(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/02 20060101AFI20241007BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20241007BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20241007BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H01F17/02
H01F17/00 B
H01F27/32 130
H01F27/32 170
H01F41/04 C
(21)【出願番号】P 2019196245
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-09-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0081383
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ジ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ムーン、ビョン チョル
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ジョウン グル
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】畑中 博幸
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/107289(WO,A1)
【文献】特開2016-9862(JP,A)
【文献】特開平5-234811(JP,A)
【文献】特開2004-221572(JP,A)
【文献】特開2008-195782(JP,A)
【文献】特表2019-508906(JP,A)
【文献】特開2015-79958(JP,A)
【文献】特開2000-124031(JP,A)
【文献】特開平11-204335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/00-1/44
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00-27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10-41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子樹脂の硬化物である非磁性体本体と、
前記非磁性体本体内に埋設され、厚さが30μm以下の絶縁基板と、
前記絶縁基板の互いに向かい合う一面及び他面にそれぞれ配置された第1及び第2コイルパターンを含むコイル部と、
前記第1及び第2コイルパターンとそれぞれ連結されるように、前記非磁性体本体の表面に配置された第1及び第2外部電極と、を含み、
前記非磁性体本体は、前記コイル部を貫通するコアを含み、
前記コアに、前記高分子樹脂の硬化物が
、前記絶縁基板の厚さ方向に前記一面から前記他面にわたり、連続して前記絶縁基板に接するように充填されている、
コイル部品。
【請求項2】
前記非磁性体本体は、前記高分子樹脂の硬化物内に分散した非磁性体粉末をさらに含む、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記非磁性体粉末は、前記第1及び第2コイルパターンのそれぞれと接触する、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記非磁性体粉末が、前記コアに配置されている、請求項2または3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記高分子樹脂の硬化物の全体積に対する前記非磁性体粉末の体積は50vol%以上である、請求項2から4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記非磁性体粉末は、有機フィラー及び無機フィラーのうち少なくとも一つを含む、請求項2から
5の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記有機フィラーは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS、Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)、セルロースアセテート(Cellulose acetate)、ナイロン(Nylon)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、Polymethyl methacrylate)、ポリベンゾイミダゾール(Polybenzimidazole)、ポリカーボネート(Polycarbonate)、ポリエーテルスルホン(Polyether sulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、Polyetherether ketone)、ポリエーテルイミド(PEI、Polyetherimide)、ポリエチレン(Polyethylene)、ポリ乳酸(Polylactic acid)、ポリオキシメチレン(Polyoxymethylene)、ポリフェニレンオキサイド(Polyphenylene oxide)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene sulfide)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリスチレン(Polystyrene)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chlroride)、エチレン酢酸ビニル(Ethylene vinyl acetate)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol)、ポリエチレンオキサイド(Polyethylene oxide)、エポキシ(Epoxy)、及びポリイミド(Polyimide)のうち少なくとも一つを含む、請求項
6に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記無機フィラーは、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、及び酸化チタン(TiO
2)のうち少なくとも一つを含む、請求項
6または
7に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記絶縁基板の厚さは10μm以上である、請求項1から
8のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第1及び第2コイルパターンはそれぞれ、前記絶縁基板に接触する第1導電層、及び前記第1導電層上に配置された第2導電層を含む、請求項1から
9のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1導電層は、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、及びモリブデン(Mo)のうち少なくとも一つを含み、
前記第2導電層は銅(Cu)を含む、請求項
10に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第2導電層は前記第1導電層の側面の少なくとも一部を露出する、請求項
10または
11に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記第2導電層は、前記第1導電層をカバーし、前記絶縁基板に接触する、請求項
10または
11に記載のコイル部品。
【請求項14】
前記第2導電層の側面は前記非磁性体本体と接触する、請求項
10から
13のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項15】
前記第1導電層の側面および前記第2導電層の側面は、前記非磁性体本体と接触する、請求項
10から
12のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項16】
前記非磁性体本体の厚さは0.65mm以下である、請求項1から
15のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項17】
前記非磁性体本体は、互いに向かい合う一端面と他端面、及び前記一端面と前記他端面を互いに連結する一面を有し、
前記第1コイルパターンの一端部は前記非磁性体本体の一端面に露出し、前記第2コイルパターンの一端部は前記非磁性体本体の他端面に露出し、
前記第1及び第2外部電極はそれぞれ、前記非磁性体本体の一端面及び他端面に形成され、前記非磁性体本体の一面に延長する、請求項1から
16のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項18】
前記第1及び第2外部電極はそれぞれ前記非磁性体本体の一端面及び他端面をカバーする、請求項
17に記載のコイル部品。
【請求項19】
前記第1コイルパターンの一端部は、前記非磁性体本体の一端面及び前記非磁性体本体の一面にそれぞれ露出し、
前記第2コイルパターンの一端部は、前記非磁性体本体の他端面及び前記非磁性体本体の一面にそれぞれ露出する、請求項
17に記載のコイル部品。
【請求項20】
前記第1及び第2コイルパターンはそれぞれ、前記非磁性体本体の一面に垂直に配置される、請求項
19に記載のコイル部品。
【請求項21】
厚さが30μm以下の絶縁基板と、
前記絶縁基板の少なくとも一面に複数のターン(turn)を形成した平面スパイラル状のコイルパターンを含むコイル部と、
非磁性体粉末及び高分子樹脂を含み、内部に前記絶縁基板及び前記コイル部を埋設し、厚さが0.65mm以下である本体と、を含み、
前記本体は、前記コイルパターンの前記複数のターン(turn)のそれぞれの間の空間を充填して前記コイルパターンに接触し、
前記本体は、前記コイル部を貫通するコアを含み、
前記コアに、前記高分子樹脂が
、前記絶縁基板の厚さ方向に前記絶縁基板の互いに向かい合う前記一面及び他面にわたり、連続して前記絶縁基板に接するように充填されている、
コイル部品。
【請求項22】
前記非磁性体粉末は、前記コイルパターンと接触する、請求項
21に記載のコイル部品。
【請求項23】
前記非磁性体粉末が、前記コアに配置されている、請求項
21または
22に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コイル部品のうちの一つであるインダクタ(inductor)は、抵抗(Resistor)及びキャパシタ(Capacitor)とともに電子機器に用いられる代表的な受動電子部品である。
【0003】
コイル部品の一種類である高周波インダクタ(HF Inductor)は100MHz以上の高周波帯域で用いられ、信号端のノイズ除去用やインピーダンスマッチング用として用いられる。
【0004】
高周波インダクタは、通常、導体ペーストがコイル状に印刷された誘電体セラミックグリーンシートを複数積層し、これを焼結して形成される。この場合、コイルの各ターン(turn)がグリーンシートの積層方向に形成された3次元スパイラル(helix)状に形成されるようになり、部品の薄型化に不利である可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、薄型化(Low-profile)が可能な高周波用コイル部品を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、高周波帯域における部品の特性を向上させたコイル部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、高分子樹脂の硬化物である非磁性体本体と、上記本体内に埋設され、厚さが30μm以下の絶縁基板と、上記絶縁基板の互いに向かい合う一面及び他面にそれぞれ配置された第1及び第2コイルパターンを含むコイル部と、上記本体の表面に露出した上記第1及び第2コイルパターンとそれぞれ連結されるように、上記本体の表面に配置された第1及び第2外部電極と、を含むコイル部品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、高周波用コイル部品を薄型化(Low-profile)することができる。
【0010】
また、本発明によると、高周波帯域における部品の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施例によるコイル部品を概略的に示す図面である。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った断面を示す図である。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面を示す図である。
【
図5】
図1のAの変形例を拡大したことを示す図である。
【
図6】本発明の第1実施例によるコイル部品の動作周波数に応じたインダクタンスの変化を比較例と対比して示す図である。
【
図7】本発明の第2実施例によるコイル部品を概略的に示す図である。
【
図8】
図7のIII-III'線に沿った断面を示す図である。
【
図9】
図7のIV-IV'線に沿った断面を示す図である。
【
図11】
図7のBの変形例を拡大したことを示す図である。
【
図12】本発明の第3実施例によるコイル部品を下部側から見たことを概略的に示す図である。
【
図13】本発明の第3実施例によるコイル部品を下部側から見たことを概略的に示す図である。
【
図14】
図12のC方向から見たことを概略的に示す図である。
【
図15】本発明の第3実施例の変形例を示すものであって、
図12のC方向から見たことに対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で用いられた用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」などという用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためのものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。また、明細書全体において、「上に」とは、対象部分の上又は下に位置することを意味するものであり、必ずしも重力方向を基準に上側に位置することを意味するものではない。
【0013】
また、組み合わせとは、各構成要素間の接触関係において、各構成要素間の物理的に直接接触している場合だけを意味するのではなく、他の構成が各構成要素間に介在して、その他の構成に構成要素がそれぞれ接触している場合までを包括する概念として使用する。
【0014】
図面に示された各構成のサイズと厚さは、説明の便宜のために任意に示したものであるため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。
【0015】
図面において、L方向は第1方向又は長さ方向、W方向は第2方向又は幅方向、T方向は第3方向又は厚さ方向と定義することができる。
【0016】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施例よるコイル部品について説明する。添付図面を参照して説明するにあたり、同一であるか、又は対応する構成要素に対しては同一の図面符号を付与し、これに対する重複説明は省略する。
【0017】
電子機器には、様々な種類の電子部品が用いられるが、このような電子部品の間には、ノイズ除去などを目的に、様々な種類のコイル部品が適切に用いられることができる。すなわち、電子機器のコイル部品は、パワーインダクタ(Power Inductor)、高周波インダクタ(HF Inductor)、通常のビーズ(General Bead)、高周波用ビーズ(GHz Bead)、コモンモードフィルタ(Common Mode Filter)などで用いられることができる。
【0018】
一方、以下では、本発明の実施例によるコイル部品が高周波帯域(100MHZ以上)で用いられる高周波インダクタであることを前提に説明するが、本発明の範囲がこれに制限されるものではない。
【0019】
(第1実施例及び変形例)
図1は本発明の第1実施例によるコイル部品を概略的に示す図であり、
図2は
図1のI-I'線に沿った断面を示す図であり、
図3は
図1のII-II'線に沿った断面を示す図であり、
図4は
図1のAを拡大したことを示す図であり、
図5は
図1のAの変形例を拡大したことを示す図であり、
図6は本発明の第1実施例によるコイル部品の動作周波数に応じたインダクタンスの変化を比較例と対比して示す図である。
【0020】
図1~
図5を参照すると、本発明の第1実施例によるコイル部品1000は、本体100、絶縁基板200、コイル部300、及び外部電極400、500を含む。
【0021】
本体100は、本実施例によるコイル部品1000の全体的な外観をなし、内部に絶縁基板200及びコイル部300が埋設される。
【0022】
本体100は、全体的に六面体状に形成されることができる。
【0023】
図1~
図3を基準に、本体100は、長さ方向Lに向かい合う第1面101及び第2面102、幅方向Wに向かい合う第3面103及び第4面104、厚さ方向Tに向かい合う第5面105及び第6面106を含む。本体100の第1~第4面101、102、103、104はそれぞれ、本体100の第5面105と第6面106を連結する本体100の壁面に該当する。以下、本体100の両端面は本体100の第1面101及び第2面102を意味し、本体100の両側面は本体100の第3面103及び第4面104を意味し、本体100の一面は本体100の第6面106を意味し、本体100の他面は本体100の第5面105を意味することができる。なお、以下、本体100の第5面105及び第6面106は、
図1~
図3の方向を参照して、本体100の上面及び下面と呼ばれる場合がある。
【0024】
本体100は、後述する外部電極400、500が形成された本実施例によるコイル部品1000が2.0mmの長さ、1.2mmの幅、及び0.65mmの厚さを有するように形成されることができるが、これに制限されるものではない。または、本体100は、外部電極400、500が形成された本実施例によるコイル部品1000が2.0mmの長さ、1.6mmの幅、及び0.55mmの厚さを有するように形成されることができる。または、本体100は、外部電極400、500が形成された本実施例によるコイル部品1000が2.0mmの長さ、1.2mmの幅、及び0.55mmの厚さを有するように形成されることができる。または、本体100は、外部電極400、500が形成された本実施例によるコイル部品1000が1.2mmの長さ、1.0mmの幅、及び0.55mmの厚さを有するように形成されることができる。但し、上述した本実施例によるコイル部品1000のサイズは、例示的なものに過ぎないため、上述したサイズ以下のサイズで形成された場合を本発明の範囲から除外させることはない。
【0025】
本体100は、高分子樹脂の硬化物Rである非磁性体であることができる。本実施例では、一例として、後述するコイル部300が形成された絶縁基板200の両面に非磁性体の熱硬化性高分子樹脂、硬化剤、及び硬化促進剤などを含む絶縁シートを一つ以上積層した後、積層された絶縁シートを熱硬化することにより本体100を形成することができる。一方、本明細書において、非磁性体とは、比透磁率(relative permeability)が1に近い値を有し、外部磁場にほとんど影響を受けない物質を意味する。したがって、本明細書において、非磁性体には常磁性体及び反磁性体が含まれる。
【0026】
高分子樹脂の硬化物Rは、エポキシ(epoxy)、ポリイミド(polyimide)、液晶結晶性ポリマー(Liquid Crystal Polymer)などを単独または混合した熱硬化性高分子樹脂を熱硬化することにより形成することができる。
【0027】
本体100は、後述するコイル部300を貫通するコア110を含む。コア110は、複合シートを積層及び硬化する工程において、複合シートの少なくとも一部がコイル部300の貫通孔を充填することによって形成されることができるが、これに制限されるものではない。
【0028】
絶縁基板200は本体100に埋設される。絶縁基板200は、後述するコイル部300を支持する構成である。
【0029】
絶縁基板200は、エポキシ樹脂のような熱硬化性絶縁樹脂、ポリイミドのような熱可塑性絶縁樹脂または感光性絶縁樹脂を含む絶縁材料で形成されるか、またはこれらの絶縁樹脂にガラス繊維や無機フィラーのような補強材が含浸された絶縁材料で形成されることができる。一例として、絶縁基板200は、プリプレグ(prepreg)、ABF(Ajinomoto Build-up Film)、FR-4、BT(Bismaleimide Triazine)フィルム、PID(Photo Imageable Dielectric)フィルムなどの絶縁材料で形成されることができるが、これに制限されるものではない。
【0030】
無機フィラーとして、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)、硫酸バリウム(BaSO4)、タルク、泥、マイカ粉、水酸化アルミニウム(AlOH3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、ホウ酸アルミニウム(AlBO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、及びジルコン酸カルシウム(CaZrO3)からなる群より選択された少なくとも一つ以上が用いられることができる。
【0031】
絶縁基板200が補強材を含む絶縁材料で形成される場合、絶縁基板200は、より優れた剛性を提供することができる。絶縁基板200がガラス繊維を含まない絶縁材料で形成される場合、絶縁基板200は、コイル部300全体の厚さを薄型化するのに有利である。絶縁基板200が感光性絶縁樹脂を含む絶縁材料で形成される場合には、コイル部300を形成するための工程数が減少し、生産コストの削減に有利であり、微細なビアを形成することができる。
【0032】
本実施例において、絶縁基板200は、絶縁樹脂210、及び絶縁樹脂210に含浸されたガラスクロス(glass cloth)220を含む。制限されない例として、絶縁基板200は、銅箔積層板(Copper Clad Laminate、CCL)を用いて形成されることができる。ガラスクロス220は、複数のガラス繊維が織造されたものを意味する。
【0033】
ガラスクロス(glass cloth)は複数の層で形成されることができる。ガラスクロスが複数の層で形成される場合には、絶縁基板200の剛性をさらに向上させることができる。また、絶縁基板200が後述する第1導電層311a、312aの除去工程などで損なわれても、絶縁基板200の形状が維持されて不良率を下げることができる。
【0034】
絶縁基板200の厚さT1は10μm以上30μm以下であることができる。絶縁基板200の厚さT1が10μm未満の場合には、絶縁基板200の剛性を十分に確保することが難しくなり、製造工程の過程で後述するコイル部300を支持することが難しくなる可能性がある。絶縁基板200の厚さT1が30μmを超えると、コイル部品を薄型化するのに不利である可能性があり、同一の体積の本体100内において、絶縁基板200が占める体積が増加し、コイル部300が占めることができる体積が減少する可能性がある。
【0035】
コイル部300は、絶縁基板200に配置された平面スパイラル状のコイルパターン311、312を含み、本体100に埋設されてコイル部品の特性を発現する。例えば、本実施例において、コイル部品1000が高周波帯域(100MHZ以上)で用いられる高周波インダクタ(HF Inductor)として活用される場合、コイル部300は、信号端のノイズを除去したり、インピーダンスをマッチングする役割を果たすことができる。
【0036】
コイル部300は、第1及び第2コイルパターン311、312と、ビア320とを含む。具体的には、
図1、
図2及び
図3の方向を基準に、絶縁基板200の下面に第1コイルパターン311が配置され、絶縁基板200の上面に第2コイルパターン312が配置される。ビア320は、絶縁基板200を貫通して第1コイルパターン311及び第2コイルパターン312にそれぞれ接触連結される。このようにすることにより、コイル部300は、全体的にコア110を中心に、一つ以上のターン(turn)を形成した一つのコイルとして機能することができる。
【0037】
第1及び第2コイルパターン311、312はそれぞれ、コア110を軸に、複数のターン(turn)を形成した平面スパイラル状を有するようになる。一例として、第1コイルパターン311は、
図2の方向を基準に、絶縁基板200の下面においてコア110を軸に巻線され、それぞれの絶縁基板200の下面と接触する複数のターン(turn)を有することができる。
【0038】
第1及び第2コイルパターン311、312の端部はそれぞれ、後述する第1及び第2外部電極400、500と連結される。すなわち、第1コイルパターン311の端部は第1外部電極400と連結され、第2コイルパターン312の端部は第2外部電極500と連結される。
【0039】
一例として、第1コイルパターン311の端部は本体100の第1面101に露出し、第2コイルパターン312の端部は本体100の第2面102に露出し、結果として、本体100の第1及び第2面101、102にそれぞれ配置された第1及び第2外部電極400、500と接触連結されることができる。
【0040】
第1及び第2コイルパターン311、312はそれぞれ、絶縁基板200に接触形成された第1導電層311a、312a、及び第1導電層311a、312aに配置された第2導電層311b、312bを含む。第1コイルパターン311は、
図4及び
図5の方向を基準に、絶縁基板200の下面に接触形成された第1導電層311a、及び第1導電層311aに配置された第2導電層311bを含む。第2コイルパターン312は、
図4及び
図5の方向を基準に、絶縁基板200の上面に接触形成された第1導電層312a、及び第1導電層312aに配置された第2導電層312bを含む。
【0041】
第1導電層311a、312aは、第2導電層311b、312bを電解めっきで形成するためのシード層であってもよい。第2導電層311b、312bのシード層である第1導電層311a、312aは、第2導電層311b、312bに比べて薄く形成される。第1導電層311a、312aは、スパッタリングなどの薄膜工程または無電解めっき工程で形成されることができる。第1導電層311a、312aをスパッタリングなどの薄膜工程で形成した場合には、第1導電層311a、312aを構成する物質の少なくとも一部が絶縁基板200に浸透された形を有することができる。これは、絶縁基板200において第1導電層311a、312aを構成する金属物質の濃度が本体100の厚さ方向Tに沿って差が発生することで確認できる。
【0042】
第1導電層311a、312aの厚さは0.5μm以上3μm以下であることができる。第1導電層311a、312aの厚さを0.5μm未満とする場合には、第1導電層311a、312aを実現することが難しくなる可能性がある。第1導電層311a、312aの厚さが3μmを超えると、めっきで第2導電層311b、312bが形成された領域を除いた第1導電層311a、312aのエッチング除去時に第1導電層311a、312aが残留するか、または逆に過度にエッチングする場合には第2導電層311b、312bもともにエッチング除去される副作用が発生することがある。
【0043】
図4を参照すると、第2導電層311b、312bは、第1導電層311a、312aの側面の少なくとも一部を露出する。本実施例の場合には、絶縁基板200の両面のそれぞれの全面にシード層(後工程を介して第1導電層となる構成)を形成し、シード層に第2導電層311b、312bを形成するためのめっきレジストを形成し、電解めっきで第2導電層311b、312bを形成する。その後、めっきレジストを除去した後、第2導電層311b、312bが形成されていないシード層を選択的に除去する。したがって、シード層が選択的に除去されて形成された第1導電層311a、312aの側面の少なくとも一部は、第2導電層311b、312bによってカバーされずに露出する。シード層は、絶縁基板200に無電解めっきまたはスパッタリングを行うことにより形成することができる。または、シード層は銅箔積層板(CCL)の銅箔であることができる。めっきレジストは、めっきレジスト形成用物質をシード層に塗布した後、フォトリソグラフィ工程を行うことによって形成されることができる。フォトリソグラフィ工程後のめっきレジストは、第2導電層311b、312bが形成される領域に開口が形成されることができる。シード層を選択的に除去することは、レーザー工程またはエッチング工程で行うことができる。エッチングによりシード層を選択的に除去する場合、第1導電層311a、312aは、絶縁基板200の側に行くほど断面積が増加する形で側面が形成されることができる。
【0044】
図5を参照すると、第2導電層311b、312bは、第1導電層311a、312aをカバーして絶縁基板200に接触する。本変形例の場合、
図4の場合とは異なり、絶縁基板200の両面のそれぞれに平面スパイラル状の第1導電層311a、312aを形成し、第1導電層311a、312aに第2導電層311b、312bを電解めっきで形成する。第2導電層311b、312bを異方めっきで形成する場合、めっきレジストを用いなくてもよいが、これに制限されるものではない。等方めっきで第2導電層311b、312bを形成する場合、第2導電層を形成するためのめっきレジストを用いることができる。第2導電層を形成するためのめっきレジストには、第1導電層311a、312aを露出する開口が形成される。開口の直径は、第1導電層311a、312aの線幅よりも大きく形成され、結果として、開口を充填する第2導電層311b、312bは、第1導電層311a、312aをカバーし、絶縁基板200に接触するようになる。
【0045】
一方、本実施例の場合、上述のように、絶縁基板200にコイル部300を先に形成した後、絶縁基板200に絶縁シートを積層硬化することによって形成される。したがって、本実施例では、絶縁基板に本体となる絶縁層を先に形成し、絶縁層をコイル状の開口部を有する形でパターニングした後、コイル状の開口部に導電性物質をめっきで充填する技術とは区別される。後者の場合には、コイル状の開口部の内面(内壁及び底面)に沿って電解めっきのためのシード層が形成される。一方、上述した方法上の違いにより、後者と比較して、本実施例では、各ターン(turn)の第1導電層311a、312aが第2導電層311b、312bの側面に形成されない。すなわち、後者と比較し、本実施例では、各ターン(turn)の第2導電層311b、312bの側面が本体100と直接接触するようになる。後者の技術は、シード層が開口部の内面に沿って形成される結果として、開口部の内壁及び底面からめっき成長が起こるが、開口部の直径が開口部の深さよりも小さい場合には、電解めっき層の内部に電解めっき層が形成されないボイド(void)が発生し、不良が発生するため、開口部の縦横比(AR、Aspect Ratio、開口部内にコイルのターンが形成されるため、コイルのターンの縦横比と実質的に類似する)を増加させるのに限界がある。本実施例では、第2導電層311b、312bのシード層である第1導電層311a、312aが第2導電層311b、312bの下部側のみに配置されるため、上述した問題を解決することができる。したがって、本実施例では、コイルパターン311、312の各ターン(turn)の縦横比を向上させることができる。
【0046】
ビア320は、少なくとも一つ以上の導電層を含むことができる。一例として、ビア320を電解めっきで形成する場合、ビア320は、絶縁基板200を貫通するビアホールの内壁に形成されたシード層、及びシード層が形成されたビアホールを充填する電解めっき層を含むことができる。ビア320のシード層は、第1導電層311a、312aと同一の工程でともに形成されて相互一体に形成されるか、または第1導電層311a、312aと異なる工程で形成されて両者の間に境界が形成されることができる。
【0047】
コイルパターン311、312の各ターン(turn)の線幅が過度に小さいか、及び/または各ターン(turn)の厚さが過度に大きい場合には、本体100とコイルパターン311、312の間の結合力が問題になることがある。制限されない一例として、コイルパターン311、312の各ターン(turn)の縦横比は3:1~9:1であることができる。
【0048】
コイルパターン311、312、及びビア320はそれぞれ、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、スズ(Sn)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、またはこれらの合金などの導電性物質で形成されることができるが、これに限定されるものではない。制限されない一例として、第1導電層311a、312aをスパッタリングで形成し、第2導電層311b、312bを電解めっきで形成する場合、第1導電層311a、312aは、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、及びチタン(Ti)のうち少なくとも一つを含み、第2導電層311b、312bは銅(Cu)を含むことができる。制限されない他の例として、第1導電層311a、312aを無電解めっきで形成し、第2導電層311b、312bを電解めっきで形成する場合、第1導電層311a、312a及び第2導電層311b、312bはそれぞれ、銅(Cu)を含むことができる。この場合、第1導電層311a、312aにおける銅(Cu)の密度は、第2導電層311b、312bにおける銅(Cu)の密度よりも低くてもよい。制限されないさらに他の例として、第1導電層311a、312aは、スパッタリング法及び無電解めっき法を任意に組み合わせて複数の層で形成することができる。
【0049】
外部電極400、500は、本体100の表面に配置され、本体100の表面に露出したコイル部300とそれぞれ連結される。本実施例の場合、第1コイルパターン311の一端部は本体100の第1面101に露出し、第2コイルパターン312の一端部は本体100の第2面102に露出する。これにより、第1外部電極400は、第1面101に配置され、本体100の第1面101に露出した第1コイルパターン311の端部と接触連結され、第2外部電極500は、第2面102に配置され、本体100の第2面102に露出した第2コイルパターン312の端部と接触連結されることができる。
【0050】
外部電極400、500は、単層または複数層の構造で形成されることができる。一例として、第1外部電極400は、銅を含む第1層、第1層上に配置され、ニッケル(Ni)を含む第2層、及び第2層上に配置され、スズ(Sn)を含む第3層で構成されることができる。ここで、第1層は、無電解めっきまたはスパッタリングなどの気相蒸着法で形成されたシード層を含むことができる。第2層及び第3層はそれぞれ、電解めっきで形成されることができるが、これに制限されるものではない。他の例として、第1外部電極400は、導電性粉末と樹脂を含む樹脂電極、及び樹脂電極上にめっき形成されためっき層を含むことができる。樹脂電極は、導電性粉末と樹脂を含む導電性ペーストをスクリーン印刷または塗布した後、導電性ペーストを硬化することによって形成することができる。
【0051】
外部電極400、500は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、スズ(Sn)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、チタン(Ti)、またはこれらのの合金などの導電性物質で形成されることができるが、これに限定されるものではない。
【0052】
外部電極400、500は、本体100の第1及び第2面101、102をカバーし、それぞれ本体100の第6面106に延長されることができる。すなわち、第1外部電極400は、本体100の第1面101をカバーし、且つ本体の第6面106に延長され、第2外部電極500は、本体100の第2面102をカバーし、且つ本体の第6面106に延長されることができる。外部電極400、500が本体100の第1及び第2面101、102をカバーするため、外部電極400、500と本体100の間の結合力を向上させることができる。
【0053】
一方、図示されていないが、本実施例の場合、コイル部300と本体100の間に配置された絶縁膜をさらに含むことができる。絶縁膜は、パリレンなどの公知の絶縁材料を含むことができるが、これに制限されるものではなく、絶縁材料であればいかなるものであっても可能である。絶縁膜は、気相蒸着などの方法で形成されることができるが、これに制限されるものではなく、絶縁膜を絶縁基板200の両面に積層する方法などで形成されることもできる。前者の場合、絶縁膜は、絶縁基板及びコイル部の表面に沿ってコンフォーマル(conformal)な膜の形で形成されることができる。後者の場合、絶縁膜は、コイルパターン311、312の隣接したターンとターンの間の空間を満たす形で形成されることができる。一方、上述した説明のように、第2導電層311b、312bを形成するためにめっきレジストを絶縁基板200に形成することができ、かかるめっきレジストは除去されない永久レジストであってもよい。この場合、絶縁膜は、永久レジストのめっきレジストであることができる。一方、本発明において、絶縁膜は、選択的な構成に過ぎないが、絶縁膜を形成する場合には、通常の薄膜型パワーインダクタの製造工程を最小限に変更し、本実施例によるコイル部品1000を製造することができるため、製造効率及びコストの観点において有利である。すなわち、通常のパワーインダクタの場合、絶縁基板にコイル部及び絶縁膜を形成し、コイル基板を形成した後、コイル基板の両面に本体を形成するための磁性複合シートを積層するが、本実施例に絶縁膜を形成する場合には、本体を形成するための工程を除いて、残りの工程を薄膜パワーインダクタの製造工程と同様にすることができる。したがって、絶縁膜まで形成された同一のコイル基板を用いて高周波用インダクタ及びパワーインダクタを選択的に製造することができる。
【0054】
図6は本発明の第1実施例によるコイル部品の動作周波数に応じたインダクタンスの変化を比較例と対比して示す図である。
【0055】
実験例は絶縁基板の厚さT
1を30μmにし、比較例は絶縁基板の厚さを60μmにした。表1は、
図6において、周波数が100MH
Z、500MH
Z、1.0GH
Z、2.4GH
Zである場合の実験例及び比較例のそれぞれのインダクタンス値を記載したものである。
【0056】
一方、実験例及び比較例では、絶縁基板200の厚さT1を除いた残りの条件、例えば、コイル部のターン(turn)数、各ターン(turn)の線幅(width)及び厚さ(thickness)、各ターン(turn)間の離隔距離(space)、本体の長さ、幅及び厚さを同一にした。
【0057】
【0058】
表1及び
図6を参照すると、実験例及び比較例を比較するとき、すべての周波数帯域において、実験例のインダクタンスが比較例のインダクタンスよりも高いことが分かる。一方、比較例と実験例の間のインダクタンスの差は動作周波数が増加するほど次第に増加し、1GH
Z以上の動作周波数では改善率が10%に近接する数値を示すことが分かる。したがって、本実施例のコイル部品1000は、高周波帯域(100MH
Z以上)、特に1GH
Z以上の周波数帯域で用いられる高周波インダクタとして活用されることができる。
【0059】
(第2実施例及び変形例)
図7は本発明の第2実施例によるコイル部品を概略的に示す図であり、
図8は
図7のIII-III'線に沿った断面を示す図であり、
図9は
図7のIV-IV'線に沿った断面を示す図であり、
図10は
図7のBを拡大したことを示す図であり、
図11は
図7のBの変形例を拡大したことを示す図である。
【0060】
図1~
図6と、
図7~
図11とを比較すると、本実施例によるコイル部品2000は、本発明の第1実施例によるコイル部品1000と比較すると、本体100が異なる。したがって、本実施例では、本発明の第1実施例と異なる本体100についてのみ説明する。本実施例の残りの構成は、本発明の第1実施例、及び第1実施例の変形例についての説明がそのまま適用されることができる。
【0061】
図7~
図11を参照すると、本実施例よるコイル部品2000に適用される本体100は、高分子樹脂の硬化物R、及び高分子樹脂の硬化物R内に分散した非磁性体粉末Pを含むことができる。
【0062】
一例として、本実施例では、コイル部300が形成された絶縁基板200の両面に非磁性体の熱硬化性高分子樹脂、及び熱硬化性高分子樹脂内に分散した非磁性体粉末Pを含む複合シートを一つ以上積層した後、複合シートを熱硬化することにより本体100を形成することができる。非磁性体粉末Pは、本実施例によるコイル部品2000の磁気的、電気的、機械的、及び熱的特性のうち少なくとも一つを制御するために、高分子樹脂の硬化物R内に分散配置されるものであって、上述した本実施例によるコイル部品2000の特性のうち少なくとも一つを制御するために、本体100内における含有量が調節されることができる。
【0063】
非磁性体粉末Pは、有機フィラー及び無機フィラーのうち少なくとも一つを含むことができる。
【0064】
有機フィラーは、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS、Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)、セルロースアセテート(Cellulose acetate)、ナイロン(Nylon)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、Polymethyl methacrylate)、ポリベンゾイミダゾール(Polybenzimidazole)、ポリカーボネート(Polycarbonate)、ポリエーテルスルホン(Polyether sulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、Polyetherether ketone)、ポリエーテルイミド(PEI、Polyetherimide)、ポリエチレン(Polyethylene)、ポリ乳酸(Polylactic acid)、ポリオキシメチレン(Polyoxymethylene)、ポリフェニレンオキサイド(Polyphenylene oxide)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene sulfide)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリスチレン(Polystyrene)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chlroride)、エチレン酢酸ビニル(Ethylene vinyl acetate)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol)、ポリエチレンオキサイド(Polyethylene oxide)、エポキシ(Epoxy)、及びポリイミド(Polyimide)のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0065】
無機フィラーは、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)、酸化チタン(TiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、ホウ酸アルミニウム(AlBO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、及びジルコン酸カルシウム(CaZrO3)からなる群より選択された少なくとも一つを含むことができる。一方、本実施例の無機フィラーの範囲は、上述した例に限定されず、比透磁率が1に近い値を有するセラミック材料であれば本実施例の無機フィラーに属する。
【0066】
非磁性体粉末Pは、平均直径が約0.1μm~30μmであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0067】
本体100は、高分子樹脂の硬化物Rに分散した2種類以上の非磁性体粉末Pを含むことができる。ここで、非磁性体粉末Pが異なる種類であるとは、高分子樹脂の硬化物Rに分散した非磁性体粉末Pが直径、組成、結晶性、及び形状のうちいずれかで互いに区別されることを意味する。一例として、本体100は、直径が互いに異なる2以上の非磁性体粉末Pを含むことができる。非磁性体粉末Pの直径とは、D50またはD90による粉末の粒度分布を意味することができる。
【0068】
高分子樹脂の硬化物Rの全体積に対する非磁性体粉末Pの体積は、50vol%以上であることができる。本実施例の場合、高分子樹脂の硬化物Rは、熱硬化性高分子樹脂を熱硬化することにより形成されるため、高分子樹脂の硬化物R内に分散した非磁性体粉末Pの体積比(vol%)を増加させることができる。これとは異なり、一例として、本体が光硬化性高分子樹脂の硬化物である場合、光硬化時の光が非磁性体粉末によって散乱されて光硬化が低下することから、非磁性体粉末Pの体積比を増加させるには限界があり得る。本実施例の場合、熱硬化性樹脂を用いて本体100を形成するため、上述した問題点を解決することができる。したがって、本実施例の場合、複合シート内の非磁性体粉末Pの含有量を調節するにあたり、複合シートの硬化工程で非磁性体粉末Pの含有量によって発生する可能性がある問題を考慮する必要がない。結果として、本実施例の場合、製造工程及び設計上の自由度が増加し、本実施例によるコイル部品2000の磁気的、電気的、機械的、及び熱的特性を容易に制御することができる。一例として、本体100に熱膨張係数が比較的低いシリカ(SiO2)を50vol%以上含有させることにより、本実施例のコイル部品2000と、実装基板または実装基板にともに実装された半導体部品との間の熱膨張係数の差異を最小限に抑えることができる。これにより、電子部品のパッケージ内にともにパッケージングされた本実施例によるコイル部品2000と他の電子部品との間の熱膨張係数の差異による電子部品パッケージの不良(例えば、パッケージの反りやパッケージ内のボイド発生など)を防止することができる。また、部品と実装基板との間の熱膨張係数の差異に起因する部品と実装基板との間の連結信頼性の問題(例えば、はんだのクラック)を減少させることができる。
【0069】
一方、本発明の第1実施例で説明した絶縁基板200に含まれる無機フィラーと、本実施例の本体100に含まれる無機フィラーとは、互いに同一の物質であることができるが、これに制限されるものではない。制限されない例として、本体100と絶縁基板200との間の熱膨張係数の差異により、本体100と絶縁基板200が分離されることを防止するよう、絶縁基板200に含まれる無機フィラーと本体100に含まれる無機フィラーとは、主成分を同一の物質とし、副成分を互いに異なるようにすることができる。
【0070】
図10及び
図11を参照すると、非磁性体粉末Pは、コイルパターン311、312のそれぞれと接触する。すなわち、コイルパターン311、312は、本体100と直接接触することができる。これは、本実施例の場合、通常の薄膜パワーインダクタとは異なり、上述した本体100の非磁性体粉末Pは、非導電性を有するため、非磁性体粉末Pとコイルパターン311、312との間に別の絶縁膜が形成されなくても、部品の特性に影響を与えないためである。但し、上述のように、製造上の利点により、コイルパターン311、312と本体100との間に絶縁膜が配置され、非磁性体粉末Pがコイルパターン311、312に接触しなくてもよい。
【0071】
一方、
図10及び
図11に示すように、コイルパターン311、312はそれぞれ、絶縁基板200に接触形成された第1導電層311a、312a、及び第1導電層311a、312aに配置された第2導電層311b、312bを含む。
図10及び
図11は、本発明の第1実施例の
図4及び
図5にそれぞれ対応する図であり、本発明の第1実施例の
図4及び
図5についての説明がそのまま適用されることができるため詳細な説明を省略する。
【0072】
(第3実施例及び変形例)
図12及び
図13は本発明の第3実施例によるコイル部品を下部側から見たことを概略的に示す図であり、
図14は
図12のC方向から見たことを概略的に示す図であり、
図15は本発明の第3実施例の変形例を示すものであって、
図12のC方向から見たことに対応する図である。
【0073】
図1~
図6、
図7~
図11、及び
図12~
図15を比較すると、本実施例によるコイル部品3000は、本発明の第1及び第2実施例によるコイル部品1000、2000と比較すると、本体100内におけるコイル部300の配置形態が異なる。したがって、本実施例では、本発明の第1及び第2実施例と異なるコイル部300の配置形態にのみ説明する。本実施例の残りの構成は、本発明の第1及び第2実施例の変形例の説明がそのまま適用されることができる。
【0074】
図12~
図14を参照すると、本実施例によるコイル部品3000に適用されるコイル部300は、本体100の一面106に垂直に配置される。
【0075】
コイル部300が本体100の第6面106に対して垂直に配置されるとは、
図13及び
図14のように、絶縁基板200と接するコイルパターン311、312の面が本体100の第6面106に対して垂直または垂直に近くなるように形成されることを意味する。例えば、絶縁基板200と接する第1コイルパターン311の各ターンの面と、本体100の第6面106とは、80°~100°の角度を形成することができる。
【0076】
電子機器の高性能化に伴い、電子機器内に配置されるプリント回路基板などの実装基板により多くの電子部品が実装されることが要求される。このため、各電子部品の実装面積を決定する本体の長さ及び幅のいずれかを減少させるとともに、電子部品の性能を維持または向上させる必要がある。本実施例の場合、コイル部300を本体100の第6面106に垂直に配置することにより、本実施例によるコイル部品3000の実装面である本体100の第6面106の面積を減少させることができる。また、コイル部300が本体100の第6面106に垂直に配置されることにより、コイル部品の特性に関するコイルパターン311、312のターン数、各ターンの線幅及び厚さを維持することができる。また、コイル部300が本体100の第6面106に垂直に配置されることにより、コイル部300が形成する磁場の方向が本体100の第6面106と平行になり、上記磁場によりプリント回路基板などの実装基板に誘導される誘導電流が減少し、ノイズを低減させることができる。
【0077】
本実施例の場合、コイル部300の両端部311'、312'はそれぞれ、本体100の第1~第6面101、102、103、104、105、106のうち互いに連結された2つの面に露出することができる。すなわち、
図13に示すように、第1コイルパターン311の一端部311'は、本体100の第1面101及び本体100の第6面106にそれぞれ露出することができ、第2コイルパターン312の一端部312'は、本体100の第2面102及び本体100の第6面106にそれぞれ露出することができる。第1コイルパターン311の一端部311'は、本体100の第1面101及び第6面106に連続的に露出することができ、第2コイルパターン312の一端部312'は、本体100の第2面102及び第6面106に連続的に露出することができる。本実施例の場合、外部電極400、500は、本体100の表面に露出したコイル部300の両端部311'、312'をカバーするように本体100の第1、第2、及び第6面101、102、106に形成される。部品の小型化に伴い、コイル部300の両端部311'、312'の露出面積が減少するようになり、結果として、コイル部300と外部電極400、500との間の結合力が減少することがある。本実施例では、本体100の表面に露出したコイル部300の両端部311'、312'の露出面積を増加させることにより、コイル部300と外部電極400、500との間の結合力を向上させることができる。
【0078】
本実施例の場合、コイル部300は、コイルパターン311、312の両端部311'、312'にそれぞれ対応する補助パターン331、332をさらに含むことができる。具体的には、コイル部300は、第1コイルパターン311が配置された絶縁基板200の一面(
図13の方向を基準に、絶縁基板200の前面)に配置され、且つ第1コイルパターン311と離隔し、第2コイルパターン312の一端部312'に対応する形で形成された第1補助パターン331を含むことができる。また、コイル部300は、第2コイルパターン312が配置された絶縁基板200の他面(
図13の方向を基準に、絶縁基板200の背面)に配置され、且つ第2コイルパターン312と離隔し、第1コイルパターン311の一端部311'に対応する形で形成された第2補助パターン332を含むことができる。第1補助パターン331は、第2コイルパターン312の端部312'と同様に、本体100の第2及び第6面102、106に露出し、第2補助パターン332は、第1コイルパターン311の端部311'と同様に、本体100の第1及び第6面101、106に露出することができる。補助パターン331、332は、コイル部300の両端部311'、312'と同様に、外部電極400、500と接触連結されるが、外部電極400、500と接触するコイル部300の面積を増加させることにより、コイル部300と外部電極400、500との間の結合力を向上させることができる。加えて、コイル部300の端部311'、312'だけを用いて外部電極400、500を電解めっきで形成時に外部電極400、500が非対称に形成されて外観不良が発生することがある。しかし、補助パターン331、332により、上述した問題点を解決することができる。一方、図示されていないが、第1コイルパターン311の一端部311'及び第2補助パターン332と、第2コイルパターン312の一端部312'及び第1補助パターン331とはそれぞれ、絶縁基板200を貫通する連結ビアによって互いに物理的、電気的に連結されることができる。
【0079】
図15は本発明の第3実施例の変形例を示すものであって、
図12のC方向から見たことに対応する図である。
図15を参照すると、本実施例の変形例に適用されるコイル部300は、コイルパターン311、312と、コイルパターン311、312の端部311'、312'とを連結する複数の連結パターンCP1、CP2をさらに含むことができる。具体的には、コイル部300は、絶縁基板200の一面に配置され、第1コイルパターン311と、第1コイルパターン311の端部311'とを連結する複数の第1連結パターンCP、及び絶縁基板200の他面に配置され、第2コイルパターン312と第2コイルパターン312の端部312'とを連結する複数の第2連結パターンCP2をさらに含む。
【0080】
第1及び第2連結パターンCP1、CP2はそれぞれ、複数個が互いに離隔して形成されることができる。コイルパターンとコイルパターンの端部が単一のパターンで連結された構造の場合、異種材料間の結合により、コイルパターンと本体との間の結合力が弱い可能性がある。本変形例の場合、コイルパターン311、312とコイルパターン311、312の端部311'、312'とを連結する連結パターンCP1、CP2をそれぞれ複数個が互いに離隔するように形成することにより、隣接する連結パターンCP1、CP2間の空間に本体100が延長配置されることができる。結果として、本体100とコイル部300との間の結合力が向上することができる。すなわち、互いに離隔した複数個の連結パターンCP1、CP2がアンカーとして機能する。一方、この場合、
図15に示すように、絶縁基板200のうち連結パターンCP1、CP2が配置された領域は、互いに離隔した複数個の連結パターンCP1、CP2の形状に対応する形状を有することができる。すなわち、本体100は、複数個の互いに離隔した連結パターンCP1、CP2間の空間及び絶縁基板200を貫通する形であることができる。
【0081】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
[項目1]
高分子樹脂の硬化物である非磁性体本体と、
前記非磁性体本体内に埋設され、厚さが30μm以下の絶縁基板と、
前記絶縁基板の互いに向かい合う一面及び他面にそれぞれ配置された第1及び第2コイルパターンを含むコイル部と、
前記第1及び第2コイルパターンとそれぞれ連結されるように、前記非磁性体本体の表面に配置された第1及び第2外部電極と、を含む、コイル部品。
[項目2]
前記非磁性体本体は、前記高分子樹脂の硬化物内に分散した非磁性体粉末をさらに含む、項目1に記載のコイル部品。
[項目3]
前記高分子樹脂の硬化物の全体積に対する前記非磁性体粉末の体積は50vol%以上である、項目2に記載のコイル部品。
[項目4]
前記非磁性体粉末は、前記第1及び第2コイルパターンのそれぞれに接触する、項目2または3に記載のコイル部品。
[項目5]
前記非磁性体粉末は、有機フィラー及び無機フィラーのうち少なくとも一つを含む、項目2から4の何れか一項に記載のコイル部品。
[項目6]
前記有機フィラーは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS、Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)、セルロースアセテート(Cellulose acetate)、ナイロン(Nylon)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、Polymethyl methacrylate)、ポリベンゾイミダゾール(Polybenzimidazole)、ポリカーボネート(Polycarbonate)、ポリエーテルスルホン(Polyether sulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、Polyetherether ketone)、ポリエーテルイミド(PEI、Polyetherimide)、ポリエチレン(Polyethylene)、ポリ乳酸(Polylactic acid)、ポリオキシメチレン(Polyoxymethylene)、ポリフェニレンオキサイド(Polyphenylene oxide)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene sulfide)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリスチレン(Polystyrene)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chlroride)、エチレン酢酸ビニル(Ethylene vinyl acetate)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol)、ポリエチレンオキサイド(Polyethylene oxide)、エポキシ(Epoxy)、及びポリイミド(Polyimide)のうち少なくとも一つを含む、項目5に記載のコイル部品。
[項目7]
前記無機フィラーは、シリカ(SiO
2
)、アルミナ(Al
2
O
3
)、及び酸化チタン(TiO
2
)のうち少なくとも一つを含む、項目5または6に記載のコイル部品。
[項目8]
前記絶縁基板の厚さは10μm以上である、項目1から7のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目9]
前記第1及び第2コイルパターンはそれぞれ、前記絶縁基板に接触する第1導電層、及び前記第1導電層上に配置された第2導電層を含む、項目1から8のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目10]
前記第1導電層は、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、及びモリブデン(Mo)のうち少なくとも一つを含み、
前記第2導電層は銅(Cu)を含む、項目9に記載のコイル部品。
[項目11]
前記第2導電層は前記第1導電層の側面の少なくとも一部を露出する、項目9または10に記載のコイル部品。
[項目12]
前記第2導電層は、前記第1導電層をカバーし、前記絶縁基板に接触する、項目9または10に記載のコイル部品。
[項目13]
前記第2導電層の側面は前記非磁性体本体と接触する、項目9から12のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目14]
前記非磁性体本体の厚さは0.65mm以下である、項目1から13のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目15]
前記非磁性体本体は、互いに向かい合う一端面と他端面、及び前記一端面と前記他端面を互いに連結する一面を有し、
前記第1コイルパターンの一端部は前記非磁性体本体の一端面に露出し、前記第2コイルパターンの一端部は前記非磁性体本体の他端面に露出し、
前記第1及び第2外部電極はそれぞれ、前記非磁性体本体の一端面及び他端面に形成され、前記非磁性体本体の一面に延長する、項目1から14のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目16]
前記第1及び第2外部電極はそれぞれ前記非磁性体本体の一端面及び他端面をカバーする、項目15に記載のコイル部品。
[項目17]
前記第1コイルパターンの一端部は、前記非磁性体本体の一端面及び前記非磁性体本体の一面にそれぞれ露出し、
前記第2コイルパターンの一端部は、前記非磁性体本体の他端面及び前記非磁性体本体の一面にそれぞれ露出する、項目15に記載のコイル部品。
[項目18]
前記第1及び第2コイルパターンはそれぞれ、前記非磁性体本体の一面に垂直に配置される、項目17に記載のコイル部品。
[項目19]
厚さが30μm以下の絶縁基板と、
前記絶縁基板の少なくとも一面に複数のターン(turn)を形成した平面スパイラル状のコイルパターンを含むコイル部と、
非磁性体粉末及び高分子樹脂を含み、内部に前記絶縁基板及び前記コイル部を埋設し、厚さが0.65mm以下である本体と、を含み、
前記本体は、前記コイルパターンの前記複数のターン(turn)のそれぞれの間の空間を充填して前記コイルパターンに接触する、コイル部品。
【符号の説明】
【0082】
100 本体
110 コア
200 絶縁基板
300 コイル部
311、312 コイルパターン
311a、312a 第1導電層
311b、312b 第2導電層
311'、312' コイルパターンの端部
320 ビア
331、332 補助パターン
400、500 外部電極
P 非磁性体粉末
R 高分子樹脂の硬化物
CP1、CP2 連結パターン
1000、2000、3000 コイル部品