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特許7566455弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H9/25 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019057274
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020161899
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 凌平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功一
(72)【発明者】
【氏名】月舘 均
(72)【発明者】
【氏名】三浦 道雄
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-061258(JP,A)
【文献】特開2010-245662(JP,A)
【文献】特開2008-283337(JP,A)
【文献】実開昭51-088184(JP,U)
【文献】実開昭56-052311(JP,U)
【文献】特開2006-042008(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0063330(US,A1)
【文献】特開2018-014606(JP,A)
【文献】特開2008-283336(JP,A)
【文献】特開2009-232338(JP,A)
【文献】特開平11-068496(JP,A)
【文献】特開2006-211187(JP,A)
【文献】実開昭61-189620(JP,U)
【文献】特開2002-330047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/76
H03H 3/007-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指を有する一対の櫛型電極と、
前記圧電基板上に設けられ、前記複数の電極指の配列方向において前記一対の櫛型電極を挟む一対の反射器と、
規則的に配置された凸部および/または凹部を有する支持基板と、
前記圧電基板と前記支持基板との間に直接または間接的に接合され、接合面の界面が前記凸部および/または前記凹部に沿って設けられた絶縁層と、
を備える弾性波共振器を、含み、
前記凸部および/または前記凹部の周期のうち最も小さい周期は、前記複数の電極指のピッチの1/4倍以上かつ2倍未満であり、
前記圧電基板の厚さは前記一対の櫛型電極のうち一方の櫛型電極の電極指のピッチよりも小さく、
前記複数の電極指の配列方向および延伸方向のいずれとも異なる方向に、前記凸部および/または前記凹部の周期のうち最も小さい周期の2つの方向、並びに前記2つの方向と異なる、前記凸部および/または前記凹部の周期のうち2番目に小さい周期の他の2つの方向を有する弾性波デバイス。
【請求項2】
前記凸部および前記凹部の少なくとも一方は島状である請求項に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記凸部および前記凹部の少なくとも一方は平面方向のうち1つの方向に延伸する請求項1又は2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記凸部および/または前記凹部の周期のうち最も小さい周期の方向はいずれも前記支持基板の側面に略平行である請求項に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記絶縁層の弾性定数の温度係数の符号は前記圧電基板の弾性定数の温度係数の符号の反対である請求項1からのいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の弾性波デバイスを含むフィルタ。
【請求項7】
請求項に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサに関し、例えば櫛型電極を有する弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の通信機器に用いられる弾性波共振器として、弾性表面波共振器が知られている。弾性表面波共振器を形成する圧電基板を支持基板に接合することが知られている。支持基板の上面を粗面とすることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-61258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
支持基板の上面を粗面化することによりスプリアスを抑制することができる。特許文献1では、支持基板の上面の全面を研磨または全面をウエットエッチングすることにより、支持基板の上面を粗面化している。このような方法では粗面の凹凸は不規則(すなわちランダム)である。これにより、スプリアスの大きさ等が場所により異なる等、特性のばらつきが大きくなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、特性の均質性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指を有する一対の櫛型電極と、前記圧電基板上に設けられ、前記複数の電極指の配列方向において前記一対の櫛型電極を挟む一対の反射器と、規則的に配置された凸部および/または凹部を有する支持基板と、前記圧電基板と前記支持基板との間に直接または間接的に接合され、接合面の界面が前記凸部および/または前記凹部に沿って設けられた絶縁層と、を備える弾性波共振器を、含み、前記凸部および/または前記凹部の周期のうち最も小さい周期は、前記複数の電極指のピッチの1/4倍以上かつ2倍未満であり、前記圧電基板の厚さは前記一対の櫛型電極のうち一方の櫛型電極の電極指のピッチよりも小さく、前記複数の電極指の配列方向および延伸方向のいずれとも異なる方向に、前記凸部および/または前記凹部の周期のうち最も小さい周期の2つの方向、並びに前記2つの方向と異なる、前記凸部および/または前記凹部の周期のうち2番目に小さい周期の他の2つの方向を有する弾性波デバイスである。
【0011】
上記構成において、前記凸部および前記凹部の少なくとも一方は島状である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記凸部および前記凹部の少なくとも一方は平面方向のうち1つの方向に延伸する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記凸部および/または前記凹部の周期のうち最も小さい周期の方向はいずれも前記支持基板の側面に略平行である構成とすることができる。
上記構成において、前記絶縁層の弾性定数の温度係数の符号は前記圧電基板の弾性定数の温度係数の符号の反対である構成とすることができる。
【0014】
本発明は、上記弾性波デバイスを含むフィルタである。
【0015】
本発明は、上記フィルタを含むマルチプレクサである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特性の均質性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。
図2図2(a)から図2(d)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
図3図3(a)から図3(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
図4図4(a)から図4(m)は、実施例1における凸部および凹部の立体形状の例1を示す図である。
図5図5(a)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例1を示す平面図、図5(b)および図5(c)は、図5(a)のA-A断面図である。
図6図6(a)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例2を示す平面図、図6(b)および図6(c)は、図6(a)のA-A断面図である。
図7図7(a)および図7(b)は、それぞれ実施例1における凸部および凹部の配置の例3および4を示す平面図である。
図8図8(a)および図8(b)は、それぞれ実施例1における凸部および凹部の配置の例5および6を示す平面図である。
図9図9(a)から図9(c)は、実施例1における凸部および凹部の立体形状の例2を示す斜視図である。
図10図10(a)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例7を示す平面図、図10(b)および図10(c)は、図10(a)のA-A断面図である。
図11図11(a)および図11(b)は、それぞれ実施例1における凸部および凹部の配置の例8および9を示す平面図である。
図12図12は、実施例1に凸部および凹部の配置の例10を示す平面図である。
図13図13は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図14図14は、シミュレーション1における周波数に対するアドミッタンスの大きさを示す図である。
図15図15は、シミュレーション2における周波数に対するアドミッタンスの大きさを示す図である。
図16図16は、実験1における周波数に対するアドミッタンスの実部および大きさを示す図である。
図17図17(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図、 図17(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。電極指の配列方向をX方向、電極指の延伸方向をY方向、支持基板および圧電基板の積層方向をZ方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、圧電基板の結晶方位のX軸方向およびY軸方向とは必ずしも対応しない。圧電基板が回転YカットX伝搬基板の場合、X方向は結晶方位のX軸方向となる。
【0020】
図1(a)および図1(b)に示すように、支持基板10上に絶縁層11が設けられている。支持基板10と絶縁層11との界面50は粗面であり複数の凸部51および複数の凹部52を有する。絶縁層11上に圧電基板12が設けられている。圧電基板12上に弾性波共振器20が設けられている。弾性波共振器20はIDT(Inter Digital Transducer)22および反射器24を有する。反射器24はIDT22のX方向の両側に設けられている。IDT22および反射器24は、圧電基板12上の金属膜14により形成される。
【0021】
IDT22は、対向する一対の櫛型電極18を備える。櫛型電極18は、複数の電極指15と、複数の電極指15が接続されたバスバー16と、を備える。一対の櫛型電極18の電極指15が交差する領域が交差領域25である。交差領域25の長さが開口長である。一対の櫛型電極18は、交差領域25の少なくとも一部において電極指15がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。交差領域25において複数の電極指15が励振する弾性波は、主にX方向に伝搬する。一対の櫛型電極18のうち一方の櫛型電極の電極指15のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。弾性波の波長λはほぼ電極指15の2本分のピッチとなる。反射器24は、IDT22の電極指15が励振した弾性波(弾性表面波)を反射する。これにより弾性波はIDT22の交差領域25内に閉じ込められる。
【0022】
圧電基板12は、単結晶タンタル酸リチウム(LiTaO)基板、単結晶ニオブ酸リチウム(LiNbO)基板または単結晶水晶基板であり、例えば回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板または回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。絶縁層11は、例えば酸化シリコン(SiO)を主成分とするアモルファスおよび/または多結晶層である。絶縁層11は、酸化シリコンを主成分とし、弗素等の不純物を含んでいてもよい。絶縁層11の弾性定数の温度係数の符号は圧電基板12の弾性定数の温度係数の符号の反対である。これにより、弾性波共振器の周波数温度係数を小さくできる。
【0023】
支持基板10は、圧電基板12のX方向の線膨張係数より小さな線膨張係数を有する。これにより、弾性波共振器の周波数温度係数を小さくできる。支持基板10は、例えばサファイア基板、アルミナ基板、シリコン基板および炭化シリコン基板である。サファイア基板はr面、c面またはa面を上面とする単結晶酸化アルミニウム(Al)基板である。アルミナ基板は多結晶酸化アルミニウム(Al)基板である。シリコン基板は単結晶または多結晶シリコン(Si)基板である。炭化シリコン基板は単結晶または多結晶炭化シリコン(SiC)基板である。
【0024】
金属膜14は、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)またはモリブデン(Mo)を主成分とする膜であり、例えばアルミニウム膜、銅膜またはモリブデン膜である。電極指15と圧電基板12との間にTi(チタン)膜またはCr(クロム)膜等の密着膜が設けられていてもよい。密着膜は電極指15より薄い。電極指15を覆うように絶縁膜が設けられていてもよい。絶縁膜は保護膜または温度補償層として機能する。
【0025】
支持基板10の厚さは例えば50μmから500μmである。絶縁層11の厚さは、例えば0.1μmから10μmであり、例えば弾性波の波長λ以下である。圧電基板12の厚さは例えば0.1μmから20μmであり、例えば弾性波の波長λ以下である。弾性波の波長λは例えば1μmから6μmである。2本の電極指15を1対としたときの対数は例えば20対から300対である。IDT22のデュティ比は、電極指15の太さ/電極指15のピッチであり、例えば30%から80%である。IDT22の開口長は例えば10λから50λである。
【0026】
[実施例1の製造方法]
図2(a)から図3(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。図2(a)に示すように、表面が平坦な支持基板10を準備する。支持基板10の表面の算術平均粗さRaは例えば1nm以下である。図2(b)に示すように、支持基板10上に開口を有するマスク層44を形成する。マスク層44は例えばフォトレジストである。
【0027】
図2(c)に示すように、マスク層44をマスクに支持基板10の上部を除去する。支持基板10の上部の除去には、例えばエッチング法またはサンドブラスト法を用いる。例えば支持基板10がサファイア基板の場合、支持基板10の除去には塩素系ガスを用いたドライエッチング法を用いる。支持基板10の材料によりエッチング液およびエッチングガスを適宜選択する。
【0028】
図2(d)に示すように、支持基板10上に絶縁層11を例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法または真空蒸着法を用い形成する。これにより、支持基板10と絶縁層11との界面50に凹凸が形成される。
【0029】
図3(a)に示すように、絶縁層11の上面を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い平坦化する。図3(b)に示すように、接合層13を介し絶縁層11の上面に圧電基板12を接合する。接合層13は例えば酸化アルミニウム層、窒化アルミニウム層、ダイヤモンドライクカーボン層、炭化シリコン層、窒化シリコン層またはシリコン層である。接合層13の厚さは例えば1nmから100nmである。接合層13を介さず絶縁層11と圧電基板12とを接合してもよい。接合には例えば表面活性化法を用いる。
【0030】
図3(c)に示すように、圧電基板12の上面を例えばCMP法を用い平坦化する。これにより、支持基板10、絶縁層11および圧電基板12を有する複合基板が形成される。圧電基板12の上面に金属膜14からなる弾性波共振器を形成する。以上により実施例1に係る弾性波デバイスが製造できる。
【0031】
[凸部および凹部の立体形状の例1]
図4(a)から図4(m)は、実施例1における凸部および凹部の立体形状の例1を示す図である。図4(a)から図4(k)は斜視図であり、凸部51のときは矢印56aのように上方向が+Z方向である。凹部52のときは矢印56bのように上方向が-Z方向である。図4(l)および図4(m)は平面図および断面図である。図4(a)から図4(m)では、凸部51および凹部52は島状またはドット状である。
【0032】
図4(a)に示すように、凸部51および凹部52は頂点51aおよび52aを有する円錐形状である。図4(b)に示すように、凸部51は上面51bを有する円錐台形状であり、凹部52は下面52bを有する円錐台形状である。図4(c)に示すように、凸部51および凹部52は円柱形状である。
【0033】
図4(d)に示すように、凸部51および凹部52は頂点51aおよび52aを有する三角錐形状である。図4(e)に示すように、凸部51は上面51bを有する三角錐台形状であり、凹部52は下面52bを有する三角錐台形状である。図4(f)に示すように、凸部51および凹部52は三角柱形状である。
【0034】
図4(g)に示すように、凸部51および凹部52は頂点51aおよび52aを有する四角錐形状である。図4(h)に示すように、凸部51は上面51bを有する四角錐台形状であり、凹部52は下面52bを有する四角錐台形状である。図4(i)に示すように、凸部51および凹部52は四角柱形状である。以上のように、凸部51および凹部52の立体形状は錐形状、錐台形状または柱体形状でもよい。
【0035】
図4(j)に示すように、凸部51および凹部52は半球形状である。図4(k)に示すように、凸部51は半球形状の上を上面51bで切り取った形状、凹部52は半球形状の下を面52bで切り取った形状である。このように、凸部51および凹部52の立体形状は球形状の一部でもよい。また、凸部51および凹部52の立体形状は長球形状または楕円体形状の一部でもよい。図4(l)および図4(m)に示すように、凸部51および凹部52はドーナツ形状の一部である。以上のように、凸部51および凹部52の形状は、凸部51および凹部52の立体形状は、図2(b)におけるマスク層44の平面形状および図2(c)における支持基板10のエッチング条件を適宜選択することにより任意に設定できる。
【0036】
[凸部および凹部の配置の例1]
凸部51および凹部52のXY平面における配置の例を凸部51および凹部52の立体形状が図4(a)の場合を例に説明する。図5(a)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例1を示す平面図、図5(b)および図5(c)は、図5(a)のA-A断面図である。図5(b)は凸部の例であり、図5(c)は凹部の例である。
【0037】
図5(a)から図5(c)に示すように、凸部51および凹部52は、周期的に配列されている。凸部51または凹部52の周期のうち最も小さい周期Paの方向54aから54cは3方向である。各方向54aから54cのなす角度は約60°である。方向54aはX方向と略平行である。図5(b)では凸部51以外は平面である。図5(c)では凹部52以外は平面である。凸部51および凹部52の周期Paは略均一であり、凸部51および凹部52の方向54aから54cにおける幅Wは略均一であり、凸部51および凹部52の高さHは略均一である。なお、ここで略均一とは効果を奏する程度に均一であることであり、例えば製造誤差程度のばらつきを許容する。
【0038】
[凸部および凹部の配置の例2]
図6(a)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例2を示す平面図、図6(b)および図6(c)は、図6(a)のA-A断面図である。図6(a)から図6(c)に示すように、凸部51または凹部52の周期のうち最も小さい周期Paの方向54aおよび54bは2方向である。各方向54aと54bのなす角度は約90°である。方向54aおよび54bはそれぞれX方向およびY方向と略平行である。図6(b)では凸部51以外は平面である。図6(c)では凹部52以外は平面である。凸部51および凹部52の周期Paは略均一であり、凸部51および凹部52の方向54aおよび54bにおける幅Wは略均一であり、凸部51および凹部52の高さHは略均一である。
【0039】
凸部51および凹部52の配置の例1および例2のように、周期Paの方向のうち一つの方向54aはX方向と略平行でもよい。凸部51および凹部52の配置の例2のように、周期Paの方向のうち一つの方向54bは電極指15の延伸方向と略平行でもよい。
【0040】
[凸部および凹部の配置の例3]
図7(a)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例3を示す平面図である。図7(a)に示すように、方向54aから54cが3つの場合おいて、凸部51または凹部52は互いに接していてもよい。図7(a)に示すように、頂点51aまたは52a同士が近づくと、凸部51または凹部52の平面形状は六角形となる。
【0041】
[凸部および凹部の配置の例4]
図7(b)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例4を示す平面図である。図7(b)に示すように、方向54aおよび54bが2つの場合おいて、凸部51または凹部52は互いに接していてもよい。図7(b)に示すように、頂点51aまたは52a同士が近づくと、凸部51または凹部52の平面形状は四角形となる。
【0042】
[凸部および凹部の配置の例5]
図8(a)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例5を示す平面図である。電極指15を重ねて図示している。図8(a)に示すように、方向54aおよび54bとX方向とのなす角度は、それぞれθaおよびθbである。θaおよびθbは約45°である。凸部51または凹部52の周期のうち最も小さい周期Paの方向54aおよび54bはX方向およびY方向のいずれでもない。凸部51または凹部52の周期のうち2番目に小さい周期Pbの方向55aおよび55bはX方向およびY方向と略平行である。
【0043】
[凸部および凹部の配置の例6]
図8(b)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例6を示す平面図である。電極指15を重ねて図示している。図8(b)に示すように、方向54aおよび54bとX方向とのなす角度θaおよびθbは45°と異なる。最も小さい周期Paの方向54aおよび54b並びに2番目に小さい周期Pbの方向55aおよび55bはいずれもX方向およびY方向と平行でない。
【0044】
配置の例1から4のように、凸部51および凹部52のうち最も小さい周期Paの方向54aから54cはX方向およびY方向の少なくとも一方と略平行でもよい。配置の例5および6のように、周期Paの方向54aおよび54bはX方向およびY方向のいずれとも平行でなくてもよい。
【0045】
配置の例1から6では、凸部51および凹部52の立体形状が図4(a)の場合を例に説明したが、凸部51および凹部52の立体形状は図4(b)から図4(m)のいずれかでもよいし、その他の立体形状でもよい。
【0046】
[凸部および凹部の立体形状の例2]
図9(a)から図9(c)は、実施例1における凸部および凹部の立体形状の例2を示す斜視図である。凸部51のときは矢印56aのように上方向が+Z方向である。凹部52のときは矢印56bのように上方向が-Z方向である。図9(a)から図9(c)では、凸部51および凹部52は線状またはストライプ状である。
【0047】
図9(a)に示すように、凸部51および凹部52は断面形状が三角形状の線状である。線51cおよび52cはそれぞれ凸部51および凹部52における三角形の頂点をつなぐ線である。図9(b)に示すように、凸部51および凹部52は断面形状が半円形状の線状である。図9(c)に示すように、凸部51および凹部52は断面形状が四角形状の線状である。以上のように、凸部51および凹部52は直線状に延伸していてもよいし、曲線状に延伸していてもよい。
【0048】
[凸部および凹部の配置の例7]
凸部51および凹部52のXY平面における配置の例を凸部51および凹部52の立体形状が図9(a)である場合を例に説明する。図10(a)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例7を示す平面図、図10(b)および図10(c)は、図10(a)のA-A断面図である。図10(b)は凸部の例であり、図10(c)は凹部の例である。
【0049】
図10(a)から図10(c)に示すように、凸部51および凹部52は、周期的に配列されている。凸部51または凹部52の周期のうち最も小さい周期Paの方向54はX方向と略平行である。図10(b)では凸部51以外は平面である。図10(c)では凹部52以外は平面である。周期Paは略均一であり、凸部51および凹部52の方向54における幅Wは略均一であり、凸部51および凹部52の高さHは略均一である。
【0050】
[凸部および凹部の配置の例8、9]
図11(a)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例8を示す平面図である。図11(a)に示すように、周期Paの方向54はY方向である。凸部および凹部の配置の例7および8のように、周期Paの方向54はX方向またはY方向と略平行でもよい。
【0051】
図11(b)は、実施例1における凸部および凹部の配置の例9を示す平面図である。図11(b)に示すように、方向54はX方向およびY方向と異なっている。すなわち、方向54はX方向およびY方向から傾斜している。このように、方向54はX方向およびY方向のいずれとも平行でなくてもよい。
【0052】
配置の例7から9では、凸部51および凹部52の立体形状が図9(a)の場合を例に説明したが、凸部51および凹部52の立体形状は図9(b)および図9(c)のいずれかでもよいし、その他の立体形状でもよい。配置の例7から9では、凸部51または凹部52が離れている場合を例に説明したが、凸部51または凹部52は接していてもよい。
【0053】
[凸部および凹部の配置の例10]
図12は、実施例1に凸部および凹部の配置の例10を示す平面図である。図12に示すように、範囲58内では凸部51および凹部52の配置および大きさは不規則である。範囲58はX方向およびY方向に周期的に配列されている。範囲58の周期PaおよびPbは略均一である。周期Paは凸部51および凹部52のうち最も小さい周期であり、周期Pbは2番目に小さい周期である。
【0054】
凸部および凹部の配置の例10のように、複数の凸部51または複数の凹部52をグループとし、グループの配列が規則的でもよい。凸部51および凹部52の立体形状として図4(a)を例に説明したが、凸部51および凹部52の立体形状は立体形状の例1および2のいずれか、またはその他の立体形状でもよい。範囲58内に異なる立体形状の凸部51または凹部52が設けられていてもよい。
【0055】
[実施例1の変形例1]
図13は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスの断面図である。図13に示すように、支持基板10と絶縁層11との界面50に付加膜53が設けられている。付加膜53の上面は支持基板10上面より細かい粗面である。付加膜53は、例えば酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜であり、その音響インピーダンスは絶縁層11の音響インピーダンスより大きい。付加膜53の厚さは例えば0.1μm以下である。これにより、界面50において弾性波はより散乱する。付加膜53は島状でもよいし、1層の膜で厚さの異なる部分を有する構造でもよい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例1のように、絶縁層11は支持基板10に間接的に接合されていてもよい。
【0056】
[シミュレーション1]
実施例1と比較例1についてシミュレーションを行った。比較例1は支持基板10と絶縁層11との界面50を平面とした。シミュレーション条件は以下である。
支持基板10: サファイア基板
絶縁層11:平均厚さが2μm(0.4λ)の酸化シリコン膜
圧電基板12:厚さが2μm(0.4λ)の42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
電極指15:厚さが500nmのアルミニウム膜
電極指15のピッチλ:5μm
電極指15の対数:10対
凸部51の形状:図5(b)の断面図の断面形状とし、Pa=3μm、W=2.7μm、H=1.65μmとした
Y方向の幅をλ/32とする2.5次元の有限要素法を用いアドミッタンスをシミュレーションした。アドミッタンスのシミュレーション結果から電極指15が100対かつ開口長が25λの弾性波共振器のアドミッタンスに換算した。
【0057】
図14は、シミュレーション1における周波数に対するアドミッタンスの大きさを示す図である。図14に示すように、共振周波数frおよび反共振周波数faより高い周波数にスプリアス64が生成されている。スプリアス64は、電極指15が励振する主モードの弾性波とともに励振するバルク波に起因する。支持基板10を硬い基板とすると支持基板10の音速は絶縁層11および圧電基板12の音速より速くなる。すなわち支持基板10の音響インピーダンスが絶縁層11および圧電基板12の音響インピーダンスより高くなる。比較例1のように、支持基板10と絶縁層11の界面50が平坦の場合、電極指15が励振したバルク波が界面50において反射される。反射されたバルク波に起因しスプリアス64が生成される。実施例1では、界面50が粗面のため界面でバルク波は散乱または支持基板10aに吸収される。これにより、比較例1に比べスプリアス64が小さい。このように、実施例1ではスプリアスを低減できる。
【0058】
[シミュレーション2]
支持基板10と絶縁層11との間の界面50の不規則な粗面とし、シミュレーションを行った。界面50のZ方向の最大値と最小値との差Dを3水準とした。
サンプルA:D=1μm
サンプルB:D=2μm
サンプルC:D=4μm
その他のシミュレーション条件はシミュレーション1と同じである。
【0059】
図15は、シミュレーション2における周波数に対するアドミッタンスの大きさを示す図である。バルク波に起因するスプリアス64が形成される周波数帯域を拡大している。図15に示すように、サンプルAは比較例1とほぼ同じスプリアスの大きさである。サンプルBはサンプルAよりスプリアスが小さく、サンプルCはサンプルBよりスプリアスが小さい。このように、粗面の粗さによりスプリアスの大きさが異なる。
【0060】
不規則な凹凸を有する粗面では、XY平面の場所により粗面の粗さが異なることになる。これにより、微視的にみるとスプリアスの大きさ等の特性が場所により異なることになる。例えば、粗面の粗さをスプリアスが最も小さくなる粗さとしても、場所によりスプリアスの大きさが異なると、巨視的にみれば最適なスプリアスより大きくなってしまう。
【0061】
実施例1では、凸部51および/または凹部52を規則的に配置している。これにより、スプリアスの大きさ等の特性を均一にできる。
【0062】
[実験1]
実施例1と比較例1について弾性波共振器を作製した。作製条件は以下である。
支持基板10: 厚さが500μmのサファイア基板
絶縁層11:平均厚さが2.8μm(0.4λ)の酸化シリコン膜
接合層13:厚さが10nmの酸化アルミニウム膜
圧電基板12:厚さが2μm(0.4λ)の42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
電極指15:圧電基板12側から厚さが160nmのチタン膜、厚さが268nmのアルミニウム膜
電極指15のピッチλ:5μm
電極指15の対数:100対
凸部51の立体形状:図4(a)の円錐形状
凸部51の配置:図8(b)の配置、Pa=3μm、W=2.7μm、H=1.65μmとした。
【0063】
図16は、実験1における周波数に対するアドミッタンスの実部および大きさを示す図である。図16は、共振周波数frおよび反共振周波数fa付近の拡大図である。図16に示すように、実施例1は比較例1に比べスプリアス66が小さくなっている。スプリアス66は、バルク波に起因するものでなくY方向に伝搬する弾性波に起因する横モードスプリアスである。図16のように、実施例1では横モードスプリアスを小さくできる。特に、図8(b)のように方向54aから54bをX方向およびY方向のいずれとも異ならせることで横モードスプリアスを抑制できる。
【0064】
実施例1によれば、一対の櫛型電極18は、圧電基板12上に設けられ、複数の電極指15を有する。支持基板10aは規則的に配置された凸部51および/または凹部52を有する。絶縁層11は、圧電基板12と支持基板10との間に直接または間接的に接合され、接合面の界面が凸部51および/または凹部52に沿って設けられている。これにより、スプリアスの大きさ等の特性の均一性を向上させることができる。
【0065】
絶縁層11は支持基板10の上面に接する。これにより、バルク波が界面50において散乱または支持基板10に吸収され、スプリアス64を抑制できる。
【0066】
界面50の算術平均粗さRaは、10nm以上かつ1000nm以下が好ましく、50nm以上かつ500nm以下がより好ましく、100nm以上かつ300nm以下がさらに好ましい。界面50の算術平均粗さは絶縁層11と圧電基板12との界面の算術平均粗さおよび/または圧電基板12の表面の算術平均粗さの10倍以上が好ましく100倍以上がより好ましい。
【0067】
凸部および凹部の配置の例5、6および9のように、複数の電極指15の配列方向(X方向)と異なる方向に、凸部51および/または凹部52の周期のうち最も小さい周期Paの方向54、54aおよび54bを有する。これにより、凹部52または凸部51で反射するX方向に伝搬するバルク波の位相が異なる。よって、バルク波に起因するスプリアスを抑制できる。方向54、54aおよび54bとX方向のなす角度は10°以上が好ましく、20°以上がより好ましく、30°以上がさらに好ましい。
【0068】
また、複数の電極指15の延伸方向(Y方向)と異なる方向に、周期Paの方向54、54aおよび4bを有する。これにより、凹部52または凸部51で反射するY方向に伝搬する弾性波の位相が異なる。よって、横モードスプリアスを抑制できる。方向54、54aおよび54bとY方向のなす角度は10°以上が好ましく、20°以上がより好ましく、30°以上がさらに好ましい。
【0069】
凸部および凹部の配置の例6のように、X方向およびY方向のいずれとも異なる方向に、周期Paの方向54aおよび54b並びに凸部51および/または凹部52の周期のうち2番目に小さい周期Pbの方向55aおよび55bを有する。これにより、バルク波に起因するスプリアスおよび横モードスプリアスをより抑制できる。方向55aおよび55bとX方向およびY方向のなす角度は10°以上が好ましく、20°以上がより好ましく、30°以上がさらに好ましい。
【0070】
周期Paは、弾性波の波長λとしたとき、λ/16以上かつλ未満、すなわち、複数の電極指15のピッチの1/8倍以上かつ2倍未満が好ましい。これにより、X方向に伝搬するバルク波および/またはY方向に伝搬する弾性波の位相を異ならせることができる。よって、スプリアスをより抑制できる。周期Paは、複数の電極指15のピッチの0.15倍以上かつ1.8倍以下がより好ましく、1/4倍以上かつ3/4倍以下がさらに好ましい。電極指15の平均ピッチは、IDT22のX方向の長さを電極指15の本数で除することにより算出できる。
【0071】
立体形状の例1の図4(a)から図4(l)のように、凸部51および凹部52の少なくとも一方を島状とすることができる。立体形状の例2の図9(a)から図9(c)ように、凸部51および凹部52の少なくとも一方を平面方向のうち1つの方向に延伸する形状とすることができる。
【0072】
凸部および凹部の配置の例3の図7(a)では、周期Paの方向54aはX方向であるが、方向54bおよび54cはY方向と平行でない。X方向およびY方向は支持基板10の側面の方向である。この場合、太線57のように、支持基板10は凸凹に割れようとする。このため、凸凹のいずれかが起点となり支持基板10にクラックが導入されうる。
【0073】
一方、凸部および凹部の配置の例4の図7(b)では、周期Paの方向54aおよび54bはいずれもX方向およびY方向と略平行である。支持基板10を切断するときに太線57のように、支持基板10は直線的に割れる。よって、支持基板10のクラック等を抑制できる。
【0074】
IDT22がSH(Shear Horizontal)を励振するとき、バルク波が生成されやすい。圧電基板12が36°以上かつ48°以下回転Yカットタンタル酸リチウム基板のとき、SH波が励振される。よって、このとき、界面50の凸部51および凹部52を設けることが好ましい。圧電基板12の厚さが弾性波の波長λ以下のとき、すなわち電極指15のピッチの平均値に2倍以下のとき、損失が抑制される。また、支持基板10の上面から圧電基板12の上面までの距離が電極指15のピッチの平均値に4倍以下のとき、損失が抑制される。
【0075】
弾性波が支持基板10に漏れないように、支持基板10の音響インピーダンスは圧電基板12の音響インピーダンスより高い(すなわち支持基板10の音速は圧電基板12の音速より速い)ことが好ましい。また、絶縁層11内に弾性波が伝搬するため絶縁層11の音響インピーダンスは圧電基板12および支持基板10の音響インピーダンスより低い(すなわち絶縁層11の音速は圧電基板12および支持基板10の音速より遅い)ことは好ましい。
【実施例2】
【0076】
図17(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図である。図17(a)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振器S1からS3が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振器P1およびP2が並列に接続されている。1または複数の直列共振器S1からS3および1または複数の並列共振器P1およびP2の少なくとも1つに実施例1の弾性波共振器を用いることができる。ラダー型フィルタの共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタは、多重モード型フィルタでもよい。
【0077】
[実施例2の変形例1]
図17(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。図17(b)に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ40が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ42が接続されている。送信フィルタ40は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ42は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ40および受信フィルタ42の少なくとも一方を実施例2のフィルタとすることができる。
【0078】
マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したがトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0079】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
10 支持基板
11 絶縁層
12 圧電基板
13 接合層
15 電極指
18 櫛型電極
20 弾性波共振器
22 IDT
54、54a-54c、55a、55b 周期の方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17