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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】水系消火薬剤
(51)【国際特許分類】
   A62D 1/00 20060101AFI20241007BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241007BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
A62D1/00
C08L83/04
C08L71/00 Y
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023540866
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 KR2021017593
(87)【国際公開番号】W WO2022149723
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0000653
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523250902
【氏名又は名称】パク、ミョン ギュン
【氏名又は名称原語表記】PARK, Myung Kyun
【住所又は居所原語表記】103dong 1202ho,21,Jangseungnam-ro 33beon-gil,Namdong-gu,Incheon 21594,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミョン ギュン
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03621917(US,A)
【文献】特表2005-511215(JP,A)
【文献】特開2008-119303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62D 1/00 - 9/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非電解質用材料と、
凍結防止剤と、
シリコーン界面活性剤またはシリコーンオイルと、
水と、を含み
前記非電解質用材料は、ブドウ糖であり、
前記ブドウ糖5~15wt%と、前記凍結防止剤25~40wt%と、前記シリコーン界面活性剤またはシリコーンオイル1~10wt%と、残部の前記水とを含む
ことを特徴とする水系消火薬剤。
【請求項2】
前記凍結防止剤は、
エチレングリコール、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールを1~3:2~6:1の重量比で混合した
請求項1に記載の水系消火薬剤。
【請求項3】
前記シリコーン界面活性剤は、
PEG-12ジメチコン(PEG-12 Dimethicone)、PEG-11メチルエーテルジメチコン(PEG11 Methyl Ether Dimethicone)、PEG-10ジメチコン(PEG-10 Dimethicone)、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン(Cetyl PEG/PPG-10/1 Dimethicone)、シクロペンタシロキサンPEG/PPG-18/18ジメチコン(Cyclopentasiloxane(and)PEG/PPG-18/18 Dimethicone)、ラウリルPEG-8ジメチコン(Lauryl PEG-8 Dimethicone)、ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3共重合体(Lauryl dimethicone/Polyglycerin-3 crosspolymer)、ラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(Lauryl Polyglyceryl-3 polydimethylsiloxyethyl dimethicone)、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(Polyglyceryl-3 polydimethylsiloxyethyl dimethicone)、ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコン(Polyglyceryl-3 disiloxane dimethicone)およびジメチコン/ポリグリセリン-3共重合体(Dimethicone/Polyglycerin-3 crosspolymer)の中から選ばれた1種または2種以上である
請求項1に記載の水系消火薬剤。
【請求項4】
前記シリコーンオイルは、
ヘキサメチルジシロキサン;ヘプチルペンタメチルジシロキサン;ヘキサエチルジシロキサン;ペンタメチルオクチルジシロキサン;ペンタメチルペンチルジシロキサン;ブチルペンタメチルジシロキサン;ペンタエチルメチルジシロキサン;ヘキシルペンタメチルジシロキサン;ヘプタメチルトリシロキサン;オクタメチルトリシロキサン;デカメチルテトラシロキサン;ドデカメチルペンタシロキサン;ジメチルポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン;ジフェニルポリシロキサン;ジメチルシロキサンブロックコポリマー;ポリエーテル-ポリメチルシロキサン-コポリマー;ポリエトキシル化ジメチルシロキサン;ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー;およびシリコーン-ポリエーテルコポリマーの中から選ばれた1種または2種以上である
請求項1に記載の水系消火薬剤。
【請求項5】
記凍結防止剤は、
エチレングリコール、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールを2:4:1の重量比で混合した
請求項1に記載の水系消火薬剤。
【請求項6】
腐食防止剤0.01~1wt%および消泡剤0.01~1wt%をさらに含む
請求項1に記載の水系消火薬剤。
【請求項7】
前記腐食防止剤は、ナトリウムケイ酸塩である
請求項6に記載の水系消火薬剤。
【請求項8】
前記消泡剤は、ジメチルポリシロキサン(Dimethylpolysiloxanes)系のシリコーン消泡剤である
請求項6に記載の水系消火薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月5日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0000653号の出願日の利益を主張し、当該内容全部は本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、水系消火薬剤に関し、より詳細には、非電解質用材料、凍結防止剤、シリコーン界面活性剤および水を含んで消火薬剤を製造することによって、A級およびB級火災はもちろん、C級火災(電気火災)にも適用できる水系消火薬剤に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、火災は、A級火災、B級火災、C級火災に区分する。
【0004】
A級火災は、可燃性物質である木や紙などによる火災発生であり、主に水系消火器を用いて発火点以下に冷却させて消火させる方法が有用であり、B級火災は、石油や油による火災発生であり、二酸化炭素(CO)、ハロン(Halon)およびフォーム(Foam)消火器を用いて消火させる方法が有用であり、C級火災は、電気による火災発生であり、二酸化炭素(CO)による酸素遮断方式で消火させる方法が最も有用である。
【0005】
また、このようなA級、B級、C級火災に全部適用できる方法としては、粉末消火器(ABC粉末)およびガス系消火器を用いることである。ただし、前記粉末消火器は、性能と価格の観点から非常に優れているが、長期保管時に固化現象が現れ、消火後に粉末消火薬剤による汚染に起因して二次被害が大きいという短所がある。また、ガス系消火器は、ガスの成分によって人が窒息をしたり、使用後にオゾン層を破壊するなどの環境汚染を引き起こすという問題があり、使用が次第に減少する傾向にある。
【0006】
これより、水を基礎とし、A級、B級、C級火災に全部適用が可能な共用消火器に対する開発が求められている。
【0007】
水は、比熱(1kcal/kg・℃)が非常に大きいため、多くの熱量を吸収し、大きい蒸発潜熱(539kcal/kg)に起因して気化時に多量の熱を周囲から奪って可燃物を冷却させ、気化膨脹率(1,650倍)が大きいため、水蒸気が燃焼面を覆って、窒息消火効果が大きいので、消火薬剤として有用である。しかしながら、このような水は、A級火災には効果的であるが、B級およびC級火災に脆弱であるという短所がある。
【0008】
このような短所を改善するために、特許文献1:韓国登録特許第10-1300870号では、水、アルキルアシッドホスフェート、グリコール、炭化水素系界面活性剤、アンモニア水などを含む水系消火薬剤を提案することによって、A級はもちろん、B級火災にも適用できるようにした。しかしながら、このような先行登録特許は、依然としてC級火災に適用が難しいという短所があった。
【0009】
また、特許文献2:韓国登録特許第10-2043750号でも、炭酸金属塩、凝固点降下剤、フッ素系界面活性剤、尿素、水などを含む浸潤消火薬剤組成物を提案することによって、A級はもちろん、B級火災にも適用が可能になった。しかしながら、このような先行登録特許は、依然としてC級火災に適用が難しいという短所があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国登録特許第10-1300870号
【文献】韓国登録特許第10-2043750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、水を基礎とし、高い電気抵抗性を示すことによって、A級およびB級火災はもちろん、C級火災にも適用できる水系消火薬剤を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、人体と環境に無害であり、二次汚染がない環境に優しい水系消火薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するための本発明の水系消火薬剤は、非電解質用材料、凍結防止剤、シリコーン界面活性剤またはシリコーンオイル、および水を含み、電気火災に適応性があることを特徴とする。
【0014】
前記消火薬剤は、前記非電解質用材料5~15wt%、凍結防止剤25~40wt%、シリコーン界面活性剤またはシリコーンオイル1~10wt%および残部の水を含むことを特徴とする。
【0015】
前記非電解質用材料は、ブドウ糖、エタノール、アセトン、グリセリン、澱粉、セルロース、尿素、砂糖およびタンパク質の中から選ばれた1種または2種以上であってもよい。
【0016】
前記凍結防止剤は、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールを1~3:2~6:1の重量比で混合したものであってもよい。
【0017】
前記シリコーン界面活性剤は、PEG-12ジメチコン(PEG-12 Dimethicone)、PEG-11メチルエーテルジメチコン(PEG11 Methyl Ether Dimethicone)、PEG-10ジメチコン(PEG-10 Dimethicone)、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン(Cetyl PEG/PPG-10/1 Dimethicone)、シクロペンタシロキサンPEG/PPG-18/18ジメチコン(Cyclopentasiloxane(and)PEG/PPG-18/18 Dimethicone)、ラウリルPEG-8ジメチコン(Lauryl PEG-8 Dimethicone)、ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3共重合体(Lauryl dimethicone/Polyglycerin-3 crosspolymer)、ラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(Lauryl Polyglyceryl-3 polydimethylsiloxyethyl dimethicone)、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(Polyglyceryl-3 polydimethylsiloxyethyl dimethicone)、ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコン(Polyglyceryl-3 disiloxane dimethicone)およびジメチコン/ポリグリセリン-3共重合体(Dimethicone/Polyglycerin-3 crosspolymer)の中から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする。
【0018】
前記シリコーンオイルは、ヘキサメチルジシロキサン;ヘプチルペンタメチルジシロキサン;ヘキサエチルジシロキサン;ペンタメチルオクチルジシロキサン;ペンタメチルペンチルジシロキサン;ブチルペンタメチルジシロキサン;ペンタエチルメチルジシロキサン;ヘキシルペンタメチルジシロキサン;ヘプタメチルトリシロキサン;オクタメチルトリシロキサン;デカメチルテトラシロキサン;ドデカメチルペンタシロキサン;ジメチルポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン;ジフェニルポリシロキサン;ジメチルシロキサンブロックコポリマー;ポリエーテル-ポリメチルシロキサン-コポリマー;ポリエトキシル化ジメチルシロキサン;ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー;およびシリコーン-ポリエーテルコポリマーの中から選ばれた1種または2種以上であってもよい。
【0019】
前記非電解質用材料は、ブドウ糖であり、前記凍結防止剤は、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールを2:4:1の重量比で混合したものであることを特徴とする。
【0020】
腐食防止剤0.01~1wt%および消泡剤0.01~1wt%をさらに含み、前記腐食防止剤は、ナトリウムケイ酸塩であり、前記消泡剤は、ジメチルポリシロキサン(Dimethylpolysiloxanes)系のシリコーン消泡剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水系消火薬剤によれば、電気火災に適用することができ、従来の粉末消火器やガス消火器を効果的に代替することができ、人体や環境に無害であり、使用後に粉末またはガスによる二次汚染を誘発しないので、環境に優しいという長所がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明は、従来の水系消火薬剤とは異なって、電気火災に適応性があることに最も大きい特徴があり、二次環境汚染を誘発しないことに特徴がある。
【0024】
このような本発明の水系消火薬剤は、非電解質用材料、凍結防止剤、シリコーン界面活性剤および水を含み、電気火災に適応性があることを特徴とする。
【0025】
まず、本発明の水系消火薬剤は、水、より具体的には、脱イオン蒸留水(Deionized distilled water)を基礎とするものであり、水を基礎とするので、使用後に二次汚染を引き起こさず、製造コストが低く、商用化が可能であるという長所がある。
【0026】
前記非電解質用材料は、水との混合を通じて電荷の移動が難しい非電解質溶液を製造することによって、電気伝導度を極限まで下げて、すなわち、電気抵抗性を高めて、電気火災に対する適応性を有するようにするためのものである。
【0027】
本発明において前記非電解質用材料としては、ブドウ糖、エタノール、アセトン、グリセリン、澱粉、セルロース、尿素、砂糖およびタンパク質の中から選ばれた1種または2種以上を使用することができ、最も好ましくは、ブドウ糖を使用する。これは、前記ブドウ糖が電気火災に対する適応性が最も優れているためである。
【0028】
前記凍結防止剤は、水が凍る点以下で凍結し、使用が難しい問題を解消するためのものであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールのうち1種以上を使用することができる。ただし、前記エチレングリコールは、単独使用時に多量が添加される場合、所要の凍結防止効果が現れるが、これによって、消火薬剤の粘度が必要以上に上昇し、消火液の放出に問題が生じるおそれがあり、前記プロピレングリコールとジプロピレングリコールは、単独使用時に価格が高くて、製品コストが上昇する問題があるので、凍結防止効果、製品コスト、粘度などを考慮して、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールを1~3:2~6:1の重量比、より好ましくは、2:4:1の重量比で混合して使用する。前記エチレングリコール、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールの重量比が1~3:2~6:1であるとき、消火性能に優れているという長所がある。
【0029】
前記シリコーン界面活性剤は、水の表面張力を低減して、B級火災、すなわち油火災時に水と火がついた油の層分離現象を防止するものであり、油の表面にエマルジョンを形成し、窒息効果を付与して、油火災を効果的に鎮圧するためのものである。また、一般火災の鎮圧時には、低い表面張力による浸透力を最大化し、火災に対する冷却作用および窒息効果を付与するためのものである。
【0030】
このようなシリコーン界面活性剤は、PEG-12ジメチコン(PEG-12 Dimethicone)、PEG-11メチルエーテルジメチコン(PEG11 Methyl Ether Dimethicone)、PEG-10ジメチコン(PEG-10 Dimethicone)、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン(Cetyl PEG/PPG-10/1 Dimethicone)、シクロペンタシロキサンPEG/PPG-18/18ジメチコン(Cyclopentasiloxane(and)PEG/PPG-18/18 Dimethicone)、ラウリルPEG-8ジメチコン(Lauryl PEG-8 Dimethicone)、ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3共重合体(Lauryl dimethicone/Polyglycerin-3 crosspolymer)、ラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(Lauryl Polyglyceryl-3 polydimethylsiloxyethyl dimethicone)、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(Polyglyceryl-3 polydimethylsiloxyethyl dimethicone)、ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコン(Polyglyceryl-3 disiloxane dimethicone)およびジメチコン/ポリグリセリン-3共重合体(Dimethicone/Polyglycerin-3 crosspolymer)の中から選ばれた1種または2種以上を使用する。
【0031】
上記のように、非電解質用材料、凍結防止剤、シリコーン界面活性剤またはシリコーンオイル、および水を含む水系消火薬剤は、一般火災はもちろん、油火災、電気火災への適用が全部可能であることはもちろん、環境に優しい材料の使用によって人体に無害であり、二次汚染を誘発せず、製造コストも低く、商用化が可能であるという長所がある。また、従来の粉末消火器とガス消火器を効果的に代替することができるという長所がある。
【0032】
なお、本発明による水系消火薬剤の具体的な組成比は、前記非電解質用材料5~15wt%、凍結防止剤25~40wt%、シリコーン界面活性剤またはシリコーンオイル1~10wt%および残部の水であることが好ましい。これは、前記非電解質用材料が5wt%未満であれば、電気抵抗性が低く、電気火災への適用が難しく、15wt%を超過しても、さらなる効果が現れないので、経済的でなく、前記凍結防止剤が25wt%未満であれば、凍結防止効果が十分でなく、40wt%を超過すると、粘度の上昇によって消火液の放出時に問題が生じるおそれがあることはもちろん、製造コストも上昇し、前記シリコーン界面活性剤が1wt%未満であれば、水の表面張力の変化が非常に小さく、火災鎮圧の副次的効果がわずかであり、10wt%を超過する場合、消火薬剤の放出時に薬剤がバブルの形態になって、放出距離および放出に影響を及ぼすためである。
【0033】
なお、本発明の消火薬剤は、腐食防止剤0.01~1wt%および消泡剤0.01~1wt%をさらに含んでもよい。
【0034】
前記腐食防止剤は、消火薬剤の散布によって周辺の物品などが腐食するのを防止し、消火薬剤が貯蔵される消火容器の腐食をも防止するためのものであり、ナトリウムケイ酸塩を使用することができる。
【0035】
前記腐食防止剤は、0.01wt%未満であれば、その効果がわずかであり、1wt%を超過しても、さらなる向上した作用効果が現れないので、0.01~1wt%で含まれることが好ましい。
【0036】
前記消泡剤は、消火薬剤の気泡生成を防ぐためのものであり、ジメチルポリシロキサン系シリコーン消泡剤であれば、その種類と関係なく全部適用可能である。
【0037】
また、前記消泡剤は、0.01wt%未満であれば、その効果がわずかであり、1wt%を超過しても、さらなる向上した作用効果が現れないので、0.01~1wt%で含まれることが好ましい。
【0038】
以下、本発明による水系消火薬剤の製造方法について簡略に説明する。
【0039】
まず、材料を組成比によって秤量して準備した後、準備した水の一部に凍結防止剤およびシリコーン界面活性剤を混合し、混合液を製造する。
【0040】
また、残りの準備した水に非電解質材料を混合し、非電解質溶液を製造する。
【0041】
その後、前記混合液と前記非電解質溶液を混合することによって、消火薬剤の製造を完了する。
【0042】
また、腐食防止剤と消泡剤をさらに混合する場合、前記製造された消火薬剤にさらに混合し、水系消火薬剤の製造を完了する。
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0044】
(実施例1)
脱イオン蒸留水16.6gにエチレングリコール10g、プロピレングリコール20gおよびジプロピレングリコール5gおよびシリコーン界面活性剤としてPEG-12ジメチコン5gを投入し、撹拌して、混合液を製造した。
次に、脱イオン蒸留水33.4gにブドウ糖10gを投入し、完全に溶けるように撹拌し、これに上記で製造した混合液を追加して撹拌することによって、水系消火薬剤を製造した。
【0045】
(実施例2)
実施例1において脱イオン蒸留水38.4gにブドウ糖5gを投入したことを除いて、同一にして水系消火薬剤を製造した。
【0046】
(実施例3)
実施例1において脱イオン蒸留水28.4gにブドウ糖15gを投入したことを除いて、同一にして水系消火薬剤を製造した。
【0047】
(実施例4)
脱イオン蒸留水16.6gにエチレングリコール10g、プロピレングリコール20gおよびジプロピレングリコール10gおよびシリコーン界面活性剤としてPEG-10ジメチコン5gを投入し、撹拌して、混合液を製造した。
次に、脱イオン蒸留水28.4gにブドウ糖10gを投入し、完全に溶けるように撹拌し、これに上記で製造した混合液を追加して撹拌することによって、水系消火薬剤を製造した。
【0048】
(実施例5)
脱イオン蒸留水16.6gにエチレングリコール18g、プロピレングリコール12gおよびジプロピレングリコール6gおよびシリコーン界面活性剤としてセチルPEG/PPG-10/1ジメチコン5gを投入し、撹拌して、混合液を製造した。
次に、脱イオン蒸留水32.4gにブドウ糖10gを投入し、完全に溶けるように撹拌し、これに上記で製造した混合液を追加して撹拌することによって、水系消火薬剤を製造した。
【0049】
(実施例6)
脱イオン蒸留水16.6gにエチレングリコール5g、プロピレングリコール30gおよびジプロピレングリコール5gおよびシリコーン界面活性剤としてPEG-11メチルエーテルジメチコン5gを投入し、撹拌し、混合液を製造した。
次に、脱イオン蒸留水28.4gにブドウ糖10gを投入し、完全に溶けるように撹拌し、これに上記で製造した混合液を追加して撹拌することによって、水系消火薬剤を製造した。
【0050】
(実施例7)
脱イオン蒸留水16.6gにエチレングリコール9g、プロピレングリコール18gおよびジプロピレングリコール3gおよびシリコーン界面活性剤としてセチルPEG/PPG-10/1ジメチコン5gを投入し、撹拌して、混合液を製造した。
次に、脱イオン蒸留水38.4gにブドウ糖10gを投入し、完全に溶けるように撹拌し、これに上記で製造した混合液を追加して撹拌することによって、水系消火薬剤を製造した。
【0051】
(実施例8)
脱イオン蒸留水16.6gにエチレングリコール10g、プロピレングリコール20gおよびジプロピレングリコール5gおよびシリコーンオイルとしてヘプタメチルトリシロキサン5gを投入し、撹拌して、混合液を製造した。
次に、脱イオン蒸留水33.4gにブドウ糖10gを投入し、完全に溶けるように撹拌し、これに上記で製造した混合液を追加して撹拌することによって、水系消火薬剤を製造した。
【0052】
(実施例9)
脱イオン蒸留水16.6gにエチレングリコール10g、プロピレングリコール20gおよびジプロピレングリコール5gおよびシリコーンオイルとしてジメチルシロキサンブロックコポリマー5gを投入し、撹拌して、混合液を製造した。
次に、脱イオン蒸留水33.4gにブドウ糖10gを投入し、完全に溶けるように撹拌し、これに上記で製造した混合液を追加して撹拌することによって、水系消火薬剤を製造した。
【0053】
(比較例1)
脱イオン蒸留水16.6gにエチレングリコール10g、プロピレングリコール20gおよびジプロピレングリコール5gおよびシリコーン界面活性剤としてPEG-12ジメチコン5gを投入し、撹拌して、混合液を製造した。
次に、脱イオン蒸留水40.4gにブドウ糖3gを投入し、完全に溶けるように撹拌し、これに上記で製造した混合液を追加して撹拌することによって、水系消火薬剤を製造した。
【0054】
(比較例2)
脱イオン蒸留水16.6gにエチレングリコール10g、プロピレングリコール20gおよびジプロピレングリコール5gおよびシリコーン界面活性剤としてPEG-12ジメチコン5gを投入し、撹拌して、混合液を製造した。
次に、脱イオン蒸留水23.4gにブドウ糖20gを投入し、完全に溶けるように撹拌し、これに上記で製造した混合液を追加して撹拌することによって、水系消火薬剤を製造した。
【0055】
(試験例1)
前記実施例1の電気火災適応性を韓国消防産業技術院の第4条能力単位試験基準によってテストした。消火器の電気火災適応性に関する検証は、KFI(韓国消防産業技術院)に依頼した。
【0056】
C級火災用消火器の電気伝導性は、次の各号の隔離距離(消火器の放射ノズルの先端と金属板の中心間の隔離距離をいう)および電圧を加えた状態で消火薬剤を放射する通電電流が0.5mA以下でなければならない。
1.隔離距離50cmの場合、AC(35±3.5)kV
2.隔離距離90cmの場合、AC(100±10)kV
試験条件:温度(17.3±1.7)℃、湿度(49±14)%R.H
【0057】
また、その結果を次のように示した。
【0058】
下記から確認できるように、本発明の実施例1は、隔離距離50cm、AC(35±3.5)kVの電圧条件で通電電流が0.1mAであり、隔離距離90cm、AC(100±10)kVの電圧条件で通電電流が0.1mAであり、消火器の電気火災適応性に関する検証を通過したことを確認できた。
【0059】
(試験例2)
前記実施例1のA級およびB級火災の消火性能を次のように測定した。
A級火災1:横×縦×長さが30mm×35mm×730mm(1単位)の乾燥した松およびハンの木の角材90個を格子状に積み重ねて、3分間燃焼させた後、消火薬剤3Lを充填した消火器で消火を実施し、消火完了2分後に再燃の有無によって消火性能を評価した。
A級火災2:横×縦×の長さが30mm×35mm×900mm(2単位)の乾燥した松およびハンの木の角材144個を格子状に積み重ねて、3分間燃焼させた後、消火薬剤3Lを充填した消火器で消火を実施し、消火完了2分後に再燃の有無によって消火性能を評価した。
B級火災1:横×縦×高さが44.7cm×44.7cm×30cm(1単位)の消火試験の模型に水を120mmとなるように注入し、ガソリンをさらに30mmとなるように注入した後、1分間燃焼させた後、消火薬剤3Lを充填した消火器で消火を実施し、放射完了後に1分以内に再着火の有無によって消火性能を評価した。
B級火災2:横×縦×高さが77.5cm×77.5cm×30cm(3単位)の消火試験の模型に水を120mmとなるように注入し、ガソリンをさらに30mmとなるように注入した後、1分間燃焼させた後、消火薬剤3Lを充填した消火器で消火を実施し、放射完了後に1分以内に再着火の有無によって消火性能を評価した。
【0060】
また、その結果を下記表1および表2に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
前記表1のように、本発明の実施例1は、A級およびB級火災に対する消火性能に優れていることを確認できた。
【0063】
(試験例3)
A級火災性能:前記実施例1~実施例9および比較例1~比較例2に対して横×縦×長さが30mm×35mm×730mm(1単位)の乾燥した松およびハンの木の角材90個を格子状に積み重ねて、3分間燃焼させた後、消火薬剤3Lを充填した消火器で消火を実施した。
○:45秒以内に消火
X:45秒以内に消火しない
【0064】
B級火災性能:前記実施例1~実施例9および比較例1~比較例2に対して横×縦×高さが44.7cm×44.7cm×30cm(1単位)の消火試験の模型に水を120mmとなるように注入し、ガソリンをさらに30mmとなるように注入した後、1分間燃焼させた後、消火薬剤3Lを充填した消火器で消火を実施した。
○:消火薬剤2L以内で消火
X:3Lで消火しない
【0065】
C級火災性能:韓国の消火器の形式承認および製品検査の技術基準第4条によって温度17.3±1.7℃と湿度49±14%の条件で電気伝導性試験を実施した。下記の隔離距離(消火器の放射ノズルの先端と金属板の中心間の隔離距離をいう)および電圧を加えた状態で消火薬剤を放射する場合、通電電流を測定した。
-隔離距離50cmの場合、AC(35±3.5)kv
-隔離距離90cmの場合、AC(100±10)kv
○:隔離距離50cmおよび隔離距離90cmにおいていずれも0.5mA以下と測定される
X:隔離距離50cmおよび隔離距離90cmにおいて0.5mAを超過して測定される
実施例1の場合、隔離距離50cmの場合、0.1mAと測定され、隔離距離90cmの場合、0.1mAと測定された。
【0066】
凍結性性能:前記実施例1~実施例9および比較例1~比較例2に対して-20℃で24時間保管したときに凍結するかをテストした。
○:凍結しない
X:凍結する
【0067】
【表2】
【0068】
比較例1の場合、非絶縁性材料であるブドウ糖の量が少なすぎて、電気が通電することを確認した。比較例2の場合、過飽和状態でブドウ糖の沈殿物が発生し、消火薬剤の放射時にノズルの性能が低下する問題があった。
【0069】
前記試験例1、2、3のように、本発明の水系消火薬剤は、A級火災およびB級火災はもちろん、C級火災への適用が可能で、将来様々な火災防災分野に利用可能であることが分かる。
【0070】
本発明は、記載された実施例に限定されるものではなく、本発明の思想および範囲を逸脱することなく、多様に修正および変形できることは、この技術の分野における通常の知識を有する者に自明である。したがって、そのような変形例または修正例は、本発明の特許請求の範囲に属する。