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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】基材相溶化粒子を用いた新規接着剤
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/12 20060101AFI20241007BHJP
   C09J 201/02 20060101ALI20241007BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B32B7/12
C09J201/02
C09J11/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019120881
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2020015307
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】16/042,627
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・イフタイム
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・ルイス・ベイカー・リベスト
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・マシュー・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジュンフア・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ユージン・シン・ミン・ベー
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535447(JP,A)
【文献】特表2017-532409(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080708(WO,A1)
【文献】特開2012-144398(JP,A)
【文献】特開2008-159870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 1/00-5/10,9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の結合基材であって、
第一材料の第一基材と、
前記第一材料の第二基材と、及び
前記第一基材と前記第二基材を結合する接着剤であって、前記第一及び第二基材化学的に結合する化学結合相溶化粒子を有する、接着剤と、を含み、
前記第一材料が金属酸化物であり、
前記化学結合相溶化粒子が前記第一材料の金属酸化物からなる粒子を含み、
前記化学結合相溶化粒子が、ビニル基及びエポキシ反応性基からなる群より選ばれる官能基で表面が官能化され、前記化学結合相溶化粒子がエポキシ基で表面が官能化されている場合、リンカー材料がアミノ基又はエポキシ基のいずれかを含み、前記化学結合相溶化粒子がビニル基で表面が官能化されている場合、リンカー材料がビニル基を含む、一対の結合基材。
【請求項2】
一対の結合基材であって、
第一材料の第一基材と、
前記第一材料の第二基材と、及び
前記第一基材と前記第二基材を結合する接着剤であって、前記第一及び第二基材化学的に結合する化学結合相溶化粒子を有する、接着剤と、を含み、
前記第一材料がアルミニウムからなり、かつ前記化学結合相溶化粒子が酸化アルミニウムからなり、
前記化学結合相溶化粒子が、ビニル基及びエポキシ反応性基からなる群より選ばれる官能基で官能化で表面が官能化され、前記化学結合相溶化粒子がエポキシ基で表面が官能化されている場合、リンカー材料がアミノ基又はエポキシ基のいずれかを含み、前記化学結合相溶化粒子がビニル基で表面が官能化されている場合、リンカー材料がビニル基を含む、一対の結合基材。
【請求項3】
一対の結合基材であって、
第一材料の第一基材と、
前記第一材料の第二基材と、及び
前記第一基材と前記第二基材を結合する接着剤であって、前記第一及び第二基材化学的に結合する化学結合相溶化粒子を有する、接着剤と、を含み
前記第一材料がチタンからなり、かつ前記化学結合相溶化粒子が酸化チタンからなり、
前記化学結合相溶化粒子が、ビニル基及びエポキシ反応性基からなる群より選ばれる官能基で表面が官能化され、前記化学結合相溶化粒子がエポキシ基で表面が官能化されている場合、リンカー材料がアミノ基又はエポキシ基のいずれかを含み、前記化学結合相溶化粒子がビニル基で表面が官能化されている場合、リンカー材料がビニル基を含む、一対の結合基材。
【請求項4】
一対の結合基材であって、
第一材料の第一基材と、
前記第一材料の第二基材と、及び
前記第一基材と前記第二基材を結合する接着剤であって、前記第一及び第二基材化学的に結合する化学結合相溶化粒子を有する、接着剤と、を含み、
前記第一材料がマグネシウムからなり、かつ前記化学結合相溶化粒子が酸化マグネシウムからなり、
前記化学結合相溶化粒子が、ビニル基及びエポキシ反応性基からなる群より選ばれる官能基で表面が官能化され、前記化学結合相溶化粒子がエポキシ基で表面が官能化されている場合、リンカー材料がアミノ基又はエポキシ基のいずれかを含み、前記化学結合相溶化粒子がビニル基で表面が官能化されている場合、リンカー材料がビニル基を含む、一対の結合基材。
【請求項5】
一対の結合基材であって、
第一材料の第一基材と、
前記第一材料の第二基材と、及び
前記第一基材と前記第二基材を結合する接着剤であって、前記第一及び第二基材化学的に結合する化学結合相溶化粒子を有する、接着剤と、を含み、
前記化学結合相溶化粒子がエポキシ基で表面が官能化され、かつリンカー材料がアミノ基又はエポキシ基のいずれかを含む、一対の結合基材。
【請求項6】
第一材料の第一基材と前記第一材料の第二基材との間に結合を形成する化学結合相溶化粒子ネットワークを有する接着剤であって、前記第一材料が金属酸化物であり、前記化学結合相溶化粒子が前記第一材料の金属酸化物からなる粒子を含み、前記化学結合相溶化粒子ネットワーク中の化学結合相溶化粒子は、ビニル及びエポキシ反応性基からなる群より選ばれる官能基で官能化され、前記化学結合相溶化粒子がエポキシ基で表面が官能化されている場合、リンカー材料がアミノ基又はエポキシ基のいずれかを含み、前記化学結合相溶化粒子がビニル基で表面が官能化されている場合、リンカー材料がビニル基を含む、前記第一基材と前記第二基材を結合するための接着剤を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は接着剤に関し、具体的には類似の材料を接着するための接着剤に関する。
【0002】
接着剤は接合部品のために好ましい解決手段を提供するが、それはそれが低コストで、腐食のない接着を発生させ、かつ接合材料におけるファスナーと共に使用される故障しやすいスルーホールの必要性を排除するためである。従来技術の接着剤は限られた接着強度しか提供することができない。組み立てられた構造の最も弱い部分は部品間の界面で発生する。これらの位置では壊滅的な破損が頻繁に発生する。
【0003】
従来技術における粒子強化接着剤では、接合材料の機械的強度が制限される主な要因は、貧弱な粒子-ポリマー界面と、制御されていない凝集体以外に粒子間の接続がないことと、及びポリマーと接着面のみが相互作用して提供される基材付着力と、を含む。
【0004】
自動車、乗り物、及び航空機の部品の製造に使用される工業的に関連する材料の接着強度を改善する必要がある。
【0005】
一実施形態は、第一材料の第一基材、第一材料の第二基材、及び第一基材を第二基材に接着する接着剤を有する一対の接着基材であり、接着剤は第一及び第二基材と相溶性のある化学結合粒子を有する。別の実施形態は第一基材と第二基材との間に結合を形成する化学結合粒子ネットワークを有する接着剤を有する組成物であり、粒子ネットワーク中の粒子は第一基材及び第二基材と相溶性がある。
【0006】
別の実施形態は同一材料の二つの基材を接合する方法であり、それは、第一基材及び第二基材を製造することによってベア材を露出させ、第一基材及び第二基材上のベア材に接着剤を塗布し、前記接着剤は材料と相溶性がある粒子を含み、かつ前記製造によって材料と粒子との相互作用を可能にし、接着剤を硬化させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本明細書の実施形態による現在の接着剤と化学結合粒子接着剤との比較を示す。
図2】粒子を製造するための工程及びこれらの粒子を含む接着剤の実施形態の概略図を示す。
図3】COOH及びOH一次粒子と二官能性エポキシ前駆体との反応によって製造されたエポキシ官能化粒子の実施形態を示す。
図4】COOH及びOH一次粒子と二重エポキシ及びビニル官能化前駆体との反応によって製造されたビニル官能化粒子の実施形態を示す。
図5】反応性官能基を含有するシランカップリング剤の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書の実施形態は同一の材料をいくつかの重要な特徴で結合する高性能接着剤を開示している。本実施形態は相溶化粒子の直接化学結合を提供し、ここで相溶化粒子は通常マトリックス中にあり、結合される基材、材料又は構造に類似する物理化学的特性を有する粒子である。相溶化粒子が基材間の結合を強化する一つの方法はファンデルワールスの相互作用によるものである。基材と接着剤からの粒子との間のファンデルワールス結合を最大にするために、基材材料と強い誘導双極子/誘導双極子相互作用を有する粒子が選択され、かついくつかの実施形態では粒子は基材との表面積相互作用を最大にする形状を有する。結合されるべき基材との強い誘導双極子/誘導双極子相互作用を有する粒子材料を選択するための利用可能な指針は、粒子と基材の材料組成が同一であるか、又はそれが不可能な場合、相溶化粒子が対応する相溶性がある基材に類似する化学物質を含むことである。粒子の化学成分は対応する相溶性がある基材と同一であっても同一でなくてもよい。
【0009】
この議論においては、「類似の化学元素」は粒子が少なくとも対応する相溶性のある基材中に存在する重要な化学元素を含むことを意味する。材料組成を変える酸化と表面官能化などの表面の違いは必然的にあるが、ベース材料は同一であるか又は類似の化学元素を含んでいる必要がある。本明細書で使用されるとき、基材という語は任意の形態の結合されている材料、基材及び構造を含む。これらの実施形態は衝撃及び圧迫の間の粒子分離を防止する化学結合粒子ネットワークを作り出す。化学結合粒子ネットワークは結合されている構造中の材料を含む。
【0010】
特に興味深いのは、自動車や航空宇宙などへの適用における構造材料の結合である。構造材料は主にその力学的特性のために使用される材料であり、一般的には建物構造の耐荷重部材を構築するために使用されるものである。
【0011】
本実施形態はここで達成される結合強度を高めるという顕著な特徴を有する。強化粒子の化学結合ネットワークは接着力を強化することで粒子の分離を防ぐことができる。接着剤中の相溶化粒子の物理的及び/又は化学的結合は接着剤の強度を最大限に高め、かつ接着剤の結合された基材に対する相溶性と親和性を高めることができる。
【0012】
図1は従来技術の接着剤と本明細書に開示された実施形態による代表的な接着剤との比較を示す。10において、一対の結合基材12及び14は18などの弱いポリマー鎖を介して結合される。ランダムに分散した強化粒子16は粒子/ポリマー界面でポリマー鎖の成長を止める。これにより現在の接着剤は一般的に制限された接着強度を有する。また、遊離粒子は近くのエポキシ基に結合しておらず、応力による変形はポリマーマトリックスからの粒子の永久変位を引き起こし、最終的には破損を引き起こすおそれがある。ポリマー材料と単独で比較した場合、それらは凝集力の限定的な改善のみを可能にする。
【0013】
対照的に、20において一対の接合基材22及び24は基材に直接接合された粒子を有し、ここで粒子は基材と同一又は類似の特性を有する。上記のように、この議論においては、「類似」は粒子及び基材の粒子材料が同一であることを意味し、これが不可能な場合、粒子は少なくとも対応する相溶性のある基材に存在する重要な化学元素を含む。また、これらの粒子は化学結合粒子ネットワークを形成する。化学結合は粒子を他の粒子とエポキシマトリックスの両方に結合させ、それによって接着剤と結合されるべき基材との間の相互作用を最大にする。機械的及び熱的ストレス下ではネットワークは変形する可能性があるが、構成成分間の強い結合はいかなる永久変形にも抵抗して永久変形を生じることがない。結果として、現在の接着剤に比べて本明細書の実施形態は優れた熱機械的効能を有する。
【0014】
プレート、ロッド、繊維、又はランダムな形状の粒子などの非球形粒子は通常基材との結合相互作用に用いられるより高い表面積を有するが、粒子は任意の形状を有してもよい。結合相互作用は物理的及び/又は化学的結合からなる。球状粒子と比較して板状粒子のより大きな表面積にわたる静電相互作用又は双極子相互作用は、粒子と基材との間の接着強度をさらに高める可能性がある。
【0015】
一例として、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)基材と結合する際、相溶化粒子は通常グラフェン又はグラフェン誘導体である。CFRP中の炭素繊維は通常グラファイト炭素のドメインからなり、これはそれが平行グラフェン層を有することを意味する。それらは二つの主な相互作用でそれらの並外れた強さを達成する:積み重ねられたグラフェンシート間の面間、又はπ-π相互作用;そして面内の、又は溶融した炭素-炭素結合シート。化学結合されたグラフェンネットワークはπ-π相互作用を介してグラフェンプレートレットを炭素繊維のグラファイト構造に物理的に結合することによってCFRP基材への接着をさらに強化する。
【0016】
図2は粒子を製造するための工程30及びこれらの粒子を含む接着剤の実施形態の概略図を示す。適切な官能基は化学リンカーと反応して化学結合粒子ネットワークを有する硬化済み接着剤を生成することによって粒子(Y)を官能化する。官能基の例にはアミノ、ビニル、及びエポキシ反応性基が含まれる。32の既存の一般的に入手可能な初期反応性基X(例としてCOOH又はOH)は上記の所望の結合官能基を含む反応性分子(R-Y)を有する前駆体から製造された粒子上で反応する。次に、34の官能化粒子を使用して結合官能基Zを含む材料を混合することによって接着剤を製造する。混合は接着剤及び粒子充填ポリマー配合物業界で使用される任意の技術によって達成することができる。これは機械的及び磁気的撹拌、高剪断混合、遊星形ミキサー、アトライターなどを含んでもよい。硬化により36において化学結合粒子ネットワークが一対の基材を結合する。
【0017】
硬化は粒子上の官能基の性質及びZ基を含むリンカー材料の性質に依存する。硬化は室温での、二液型エポキシ接着剤でよく見られるようなエポキシ基とアミノ基との間の反応によって達成してもよい。この場合、エポキシ基はZ官能基の任意の粒子に存在し、かつアミノ基は対応する対応物に存在する。硬化はイオン液体又は有機三級アミンなどの緩速硬化開始剤を含有するエポキシ配合物を用いて周囲温度より高い温度で加熱することによって達成することができる。周囲温度より高い温度で加熱することによる硬化もビニル基を含有する基を有する配合物に適している。この場合、リンカー上の粒子及びZ基の両方が重合性ビニル基を含有する。配合物は過酸化ベンゾイル(BPO)又はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル開始剤をも含む。硬化はまたUV光を使用することによって達成してもよい。この場合にはUV光開始剤が硬化開始のために必要とされる。この方法はガラスなどの透明基材を接着することに適する。
【0018】
COOH及び/又はOH官能基を含む初期粒子はいくつかの供給元から購入することができる。これらは以下を含む:アミノ、COOH、OH、エポキシなどの官能基を有するシリカ(SiO);アミノ又はCOOHを有するアルミナ(Al);アミノ又はCOOHを有するチタニア(TiO);SiOナノ粒子のようなゾル-ゲル法による水分散性粒子又はナノ粒子の形態の酸化マグネシウム(MgO);及び幅広く利用可能な酸化グラフェン官能化粒子。
【0019】
上記議論は化学結合基材相溶化粒子を有する一般的な接着剤を開示している。実施は結合される基材に特定的であってもよい。粒子の選択は本実施形態を従来技術の接着剤と区別する。粒子は結合される基材の熱的及び機械的、又は熱機械的特性に合うように選択される。熱特性は熱伝導率、熱膨張係数、及び熱容量を含むことができる。機械的特性は剪断強度、ヤング率、引張強度、圧縮強度、及び硬度を含むがこれらに限定されない。粒子はまた基材の化学組成を一致させることによって腐食の可能性を最小限に抑えるために選択される。粒子自体の機械的及び熱的(熱機械的)特性は結合される基材よりも優れている可能性があるが、濃度及び相溶化エポキシマトリックスは接着剤混合物ができるだけ近くそして理想的には結合される基材に適合する特性を有するように選択される。いくつかの実施形態において、相溶化粒子は結合される基材と同一材料の金属酸化物からなる。
【0020】
例えば、様々な材料の結合を強化するために使用される粒子は、CFRP-CFRPの結合であれば、任意の適切なグラフェン前駆体から得てもよい官能化グラフェン粒子を含む。特定の一例は酸化グラフェン官能化粒子を含む。官能性グラフェン粒子の製造に使用可能な他の任意のグラフェン前駆体が本発明に適している;アルミニウム-アルミニウム、酸化アルミニウム(Al)粒子;ガラス-ガラス又は繊維強化ポリマー(FRP)-FRP、酸化ケイ素(SiO)粒子;チタン-チタン、二酸化チタン(TiO);マグネシウム-マグネシウム、酸化マグネシウム(MgO)。
【0021】
官能基を導入するための多くの化学的工程はそれらの製造時に粒子表面に存在するOH又はCOOH第一官能基を使用する。アミノ、ビニル及びエポキシのようなY官能化粒子の製造のための化学的工程は一般的には類似している。出発粒子の性質は化学的工程に大きく影響しない。図3~5はY官能化粒子の製造に適した化学的工程の例を示す。
【0022】
図3はCOOH(40)及びOH(44)一次粒子と二官能性エポキシ前駆体との反応によってそれぞれ製造されたエポキシ官能化粒子42及び46を示す。
【0023】
図4はCOOH(50)及びOH(54)一次粒子と二重エポキシ及びビニル官能化前駆体との反応によってそれぞれ製造されたビニル官能化粒子52及び56を示す。ビニル官能基は脂肪族アルケン、芳香族アルケン、アクリレート、及びメタクリレート等を含んでもよい。
【0024】
図5は60のCOOH及び62のOH官能基を60及び64のアクリレート及びメタクリレートの形態のビニル、並びに62及び66のアミノのような適切な反応性官能基を含むシランカップリング剤と反応させることによる種々の官能基の導入を示す。シランカップリング剤は幅広く入手可能である。
【0025】
同一材料で製造された二つの基材はまず表面エッチングなどによってそれらの表面を製造してベア材を露出させることによって接合される。次いで接着剤はベア材に適用され、二つの基材を結合して必要に応じて互いに圧接させて接着剤を硬化させる。一貫した結合線を確実にするために、少量の球状ガラスビーズを接着剤と混合してもよい。基材の製造は複数の方法で達成することができる。それは研磨又はサンドブラストのような機械的摩耗方法、有機溶媒又は水性洗浄剤による表面洗浄、クロム酸による化学エッチング(ASTM D2651に従う)、電気化学陽極酸化、UV/オゾン処理による光化学方法、及びプラズマエッチングを含む。
【実施例1】
【0026】
官能化酸化グラフェンを、酸化グラフェンを溶媒中に分散させ、分散した酸化グラフェンを少なくとも一つのエポキシ官能基とビニル、アクリレート、メタクリレート、及びエポキシから選択した二次官能基を含む反応性分子と混合して溶液を形成することによって製造した。活性化剤を溶液に添加し次いでそれを加熱し撹拌した。溶液を冷却して官能化酸化グラフェンの粒子を溶液から分離した。次いで官能化酸化グラフェンを樹脂前駆体及び任意の溶媒と混合してポリマー前駆体物質と同一又はほぼ同一の官能基を有する官能化グラフェン溶液を製造した。樹脂溶液に硬化開始剤を添加してもよい。
【0027】
サンプル1は、裸の炭素繊維材料を露出させるために2枚のCFRP基材をサンディングすることを含み、そして300ミクロンのガラスビーズを接着剤溶液中に分散させて結合厚さを制御して溶液を基材に適用したものである。本実施例では二つの基材を0.5×1インチの重なり領域で互いに接合した。次いで溶液を室温で硬化させた。
【0028】
重ね剪断強度先行試験はASTM D5868(米国材料試験協会、規格D5868「FRP接着の重ね剪断接着力のための標準試験方法)に従って実施した。比較サンプルはグラフェン粒子を含まずエポキシ基剤と硬化剤のみから組成されている。表1の結果によるとサンプル1が比較サンプルに比べて強度が向上していることが分かる。
【0029】
【表1】
【0030】
接着及び結合手順を最適化することによってさらに結合強度を向上させてもよい。例えば、グラフェン粒子配合物で製造された被覆サンプルは多数の空隙を有することが観察されたが、それは高剪断粒子分散プロセス中に混入した気泡の存在のため及び接着剤粘度を低下させるために溶媒を使用する必要があるためである。これらの欠点は市販の非粒子ベースの接着剤では見られない。高真空を使用して配合物中の溶媒を減らし、可能であれば溶媒を除去して、さらに結合強度を高める。
【0031】
さらなる試験では、サンプル1及び比較サンプルを引張試験によって引っ張った後に走査型電子顕微鏡(SEM)で検査した。比較サンプルは露出した炭素繊維を示し、これはエポキシ基材が炭素繊維の表面から単に剥離したことを意味する。対照的に、サンプル1は破壊された結合表面上に大量のグラフェン複合体が残っていたことを示す。これはグラフェン結合ネットワークの炭素繊維での強い接着を実証している。これはCFRP結合基材中に存在する炭素繊維と類似又は相溶性であるグラフェン粒子によって接着強度を増強することができることを証明する。
【0032】
注意すべきは、上記の例はCFRP基材及び接着剤中のグラフェン粒子に対するものであるが、他の基材に対する他の配合物も同一の性能改善を有することである。特許請求の範囲をこの特定の物質系に限定する意図はなく、又はそれを示唆してもいない。
【0033】
このようにすると、類似する基材間の強化された結合が最新技術の接着剤を超えて達成される。粒子の化学結合ネットワークは基材の表面に直接結合し、最大の接着強度を提供する。強化粒子の化学結合ネットワークは衝撃及び圧迫過程における粒子の動きを防止する。基材に適合する化学的及び機械的に適合性のある強化粒子の存在は優れた熱機械的効能を可能にする。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕
一対の結合基材であって、
第一材料の第一基材と、
前記第一材料の第二基材と、及び
前記第一基材と前記第二基材を結合する接着剤であって、前記第一及び第二基材と相溶性のある化学結合相溶化粒子を有する、接着剤と、を含む、一対の結合基材。
〔2〕
前記化学結合相溶化粒子が対応する前記第一及び第二基材に類似している化学元素を有する粒子を含む、前記〔1〕に記載の一対の結合基材。
〔3〕
前記化学結合相溶化粒子が前記第一及び第二基材の熱機械的特性に一致する熱機械的特性を有する粒子を含む、前記〔1〕に記載の一対の結合基材。
〔4〕
前記化学結合粒子が前記第一材料の金属酸化物からなる粒子を含む、前記〔1〕に記載の一対の結合基材。
〔5〕
前記第一材料が炭素繊維強化ポリマー(CFRP)からなり、かつ前記粒子が酸化グラフェン官能化粒子又はグラフェン官能化粒子のいずれかからなる、前記〔1〕に記載の一対の結合基材。
〔6〕
前記第一材料がアルミニウムからなり、かつ前記粒子が酸化アルミニウムからなる、前記〔1〕に記載の一対の結合基材。
〔7〕
前記第一材料がガラス繊維強化ポリマー(FRP)又はガラスのいずれかからなり、前記粒子が酸化ケイ素からなる、前記〔1〕に記載の一対の結合基材。
〔8〕
前記第一材料がチタンからなり、かつ前記粒子が酸化チタンからなる、前記〔1〕に記載の一対の結合基材。
〔9〕
前記第一材料がマグネシウムからなり、かつ前記粒子が酸化マグネシウムからなる、前記〔1〕に記載の一対の結合基材。
〔10〕
前記相溶化粒子がエポキシ基で表面が官能化され、かつリンカー材料がアミノ基又はエポキシ基のいずれかを含む、前記〔1〕に記載の一対の結合基材。
〔11〕
前記相溶化粒子がビニル結合で表面が官能化され、かつリンカー材料がビニル基を含む、前記〔1〕に記載の一対の結合基材。
〔12〕
第一基材と第二基材との間に結合を形成する化学結合粒子ネットワークを有する接着剤であって、前記粒子ネットワーク中の相溶化粒子は前記第一及び第二基材と相溶性がある、接着剤を含む、組成物。
〔13〕
前記化学結合粒子が、対応する前記第一及び第二基材に類似している化学元素を有する粒子を含む、前記〔12〕に記載の組成物。
〔14〕
前記化学結合粒子が前記第一及び第二基材の熱機械的特性に一致する熱機械的特性を有する粒子を含む、前記〔12〕に記載の組成物。
〔15〕
前記化学結合粒子が前記第一材料の金属酸化物からなる粒子を含む、前記〔12〕に記載の組成物。
〔16〕
前記相溶化粒子がエポキシ基で表面が官能化され、かつリンカー材料がアミノ基又はエポキシ基のいずれかを含む、前記〔12〕に記載の組成物。
〔17〕
前記相溶化粒子がビニル結合で表面が官能化され、かつリンカー物質がビニル基を含む、前記〔12〕に記載の組成物。
〔18〕
同一材料の二つの構造を接合する方法であって、
第一構造及び第二構造を製造することによってベア材を露出させることと、
前記第一及び第二構造上で前記ベア材に接着剤を塗布し、前記接着剤が前記ベア材と相溶性がある相溶化粒子を含み、かつ前記製造によって前記ベア材と前記相溶化粒子との相互作用を可能にすることと、
二つの基材を結合することと、及び
前記接着剤を硬化させることと、を含む、方法。
〔19〕
前記第一及び第二構造を製造することが、前記接着剤が適用される前記第一及び第二構造の一部の機械的な摩耗を含む、前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕
前記第一及び第二構造を製造することが、前記接着剤が適用される前記第一及び第二構造の一部のエッチングを含み、前記エッチングが化学エッチング、電気化学陽極酸化、UV/オゾン処理による光化学エッチング、又はプラズマエッチングであってもよい、前記〔18〕に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5