(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6471 20110101AFI20241007BHJP
【FI】
H01R13/6471
(21)【出願番号】P 2021202375
(22)【出願日】2021-12-14
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】玉井 暢洋
(72)【発明者】
【氏名】菅原 学史
(72)【発明者】
【氏名】山田 彰太
(72)【発明者】
【氏名】成 星宇
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-060655(JP,A)
【文献】特開2017-224389(JP,A)
【文献】特開2016-115487(JP,A)
【文献】特開2010-272468(JP,A)
【文献】米国特許第10297966(US,B1)
【文献】中国実用新案第214099995(CN,U)
【文献】特開2016-152145(JP,A)
【文献】特開2018-067544(JP,A)
【文献】特開平09-330770(JP,A)
【文献】特開2018-010724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0313721(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 13/56-13/72
H01R 24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の複数の信号伝送路と、
前記複数の信号伝送路を保持する電気絶縁体製の板状の保持部材と、
前記保持部材の板厚方向における前記保持部材の一方の側に設けられた金属製の第一グランド部材及び他方の側に設けられた金属製の第二グランド部材とを有する電気コネクタにおいて、
前記保持部材は、前記保持部材の板面に沿った方向に配列された前記複数の信号伝送路から成る信号伝送路列を前記第一グランド部材及び前記第二グランド部材とともに保持しており、隣接する前記信号伝送路の間の位置で
前記保持部材を前記板厚方向に貫通する貫通部を有し、
前記第一グランド部材は、前記保持部材の一方の側の板面に直接取り付けられており、前記貫通部に対応する位置に、前記第一グランド部材を前記板厚方向に貫通し前記貫通部と連通する第一グランド貫通孔部又は第一グランド切欠部が形成されており、
前記第二グランド部材は、前記保持部材の他方の側の板面に直接取り付けられており、前記貫通部に対応する位置に、前記第二グランド部材を前記板厚方向に貫通し前記貫通部と連通する第二グランド貫通孔部又は第二グランド切欠部が形成されており、
前記電気コネクタは、前記第一グランド部材及び前記第二グランド部材に一体成形された状態で設けられた導電性樹脂製の短絡部材を有し、
前記短絡部材は、前記第一グランド部材側に位置し前記第一グランド部材に接触する第一基部と、前記第二グランド部材側に位置し前記第二グランド部材に接触する第二基部と、前記貫通部内に位置し前記第一基部と前記第二基部とを連結する連結部とを有し、
前記第一基部は、前記第一グランド貫通孔部内又は前記第一グランド切欠部内に位置しており、
前記第二基部は、前記第二グランド貫通孔部内又は前記第二グランド切欠部内に位置しており、
前記連結部は、前記第一基部と前記第二基部とを連結していることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記短絡部材は、前記信号伝送路の配列方向における複数位置に前記第一基部、第二基部及び前記連結部を有しているとともに、前記第一グランド部材及び前記第二グランド部材に沿って前記配列方向に延び前記複数位置の前記第一基部同士及び前記第二基部同士を連繋する連繋部を有していることとする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記連繋部は、前記第一グランド部材及び前記第二グランド部材のそれぞれに接面していることとする請求項2に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の信号端子が配列されている電気コネクタにおいて、隣接する信号端子同士のクロストーク(漏話)を防止するために、信号端子に沿ってグランド部材を配置することが知られている。例えば、特許文献1には、信号端子及びグランド端子が配列された複数のブレードを有する電気コネクタにおいて、各ブレードの両面にグランド板を設けることが開示されている。具体的には、各ブレードの端子列において、隣接する二つの信号端子から成るペア(ぺア信号端子)同士の間に一つのグランド端子が配置されており、ブレードの両面に配置されたグランド板がグランド端子と対応する位置で板厚方向に屈曲されてグランド端子に接触している。このような構成によれば、各ペア信号端子は、信号端子の長手方向に見たとき、グランド板及びグランド端子によって囲まれて遮蔽された状態となっており(特許文献1の
図5(A)参照)、その結果、ペア信号端子同士のクロストーク等が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においてグランド板及びグランド端子によってクロストーク等を確実に防止するためには、グランド板がグランド端子に隙間なく接面して、安定して電気的に導通することで、ペア信号端子とグランド板及びグランド端子との電気的な結合のバランスが良好に確保されていることが好ましい。しかし、特許文献1のように、グランド板の板面をグランド端子の板面に接面させる構成では、これらの板面の形状の影響を受けやすく、例えば、製造誤差等に起因してこれらの板面が若干歪んでいることにより両者間に隙間が生じているような場合、グランド板とグランド端子との安定した電気的導通状態を確保しにくくなる可能性があり、この点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑み、グランド部材同士の安定した電気的導通状態を良好に確保できる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気コネクタは、金属製の複数の信号伝送路と、前記複数の信号伝送路を保持する電気絶縁体製の板状の保持部材と、前記保持部材の板厚方向における前記保持部材の一方の側に設けられた金属製の第一グランド部材及び他方の側に設けられた金属製の第二グランド部材とを有する金属製の複数の信号伝送路と、前記複数の信号伝送路を保持する電気絶縁体製の板状の保持部材と、前記保持部材の板厚方向における前記保持部材の一方の側に設けられた金属製の第一グランド部材及び他方の側に設けられた金属製の第二グランド部材とを有する。
【0007】
かかる電気コネクタにおいて、本発明では、前記保持部材は、前記保持部材の板面に沿った方向に配列された前記複数の信号伝送路から成る信号伝送路列を前記第一グランド部材及び前記第二グランド部材とともに保持しており、隣接する前記信号伝送路の間の位置で前記板厚方向に貫通する貫通部を有し、前記電気コネクタは、前記第一グランド部材及び前記第二グランド部材に一体成形された状態で設けられた導電性樹脂製の短絡部材を有し、前記短絡部材は、前記第一グランド部材側に位置し前記第一グランド部材に接触する第一基部と、前記第二グランド部材側に位置し前記第二グランド部材に接触する第二基部と、前記貫通部内に位置し前記第一基部と前記第二基部とを連結する連結部とを有していることを特徴としている。
【0008】
本発明では、第一グランド部材と第二グランド部材とが短絡部材を介して短絡することで電気的に導通している。この短絡部材は、第一グランド部材及び第二グランド部材との一体成形(インサート成形)により形成される。したがって、コネクタ製造時にて、溶融した導電性樹脂材料を一体成形用の金型内に注入して固化するだけで、第一グランド部材に密着する第一基部と第二グランド部材に密着する第二基部とが連結部を介して一部材をなした構成を容易に得られる。このようにして一部材として成形された短絡部材は、第一基部、第二基部及び連結部が連続的に一体をなしている。したがって、短絡部材により短絡する第一グランド部材と第二グランド部材との安定した電気的導通状態を確保できる。
【0009】
本発明において、前記短絡部材は、前記信号伝送路の配列方向における複数位置に前記第一基部、第二基部及び前記連結部を有しているとともに、前記第一グランド部材及び前記第二グランド部材に沿って前記配列方向に延び前記複数位置の前記第一基部同士及び前記第二基部同士を連繋する連繋部を有していてもよい。
【0010】
このように保持部材の両側において、連繋部によって複数の第一基部同士及び第二基部同士を連結することで、これらの第一基部及び第二基部が連繋部を介して一体をなすので、短絡部材を介した第一グランド部材と第二グランド部材との電気的導通状態がさらに安定する。
【0011】
本発明において、前記連繋部は、前記第一グランド部材及び前記第二グランド部材のそれぞれに接面していてもよい。このように第一グランド部材及び第二グランド部材のそれぞれの板面に連繋部を接面させることにより、連繋部と第一グランド部材及び第二グランド部材との接触面積が大きくなるので、短絡部材を介した第一グランド部材と第二グランド部材との電気的導通状態がさらに安定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、導電性樹脂製の短絡部材が第一グランド部材及び第二グランド部材との一体成形により形成されることで、第一グランド部材に密着する第一基部と第二グランド部材に密着する第二基部とが連結部を介して一部材をなした構成を容易に得られる。この結果、短絡部材により短絡する第一グランド部材と第二グランド部材との安定した電気的導通状態を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る回路基板用電気コネクタを中継電気コネクタとともに示した斜視図であり、嵌合前の状態を示している。
【
図2】(A)は
図1の中継電気コネクタの中継回路基板を単体で示す斜視図であり、(B)は(A)の中継回路基板のペア導電パターンのみを示す正面図である。
【
図3】(A)
図1の回路基板用電気コネクタにおける一部の端子保持体を固定部材とともに示す斜視図であり、(B)は、(A)の端子保持体を単体で示す斜視図である。
【
図4】(A)は
図3(B)の短絡部材を省略して示した端子保持体の斜視図であり、(B)は
図3(B)の端子保持体の短絡部材のみを示す斜視図である。
【
図5】
図4(A)の端子保持体の各部材を分離して示した斜視図である。
【
図6】(A)は
図3(B)の端子保持体のVIA-VIA断面の一部を拡大して示した断面図であり、(B)は
図3(B)の端子保持体のVIB-VIB断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る回路基板用コネクタ2,3(以下、それぞれ「基板コネクタ2」、「基板コネクタ3」という)を中継電気コネクタ1(以下、「中継コネクタ1」という)とともに示した斜視図であり、嵌合前の状態を示している。本実施形態では、中継コネクタ1及び基板コネクタ2,3は高速差動信号を伝送する電気コネクタ組立体を構成する。基板コネクタ2,3は、それぞれ異なる回路基板(
図3(A)参照)上に配される回路基板用電気コネクタであり、各回路基板の面が上下方向、換言するとコネクタ高さ方向(Z軸方向)に対して直角をなす姿勢で中継コネクタ1に嵌合される。具体的には、中継コネクタ1に対して上方(Z1側)から基板コネクタ2が嵌合され、下方(Z2側)から基板コネクタ3が嵌合接続されることにより、基板コネクタ2,3同士が中継コネクタ1を介して電気的に接続される。本実施形態では、基板コネクタ2,3は、全く同じ形状をなす電気コネクタとして構成されている。
【0016】
中継コネクタ1は、
図1に見られるように、複数の中継回路基板20(
図2(A)も参照)と、複数の中継回路基板20をその板厚方向(X軸方向)で所定間隔をもって配列して支持する樹脂等の電気絶縁材製のハウジング10と、後述の二つの金属板製の連結部材30とを有している。
【0017】
ハウジング10は、中継回路基板20の配列方向(X軸方向)を長手方向(以下、「コネクタ長さ方向」という)とする略直方体外形をなしている。ハウジング10は、中継回路基板20の上側部分を支持する上側ハウジング11と、中継回路基板20の下側部分を支持する下側ハウジング12とを有している。上側ハウジング11と下側ハウジング12とは連結部材30を介して連結されている。
【0018】
上側ハウジング11は、上方から見て四角枠状をなし複数の中継回路基板20を包囲する周壁11Aと、複数の中継回路基板20をコネクタ長さ方向(X軸方向)で所定間隔をもって位置させるための複数の中間壁(図示せず)とを有している。周壁11Aは、コネクタ長さ方向(X軸方向)に延びる二つの側壁11Bと、コネクタ長さ方向に対して直角なコネクタ幅方向(Y軸方向)に延び上記二つの側壁11Bの端部同士を連結する二つの端壁11Cとを有している。中間壁は、周壁11Aに囲まれた空間内にて、コネクタ長さ方向に対して直角な板面をもつ板状をなして二つの側壁11Bの内壁面同士を連結しており、コネクタ長さ方向で所定間隔をもって配列形成されている。
【0019】
隣接する中間壁同士の間あるいは中間壁と端壁11Cとの間で上下方向に貫通して形成されるスリット状の空間は、中継回路基板20の上側部分を収容するための基板収容空間(図示せず)をなしている。また、側壁11Bの内側面には、連結部材30の後述の上側係止片(図示せず)と係止可能な段部である上側係止段部(図示せず)が、コネクタ長さ方向(X軸方向)で所定間隔をもって複数形成されている。
【0020】
周壁11Aは、中間壁の上端よりも上方に延びている。この上方に延びた部分に囲まれる空間、すなわち上方に開口するとともに上記基板収容空間と連通する空間は、基板コネクタ2を上方から受け入れるための上側受入部11Dとして形成されている。基板収容空間内に中継回路基板20が収容された状態では、
図1に見られるように、中継回路基板20の上端側部分が基板収容空間の上端開口から突出し、上側受入部11D内に位置している。
【0021】
下側ハウジング12は、既述した上側ハウジング11と同形状をなしており、上側ハウジング11に対して上下対称となる姿勢で設けられており、スリット状の基板収容空間(図示せず)で中継回路基板20の下側部分を収容している。下側ハウジング12において上側ハウジング11の各部と対応する部分には、上側ハウジング11における符号に「1」を加えた符号を付し、また、下側ハウジング12の各部名称については、上側ハウジング11の各部名称における「上側」を「下側」と読み替えることにより、下側ハウジング12の説明を省略する。
【0022】
連結部材30は、金属板部材を打ち抜くとともに部分的に屈曲して作られている。連結部材30は、コネクタ長さ方向(X軸方向)を長手方向として中継回路基板20の配列範囲にわたって延び、その板厚方向がコネクタ幅方向(Y軸方向)に一致した姿勢で、コネクタ幅方向での中継回路基板20の両側に一つずつ設けられている。連結部材30の上端側には、コネクタ長さ方向で上側ハウジング11の上側係止段部(図示せず)に対応する位置に、上側係止段部に対して上下方向(Z軸方向)で係止する上側係止片(図示せず)が、連結部材30の一部を切り起こして形成されている。連結部材30の下端側には、上側係止片(図示せず)と同様に、下側ハウジング12の下側係止段部(図示せず)に上下方向(Z軸方向)で係止する下側係止片(図示せず)が設けられている。
【0023】
図2(A)は中継回路基板20を単体で示す斜視図であり、
図2(B)は
図2(A)の中継回路基板のペア導電パターンのみを示す正面図である。中継回路基板20は、
図2(A)に示されるように、樹脂等の電気絶縁材製の基材21と、基材21に形成された信号伝送路としてのペア伝送路をなす導電パターン(後述するペア導電パターン22,24)と、ペア導電パターン22,24同士間に位置する複数のグランドビア(図示せず)と、基材21の両方の板面(板厚方向(X軸方向)に対して直角な面)を覆うように形成されたグランド層27,28(後述する第一グランド層27及び第二グランド層28)とを有している。
【0024】
基材21には、
図2(A)に見られるように、上下方向に延びる両側端縁の中央寄り位置に二つの被支持突部21Aが突出形成されており、この被支持突部21Aでハウジング10に支持されるようになっている。また、基材21には、帯状をなして上下方向に延びる複数の導電パターンがコネクタ幅方向(Y軸方向)に配列されて形成されている(
図2(B)参照)。複数の導電パターンは、ペア伝送路としてのペア導電パターン22,24を有している。ペア導電パターン22,24は、ストレートペア22とクロスペア24の二種のペアを有している。本実施形態では、
図2(B)に見られるように、ストレートペア22とクロスペア24とがコネクタ幅方向(Y軸方向)で交互に配置されている。
【0025】
ストレートペア22は、上下方向で一端側から他端側までの全範囲にわたり互いに間隔をもって延びる一対のストレートパターン23を有している。一対のストレートパターン23は、基材21の板厚方向(
図2(B)にて紙面に直角なX軸方向)に見たとき、互いに左右対称でかつ上下対称な形状をなしている。ストレートパターン23は、基板コネクタ2,3との接続のための信号接続部23Aと、上下方向に分割されて延びる複数の細条部23Bと、基材21の板厚内を板厚方向(X軸方向)に延びる複数の信号用ビア(図示せず)とを有している。
【0026】
信号接続部23Aは、
図2(B)に見られるように、ストレートパターン23の上下方向の両端部に位置し、
図2(A)に見られるように、基材21のX2側の板面から露呈している。本実施形態では、細条部23Bは、基材21の板厚内で二層にわたって形成されている。具体的には、細条部23Bは、
図2(B)に見られるように、上下方向にて分割された三つの部分に分かれており、上側範囲及び下側範囲のそれぞれに位置する長細条部23B-1と、中間範囲に位置する短細条部23B-2を有している。
【0027】
本実施形態では、二つの長細条部23B-1は、基材21の板厚方向(
図2(B)にて紙面に直角なX軸方向)でX2側(
図2(B)にて手前側)に位置する層に形成されており、短細条部23B-2は、X1側(
図2(B)にて奥側)に位置する層に形成されている。
【0028】
信号用ビア(図示せず)は、細条部23Bの上述した三つの部分のそれぞれにおける上下方向での両端部の位置で、円柱状をなして基材21の板厚方向(X軸方向)に延びている。信号用ビアは、細条部23Bの上記三つの部分同士、また、細条部23Bの上端部及び下端部と信号接続部23Aとを連結して電気的に接続している。その結果、信号接続部23A、細条部23B及び信号用ビアによって一つのストレートパターン23が形成されている。
【0029】
本実施形態では、上述のように、二つの層にわたって延びる信号用ビアをストレートパターン23に含むことにより、ストレートパターン23における信号伝送経路の長さがクロスペア24の後述するクロスパターン25における信号伝送経路とほぼ同じ長さに調整されている。
【0030】
クロスペア24は、一対のクロスパターン25を有している。一対のクロスパターン25は、
図2(B)に見られるように、上下方向での中間位置にて、基材21の板厚方向(X軸方向)に見たときに、互いに接触することなく交差している。一対のクロスパターン25は、基材21の板厚方向(
図2(B)にて紙面に直角なX軸方向)に見たとき、互いに左右非対称でかつ上下非対称な形状をなしている。クロスパターン25も、ストレートパターン23と同様に、基板コネクタ2,3との接続のための信号接続部25Aと、上下方向に分割されて延びる複数の細条部25Bと、基材21の板厚内を板厚方向(X軸方向)に延びる複数の信号用ビア(図示せず)とを有している。
【0031】
クロスパターン25においては、細条部25Bを除き、既述のストレートパターン23と構成が共通しているので、この共通の部分については、ストレートパターン23における対応部分の符号に「2」を加えた符号を付して説明を省略する。クロスパターン25の細条部25Bは、信号用ビアで連結された二つの長細条部25B-1及び一つの短細条部25B-2を有している。
【0032】
図2(B)に見られるように、クロスペア24をなす一対のクロスパターン25における長細条部25B-1、すなわち計四つの長細条部25B-1のうち、Y1側かつ上側(Z1)側に位置する一つの長細条部25B-1だけが、他の三つの長細条部25B-1よりも若干長く形成されている。具体的には、上記一つの長細条部25B-1は、下端部がY2側へ向けて傾斜するように延びる傾斜部25B-1Aを形成しており、この傾斜部25B-1Aの分だけ、他の長細条部25B-1よりも長くなっている。
【0033】
一対のクロスパターン25の全ての長細条部25B-1は、基材21の板厚方向(
図2(B)にて紙面に直角なX軸方向)でX2側(
図7(B)にて手前側)に位置する層に形成されている。一方、短細条部25B-2は、X1側(
図2(B)にて奥側)に位置する層に形成されている。
【0034】
本実施形態では、
図2(B)に見られるように、既述した傾斜部25B-1Aに連結される一方の短細条部25B-2は、傾斜することなく上下方向に延びて、後述する他方の短細条部25B-2よりも短く形成されている。一方、他方の短細条部25B-2は、基材21の板厚方向(X軸方向)に見て、下方へ向かうにつれてY1側に傾斜するように延びており、傾斜部25B-1Aと交差している。上記他方の短細条部25B-2は、傾斜部25B-1Aよりも若干長く形成されている。
【0035】
一対のクロスパターン25では、このようにして長細条部25B-1の傾斜部25B-1Aと上記他方の短細条部25B-2とが交差することにより、互いに接触することを回避している。また、X1側(
図2(B)にて奥側)に位置する層に上記一方の短細条部25B-2を形成することにより、信号用ビアの数を増やし、その結果、クロスペア24をなす二つのクロスパターン25同士の信号伝送経路の長さをほぼ同じ長さとしている。
【0036】
コネクタ幅方向(Y軸方向)でのストレートペア22とクロスペア24との間には、複数のグランド用ビア(図示せず)が上下方向に配列されて形成されている。グランド用ビアは、基材21の板厚内を板厚方向(X軸方向)に延びる円柱状をなしており、後述する第一グランド層27と第二グランド層28とを連結している。
【0037】
グランド層27,28は、金属製の層状をなしており、第一グランド層27が基材の21のX2側の板面を覆うように、また、第二グランド層28が基材21のX1側の板面を覆うように形成されている。グランド層27,28は、基材21の上端から下端にわたる範囲に形成されているが、第一グランド層27においては、
図2(A)に見られるように、上端部及び下端部にて、コネクタ幅方向でペア導電パターン22,24の信号接続部23A,25Aに対応する部分が切り欠かれており、その結果、信号接続部23A,25Aが露呈している。第一グランド層27の上端部及び下端部において切り欠かれていない部分は、基板コネクタ2,3の後述の第一グランド部材54と接続するための第一グランド層接続部27Aをなしている。一方、第二グランド層28の上端部及び下端部は、どの部分も切り欠かれておらず、基板コネクタ2,3の後述の第二グランド部材55と接続するための第二グランド層接続部28Aをなしている。
【0038】
次に、基板コネクタ2,3の構成について説明する。
図1に見られるように、基板コネクタ2,3は全く同じ構成であるので、以下、基板コネクタ3の構成を中心に説明し、基板コネクタ2の説明は基板コネクタ3と同じ符号を付して省略する。
図1に見られるように、基板コネクタ3は、中継コネクタ1の下側ハウジング12の下側受入部(図示せず)に適合した直方体外形で形成されたハウジング40と、ハウジング40に配列保持される複数の端子保持体50と、後述する二つの金属板製の固定部材60とを有している。
【0039】
ハウジング40は、樹脂等の電気絶縁材製であり、
図1に示されるように、端子保持体50の配列方向(X軸方向)を長手方向(コネクタ長さ方向)とする略直方体外形をなしている。ハウジング40は、上下方向に分割して形成された上側ハウジング41と下側ハウジング42とを有している。上側ハウジング41と下側ハウジング42とは固定部材60を介して連結されている。ハウジング40は、コネクタ長さ方向に配列された複数の端子保持体50を収容して保持している。
【0040】
上側ハウジング41は、上下方向に見て四角枠状をなす周壁41Aと、周壁41Aに囲まれた空間でコネクタ幅方向(Y軸方向)に延びる複数の中間壁41Dとを有している。周壁41Aは、コネクタ長さ(X軸方向)に延びる二つの側壁41Bと、コネクタ長さ方向に対して直角な短手方向であるコネクタ幅方向に延び二つの側壁41Bの端部同士を連結する二つの端壁41Cとを有している。複数の中間壁41Dは、コネクタ幅方向に延びて二つの側壁41Bの内壁面同士を連結している。側壁41Bには、コネクタ長さ方向で所定間隔をもった複数位置に、上下方向に貫通する溝状の上側連結溝部(図示せず)が形成されている。
【0041】
下側ハウジング42は、コネクタ長さ方向(X軸方向)で等間隔に配列された複数の端子保持体50を保持している。下側ハウジング42の二つの側壁42Aには、コネクタ長さ方向での上側ハウジング41の上側連結溝部と同位置に、上下方向に貫通して上側連結溝部に連通する溝状の下側連結溝部(図示せず)形成されている。
【0042】
図3(A)は、
図1の基板コネクタ3における一部の端子保持体50を固定部材60とともに示す斜視図であり、回路基板P上に配置された状態で示されている。
図3(B)は、
図3(A)の端子保持体50を単体で示す斜視図である。固定部材60は、
図3(A)に示されているように、コネクタ長さ方向(X軸方向)に延びる金属板部材を打ち抜くとともに板厚方向に屈曲して作られている。固定部材60は、コネクタ長さ方向で端子保持体50の配列範囲の全域にわたって延び、コネクタ幅方向(Y軸方向)で基板コネクタ3の両端側位置に配置されている。
【0043】
固定部材60は、コネクタ幅方向に対して直角な板面をもつ側板部61と、コネクタ長さ方向における複数位置で側板部61の上縁から上方に延びる長圧入部62及び短圧入部63と、コネクタ長さ方向における複数位置にて側板部61の下縁で板厚方向に屈曲されてコネクタ幅方向における外側へ延びる固定部64とを有している。
【0044】
長圧入部62は、コネクタ長さ方向における端子保持体50同士の間に対応する位置に設けられ、短圧入部63は、コネクタ長さ方向における端子保持体50に対応する位置に設けられている。つまり、長圧入部62と短圧入部63とは、コネクタ長さ方向で交互に設けられている。短圧入部63は、上下方向で長圧入部62よりも短く形成されており、その上端が長圧入部62の上端よりも下方に位置している。固定部材60は、長圧入部62と短圧入部63がハウジング40の上側連結溝部及び下側連結溝部の両方へ下方から圧入されることにより、ハウジング40に保持される。また、固定部材60は、固定部64が回路基板Pの実装面の対応部へ半田接続されることにより回路基板Pに固定される。
【0045】
図3(B)に見られるように、端子保持体50は、樹脂等の電気絶縁材製の保持部材51と、コネクタ幅方向(Y軸方向)に配列されて保持部材51に保持された複数の金属板製の信号伝送路としてのペア伝送路をなすペア信号端子52と、保持部材51の板面(YZ方向に拡がった面)に取り付けられた金属板製の第一グランド部材54及び第二グランド部材55(以下、両者を区別する必要がない場合は「グランド部材54,55」と総称する)と、グランド部材54,55に一体的に取り付けられた導電性樹脂製の短絡部材56とを有している。
【0046】
図4(A)は、
図3(B)の短絡部材56を省略して示した端子保持体50の斜視図であり、
図4(B)は、
図3(B)の端子保持体50の短絡部材56のみを示す斜視図である。
図5は、
図4(A)の端子保持体50の各部材を分離して示した斜視図である。また、
図6(A)は、
図3(B)に示される端子保持体50のVIA-VIA断面の一部(コネクタ幅方向(Y軸方向)でのY1側の部分)を拡大して示した断面図であり、
図6(B)は
図3(B)に示される端子保持体50のVIB-VIB断面図である。
【0047】
保持部材51は、
図5に示されるように、コネクタ幅方向(Y軸方向)で端子配列範囲にわたって延びる板状をなしており、
図4(A)に示されるように、保持部材51の板面に沿ってコネクタ幅方向(Y軸方向)に配列された複数のペア信号端子52から成る列(信号伝送路列)を、グランド部材54,55とともに保持している。
図5に示されるように、保持部材51には、グランド部材54,55を保持するための保持突部51A及び貫通部としての保持孔部51Bが形成されている。
【0048】
保持突部51Aは、コネクタ幅方向における第一グランド部材54の後述の被保持孔部54A-1と同位置にて、保持部材51のX2側の板面から突出して形成されており、第一グランド部材54を保持するようになっている。
図5に示されるように、保持突部51Aは、略四角柱状に形成されており、保持部材51の板厚方向(X軸方向)に見たときにコネクタ幅方向(Y軸方向)を長手方向とする四角形状をなしている。
【0049】
保持孔部51Bは、コネクタ幅方向におけるペア信号端子52とは異なる位置、すなわち、隣接するペア信号端子52同士の間の位置、及びコネクタ幅方向で両端に位置するペア信号端子52よりも外側の位置にて、保持部材51を板厚方向(X軸方向)に貫通して形成されている。保持孔部51Bは、保持部材51の板厚方向(X軸方向)に見たときに上下方向(Z軸方向)を長手方向とする四角形状をなしている。なお、貫通部が孔部であることは必須ではなく、例えば、保持部材51をその板厚方向に貫通するとともに周縁の一部が開口した切欠部として形成されていてもよい。
【0050】
複数のペア信号端子52は、中継コネクタ1の中継回路基板20に設けられたペア導電パターン22,24と対応しており、コネクタ幅方向(Y軸方向)を配列方向として所定間隔をもって配列されている。各ペア信号端子52は、
図5に見られるように、上下方向で一端側から他端側までの全範囲にわたり互いに間隔をもって延びるストレートペアをなす一対のストレート端子53を有している。ストレート端子53は、保持部材51に一体成形(インサート成形)により保持される直状の被保持部53Aと、被保持部53Aから上方へ延びる信号弾性腕部53Bと、被保持部53Aから下方へ延びる信号接続部53Cとを有している。
【0051】
信号弾性腕部53Bは、
図5に見られるように、被保持部53Aより広い端子幅寸法(Y軸方向での幅寸法)で形成されており、その板厚方向(X軸方向)で弾性変位可能となっている。本実施形態では、信号弾性腕部53Bは、その端子幅方向での中間位置で上下方向に延びるスリット53B-2が形成されていて、そのスリット53B-2を挟んで位置する二つの細腕部を有していることにより、弾性変位が容易となっている。信号弾性腕部53Bの上端部には、中継コネクタ1に設けられたペア導電パターン22,24の信号接続部23Aに接触するための信号接触部53B-1が、X1側へ突出するように湾曲して形成されている。信号接続部53Cは、
図5に見られるように、被保持部53Aより若干小さい端子幅寸法で直状に形成されている。信号接続部53Cには、半田ボールBが取り付けられている(
図3(A),(B)及び
図4(A)参照)。信号接続部53Cは、この半田ボールBにより回路基板P(
図3(A)参照)の信号回路部(図示せず)に半田接続される。
【0052】
第一グランド部材54は、保持部材51のX2側の板面に取り付けられており、該板面に沿って延びる第一グランド板部54Aと、コネクタ幅方向(Y軸方向)での複数位置で第一グランド板部54Aから上方に延びる第一グランド弾性腕部54Bと、コネクタ幅方向での複数位置で第一グランド板部54Aから下方に延びる第一グランド接続部54Cとを有している。
【0053】
第一グランド板部54Aには、
図5に見られるように、コネクタ幅方向で所定間隔をもって被保持孔部54A-1と被保持突部54A-2とが交互に形成されている。被保持孔部54A-1は、コネクタ幅方向を長手方向とする略四角形状に第一グランド板部54Aを貫通した孔部であり、コネクタ幅方向で隣接する第一グランド弾性腕部54Bの間に対応する位置に形成されている。
【0054】
被保持突部54A-2は、被保持孔部54A-1の両側にて、コネクタ幅方向で第一グランド弾性腕部54Bと対応する位置、換言すると、ペア信号端子52と異なる位置でX1側へ向けて突出している。つまり、被保持突部54A-2は、
図5に示されるように、保持部材51の保持孔部51Bと対応して位置している。被保持突部54A-2は、保持部材51の板厚方向(X軸方向)に見たときに、保持孔部51Bに適合した形状、すなわち上下方向を長手方向とする四角形状をなしている。被保持孔部54A-1と被保持突部54A-2は、それぞれ保持部材51の保持突部51A及び保持孔部51Bと係合した状態で、保持部材51との一体成形(インサート成形)により保持される。
【0055】
また、第一グランド板部54Aには、
図5に見られるように、被保持突部54A-2と対応する位置に、第一グランド板部54Aを板厚方向(X軸方向)に貫通する第一グランド貫通孔部54A-3を有している。第一グランド貫通孔部54A-3は、第一グランド板部54Aの板厚方向で見たときに上下方向を長手方向とする四角形状の孔部である。
図5に見られるように、第一グランド貫通孔部54A-3は、被保持突部54A-2を貫通する部分(X1側の部分)が他部(X2側の部分)よりも一回り小さい孔部となっている。
【0056】
第一グランド弾性腕部54Bは、
図5に見られるように、第一グランド板部54Aの上縁から上方へ延びており、ストレート端子53の信号弾性腕部53Bと同じ長さで形成されている。互いに隣接して対をなす二つの第一グランド弾性腕部54Bは、コネクタ幅方向で一対の信号弾性腕部53Bの両側に位置している。第一グランド弾性腕部54Bは、その板厚方向(X軸方向)で弾性変位可能となっている。第一グランド弾性腕部54Bの上端部には、中継コネクタ1の中継回路基板20の第一グランド層27に接触するための二つの第一グランド接触部54B-1が、X1側へ突出するように湾曲して形成されている。第一グランド接触部54B-1は、
図3(B)、
図4(A)及び
図6(B)に見られるように、一対のストレート端子53の信号接触部53B-1とコネクタ幅方向で同列をなして位置している。
【0057】
第一グランド接続部54Cは、
図5に見られるように、コネクタ幅方向での第一グランド弾性腕部54Bと同位置で第一グランド板部54Aの下縁から下方へ延出している。また、第一グランド接続部54Cは、コネクタ幅方向でペア信号端子52の二つの信号接続部53Cの両側に位置している。第一グランド接続部54Cには、半田ボールBが取り付けられている(
図3(A),(B)及び
図4(A)及び
図6(B)参照)。第一グランド接続部54Cは、この半田ボールBにより回路基板P(
図3(A)参照)のグランド回路部(図示せず)に半田接続される。
【0058】
第二グランド部材55は、保持部材51のX1側の板面に接面しており、該板面に沿って延びる第二グランド板部55Aと、コネクタ幅方向(Y軸方向)での複数位置で第二グランド板部55Aから上方に延びる二つの第二グランド弾性腕部55Bと、コネクタ幅方向での複数位置で第二グランド板部55Aから下方に延びる第二グランド接続部55Cとを有している。
【0059】
第二グランド板部55Aには、
図5に見られるように、コネクタ幅方向で所定間隔をもって被保持突部55A-1が形成されている。被保持突部55A-1は、第一グランド部材54の被保持突部54A-2と同形状をなし、コネクタ幅方向で第二グランド弾性腕部55Bと異なる位置、換言すると、ペア信号端子52と異なる位置でX2側へ向けて突出している。つまり、被保持突部55A-1は、
図5に示されるように、保持部材51の保持孔部51Bと対応して位置している。被保持突部55A-1は、保持部材51の保持孔部51Bと係合した状態で、短絡部材56との一体成形(インサート成形)により保持される。
【0060】
また、第二グランド板部55Aには、第一グランド板部54Aと同様、
図5に見られるように、被保持突部55A-1と対応する位置に、第二グランド板部55Aを板厚方向(X軸方向)に貫通する第二グランド貫通孔部55A-2を有している。第二グランド貫通孔部55A-2は、第一グランド板部54Aの第一グランド貫通孔部54A-3と同じ形状を成している。
【0061】
第二グランド弾性腕部55Bは、
図5に見られるように、第二グランド板部55Aの上縁から上方へ延びている。互いに隣接して対をなす二つの第二グランド弾性腕部55Bは、下端部同士よりも上端部同士が互いに近接して位置しているとともに、上下方向での中間位置でコネクタ幅方向に延びる横部55Dによって繋がれている。第二グランド弾性腕部55Bは、その板厚方向(X軸方向)で弾性変位可能となっている。第二グランド弾性腕部55Bの上端部には、中継コネクタ1の中継回路基板20の第二グランド層28に接触するための二つの第二グランド接触部55B-1が、X2側へ突出するように湾曲して形成されている。この二つの第二グランド接触部55B-1は、一対の信号弾性腕部53Bの信号接触部53B-1とコネクタ幅方向及び上下方向で同位置にあり、
図3(B)及び
図4(A)に見られるように、二つの信号接触部53B-1と対向している。
【0062】
第二グランド接続部55Cは、
図5に見られるように、コネクタ幅方向での一対の第二グランド弾性腕部55Bの両側に対応する位置で第二グランド板部55Aの下縁から下方へ延出している。第二グランド接続部55Cは、コネクタ幅方向で、ペア信号端子52の二つの信号接続部53Cの両側に位置しているとともに、第一グランド部材54の第一グランド接続部54Cと同位置に位置している。第二グランド接続部55Cには、半田ボールBが取り付けられている(
図6(B)参照)。第二グランド接続部55Cは、この半田ボールBにより回路基板P(
図3(A)参照)のグランド回路部(図示せず)に半田接続される。
【0063】
短絡部材56は、
図3(B)に示されるように、第一グランド部材54の第一グランド板部54A及び第二グランド部材55の第二グランド板部55Aに一体成形(インサート成形)された状態で設けられている。短絡部材56は、
図4(B)に示されるように、コネクタ幅方向での複数位置に設けられた第一基部56A、第二基部56B及び連結部56Cと、コネクタ幅方向に延び複数の第一基部56A同士及び複数の第二基部56B同士を連繋する連繋部56Dとを有している。
【0064】
第一基部56Aは、
図3(B)及び
図6(A),(B)に示されるように、第一グランド板部54Aの第一グランド貫通孔部54A-3に適合した形状に形成されており、第一グランド貫通孔部54A-3内に位置し、第一グランド貫通孔部54A-3の内壁面に接触している。具体的には、第一基部56Aは、
図6(A),(B)に示されるように、X1側に位置する第一小基部56A-1と、X2側に位置する第一大基部56A-2とを有している。第一小基部56A-1は、コネクタ幅方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)で第一大基部56A-2よりも若干小さく形成されており、その結果、第一小基部56A-1と第一大基部56A-2との境界部分は段状をなしている。
【0065】
第二基部56Bは、
図6(A),(B)に示されるように、第一基部56Aと同形状をなし、第二グランド板部55Aの第二グランド貫通孔部55A-2に適合した形状に形成されている。第二基部56Bは、第二グランド貫通孔部55A-2内に位置し、第二グランド貫通孔部55A-2の内壁面に接触している。具体的には、第二基部56Bは、
図6(A),(B)に示されるように、X2側に位置する第二小基部56B-1と、X1側に位置する第二大基部56B-2とを有している。第二小基部56B-1は、コネクタ幅方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)で第二大基部56B-2よりも若干小さく形成されており、その結果、第二小基部56B-1と第二大基部56B-2との境界部分は段状をなしている。
【0066】
連結部56Cは、保持部材51の保持孔部51B内に位置し、第一基部56Aと第二基部56B、詳細には、
図6(A),(B)に示されるように、第一基部56Aの第一小基部56A-1と第二基部56Bの第二小基部56B-1とを連結している。連結部56Cは、保持孔部51Bの内面に密着している。本実施形態では、連結部56Cは、
図6(A),(B)に示されるように、コネクタ幅方向及び上下方向で第一小基部56A-2及び第二小基部56B-2よりも若干大きく形成されており、被保持突部54A-2,55A-1と係止している。
【0067】
連繋部56Dは、
図4(B)に示されるように、短絡部材56に二つ設けられており、これらの連繋部56Dは、互いに並行してコネクタ幅方向(Y軸方向)に延びている。
図3(B)及び
図4(A),(B)に示されるように、連繋部56Dは、コネクタ幅方向を長手方向とする板状をなしており、第一グランド板部54A及び第二グランド板部55Aのそれぞれの板面に沿って延びている。各連繋部56Dは、
図3(B)に示されるように、コネクタ幅方向及び上下方向にて保持部材51の板面より若干小さく、すなわち、保持部材51の板面よりも一回り小さく形成されている。
【0068】
X1側に位置する連繋部56Dは、全ての第二基部56B同士、詳細には、第二基部56Bの第二大基部56B-2同士を連結している。この連繋部56Dは、第二グランド板部55AのX1側の板面に接面して密着している。X2側に位置する連繋部56Dも、X1側に位置する連繋部56Dと同形状をなしており、全ての第一基部56A同士、詳細には、第一基部56Aの第一大基部56A-2同士を連結している。この連繋部56Dは、第一グランド板部54AのX2側の板面に接面して密着している。また、本実施形態では、
図4(B)に示されるように、X2側に位置する連繋部56Dに、複数の孔部56D-1が形成されている。孔部56D-1は、第一グランド部材54の被保持孔部54A-1(
図5参照)と対応する位置に形成されており、被保持孔部54A-1と連通するようになっている。
【0069】
基板コネクタ3は、次の要領で製造される。まず、複数のペア信号端子52及び第一グランド部材54を一次成形用の金型(図示せず)に配置した状態で、溶融した電気絶縁材料を金型内に注入して固化させる(一次インサート成形)。電気絶縁材料が固化して保持部材51が成形されることにより、ペア信号端子52及び第一グランド部材54が保持部材51で保持された一次保持体が完成する。
【0070】
次に、上記一次保持体及び第二グランド部材55を二次成形用の金型(図示せず)に配置した状態で、溶融した導電性樹脂材料を金型内に注入して固化させる(二次インサート成形)。このとき、グランド部材54,55のグランド貫通孔部54A-3,55A-2内及び保持部材51の保持孔部51B内に導電性樹脂材料が充填され、固化することで基部56A,56B及び連結部56Cが形成される。このように上記金型内で導電性樹脂材料が固化して短絡部材56が成形され、上記一次保持体及び第二グランド部材55が短絡部材56によって保持されることにより端子保持体50が完成する。
【0071】
次に、下側ハウジング42において隣接する中間壁41Dの間の溝部に端子保持体50を上方から圧入し、複数の端子保持体50をコネクタ長さ方向(X軸方向)に配列した状態で下側ハウジング42に保持させる。また、二つの金属板製の固定部材60の長圧入部62及び短圧入部63を下側ハウジング42の下側連結溝部へ下方から挿入する。このとき、短圧入部63は下側連結溝部で圧入保持される。さらに、上側ハウジング41を下側ハウジング42に上方から取り付け、これと同時に、固定部材60の長圧入部62を上側ハウジング41の上側連結溝部へ下方から圧入する。このようにして上側ハウジング41を取り付けることにより、基板コネクタ3が完成する。また、基板コネクタ2も基板コネクタ3と同じ要領で製造される。
【0072】
次に、中継コネクタ1と基板コネクタ2,3とのコネクタ嵌合動作について説明する。まず、基板コネクタ2,3をそれぞれ異なる回路基板に半田接続して取り付ける。次に、
図1に見られるように、中継コネクタ1を基板コネクタ3の上方に位置させる。
【0073】
次に、中継コネクタ1を下方へ移動させて(
図1の矢印参照)、各中継回路基板20をそれぞれ対応する基板コネクタ3の端子保持体50に上方から挿入して接続させる。中継コネクタ1と基板コネクタ3との嵌合が完了すると、基板コネクタ3に設けられたペア信号端子52の信号接触部53B-1が、中継回路基板20に設けられたペア導電パターン22,24の信号接続部23A,25Aと接圧をもって接触して電気的に導通する。これと同時に、基板コネクタ3に設けられた第一グランド部材54の第一グランド接触部54B-1が、中継回路基板20に設けられた第一グランド層27の第一グランド層接続部27Aと接圧をもって接触して電気的に導通する。また、基板コネクタ3に設けられた第二グランド部材55の第二グランド接触部55B-1が中継回路基板20に設けられた第二グランド層28の第二グランド層接続部28Aと接圧をもって接触して電気的に導通する。このとき、基板コネクタ3の信号接触部53B-1及びグランド接触部54B-1,55B-1は、中継回路基板20からの押圧力を受け、板厚方向(X軸方向)に弾性変位する。
【0074】
次に、基板コネクタ2を、基板コネクタ3に対して上下反転させた姿勢(
図1に示される姿勢)で中継コネクタ1に対して上方から嵌合接続させる(
図1の矢印参照)。基板コネクタ2の嵌合接続の要領は、基板コネクタ3について既述した要領と同様である。
【0075】
このようにして、基板コネクタ2と基板コネクタ3が中継コネクタ1に嵌合接続されることにより、基板コネクタ2と基板コネクタ3とが中継コネクタ1を介して電気的に接続される。
【0076】
本実施形態では、短絡部材56は、
図6(A),(B)に示されるように、既述したように導電性樹脂で形成されており、第一グランド貫通孔部54A-3内に位置し第一グランド板部54Aに接触している第一基部56Aと、第二グランド貫通孔部55A-2内に位置し第二グランド板部55Aに接触している第二基部56Bとが、保持孔部51B内に位置する連結部56Cによって連結された構成となっている。つまり、第一グランド部材54と第二グランド部材55とが短絡部材56を介して短絡することで電気的に導通している。
【0077】
本実施形態では、短絡部材56は、第一グランド板部54A及び第二グランド板部55Aとの一体成形(インサート成形)により形成される。具体的には、基板コネクタ2,3の製造時における二次成形工程にて、溶融した導電性樹脂材料が二次成形用の金型内に注入され、固化されることにより形成される。このとき、溶融した導電性樹脂材料は第一グランド貫通孔部54A-3内、第二グランド貫通孔部55A-2内及び保持部材51の保持孔部51B内に隙間なく充填される。このように本実施形態では、導電性樹脂による一体成形により、第一グランド板部54Aに密着する第一基部56Aと第二グランド板部55Aに密着する第二基部56Bとが連結部56Cを介して一部材をなした構成を容易に得られる。
【0078】
このようにして一部材として成形された短絡部材56は、第一基部56A、第二基部56B及び連結部56Cが連続的に一体をなしている。したがって、第一グランド部材54と第二グランド部材55とを確実に短絡させることができ、安定した電気的導通状態を確保しやすい。その結果、ペア信号端子52とグランド部材54,55との電気的な結合のバランスが良好に確保される。なお、上述したように、第一グランド部材54と第二グランド部材55とは短絡部材56により短絡しているが、さらに、第一グランド部材54の被保持突部54A-2と第二グランド部材55の被保持突部55A-1とが互いに突出頂面同士で直接接触(接面)して、電気的に導通していてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、連繋部56DがX2側で複数の第一基部56A同士を連結し、また、X1側で第二基部56B同士を連結することにより、これらの第一基部56A同士及び第二基部56B同士がそれぞれの連繋部56Dを介して一体をなした構成となっている。したがって、短絡部材56を介した第一グランド部材54と第二グランド部材55との電気的導通状態がさらに安定する。
【0080】
また、本実施形態では、連繋部56Dをグランド板部54A,55Aのそれぞれの板面に接面させることにより、短絡部材56と第一グランド部材54及び第二グランド部材55との接触面積が大きくなるので、短絡部材56を介した第一グランド部材54と第二グランド部材55との電気的な導通状態がさらに安定する。また、グランド板部54A,55Aのそれぞれの板面が連繋部56Dによって密着した状態で支持されるので、グランド板部54A,55Aを強固に保持することができる。
【0081】
本実施形態では、基板コネクタ2,3は、隣接するペア信号端子52同士の間にグランド端子が設けられておらず、このペア信号端子52同士の間に、短絡部材56の第一基部56A、第二基部56B及び連結部56Cが設けられている。したがって、このペア信号端子52同士の間の範囲を利用して、コネクタ幅方向及び上下方向で十分に大きい寸法の中実な第一基部56A、第二基部56B及び連結部56Cを形成することができる。したがって、第一基部56A、第二基部56B及び連結部56Cについて、簡単な形状にできるとともに、十分な強度を確保できる。
【0082】
なお、第一グランド部材54と第二グランド部材55との安定した電気的導通状態が十分に確保されているのであれば、連繋部56Dで複数の第一基部56A同士や第二基部56B同士を連結することは必須ではなく、例えば、連繋部56Dを省略して短絡部材56を構成してもよい。その場合には、第一基部56A、第二基部56B及び連結部56Cを有する短絡部材56が、コネクタ幅方向にて複数位置に配置された構成となる。
【0083】
本実施形態では、グランド板部54A,55Aにグランド貫通孔部54A-3,55A-2が形成されていることとしたが、このような孔部を形成することは必須ではない。例えば、孔部に替えて、グランド板部を板厚方向に貫通するとともに周縁の一部が開口した切欠部を形成してもよい。この場合、短絡部材の第一基部及び第二基部はこの切欠部内に位置し、グランド板部に接触することとなる。また、短絡部材56に孔部や切欠部を形成することなく、短絡部材の第一基部及び第二基部を各グランド部材のいずれかの部分に接触させてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、信号伝送路が、中継コネクタ1においてはペア導電パターン22,24で構成され、基板コネクタ2,3においてはペア信号端子52により構成されたが、ペアであることは必須ではなく、信号伝送路は単一の導電パターンや単一の信号端子により構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
2 基板コネクタ(電気コネクタ)
3 基板コネクタ(電気コネクタ)
51 保持部材
51B 保持孔部(貫通部)
52 ペア信号端子(信号伝送路)
54 第一グランド部材
55 第二グランド部材
56 短絡部材
56A 第一基部
56B 第二基部
56C 連結部
56D 連繋部