉塞若しくは開放するように構成されている。
【0033】
具体的には、本実施例の制御板1は、
図2,3に示すように、制御板1と、流雪溝60の壁面に固定される固定板部1aと、この固定板部1aに前記鉛直軸3としての蝶番3を介して回動自在に設けられる可動板部1bとで構成されている。
【0034】
また、可動板部1bは、高さ方向の寸法(可動板部高さ)を自在に調整できるように構成されており、具体的には、図示するように、下部側に高さ調整板1cが可動板部1bに対して上下スライド自在に設けられ、この高さ調整板1cを下方へスライドさせることで高さ方向の寸法(可動板部高さ)が増し、流雪溝の深さに応じて制御板1(可動板部1b)の高さを調整できるように構成されている。
【0035】
また、本実施例の可動板部1bは、図示するように、板面に開口部6が設けられている。本実施例の水流方向切替装置10は、制御板1(可動板部1b)に開口部6を設けることで、可動板部1bが移動する際の流水から受ける抵抗が低減され、スムーズに切り替え動作ができるように構成されている。また、開口部6が設けられることで、この開口部6を介して堰止め対象の流雪溝60にも少量の流水が流れるため、流雪溝60においては、投入した雪を融雪することができることとなる。
【0036】
また、本実施例の可動板部1bは、図示するように、板面両側に雪切り板4が設けられており、具体的には、雪切り板4は、可動板部1bの板面に対して、ほぼ水平状態にして外方に向かって突設されており、流雪溝60を移動する雪の塊が可動板部1bに沿って移動する際にこの雪切り板4により雪の塊に切り込みが設けられ、小さな塊に分割され流雪溝60内で雪の塊による詰まりの発生を可及的に低減するように構成されている。
【0037】
またさらに、本実施例の可動板部1bは、図示するように、後述する駆動装置2のロッド2aが連結される連結部7が設けられており、具体的には、連結部7は、ロッド2aの先端部が枢着される軸部7aを備え、可動板部1bの上部に設けられている。
【0038】
より具体的には、軸部7aは、ロッド2aの先端部の高さ寸法よりも長尺な長さに設定され、流雪溝60のサイズに合わせてロッド2aの連結位置を上下方向に調整できるように構成されている。
【0039】
また、本実施例の水流方向切替装置10は、駆動装置2として進退自在に設けられるロッド2aを有するストロークモータが採用され(以下、「駆動装置2」を「ストロークモータ2」という。)、
図1,2に示すような、流雪溝60の側壁間に架設される支持部材8に設けられており、具体的には、ストロークモータ2は、支持部材8に水平回動自在に設けられている。
【0040】
すなわち、本実施例の水流方向切替装置10は、ストロークモータ2自体を支持部材8に水平回動自在に設け、また、ストロークモータ2のロッド2a先端を制御板1(可動板部1b)の連結部7(軸部7a)に軸着することで、
図4に示すように、ストロークモータ2のロッド2aの直線運動により可動板部1bをスムーズに回動動作させることができるように構成されている。
【0041】
また、ストロークモータ2が設けられる支持部材8は、幅方向の長さが調整できるように構成され、幅が異なる多様な流雪溝60に取り付け可能に構成されている。
【0042】
具体的には、本実施例の支持部材8は、
図2に示すように、流雪溝60の左右両側にそれぞれ設けられる(固設される)一対の固定支持部材8aと、この固定支持部材8a間に架設される架設支持部材8bとからなり、固定支持部材8aは、図示するように、流雪溝60の縁部に係止する鉤状部と、この鉤状部の下端に連設される水平板部とからなる略L字状に形成され、架設支持部材8bは、適宜な幅寸法に設定された平板状に形成され、一対の固定支持部材8aの水平板部に支持され該固定支持部材8a間に架設される構成であり、これにより、本実施例の支持部材8は、固定支持部材8aの水平板部の幅寸法分と同程度の幅調整が可能な構成となっている。
【0043】
なお、固定支持部材8aに関し、流雪溝60に鉤状部を係止する縁部が無い場合、固定支持部材8aを単なるL字状(鉛直板部とこの鉛直板部の下端に連設される水平板部とからなるL字形状)に構成し、鉛直板部を直接、流雪溝60の壁面部に係止(固定)するように構成しても良い。
【0044】
また、本実施例の水流方向切替装置10は、
図1に示すように、二方向に分岐する分岐点61においては一枚の制御板1で切り替えを行い、三方向に分岐する分岐点61においては二枚の制御板1で切り替えを行うように構成され、二枚の制御板1での制御においては、
図5に示すような各制御板1の動作により流水の流れ方向を制御するように構成されている。
【0045】
なお、水流方向切替装置10は上記構成に限定されるものではなく、例えば、
図6に示すように、制御板1において、固定板部1aに棒状体を採用し流雪溝60の天板と底部間に貫通配設するように構成しても良く、また、支持部材8において、流雪溝60の天板に吊り下げ部材8c(例えば全ネジボルト)を垂設し、この吊り下げ部材8cに取付部材8dを設け、図示するように、この取付部材8dにストロークモータ2を取り付ける構成としても良い。
【0046】
また、本実施例の水流方向切替装置10は、制御板1(可動板部1b)が所定位置まで正常に回動動作したか否かを判断する制御板動作判断機能を備えている。
【0047】
具体的には、本実施例の制御板動作判断機能は、ストロークモータ2のロッド2aの位置に基づき前記した制御板1(可動板部1b)が所定位置まで正常に回動動作したか否かを判断するように構成されている。
【0048】
より具体的には、本実施例の制御板動作判断機能は、ストロークモータ2のロッド2aをガイドするシリンダ部2bに設けられた2つのロッド検知手段9a,9bによりロッド2aの動作位置を確知することで前記判断が行われている。
【0049】
詳細には、一方のロッド検知手段9aをシリンダ部2bの基端側、他方のロッド検知手段9bをシリンダ部2bの先端側に設けると共に、
図4に示すように、一方の流雪溝60aへ流水を誘導するための制御板1の位置(ロッド2aが最も後退している基準状態,図中二点鎖線で表示)において、これら両方のロッド検知手段9a,9bがロッド2aを検知し、他方の流雪溝60bへ流水を誘導するための制御板1の位置(ロッド2aが所定量前進している状態,図中実線で表示)において、両方のロッド検知手段9a,9bがロッド2aを検知せず、さらに、前記以外の制御板1の位置状態において、先端側のロッド検知手段9bのみがロッド2aを検知するように各ロッド検知手段9a,9bを設け、ロッド2aの動作を各ロッド検知手段9a,9bのロッド2aの検知の有無により確知し、このロッド2aの動作により制御板1(可動板部1b)が所定位置まで正常に回動動作したか否かを判断するように構成されている。
【0050】
すなわち、本実施例の制御板動作判断機能は、一方の流雪溝60aへ流水を導入するように制御板1を動作させる場合、両ロッド検知手段9a,9bがロッド2aを検知していれば制御板1(可動板部1b)が正常に動作したと判断し、また、他方の流雪溝60bへ流水を導入するように制御板1を動作させる場合、両ロッド検知手段9a,9bがロッド2aを検知していなければ制御板1(可動板部1b)が正常に動作したと判断するように構成されている。
【0051】
また、本実施例は、制御板動作判断機能が制御板1の動作に異常があると判断した場合、すなわち、制御板1が所定位置まで動作しなかったと判断した場合、ストロークモータ2のロッド2aを繰り返し進退動作させ、制御板1を数回、回動動作(開閉動作)させた後、再度、動作の正常、異常を判断するように構成されている(制御板1の雪はさみによる動作異常の場合、前記動作により解消されることがあるため。)。
【0052】
なお、制御板動作判断機能に関しては、上記以外に、例えば制御板1の先端にリミットスイッチを設け、制御板1が正常動作により所定位置に移動し、制御板1に設けられたリミットスイッチが流雪溝60の壁面に接し操作されスイッチON状態となることで、制御板1(可動板部1b)が正常に動作したと判断するように構成しても良い。また、リミットスイッチを流雪溝60の壁面側に設け、制御板1が正常に動作した場合、このリミットスイッチに当接しスイッチON状態となるように構成し、このリミットスイッチのON/OFF状態を確知することで制御板1が正常に動作したか否かを判断するように構成しても良い。
【0053】
また、前記した水流方向切替装置10が設けられる各分岐点61には、水流方向切替装置10の動作を制御する水流方向切替装置制御ユニット20がそれぞれ配設されている。
【0054】
各水流方向切替装置制御ユニット20は、制御回路及び手動操作部を備え、水流方向切替装置10と接続され、サーバ30から送信された水流方向切替装置動作指令信号を受信し、この信号に従い水流方向切替装置10の動作を制御するように構成され、さらに、手動操作に切り替え、手動操作部の操作により水流方向切替装置10を手動操作することができるように構成されている。
【0055】
また、本実施例の水流方向切替装置制御ユニット20は、サーバ30を介さず、管理者が遠隔操できるように構成され、この水流方向切替装置制御ユニット20を遠隔操作することで水流方向切替装置10を切り替え動作させることができるように構成されている。
【0056】
なお、本実施例においては、分岐点の数が少ない場合(例えば一箇所の場合)、サーバ30を備えず、水流方向切替装置制御ユニット20に直接、切り替えスケジュールを登録し、この水流方向切替装置制御ユニット20に登録された切り替えスケジュールに基づいて、水流方向切替装置10の動作が制御されるように構成しても良い。
【0057】
また、前記した水流方向切替装置10が設けられる各分岐点61には、水位を計測する水位計5が設けられ、本実施例は、この水位計5により各分岐点61における水位をサーバ30で管理し、流雪溝60内の水位異常を検知すると共に、水位異常の発生箇所を特定できるように構成されている。
【0058】
すなわち、流雪溝60内において雪詰まりなどの不具合が生じていなければ、流雪溝60内の各分岐点61においては、
図7(a)に示すように流水の水位はほぼ一定となり、各水位計5が測定する水位はほぼ同値となる。これに対して、流雪溝60内において雪詰まりなどの不具合が生じた場合、
図7(a)に示すように、詰まり箇所の上流側の分岐点61では水位が上昇し、下流側では水位が低下する。このように上流側と下流側の水位変動の有無により水位異常の発生の有無を検知することができ、また、連続する二地点の分岐点61において上流側の水位が上昇し、下流側の水位が低下している箇所を確認することで、その二地点間に水位異常の原因となる雪詰まりなどの不具合が生じていることを確知することができる。
【0059】
また、本実施例は、河川、湖等の水源からの流雪溝60への導水量を制御する水門50を開閉動作させる水門開閉装置51を備え、水門開閉装置51により水門50を機械的に開閉操作して前記導水量を制御するように構成されている。
【0060】
具体的には、
図1に示すように、水門開閉装置51は、水流方向切替装置10と同様、ストロークモータが用いられ、このストロークモータのロッドの進退作動により水門50を上下方向に開閉動作させるように構成され、さらに、本実施例の水門開閉装置51は、水流方向切替装置10と同様に、水門開閉装置51の近傍に設置される水門開閉装置制御ユニット21を介して自動操作可能に構成されている。
【0061】
また、本実施例において、サーバ30はクラウドサーバを採用し、このクラウドサーバ30に流雪溝60における通水区間の切り替えスケジュールが登録され、この切り替えスケジュールに基づき、水流方向切替装置制御ユニット20に水流方向切替装置動作指令信号を送信し、水流方向切替装置制御ユニット20がこの信号に従い水流方向切替装置10の動作を制御することで、前記切り替えスケジュール通りに通水区間の切り替えが行われる構成となっている。なお、サーバ30の種類は本実施例に限定されるものではない。
【0062】
また、本実施例は、流雪溝60における通水区間の切り替えスケジュールを表示するスケジュール表示機能、流雪溝60における通水区間をリアルタイムで表示する通水区間表示機能、及び流雪溝60内(通水区間)において水位異常が発生した場合、水位異常が発生したことユーザーの端末機器40に通知する水位異常通知機能の各種機能を備えている。
【0063】
具体的には、スケジュール表示機能及び通水区間表示機能は、パソコン,スマートフォン等の端末機器40からインターネット回線を通じてサーバ30にアクセスすることで該端末機器40に表示される様に構成されている。なお、
図8(a),(b)は通水区間表示例である。
【0064】
また、水位異常通知機能は、水位異常が発生した旨以外に、流雪溝60への雪の投入を禁止する旨や、水位異常が解消され雪の投入が可能となった旨を、メール等の適宜な通知手段により通知するとともに、
図9に示すように、前記通水区間表示機能において水位異常発生箇所(区間)を表示するように構成されている(本実施例では図示するように異常発生箇所が別色に切り替わり点滅する。)。
【0065】
以上のように構成される本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0066】
本実施例は、クラウドサーバ30に登録された通水区間の切り替えスケジュールに基づき、水流方向切替装置制御ユニット20を介して水流方向切替装置10が自動的に切り替え動作し、通水区間の切り替えが行われる。
【0067】
したがって、通水区間の切り替え作業に人力を要せず、これにより、作業者の切り替え作業にかかる労力が可及的に軽減され、さらに、作業者が厳しい気象条件下で作業を行うことも無くなる。
【0068】
しかも、各分岐点61に設けられた水流方向切替装置10を同時に(一斉に)切り替え動作させることができるから、スケジュール通りに所定の通水区間に切り替えることができる。
【0069】
また、本実施例は、水門開閉装置51を備え、この水門開閉装置51により水門50を遠隔操作することができるから、水流方向切替装置10の切り替え作業同様、水門50の開閉作業に人力を要せず、これにより、作業者の開閉作業にかかる労力が可及的に軽減され、さらに、一々、現場に行かずとも、流雪溝60の流水量を容易に調整することができる。
【0070】
また、本実施例は、サーバ30にクラウドサーバ30を採用しているから、初期コストを抑制でき、また、インターネット回線を利用して多くのユーザーが容易に利用することができ、ユーザーは、パソコン,スマートフォン等の端末機器40を介して通水区間切り替えスケジュール、現在の通水区間、水位異常の発生の有無とその発生箇所などを容易に確認することができる。
【0071】
また、本実施例に用いる水流方向切替装置10は、駆動装置2にストロークモータ2を用いているから、動作性、耐久性に優れ、安定的に切り替え操作を行うことができ、しかも、制御板1に設けた雪切り板4により分岐点61を通過する際に雪の塊に切り込みを入れ、塊を崩れやすくしているので、雪の塊による詰まりの発生を可及的に防止することができるものとなる。
【0072】
さらに、本実施例の水流方向切替装置10は、制御板1が所定位置まで正常に回動動作したか否かを判断する制御板動作判断機能を備え、制御板動作判断機能が動作異常を検知した場合、自動的に制御板1が繰り返し回動動作(開閉動作)するので、動作異常原因が雪はさみであった場合、この回動動作により自動的に異常が解消されるものとなる。
【0073】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0074】
1 制御板
1c 高さ調整板
2 駆動装置
3 鉛直軸
4 雪切り板
6 開口部
60 流雪溝
61 分岐点