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特許7566386労働管理システムおよびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】労働管理システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/1091 20230101AFI20241007BHJP
   G07C 5/08 20060101ALI20241007BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G06Q10/1091
G07C5/08
G07C5/00 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2024063881
(22)【出願日】2024-04-11
(65)【公開番号】P2024086867
(43)【公開日】2024-06-28
【審査請求日】2024-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510000725
【氏名又は名称】菱木運送株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱木 博一
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-181345(JP,A)
【文献】特開2011-108092(JP,A)
【文献】特開2019-101726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 1/00-15/00
G06Q 10/00-10/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに通信可能な運転者端末、管理者端末およびサーバを含む労働管理システムであって、
車両が停車した位置を特定する位置特定手段と、
前記車両が停車した第1時刻を取得する第1取得手段と、
前記車両の停車状態が解除された第2時刻を取得する第2取得手段と、
前記位置特定手段により特定された位置に対応する荷主を特定する荷主特定手段と、
前記第1時刻と前記第2時刻に基づいて、前記位置特定手段により特定された位置における前記車両の運転者の待機時間を算出する算出手段と、
前記荷主特定手段により特定された荷主と、前記算出手段により算出された待機時間とを含む待機情報を記録する記録手段と、
を備え
前記位置特定手段、前記第1取得手段、前記第2取得手段、前記荷主特定手段、前記算出手段および前記記録手段は、前記運転者端末、前記管理者端末および前記サーバのいずれかにより備えられている、労働管理システム。
【請求項2】
前記記録手段は、前記荷主特定手段により荷主を特定できた場合に、当該荷主と、前記算出手段により算出された待機時間とを含む待機情報を記録する、
請求項1に記載の労働管理システム。
【請求項3】
前記運転者端末、前記管理者端末および前記サーバのいずれかは、前記荷主特定手段により荷主を特定できない場合に通知を行う通知手段をさらに備える、
請求項1に記載の労働管理システム。
【請求項4】
前記記録手段は、前記荷主特定手段により荷主を特定できない場合に、前記第1時刻から前記第2時刻までの経過時間を休憩時間として記録する、
請求項1に記載の労働管理システム。
【請求項5】
前記運転者端末、前記管理者端末および前記サーバのいずれかは、前記荷主特定手段により荷主を特定できない場合に、前記経過時間を休憩時間として処理することについての許否を求める確認手段をさらに備え、
前記記録手段は、前記確認手段が前記経過時間を休憩時間として処理することの許可を得た場合に、前記経過時間を休憩時間として記録する、
請求項4に記載の労働管理システム。
【請求項6】
前記荷主特定手段は、位置と荷主とを関連付けたマスタに基づき、前記位置特定手段により特定された位置に対応する荷主を特定する、
請求項1に記載の労働管理システム。
【請求項7】
前記算出手段は、待機時間としての処理の可否基準となる第3時刻よりも前記第1時刻の方が早い場合、前記第3時刻から前記第2時刻までの経過時間を待機時間として算出する、
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の労働管理システム。
【請求項8】
前記記録手段は、前記第3時刻よりも前記第1時刻の方が早い場合、前記第1時刻から前記第3時刻までの経過時間を休憩時間として記録する、
請求項7に記載の労働管理システム。
【請求項9】
互いに通信可能な運転者端末、管理者端末およびサーバを含む労働管理システムであって、
車両が停車した位置を特定する位置特定手段と、
前記車両が停車した第1時刻を取得する第1取得手段と、
前記車両の停車状態が解除された第2時刻を取得する第2取得手段と、
前記位置特定手段により特定された位置に対応する荷主を特定する荷主特定手段と、
前記荷主特定手段が荷主を特定できない場合に、前記第1時刻と前記第2時刻に基づいて算出される前記車両の停車時間を前記車両の運転者の休憩時間として記録する記録手段と、
を備え
前記位置特定手段、前記第1取得手段、前記第2取得手段、前記荷主特定手段および前記記録手段は、前記運転者端末、前記管理者端末および前記サーバのいずれかにより備えられている、労働管理システム。
【請求項10】
コンピュータを、
車両が停車した位置を特定する位置特定手段、
前記車両が停車した第1時刻を取得する第1取得手段、
前記車両の停車状態が解除された第2時刻を取得する第2取得手段、
前記位置特定手段により特定された位置に対応する荷主を特定する荷主特定手段、
前記第1時刻と前記第2時刻に基づいて、前記位置特定手段により特定された位置における前記車両の運転者の待機時間を算出する算出手段、および、
前記荷主特定手段により特定された荷主と、前記算出手段により算出された待機時間とを含む待機情報を記録する記録手段、
として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記記録手段は、前記荷主特定手段により荷主を特定できた場合に、当該荷主と、前記算出手段により算出された待機時間とを含む待機情報を記録する、
請求項10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記コンピュータを、
前記荷主特定手段により荷主を特定できない場合に通知を行う通知手段、
としてさらに機能させるための請求項10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
前記記録手段は、前記荷主特定手段により荷主を特定できない場合に、前記第1時刻から前記第2時刻までの経過時間を休憩時間として記録する、
請求項10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項14】
前記コンピュータを、
前記荷主特定手段により荷主を特定できない場合に、前記経過時間を休憩時間として処理することについての許否を求める確認手段、
としてさらに機能させ、
前記記録手段は、前記確認手段が前記経過時間を休憩時間として処理することの許可を得た場合に、前記経過時間を休憩時間として記録する、
請求項13に記載のコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記荷主特定手段は、位置と荷主とを関連付けたマスタに基づき、前記位置特定手段により特定された位置に対応する荷主を特定する、
請求項10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記算出手段は、待機時間としての処理の可否基準となる第3時刻よりも前記第1時刻の方が早い場合、前記第3時刻から前記第2時刻までの経過時間を待機時間として算出する、
請求項10乃至15のうちいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記記録手段は、前記第3時刻よりも前記第1時刻の方が早い場合、前記第1時刻から前記第3時刻までの経過時間を休憩時間として記録する、
請求項16に記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
コンピュータを、
車両が停車した位置を特定する位置特定手段、
前記車両が停車した第1時刻を取得する第1取得手段、
前記車両の停車状態が解除された第2時刻を取得する第2取得手段、
前記位置特定手段により特定された位置に対応する荷主を特定する荷主特定手段、および、
前記荷主特定手段が荷主を特定できない場合に、前記第1時刻と前記第2時刻に基づいて算出される前記車両の停車時間を前記車両の運転者の休憩時間として記録する記録手段、
として機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、労働管理システムおよびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、労働環境を改善する機運が高まっている。労働環境の改善には、管理者および労働者の双方が、法や各種の規則を遵守するよう努力することが重要である。例えば、トラック運転者においては、拘束時間、休息期間および休憩時間等に関する各種の規則が存在する。
【0003】
また、近年、運転者の長時間労働を是正するために、荷積み地点や荷卸し地点における待機時間を削減することが強く求められている。待機時間を削減するには、日々の運行における待機時間の実態を把握したうえで、改善に取り組まなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6984883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的の一つは、運送業者における業務管理体制の改善が可能な労働管理システムおよびコンピュータプログラムを提供することである。本発明の他の目的は、本明細書および添付図面から導き出される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る労働管理システムは、互いに通信可能な運転者端末、管理者端末およびサーバを含むものであって、車両が停車した位置を特定する位置特定手段と、前記車両が停車した第1時刻を取得する第1取得手段と、前記車両の停車状態が解除された第2時刻を取得する第2取得手段と、前記位置特定手段により特定された位置に対応する荷主を特定する荷主特定手段と、前記第1時刻と前記第2時刻に基づいて、前記位置特定手段により特定された位置における前記車両の運転者の待機時間を算出する算出手段と、前記荷主特定手段により特定された荷主と前記算出手段により算出された待機時間とを含む待機情報を記録する記録手段と、を備えている。前記位置特定手段、前記第1取得手段、前記第2取得手段、前記荷主特定手段、前記算出手段および前記記録手段は、前記運転者端末、前記管理者端末および前記サーバのいずれかにより備えられている。
実施形態の他の観点によれば、労働管理システムは、互いに通信可能な運転者端末、管理者端末およびサーバを含むものであって、車両が停車した位置を特定する位置特定手段と、前記車両が停車した第1時刻を取得する第1取得手段と、前記車両の停車状態が解除された第2時刻を取得する第2取得手段と、前記位置特定手段により特定された位置に対応する荷主を特定する荷主特定手段と、前記荷主特定手段が荷主を特定できない場合に、前記第1時刻と前記第2時刻に基づいて算出される前記車両の停車時間を前記車両の運転者の休憩時間として記録する記録手段と、を備えている。前記位置特定手段、前記第1取得手段、前記第2取得手段、前記荷主特定手段および前記記録手段は、前記運転者端末、前記管理者端末および前記サーバのいずれかにより備えられている。
【0007】
一実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、車両が停車した位置を特定する位置特定手段、前記車両が停車した第1時刻を取得する第1取得手段、前記車両の停車状態が解除された第2時刻を取得する第2取得手段、前記位置特定手段により特定された位置に対応する荷主を特定する荷主特定手段、前記第1時刻と前記第2時刻に基づいて、前記位置特定手段により特定された位置における前記車両の運転者の待機時間を算出する算出手段、および、前記荷主特定手段により特定された荷主と前記算出手段により算出された待機時間とを含む待機情報を記録する記録手段、として機能させる。
実施形態の他の観点によれば、コンピュータプログラムは、コンピュータを、車両が停車した位置を特定する位置特定手段、前記車両が停車した第1時刻を取得する第1取得手段、前記車両の停車状態が解除された第2時刻を取得する第2取得手段、前記位置特定手段により特定された位置に対応する荷主を特定する荷主特定手段、および、前記荷主特定手段が荷主を特定できない場合に、前記第1時刻と前記第2時刻に基づいて算出される前記車両の停車時間を前記車両の運転者の休憩時間として記録する記録手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運送業者における業務管理体制の改善が可能となる。本発明の他の効果は、本明細書および添付図面から導き出される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る労働管理システムの構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係る地点情報マスタを構成するレコードのデータ構造の一例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る車両の停車時の処理の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図3における停車処理Aの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、図3における停車処理Bの一例を示すフローチャートである。
図6図6は、図3における停車処理Cの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、通知画面の一例を示す図である。
図8図8は、確認画面の一例を示す図である。
図9図9は、第2実施形態に係る地点情報マスタを構成するレコードのデータ構造の一例を示す図である。
図10図10は、第2実施形態に係る車両の停車時の処理の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、図10における停車処理Dの一例を示すフローチャートである。
図12図12は、選択画面の一例を示す図である。
図13図13は、第3実施形態に係る車両の停車時の処理の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、図13における停車処理Eの一例を示すフローチャートである。
図15図15は、第4実施形態に係る車両の停車時の処理の一例を示すフローチャートである。
図16図16は、図15における停車処理Fの一例を示すフローチャートである。
図17図17は、第5実施形態に係る荷主の選択画面の一例を示す図である。
図18図18は、第6実施形態に係る地点情報マスタを構成するレコードのデータ構造の一例を示す図である。
図19図19は、第8実施形態に係る労働管理システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
以下に説明する各実施形態においては、トラック運転者の労働を管理するための労働管理システムおよびコンピュータプログラムを開示する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る労働管理システムの構成例を示すブロック図である。労働管理システムは、事業所に配置される管理者端末1と、車両に搭載されるデジタルタコグラフ2と、サーバ3とを備えている。デジタルタコグラフ2は、本実施形態における運転者端末として機能する。
【0012】
管理者端末1としては、例えばパーソナルコンピュータを用いることができる。管理者端末1は、タブレットあるいはスマートフォンのように、管理者が携行可能な可搬型の装置であってもよい。
【0013】
管理者端末1は、プロセッサやメモリを含むコントローラ10と、記憶装置11と、ディスプレイ12と、入力装置13と、スピーカ14と、外部接続用のインターフェイス15とを備えている。コントローラ10は、プロセッサがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、本実施形態にて開示する種々の処理を実現可能である。
【0014】
入力装置13は、例えばディスプレイ12に表示されたGUI(Graphical User Interface)を操作するためのキーボード、マウスおよびディスプレイ12に設けられたタッチパネル等を含む。
【0015】
インターフェイス15には、ネットワークNと通信可能な通信装置16が有線または無線で通信接続されている。インターフェイス15には、運転者が事業所にて出勤処理および退勤処理を実施するための出退勤端末17がさらに接続されてもよい。
【0016】
デジタルタコグラフ2は、プロセッサやメモリを含むコントローラ20と、記憶装置21と、内蔵のディスプレイ22およびスピーカ23と、外部接続用のインターフェイス24とを備えている。コントローラ20は、プロセッサがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、本実施形態にて開示する種々の処理を実現可能である。
【0017】
インターフェイス24には、ネットワークNと通信可能な通信装置41と、ディスプレイ42と、入力装置43と、走行センサ44と、GPS(Global Positioning System)受信機45とが有線または無線で通信接続されている。これらインターフェイス24に接続される要素は、車両のコンソールなどに設けられてもよいし、デジタルタコグラフ2の一部であってもよい。なお、デジタルタコグラフ2は、ディスプレイ22およびスピーカ23を備えなくてもよい。
【0018】
入力装置43は、ディスプレイ42に表示されたGUIを操作するためのボタンやタッチパネルを含む。さらに、入力装置43は、例えば出庫、帰庫、荷積、荷卸、休憩、待機、宿泊、給油、乗船など、運転者の作業種別や車両の状態を入力するための各種のボタンを含む。走行センサ44は、車両の速度、加速度、エンジン回転数およびエンジン温度等の走行に関するパラメータを検出する。GPS受信機45は、衛星からのGPS信号を受信し、当該信号に基づいて車両の位置を検出する。
【0019】
サーバ3は、ネットワークNに通信接続されている。サーバ3は、事業所の外部に配置されてもよいし、事業所に配置されてもよい。サーバ3は、クラウドシステムに含まれるサーバであってもよい。この場合には、管理者端末1やデジタルタコグラフ2等の労働管理システムの要素が実行する処理に対し、SaaS(Software as a Service)等の形態のクラウドコンピューティングを利用できる。
【0020】
サーバ3は、管理データベース30と、地点情報マスタ31とを記憶している。管理データベース30は、複数の運転者の労働履歴や今後の勤務予定等に関する情報を含む。地点情報マスタ31は、管理データベース30の一部であってもよい。
【0021】
管理者端末1は、通信装置16およびネットワークNを介した通信により、サーバ3の管理データベース30や地点情報マスタ31から情報を取得したり、管理データベース30に情報を保存したりすることができる。デジタルタコグラフ2も通信装置41およびネットワークNを介した通信により、同様の処理を実行可能である。また、管理者端末1とデジタルタコグラフ2は、通信装置16,41およびネットワークNを介して互いに情報の授受が可能である。
【0022】
デジタルタコグラフ2のコントローラ20は、走行センサ44が検出する速度等のパラメータ、入力装置43からの入力およびGPS受信機45が受信する信号に基づいて、車両の運行開始時刻、運行終了時刻、運行開始時刻から運行終了時刻までの各時刻におけるいわゆる法定3要素(車両の瞬間速度、走行距離、走行時間)、各時刻における作業種別(待機、休憩、休息、荷積、荷卸、給油、乗船等)、車両の位置データ(住所)等を含む運行情報を記憶装置21に保存する。さらに、コントローラ20は、サーバ3に運行情報を送信する。サーバ3は、運行情報を管理データベース30に保存する。管理者端末1のコントローラ10は、管理データベース30にアクセスすることにより運行情報を取得し、ディスプレイ12への表示やその他の処理に利用することができる。デジタルタコグラフ2から管理者端末1に運行情報が直接送信されてもよい。
【0023】
以上のような構成の労働管理システムにおいては、管理者端末1、デジタルタコグラフ2およびサーバ3がネットワークNを介して通信することにより、運転者の労働状態や車両の走行状態等を、事業所および車両の双方でリアルタイムに把握することができる。
【0024】
例えば、管理者端末1は、管理データベース30等の情報に基づいて、事業所に属する各運転者の労働状態や車両の走行状態を示す運転者情報一覧をディスプレイ12に表示させる。これにより、管理者は、各運転者の労働状態や車両の走行状態等を極めて容易に把握でき、遠隔地の運転者にも必要な指示を出すことができる。
【0025】
図2は、地点情報マスタ31を構成するレコードRのデータ構造の一例を示す図である。地点情報マスタ31の各レコードRは、位置データと、地点情報と、地点種別とを含む。
【0026】
レコードRの位置データは、地図上の位置を示す情報である。位置データは、例えば住所を示す文字列であってもよいし、GPS等の測位システムに対応した座標であってもよい。
【0027】
例えば、レコードRの地点情報は、荷主、ガソリンスタンド(GS)、コンビニエンスストア、パーキングエリア(PA)、当該運送業者の事業所、フェリー乗場等の固有の地点名称(会社名、顧客名等)を示す文字列やコード等の識別情報である。地点情報として荷主の名称が記録されている場合、この荷主は必ずしも位置データが示す位置に所在することを意味するものではない。レコードRにおいて荷主に関連付けられる位置データは、運送依頼を受けた荷物の配送先を示すものであってもよい。
【0028】
レコードRの地点種別は、地点情報が示す名称が荷主、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、パーキングエリア、事業所、フェリー乗場等の種別のいずれに属するかを示す識別情報である。
【0029】
本実施形態に係る労働管理システムは、車両が停車したことに応じて、図3のフローチャートに示す処理を実行する。当該フローチャートに示す処理(ステップ)は、管理者端末1のコントローラ10、デジタルタコグラフのコントローラ20およびサーバ3等が協働することにより実現されてもよいし、これらのいずれか単体によって実現されてもよい。
【0030】
なお、図3のフローチャートに示す処理のトリガとなる車両の停車は、例えば車両のエンジンが停止した状態、走行センサ44により検出される車速が一定時間にわたり0km/sである状態、あるいはGPS受信機45が受信する信号により特定される車両の位置が一定時間にわたり変動しない状態である。これらの他にも、当該フローチャートに示す処理を開始するトリガとしては、特定のボタンの操作等の種々の方法を採用し得る。
【0031】
図3のフローチャートの処理開始当初においては、先ず運転者による作業種別(待機、休憩、休息、荷積、荷卸、給油、乗船等)の入力がなされたか否かが判定される(ステップS101)。運転者は、例えば入力装置43により作業種別を入力することができる。
【0032】
作業種別が入力されていない場合(ステップS101のNO)、車両の停車から所定時間T1が経過したか否かが判定される(ステップS102)。例えば、所定時間T1は、1分、5分、10分のように運送業者が適宜に設定し得る。
【0033】
所定時間T1が経過していない場合(ステップS102のNO)、ステップS101の処理に戻る。やがて所定時間T1が経過した場合(ステップS102のYES)、車両の停車時間の扱いに関する停車時設定が、当該停車時間を待機として扱う待機設定と休憩として扱う休憩設定のいずれであるかが判定される(ステップS103)。当該停車時設定は、例えば管理者端末1によって変更可能である。
【0034】
停車時設定が待機設定である場合(ステップS103の待機)、停車処理Aが実行される。また、停車時設定が休憩設定である場合(ステップS103の休憩)、停車処理Bが実行される。
【0035】
一方、ステップS102における所定時間T1が経過する前に作業種別が入力された場合(ステップS101のYES)、当該作業種別に応じた処理が実行される。すなわち、入力された作業種別が待機である場合(ステップS104の待機)、停車処理Aが実行される。また、入力された作業種別が休憩である場合(ステップS104の休憩)、停車処理Bが実行される。また、入力された作業種別が荷積みまたは荷卸しである場合(ステップS104の荷積/荷卸)、停車処理Cが実行される。本実施形態においてはこれら停車処理A,B,Cについて説明するが、その他の作業種別の入力の場合にもその入力に応じた停車処理が実行される。
【0036】
図4図5および図6は、それぞれ停車処理A、停車処理Bおよび停車処理Cの一例を示すフローチャートである。これらのフローチャートに示す処理(ステップ)は、管理者端末1のコントローラ10、デジタルタコグラフのコントローラ20およびサーバ3等が協働することにより実現されてもよいし、これらのいずれか単体によって実現されてもよい。
【0037】
図4に示す停車処理Aにおいては、先ず車両の停車位置が特定される(ステップS201)。例えば、停車位置は、車両の現在位置であって、GPS受信機45が受信する信号に基づいて特定することができる。
【0038】
続いて、ステップS201にて特定された停車位置に対応する荷主が地点情報マスタ31から検索される(ステップS202)。ステップS202においては、ステップS201にて特定された停車位置に相当する位置データを含み、かつ地点種別が荷主であるレコードRが地点情報マスタ31から抽出される。このとき、ステップS201にて特定された停車位置と位置データが示す位置とが完全に一致する場合だけでなく、両者が実質的に同一とみなせる場合にも、当該位置データを含むレコードRが抽出されてもよい。ここで、実質的に同一とは、ステップS201にて特定された停車位置が、レコードRの位置データが示す位置の所定半径内(例えば数十メートル以内)に所在する場合を含み得る。
【0039】
ステップS202の後、停車位置に対応する荷主が特定できたか否かが判定される(ステップS203)。すなわち、ステップS201にて特定された停車位置に対応する荷主が地点情報マスタ31に登録されているか否か、より具体的にはステップS202にてレコードRが抽出されたか否かが判定される。
【0040】
レコードRが抽出された場合(ステップS203のYES)、第1時刻が取得される(ステップS204)。例えば、第1時刻は、図3のフローチャートに示す処理のトリガとなった車両の停車時刻である。この場合においては、車両の停車時にその停車時刻が記憶装置21や管理データベースDB等に記録され、ステップS204においては当該停車時刻が読み出される。他の例として、第1時刻は、車両の停車時刻からステップS102における所定時間T1が経過した時刻であってもよい。さらに他の例として、第1時刻は、入力装置13,43等により入力される時刻であってもよい。また、入力装置43により待機の作業種別が入力されたことに応じて停車処理Aが開始された場合、第1時刻は、当該入力の時刻であってもよい。
【0041】
ステップS204の後、第1時刻が当該運転者の待機開始時刻として管理データベース30等に記録される(ステップS205)。待機開始時刻が記録された後、待機終了時刻が記録されるまでの間は、当該運転者の労働状態が荷積みまたは荷卸しの待機中となる。
【0042】
ステップS205の後、第1時刻から所定時間T2(例えば30分)が経過したか否かが判定される(ステップS206)。所定時間T2が経過していない場合(ステップS206のNO)、待機が終了したか否かが判定される(ステップS207)。待機が終了していない場合(ステップS207のNO)、ステップS206の処理に戻る。
【0043】
待機が終了する前に所定時間T2が経過した場合(ステップS206のYES)、待機に関する警告が実施される(ステップS208)。当該警告は、車両のディスプレイ22,42による運転者に向けた警告表示であってもよいし、スピーカ23による警告メッセージまたは警告音の出力であってもよい。また、当該警告は、管理者端末1のディスプレイ12による管理者に向けた警告表示であってもよいし、スピーカ14による警告メッセージまたは警告音の出力であってもよい。例えば、ディスプレイ12を用いた警告表示は、事業所に所属する複数の運転者の一覧画面において、当該運転者の領域の表示色を変えることにより行われてもよい。当該領域は、待機開始からの経過時間を含んでもよい。このような警告により、待機開始からの経過時間が所定時間T2以上に及んでいる状況を運転者や管理者に認識させることができる。
【0044】
例えば、車両の停車状態が解除された場合には、ステップS207において待機が終了したと判定される(ステップS207のYES)。ここで、停車状態は、例えば車両のエンジンが始動したとき、走行センサ44により検出される車速が0km/sでなくなったとき、あるいはGPS受信機45が受信する信号により特定される車両の位置が変動したときに解除される。他の例として、ステップS207においては、入力装置43の荷積ボタンや荷卸ボタン等のボタンが操作されたことに応じて待機が終了したと判定されてもよい。
【0045】
待機が終了した後、第2時刻が取得される(ステップS209)。第2時刻は、例えば車両の停車状態が解除された時刻、すなわち現在時刻であり、デジタルタコグラフ2のシステムクロック等から得ることができる。他の例として、第2時刻は、入力装置13,43等により入力される時刻であってもよい。
【0046】
ステップS209の後、待機時間が算出される(ステップS210)。待機時間は、例えばステップS204にて取得された第1時刻から、ステップS209にて取得された第2時刻までの経過時間である。この場合において、待機時間は、車両の停車時間に相当する。他の例として、ステップS210にて算出される待機時間は、上記経過時間または停車時間から予め定められた一定時間あるいは任意の時間を控除した時間であってもよい。
【0047】
ステップS210の後、待機情報が管理データベース30等に記録される(ステップS211)。例えば、この待機情報は、運転者の識別情報、ステップS202にて抽出されたレコードRの地点情報が示す荷主の識別情報、ステップS204にて取得された第1時刻、ステップS209にて取得された第2時刻、さらにはステップS210にて算出された待機時間を含む。ステップS211を以って停車処理Aが終了する。
【0048】
ここで、ステップS201にて特定された停車位置に対応する荷主が地点情報マスタ31に登録されていない場合(ステップS203のNO)、荷主が未登録の位置で車両が停車していることが管理者に通知される(ステップS212)。例えば、この通知は、管理者端末1のディスプレイ12への画面表示により行われる。なお、ステップS212において、ディスプレイ42等を用いて運転者に対し同様の通知が行われてもよい。
【0049】
図7は、ステップS212にてディスプレイ12に表示される通知画面50の一例を示す図である。例えば、通知画面50は、荷主が未登録の位置で車両が停車した旨のメッセージと、地点名称を入力すべき旨のメッセージとを含む。さらに、通知画面50は、日時ボックス51と、運転者名ボックス52と、停車位置ボックス53と、地点名称ボックス54と、保存ボタン55と、キャンセルボタン56とを含む。
【0050】
日時ボックス51には、例えば図3のフローチャートに示す処理のトリガとなった車両の停車時刻が表示される。運転者名ボックス52には、当該運転者の氏名が表示される。停車位置ボックス53には、ステップS201にて特定された停車位置を示す住所が表示される。
【0051】
このような通知画面50が表示された状態で、地点名称の修正が受け付けられる(ステップS213)。管理者は、例えば当日の当該運転者の運行スケジュール等に基づいて、入力装置13の操作により地点名称ボックス54に地点名称(荷主)を入力することができる。
【0052】
通知画面50は、候補表示ボタン54aをさらに含んでもよい。候補表示ボタン54aが操作されると、荷主の候補が表示される。このような候補は、地点情報マスタ31に登録された全ての荷主であってもよいし、これらの荷主のうち停車位置ボックス53に表示された住所に近い位置データに関連付けられた荷主であってもよい。このような候補から管理者がいずれかを選択すると、当該選択された荷主が地点名称ボックス54に入力される。
【0053】
保存ボタン55が操作されると、その時点で地点名称ボックス54に入力されている荷主が地点情報マスタ31に登録されているか否かが判定される(ステップS214)。その結果、荷主が登録されていると判定された場合(ステップS214のYES)、ステップS204~S211の処理が実行される。
【0054】
一方で、保存ボタン55の操作時に地点名称ボックス54に入力されている荷主が地点情報マスタ31に登録されていない場合(ステップS214のNO)、あるいは通知画面50のキャンセルボタン56が操作された場合には、停車時間を休憩時間として処理することについての許否を求める確認画面がディスプレイ12に表示される(ステップS215)。
【0055】
通知画面50において、停車位置ボックス53の停車位置(住所)を修正可能であってもよい。さらに、ステップS214において、停車位置ボックス53の修正された停車位置に基づいて地点情報マスタ31が検索され、当該停車位置に対応する位置データを含むレコードRがない場合や、そのようなレコードRが存在してもその地点種別が荷主でない場合に、ステップS215以降の処理が実行されてもよい。
【0056】
図8は、確認画面60の一例を示す図である。例えば、確認画面60は、停車時間を休憩として処理するかを問うメッセージとともに、OKボタン61とキャンセルボタン62とを含む。OKボタン61が操作された場合、すなわち停車時間を休憩時間として処理することが許可された場合には、ステップS216~S222の処理が実行される。一方で、キャンセルボタン62が操作された場合、すなわち停車時間を休憩時間として処理することが否定された場合には、停車処理Aが終了する。他の例として、キャンセルボタン62が操作された場合に、作業種別(待機、荷積、荷卸、給油、乗船等)を選択するための画面(例えば後述の図12の選択画面)が表示され、停車時間が当該画面にて選択された作業種別として管理データベース30に記録されてもよい。
【0057】
確認画面60が表示された後、当該画面が操作されずに一定時間が経過した場合には、OKボタン61またはキャンセルボタン62が操作されたものとして処理されてもよい。この場合において、労働管理システムは、OKボタン61とキャンセルボタン62のいずれが操作されたものとして処理するかについて予め設定する機能を有してもよい。このような設定機能は、例えば管理者端末1に設けることができるが、この例に限られない。
【0058】
なお、ステップS215の処理は、ステップS212の前に実行されてもよいし、ステップS216より後に実行されてもよい。また、確認画面60は、車両のディスプレイ42等に表示されてもよい。この場合においては、運転者によって確認画面60が操作される。
【0059】
ステップS216においては、ステップS204と同じく第1時刻が取得される。その後、第1時刻が当該運転者の休憩開始時刻として管理データベース30等に記録される(ステップS217)。休憩開始時刻が記録された後、休憩終了時刻が記録されるまでの間は、当該運転者の労働状態が休憩中となる。
【0060】
ステップS217の後、休憩が終了したか否かが判定される(ステップS218)。例えば、車両の停車状態が解除された場合には、ステップS218において休憩が終了したと判定され(ステップS218のYES)、ステップS209と同じく第2時刻が取得される(ステップS219)。
【0061】
ステップS219の後、休憩時間が算出される(ステップS220)。休憩時間は、例えばステップS216にて取得された第1時刻から、ステップS219にて取得された第2時刻までの経過時間である。この場合において、休憩時間は、車両の停車時間に相当する。他の例として、ステップS220にて算出される休憩時間は、上記経過時間または停車時間から予め定められた一定時間あるいは任意の時間を控除した時間であってもよい。
【0062】
ステップS220の後、休憩情報が管理データベース30等に記録される(ステップS221)。例えば、この休憩情報は、当該運転者の識別情報、ステップS216にて取得された第1時刻、ステップS219にて取得された第2時刻、さらにはステップS220にて算出された休憩時間を含む。
【0063】
ステップS221の後、例えばディスプレイ12,42への表示により、運転者および管理者に停車時間が休憩時間として処理された旨が通知される(ステップS222)。上述のとおり、停車処理Aは、停車時設定が待機である場合や、作業種別として待機が入力された場合に実行される。ステップS222の通知により、運転者および管理者は、これらの場合にもかかわらず停車時間が休憩時間として扱われたことを認識することができる。ステップS222を以って停車処理Aが終了する。
【0064】
なお、ステップS210における待機時間の算出に第3時刻がさらに考慮されてもよい。例えば、第3時刻は、待機時間としての処理の可否基準となる時刻であり、それよりも前の待機を荷主の責任から除外する性質のものである。一例として、第3時刻は、荷積み地点または荷卸し地点の運営主体等の営業開始時刻、運送業者による荷積みまたは荷卸しの予約時刻、荷主等からの荷積みまたは荷卸しの指定時刻、あるいは荷積み地点または荷卸し地点において待機が受け付けられた受付時刻を用い得る。
【0065】
ステップS210において第3時刻を考慮する場合、例えば以下の算出方法(1)~(3)を適用することができる。
(1)第1時刻が第3時刻よりも遅い場合
この場合には、第1時刻から第2時刻までの経過時間が待機時間として算出される。
【0066】
(2)第1時刻が第3時刻よりも早く、かつ第2時刻が第3時刻よりも遅い場合
この場合には、第3時刻から第2時刻までの経過時間が待機時間として算出される。なお、第1時刻から第3時刻までの経過時間が休憩時間として管理データベース30に記録されてもよい。
【0067】
(3)第1時刻および第2時刻がいずれも第3時刻よりも早い場合
この場合には、待機時間が零として算出される。なお、第1時刻から第2時刻までの経過時間が休憩時間として管理データベース30に記録されてもよい。
【0068】
ステップS210における待機時間の算出には、第3時刻の他にも、荷積み地点または荷卸し地点の昼休み等の時間帯がさらに考慮されてもよい。すなわち、第1時刻から第2時刻までの時間がこのような時間帯と重複する場合、その重複する部分が待機時間から控除されてもよい。さらに、当該重複する部分が運転者の休憩時間として管理データベース30に記録されてもよい。
【0069】
図5のフローチャートに示す停車処理Bにおいて、ステップS201~S221は停車処理Aと同様である。上述のとおり、停車処理Bは、停車時設定が休憩であるか、あるいは運転者により作業種別として休憩が入力された場合に実行される。そのため、図5の例においては、停車時間を休憩として記録する場合の通知(停車処理AのステップS222)が省略されている。
【0070】
一方で、停車処理Bにおいては、ステップS211において待機情報を記録した後に、例えばディスプレイ12,42への表示により運転者および管理者に停車時間が待機時間として処理された旨が通知される(ステップS301)。これにより、運転者および管理者は、停車時間が待機時間として扱われたことを認識することができる。ステップS301と同様の通知がステップS211よりも前に実行されてもよい。当該通知は、停車時間が待機時間として処理される旨のメッセージ等を含み得る。例えば、当該通知は、ステップS203またはステップS214において停車位置に対応する荷主が地点情報マスタ31に登録されていると判定された後(ステップS203,S214のYES)、ステップS204の処理の前に実行されてもよい。また、当該通知は、ステップS204とステップS205の間や、ステップS205とステップS206の間に実行されてもよい。
【0071】
図6のフローチャートに示す停車処理Cにおいて、ステップS201~S204,S207,S209,S212~S222は停車処理Aと同様である。停車処理Cにおいては、ステップS204にて第1時刻が取得された後に、当該第1時刻が運転者の荷積みまたは荷卸しの開始時刻として管理データベース30等に記録される(ステップS401)。荷積みまたは荷卸しの開始時刻が記録された後、その終了時刻が記録されるまでの間は、当該運転者の労働状態が荷積みまたは荷卸し中となる。
【0072】
また、停車処理Cにおいては、ステップS209にて第2時刻が取得された後に、荷積/荷卸情報が管理データベース30等に記録される(ステップS402)。例えば、この荷積/荷卸情報は、当該運転者の識別情報、ステップS202にて抽出されたレコードRの地点情報が示す荷主の識別情報、ステップS204にて取得された第1時刻、ステップS209にて取得された第2時刻を含む。荷積/荷卸情報は、荷積みまたは荷卸しの作業時間(例えば第1時刻から第2時刻までの経過時間)を含んでもよい。
【0073】
以上の本実施形態によれば、運送業者における業務管理体制の改善が可能となる。具体的には、車両が停車した際に、GPS等に基づいて車両の停車位置が取得され、その停車位置に対応する荷主が特定され、当該荷主に関する待機情報が記録される。これにより、運転者や管理者が特段の入力をしない場合であっても、適切な荷主に対する待機情報を得ることができる。
【0074】
また、停車位置に対応する荷主が地点情報マスタ31に登録されていない場合には、停車時間が休憩時間として記録される。これにより、運転者の労働状態を正確に管理することが可能となる。
【0075】
また、停車処理A,Cによれば、停車時に運転者が作業種別として待機、荷積、荷卸を入力した場合(ステップS104の待機または荷積/荷卸)であっても、地点情報マスタ31に荷主が登録されていない場合には停車時間が休憩時間として記録される。さらに、停車処理Bによれば、停車時に運転者が作業種別として休憩を入力した場合(ステップS104の休憩)であっても、地点情報マスタ31に荷主が登録されている場合には停車時間が待機時間として記録される。これらの処理により、運転者の入力を修正して、状況に即した適切な労働情報の記録が可能となる。
【0076】
なお、停車処理A,B,Cにおいては、停車位置に対応する荷主が地点情報マスタ31に登録されていない場合であっても、ステップS212~S214の処理によって荷主を修正可能である。これにより、GPSの位置ずれや地点情報マスタ31の位置データの誤登録等で停車位置と地点情報マスタ31の位置データとが不整合となる状況にも対応できる。
以上の他にも、本実施形態からは種々の好適な効果を得ることができる。
【0077】
本実施形態にて開示した構成は、種々の態様に変形し得る。例えば、本実施形態においては、待機または休憩の停車時設定が予めなされている場合を想定した。仮に停車時設定がなされていない場合には、停車処理Aまたは停車処理Bのいずれかが実行されるようにデフォルトで設定されていてもよい。また、労働管理システムは、停車時設定の機能を有していなくてもよい。この場合においては、ステップS103の処理を経ることなく、停車処理Aまたは停車処理Bが実行されてもよい。より具体的な例として、停車時設定の機能を有していない場合の停車処理においては、先ずステップS201~S203の処理が実行される。ステップS203にて荷主の登録があると判定された場合(ステップS203のYES)、管理者および運転者の少なくとも一方に停車時間を待機時間として処理する旨が通知され、その後はステップS204~S211,S301の処理が実行される。また、ステップS203にて荷主の登録がないと判定された場合(ステップS203のNO)、管理者および運転者の少なくとも一方に停車時間を休憩時間として処理する旨が通知され、その後はステップS216~S222の処理が実行される。なお、停車処理A,Bと同じく、ステップS212~S214の処理が実行されてもよい。
【0078】
例えば、停車時間を待機時間または休憩時間として処理する旨の管理者に対する通知は、管理者端末1のディスプレイ12へのメッセージ表示により行われてもよいし、ディスプレイ12に表示される各運転者の労働状態や車両の走行状態を示す運転者情報一覧画面において当該運転者の労働状態を「待機」や「休憩」に変更することで行われてもよい。また、停車時間を待機時間または休憩時間として処理する旨の運転者に対する通知は、デジタルタコグラフ2のディスプレイ22および車両のディスプレイ42へのメッセージ表示やスピーカ23からの音声出力により行われてもよい。ここで例示した管理者または運転者への通知方法は、本明細書にて開示する他の通知にも適用可能である。
【0079】
停車処理A,B,Cにおいて、ステップS212~S215の処理が省略されてもよい。すなわち、停車処理A,B,Cにおいて、地点情報マスタ31に停車位置に対応する荷主の登録がない場合(ステップS203のNO)、通知画面50の表示等を行うことなく停車時間が休憩時間として記録されてもよい。なお、地点情報マスタ31には停車位置に対応する位置データを含むレコードRが存在しない場合や、地点情報として荷主が登録されているがその位置データが登録されていないレコードRが存在することもあり得る。ステップS203においては、このような場合にも登録なしと判定される(ステップS203のNO)。そして、ステップS212~S215を省略する場合には、ステップS203にて登録なしと判定された場合に通知画面50の表示等を行うことなく停車時間が休憩時間として記録されることとなる。
【0080】
図3乃至図6のフローチャートに示す処理は、必ずしも全てがリアルタイムで実行される必要はない。例えば、ステップS210,S211における待機時間の算出と記録や、ステップS220,S221における休憩時間の算出と記録は、管理データベース30等に保存された第1時刻、第2時刻および第3時刻等の情報に基づいて、運転者の労働情報の集計時等の適宜のタイミングで実行し得る。
【0081】
上述のとおり、図3乃至図6のフローチャートに示す処理(ステップ)の実行主体は特に限定されないが、一例として、ステップS101~S104,S201~S211,S215~S221,S401~S402の処理がデジタルタコグラフ2のコントローラ20により実行され、ステップS212~S214,S222,S301の処理が管理者端末1のコントローラ10により実行されてもよい。
【0082】
また、管理者端末1、デジタルタコグラフ2およびサーバ3等のコンピュータに各ステップに係る処理を実現させるためのコンピュータプログラムは、単一のメモリに記憶される必要はなく、複数のコンピュータがそれぞれ備えるメモリに分散して記憶されたモジュールにより構成されてもよい。この場合においては、各モジュールが複数のコンピュータのそれぞれのプロセッサにより実行され得る。
【0083】
例えば、本実施形態において、ステップS201等の処理は、車両が停車した位置を特定する位置特定手段を構成する。ステップS202,S203,S214等の処理は、荷主を特定する荷主特定手段を構成する。ステップS210,S220等の処理は、待機時間や休憩時間を算出する算出手段を構成する。ステップS211,S221,S402等の処理は、待機情報、休憩情報、荷積/荷卸情報等を記録する記録手段を構成する。本実施形態の一態様において、この記録手段は、上記荷主特定手段により荷主が特定できた場合には、上記算出手段により算出された待機時間(例えば第1時刻から第2時刻までの経過時間)を記録し、上記荷主特定手段により荷主が特定できた場合には、第1時刻から第2時刻までの経過時間の少なくとも一部を休憩時間として記録する。ステップS212等の処理は、荷主を特定できない場合に管理者や運転者への通知を行う通知手段を構成する。ステップS204,S209,S216,S219等の処理は、第1時刻および第2時刻を取得する取得手段を構成する。なお、本明細書における取得との用語は、情報を何らかの記憶手段から読み出すこと、受信すること、算出して得ること等、情報を得るための種々の動作を含み得る。ステップS215等の処理は、停車時間(第1時刻から第2時刻までの経過時間)を休憩時間として処理することについての許否を求める確認手段を構成する。これらの他にも、本実施形態や後述の各実施形態からは、労働管理システムを構成する種々の手段を特定することができる。
【0084】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。特に言及しない構成には第1実施形態と同様のものを適用できる。
【0085】
図9は、第2実施形態に係る地点情報マスタ31を構成するレコードRのデータ構造の一例を示す図である。本実施形態において、各レコードRは、位置データ、地点情報および地点種別に加え、運転者が実施すべき作業種別をさらに含む。作業種別としては、例えば待機、休憩、荷積、荷卸、給油、乗船のような作業を設定することが可能である。
【0086】
本実施形態に係る労働管理システムは、車両が停車したことに応じて、図10のフローチャートに示す処理を実行する。図10のフローチャートは、図3のフローチャートと同じくステップS101,S102,S104の処理を含むが、ステップS103の処理を含んでいない。入力装置43の操作等により作業種別が入力されず(ステップS101のNO)、かつ所定時間T1が経過した場合(ステップS102のYES)、停車処理Dが実行される。
【0087】
図11は、停車処理Dの一例を示すフローチャートである。当該フローチャートに示す処理(ステップ)は、管理者端末1のコントローラ10、デジタルタコグラフのコントローラ20およびサーバ3等が協働することにより実現されてもよいし、これらのいずれか単体によって実現されてもよい。
【0088】
停車処理Dにおいては、先ずステップS201と同じく車両の停車位置が特定される(ステップS501)。続いて、ステップS501にて特定された停車位置に対応するレコードRが地点情報マスタ31から検索される(ステップS502)。さらに、停車位置が地点情報マスタ31に登録されているか否か、すなわち停車位置に対応する位置データを含むレコードRが抽出された否かが判定される(ステップS503)。
【0089】
レコードRが抽出された場合(ステップS503のYES)、ステップS204と同じく第1時刻(停車時刻)が取得される(ステップS504)。さらに、第1時刻が当該レコードRの作業種別に対応する作業の開始時刻として管理データベース30等に記録される(ステップS505)。
【0090】
その後、作業が終了したか否かが判定される(ステップS506)。例えば、車両の停車状態が解除された場合には、ステップS506において作業が終了したと判定される(ステップS506のYES)。他の例として、入力装置43のボタンが操作されたことに応じて作業が終了したと判定されてもよい。
【0091】
作業が終了した後、ステップS209と同じく第2時刻が取得される(ステップS507)。さらに、作業に要した作業時間が算出される(ステップS508)。作業時間は、例えば第1時刻から第2時刻までの経過時間である。この場合において、作業時間は、車両の停車時間に相当する。他の例として、作業時間は、上記経過時間または停車時間から予め定められた一定時間あるいは任意の時間を控除した時間であってもよい。
【0092】
作業時間の算出の後、作業情報が管理データベース30等に記録される(ステップS509)。例えば、この作業情報は、運転者の識別情報、ステップS502にて抽出されたレコードRに含まれる地点情報と作業種別、ステップS504にて取得された第1時刻、ステップS507にて取得された第2時刻、さらにはステップS508にて算出された作業時間を含む。
【0093】
一方、ステップS502においてレコードRが抽出されない場合(ステップS503のNO)、運転者による作業種別の選択が受け付けられる(ステップS510)。この選択の受付は、例えばディスプレイ42に作業種別の選択画面を表示することにより行われる。なお、作業種別の選択は、管理者により行われてもよい。この場合には、例えばディスプレイ12に作業種別の選択画面が表示される。
【0094】
図12は、作業種別の選択画面70の一例を示す図である。例えば、選択画面70は、作業種別の選択を促すメッセージとともに、作業種別を示す複数の作業種別ボタン71と、キャンセルボタン72とを含む。例えば、キャンセルボタン72が操作された場合には、停車処理Dが終了する。
【0095】
図12においては、複数の作業種別ボタン71として、作業種別として待機を選択するための待機ボタン71a、作業種別として休憩を選択するための休憩ボタン71b、作業種別として荷積みを選択するための荷積ボタン71c、作業種別として荷卸しを選択するための荷卸ボタン71d、作業種別として給油を選択するための給油ボタン71e、作業種別としてフェリーへの乗船を選択するための乗船ボタン71f、パーキングエリアでの休憩を選択するためのPAボタン71gを例示している。運転者や管理者は、これらのボタンの操作により作業種別を選択できる。
【0096】
いずれかの作業種別ボタン71が操作されると、ステップS504と同じく第1時刻が取得される(ステップS511)。その後、操作された作業種別ボタン71に対応する当該運転者の作業の開始時刻として第1時刻が管理データベース30等に記録される(ステップS512)。
【0097】
ステップS512の後、ステップS506と同じく作業が終了したか否かが判定され(ステップS513)、ステップS508と同じく作業に要した作業時間が算出される(ステップS515)。作業時間の算出の後、作業情報が管理データベース30等に記録される(ステップS516)。例えば、この作業情報は、運転者の識別情報、ステップS510にて選択された作業種別、ステップS511にて取得された第1時刻、ステップS514にて取得された第2時刻、さらにはステップS515にて算出された作業時間を含む。
【0098】
ステップS509またはステップS516の後、例えばディスプレイ12,42への表示により、運転者および管理者に対する通知が実施される(ステップS517)。ステップS509の後にステップS517が実施される場合、当該通知は、停車時間が地点情報マスタ31に基づいて特定された作業種別として処理された旨のメッセージ等を含む画面によりなされる。また、ステップS516の後にステップS517が実施される場合、当該通知は、停車時間がステップS510にて選択された作業種別として処理された旨のメッセージ等を含む画面によりなされる。ステップS517を以って停車処理Dが終了する。
【0099】
ステップS517と同様の通知がステップS509よりも前に実行されてもよい。当該通知は、停車時間が地点情報マスタ31に基づいて特定された作業種別として処理される旨のメッセージ等を含み得る。例えば、当該通知は、ステップS503とステップS504の間、ステップS504とステップS505の間、あるいはステップS505とステップS506の間に実行されてもよい。
【0100】
ステップS502において停車位置に対応するレコードRの作業種別がフェリーへの乗船である場合や、ステップS510にて乗船ボタン71fの操作により作業種別としてフェリーへの乗船が選択された場合、停車時間の長さに応じて当該停車時間が休憩、分割休息期間および休息期間のいずれかとして記録されてもよい。具体的には、第1時刻から第2時刻までの経過時間が第1基準時間(例えば4時間)未満である場合には休憩時間として記録され、当該経過時間が第1基準時間以上かつ第2基準時間(例えば9時間)未満である場合には分割休息期間として記録され、当該経過時間が第2基準時間以上である場合には休息期間として記録されてもよい。ステップS502において停車位置に対応するレコードRの地点種別がパーキングエリアである場合や、ステップS510にてPAボタン71gの操作により作業種別としてパーキングエリアでの休憩が選択された場合にも、フェリー乗船時と同様に、第1基準時間と第2基準時間に基づいて停車時間が休憩時間、分割休息期間または休息期間として記録されてもよい。
【0101】
なお、地点情報マスタ31に停車位置に対応する作業種別が登録されていない場合の作業種別の選択や修正は、管理者や運転者により事後的に実施されてもよい。この場合においては、例えばステップS516にて作業種別が未定の作業情報が記録され、その後に管理者や運転者が当該作業情報における作業種別を選択または修正するための選択画面70のような画面を呼び出し、当該画面を通じて作業種別を選択または修正してもよい。
【0102】
以上の本実施形態においては、車両の停車時に運転者が作業種別を入力しない場合であっても、停車位置に応じて設定された作業種別の作業として停車時間が記録される。これにより、運転者が作業種別を入力し忘れたとしてもその労働状態を記録することができる。
【0103】
また、停車位置が地点情報マスタ31に登録されていない場合には、ステップS510において作業種別の選択が受け付けられる。これにより、労働状態のより正確な記録が可能となる。
【0104】
第1実施形態と同じく、管理者端末1、デジタルタコグラフ2およびサーバ3等のコンピュータに各ステップに係る処理を実現させるためのコンピュータプログラムは、単一のメモリに記憶される必要はなく、複数のコンピュータがそれぞれ備えるメモリに分散して記憶されたモジュールにより構成されてもよい。この場合においては、各モジュールが複数のコンピュータのそれぞれのプロセッサにより実行され得る。
【0105】
ステップS510~S517の処理は、第1実施形態の停車処理A,B,CにおけるステップS212~S222の代わり、あるいはステップS215~S222の代わりに実行されてもよい。
【0106】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。特に言及しない構成には第1および第2実施形態と同様のものを適用できる。
【0107】
本実施形態に係る労働管理システムは、車両が停車したことに応じて、図13のフローチャートに示す処理を実行する。図13のフローチャートは、図3のフローチャートと同じくステップS101,S102の処理を含むが、ステップS103,S104の処理を含んでいない。入力装置43の操作等により作業種別が入力されず(ステップS101のNO)、かつ所定時間T1が経過した場合(ステップS102のYES)、第2実施形態と同様の停車処理Dが実行される。一方、入力装置43の操作等により作業種別が入力された場合(ステップS101のYES)、停車処理Eが実行される。
【0108】
図14は、停車処理Eの一例を示すフローチャートである。当該フローチャートに示す処理(ステップ)は、管理者端末1のコントローラ10、デジタルタコグラフのコントローラ20およびサーバ3等が協働することにより実現されてもよいし、これらのいずれか単体によって実現されてもよい。
【0109】
図14に示す停車処理Eは、図11に示す停車処理Dと同様のステップS501~S509,S511~S517の処理を含むが、ステップS510の処理を含んでいない。すなわち、停車処理Eは運転者により作業種別が入力された際に実行されるので、地点情報マスタ31に停車位置に対応する作業種別が登録されていない場合(ステップS503のNO)には、選択画面70等で作業種別の選択を受け付けることなくステップS511~S516の処理が実行される。
本実施形態の構成であっても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0110】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。特に言及しない構成には第1乃至第3実施形態と同様のものを適用できる。
【0111】
本実施形態においては、車両の停車時間を地点情報マスタ31に登録された作業種別として記録するか、入力装置43の操作等により入力された作業種別として記録するかの優先順位が設定されている場合を想定する。以下、地点情報マスタ31に登録された作業種別を優先する設定を「登録優先」と呼び、入力装置43の操作等により入力された作業種別を優先する設定を「入力優先」と呼ぶ。このような優先設定は、例えば管理者端末1によって切り替えることができる。優先設定は、事業所に所属する運転者の全てについて一括で設定されてもよいし、運転者ごとに設定されてもよい。
【0112】
本実施形態に係る労働管理システムは、車両が停車したことに応じて、図15のフローチャートに示す処理を実行する。図15のフローチャートは、図3のフローチャートと同じくステップS101,S102の処理を含むが、ステップS103,S104の処理を含んでいない。入力装置43の操作等により作業種別が入力されず(ステップS101のNO)、かつ所定時間T1が経過した場合(ステップS102のYES)、第2実施形態と同様の停車処理Dが実行される。
【0113】
また、図15のフローチャートにおいては、入力装置43の操作等により作業種別が入力された場合(ステップS101のYES)、運転者の優先設定が判定される(ステップS105)。優先設定が登録優先である場合(ステップS105の登録優先)、第3実施形態と同様の停車処理Eが実行される。一方、優先設定が入力優先である場合(ステップS105の入力優先)、停車処理Fが実行される。
【0114】
図16は、停車処理Fの一例を示すフローチャートである。当該フローチャートに示す処理(ステップ)は、管理者端末1のコントローラ10、デジタルタコグラフのコントローラ20およびサーバ3等が協働することにより実現されてもよいし、これらのいずれか単体によって実現されてもよい。
【0115】
停車処理Fにおいては、先ずステップS501と同じく車両の停車位置が特定される(ステップS601)。続いて、ステップS504と同じく第1時刻(停車時刻)が取得される(ステップS602)。さらに、第1時刻が運転者によって入力された作業種別に対応する作業の開始時刻として管理データベース30等に記録される(ステップS603)。
【0116】
その後、ステップS506と同じく作業が終了したか否かが判定される(ステップS604)。作業が終了したと判定された場合(ステップS604のYES)、ステップS507と同じく第2時刻が取得される(ステップS605)。さらに、ステップS508と同じく作業に要した作業時間が算出される(ステップS606)。
【0117】
作業時間の算出の後、作業情報が管理データベース30等に記録される(ステップS607)。例えば、この作業情報は、運転者の識別情報、入力装置43等により入力された作業種別、ステップS602にて取得された第1時刻、ステップS605にて取得された第2時刻、さらにはステップS606にて算出された作業時間を含む。ステップS607を以って停車処理Fが終了する。
【0118】
このように、本実施形態においては、優先設定が登録優先である場合には、運転者により作業種別が入力されたことに応じて図14のフローチャートに示す停車処理Eが実行される。停車処理Eにおいては、停車位置に対応する作業種別が地点情報マスタ31に登録されていれば停車時間がその作業種別に係る作業として記録され、登録されていなければ停車時間が運転者により入力された作業種別に係る作業として記録される。すなわち、運転者による入力よりも地点情報マスタ31の登録が優先される。
【0119】
一方、優先設定が入力優先である場合には、地点情報マスタ31の登録によらず、停車時間が運転者により入力された作業種別に係る作業として記録される。すなわち、地点情報マスタ31の登録よりも運転者による入力が優先される。
【0120】
このような優先設定を取り入れることで、運転者の労働管理の正確性を大幅に向上させることが可能である。例えば、運転者による作業種別の入力誤りが多い場合等には、優先設定を登録優先にすることで、地点情報マスタ31に基づき停車位置に応じた作業情報を記録することができる。一方で、運転者による作業種別の入力誤りが少ない場合や、地点情報マスタ31に登録された作業種別とは異なる作業を実施するケースが多い場合等には、優先設定を入力優先にすればよい。
【0121】
[第5実施形態]
第5実施形態について説明する。特に言及しない構成には第1乃至第4実施形態と同様のものを適用できる。
【0122】
第1実施形態の停車処理A,Bにおいては、停車位置に相当する荷主のレコードRが地点情報マスタ31に登録されている場合に、その荷主についての待機時間を記録する処理を例示した。このような処理において、仮に位置データが同じであるが荷主が異なる複数のレコードRが地点情報マスタ31に登録されている場合には、これら荷主のいずれかを管理者または運転者が選択可能であってもよい。
【0123】
このような選択は、例えば停車処理A,BにおけるステップS203の処理の後の適宜のタイミングで受け付けることが可能である。一例として、当該選択は、ディスプレイ12,42等に荷主の選択画面を表示することにより行われてもよい。
【0124】
図17は、荷主の選択画面80の一例を示す図である。この選択画面80は、日時ボックス81と、運転者名ボックス82と、停車位置ボックス83と、候補ボックス84と、OKボタン85と、キャンセルボタン86とを含む。
【0125】
日時ボックス81には、例えば図3のフローチャートに示す処理のトリガとなった車両の停車時刻が表示される。運転者名ボックス82には、当該運転者の氏名が表示される。停車位置ボックス83には、ステップS201にて特定された停車位置を示す住所が表示される。停車位置ボックス83には、地点情報マスタ31から特定された複数のレコードRの地点情報が示す地点名のいずれかが表示されてもよい。
【0126】
候補ボックス84には、地点情報マスタ31から特定された複数のレコードRの地点情報がそれぞれ示す荷主がリスト表示される。図17の例においては、候補1,2の2つが表示されている。荷主の表示順は特に限定されないが、一例では選択頻度が高い荷主が上位候補となるように表示されてもよい。
【0127】
このような候補ボックス84からいずれかの候補が選択された状態でOKボタン85が操作されると、当該選択された候補の荷主が待機情報の記録の対象として決定される。すなわち、ステップS211において記録される待機情報には、選択画面80にて選択された荷主の識別情報が含まれる。キャンセルボタン86が操作されると、例えばステップS215~S222の処理が実行され、停車時間が休憩時間として記録される。
【0128】
このような荷主の選択に係る処理は、停車処理Cに対して適用することもできる。この場合においては、停車時間が選択画面80により選択された荷主に対する荷積みまたは荷卸しの作業時間として記録される。
【0129】
また、荷主の選択と同様の処理を停車処理D,Eに対して適用することもできる。すなわち、ステップS502において停車位置に対応する位置データを含む複数のレコードRが地点情報マスタ31から抽出された場合には、選択画面80と同様の画面がディスプレイ12,42等に表示されてもよい。この場合においては、各レコードRの地点情報や作業種別が作業の候補として候補ボックス84にリスト表示される。さらに、選択された地点情報および作業種別を含む作業情報がステップS509において記録される。
【0130】
[第6実施形態]
第6実施形態について説明する。特に言及しない構成には第1乃至第5実施形態と同様のものを適用できる。
【0131】
図18は、第6実施形態に係る地点情報マスタ31を構成するレコードRのデータ構造の一例を示す図である。本実施形態において、各レコードRは、位置データ、地点情報および地点種別に加え、時間情報をさらに含む。時間情報は、例えば地点種別が荷主である場合に設定されるものであり、荷積みまたは荷卸しの予定作業時間に相当する。
【0132】
このような地点情報マスタ31を用いて停車処理A,Bを実行する場合、ステップS210にて待機時間を算出する際に、レコードRの時間情報が示す時間が停車時間から控除される。これにより、停車時に実施される荷積みや荷卸しの時間を考慮した正確な待機時間を算出することが可能となる。他の例として、待機時間の算出は第1実施形態と同様に行い、ステップS211にて記録される待機情報にレコードRの時間情報が示す時間を付加してもよい。この場合であっても、待機情報に基づく集計等を実施する際に、当該待機情報に含まれる待機時間から、当該待機情報に含まれる時間情報が示す時間を控除することで、荷積みや荷卸しの時間を考慮した待機時間を算出することが可能となる。
【0133】
荷積みや荷卸しの作業時間が待機時間に含まれないようにするための方法は、上述のものに限られない。例えば、荷積み地点または荷卸し地点での車両の動きとしては、先ず待機場所で停車し、その後に荷積みや荷卸しの作業場所に移動して再び停車し、作業が完了したら荷積み地点または荷卸し地点を去る流れが想定される。そこで、荷積み地点または荷卸し地点での最初の停車について停車処理A,Bが開始され、その後にGPSを用いた速度の検出等によりステップS207にて停車状態が解除されたと判定され、ステップS211にて待機情報が記録されて停車処理A,Bが終了した後、一定時間以内に車両が再度停車した場合には、その停車時間が荷積みまたは荷卸しの作業時間として記録されてもよい。上記一定時間は、例えば数分であり、管理者等が任意に設定可能である。上記一定時間の起算時は、例えばステップS207にて停車状態が解除されたと判定された時点であるが、この例に限られない。
【0134】
さらに他の例として、上記一定時間以内に車両が再度停車した場合に、その停車時間が地点情報マスタ31の当該停車位置に対応する位置データを含むレコードRの時間情報が示す時間と実質的に同じであるならば、当該停車時間を荷積みまたは荷卸しの作業時間として記録してもよい。また、上記一定時間以内に車両が再度停車しない場合や、停車してもその停車時間がレコードRの時間情報が示す時間と実質的に同じでない場合には、直前の停車処理A,Bにおいて記録された待機時間からレコードRの時間情報が示す時間を控除することで待機時間を修正してもよい。なお、停車時間がレコードRの時間情報が示す時間と「実質的に同じ」とは、両者が一致する場合だけでなく、例えば両者の差が数分程度の所定時間以内に収まる場合も含む。この所定時間は、例えば管理者端末1によって任意に設定可能である。
【0135】
以上の本実施形態の処理は、停車処理A,Bだけでなく、停車処理D,E,Fにも適用することが可能である。また、荷主以外の地点情報を含むレコードRにも時間情報を設定し、待機以外の作業種別の記録にあたって停車時間から当該時間情報が示す時間を控除してもよい。
【0136】
[第7実施形態]
第7実施形態について説明する。特に言及しない構成には第1乃至第6実施形態と同様のものを適用できる。
【0137】
第1乃至第6実施形態にて開示した待機時間、休憩時間、その他の作業時間の算出や記録等に関する処理は、運転者の労働情報の集計時等の適宜のタイミングにて事後的に実行されてもよい。
【0138】
事後的にこれらの処理を実行する場合には、例えば管理データベース30に蓄積される車両の運行情報(時間ごとの速度データ、時間ごとの位置データ、運転者が入力した作業種別とその入力時刻等)を用いることができる。運行情報は、例えば上述のとおりデジタルタコグラフ2からサーバ3に送信される。ただし、運行情報の記録方法はこの例に限られない。
【0139】
例えば、運行情報に基づいて事後的に図3乃至図6図10図11および図13乃至図16のフローチャートに示す処理を実行する場合、ステップS201,S501,S601における停車位置の特定、ステップS204,S216,S504,S511,S602における第1時刻の取得、ステップS209,S219,S507,S514,S605における第2時刻の取得は、運行情報に基づいて行われる。停車位置は、例えば運行情報における速度データに基づいて判定される停車時刻において、運行情報の位置データが示す位置に相当する。第1時刻は、例えば上記停車時刻に相当する。第2時刻は、例えば運行情報における速度データに基づいて判定される停車解除の時刻に相当する。
【0140】
なお、事後的に上記各フローチャートに示す処理を実行する場合、ステップS205~S207,S217~S218,S401,S505,S506,S512,S513,S603,S604等の処理は省略されてもよい。
【0141】
また、事後的に上記各フローチャートに示す処理を実行する場合にもステップS212~S214の処理を実行したり、図17のような荷主の選択画面80を表示したりすることで、GPSの位置ずれが生じた場合や、停車位置に対して複数の荷主が登録されている場合にも、待機等の対象となる適切な荷主を選定することができる。ただし、ステップS212~S214の処理や選択画面80の表示の処理が省略されてもよい。
【0142】
[第8実施形態]
第8実施形態について説明する。特に言及しない構成には第1乃至第7実施形態と同様のものを適用できる。
【0143】
図19は、第8実施形態に係る労働管理システムの構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る労働管理システムは、図1に示した要素に加え、デジタルタコグラフ2とは別の運転者端末9を備えている。運転者端末9は、例えばスマートフォンやタブレットのような可搬型の装置である。
【0144】
運転者端末9は、プロセッサやメモリを含むコントローラ90と、記憶装置91と、通信装置92と、ディスプレイ93と、入力装置94と、スピーカ95と、GPS受信機96とを備えている。コントローラ90は、プロセッサがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、運転者端末9としての種々の処理を実現する。
【0145】
通信装置92は、ネットワークNと無線通信可能である。入力装置94は、ディスプレイ93に表示されたGUIを操作するためのタッチパネルやボタンを含む。GPS受信機96は、衛星からのGPS信号を受信し、当該信号に基づいて運転者端末9の位置を検出する。
【0146】
運転者端末9は、図3乃至図6図10図11および図13乃至図16のフローチャートに示した処理(ステップ)の少なくとも一部を実行可能である。一例として、ステップS101~S105,S201~S211,S215~S221,S401~S402,S501~S517,S601~S607の処理が運転者端末9のコントローラ90により実行されてもよい。この場合において、図8に示した確認画面60、図12に示した選択画面70および図17に示した選択画面80は、ディスプレイ93に表示されてもよい。上述の各実施形態において言及した各種の通知および警告も、ディスプレイ93への表示やスピーカ95の音声出力により実施されてもよい。
【0147】
また、ステップS201,S501,S601における停車位置の特定は、GPS受信機96が受信する信号に基づいて実施されてもよい。さらに、図3図10図13および図15のフローチャートに示す処理のトリガとなる車両の停車や、ステップS206,S218,S506,S513,S604等の処理における停車状態の解除の検出は、GPS受信機96が受信する信号に基づいて実施されてもよい。
【0148】
図1および図19に示した他にも、労働管理システムは、種々の要素にて構成することができる。例えば、サーバ3の機能を管理者端末1に統合してもよい。この場合、管理データベース30や地点情報マスタ31は、記憶装置11や管理者端末1に接続された他の記憶装置に記憶することができる。
【0149】
各実施形態においては、トラック運転者の労働を管理するための労働管理システムを開示した。しかしながら、これら労働管理システムにおける処理は、鉄道、バス、タクシーなど他種の車両の運転者の労働管理に適用することもできる。また、運転者以外の労働者の労働管理に適用することもできる。
【0150】
各実施形態にて開示した各処理を実現するためのコンピュータプログラムは、記憶媒体に記憶されてユーザに譲渡されてもよいし、ネットワークを介してユーザがダウンロードすることにより譲渡されてもよい。また、このようなコンピュータプログラムを実行するコンピュータは、各実施形態において開示した管理者端末1、デジタルタコグラフ2、サーバ3および運転者端末9のみならず、他の装置であってもよい。
【0151】
以上説明した各実施形態は、発明の範囲をこれら実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明はその他の様々な形態で実施することが可能である。各実施形態にて開示した構成やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0152】
1…管理者端末、2…デジタルタコグラフ、3…サーバ、9…運転者端末、10,20,90…コントローラ、30…管理データベース、31…地点情報マスタ、50…通知画面、60…確認画面、70,80…選択画面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19