(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20241007BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241007BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20241007BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G02B30/56
G09F9/00 358
G09F9/00 313
G06F3/041 580
G06F3/044 120
(21)【出願番号】P 2021052706
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】安次嶺 勉成
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-139533(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042830(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0188550(US,A1)
【文献】特表平09-506717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射を利用して空中に映像を表示可能な表示装置であって、
空中の映像の原映像を含む透明な導光板と、
前記導光板の側部から前記導光板内に向けて光を出射する光源と、
前記導光板と平行にかつ前記導光板の上方に配置された偏光ビームスプリッターと、
前記導光板の下方に配置されたλ/4板と、
前記導光板と平行にかつ前記λ/4板の下方に配置された再帰反射部材と、
前記導光板の原映像と前記偏光ビームスプリッターとの間に設けられた偏光部材とを含み、
当該偏光部材は、前記原映像で反射された光が前記偏光ビームスプリッターを透過するのを抑制し、前記原映像を再帰反射させて映像を空中に表示する表示装置。
【請求項2】
前記偏光部材は、前記原映像の平面形状と同一または相似形状を有する、請求項
1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記原映像は、前記導光板の底部に形成され、前記原映像と空中の像とは、前記偏光ビームスプリッターの面に関して対称の位置である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし
3いずれか1つに記載の表示装置と、
前記表示装置により表示された空中の映像への物体の近接を検出する検出手段と、
を含む空間入力装置。
【請求項5】
前記
検出手段は、静電容量型センサを含む、請求項
4に記載の空間入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、再帰反射を利用して画像を空中に表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイに表示された画像を、再帰反射部材等を用いて空中に結像させる空中ディスプレイが提案されている。例えば、特許文献1の表示装置は、空中に形成される像をより広い角度から観察可能とするため、2つの再帰反射部材を用い、その一方の再帰反射部材を光源の出射軸上に配置している。特許文献2の画像表示装置は、画像の結像位置の調整を容易にするため、ハーフミラー、再帰反射部材、および画像出力装置をそれぞれ平行に配置し、ハーフミラーまたは画像出力装置の位置を変更し結像位置を調整可能にしている。特許文献3の画像表示装置は、画像の視認性の低下を抑制するため、光が位相差部材(λ/4板)を透過する回数を低減し、かつ再帰反射部材と位相差部材との間に埃などが入り込み難くしている。特許文献4の空中映像表示装置は、装置の薄型化を図るため、ビームスプリッターに対しディスプレイおよび再帰反射部材を平行に配置し、ディスプレイ上に偏向光学素子を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-107165号公報
【文献】特開2018-81138号公報
【文献】特開2019-66833号公報
【文献】特開2019-10155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1(A)に、従来の再帰反射を用いた表示装置の概略断面を示す。同図に示すように、表示装置10は、画像を出力するディスプレイ20と、ビームスプリッター30と、再帰反射部材40とを含む。ディスプレイ20から出射された光は、ビームスプリッター30で反射され、その反射光が再帰反射部材40へ進む。再帰反射部材40は、入射光と同じ方向に光を反射し、その反射した光がビームスプリッター30を透過し、観察者の目の前の空間に空中像50が表示される。このような空中像50の表示は、AIRR(Aerial Imaging by Retro-Reflection)方式として知られている。
【0005】
図1(B)は、AIRR方式を利用した表示装置の模式的な外観図である。表示装置10は、例えば、図示するような直方体状のハウジング60を有し、ハウジング60の表面にビームスプリッター30を配置し、ハウジング60の内部にディスプレイ20および再帰反射部材40を配置する。ハウジング60は、ディスプレイ20および再帰反射部材40を傾斜させるための内部空間を必要とするため、ハウジング60の厚みTが大きくなってしまう。
【0006】
また、観察者が観察することができる空中像50は、観察者が再帰反射部材40を見ることができる範囲に限られる。つまり、観察者の視野角内に再帰反射部材40が存在しなければならない。
図1(B)を例にすると、空中像50を観察することができる視野角θは、空中像50の正面を基準に左右に±10度ぐらいであり、視野角が狭いという課題がある。
【0007】
さらに、空中像50は、ビームスプリッター30の面に関しディスプレイ20と対称の位置に形成される。ディスプレイ20がビームスプリッター30に対し概ね45度で傾斜されている場合、観察者が観察する空中像50は、ディスプレイ20の映像を正面から見るのではなく、45度の斜め方向から見た映像になってしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決し、薄型化、小型化および広視野を図り、かつ光源の映像を正面視することができる表示装置およびこれを用いた空間入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る表示装置は、再帰反射を利用して空中に映像を表示可能なものであって、空中の映像の原映像を含む透明な導光板と、前記導光板の側部から前記導光板内に向けて光を出射する光源と、前記導光板と平行にかつ前記導光板の上方に配置された偏光ビームスプリッターと、前記導光板の下方に配置されたλ/4板と、前記導光板と平行にかつ前記λ/4板の下方に配置された再帰反射部材とを有し、前記原映像を再帰反射させて映像を空中に表示する。
【0010】
ある態様では、表示装置はさらに、前記導光板の原映像と前記偏光ビームスプリッターとの間に設けられた偏光部材を含み、当該偏光部材は、前記原映像で反射された光が前記偏光ビームスプリッターを透過するのを抑制する。ある態様では、前記偏光部材は、前記原映像の平面形状と同一または相似形状を有する。ある態様では、前記原映像は、前記導光板の底部に形成され、前記原映像と空中の像とは、前記偏光ビームスプリッターの面に関して対称の位置である。
【0011】
本発明に係る空間入力装置は、上記記載の表示装置と、前記表示装置により表示された空中の映像への物体の近接を検出する検出手段とを含む。ある態様では、前記入力手段は、静電容量型センサを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空中像の原映像が形成された透明な導光板の側部から光を出射し、導光板と平行にその下方に配置された再帰反射部材の再帰反射により原映像の空中の映像を表示するようにしたので、表示装置の小型化、薄型化を図ることができ、かつ観察者は、広い視野角で原映像を正面視した空中の映像を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(A)は、従来のAIRR方式の表示装置の概略断面図、
図1(B)は、従来の表示装置の模式的な外観図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係る表示装置の概略断面を示す図である。
【
図3】本発明の実施例に係る表示装置の模式的な外観図である。
【
図4】本発明の第2の実施例に係る表示装置の概略断面を示す図である。
【
図5】本発明の第3の実施例に係る空間入力装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明の表示装置は、特殊なメガネ等をかけなくても3次元空間内に再帰反射を用いた映像を表示する。ある態様では、本発明の表示装置は、空中に表示された映像を利用したユーザー入力インターフェースに適用される。なお、以下の実施例の説明で参照される図面は、発明の理解を容易にするために誇大した表示を含んでおり、実際の製品の形状やスケールをそのまま表したものではないことに留意すべきである。
【実施例】
【0015】
次に、本発明の実施例について詳細に説明する。
図2は、本発明の実施例に係る表示装置の概略構成を示す断面図である。本実施例の表示装置100は、光源110、導光板120、偏光ビームスプリッター130、λ/4板140、再帰反射部材150、透明保護部材160を含んで構成される。これらの部材は、例えば、直方体状のハウジングや筐体等に収容される。
【0016】
光源110は、一定の出射角(または方射角)を持つ光LをX方向に向けて出射する。出射された光Lは、透明な導光板120の側部122から内部に入射され、導光板120の内部を一様に照射する。光源110は、特に限定されないが、例えば、発光ダイオードやレーザーダイオードなどが用いられる。もし、導光板110の側部122がY方向に一定の長さを有する場合には、導光板120の側部122のY方向に沿うように複数の光源110が配置されるようにしてもよい。ここでは、導光板120の一方の側部から光を入射しているが、複数の側部から光を入射するようにしてもよい。
【0017】
導光板120は、平坦な上面、平坦な下面および上面と下面とを接続する側面とを備えた透明な板状の光学部材である。導光板120は、公知のものを用いることができ、例えば、アクリル製のプラスチック板、ポリカーボネート樹脂、あるいはシクロオレフィン系樹脂などから構成される。導光板120は、光源110の光Lを側部122から入射するためにZ方向に一定の厚さを有する。導光板120の底部または底面124には、入射した光を拡散するための拡散パターンが形成されるようにしても良く、例えば、レーザー加工によるドットパターンや印刷によりドットパターンが形成される。こうして、導光板120の側部122から入射した光Lは、導光板120の底部124の拡散パターンにより拡散または散乱し、導光板120は、あたかも面光源のように機能する。
【0018】
導光板120の底部または底面124にはさらに、空中像の原映像P1として導光板像126が形成される。導光板像126の形成方法は特に限定されないが、例えば、レーザー加工、エンボス加工、印刷加工などによって底部124に溝や凹凸などの2次元的な像が形成される。導光板120の側部から光Lが入射されると、導光板像126によって光Lが反射され、2次元的な原映像P1が生成される。なお、導光板像126の輝度をより大きくしたい場合には、導光板像126以外の領域の底部124の拡散または散乱の度合を小さくするようにしてもよい。
【0019】
導光板120の上部には、導光板120と平行に偏光ビームスプリッター130が配置される。偏光ビームスプリッター130は、入射光をp偏光成分とs偏光成分とに分割することができる偏光分離素子であり、ある特定の方向に直線偏光された光成分を透過することができる。仮に、光源110から入射された光Lが種々の偏光成分を含む無偏光の光であるとき、導光板120の底部124や導光板像126で反射された光L1の一部が偏光ビームスプリッター130を透過し、それ以外の大部分の光L2が偏光ビームスプリッター130によって反射される。もし、光源110から入射された光Lが直線偏光である場合には、偏光ビームスプリッター130が透過する直線偏光の方向を、入射光Lの直線偏光の方向と異なるように設定し、光L1の大部分が偏光ビームスプリッター130で反射されるようにする。
【0020】
λ/4板140は、導光板120の下方にこれと平行に配置される。λ/4板140は、導光板120から出射された光L2を入射し、この入射光L2に位相差π/2(90度)を与えて透過させる。例えば、直線偏光の光が入射されれば、これは円偏光(または楕円偏光)に変換され、円偏光(または楕円偏光)が入射されれば、直線偏光に変換される。
【0021】
再帰反射部材150は、λ/4板140の下方にこれと平行に配置される。再帰反射部材150は、λ/4板140を透過した光L2を入射光と同じ方向に光L3を反射する。再帰反射部材150は、入射方向と同じ方向に光を反射することができれば、その構造や材質は特に限定されない。再帰反射部材150は、例えば、三角錐型再帰反射素子、フルキューブコーナー型再帰反射素子などのプリズム型再帰反射素子やビーズ型再帰反射素子によって構成される。
【0022】
再帰反射部材150で反射された光L3は、再び、λ/4板140を透過するとき、位相差π/2を与えられる。このため、λ/4板140を透過した光L3は、λ/4板140に入射したときの光L2と位相差πを有する。例えば、λ/4板140に入射した光が直線偏光であれば、λ/4板140を透過したとき円偏光(または楕円偏光)となり、この円偏光は、再帰反射部材150で奇数回再帰反射されたとき、逆方向の円偏光となり、この逆方向の円偏光がλ/4板140を透過したとき、元の直線偏光とは180度異なる方向の直線偏光となる。こうして、λ/4板140を透過した光L3が偏光ビームスプリッター130に入射されると、光L3の大部分が偏光ビームスプリッター130を透過する。
【0023】
偏光ビームスプリッター130の上部には透明保護部材160が配置される。透明保護部材160は、例えば、ガラス材やプラスチック材などから構成される。透明保護部材160は、偏光ビームスプリッター130の表面を保護するものであり、その配置は任意である。透明保護部材160を透過した光L3が空中で結像し、観察者は、視点Uの目の前に空中像170を観察することができる。空中像170は、導光板像126の原映像P1をそのままの姿勢で上方に浮かび上がらせた映像P2となる。つまり、偏光ビームスプリッター130の面に関し導光板像126と対称の位置に空中像170が表示され、観察者は、原映像P1の正面視である映像P2を見ることができる。
【0024】
図3は、本実施例の表示装置の模式的な外観斜視図である。表示装置100は、例えば、直方体状のハウジング180の表面に透明保護部材160を配置し、内部に光源110、導光板120、偏光ビームスプリッター130、λ/4板140、再帰反射部材150を収容する。従来の表示装置のように再帰反射部材を傾斜させず、再帰反射部材150を導光板120、偏光ビームスプリッター130、λ/4板140に平行に配置させるため、ハウジング180のZ方向の厚さTaを薄くすることができる。また、光源110を導光板120の側部に配置させるため、これもハウジング180の薄型化に寄与する。さらに、再帰反射部材150をX方向に水平に配置しているため、観察者の視点Uから再帰反射部材150を観察することができるX方向の範囲が広がるため、空中像170を見ることができるX方向の視野角θaを大きくすることができる。本実施例の視野角θaは、従来の
図1に示す表示装置10の視野角θの少なくとも2倍である。同様に、視点Uから再帰反射部材150を見ることができるY方向の範囲も広がるのでY方向の視野角も広がる。
【0025】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、導光板像126で反射された光L1の一部の成分が偏光ビームスプリッター130を透過するため、観察者には、その透過光による原映像P1と再帰反射による空中像170の映像P2との双方が二重に見えてしまう。そこで、第2の実施例では、偏光ビームスプリッター130を透過する光による原映像P1を見えなくする。
【0026】
図4は、第2の実施例による表示装置100Aの断面構造を示す図であり、
図2と同一構成については同一参照番号を附してある。第2の実施例は、導光板像126と同一もしくは相似形状の偏光部材(例えば、偏光板または偏光フィルム)190を、導光板像126と偏光ビームスプリッター130との間に配置する。例えば、偏光部材190は、図に示すように導光板120の上部に配置される。偏光部材190は、導光板像126の反射光L1が偏光ビームスプリッター130を透過するのを抑制する。例えば、偏光部材190は、偏光ビームスプリッター130が透過する直線偏光の方向と異なる方向の光を透過するようにする。
【0027】
このように本実施例によれば、導光板像126と偏光ビームスプリッター130との間に、導光板像126の反射光L1が偏光ビームスプリッター130を透過するのを抑制するための偏光部材190を設けたことにより、観察者には、原映像P1が見えないようになり、空中像170のコントラストや視認性を向上することができる。
【0028】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3の実施例は、第1または第2の実施例の表示装置をユーザー入力インターフェースに適用した空間入力装置に関する。
図5は、第3の実施例に係る空間入力装置の概略構成を示す図である。空間入力装置200は、空中像170への物体(例えば、ユーザーの指など)を検出するセンサ200と、センサ200からの検出結果を受け取り、種々の制御を行うコントローラ210とを含んで構成される。
【0029】
センサ200は、空中像170を透過可能であれば特に限定されないが、例えば、非接触型の静電容量型センサを用いることができる。この場合、
図2に示した透明保護部材160を静電容量型センサに置換するようにしてもよい。静電容量型センサは、静電容量型タッチパネルのように、ユーザーの指などの導体が近接した領域の静電容量の変化を検出する。図示するように、ユーザーが指Fを空中像170にかざしたとき、静電容量型センサ200は、空中像170への指の近接を検出し、検出結果をコントローラ210へ出力する。これにより、ユーザーは非接触での入力を行うことができる。例えば、不特定の人がタッチするような入力ボタンと比べて清潔で衛生的な入力を実現することができる。
【0030】
本実施例の空間入力装置200は、あらゆるユーザー入力に適用することができ、例えば、コンピュータ装置、車載用電子機器、銀行等のATM、駅等のチケットの購入機、エレベータの入力ボタンなどに適用することができる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
100:表示装置 110:光源
120:導光板 122:側部
124:底部 126:導光板像
130:偏光ビームスプリッター 140:λ/4板
150:再帰反射部材 160:透明保護部材
170:空中像 180:ハウジング
190:偏光部材