(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】クロマトグラフィーカラムの衛生化のための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/50 20060101AFI20241007BHJP
B01D 15/20 20060101ALI20241007BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20241007BHJP
B01J 20/24 20060101ALI20241007BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G01N30/50
B01D15/20
B01J20/22 D
B01J20/24 B
A61L2/18 102
(21)【出願番号】P 2021557165
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2020058023
(87)【国際公開番号】W WO2020193485
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・アヴァリン
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・グロンバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ・ニルソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク・イングヴァルソン
(72)【発明者】
【氏名】リンダ・パーション
(72)【発明者】
【氏名】マグナス・アスプルンド
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト・ブラーズ
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-507729(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118609(WO,A1)
【文献】特表平10-503470(JP,A)
【文献】特表2018-513840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0328563(US,A1)
【文献】特開2018-044921(JP,A)
【文献】特開2017-146239(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0036445(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
B01D 15/00 -15/42
A61L 2/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオプロセス用クロマトグラフィーカラムの衛生化のための方法であって、
a) バイオプロセス用クロマトグラフィーカラムに分離樹脂の粒子の充填床および移動可能アダプタを提供するステップと、
b) 前記アダプタが前記充填床と接触している状態で、前記充填床を通じてカラム出口へと衛生化流体を輸送するステップと、
c) 前記充填床と前記アダプタとの間に隙間を提供するために前記アダプタを上昇させるステップと、
d) 前記隙間を閉じるために前記アダプタを
ステップb)における位置と同じまたはより低い位置へ下降させるステップと、
d’) 衛生化流体を、前記充填床を通じてカラム出口へと輸送するステップと、
e) 平衡液体を、前記充填床を通じてカラム出口へと輸送するステップと
を含み、
前記衛生化流体は酸化剤を含
み、
b’)カラム樹脂弁を閉じて開けるか、または開けて閉じるステップを、ステップb)とステップe)との間に、ステップc)とステップd)との間に、またはステップd)とステップe)との間にさらに含む、方法。
【請求項2】
前記ステップc)と前記ステップd)とは、2回など、少なくとも1回は繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップb)の後で前記ステップe)の前に、カラム樹脂弁を閉じて開くステップb’)をさらに含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップb’)の前に、前記カラム樹脂弁は衛生化流体で平衡にさせられている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
2つのアダプタシールの間の洗い流し通路を衛生化流体で満たすステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤は過酸または過酸化水素を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化剤は、過酢酸を含む、または過酢酸である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記衛生化流体における前記酸化剤の濃度は、10~30mMなど、5~100mMである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記分離樹脂は、架橋アガロースなどの架橋多糖を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
タンパク質親和性リガンドが前記分離樹脂に繋がれる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質親和性リガンドはプロテインAまたはプロテインAの変異を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
分離樹脂の前記充填床は、20~40分間など、10~50分間にわたって前記衛生化流体と接触している、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップb)の前に、分離樹脂の前記充填床を伴う前記カラムは生物薬剤の分離のために使用される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップe)の後に、分離樹脂の前記充填床を伴う前記カラムは生物薬剤の分離のために使用される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップb)の前に、分離樹脂の前記充填床を伴う前記カラムは第1の生物薬剤の分離のために使用され、前記ステップe)の後に、分離樹脂の前記充填床を伴う前記カラムは、前記第1の生物薬剤と異なる第2の生物薬剤の分離のために使用される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオプロセス用クロマトグラフィーカラムに関し、より詳細には、衛生化流体によるバイオプロセス用クロマトグラフィーカラムの衛生化の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物汚染が多くの研究室および生産の環境において見つけ出されている。公的条件の下で急速に大量へと成長するため、これらの微生物は、クロマトグラフィー機器およびクロマトグラフィー樹脂の機能を損ない、性能を低下させる可能性がある。また、微生物は、製造を通じてバイオ製品の汚染物質として残り、その結果、バッチの失陥および関連のコストを伴う可能性がある。したがって、生産プロセス全体を通じて衛生的なルーチンに従うことが重要である。微生物群を減少させるための化学薬品の使用として定められる衛生化が、バイオ製品を汚染する危険性を最小限にするレベルで微生物の存在を維持するために、クロマトグラフィーに一般的に使用されている。
【0003】
衛生化薬品の過酢酸(PAA)は、本明細書により参照によってその全体において組み込まれている米国特許出願公開第20180036445号において検討されているように、栄養細菌と胞子形成細菌との両方の除去に有効な酸化剤である。薬品は、例えばプロテインA樹脂およびほとんどのハードウェアのバイオプロセス機器と適合している。30分間にわたる20mM水性PAAまたは15分間にわたる30mMのPAAでのプロテインA樹脂の処理が、樹脂の浄化能力に相当の影響を与えることなく使用できることが示されている。NaOH溶液がクロマトグラフィー樹脂の衛生化のために使用できることも知られている(本明細書により参照によってその全体において組み込まれているWO2017194593A1を参照されたい)。
【0004】
充填床カラムの衛生化を有効とさせるために、床全体およびすべての液体接触表面が衛生化薬品によって接触させられることが必須である。これは、停滞区域が上床支持体とカラム管との間に存在する移動可能アダプタを伴う現代のプロセスカラムにとって、特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第20180036445号
【文献】WO2017194593A1
【文献】米国特許出願公開第20170334954号
【文献】米国特許第7834158号
【文献】米国特許出願公開第2018094024号
【文献】米国特許第8329860号
【文献】米国特許第9018305号
【文献】米国特許出願公開第2013046056号
【文献】米国特許第9040661号
【文献】米国特許第9403883号
【文献】米国特許出願公開第20160237124号
【文献】米国特許出願公開第2018105560号
【文献】米国特許出願公開第2014031522号
【文献】米国特許出願公開第2010286373号
【文献】CN105481954A
【文献】米国特許出願公開第20160159855号
【文献】米国特許出願公開第20160159857号
【文献】WO2018029158
【文献】米国特許第5902485号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、衛生化薬品と床における樹脂の全量との間の効率的な接触に加えて、すべての液体接触カラム表面との効率的な接触を可能にする充填床カラム衛生化方法への要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、バイオプロセス用クロマトグラフィーカラムの衛生化のための方法を提供することである。これは、
a) バイオプロセス用クロマトグラフィーカラムに分離樹脂粒子の充填床および移動可能アダプタを提供するステップと、
b) アダプタが充填床と接触している状態で、充填床を通じてカラム出口へと衛生化流体を輸送するステップと、
c) 充填床とアダプタとの間に隙間を提供するためにアダプタを上昇させるステップと、
d) 隙間を閉じるためにアダプタを下降させるステップと、
e) 平衡液体を、充填床を通じてカラム出口へと輸送するステップと
を含む方法で達成される。
【発明の効果】
【0008】
1つの利点は、床を再充填することを必要とせずに、床の効率的な衛生化がその場で得られることである。さらなる利点は、方法が自動化に適していることである。
【0009】
本発明のさらなる適切な実施形態が従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】移動可能アダプタを伴うバイオプロセスカラムの概略図である。
【
図2】移動可能アダプタを伴うバイオプロセスカラムの斜視図である。
【
図3】移動可能アダプタとカラム壁との間のスライド可能シールを示す図である。
【
図4】アダプタとカラム壁との封止の代替の構成を示す図である。
【
図5】底床支持体とカラム壁との間のシールを示す図である。
【
図6】アダプタに移動相入口/出口を伴う上弁組立体を示す図である。
【
図7】アダプタに移動相入口/出口を伴う上弁副組立体を示す図である。
【
図8】底床支持体における統合された移動相および樹脂の弁を示す図である。
【
図9】底床支持体における統合された移動相および樹脂の弁を示す図である。
【
図10】底床支持体における統合された移動相および樹脂の弁を示す図である。
【
図12】組み合わされた充填および衛生化のプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
請求されている発明の主題をより明確および簡潔に説明および指摘するために、以下の定義が、以下の記載、および本明細書に添付される特許請求の範囲において使用される特定の用語のために提供されている。
【0012】
「1つ」および「その」といった単数形は、文脈が他に明確に指示していない場合、複数の指示対象を含んでいる。明細書および特許請求の範囲を通じて本明細書で使用されているような近似の言葉は、それが関係させられる基本的な機能に変化をもたらすことなく許される程度で変わることができる任意の量的表現を修飾するために適用され得る。したがって、「約」などの用語によって修飾された値は、明示された正確な値に限定されることはない。他に指示されていない場合、明細書および特許請求の範囲で使用される含有物の量、分子量などの特性、反応条件などを表すすべての数は、すべての例において「約」という用語によって修飾されるとして理解されるものである。したがって、逆に示されていない場合、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に述べられている数値パラメータは、本発明の実施形態によって得られると考えられる所望の特性に依存して変わり得る近似値である。少なくとも各々の数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、および、通常の丸め技術を適用することで、少なくとも解釈されるべきである。
【0013】
本発明を記載するために本明細書において使用されているように、「上」、「下」、「上向き」、「下向き」、「上方」、「下方」、「上」、「下」、「鉛直」、「水平」、「~の上方」、「~の下方」などの方向の用語、および任意の他の方向の用語は、添付の図面においてそれらの方向に言及している。
【0014】
図1~
図12によって示されている一態様において、本発明は、バイオプロセス用クロマトグラフィーカラムの衛生化のための方法を開示している。方法は以下のステップを含む。
【0015】
a) バイオプロセス用クロマトグラフィーカラム1に分離樹脂粒子の充填床4および移動可能アダプタ2を提供するステップ。アダプタは、例えば1つまたは複数の電気モータ22または液圧アクチュエータを用いて鉛直に移動可能であり得る。分離樹脂は、架橋アガロースなどの架橋多糖を含み得る。代替で、分離樹脂は、例えばスチレン-ジビニルベンゼン共重合体またはメタクリル酸エステル共重合体といった合成架橋ポリマを含んでもよい。樹脂は、親和性リガンド、イオン交換リガンド、多モードリガンド、および/または疎水性リガンドなどのリガンドを含み得る。具体的には、タンパク質親和性リガンドが分離樹脂に繋がれ得る。これらのタンパク質親和性リガンドは、例えばプロテインAまたはプロテインAの変異を含み得る。プロテインAの例は、例えば、本明細書によって参照によりそれらの全体において組み込まれている米国特許出願公開第20170334954号、米国特許第7834158号、米国特許出願公開第2018094024号、米国特許第8329860号、米国特許第9018305号、米国特許出願公開第2013046056号、米国特許第9040661号、米国特許第9403883号、米国特許出願公開第20160237124号、米国特許出願公開第2018105560号、米国特許出願公開第2014031522号、米国特許出願公開第2010286373号、CN105481954A、米国特許出願公開第20160159855号、米国特許出願公開第20160159857号、およびWO2018029158に開示されているようなアルカリ安定型プロテインA由来リガンドを含む。このようなプロテインA変異リガンドを有する市販の分離樹脂には、例えば、MabSelect(商標) SuRe(GE Healthcare)、MabSelect PrismA(GE Healthcare)、Eshmuno(商標) A(EMD-Millipore)、Amsphere(商標) A3(JSR)、TOYOPEARL(商標) AF-rProtein A(Tosoh Bioscience)、KanCapA(商標)(Kaneka)、およびPraesto(商標) Jetted A50(Purolite)がある。カラムは、例えばAxiChrom(商標)(GE Healthcare)、Resolute(商標)(Pall)、Prochrom(商標)(Novasep)、EAC-Bio(Lisure Science)、EasyPack(商標)(Verdot)など、移動可能アダプタを伴う市販のバイオプロセスカラムであり得る。カラム(充填床)の直径は、10cm~2mまたはさらには30cm~2mなど、例えば5cm~2mとでき、床の高さは、8~30cmなど、例えば5cm~50cmとできる。移動可能アダプタ2を伴うカラム1の典型的な構造が
図1に概略的に示されており、
図2では実際の市販のカラムの斜視図として概略的に示されている。分離樹脂の充填床4が、上方多孔性床支持体8と下方多孔性床支持体10との間で円筒形のカラム管6に含まれている。下方床支持体は、カラム底12によって支持された液体分配器146に圧し掛かっている。上方床支持体は液体分配器136を介して移動可能アダプタ2に連結されており、移動可能アダプタ2は、封止部14によってカラム管にスライド可能に封止されている。封止部14の例が
図3において拡大されて示されている。この場合、Oリング32が掻き落とし環34をカラム管6の内側36に向けて押している。
図4は封止部14の他の例を示しており、2つの掻き落とし環34、114、116がOリング32、112、118によってカラム管6の内側36に向けて押されている。この場合、2つの掻き落とし環34の間の空間38と流体接続しており、この空間の洗い流しを可能にする洗浄通路(図示されていない)があり得る。
図5は、カラム管6の底端42と下方床支持体10との間の封止部40の例を拡大して示している。これは、Oリング44、46、および48によって遂行され得る。カラム管は、固定されたカラム蓋15によって覆われ得る。上方弁組立体16の一部を形成し得る上方移動相入口/出口17が分配器を介して上方床支持体に流体接続されており、下方移動相出口/入口18が分配器を介して下方床支持体に流体接続されており、移動相に上方向または下方向のいずれかでの入口/出口および充填床の通過をさせることができる。アダプタは、鉛直方向(軸方向)の移動のための1つまたは複数のアダプタロッド20に連結され得る。アダプタロッドは、ロッドを鉛直方向/軸方向に移動させるように構成される1つまたは複数のアクチュエータ22に連結され得る。アクチュエータは、例えば1つまたは複数のモータまたは液圧シリンダであり得る。代替で、アダプタは、ネジ付きロッドにおけるモータ駆動もしくは手動のネジ作用によって、または、アダプタの上部もしくは底部において直接的に加えられる液圧によって、移動させることができる。カラムは、カラムを充填および非充填するために、1つまたは複数の樹脂入口/出口24、26がさらに備えられ得る。樹脂入口/出口は、例えば上方および/または下方の床支持体を通じて、カラムの内部に接続させることができ、樹脂分配のためのノズル28と、通常のカラム動作の間の入口/出口の閉鎖のための樹脂弁30とを有し得る。樹脂入口/出口と移動相入口/出口とは互いと一体にでき、そのため、樹脂弁が閉じられているとき、流れは移動相入口から分配器および床支持体を介して充填床へと進み、樹脂弁が開かれているとき、流れは樹脂入口からノズルを介してカラム管へと直接的に進む。このような弁およびノズルの構造の例は、本明細書により参照によってその全体において組み込まれている米国特許第5902485号において提供されている。
図6および
図7は、移動相入口/出口17を有する上方弁組立体16の例を、上方床支持体8の固定のための中心ネジ50(Oリング52で封止されている)の詳細と共に示している。この場合、入口/出口はTC連結器54を介して配管に接続でき、液体は、Oリング58で封止された入口/出口室56を介して流れる。
図8~
図10は、樹脂入口/出口26および樹脂弁30と一体にされた下方移動相出口/入口18を示している。ここで、樹脂弁30はピストン60を備え、ピストン60は、ピストン先端62が下方床支持体10と面一であるときにOリング64に当たって封止し、移動相を分配器および下方床支持体に通すように向かわせる。
【0016】
b) アダプタが充填床と接触している状態で、充填床を通じてカラム出口へと衛生化流体を輸送するステップ。衛生化流体は、過酸(ペルオキシ酸とも呼ばれる)などの酸化剤、または過酸化水素を適切に含み得る。具体的には、衛生化流体は過酢酸を含み得る。酸化剤(例えば、過酢酸)の濃度は、例えば、5-50mMまたは10~30mMなど、5~100mMであり得る。代替で、衛生化流体は、例えばNaOHといったアルカリ金属水酸化物を含み得る。この場合、水酸化物の濃度は0.1~2Mであり、好ましくは0.5~2Mまたは1~2Mであり得る。接触時間、つまり、分離樹脂の充填床が衛生化流体と接触している時間は、例えば、10~50分間または20~40分間など、10分間~2時間であり得る。適切には、温度は室温または22±5℃であり得る。衛生化流体の密度は、例えば、1.0~1.1g/mlなど、0.9~1.1g/mlであり、流体の粘度は、例えば、22°で測定されるときに1.0~2.0mPasであり得る。
【0017】
c) 充填床とアダプタとの間に隙間を提供するためにアダプタを上昇させるステップ。隙間の高さは、例えば、2cm~5cmなど、1cm~10cmであり得る。代替で、隙間の高さは床高さに対して測定でき、例えば、床高さの15~30%など、床高さの10~40%であり得る。アダプタを上昇させることで、衛生化流体と、アダプタとカラム壁との間のスライド可能な封止部の周りの死領域との間に向上した接触を可能にする。具体的には、この上昇は、捕獲された樹脂の粒子を充填床へと堆積させることができる。
【0018】
d) 隙間を閉じるためにアダプタを下降させるステップ。アダプタは、ステップb)においてと同じ位置へと、または、例えば0.02~0.03%など、最大で0.04%で圧縮を増加させるために、さらにはいくらかより低い位置へと、適切に下降させることができる。圧縮の増加はカラム効率の向上をもたらす。
【0019】
e) 平衡液体を、充填床を通じてカラム出口へと輸送するステップ。平衡液体は、例えば、カラムの保管にとって適切な20%の水性エタノールといった静菌性溶液であり得る。カラムが分離のためにすぐ後で使用される場合、平衡液体は、意図されているクロマトグラフィーステップに適した平衡緩衝液など、水または水性緩衝液とできる。
【0020】
アダプタがスライド可能封止部との間の洗い流し通路を有する場合、方法は、この洗い流し通路を衛生化流体で満たすステップをさらに含んでもよい。この衛生化流体(洗い流し通路衛生化流体とも呼ばれ得る)は、潜在的に敏感な分離樹脂と接触しないため、例えば50~150mMまたは70~120mMの過酢酸といった、過酢酸などの酸化剤をより高い濃度で適切に含むことができる。洗い流し通路を衛生化流体で満たすステップは、ステップc)の前に適切に行うことができ、そのためカラム壁はアダプタの移動の間に衛生化させられる。次に、ステップe)の前または後に、洗い流し通路は平衡液体で適切に洗浄される。
【0021】
特定の実施形態では、方法は、ステップd)とステップe)との間に、先に検討されているように、衛生化流体を、充填床を通じてカラム出口へと輸送するステップd')をさらに含む。
【0022】
一部の実施形態では、ステップc)とステップd)とは、2回など、少なくとも1回は繰り返される。これは、衛生化流体とアダプタの封止部の死領域との間の接触をさらに向上させる。
【0023】
特定の実施形態では、方法は、ステップb)の後でステップe)の前に、カラム樹脂弁を閉じて開く(または、開いて閉じる)ステップb')をさらに含む。これは、衛生化液体が弁の封止面の下に浸透することをさらに確保することができる。適切には、カラムを通じた流れは、このステップの前に停止させられ、このステップの後に再開される。これらの実施形態では、カラム樹脂弁が閉/開の前に衛生化溶液と平衡にされた場合に有利である。
【0024】
一部の実施形態では、ステップb)の前に、分離樹脂の充填床を伴うカラムは生物薬剤の分離のために使用され得る。追加または代替で、ステップe)の後に、分離樹脂の充填床を伴うカラムは生物薬剤の分離のために使用される。生物薬剤は、例えば、モノクローナル抗体などの免疫グロブリンであり得るが、組み換えタンパク質、または例えばワクチン抗原であってもよい。これらの実施形態の変形において、ステップb)の前に、分離樹脂の充填床を伴うカラムは第1の生物薬剤の分離のために使用され、ステップe)の後に、分離樹脂の充填床を伴うカラムは、第1の生物薬剤と異なる第2の生物薬剤の分離のために使用され得る。第1の生物薬剤と第2の生物薬剤とは、例えば2つの異なるモノクローナル抗体であり得る。
【実施例】
【0025】
衛生化薬品として過酢酸(PAA)に基づかれる所定の衛生化方法が、抗原投与の有機体として緑膿菌を使用する3つの研究によって、MabSelect(商標) SuReプロテインA樹脂(GE Healthcare)において使用されるように、アガロースビーズが充填されたAxiChrom(商標) 300カラム(GE Healthcare)において評価された。樹脂を含むプロセス流れと接触しているすべての部品は、予め洗浄され、抗原投与され、衛生化され、評価されている。微生物試料採取がシステムにおける所定部位で実施された。試料を通る流れが、使用中のプロセス室と、衛生化方法を終了した後の洗い流し通路、プロセス室、および樹脂弁とから回収された。試料を通る追加の流れが、5日間から6日間の洗浄が持続した後に回収された。使用された試験方法は以下に提示されている。結果は、述べられた合否基準に対して評価されている。
【0026】
試験項目:
AxiChrom 300/300カラム、シリアル番号28976588、300mmの直径のアクリル管、ステンレス鋼床支持体。
研究1: 上床支持体および底床支持体における10μmの網
研究2および3: 273*2.62mmのEPDMのOリング(商品番号29-1659-36)を伴っての底床支持体における10μmの網および上床支持体における20μmの網
プロセス流と接触しており、試料採取位置に直接的または間接的に接続されるすべてのOリングは、新たなもので置き換えられている。新しいOリングがすべての3つの実験的研究で使用された。
【0027】
試料採取されたハードウェア部品:
Table 1(表1)および
図4~
図10を参照されたい。
【0028】
抗原投与の有機体:
緑膿菌、ATCC 9027、グラム陰性菌
【0029】
抗原投与の有機体の濃度:
1x107CFU/mlまたはCFU/unit(CFU=コロニー形成単位)
【0030】
衛生化薬品:
充填床を通り、弁における過酢酸の20mM水性溶液。洗い流し通路では100mM。
【0031】
樹脂:
40μmから130μmの間の篩織物で篩われた85μmの体積重み付けされた中位径(d50,v)の高度に架橋された球形のアガロースビーズ。
【0032】
システムおよびカラムの準備
前洗浄プロセスとして、分解され得るすべてのカラム部品(カラム蓋、管、底、およびアダプタ裏板を除く)が1MのNaOH溶液に24時間にわたって浸されてから組立ての前に無菌純水で濯がれた。
【0033】
カラムの残りの部分、つまり、カラム蓋、底、およびアダプタ裏板には70%エタノールが噴霧された一方で、カラム管は組立ての前に20%エタノールで拭き取られた。
【0034】
カラム部品を1MのNaOHに24時間にわたって浸す前に、ネジおよびナットなどの小さい部品を除いて、研究2および3で使用されるすべての部品は、2%の洗剤溶液(YES)で洗われた、または拭き取られた。ステンレス鋼の床支持体は、1MのNaOHの超音波浴において40℃で2*15分間にわたって洗浄された。
【0035】
研究3では、床支持体のための留め具を含むすべてのネジにおけるPTFEのネジシールテープが交換され、121℃において30分間にわたって加熱滅菌された。
【0036】
可及的にはそれらの大きさのため、カラム部品はLAFフードにおいて組み立てられている。組立ての間、部品には70%エタノールが噴霧された。このエタノールは、研究2および3では、Klercide(商標) 70/30 Denatured Ethanolで置き換えられた。
【0037】
また、AKTA(商標)プロセススキッド(GE Healthcare)が、最初に20mMのPAAで洗い流すことで予め洗浄され、次に1MのNaOHで満たされて一晩置かれた。
【0038】
樹脂によるAxiChrom 300カラムの充填
充填に向けてカラムを準備するために、カラムは、カラム管が満たされるまで、純水の上への流れを汲み上げることで空気が追放された。アダプタは、この手順の間にその呼び水位置にあった。以後において、流れは、カラムが0.3barの圧力を達成するように手作業で調節された後、カラムと流路におけるダイヤフラム弁とを通じて上向きに適用されている。次に、流れがなおも洗い流し通路にあり、洗い流し通路を開いたままにしている状態で、アダプタが管における呼び水溝を通過するまで、アダプタは40cm/hで下げられた。アダプタは、40cm(研究3)の高さにおいて停止させられ、次にカラム管は1MのNaOHで満たされて一晩保管された。この後、カラムは純水で平衡にさせられ、アダプタは底床支持体から1cmの開始位置まで下に移動させられた。
【0039】
次に、カラムは、抗原投与の有機体で植菌された充填溶液として50mMのNaClを使用して樹脂で充填された。充填は、AxiChrom Master制御ユニットを使用して手作業で実施された。感染した樹脂の均質なスラリーが、すべての樹脂がカラムへと追い込まれるため、最初は300cm/hで終わりには約100cm/hにおいてアダプタを上昇させることでカラムへと引き込まれた。追い込みは、アダプタがカラムにおいてなおも上向きに移動している間に、50mMのNaCl(研究1および3)または20mMのPAA(研究2)をスラリータンクへと注ぐことで行われた。次に樹脂弁が閉じられ、弁および配管は20mMのPAAを使用して樹脂が無くなるように濯がれた。
【0040】
充填は、アダプタが10cmの目標床高さへと60cm/hで下向きに駆動される間、底移動相が開いた状態で開始されたが、実際の床高さは9.7~10.2cmの間であった。実際の床高さは、衛生試験場における充填の前に、樹脂がインテリジェント充填でAxiChrom 300/500カラムにおける純水に充填されたときに達成された床高さによって決定された。1MのNaOHを伴うCIPが、AxiChrom 300/500において充填された床から実施され、次に、無菌の濾過された50mMのNaClにおいて取り出され、次に、このスラリーは前述したような衛生試験場において充填された。
【0041】
樹脂の感染のための準備
緑膿菌ATCC 9027(内部グリセロールストック)で縞の付けられたTSAプレートが37℃で一晩にわたって(O.N.)インキュベートされた。これらのプレートからの新たなコロニーが200mLのTSB媒体へと移送され、37℃で一晩にわたって振動させたままとされた。植菌の測定された光学密度(OD: Optical Density)と、緑膿菌について1OD≒2x109CFU/mLであるという仮定とに基づいて、50mMのNaClに懸濁された樹脂スラリーに加えられる植菌の必要とされる体積について計算が行われた。目的は、抗原投与の有機体の懸濁液においておおよそほぼ107CFU/mlの最終濃度に到達することであった。微生物濃度は試験方法5で決定された。
【0042】
衛生化手順
研究1:
樹脂が床高さ9.7cmまで充填された。衛生化研究は、充填床を、2カラム体積(CV: Column Volume)の無菌純水の下向き流で60cm/hにおいて濯ぎ、続いて、20mMのPAAの下向き流で120cm/hにおいて4分間にわたって濯ぐことで開始された。アダプタは、20mMのPAAが150cm/hにおいて下向き流で床に押し通される間、120cm/hで14cmまで上向きに移動させられた。流れが停止させられ、アダプタは60cm/hで9.7cmまで下向きに移動させられ、過剰な液体を底移動相に押し通した。300cm/hでの20mMのPAAによる下向き流を流すことでPAA処理を終了させた。次に流れが停止させられ、次に、PAA処理された床は、純水での平衡が2CVについて300cm/hで下向き流を流すことで開始させられる前に、15分間にわたってインキュベートされた。
【0043】
この第1の衛生化研究の液体試料は、充填の硬化相においてと、充填の後の2CVの水での濯ぎにおいてと、最後に、方法の終わりにおける2CVの純水での平衡の後とにおいて回収された。
【0044】
研究2:
カラムが充填される前、洗い流し通路(上方掻き落としシールと下方掻き落としシールとの間の領域)が、注射器を用いて100mMのPAAで満たされ、次に樹脂が10.2cmの床高さまで充填された。衛生化研究は、充填床を、2CVの無菌純水の下向き流で60cm/hにおいて濯ぎ、続いて、20mMのPAAの下向き流で120cm/hにおいて4分間にわたって濯ぐことで開始された。アダプタは、20mMのPAAが150cm/hにおいて下向き流で床に押し通される間、120cm/hで14.5cmまで上向きに移動させられた。流れが停止させられ、アダプタは60cm/hで10.2cmまで下向きに移動させられ、過剰な液体を底移動相出口/入口に押し通した。アダプタの移動は、20mMのPAAの下向き流を120cm/hにおいて4分間にわたって流すことで繰り返された。アダプタは、20mMのPAAが150cm/hにおいて下向き流で床に押し通される間、120cm/hで14.5cmまで上向きに移動させられた。流れが停止させられ、アダプタは60cm/hで10.2cmまで下向きに移動させられ、過剰な液体を底移動相出口/入口に押し通した。
【0045】
PAA処理は、2CVについて300cm/hでの20mMのPAAによる下向き流を流すことで終了させられた。流れが停止させられ、次に、PAA処理された床は、純水での平衡が2CVについて300cm/hで下向き流を流すことで開始させられる前に、5分間にわたってインキュベートされた。
【0046】
この第2の衛生化研究の液体試料は、充填の硬化相においてと、充填の後の2CVの水での濯ぎにおいてと、最後に、方法の終わりにおける2CVの純水での平衡の後とにおいて回収された。衛生化方法の後、充填床および樹脂弁は20%エタノールで平衡にさせられ、液体試料は、充填床については2CVで、樹脂弁については5Lの後に回収させられた。洗い流し通路における100mMのPAAは、pHが上昇するまで20%エタノールで濯がれ、次に液体試料が回収された。
【0047】
次に、カラムは、AKTAプロセススキッドに連結された状態で、衛生試験場において保管溶液(20%エタノール)で5日間の「洗浄保持」のままとされた。この後、樹脂弁におけるエタノールの液体試料が回収され、次に20%エタノールが充填床を通じて60cm/hにおいて下向き流で流され、液体試料は0.6CVおよび1.2CVの後に回収された。洗い流し通路における液体も回収された。
【0048】
研究3:
カラムが充填される前、洗い流し通路(上方掻き落としシールと下方掻き落としシールとの間の領域)が、注射器を用いて100mMのPAAで満たされ、次に樹脂が10.1cmの床高さまで充填された。衛生化研究は、充填床を、2CVの無菌純水での下向き流で60cm/hにおいて濯ぎ、続いて、20mMのPAAの下向き流で120cm/hにおいて4分間にわたって濯ぐことで開始された。アダプタは、20mMのPAAが170cm/hにおいて下向き流で床に押し通される間、120cm/hで14.4cmまで上向きに移動させられた。流れが停止させられ、アダプタは60cm/hで10.1cmまで下向きに移動させられ、過剰な液体を底移動相出口/入口に押し通した。アダプタの移動は、20mMのPAAの下向き流を120cm/hにおいて4分間にわたって(充填床へとPAAをほぼ3cm)流すことで繰り返された。流れが停止させられ、樹脂弁ピストンは6秒間以内に2回開け閉めさせられた。アダプタは、20mMのPAAが170cm/hにおいて下向き流で床に押し通される間、120cm/hで14.4cmまで上向きに移動させられた。流れが停止させられ、アダプタは60cm/hで10.1cmまで下向きに移動させられ、過剰な液体を底移動相出口/入口に押し通した。
【0049】
PAA処理は、2CVについて300cm/hでの20mMのPAAによる下向き流を流すことで終了させられた。次に流れが停止させられ、次に、PAA処理された床は、純水での平衡が2CVについて300cm/hで下向き流を流すことで開始させられる前に、5分間にわたってインキュベートされた。
【0050】
この第3の衛生化研究の液体試料は、充填の硬化相においてと、充填の後の2CVの水での濯ぎにおいてと、最後に、方法の終わりにおける2CVの純水での平衡の後とにおいて回収された。衛生化方法の後、充填床および樹脂弁は20%エタノールで平衡にさせられ、液体試料は、充填床については2CVで、樹脂弁については3Lの後に回収させられた。洗い流し通路における100mMのPAAは、pHが上昇するまでほぼ150mlの20%エタノールで濯がれ、次に液体試料が回収された。
【0051】
次に、カラムは、AKTAプロセスシステムに連結された状態で、衛生試験場において保管溶液(20%エタノール)で6日間の「洗浄保持」でインキュベートされた。液体試料が「洗浄保持」の後に回収される前に、システムは20mMのPAAで洗い流され、次に、AKTAプロセスシステムからの汚染の危険性を最小限とするために、20%エタノールで平衡にさせられた。樹脂弁におけるエタノールの液体試料が回収され、次に20%エタノールが充填床を通じて60cm/hにおいて下向き流で流され、液体試料は0.6CVおよび1.2CVの後に回収された。濾過された20%エタノールの液体試料も上移動相入口/出口から対照群として回収された。洗い流し通路における液体も回収された。
【0052】
微生物試料採取
試料が所定の部位で取られた。
【0053】
微生物試料採取のためのカラムの分解
すべての液体試料が回収されたとき、異なるカラム部品の試料採取を開始した。試料採取位置はTable 1(表1)および
図4~
図10に記載されている。分解が始まる前に、過剰な液体が充填床から底移動相出口/入口を通じて排出された。次に、カラムは、カラムの上ユニットが天井に頑丈な固定されたスリングと固定できる衛生試験場へと移動させた。次に、上方ヒンジが緩められ、下フランジボルトが取り外され、アダプタが100~200cm/hで下へ移動されるとき、充填床の試料採取を可能とする。この分解方法は、樹脂のほとんどがプラスチックスプーンで除去されるほぼ8cmの開口を得ることを可能にする。次に、いくつかのより多くの所定の部位が試料採取され得る。次に、アダプタは開始位置(充填床の高さ)へと戻すように移動させられ、底フランジボルトおよび上方ヒンジが元に戻される。次に、カラムが、AxiChrom Masterにおける保守ウィザードを用いて通常の方法で分解された。カラム管が揺動位置に来ると、例えば床支持体または上入口といった、試料採取される必要のあるより小さい部品が取り外され、試料採取がLAFフードにおいて実施された。
【0054】
試料採取のほとんどは衛生試験場におけるLAFで行われた。残りの部品は衛生試験場におけるLAFの外部で試料採取された。システム部品は、可能なもっとも無菌の方法で取り扱われた。衛生化プロセスで使用されたすべての溶液も分析された。
【0055】
微生物試料採取は、以下の方法のうちの1つによって実施された。
【0056】
試験方法1、微生物空気試料採取
空中の微生物のための空気の試料採取が、微生物空気採取機(MAS: Microbial Air Sampler)で実施された。寒天板が搭載されたMASが、適切な測定位置に位置決めされる。測定が開始するとき、予め定められた体積の周囲空気が機械を通過させられる。微生物が衝突によって寒天表面において回収される。
【0057】
試験方法2、直接濾過
試料溶液(最小10mL)が無菌管において回収されてから、0.45μmのニトロセルロース膜フィルタを通じて濾過された。フィルタは、寒天板において30~35℃で5日間にわたってインキュベートされ、その後、板はCFUについて検査された。
【0058】
試験方法3、スワブ
表面の試料がスワブで取られた。スワブは、等浸透圧スワブ濯ぎ溶液を含む管へと挿入され、最短で20秒間にわたってボルテックスされた。スワブを含む溶液はペトリ皿へと注がれ、温度制御された30mLの融解寒天と混合された。融解寒天の最大温度は45℃とされるべきである。硬化の後、板は30~35℃で5日間にわたってインキュベートされ、その後、板はCFUについて検査された。
【0059】
試験方法4、ペプトン水濾過
取り外し可能な部品が無菌で取り外され、後で50mLの無菌のペプトン水で満たされる無菌管へと移送され、次に室温(RT)において少なくとも20分間にわたって280rpmで激しく振動させられた。溶液は0.45μmのニトロセルロース膜フィルタを通じて濾過された。フィルタは、寒天板において30~35℃で5日間にわたってインキュベートされ、その後、板はCFUについて検査された。
【0060】
試験方法5、生菌の計算
抗原投与の有機体の懸濁液の試料が、0.9%のNaClにおいて順次希釈された。希釈された懸濁液からの試料が寒天板に置かれ、30~35℃で1~2日間にわたってインキュベートされ、その後、板はCFUについて検査された。抗原投与の有機体の濃度は、試料採取された懸濁液において決定された。
【0061】
試験方法6、寒天板
クロマトグラフィー樹脂の試料が衛生化の後に取られ、30mlの融解寒天と混合された。
【0062】
1グラムの樹脂が無菌容器へと無菌で移送された。融解寒天は、容器へと無菌で追加され、均一に懸濁されることになるように樹脂と混合された。融解寒天の最大温度は45℃とされるべきである。懸濁液はペトリ皿へと移送されてペトリ皿において硬化させられた。板は30~35℃で5日間にわたってインキュベートされ、その後、板はCFUについて検査された。
【0063】
合格のための基準
・ 抗原投与の有機体の濃度は、適用された懸濁樹脂溶液において106CFU/mLより大きくなるべきである。
・ 5~6日間の洗浄保持が含まれる衛生化手順を完了した後に取られた液体試料(L-T)は、抗原投与の有機体を含む汚染有機体の10CFU/10mLの最大濃度を有する。研究2および3においてハードウェアで取られた試料からの結果は考慮されない。
・ 液体試料(L-T)が不合格(0CFU/10mL)である場合、研究2および3において、つまり5つの試料において、ハードウェアで取られた試料の最大10%が、抗原投与の有機体を含む有機体で汚染されると許容される。
【0064】
結果
Table 1(表1)は、試料採取位置、液体試料、および対照試料を含む衛生化研究1~3からの結果を提示している。発見された汚染物は、表における第1列において名前によって提示されている。試料採取位置は、文字または図で指示されており、
図4~
図10において視覚的に提示されている。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
設計検討
衛生化研究が開始する前、移動可能アダプタ設計のある特定の部品が、洗浄するのをより困難にさせると考えられていた。これは、上床支持体とカラム管との間に形成される死領域である。この設計上の危険は、移動可能アダプタを伴うプロセスカラムについて一般的である。この衛生化研究の重要な特徴は、第1に、均一な樹脂スラリーが抗原投与の有機体で植菌されてからカラムに充填されることである。これは、カラムのすべての重要な部品がP.aの大きな濃度で抗原投与されることを確実にしている。より簡単な研究では、抗原投与の有機体は、カラムが充填された後に移動相を通じて適用されており、したがって、例えば死領域が適切に抗原投与されたかどうかが不明確である。
【0073】
衛生化研究
3つの衛生化研究が実施された。最後の研究だけが、完全であり、述べられた合格基準に対して承認されると見なされた。最初の研究はすべての基準を満たさなかった。第2の研究は、カラムが正確に抗原投与されたことを示すという目的を伴う対照試料を欠いている。Table 1(表1)においてGで指示されているこの試料は、カラムが106から107の範囲における予測値の代わりに0CFU/mLで抗原投与されたことを示している。この結果についてのもっともあり得る原因は、カラムへの最後の樹脂の追い込みの間のPAAの使用であり、これが、検知できないレベルへの抗原投与の有機体の濃度の低減をもたらしたことである。
【0074】
準備された汚染前の樹脂懸濁液における抗原投与の有機体の濃度は106~108CFU/mLの予測範囲にあった。終了した硬化(Table 1(表1)における試料G)の後に取られた陽性対照は、研究1および3における樹脂の適用の前と同じ範囲にあった。先に述べたように、研究2における対応する試料は、おそらくは20mMのPAAによる追い込みのため、0CFU/mLを示した。
【0075】
1.9CVの無菌水による濯ぎ(Table 1(表1)における試料J)は、抗原投与の有機体の濃度にlog3の良好な減少効果を示した。
【0076】
汚染物は研究1において多くの場所で見つけられた。床支持体鋼鉄環と下方掻き落としシールとの間の下方Oリングの表面を表す試料採取位置16において、抗原投与の有機体と同じ形態を有する汚染物が見つけられた。この試料採取位置はプロセス流と接触している。抗原投与の有機体は、他の有気体と共に、他の場所においても見つけられている。研究1は合格基準を満たさなかった。
【0077】
汚染物が研究2において4つの試料採取位置で見つけられ、それらのいずれも抗原投与の有機体ではなく、プロセス流と接触もしていない。研究は合格基準を満たしたが、陽性対照(Table 1(表1)における試料G)は抗原投与の有機体を示しておらず、この研究は、カラムおよび樹脂が衛生的にできることを証明するために使用できない。
【0078】
研究3では、抗原投与の有機体は発見されていない。プロセス流と接触していない2つの他の汚染物だけが見つけられた(Table 1(表1)における試料3および27)。樹脂に位置させられた試料3における汚染物は、人の皮膚において一般的なグラム陽性球菌であるミクロコッカス・ルテウス/ライレであった。試料はLAFの外部で取られて一部取り扱われており、これはこの試料について必要であった。試料は、この理由のために汚染されることになるより高い危険性をもたらした。試料27における汚染物は、試料3においてと同じ有機体であり、外側鋼鉄環の上で見つけられた。この原因を見つけることは難しいが、もっともあり得る理由は、作業者による取り扱いであり得る。しかしながら、この研究は合格基準を満たしており、そのため承認された。
【0079】
すべての3つの研究において取られた空気試料は、衛生試験場における7~59CFU/m3の間の通常のレベルの空中微生物の負荷を示している。これは、実験的な手順が、衛生的な実施および無菌の実施となるときに良好なレベルで実行されたことと、空中微生物による試料の汚染の危険が低かったこととを示している。
【0080】
Table 1(表1)における対照試料74~82は、材料および手順が研究を損なわせる危険をもたらさなかったことを示している。
【0081】
研究全体の間、衛生化の方法は異なる実施の間に改善させられた。研究1からの微生物試料採取の結果は、抗原投与の有機体が、樹脂弁に関連する領域、洗い流し通路、および、アダプタとカラム管との間の死領域において見つけられたため、見直される必要があったことを示している。
【0082】
第2の研究の前に、一部の追加の実験が、AxiChrom 300カラムに、リボフラビンと混合された樹脂を充填することで実施された。この実験からの結果は、PAA処理の間の2回のアダプタストロークが、液体がアダプタとカラム管との間の死領域において交換される機会を増加させることができるという結論を導いている。
【0083】
樹脂弁に伴う問題は、抗原投与の有機体がピストンと封止部Oリングとの間で動けなくなるため、もっとも起こりやすかった。ピストンが充填物の端において閉じたとき、植菌されたスラリーの一部は動けなくなるため、樹脂弁の残りの部分が20mAのPAAで濯がれて満たされるが、洗浄させることができない。
【0084】
洗い流し通路に関連する汚染物質の問題は、研究が古いカラム管を伴うカラムで実施されたという事実のためであり得る。アクリル管に小さな傷がある場合、特にアダプタが移動している間に、プロセス室からの液体が洗い流し通路へと入る危険性がある。
【0085】
これらの結論は、研究2において使用された方法に3つの主要な変更をもたらした。
【0086】
第1に、抗原投与の有機体がピストンと封止部のOリングとの間で捕獲されるのを回避するために、スラリーがカラムの充填の終わりにおいて20mMのPAAで追い込まれた。さらに、洗い流し通路が100mMのPAAで充填されており、これはほとんどの汚染物質をほとんど瞬間的に殺すはずである。方法は、床のPAA処理の間にアダプタによる2回のストロークを含むようにも変更された。
【0087】
最後の研究の実行3において、第2の研究と比較しての主な変更は、充填の間のスラリーの追い込みがPAAの代わりに50mMのNaClで行われたことであった。ピストンと封止部のOリングとの間の汚染物質の捕獲の潜在的な問題は、アダプタの第2のストロークの間に樹脂弁ピストンを開けて閉じることで解決された。この段階で、ピストンおよびそのOリングの両側に20mMのPAAがあり、ピストンが開くと、捕獲されていた汚染物質は20mMのPAAに曝されることになる。
【0088】
方法のこれらの繰り返しは、研究3の成功裏の結果を最終的にもたらすことになる。
【0089】
方法の検討/改良
この報告に記載された衛生化の研究は、例えば、AxiChromカラムにおけるMabSelect/MabSelect SuRe、または移動可能アダプタを伴う他のカラムを衛生化することができる方法の開発に主に集中した。衛生化の方法を行った後の充填床の安定性も重要な因子である。アダプタが持ち上げられて床へと数回にわたって充填されるという事実は、床の完全性にある程度まで影響を与える可能性がある。これが問題である場合、救済措置は、カラムの内側の床を流体化し、それを初期の床高さへと充填することであり得る。異なる樹脂が、非常に有望な結果を伴う流体化技術を用いて評価されており、床は安定すると証明されている。この情報に基づいて、推薦されることは、床が衛生化されてPWで平衡とされた後、洗い流し通路を100mMのPAAで満たしてからアダプタを上向きに移動させ、カラムの内側で流体化を実施し、続いて、再充填のために硬化および圧縮することである。圧縮は、カラム効率を十分に回復させるために、衛生化の前の圧縮と比較して、0.02~0.03%など、最大で0.04%まで適切に増加させることができる。
【0090】
最後の研究で使用された方法の概略的な図が
図12において見られる。方法のより大まかな記載については、
図11を参照されたい。
【0091】
方法の図示は、方法がステップ202における充填床で始まり、したがって、方法は、新たな樹脂を、初めて充填するとき、または、すでに生産しているカラムのために充填するときの両方で使用できる。
【0092】
衛生化方法の進展の間、方法のすべてのステップを十分に最適化する十分な時間がなかった。速度を高めることでPAAとの接触時間はおそらく短くされることになるが、より高い床高さは非常に大きな流れの速度に耐えられないことも頭に入れておかなければならない。異なるステップにおける最適化のいくつかの提案は、以下のようになり得る。
【0093】
ステップ308において、樹脂について特定される最大に近い流速において水で濯ぐ。
【0094】
ステップ310において、流速を増加させる、および/または、PAAが充填床へと押される時間/距離を低下させる。
【0095】
ステップ312において、アダプタを、ステップ310および312において使用される流速より低い速度で上昇させる。アダプタが上昇させられる距離もおそらく短縮させられ得る。
【0096】
ステップ314では、より素早くではあるが、死領域における濯ぎが重力によって落ちる時間があるだけの遅さで、アダプタを、ステップ308においてと同じ床高さへ下降させる。アダプタ距離がステップ312において短縮される場合、ステップ314におけるアダプタ速度も変化する必要があり得る。
【0097】
ステップ316では、好ましくは、ステップ310に関してと同じ速度を使用する。このステップが実施されるとき、好ましくは、PAAは床全体に押し通されるべきである。
【0098】
ステップ208では、流れが止められていることを確認し、次に樹脂弁を開いて閉じる。弁を1回開いて閉じるだけで、ピストンと、ピストンが当たって封止するOリングとの間でPAAを得るのには十分であると考えられる。代替で、ステップは少なくとも1回繰り返され得る。
【0099】
ステップ312が繰り返される場合、好ましくは、第1の例と同じ速度を使用し、流速がアダプタを上向きに移動させる前に十分に速いことを確認する。
【0100】
ステップ314が繰り返されるとき、アダプタを、好ましくは第1の例と同じ速度で下降させる。ステップ318の後で床の流体化を実施することなく、安定した床を得ようとする場合、最終的な床高さは、ステップ306の床高さとおそらくは異なるはずである。床が先のステップで繰り返しの充填および膨張に曝されたため、ビーズはおそらくより密に充填されることになり、そのためステップ314における床高さはステップ306における床高さより若干低くなるはずである。
【0101】
ステップ316において、PAAとの接触時間を得るために流速を調節する(20mMのPAAについては40分間)。より高い床高さがより低い速度を許容することを頭に入れ、PAA溶液についての粘度を考慮する(MabSelect SuReは20cmの床高さにおいて水で500cm/hである)。
【0102】
ステップ310~316をまとめるとき、ステップ316と318との間で、PAAとの接触時間が短すぎた場合には、中断を含める。
【0103】
ステップ318において、樹脂について特定される最大に近い流速において水で濯ぐが、充填床にすでにあるPAA溶液についての粘度を考慮する。
【0104】
研究3における衛生化方法は、20mMのPAAを衛生化薬品として使用して、10cmの床を伴うAxiChrom 300カラムにおける充填の間、緑膿菌で抗原投与されたMabSelect SuRe樹脂を効率的に衛生化するために使用できる。生菌の計算の試験からの結果(試料CおよびG、Table 1(表1))は、試料採取(Table 1(表1))からの結果と共に、抗原投与の有機体および他の汚染物の数が所定の汚染レベルから、述べられた合格基準における汚染レベル未満のレベルまで低減されたことを示している。
【0105】
ここでの記載は、最良のモードを含む本発明を開示するために、ならびに、任意の装置またはシステムを製作および使用することと、組み込まれている方法を実施することとを含め、当業者に本発明を実施させるために、例を用いている。本発明の特許可能な範囲は、請求項によって定められており、当業者の思い付く他の例を含む可能性がある。このような他の例は、請求項の文言と異ならない構造的な要素を有する場合、または、請求項の文言と非実質的な違いを伴う等価の構造的要素を含む場合、請求項の範囲内にあるように意図されている。文書において言及されたすべての特許および特許出願は、本明細書によって、あたかも個々に組み込まれているかのように、それらの全体において参照により組み込まれている。
【符号の説明】
【0106】
1 バイオプロセス用クロマトグラフィーカラム
2 移動可能アダプタ
4 分離樹脂の充填床
6 カラム管
8 上方多孔性床支持体
10 下方多孔性床支持体
12 カラム底
14 封止部
15 カラム蓋
16 上方弁組立体
17 上方移動相入口/出口
18 下方移動相出口/入口
20 アダプタロッド
22 電気モータ、アクチュエータ
24、26 樹脂入口/出口
28 ノズル
30 樹脂弁
32、112、118 Oリング
34、114、116 掻き落とし環
36 内側
40 封止部
42 底端
44、46、48 Oリング
50 中心ネジ
52 Oリング
54 TC連結器
56 入口/出口室
58 Oリング
60 ピストン
62 ピストン先端
64 Oリング
136 液体分配器
146 液体分配器