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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】油化装置及びこれを用いた油化方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/12 20060101AFI20241007BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20241007BHJP
   F27B 3/10 20060101ALI20241007BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
C08J11/12 ZAB
C10G1/10
F27B3/10
F27D17/00 104G
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2024530582
(86)(22)【出願日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2023029905
(87)【国際公開番号】W WO2024038916
(87)【国際公開日】2024-02-22
【審査請求日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2022130997
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522052336
【氏名又は名称】株式会社北浜化学
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 靖之
(72)【発明者】
【氏名】村上 慎一
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203124(JP,A)
【文献】特開平10-273677(JP,A)
【文献】特開平4-50293(JP,A)
【文献】特開2001-316517(JP,A)
【文献】特開平9-316459(JP,A)
【文献】特開平8-165478(JP,A)
【文献】特開2012-11299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/12
C10G 1/10
F27B 3/10
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された合成樹脂を含有する処理物を熱分解する熱分解炉と、この熱分解炉で生成した熱分解ガスを凝縮する凝縮器とを備え、
前記熱分解炉は、前記処理物を保持する熱分解釜と、前記熱分解釜を外面より加熱する加熱炉と、前記対象物を前記熱分解釜内で攪拌させる攪拌装置と、前記熱分解釜で生成した熱分解ガスを前記凝縮器へ排出する排出部を少なくとも備えた油化装置であって、
前記熱分解釜は、下方に向けて中央が凸となる線分の回転体で形成される底面を有する底部と、前記底面に内面の環状面が連続する略円筒状の中間部と、この中間部の上部を覆う蓋部とを有し、
前記加熱炉は、前記熱分解釜の前記底部及び少なくとも前記中間部の下部を加熱するものであり、
前記攪拌装置は、前記熱分解釜の中心で回転する軸部と、前記軸部に取り付けられる羽根部とを有し、前記軸部の回転で前記羽根部を前記底面及び前記環状面に摺接させるものであり、
前記加熱炉は燃焼装置を有し、前記凝縮器を通過するオフガスを前記燃焼装置に燃焼燃料として誘導するオフガス配管を有し、
前記燃焼装置の燃焼用空気を供給する空気供給機を備え、この空気供給機の空気配管は前記燃焼装置にベンチュリーを通じて接続され、さらに前記オフガス配管が前記ベンチュリーに接続されて吸引により前記オフガスを前記燃焼装置に供給する油化装置。
【請求項19】
請求項1記載の油化装置を用い合成樹脂を含有する処理物を熱分解する油化方法であって、前記排出部への排出口は前記蓋部に設けられ、前記熱分解釜の加熱攪拌により前記処理物が液状化し形成される沸騰液面より上に前記排出口が位置するように、前記処理物の投入量を制限する油化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油化装置及びこれを用いた油化方法に関する。さらに詳しくは、投入された合成樹脂を含有する処理物を熱分解する熱分解炉と、この熱分解炉で生成した熱分解ガスを凝縮する凝縮器とを備え、前記熱分解炉は、前記処理物を保持する熱分解釜と、前記熱分解釜を外面より加熱する加熱炉と、前記対象物を前記熱分解釜内で攪拌させる攪拌装置と、前記熱分解釜で生成した熱分解ガスを前記凝縮器へ排出する排出部を少なくとも備えた油化装置及びこれを用いた油化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1~3に記載の如き熱分解油化装置が知られている。特許文献1,2の装置では、プラスチックを熱分解する分解容器と、分解容器を加熱する加熱室と、分解容器内でプラスチックを攪拌しながら下流へ搬送する搬送部と、熱分解ガスを排出する出口を有し、プラスチックのケミカルリサイクルを行っている。特許文献3の装置では、熱分解釜の底周部に凹部を形成し、この部分からの熱分解残渣の排出を行っている。
【0003】
ところで、昨今、プラスチックの代替素材として、例えば、LIMEX(登録商標)等の炭酸カルシウムなどの無機物が50%以上含有する素材が利用されるようになった。しかし、炭酸カルシウム等が50%以上含有するため、攪拌が十分でないと、釜(分解容器)に石灰成分が固着して、熱分解の効率が低下すると共に残渣の処理も煩雑となる場合があった。廃プラスチックの処理においても、炭化したプラスチックが固着等して同様の問題を生じる場合があった。なお、特許文献4に記載の如き連続式の熱分解炉も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-306974号公報
【文献】特開2006-321851号公報
【文献】特開2021-178939号公報
【文献】特開平9-279161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、熱分解の効率を低下させずにケミカルリサイクルを行うことが可能な油化装置及びこれを用いた油化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る油化装置の特徴は、投入された合成樹脂を含有する処理物を熱分解する熱分解炉と、この熱分解炉で生成した熱分解ガスを凝縮する凝縮器とを備え、前記熱分解炉は、前記処理物を保持する熱分解釜と、前記熱分解釜を外面より加熱する加熱炉と、前記対象物を前記熱分解釜内で攪拌させる攪拌装置と、前記熱分解釜で生成した熱分解ガスを前記凝縮器へ排出する排出部を少なくとも備えた構成において、前記熱分解釜は、下方に向けて中央が凸となる線分の回転体で形成される底面を有する底部と、前記底面に内面の環状面が連続する略円筒状の中間部と、この中間部の上部を覆う蓋部とを有し、前記加熱炉は、前記熱分解釜の前記底部及び少なくとも前記中間部の下部を加熱するものであり、前記攪拌装置は、前記熱分解釜の中心で回転する軸部と、前記軸部に取り付けられる羽根部とを有し、前記軸部の回転で前記羽根部を前記底面及び前記環状面に摺接させるものであり、前記加熱炉は燃焼装置を有し、前記凝縮器を通過するオフガスを前記燃焼装置に燃焼燃料として誘導するオフガス配管を有し、前記燃焼装置の燃焼用空気を供給する空気供給機を備え、この空気供給機の空気配管は前記燃焼装置にベンチュリーを通じて接続され、さらに前記オフガス配管が前記ベンチュリーに接続されて吸引により前記オフガスを前記燃焼装置に供給することにある。
【0007】
上記構成によれば、熱分解釜は、下方に向けて中央が凸となる線分の回転体で形成される底面を有する底部と、前記底面に内面の環状面が連続する略円筒状の中間部と、この中間部の上部を覆う蓋部とを有するものである。したがって、熱分解釜で加熱処理された処理物は液化し、底部の中央の凸部から順次充填されることとなる。そして、加熱炉は、前記熱分解釜の前記底部及び少なくとも前記中間部の下部を加熱するものであるから、液化した処理物の部分を重点的に加熱でき、熱分解釜内に効率よく熱伝導を行い、分解を促進させる。
上述の通り、処理物の炭化残渣や炭酸カルシウム等の固形分は、加熱部分に接すると熱分解釜内壁(内面)に固着しやすい。しかし、上述の通り、液化処理物が底部の中央の凸部から順次充填され、しかも、前記軸部の回転で前記羽根部を前記底面及び前記環状面に摺接させることにより、この固着を液化成分とともに欠き落とし、処理物の一部が熱分解釜の底部にこびり付く(固着する)ことなく、又は、僅かにこびり付いたとしても羽根部が固着物を小さい内にはぎ取る。このように、熱分解釜の内面に固着物が生成されることを抑制し、熱分解効率の低下を抑制する。
また、前記加熱炉は燃焼装置を有し、前記凝縮器を通過するオフガスを前記燃焼装置に燃焼燃料として誘導するオフガス配管を有するので、加熱炉の排熱ガスを有効活用できて、油化装置全体の運転効率をさらに向上させることができる。同構成において、前記燃焼装置の燃焼用空気を供給する空気供給機を備え、この空気供給機の空気配管は前記燃焼装置にベンチュリーを通じて接続され、さらに前記オフガス配管が前記ベンチュリーに接続されて吸引により前記オフガスを前記燃焼装置に供給する。凝縮器を利用してオフガスを蓄積でき、オフガスの供給量は空気供給装置の空気供給量で調整できるため、装置全体を無駄なく活用している。
【0008】
上記構成において、前記オフガス配管は、前記凝縮器側から前記燃焼装置側に向かうにしたがって上昇する勾配を有し、前記燃焼装置近傍側にオフガスの流速を低下させるトラップ室を設けるとよい。この勾配及びトラップ室により液化成分を除去しているため、燃焼装置での火炎は極めて安定し、熱分解を最適に維持することができる。
【0009】
一方、前記攪拌装置の駆動部は前記熱分解釜の蓋部に設けてあり、前記蓋部は前記中間部に対し開閉可能であり、前記軸部は、前記羽根部を取り付ける下軸部と、この下軸部に差し込み嵌合可能で前記駆動部に繋がる上軸部とに分割形成され、前記中間部に前記下軸部を回転可能に保持する軸保持部を有している。前記熱分解釜は、下方に向けて中央が凸となる線分の回転体で形成される底面を有する底部と、前記底面に内面の環状面が連続する略円筒状の中間部とを備えている上に、軸保持部は下軸部を回転可能に保持するため、羽根は偏心することなく安定的に回転し、処理物の釜内部への固着を防止できる。しかも、前記蓋部は前記中間部に対し開閉可能であり、蓋部を開放して、熱分解釜のメンテナンス等も容易である。
また、前記排出部への排出口は前記蓋部に設けられ、処理物が加熱により沸騰する沸騰液面より上に前記排出口を配置するとよい。排出口には沸騰した処理物が混入せずに、熱分解ガスのみが凝集器に送られるため、油化の純度を高く維持することができる。
【0010】
上記構成において、前記排出部の中間に水トラップを介在させ、この水トラップは、前記熱分解ガスを導入する導入管と、水トラップを通過した熱分解ガスを前記凝縮器に導出する導出管と、水と前記熱分解ガスとを接触させる水接触部とを有してもよい。この水トラップの第一の態様として、前記導入管は前記接触部に前記熱分解ガスを供給し、前記水接触部に水の噴流を供給する噴流供給部を備え、前記導出管は前記水接触部を通過した熱分解ガスを外部に導出させてもよい。水の噴流に熱分解ガスを接触させるので、ノズル等のつまりがなく、安定動作が可能である。さらに詳しくは、前記水接触部は、水を受け止める底部と、この底部に向かって前記噴流供給部から前記水を噴流で供給するための解放部と、前記解放部以外の側面を前記熱分解ガスが通過しないように覆う側壁部とを備えたガス供給具を有し、前記導出管に向かい、前記噴流で供給された水は前記底部の少なくとも前記解放部側から流下させてもよい。前記水トラップの第二の態様は、水の貯留部を有し、前記導入管は、前記貯留部に貯留された水中に位置する噴出口まで前記熱分解ガスを供給し前記噴出口より噴出させて前記水接触部を構成し、前記貯留部の水面上に位置する前記導出管より前記水接触部を通過した前記熱分解ガスを外部に導出させてもよい。また、これら第一、第二の態様に加え、前記導入管を外部から前記加熱炉の排熱ガスで加熱してもよい。特にPETの熱分解ガスは300度未満で気体から個体になるため、個体の析出を抑えることができる。さらに、前記導入管と前記導出管との間には、前記水トラップをバイパスするよう切替可能なバイパス経路を有し、このバイパス経路は、水平又は前記熱分解釜側ほど降下する勾配を有してもよい。PETやPVCを処理しない場合は水トラップは不要であり、バイパスする際に、蒸留塔側へ下がる勾配があると、蒸留塔へ水分や異物が混入しやすく、それらの混入を防ぐことができる。
【0011】
また、上記いずれかの構成の油化装置において、前記羽根部のうち前記環状面に摺接させる立ち上がり部は、前記環状面の形成軸について螺旋方向に形成されていてもよい。例えば、図17(a)(b)の如く環状面の形成軸である中心軸CAについて、羽根部26の立ち上がり部26bのみが螺旋状の場合では、羽根部26が平面図時計回りに回転すると、熱分解釜21の環状面21eに近い部分では処理物が上から下に向かって強制的に送り出される。これにより、底部側ほど処理物が圧送されて密度が高まり、熱分解の伝熱効率が向上する。
【0012】
上記構成において、前記凝縮器の下部に位置するタンクを外部から前記加熱炉の排熱ガスで加熱するとよい。加熱炉の排熱ガスを有効活用できて、油化装置全体の運転効率を向上させることができる。
【0013】
なお、処理物は、例えば、LIMEX(登録商標)等の炭酸カルシウムなどの無機物を50%以上含有する複合材料を含むものである。このような素材のものであっても、十分に攪拌ができるので、熱分解炉の内面に処理物が固着することを抑制でき、熱分解を効率よく行うことができる。その他、処理物は、廃プラスチック又は廃タイヤを含むものであってもよい。
【0014】
上記各態様において、前記凝縮器は、前記熱分解炉で生成した熱分解ガスを凝縮する第1凝縮器と、前記第1凝縮器で生成したガスを凝縮する第2凝縮器とを備え、前記第2凝縮器の凝縮部の長さは、前記第1凝縮器の凝縮部の長さよりも長くするとよい。同構成により、ガス成分をより効率よく凝集させて液化させ、液化成分をより多く回収することが可能となる。
【0015】
一方、上記油化装置を用い合成樹脂を含有する処理物を熱分解する油化方法の特徴は、前記熱分解釜に窒素ガスを充填した状態で加熱することにより熱分解を行うことにある。加熱された合成樹脂は酸素と結合して二酸化炭素を生じやすい状況にあるが、窒素ガスを熱分解釜に充填させることで、二酸化炭素の発生を防ぐことができる。
また、上記油化装置を用い合成樹脂を含有する処理物を熱分解する油化方法の他の特徴は、前記熱分解釜に固形分よりなる前記処理物と共に油を投入した状態で加熱することにある。固形分よりなる処理物は熱分解釜内壁との伝熱状態がすぐれずに、熱分解が促進されない状況になりやすい。処理物と共に油を投入した状態で加熱すれば、油により伝熱が促進され、熱分解が効率よく進行することとなる。
【0016】
また、上記油化装置を用い合成樹脂を含有する処理物を熱分解する油化方法の特徴は、前記熱分解釜の内面に前記処理物が固着する固着生成上限ラインよりも上の摺接ライン以下の部分に前記羽根部を摺接させて前記処理物の攪拌を行うことにある。熱分解釜の加熱部には処理物が固着しやすく、これを放置すると、熱伝達が阻害されて熱分解の効率化が低下し、熱分解釜の損傷も進行する。同方法によれば、処理物の固着が羽根部の摺接により防止され、熱分解が促進されることとなる。
さらに、上記油化装置を用い合成樹脂を含有する処理物を熱分解する油化方法の特徴は、前記排出部への排出口は前記蓋部に設けられ、前記熱分解釜の加熱攪拌により前記処理物が液状化し形成される沸騰液面より上に前記排出口が位置するように、前記処理物の投入量を制限することにある。同方法によれば、排出口には沸騰した処理物が混入せずに、熱分解ガスのみが凝縮器に送られるため、油化の純度を高く維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明に係る油化装置及びこれを用いた油化方法の特徴によれば、熱分解の効率を低下させずにケミカルリサイクルを行うことが可能となった。
【0018】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る油化装置を模式的に示す概略図である。
図2】油化装置におけるガスの流れを説明する模式図である。
図3】熱分解釜及び羽根部を示す図である。
図4】羽根部の正面図である。
図5】羽根部の側面図である。
図6】羽根部の平面図である。
図7】羽根部の底面図である。
図8】熱分解釜の縦断面図を示し、(a)は線分が曲線の場合、(b)は線分が直線の場合である。
図9】熱分解釜の縦断面と平面図との関係を示し、(a)は中央が下に凸の熱分解釜の縦断面図、(b)は(a)の場合の平面図、(c)は比較例であって周部が下に凸の熱分解釜の縦断面図、(d)は(c)の場合の平面図である。
図10】3方弁の表記と切替の関係を示し、(a)は線図での3方弁の表記、(b)はA-Bを連通させた場合、(c)はA-Cを連通させた場合である。
図11】(a)は燃焼装置近傍の構成図、(b)は第2凝縮器のオフガス経路の構成を示す線図である。
図12】水トラップの第一の態様を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
図13】水トラップの第二の態様を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のB-B線断面図である。
図14】水トラップをバイパスするためのオフガスの切り替え路を示す線図である。
図15】水トラップを設けた場合の熱分解ガスのプレヒートのバイパスするための排熱ガスの切り替え路を示す線図である。
図16】排出部の連結部の改変例を示す図である。
図17】熱分解釜及び羽根部の縦断面と平面図との関係を示し、(a)は立ち上がり部のみが螺旋状の熱分解釜の縦断面図、(b)は(a)の場合の平面図、(c)は立ち上がり部及び下縁部の双方が螺旋状の熱分解釜の縦断面図、(d)は(c)の場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
(油化装置1全体構成)
本発明に係る油化装置1は、図1,2に示すように、大略、投入された合成樹脂を含有する処理物Mを熱分解する熱分解炉2と、熱分解炉2で生成した熱分解ガスG1を凝縮する第1凝縮器3と、第1凝縮器3で生成したガスG2を凝縮する第2凝縮器4とを備える。熱分解炉2の加熱炉22は、第2凝縮器4で生成したオフガスG3を高温脱臭する燃焼装置(脱臭装置)5を有する。これらは、ガス配管6a~6c及び排気配管7a~7cで接続されている。
【0021】
ここで、図1,2に表記されている3方弁は、図10(a)に示すように、流体の出入口が3方向(図中の符号A,B,C)に設けられたバルブである。このバルブでは、入口Aから出口Bへの経路(同図(b))が図示省略するハンドル等により入口Aから出口Cへの経路C(同図(c))に切り替えられる。
【0022】
(処理物M)
ここで、本発明における油化装置1及び熱分解炉2に投入(熱分解)される処理物Mは、例えば、LIMEX(登録商標)等の炭酸カルシウムなどの無機物が50%以上含有する新素材、又はそれを含有する廃棄物等である。この素材は、既存のリサイクルスキームでは、リサイクルしにくい難リサイクル材である。また、炭酸カルシウム等が50%以上含有するため、本発明の如き釜の間接加熱方式の場合、攪拌が十分でないと、釜内面に石灰成分が固着し内釜を形成してしまい、熱分解の効率が低下すると共に残渣の処理も煩雑となる。本実施形態の熱分解炉2であれば、熱処理中に処理物M(釜への投入物)が十分に攪拌され高熱の釜内面に直接的に接触して熱伝導されるので、このような素材であっても高効率なケミカルリサイクルが可能となる。
【0023】
なお、処理物Mは、上記素材に限られるものではなく、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PVC(ポリ塩化ビニル)等のプラスチック材料やこれらプラスチック材料を含むプラスチック廃棄物(廃プラスチック)の他、タイヤ廃棄物でも高効率なケミカルリサイクルが可能である。
【0024】
(熱分解炉2全体構成)
熱分解炉2は、投入された処理物Mを保持する熱分解釜21と、熱分解釜21を外面より加熱する加熱炉22と、対象物Mを熱分解釜21内で攪拌させる攪拌装置23と、熱分解釜21で生成した熱分解ガスG1を第1凝縮器3へ排出する排出部24とを少なくとも備える。
【0025】
(熱分解釜21、排出部24)
熱分解釜21は、図1,3に示すように、上部が開口した円筒状の中間部21aと、中間部21aの下端21bから連続し下方に向けて中央が凸の底曲面21cを有する底部21dと、この中間部21aの上部を覆う蓋部25とを有する。後述する熱分解釜21の形状及び攪拌装置23により、残渣の発生を抑制する。また、底部21dには、残渣等を排出する排出口を設けられていない。底部21dに排出口を設けると、熱分解釜21の内部(内面)で炉の温度が伝わらない部分が発生して熱伝導が低下し、熱分解の効率も低下してしまう。このように、底部21dと形状と相まって、処理物Mに対する底部21dからの熱伝導の効率を向上させている。しかも、中間部21aの上部から残渣等を取出(排出)可能としている。これにより、熱伝導(熱分解)の効率の低下を回避すると共に作業性の向上をも図っている。本実施形態において、中間部21aの上部の開口が、熱分解後の処理物(残渣等)を取り出す取出口21fとなる。
【0026】
また、蓋部25は、図1に示すように、昇降機構29を介して中間部21aの開口21fに対し開閉可能であり、蓋部25を開放して熱分解釜21のメンテナンス等も容易である。この蓋部25には、処理物Mを投入する投入口25aと、釜内部で生成した熱分解ガスG1を第1凝縮器3(外部)に向けて排出(供給)する排出部24と連通する排出口24xが設けられている。本実施形態において、この排出部24と第1凝縮器3の第1凝縮部31に接続する第1ガス配管6aとの間には、着脱可能な連結部24aが設けられている。そして、蓋部25には、後述する攪拌装置23と、釜内部の温度を計測する熱電対25bと、釜内部に窒素等の不活性ガスを導入する導入口25zとが設けられている。なお、蓋部25を開いて、その開口21fから処理物Mを投入することも可能である。
【0027】
(加熱炉22)
加熱炉22は、図1,2に示すように、熱分解釜21を取り囲むように設けられてあり、その上部に熱分解釜21が交換可能に設置されている。これにより、熱分解釜21を加熱炉22から取り外して残渣の処理ができ、残渣等の回収が容易で作業性もよい。また、加熱炉22は後述する燃焼装置5を有し、熱分解釜21の底部21d及び少なくとも中間部21aの下部21bを加熱する。加熱炉22の上部側面には、炉内の排熱ガスを後述する保温部材33及び外装部材34へ排出(供給)する排熱供給部としての排気口22aが設けられている。この排気口22aには、第1排気配管7aが接続されてあり、バルブを介して排気塔22bと連通させてある。
【0028】
(攪拌装置23)
攪拌装置23は、図1,3に示すように、その駆動部23bが熱分解釜21の蓋部25に設けられてあり、大略、熱分解釜21の中心で回転する軸部27と、軸部27の下部に取り付けられる羽根部26と、軸保持部28とを有する。なお、本実施形態において、軸部27は、羽根部26を取り付ける下軸部27aと、攪拌装置23の駆動部23bから延在し且つ下軸部27aに差し込み嵌合可能で駆動部23bに繋がる上軸部27bとに分割形成されている。さらに、軸保持部28は、中間部21aに下軸部27aを回転可能に保持する。これにより、羽根部26は偏心することなく安定的に回転し、処理物Mの釜内部への固着を防止できる。
【0029】
(羽根部26)
羽根部26は、図3~7に示すように、熱分解釜21の底部21dの底曲面21cに沿って湾曲させた下縁部26aと、この下縁部26aの両側から熱分解釜21の中間部21aの環状面21eに沿って立ち上がる一対の立ち上がり部26bとを有する。そして、この羽根部26の下縁部26a及び立ち上がり部26bの下端は、底部21dの底曲面21c及び中間部21aの下端21bの環状面21eに近接して対向させてある。これらの間は、互いが接触しないように僅かな隙間しか設けられておらず(実質的に隙間は無い)、熱分解釜21の下部で回転させることで、羽根部26を底曲面21c及び環状面21eに摺接させる。これにより、熱分解時に熱分解釜21の底部21d(底曲面21c)及び環状面21eに処理物Mがこびり付かないようにはぎ取る又は小さいうちに除去することができるので、熱分解の効率の低下を抑制できる。
【0030】
また、本実施形態において、この羽根部26は、後述する下軸部27aを含む軸部27の径よりも薄い板状部材26cである。そして、板状部材26cは、軸部27の軸方向に平行で且つ底部21dの底曲面21c及び環状面21eに直交する平面26dを有する。これにより、僅かに付着物(処理物M)が付着したとしても、その付着物を羽根部26によって熱分解釜21の底部21d及び環状面21eからよりはぎ取りやすくし、処理物Mの固着をさらに抑制する。
【0031】
さらに、本実施形態において、この羽根部26は、その上縁部26eが、軸部23aに直交する直線状部26e1と、立ち上がり部26bの上端26b1と直線状部26e1とを接続する傾斜部26e2とを有する。図3に示すように、熱分解炉21には、炉内部の中心側(下軸部27a)近傍に熱電対25bが配置されている。この羽根部26の形状であれば、熱電対25bとの接触を回避して正確な温度測定が可能となる。しかも、側面21e近傍の処理物Mを炉の中心側(下軸部27a)へ誘導(攪拌)できるので、熱分解の効率を低下させることもない。
【0032】
なお、本実施形態において、羽根部26は、板状部材26cの平面26dに対し直交して立設する突出部26fを有する。この突出部26fは、下軸部27aを含む軸部27に直交しており、処理物Mを掻き分けて攪拌させる。また、羽根部26は、上軸部27bに連結可能な下軸部27aと、この下軸部27aを熱分解釜21の中間部21aに回転可能に保持する軸保持部28とを有する。この軸保持部28は、例えば、釜の中心から四方に延在するフレームより構成され、フレームの端部は熱分解釜21の環状面21eに固定される。本実施形態では、下軸部27aの先端に上軸部27bと連結する連結部27cを形成すると共に下部に羽根部26を設けている。このように、羽根部26を攪拌装置23に対し着脱可能とすると共に熱分解釜21の内部に保持可能に構成することで、熱分解炉21を交換可能に使用することができる。そして、例えば、取り外した後の熱分解炉21を他のモーター等に接続することで残渣の処理やメンテナンスが容易となる。
【0033】
ここで、図3を参照しながら、上述の油化装置1(熱分解炉2)を用いた処理物Mを熱分解する油化方法(処理)について、さらに詳しく説明する。
まず、釜内部に処理物Mを処理物充填ラインF1まで充填(投入)する。処理物Mは、加熱が進むと液化して沸騰(膨張)し、その液面は処理物膨張ラインとなる沸騰液面F2まで到達する。排出部24の排出口24xは、この沸騰液面F2よりも上方の蓋部25に設けてある。よって、処理物Mが液化した際に沸騰液面F2まで到達しないように、処理物Mの投入量を処理物充填ラインF1以下に調整する。また、この処理物充填ラインF1を上述の軸保持部28より下方とすることで、処理物Mの攪拌への影響も抑制できる。
【0034】
さらに、処理物Mの充填(投入)時に、処理物Mと共に油を投入する。処理物Mは固形分であるため、油を投入することで、熱分解釜21の内面(内壁)との伝熱状態が向上し、熱分解を効率よく進めることができる。なお、投入する油は、例えば、第1、第2ガス配管6c1,6c2やオフガス配管6cの流通過程で回収された廃油を用いる。また、第1、第2凝縮器3,4で回収した重油相当分や、軽油や灯油であっても構わない。但し、含水率が高いものは水抜きが必要となるので、好ましくない。
【0035】
そして、蓋部25を閉じた後、熱分解釜21の導入口25zより窒素を投入し、熱分解釜21内部及び排出部24を無酸素状態とする。熱分解時に内部に酸素が存在すると、加熱された処理物Mの炭素と結合して二酸化炭素が発生するため、無酸素状態として二酸化炭素の発生を抑制する。
【0036】
加熱炉22による加熱が開始されると、熱分解釜21の外面が加熱され、釜内面側から処理物Mが溶解し始め、底部21d及び中間部21aの釜内面側に液体が生成され、その内側に粘性のある液体(半固体)が生成されると共に一部で熱分解ガスG1が発生する。そして、半固体が増加した段階で、軸部27の回転を開始し羽根部26による攪拌を開始する。
【0037】
さらに、加熱が進むと、液化した処理物Mの液面は、処理物膨張ラインとなる沸騰液面F2まで到達する。排出部24の排出口24xは、この沸騰液面F2よりも上方の蓋部25に設けられているので、液化した処理物Mが排出口24xへ溢れ出し第1凝縮器3側に流入することは無く、熱分解ガスG1のみを第1凝縮器3側に供給(排出)でき、油化の純度を高く維持できる。
【0038】
また、加熱炉22の加熱(火炎)は、加熱炉22の内部全体に及ぶが、加熱炉22の開口近傍の中間部21aは外気に近いため、当該部分の釜内壁は加熱されにくい。一方、ラインL1より下方の底部21dに接する下端21b付近では攪拌が不十分となると炉内壁に処理物Mの固着(焦げ付き)が生成されやすく、このラインL1が固着生成上限ラインとなる。図3に示す如く、底部21dの底曲面21c及び中間部21aの環状面21eに摺接する羽根部26の摺接ラインL2が固着生成上限ラインL1よりも上方に位置することで、処理物Mが釜内面に固着することはなく、僅かにこびり付いたとしても羽根部26が固着物を小さい内にはぎ取られ、熱分解が効率良く行われる。
【0039】
さらに、図8,9を参照しながら、熱分解釜22の底部21dの形状について詳述する。
本実施形態では、図8(a)に示すように、線分21xは湾曲(下方側に凸の円弧状)してあり、この線分21xの回転体で形成される底曲面21cを有する底部21dは、下方(鉛直下向き)に向けて中央が凸となる半球状又はそれに類似するドーム状を呈し、底面21cは曲面となる。なお、線分は曲線に限らず、同図(b)に示す如き直線の線分21yであってもよい。この場合、直線線分21yの回転体で形成される底面21cを有する底部21dは、下方(鉛直下向き)に向けて中央が凸となる円錐形を呈する。
【0040】
このように、熱分解釜21の底部21dが、下方に向けて中央が凸となる線分21x,21yの回転体で形成される底面21cを有する場合、図9(a)(b)に示すように、液化した処理物101は、底部21dの中央の凸部から順次充填されることとなる。そして、この底部21dの中央の凸部が最も加熱されやすい箇所である。よって、液化した処理物101のガス化が促進されると共に底部21dでの処理物Mの焦げ付きも防止される。一方、同図(c)(d)に示す比較例では、下方に向けて周部が凸で且つ中央が凹部となる底部を有する。この熱分解炉21’の場合、液化した処理物101は周部に充填される。しかし、底部中央の下方に向けた凹部(上方への凸部)が最も加熱されやすい箇所であるため、この中央部分で処理物Mの焦げ付きが生じやすい。
【0041】
(第1凝縮器3)
第1凝縮器3は、図1,2に示すように、大略、熱分解ガスG1を凝縮する第1凝縮部31と、第1凝縮部31で凝縮した液化(油化)した炭化水素油を貯蔵する第1貯蔵タンク32を備える。第1凝縮部31の上部に接続された第1ガス配管6aには、その周囲を覆う保温部材33が設けられている。また、第1貯蔵タンク32は、その周囲を外装部材34で覆われている。なお、第1凝縮部31には、冷却水タンク37より冷却水C1が供給(循環)されている。第1貯蔵タンク32の底部には、液化(油化)した炭化水素油を取り出す(排出する)取出口32aが設けられている。
【0042】
ここで、保温部材33の下部には、加熱炉22の排出口22aに接続される第1排気配管7aが図示省略する切替バルブを介して接続されている。一方、保温部材33の上部には、保温部材33の内部を流通した排熱ガスH2を外装部材34に供給する第2排気配管7bが接続されている。そして、外装部材34には、その下部に第2排気配管7bが接続されてあり、上部には外装部材34の内部を流通した排熱ガスH3を外部へ排出する第3排気配管7cが接続されている。第3排気配管7cは、排気塔22bに接続されている。このように、加熱炉22からの排熱H1を保温部材33及び外装部材34の内部へ供給(排熱ガスH2,H3)するので、第1貯蔵タンク32及び第1ガス配管6aは外部から加熱炉21の排熱ガスにより加熱される。よって、排熱ガスを有効活用でき、油化装置全体の運転効率を向上させると共に省エネに寄与している。
【0043】
また、外装部材34には、第1貯蔵タンク32の内部を加熱するヒーター35が取り付けられている。例えば、このヒーター35により150℃帯で第1貯蔵タンク32を加熱し、引火点が20℃以下の軽質油を第2凝縮器4で回収可能とするように分離する。第1凝縮器3で生成したガスG2は、第1貯蔵タンク32上部の第2ガス配管6bを介して第2凝縮器4へ供給される。
【0044】
(第2凝縮器4)
第2凝縮器4は、図1,2に示すように、大略、ガスG2を凝縮する第2凝縮部41と、第2凝縮部41で凝縮した液化(油化)した軽質炭化水素油を貯蔵する第2貯蔵タンク42を備える。なお、第2凝縮部41には、冷却水タンク47より冷却水C2が供給(循環)されている。第2貯蔵タンク42の底部には、液化(油化)した軽質炭化水素油を取り出す(排出する)取出口42aが設けられている。なお、第1凝縮器3の冷却水タンク37と第2凝縮器4の冷却水タンク47とは別系統であって、各々が独立して制御されている。また、冷却水タンク47の冷却水C2は、図示省略するラジエター等で冷却され再利用されている。下流側の冷却水を冷却することで、オフガスG3に余分な油分等が含まれないようにする。
【0045】
ここで、第2凝縮部41の長さL2は、第1凝縮部31の長さL1よりも長く、例えば2倍以上である。これにより、第2凝縮器4における油化率を向上させると共に油のミスト状物のオフガスG3への流出(循環)を防止する。後述するように、本発明では、オフガスG3を加熱炉22にて再利用するため、第2凝縮部41の長さL2を長くすることで、オフガスG3中の不純物を減らす。
【0046】
(燃焼装置5)
本実施形態において、第2凝縮器4で凝縮されずに通過(生成)したオフガスG3は、第2貯蔵タンク42上部から第3ガス配管(オフガス配管)6cを介して燃焼装置(脱臭装置)5へ燃焼燃料として誘導(供給)される。これにより、加熱炉21の排熱ガスをさらに有効活用でき、油化装置全体の運転効率を向上させる
燃焼装置5は、図1,2に示すように、外部より供給される酸素と共にオフガスG3を燃焼するバーナー部51を有する。上述したように、加熱炉22には第1排気配管7aが接続されてあり、加熱炉22の排熱ガスが、第2排気配管7b及び第3排気配管7cを経由して保温部材33及び外装部材34へ供給される。このように、オフガスG3を大気へ放出せずに、高温処理(燃焼)させて脱臭し再利用することで、エネルギー効率もよい。
【0047】
ここで、図11を参照しながら、燃焼装置5及びオフガス配管6cについて、さらに詳しく説明する。
燃焼装置5は、図11(a)に示すように、燃焼装置5の燃焼用空気を供給する空気供給機52を備え、この空気供給機52の空気配管52aは燃焼装置5にベンチュリー53を通じて接続されている。さらに、上述のオフガス配管6cの燃焼用管6c5が、ベンチュリー53に接続されている。空気供給機52からベンチュリー53に向けて燃焼用空気が供給されると、ベンチュリー53内部が負圧となり燃焼用管6c5からオフガスG3が吸引される。このように、オフガスG3の供給量を空気供給機52の空気供給量で調整できるため、オフガスG3を有効活用できる。そして、燃焼用空気とオフガスG3とが混合したガスがバーナー部51へ供給され、プラグ54により点火される。
【0048】
また、オフガス配管6cは、図11(a),(b)に示すように、大略、第2貯蔵タンク42上部に設けられた導出管6c1と、導出管6c1に集まった油分を外部へ排出する排出管6c2と、導出管6c1と連通し燃焼装置5近傍側に設けられ且つオフガスG3の流速を低下させるトラップ室6xに接続された勾配管6c3とを有する。
【0049】
勾配管6c3は第2貯蔵タンク42(凝縮器)側から燃焼装置5側に向かうにしたがって上昇する勾配を有し、オフガス配管6cの内、排出管6c2を設けた部分が最も低い位置となっている。オフガスG3は、オフガス配管6cを流通する過程で冷却され含有する油分が液化する。上述の勾配を設けることで、配管内で生じた油分を下バルブ6yを設けた排出管6c2に誘導し回収することができる。余分な油分を回収して燃料としての不純物を除去するとと共に配管等の汚れや詰まりも防止することができる。
【0050】
トラップ室6xは、勾配管6c3からの流入方向に対し直交又は交差する方向に沿って拡がる内部空間を有し、勾配管6c3の流入方向に沿って分岐管6c4が設けられている。勾配管6c3から内部空間に放出されたオフガスG3は、内部空間の壁部に衝突し、衝突の際に含有する油分が壁部に付着する。これにより、オフガスG3から、さらに油分を除去することができ、燃焼装置5の火炎を安定に維持でき、熱分解も安定する。
【0051】
そして、この分岐管6c4には、ベンチュリー53に接続される燃焼用管6c5へのガス供給を調整する第一バルブ6d1と、発電ユニット40に接続される発電用管6c6へのガス供給を調整する第二バルブ6d2とが設けられている。上述したように、ベンチュリー53によってオフガスG3が吸引されるので、第一バルブ6d1でガス供給を調整することで、加熱炉22の燃焼を制御できる。また、発電ユニット40は、例えば水素化装置41及び燃料電池等の発電装置42を備え、第二バルブ6d2でガス供給を調整することで、発電量を制御できる。
【0052】
(他実施形態)
次に、本発明の他の実施形態の可能性について言及する。なお、上述の実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
上記実施形態において、熱分解釜21で生成した熱分解ガスG1は、炉外部へ排出する排出部24を介して第1凝縮部31の上部に接続された第1ガス配管6aに供給された。しかし、図15に示すように、排出部24の中間(熱分解釜21と第1凝縮器3の間)に図12,13に例示する水トラップ60を介在させても構わない。
【0053】
この水トラップ60は、大略、熱分解ガスG1を導入する導入管62と、後述する水トラップ60を通過した熱分解ガスG1を第1凝縮器31(凝縮器)へ導出する導出管63と、水Wと熱分解ガスG1とを接触させる水接触部64とを有する。水トラップ60は水Wを貯留する貯留部61aを有する本体61を備え、この本体61の上部に導入管62及び導出管63が取り付けられている。
【0054】
導入管62は、水接触部64に熱分解ガスG1を供給するものであり、導出管63は水接触部64を通過した熱分解ガスG1を水トラップ60の本体61の外部(第1凝縮部31)に導出するものである。図12に例示する第一の態様の水トラップ60において、水トラップ60は、水接触部64に水の噴流WSを供給する噴流供給部66としてのシャワーを備える。このシャワー66には、貯留部61aに貯留された水Wがポンプ67により汲み上げられて供給されている。
【0055】
図12に例示する水トラップ60において、水接触部64は、水Wを受け止める底部65aと、この底部65aに向かってシャワー66から水を噴流WSで供給するための解放部としての上開口65gと、上開口65gの周囲を熱分解ガスG1が通過しないように囲む側壁部としての側部65b及び後部65cとを備えたガス供給具65を有する。
【0056】
ガス供給具65の上部の導入口65dは導入管62と連通してあり、側部65bは、底部65aを挟んで対向して一対設けられてある。また、導入口65dから一対の側部65b,65bの間で底部65aに向かって後部65cが設けられている。よって、導入口65dより供給される熱分解ガスG1は、これら側壁部65b,65cにより拡散されることなく上開口65gへ向かう。また、後部65cの下端は底部65aと接触しておらず、後スリット65eが形成されている。そして、上開口65gに供給された熱分解ガスG1は、シャワー66から供給された噴流WSと接触する。上開口65g(水接触部64)で噴流WSに熱分解ガスG1を接触させるので、導入管62の目詰まり等がなく、安定して作動させることができる。
【0057】
ここで、処理物MにPET(ポリエチレンテレフタラート)が含まれる場合、約300℃で熱分解するとガス化して熱分解ガスG1に含有される。しかし、PET(ポリエチレンテレフタラート)は250℃程度で気体から固体となる(再結晶化)ため、排出部24やガス配管6aで結晶化して配管内面に固着して、第1凝縮器3の上流側で配管が詰まる場合がある。また、処理物MにPVC(ポリ塩化ビニル)を含む場合、PVC(ポリ塩化ビニル)のCl(塩素)成分が熱分解ガスG1に含有される。配管等の設備の腐食に影響するため、Cl(塩素)成分を除去する必要がある。
【0058】
そこで、水トラップ60の水接触部64で水Wと熱分解ガスG1とを接触させることで、熱分解ガスG1が50℃以上冷却されるので、PET成分が結晶化され水Wと共に回収可能となる。PETは比重が大きいので、貯留部61aの下部に沈殿する。よって、第1凝縮器3の上流側(水トラップ60の下流側)の配管において、PET成分の結晶化による目詰まり等を抑制でき、重油等の回収効率も向上する。しかも、PVC(ポリ塩化ビニル)のCl(塩素分)は、水に溶けやすいので、水トラップ60によって水Wに溶解させて回収することもできる。
【0059】
このように、排出部24の中間に水トラップ60を設けることで、第1凝縮器3の上流側でこれら成分を除去できるので、PET(ポリエチレンテレフタラート)やPVC(ポリ塩化ビニル)を含む処理物Mのケミカルリサイクルに好適に利用できる。なお、ペットボトルとラベル、キャップを分別して熱処理することがケミカルリサイクル効率や抽出される油分の純度の点で好ましいが、水トラップ60を設けることにより、これらを分離せずに熱処理できる可能性がある。
【0060】
そして、上開口65gで噴流WSと接触した水の一部W1は、底部65aの上開口65g側の前縁65fから貯留部61aに流下する。図12の例では、後スリット65eが形成されているので、この後スリット65eから接触した水の残りW2が貯留部61aに流下する。上述したように、貯留部61aに貯留された水Wは、ポンプ67により汲み上げられて再びシャワー66から噴流WSとして供給され、繰り返し利用される。なお、シャワー66への供給過程(配管)にpHや塩素濃度等を測定器を設けて、その測定をモニターして水Wの回収、交換を手動又は自動で行うとよい。
【0061】
また、図13に示す第二の態様の水トラップ60では、上述のガス供給具65を省略し、導入管62が、貯留部61aに貯留された水W中に位置する噴出口68まで熱分解ガスG1を供給し噴出口68より噴出させて水接触部64を構成してある。この噴出口68は、例えば、導入管62に穿孔した複数の貫通孔である。これにより、噴出口68より噴出された熱分解ガスG1が、貯留部61aの水W中で冷却されてPET成分が結晶化されると共にPVC(ポリ塩化ビニル)のCl(塩素分)は水Wに溶解されて、回収することができる。そして、貯留部61a(水接触部64)を通過した熱分解ガスG1は、貯留部61aの水面より上方に位置する導出管63の導出口63aより外部へ導出される。
【0062】
なお、図13の例では、導出管63の噴出口68の近傍に除去具69を設けてある。この除去具69は、環状部69aとブラシ等の除去部69bとからなり、環状部69aを介して噴出口68周辺を導出管63の管軸方向に沿って除去部69bをスライド移動させることで、噴出口68に固着するPET成分を排除して目詰まりを防止する。また、水Wは、上記の例と同様に、ポンプ67により汲み上げられて貯留部61aへ供給され再利用される。
【0063】
また、上述したように、PET(ポリエチレンテレフタラート)は250℃程度で再結晶化してしまう。そのため、水トラップ60へ導入される直前で熱分解ガスG1が冷却しないように導入管62を加熱しておくことが望ましい。係る場合、図15に示すように、加熱手段としては、例えば、導入管62を外部から加熱炉22の排熱ガスH1で加熱する。導入管62を保温部材33で覆い、加熱炉22の排気口(排熱供給部)22aから第1排気配管7aを介して保温部材33の内部に加熱炉22の排熱ガスH1を供給する。これにより、導入管62が250℃以下とならずPET成分が導入管62で再結晶化することがない。
【0064】
また、保温部材33には、その内部を流通した排熱ガスを外部へ排出する第2排気配管7bが接続されている。そして、第2排気配管7bは、第3排気配管7cを介して排気塔22bに接続されてあり、中間部にバルブ7xが設けられている。後述するバイパス経路70を使用する場合、このバルブ7xを閉めることで、加熱炉22の排熱ガスH1の全量を第4排気配管7dを介して外装部材34の内部へ供給することができ、省エネに寄与している。
【0065】
また、水トラップ60を設置するに際し、導入管62と導出管63との間に水トラップ60をバイパスするよう切替可能なバイパス経路70を設けても構わない。例えば、図14に示すように、導入管62に入口側三方弁71を設けると共に導出管63に出口側三方弁72を設け、これら三方弁71,72を水平配管73で接続し切替可能なバイパス経路70とする。なお、水平配管73に替えて熱分解釜21側ほど降下する勾配70aを設けるようにしても構わない。処理物MにPETやPVCが含まれない場合、水トラップ60は不要であり、バイパス経路70に勾配を設けることで、水分や異物が凝縮器側へ流入することを防止できる。
【0066】
なお、上記各態様の水トラップ60は、上記実施形態の如きバッチ式の熱分解釜21に限らず、連続式の熱分解装置に適用することも可能である。例えば、上記特許文献4に示す連続式の熱分解炉において、熱分解ガス排出ダクト6にPET除去装置として水トラップ60を接続することが可能であり、これらを組み合わせた油化装置を実施することができる。
【0067】
上記各実施形態において、蓋部25の排出口24xから連通する排出部24に、第1凝縮部31に接続する第1ガス配管6aに着脱可能な連結部24aを設けた。しかし、蓋部25の開閉が可能であれば、連結部の構成は上記実施形態の態様のものに限られない。
【0068】
例えば、図16に示す排出部24は、蓋部25の開閉時にこの蓋部25の移動軌道25’の外に位置する連結部24bと、排出口24xとを連結するエルボ24eを有し、このエルボ24e及び連結部24bが連続する上部にヒンジ24yを設けてある。これにより、図中の1点鎖線で示すように、エルボ24eは、ヒンジ24yにより連結部24bの上部にスイングして蓋部25の移動軌道25’外に移動(避難)可能となる(符号24e’)。上記実施形態では、直管の連結部24aが各配管の熱膨張により位置合わせが困難となるが、図16に示す構成ではエルボ24eは位置合わせのずれを吸収しやすく、上述のウイング移動により、蓋部25の開閉時にエルボ24eが妨げとならず、蓋部25の開閉も容易である。
【0069】
上記実施形態において、熱分解炉で生成した熱分解ガスを凝縮する凝縮器として、第1凝縮器3及び第2凝縮器4も2台により構成した。しかし、凝縮器の台数は2台に限られず、単数でも3台以上であってもよい。上述の水トラップ60は、凝縮器(第1凝縮器)の上流側に設けられ、オフガス配管6cは最下流の凝縮器に設けられる点は、上記実施形態と同様である。
【0070】
上記実施形態において、羽根部26の下縁部26a及び立ち上がり部26bを平面視直線状の板状部材26cにより構成したが、これに限られるものではなく、例えば図17に示す如き態様のものでもよい。
図17(a)(b)に示す実施形態では、環状面21eの形成軸である中心軸CA(軸部材27の位置に配置される)について、羽根部26の立ち上がり部26bのみが螺旋状に形成されている(軸部材27及び他の部材は記載を省略しているが上記のとおり実施すればよい。)。この場合では、羽根部26が平面図時計回りに回転すると、熱分解釜21の環状面21eに近い部分では処理物が上から下に向かって矢印R1方向に強制的に送り出される。これにより、底部21d側ほど処理物が圧送されて密度が高まり、熱分解の伝熱効率が向上する。曲面(底面)21cに接する部分では、羽根部26の下縁部26aは中心軸CAについての放射方向に対し直線的に形成されているが、上記圧送により底面21cを通過した処理物は、中心軸CA近接方向である矢印R2方向に集められ、さらに、中心軸CAに沿った矢印R3方向に上昇させられ、全体の攪拌が合理的に行われる。
【0071】
一方、図17(c)(d)の実施形態は、羽根部26の立ち上がり部26b及び下縁部26aの双方が螺旋状の場合である。この場合、下縁部26aの螺旋の効果により、底面21cを通過した処理物は、中心軸CA近接方向である矢印R2方向により強固に集められ、全体の攪拌がより合理的に行われる。なお、羽根部21の中心軸CA周りの回転を逆転させると、方向R1~3は逆となり、処理物の塊状化を緩和することができる。
【0072】
なお、上記各実施形態及び各改変例は、組み合わせて実施することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えば、廃プラスチックや廃タイヤのケミカルリサイクルを行う油化装置及びこれを用いた油化方法として利用することができる。また、本発明は、LIMEX(登録商標)等、炭酸カルシウムなどの無機物を50%以上含有する複合材料についてもケミカルリサイクルが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1:油化装置、2:熱分解炉、3:第1凝縮器、4:第2凝縮器、5:燃焼装置(脱臭装置)、6:ガス配管、6a:第1ガス配管、6b:第2ガス配管、6c:燃焼燃料として誘導するオフガス配管、6c1:導出管、6c2:排出管、6c3:勾配管、6c4:分岐管、6c5:燃焼用管、6c6:発電用管、6d1:第一バルブ、6d2:第二バルブ、6x:トラップ室、6y:下バルブ、7:排気配管、7a:第1排気配管、7b:第2排気配管、7c:第3排気配管、7d:第4排気配管、7x:バルブ、21:熱分解釜、21a:中間部、21b:下端、21c:底曲面(底面)、21d:底部、21e:環状面、21f:開口(取出口)、21x:線分、21y:直線線分、22:加熱炉、22a:排気口(排熱供給部)、22b:排気塔、22c:駆動部、23:攪拌装置、23b:駆動部、24:排出部、24a,24b:連結部、24e:エルボ、24x:排出口、24y:ヒンジ、25:蓋部、25a:投入口、25b:熱電対、25z:導入口、26:羽根部、26a:下縁部、26b:立ち上がり部、26b1:上端、26c:板状部材、26d:平面、26e:上縁部、26e1:直線状部、26e2:傾斜部、26f:突出部、27:軸部、27a:下軸部、27b:上軸部、27c:連結部、28:軸保持部、29:昇降機構、31:第1凝縮部、32:第1貯蔵タンク、32a:取出口、33:保温部材、34:外装部材、35:ヒーター、36:熱電対、37:冷却水タンク、41:第2凝縮部、42:第2貯蔵タンク、42a:取出口、47:冷却水タンク、40:発電ユニット、41:水素化装置、42:発電装置(燃料電池)、51:バーナー部、52:空気供給機、52a:空気配管、53:ベンチュリー、54:プラグ、60:水トラップ、61:本体、61a:貯留部、62:導入管、62x:水トラップ側配管、62y:熱分解釜側配管、63:導出管、63a:導出口、63x:水トラップ側配管、63y:凝縮器側配管、64:水接触部、65:ガス供給具、65a:底部、65b:側部(側壁部)、65c:後部(側壁部)、65d:導入口、65e:後スリット、65f:前縁、65g:上開口(解放部)、66:噴流供給部(シャワー)、67:ポンプ、68:噴出口、69:除去具、69a:環状部、69b:除去部、70:バイパス経路、70a:勾配配管、71:入口側三方弁、72:出口側三方弁、73:水平配管、C1,C2:冷却水、CA:中心軸、M:処理物、G1:熱分解ガス、G2:第1凝縮器で生成したガス、G3:オフガス、H1:加熱炉からの排熱ガス、H2:ガス配管への排熱ガス、H3:第1凝縮器への排熱ガス、F1:処理物充填ライン、F2:処理物膨張ライン(沸騰液面)、L1:固着生成上限ライン、L2:摺接ライン
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