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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ズームレンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/20 20060101AFI20241007BHJP
   G02B 13/18 20060101ALN20241007BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020054914
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021156963
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】木村 公平
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-139870(JP,A)
【文献】特開平08-190052(JP,A)
【文献】特開2004-318110(JP,A)
【文献】特開2006-113404(JP,A)
【文献】特開平08-062499(JP,A)
【文献】特開2019-095625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群と、第2レンズ群と、第3レンズ群と、最も像側に配置された負の屈折力の最終レンズ群とを有し、ズーミングに際して互いに隣り合うレンズ群間の間隔が変化するズームレンズであって、
前記第1レンズ群よりも像側において配置された、2つ以上のレンズ群がズーミングに際して同じ軌跡を描いて移動し、
前記第1レンズ群の光軸上での厚みをTD1、望遠端での前記ズームレンズの焦点距離をft、広角端での前記ズームレンズの全長をTTDw、広角端でのバックフォーカスをskw、前記第1レンズ群の広角端から望遠端へのズーミングに際しての移動量をm1、前記移動量の符号は広角端に比べて望遠端において前記第1レンズ群が像側に位置するときを負、広角端に比べて望遠端において前記第1レンズ群が物体側に位置するときを正、前記第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、
0.001≦TD1/ft≦0.204
5.6≦TTDw/skw≦50.0
3.074≦m1×f1/skw≦50.0
なる条件を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記最終レンズ群の焦点距離をfrとするとき、
-20.0≦fr/ft≦-0.1
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記ズームレンズの広角端での焦点距離をfwとするとき、
-5.0≦f1/fw≦-1.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第1レンズ群のうち最も物体側のレンズが負レンズであり、該負レンズの物体側の曲率半径をR1、像側の曲率半径をR2とするとき、
-3.0≦(R2+R1)/(R2-R1)≦-0.1
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記ズームレンズの広角端での射出瞳の位置から像面までの距離をPOw、前記ズームレンズの広角端での焦点距離をfwとするとき、
0.2≦POw/fw≦3.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
広角端から望遠端へのズーミングに際しての前記第2レンズ群の移動量をm2、前記移動量の符号は広角端に比べて望遠端において前記第2レンズ群が像側に位置するときを負、広角端に比べて望遠端において前記第2レンズ群が物体側に位置するときを正、前記ズームレンズの広角端での焦点距離をfwとするとき、
0.2≦m2/fw≦1.4
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記ズームレンズのうち最も物体側のレンズの焦点距離をfg1、前記ズームレンズの広角端での焦点距離をfwとするとき、
-3.0≦fg1/fw≦-0.5
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記第2レンズ群の望遠端での横倍率をβ2t、広角端での横倍率をβ2wとするとき、
1.0≦|β2t/β2w|≦20.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記第2レンズ群は正の屈折力を有し、該第2レンズ群の焦点距離をf2、前記ズームレンズの広角端での焦点距離をfwとするとき、
0.5≦f2/fw≦5.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項10】
前記第1レンズ群は、物体側から像側順に配置された負レンズと正レンズからなることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項11】
前記第3レンズ群は、フォーカシングに際して移動することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項12】
前記第2レンズ群の像側に配置された正の屈折力の前記第3レンズ群および該第3レンズ群の像側に配置された正の屈折力の第4レンズ群を有し、前記第2レンズ群は正の屈折力を有することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項13】
物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群と、正の屈折力の第2レンズ群と、正の屈折力の第3レンズ群と、正の屈折力の第4レンズ群と、最も像側に配置された負の屈折力の最終レンズ群とを有し、ズーミングに際して互いに隣り合うレンズ群間の間隔が変化するズームレンズであって、
前記第1レンズ群の光軸上での厚みをTD1、望遠端での前記ズームレンズの焦点距離をft、広角端での前記ズームレンズの全長をTTDw、広角端でのバックフォーカスをskw、前記第1レンズ群の広角端から望遠端へのズーミングに際しての移動量をm1、前記移動量の符号は広角端に比べて望遠端において前記第1レンズ群が像側に位置するときを負、広角端に比べて望遠端において前記第1レンズ群が物体側に位置するときを正、前記第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、
0.001≦TD1/ft≦0.204
5.6≦TTDw/skw≦50.0
3.074≦m1×f1/skw2≦50.0
なる条件を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項14】
前記第2レンズ群の像側に配置された負の屈折力の前記第3レンズ群、該第3レンズ群の像側に配置された正の屈折力の第4レンズ群を有し、前記第2レンズ群は正の屈折力を有することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項15】
物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群と、正の屈折力の第2レンズ群と、負の屈折力の第3レンズ群と、正の屈折力の第4レンズ群と、最も像側に配置された負の屈折力の最終レンズ群とを有し、ズーミングに際して互いに隣り合うレンズ群間の間隔が変化するズームレンズであって、
前記第1レンズ群の光軸上での厚みをTD1、望遠端での前記ズームレンズの焦点距離をft、広角端での前記ズームレンズの全長をTTDw、広角端でのバックフォーカスをskw、前記第1レンズ群の広角端から望遠端へのズーミングに際しての移動量をm1、前記移動量の符号は広角端に比べて望遠端において前記第1レンズ群が像側に位置するときを負、広角端に比べて望遠端において前記第1レンズ群が物体側に位置するときを正、前記第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、
0.001≦TD1/ft≦0.204
5.6≦TTDw/skw≦50.0
3.074≦m1×f1/skw2≦50.0
なる条件を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項16】
物体側から像側順に配置された、前記第1レンズ群、前記第2レンズ群、正の屈折力の前記第3レンズ群および前記最終レンズ群からなり、前記第2レンズ群は正の屈折力を有すること特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項17】
前記第1レンズ群は、広角端から望遠端へのズーミンに際して像側へ移動することを特徴とする請求項1から1のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項18】
請求項1から1のいずれか一項に記載のズームレンズと、
該ズームレンズを介して物体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項19】
請求項1から1のいずれか一項に記載のズームレンズを有し、撮像装置に対して着脱可能であることを特徴とするレンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に好適なズームレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
小型で軽量なズームレンズとして、最も物体側に負の屈折力のレンズ群を配置したネガティブリード型のズームレンズがある。特許文献1には、物体側から像側に順に、負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群、負の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群および正の屈折力の第5レンズ群を有し、ズーミングに際して第1レンズ群は一旦像側に移動した後に物体側に移動するズームレンズが開示されている。特許文献2には、物体側から像側に順に、負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群、負の屈折力の第3レンズ群および正の屈折力の第4レンズ群の第4レンズ群を有し、ズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するズームレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4984231号公報
【文献】特許5891860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のズームレンズでは、第1レンズ群の屈折力が強く、第1レンズ群のズーミング軌跡が往復軌跡となることで、望遠端でレンズ全長が長くなる。また、バックフォーカスが長く、全長を短縮することが難しい。さらに第1レンズ群内での収差補正のために、第1レンズ群の群厚が大きく、小型軽量化が難しい。
【0005】
一方、特許文献2のズームレンズでは、最も像側の第1レンズ群が正の屈折力を有するために、広角端でのレンズ全長を短くするためには、第1レンズ群と後続群のレトロフォーカスの屈折力配置を強める必要がある。その結果、望遠端における球面収差や軸上色収差を十分に補正できない。
本発明は、レンズ全長が短く、小型軽量でありながら、ズーム全域で高い光学性能を有するズームレンズおよびこれを用いた撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのズームレンズは、物体側から像側順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群と、第2レンズ群と、第3レンズ群と、最も像側に配置された負の屈折力の最終レンズ群とを有し、ズーミングに際して互いに隣り合うレンズ群間の間隔が変化するズームレンズである。第1レンズ群よりも像側において配置された、2つ以上のレンズ群がズーミングに際して同じ軌跡を描くように移動し、第1レンズ群の光軸上での厚みをTD1、望遠端でのズームレンズの焦点距離をft、広角端におけるズームレンズの全長をTTDw、広角端でのバックフォーカスをskw、第1レンズ群の広角端から望遠端へのズーミングに際しての移動量をm1、移動量の符号は広角端に比べて望遠端において第1レンズ群が像側に位置するときを負、広角端に比べて望遠端において第1レンズ群が物体側に位置するときを正、第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、
0.001≦TD1/ft≦0.204
5.6≦TTDw/skw≦50.0
3.074≦m1×f1/skw≦50.0
なる条件を満足することを特徴とする。なお、上記ズームレンズを有する撮像装置やレンズ装置も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レンズ全長が短く、小型軽量でありながら、ズーム全域で高い光学性能を有するズームレンズを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1であるズームレンズ(広角端)の断面図。
図2】実施例1のズームレンズの(A)広角端、(B)中間ズーム位置および(C)望遠端での収差図。
図3】本発明の実施例2であるズームレンズ(広角端)の断面図。
図4】実施例2のズームレンズの(A)広角端、(B)中間ズーム位置および(C)望遠端での収差図。
図5】本発明の実施例3であるズームレンズ(広角端)の断面図。
図6】実施例3のズームレンズの(A)広角端、(B)中間ズーム位置および(C)望遠端での収差図。
図7】本発明の実施例4であるズームレンズ(広角端)の断面図。
図8】実施例4のズームレンズの(A)広角端、(B)中間ズーム位置および(C)望遠端での収差図。
図9】本発明の実施例5であるズームレンズ(広角端)の断面図。
図10】実施例5のズームレンズの(A)広角端、(B)中間ズーム位置および(C)望遠端での収差図。
図11】各実施例のズームレンズを用いたデジタルカメラの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。ネガティブリード型のズームレンズにおいて、小型軽量化とズーム全域での高い光学性能の確保とを可能にするためには、レンズ群の数、各レンズ群の屈折力の符号、さらには最も物体側のレンズ群の構成を適切に設定することが重要である。本発明の実施例のズームレンズは、物体側から像側に順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群を有するとともに、最も像側に負の屈折力の最終レンズ群を有し、ズーミングに際して隣り合うレンズ群間の間隔が変化するズームレンズにおいて上記のような適切な設定を行う。
【0010】
図1図3図5図7および図9は、本発明の実施例1、実施例2、実施例3、実施例4および実施例5のズームレンズの広角端での断面を示す。図2図4図6図8および図10は、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4および実施例5のズームレンズの(A)広角端、(B)中間ズーム位置および(C)望遠端における縦収差図である。
【0011】
各実施例のズームレンズは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、放送用カメラおよび監視用カメラ等の撮像装置に用いられる。また各実施例のズームレンズは、画像投射装置(プロジェクタ)の投射光学系として用いることもできる。
【0012】
各実施例の断面図において、左側が物体側(前方)、右側が像側(後方)である。iを物体側からのレンズ群の番号とすると、Liは第iレンズ群を示す。SPは開口絞りである。IPは像面(縮小面)である。撮像装置において、像面IPには、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面や銀塩フィルムのフィルム面が配置される。またプロジェクタにおいて、IPは物体面であり、該物体面IPには液晶パネル等の光変調素子(表示素子)の変調面(表示面)が配置される。
【0013】
各実施例のズームレンズでは、広角端から望遠端へのズーミングに際して、各断面図中に矢印に示す軌跡を描くように各レンズ群を移動させる。フォーカス(Focus)に関する矢印は、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングに際するレンズ群の移動方向を示している。
【0014】
球面収差図において、FnoはFナンバーである。実線はd線(波長587.6nm)の球面収差を、二点鎖線はg線(波長435.8nm)の球面収差を示している。非点収差図において、実線はサジタル像面(ΔS)を、破線はメリディオナル像面(ΔM)を示している。歪曲収差は、d線のものを示している。倍率色収差はg線のものを示している。ωは半画角(°)である。
【0015】
次に、各実施例のレンズ構成について説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1は、物体側から像側に順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群L1、正の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3、正の屈折力の第4レンズ群L4、負の屈折力の第5レンズ群L5および負の屈折力の第6レンズ群L6により構成された6群ズームレンズである。本実施例のズームレンズは、ズーム比2.4、Fナンバー2.9のズームレンズである。
【0017】
本実施例のズームレンズでは、広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1は像側に単調に移動し、第2レンズ群L2から第6レンズ群L6は物体側に移動する。ズーミングに際して、第2レンズ群L2と第4レンズ群L4は一体となって(同じ軌跡を描くように)物体側に移動する。フォーカシング(FOCUS)に際しては、第3レンズ群L3と第5レンズ群L5が移動する。
【実施例2】
【0018】
実施例2は、物体側から像側に順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群L1、正の屈折力の第2レンズ群L2、負の屈折力の第3レンズ群L3、正の屈折力の第4レンズ群L4、負の屈折力の第5レンズ群L5および負の屈折力の第6レンズ群L6により構成された6群ズームレンズである。本実施例のズームレンズは、ズーム比2.4、Fナンバー2.9のズームレンズである。
【0019】
本実施例のズームレンズでは、広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1は像側に単調に移動し、第2レンズ群L2から第6レンズ群L6は物体側に移動する。ズーミングに際して、第2レンズ群L2と第4レンズ群L4は一体となって(同じ軌跡を描くように)物体側に移動する。フォーカシングに際しては、第3レンズ群L3と第5レンズ群L5が移動する。
【実施例3】
【0020】
実施例3は、物体側から像側に順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群L1、正の屈折力の第2レンズ群L2、負の屈折力の第3レンズ群L3、正の屈折力の第4レンズ群L4および負の屈折力の第5レンズ群L5により構成された5群ズームレンズである。本実施例のズームレンズは、ズーム比2.1、Fナンバー2.9のズームレンズである。
【0021】
本実施例のズームレンズでは、広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1は像側に単調に移動し、第2レンズ群L2から第5レンズ群L5は物体側に移動する。フォーカシングに際しては、第3レンズ群L3と第4レンズ群L4が移動する。
【実施例4】
【0022】
実施例4は、物体側から像側に順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群L1、正の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3、負の屈折力の第4レンズ群L4および負の屈折力の第5レンズ群L5により構成された5群ズームレンズである。本実施例のズームレンズは、ズーム比2.4、Fナンバー2.9のズームレンズである。
【0023】
本実施例のズームレンズでは、広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1は像側に単調に移動し、第2レンズ群L2から第5レンズ群L5は物体側に移動する。フォーカシングに際しては、第2レンズ群L2と第4レンズ群L4が移動する。
【実施例5】
【0024】
実施例5は、物体側から像側に順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群L1、正の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3および負の屈折力の第4レンズ群L4により構成されたている4群のズームレンズである。本実施例のズームレンズは、ズーム比3.0、Fナンバー2.9~5.6のズームレンズである。
【0025】
本実施例のズームレンズでは、広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1は像側に単調に移動し、第2レンズ群L2から第5レンズ群L5は物体側に移動する。フォーカシングに際しては、第3レンズ群L3が移動する。また開口絞りSPはズーミング時に独立に移動する。
【0026】
各実施例のズームレンズでは、望遠端において該ズームレンズの全長(以下、レンズ全長という)が最も短くなるような各レンズ群の移動軌跡を設定している。また、ズーミングに際して、主として第1レンズ群と第2レンズ群の間隔を大きく縮めることにより変倍を行う。特に第2レンズ群に強い屈折力を持たせ、かつズーミングに際して第2レンズ群を物体側に大きく移動させることで大きな変倍作用を持たせている。また、広角端のレンズ全長を短縮するために、バックフォーカスを極力短くしている。さらに第1レンズ群の径(前玉径)の小型化、広角端におけるレンズ全長の短縮および広角端における良好な光学性能の確保のために第1レンズ群の光軸上のレンズ群厚を適切に設定している。
【0027】
また各実施例のズームレンズでは、最も像側に負の屈折力のレンズ群を配置している。これにより、第1レンズ群よりも像側の各レンズ群の合成主点位置を物体側に設定することができ、広角端におけるズームレンズ全体のレトロフォーカス配置を強めることができる。この結果、広角端でのレンズ全長を短くすることができる。また、広角端でのレンズ全長を短くすることで、入射瞳位置から第1レンズ群L1までの距離を短くすることもでき、前玉径をより小型化することができる。さらに第1レンズ群と最も像側のレンズ群とに互いに同じ符号の屈折力を持たせることで、レンズの対称性が強まり、倍率色収差と歪曲収差を補正し易くしている。
【0028】
各実施例のズームレンズは、4つ以上のレンズ群を有する。ズームレンズにおいて球面収差やコマ収差等のズーム変動を抑制するために、光束幅が太くなる第1レンズ群よりも像側の群の構成を3群以上の多群構成として、それぞれのレンズ群を独立した軌跡を描くように移動させる。これにより、良好な収差補正を行うことが可能となる。
【0029】
各実施例のズームレンズは、第1レンズ群L1の光軸上の厚み(群厚)をTD1、望遠端でのズームレンズ全系の焦点距離をft、広角端でのレンズ全長をTTDw、広角端におけるバックフォーカスをskwとするとき、以下の条件式(1)および(2)を満足している。なお、広角端におけるレンズ全長TTDwとは、最も物体側の第1レンズの面から最も像側の最終レンズ面までの距離に、空気換算長のバックフォーカスの値を加えた長さである。バックフォーカスは、最終レンズ面から像面までの空気換算長である。
0.001≦TD1/ft≦0.204 (1)
5.6≦TTDw/skw≦50.0 (2)
条件式(1)は、レンズ全長を短縮するために、第1レンズ群L1の群厚と望遠端でのズームレンズの焦点距離との関係を規定する。TD1/ftが条件式(1)の上限を超えるように第1レンズ群L1の群厚TD1が大きくなると、レンズ全長が長くなるだけでなく、第1レンズ群L1と入射瞳位置との間隔が長くなるために前玉径が大きくなり、ズームレンズの小型軽量化が困難となる。またTD1/ftが条件式(1)の上限を超えるように望遠端での焦点距離ftが短くなると、必要な望遠端画界が得られなくなる。
【0030】
一方、TD1/ftが条件式(1)の下限を下回るように第1レンズ群L1の群厚が小さくなると、ズームレンズの小型化は可能であるが、第1レンズ群L1で発生する球面収差と軸上色収差を十分に補正できない屈折力配置となり、光学性能が低下する。またTD1/ftが条件式(1)の下限を下回るように望遠端での焦点距離ftが長くなると、ズーム倍率は高倍率化するものの、望遠端における軸上色収差や球面収差の発生や諸収差のズーム変動を抑制することができない。
【0031】
条件式(2)は、広角端におけるレンズ全長の短縮と光学性能とを両立させるために、広角端でのレンズ全長TTDwと広角端におけるバックフォーカスskwとの関係を規定している。TTDw/skwが条件式(2)の上限を超えるように広角端でのレンズ全長TTDwが大きくなると、レンズ全長を短縮することができなくなる。また、TTDw/skwが条件式(2)の上限を超えるようにバックフォーカスskwが短くなると、レンズと撮像装置とを接続するためのメカ的なレイアウトが困難となる。
【0032】
一方、TTDw/skwが条件式(2)の下限を下回るように広角端でのレンズ全長TTDwが短くなると、ズームレンズ全体の正の屈折力が強くなりすぎてペッツバール和のコントロールが困難となり、光学性能を高めることが困難となる。またTTDw/skwが条件式(2)の下限を下回るようにバックフォーカスskwが長くなると、レンズ全長を十分に短縮することができなくなる。
【0033】
各実施例のズームレンズは、以下の条件式(3)~(11)のうち少なくとも1つを満足することが好ましい。
-20.0≦fr/ft≦-0.1 (3)
1.0≦m1×f1/skw≦50.0 (4)
-5.0≦f1/fw≦-1.0 (5)
-3.0≦(R2+R1)/(R2-R1)≦-0.1 (6)
0.2≦POw/fw≦3.0 (7)
0.2≦m2/fw≦1.4 (8)
-3.0≦fg1/fw≦-0.5 (9)
1.0≦|β2t/β2w|≦20.0 (10)
0.5≦f2/fw≦5.0 (11)
条件式(3)~(11)において、最も像側に配置されたレンズ群の焦点距離をfr、第1レンズ群L1の広角端から望遠端へのズーミング時の移動量をm1としている。なお、レンズ群の移動量は、広角端における光軸上の位置と望遠端における光軸上の位置との差に相当し、移動量の符号は広角端に比べて望遠端においてレンズ群が像側に位置するときを、広角端に比べて望遠端においてレンズ群が物体側に位置するときをとする。また、第1レンズ群L1の焦点距離をf1、最も物体側の第1レンズの物体側レンズ面の曲率半径をR1、像側の曲率半径をR2、広角端における像面IPから射出瞳の位置までの距離をPOwとしている。射出瞳の位置は、像面IPからの距離である。射出瞳の位置までの距離の符号は、像面よりも物体側に位置するときを負、像面よりも像側に位置するときを正とする。さらに第2レンズ群L2の広角端から望遠端へのズーミング時の移動量をm2、最も物体側の第1レンズの焦点距離をfg1、第2レンズ群L2の望遠端における横倍率をβ2t、第2レンズ群L2の広角端における横倍率をβ2w、第2レンズ群L2の焦点距離をf2としている。
【0034】
条件式(3)は、レンズ全長を短縮するために、最も像側のレンズ群の焦点距離frとズームレンズの望遠端での焦点距離ftとの関係を規定している。fr/ftが条件式(3)の上限を超えるように最も像側のレンズ群の焦点距離frが長くなると、第1レンズ群L1よりも像側の後続群全体の主点位置が像側へ移動するため、広角端におけるレトロフォーカス配置が弱まる。その結果、広角端でのレンズ全長を短くすることが困難となる。またfr/ftが条件式(3)の上限を超えるようにズームレンズの望遠端での焦点距離ftが短くなると、必要な望遠端画界が得られない。
【0035】
一方、fr/ftが条件式(3)の下限を下回るように最も像側のレンズ群の焦点距離frが短くなると、広角端でのレンズ全長の短縮には有利であるが、像面IPに到達する周辺光線の入射角度が大きくなりすぎて像面IPで発生するシェーディングが大きくなる。さらに広角端における像面湾曲も増加する。またfr/ftが条件式(3)の下限を下回るようにズームレンズの望遠端での焦点距離ftが長くなると、ズーム倍率は高倍率化するが、望遠端における軸上色収差や球面収差の発生や諸収差のズーム変動を抑制することができないので、好ましくない。
【0036】
条件式(4)は、広角端レンズ全長の小型化と全ズーム領域における収差補正を図るために第1レンズ群L1の広角端から望遠端へのズーミング時の移動量m1と第1レンズ群L1の焦点距離f1と広角端におけるバックフォーカスskwとの関係を規定している。m1×f1/skwが条件式(4)の上限を超えるように第1レンズ群L1のズーミング時の移動量m1が大きくなると、広角端でのレンズ全長が長くなり、さらに前玉径も増加する。またm1×f1/skwが条件式(4)の上限を超えるように第1レンズ群L1の焦点距離f1が長くなると、第1レンズ群L1の屈折力が弱まって広角端におけるレトロフォーカスの負の屈折力配置が弱まり、レンズ全長を短縮することが難しくなる。さらにm1×f1/skwが条件式(4)の上限を超えるように広角端におけるバックフォーカスskwが短くなると、ズームレンズとカメラとを接続する接続部のメカニカルなレイアウトが困難となる。
【0037】
一方、m1×f1/skwが条件式(4)の下限を下回るように第1レンズ群L1のズーミング時の移動量m1が小さくなると、必要なズーム倍率を得ることが難しくなる。またm1×f1/skwが条件式(4)の下限を下回るように第1レンズ群L1の焦点距離f1が短くなると、広角端でのレンズ全長の短縮と前玉径の減少には有利になるが、第1レンズ群L1で発生する倍率色収差や歪曲収差を後群で補正することが困難となる。さらにm1×f1/skwが条件式(4)の下限を下回るようにバックフォーカスskwが長くなると、レンズ全長の短縮に不利になる。
【0038】
条件式(5)は、必要なズーム比を得るために、ズームレンズの広角端での焦点距離fwと第1レンズ群L1の焦点距離f1との関係を規定している。f1/fwが条件式(5)の下限を下回るように第1レンズ群L1の負の焦点距離が長くなると、広角端における倍率色収差の補正や望遠端における軸上色収差の補正は容易となるが、ズーミングに際して第1レンズ群L1の移動量が大きくなり、レンズ全長が増加する。またf1/fwが条件式(5)の下限を下回るように焦点距離fwが短くなると、広角化に伴って前玉径が大きくなる。
【0039】
一方、f1/fwが条件式(5)の上限を超えるように第1レンズ群L1の負の焦点距離が短くなると、ズームレンズ全系の小型化は容易となるが、少ないレンズ枚数で広角端における歪曲収差や倍率色収差を良好に補正することが困難となる。またf1/fwが条件式(5)の上限を超えるようにズームレンズの広角端での焦点距離fwが長くなると、必要なズーム比を確保することが困難となる。
【0040】
条件式(6)は、前玉径の小型化と歪曲収差の抑制とを両立させるために、ズームレンズのうち最も物体側の第1レンズの形状を規定しており、該第1レンズのシェイプファクタ(R2+R1)/(R2-R1)を表現している。(R2+R1)/(R2-R1)が条件式(6)の上限を超えるように第1レンズの両凹形状が強くなると、物体側の曲率半径R1が強くなりすぎて歪曲収差が増加する。また両凹形状が強まることにより、第1レンズ群L1の屈折力も強まることになるので、広角端における倍率色収差や像面歪曲収差の発生が抑制できなくなる。
【0041】
一方、(R2+R1)/(R2-R1)が条件式(6)の下限を下回るように第1レンズのシェイプファクタが負側に大きくなると、レンズ形状としての物体側に凸の負メニスカス形状が強くなりすぎる。負メニスカス形状が強くなりすぎると、歪曲収差の抑制には有利であるが、第1レンズ群の群厚が増加することに加え、レンズの端部を保持する保持部材の径が大きくなり、小型化が難しくなる。
【0042】
条件式(7)は、高テレセントリック性を確保するために、広角端における像面IPから射出瞳の位置までの距離(以下、射出瞳距離という)POwと広角端におけるズームレンズの焦点距離fwとの関係を規定している。POw/fwが条件式(7)の下限を下回るように射出瞳距離POwが長くなると、広角端でのレンズ全長が長くなる。POw/fwが条件式(7)の上限を超えるように射出瞳距離POwが短くなると、像面IPにおける周辺像高に到達する光線の像面IPへの入射角度が大きくなりすぎてシェーディングが発生する。またPOw/fwが条件式(7)の上限を超えるように広角端での焦点距離fwが長くなると、必要なズーム倍率を確保することが困難となる。
【0043】
条件式(8)は、ズーミングにおける第2レンズ群L2の適切な移動量を定めるために、第2レンズ群L2のズーミングに際しての移動量m2とズームレンズの広角端での焦点距離fwとの関係を規定している。m2/fwが条件式(8)の上限を超えるように第2レンズ群L2のズーミング時の移動量m2が大きくなると、望遠端におけるレンズ全長の短縮が困難となる。しかも、移動量m2が大きくなることで、広角端と望遠端における光束の上下幅の比率変化が大きくなる。その結果、開口絞りSPで光束を絞ったときに発生する周辺光量の減少が顕著になる。また、m2/fwが条件式(8)の上限を超えるように広角端での焦点距離fwが短くなると、広角化に伴って前玉径の増加を招く。
【0044】
一方、m2/fwが条件式(8)の下限を下回るように第2レンズ群L2の移動量m2が小さくなると、主たる変倍群である第2レンズ群L2の焦点距離を短くする必要があり、その結果、望遠端で発生する球面収差を抑制することが困難となる。しかも広角端での焦点距離fwが長くなって、必要なズーム比を確保することができなくなる。
【0045】
条件式(9)は、広角端における光学性能と小型化とを両立するために、最も物体側の第1レンズの焦点距離fg1とズームレンズの広角端での焦点距離fwとの関係を規定している。fg1/fwが条件式(9)の上限を超えるように第1レンズの焦点距離fg1が短くなると、レトロフォーカス配置が強まり、広角端でのレンズ全長の短縮には有利であるが、歪曲収差が大きくなる。またfg1/fwが条件式(9)の上限を超えるように広角端での焦点距離fwが長くなると、必要な広角端画角が得られない。
【0046】
一方、fg1/fwが条件式(9)の下限を下回るように第1レンズの焦点距離fg1が長くなると、広角端におけるレトロフォーカス配置が弱まり、レンズ全長と前玉径の増加を招く。一方、fg1/fwが条件式(9)の下限を下回るように広角端での焦点距離fwが短くなると、広角化に伴って前玉径が増加する。
【0047】
条件式(10)は、レンズ全長の短縮とレンズ径の減少のために、第2レンズ群L2の望遠端と広角端での横倍率の比|β2t/β2w|としての変倍比を規定している。|β2t/β2w|が条件式(10)の上限を超えるように第2レンズ群L2の変倍比が大きくなると、ズームレンズの高倍率化と第2レンズ群L2以降のレンズ径の減少には有利であるが、第2レンズ群L2で発生する球面収差、コマ収差および軸上色収差を抑制することが困難となる。一方、|β2t/β2w|が条件式(10)の下限を下回るように第2レンズ群L2の変倍比が小さくなると、必要なズーム倍率を得るために第1レンズ群L1やその後属群の屈折力を強めることが必要になり光学性能の確保が難しくなる。また第1レンズ群L1やその後属群のズーミング時の移動量を増加させることが必要になり、レンズ全長の小型化が難しくなる。
【0048】
条件式(11)は、レンズ径の小型化とズーム全域における光学性能とを両立させるために第2レンズ群L2の焦点距離f2とズームレンズの広角端での焦点距離fwとを規定している。f2/fwが条件式(11)の上限を超えるように第2レンズ群L2の焦点距離f2が長くなると、第2レンズ群より後続のレンズ群のレンズ径を十分に小さくすることが困難となる。また、f2/fwが条件式(11)の上限を超えるように広角端での焦点距離fwが短くなると、広角化による前玉径の増加を招く。
【0049】
一方、f2/fwが条件式(11)の下限を下回るように第2レンズ群L2の焦点距離f2が短くなると、レンズ径の減少には有利であるが、第2レンズ群L2で発生する球面収差を十分に補正することが困難となる。一方、f2/fwが条件式(11)の下限を下回るように広角端での焦点距離fwが長くなると、必要な広角端画角を得ることができない。
【0050】
各実施例において、より好ましくは条件式(1)~(11)の数値範囲を次のように設定するとよい。
0.050≦TD1/ft≦0.204 (1a)
5.8≦TTDw/skw≦20.0 (2a)
-10.0≦fr/ft≦-0.2 (3a)
1.5≦m1×f1/skw≦30.0 (4a)
-4.0≦f1/fw≦-1.3 (5a)
-1.5≦(R2+R1)/(R2-R1)≦-0.2 (6a)
0.2≦POw/fw≦3.0 (7a)
0.5≦m2/fw≦2.0 (8a)
-2.0≦fg1/fw≦-0.7 (9a)
1.5≦|β2t/β2w|≦10.0 (10a)
1.0≦f2/fw≦3.0 (11a)
さらに好ましくは、条件式(1)~(11)の数値範囲を次の如く設定することが望ましい。
0.080≦TD1/ft≦0.195 (1b)
5.9≦TTDw/skw≦15.0 (2b)
-5.0≦fr/ft≦-0.4 (3b)
2.0≦m1×f1/skw≦20.0 (4b)
-3.0≦f1/fw≦-1.5 (5b)
-1.0≦(R2+R1)/(R2-R1)≦-0.4 (6b)
1.0≦POw/fw≦1.6 (7b)
0.6≦m2/fw≦0.9 (8b)
-1.6≦fg1/fw≦-1.0 (9b)
2.0≦|β2t/β2w|≦5.0 (10b)
1.3≦f2/fw≦2.0 (11b)
実施例1~5において、第1レンズ群L1の軽量化を実現するには、第1レンズ群L1のレンズ枚数を2枚以下とすることが好ましい。また第1レンズ群L1を、色収差補正のために、物体側から像側に順に配置された負レンズと正レンズの2枚のレンズにより構成することが好ましい。
【0051】
また迅速なフォーカシングを可能とするめに、フォーカシングを第2レンズ群L2よりの像側のレンズ群を移動させて行うことが好ましい。さらにフォーカシングに伴う像面湾曲変動を抑制するために、第3レンズ群L3をフォーカシングのために移動させることが好ましい。
【0052】
また実施例4を除く各実施例において、フォーカシングに際して球面収差と像面湾曲収差の変動を抑制するために、2つ以上のレンズ群を移動させる、いわゆるフローティング構成とすることが好ましい。
【0053】
また実施例1~5において、像面IPと最も像側のレンズ群との間で発生するゴーストを低減するために、最も像側のレンズ群を2枚以下のレンズにより構成することが好ましい。さらに実施例1のように、最終レンズ群(実施例1では第6レンズ群)を像側に凸面を向けた1つの負レンズにより構成するとより好ましい。
【0054】
また実施例1~5において、最終レンズ群には、広角端で発生する像面湾曲を良好に補正するために、1面以上の非球面を有することが好ましい。
【0055】
以上説明したように、各実施例のズームレンズは、大口径比で全ズーム領域にわたって良好な光学性能を有し、レンズ全長が短い小型軽量のズームレンズである。
【0056】
以下、実施例1~5のそれぞれに対応する具体的な数値データ(数値例1~5)を示す。各数値例の面データにおいて、riは物体側からi番目の光学面の曲率半径、d(mm)は第i面と第(i+1)面との間のレンズ厚または空気間隔(mm)(光軸上の距離)を表す。また、ndiは各レンズの材料のd線に対する屈折率、νdiは該材料のアッベ数である。アッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd、NF、NCとするとき、
νd=(Nd-1)/(NF-NC)
で表される。
【0057】
なお、軸上間隔d、焦点距離(mm)、Fナンバーおよび半画角(°)は全て、各実施例のズームレンズが無限遠物体に合焦した状態での値である。バックフォーカスとしてのBFは、ズームレンズのうち最も像側の最終レンズ面から近軸像面までの光軸上の距離を空気換算長により表記したものである。広角端でのBFが条件式(4)におけるskwに相当する。またレンズ全長は、ズームレンズのうち最も物体側のレンズ面から最終レンズ面までの光軸上の距離にバックフォーカスを加えた長さである。レンズ群は、複数のレンズにより構成される場合だけでなく、1つのレンズから構成される場合も含む。
【0058】
光学面が非球面である場合は、面番号の右側に*の符号を付している。非球面の形状は、Xを光軸方向の面頂点からの変位量、hを光軸に直交する方向における光軸からの高さ、Rを近軸曲率半径、kを円錐定数、A4,A6、A8、A10およびA12を各次数の非球面係数とするとき、
x=(h2/R)/[1+{1-(1+k)(h/R)21/2
+A4×h4+A6×h6+A8×h8+A10×h10+A12×h12
で表される。各非球面係数における「e±XX」は「×10±XX」を意味する。
【0059】
各実施例と前述した条件式(1)~(11)との関係を表1にまとめて示す。
(数値例1)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 -111.860 1.50 1.72916 54.7
2 32.074 2.29
3 37.413 2.66 1.96300 24.1
4 51.650 (可変)
5 40.643 3.34 1.83481 42.7
6 256.756 (可変)
7 347.207 3.13 1.43875 94.7
8 -56.512 (可変)
9 32.852 7.26 1.49700 81.5
10 -27.460 1.15 2.00100 29.1
11 -2945.551 1.57
12(絞り) ∞ 11.59
13 -64.861 1.15 1.72047 34.7
14 31.642 6.22 1.49700 81.5
15 -35.473 0.15
16 46.411 3.71 2.00100 29.1
17 -81.857 (可変)
18 171.436 0.75 1.59522 67.7
19 43.099 (可変)
20* -19.453 1.45 1.77250 49.6
21* -71.052 (可変)
像面 ∞

非球面データ
第20面
K = 0.00000e+000 A 4=-4.82838e-005 A 6= 1.10955e-006 A 8=-8.99236e-009 A10= 4.03439e-011 A12=-7.29470e-014

第21面
K = 0.00000e+000 A 4=-4.50549e-005 A 6= 8.61360e-007 A 8=-6.44922e-009 A10= 2.58492e-011 A12=-4.24395e-014

各種データ
ズーム比 2.35
広角 中間 望遠
焦点距離 28.84 36.81 67.90
Fナンバー 2.91 2.91 2.91
半画角(°) 32.68 29.23 17.67
像高 18.50 20.60 21.64
レンズ全長 117.09 109.31 101.58
BF 9.99 13.47 21.59

d 4 36.55 24.05 0.89
d 6 8.81 7.82 1.57
d 8 2.24 3.23 9.48
d17 0.99 1.03 0.99
d19 10.59 11.80 19.16
d21 9.99 13.47 21.59

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 -45.84
2 5 57.44
3 7 111.03
4 9 33.08
5 18 -96.94
6 20 -35.10

(数値例2)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 -202.253 1.75 1.72916 54.7
2 32.491 2.31
3 37.259 2.74 1.98612 16.5
4 47.070 (可変)
5 40.262 1.00 1.75520 27.5
6 35.621 5.95 1.59522 67.7
7 -80.627 0.14
8 26.554 2.03 1.49700 81.5
9 31.495 (可変)
10 -36.403 1.00 1.80100 35.0
11 -1001.069 (可変)
12 38.426 3.31 2.00069 25.5
13 240.409 1.49
14(絞り) ∞ 1.18
15 249.387 1.15 1.85478 24.8
16 21.119 7.31 1.49700 81.5
17 -65.298 0.15
18 29.334 5.03 1.77250 49.6
19 -163.635 (可変)
20 -325.599 0.95 1.72825 28.5
21 33.614 (可変)
22* -27.658 1.30 1.48749 70.2
23* 125.276 0.13
24 59.799 2.24 1.98612 16.5
25 -690.239 (可変)
像面 ∞

非球面データ
第22面
K = 0.00000e+000 A 4= 1.27819e-005 A 6= 6.64149e-008 A 8=-4.10626e-009 A10= 4.72637e-011 A12=-2.01361e-013

第23面
K = 0.00000e+000 A 4= 4.25034e-005 A 6=-1.18037e-007 A 8=-1.98288e-010 A10= 5.85965e-012 A12=-2.52354e-014

各種データ
ズーム比 2.35
広角 中間 望遠
焦点距離 28.84 37.17 67.90
Fナンバー 2.91 2.91 2.91
半画角(°) 32.65 28.90 17.67
像高 21.64 21.64 21.64
レンズ全長 132.62 122.81 111.18
BF 21.92 26.79 39.84

d 4 47.04 31.74 3.97
d 9 11.59 12.43 14.55
d11 3.95 3.11 0.99
d19 1.09 1.29 4.65
d21 5.86 6.26 6.00
d25 21.92 26.79 39.84

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 -49.51
2 5 40.34
3 10 -47.18
4 12 23.93
5 20 -41.79
6 22 -300.85

(数値例3)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 -330.830 1.20 1.72916 54.7
2 35.768 9.56
3 50.228 2.30 1.98612 16.5
4 62.842 (可変)
5 39.668 1.30 1.75520 27.5
6 31.007 7.03 1.59522 67.7
7 -109.572 0.15
8 25.632 2.95 1.49700 81.5
9 32.919 (可変)
10 -51.338 1.00 1.51633 64.1
11 194.012 (可変)
12* 57.130 1.84 1.88300 40.8
13 125.621 1.49
14(絞り) ∞ 1.57
15 -853.770 1.15 1.85478 24.8
16 31.023 5.38 1.49700 81.5
17 -86.279 0.15
18 35.087 5.76 1.77250 49.6
19 -49.945 (可変)
20 -93.289 0.50 1.71736 29.5
21 29.645 1.69
22* -290.698 1.00 1.76200 40.1
23 32.127 2.48 1.94594 18.0
24 424.257 (可変)
像面 ∞

非球面データ
第12面
K = 0.00000e+000 A 4=-8.08295e-006 A 6=-8.49635e-009 A 8=-2.48867e-011

第22面
K = 0.00000e+000 A 4=-1.11270e-005 A 6= 6.56829e-008 A 8=-1.97799e-009 A10= 2.37327e-011 A12=-1.11536e-013

各種データ
ズーム比 2.35
広角 中間 望遠
焦点距離 28.84 37.76 67.90
Fナンバー 2.91 2.91 2.91
半画角(°) 32.65 28.52 17.67
像高 21.64 21.64 21.64
レンズ全長 145.96 132.92 114.12
BF 24.12 30.24 43.27

d 4 54.20 35.24 0.79
d 9 12.22 13.57 15.69
d11 4.46 3.11 0.99
d19 2.46 2.27 4.88
d24 24.12 30.24 43.27

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 -56.18
2 5 41.62
3 10 -78.52
4 12 26.90
5 20 -32.23

(数値例4)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 1081.326 1.20 1.90525 35.0
2 39.879 8.57
3 45.385 3.29 1.98612 16.5
4 66.830 (可変)
5 -90.352 1.30 1.66565 35.6
6 26.655 7.52 1.77250 49.6
7 121.857 0.14
8 37.982 7.75 1.77250 49.6
9 -92.572 0.15
10* 79.184 2.00 1.88300 40.8
11 95.568 (可変)
12(絞り) ∞ (可変)
13 68.965 1.15 2.00069 25.5
14 21.359 7.30 1.43875 94.7
15 -40.462 0.15
16 52.958 3.38 2.00100 29.1
17 -143.390 (可変)
18 147.104 1.30 2.00069 25.5
19 39.993 4.73
20* -29.033 1.00 1.62012 49.5
21 54.167 3.30 1.94594 18.0
22 ∞ (可変)
像面 ∞

非球面データ
第10面
K = 0.00000e+000 A 4=-6.72344e-006 A 6=-1.96768e-009 A 8=-3.37392e-011 A10= 1.13245e-013 A12=-1.50023e-016

第20面
K = 0.00000e+000 A 4= 1.01722e-005 A 6= 1.62699e-008 A 8= 2.43253e-010 A10=-1.19810e-012 A12= 3.36149e-015

各種データ
ズーム比 2.35
広角 中間 望遠
焦点距離 28.84 38.11 67.90
Fナンバー 2.91 2.91 2.91
半画角(°) 32.64 27.97 17.59
像高 21.64 21.64 21.64
レンズ全長 158.97 140.28 124.83
BF 11.36 16.01 33.05

d 4 60.69 36.54 3.92
d11 2.77 9.74 16.70
d12 26.62 20.73 14.50
d17 3.30 3.03 2.43
d22 11.36 16.01 33.05

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 -74.18
2 5 47.08
3 13 37.36
4 18 -28.95

(数値例5)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 -280.888 1.40 1.72916 54.7
2 36.396 1.52
3 41.939 2.85 1.94594 18.0
4 52.771 (可変)
5 47.087 6.06 1.49700 81.5
6 -79.192 1.44
7 36.744 2.69 1.49700 81.5
8 82.348 (可変)
9 -58.091 1.00 1.80100 35.0
10 -1478.995 (可変)
11 67.341 1.61 2.00069 25.5
12 173.859 1.48
13(絞り) ∞ 0.81
14 72.552 1.15 1.85478 24.8
15 31.214 3.50 1.49700 81.5
16 -179.566 0.15
17 67.260 1.69 1.77250 49.6
18 3092.755 (可変)
19 -70.308 0.95 1.72825 28.5
20 815.085 (可変)
21* -17.698 1.30 1.51742 52.4
22* -50.579 0.13
23 535.043 3.04 1.98612 16.5
24 -86.210 (可変)
像面 ∞

非球面データ
第21面
K = 0.00000e+000 A 4=-5.50581e-005 A 6= 1.32109e-006 A 8=-1.09791e-008 A10= 4.49107e-011 A12=-6.49580e-014

第22面
K = 0.00000e+000 A 4=-4.34673e-005 A 6= 9.28055e-007 A 8=-7.10430e-009 A10= 2.67818e-011 A12=-3.96048e-014

各種データ
ズーム比 2.99
広角 中間 望遠
焦点距離 28.84 36.43 86.18
Fナンバー 2.91 3.50 5.60
半画角(°) 32.64 28.55 14.09
像高 21.64 21.64 21.64
レンズ全長 156.45 143.53 123.40
BF 7.83 12.26 26.55

d 4 70.88 53.03 9.77
d 8 8.82 9.87 18.20
d10 10.36 9.31 0.98
d18 5.32 5.14 10.13
d20 20.48 21.15 25.00
d24 7.83 12.26 26.55

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 -56.01
2 5 41.89
3 9 -75.51
4 11 44.13
5 19 -88.84
6 21 -207.98
【0060】
【表1】
【0061】
図11は、上記各実施例のズームレンズを撮像光学系として用いた撮像装置としてのデジタルスチルカメラを示している。10はカメラ本体、11は実施例1~5のいずれかのズームレンズによって構成された撮像光学系である。12はカメラ本体10に内蔵され、撮像光学系11により形成された光学像を撮像するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)である。このように各実施例のズームレンズを用いることで、小型のカメラを得ることができる。
【0062】
なお、カメラ本体10は、クイックターンミラーを有する一眼レフカメラであってもよいし、クイックターンミラーを有さないミラーレスカメラであってもよい。
【0063】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
L4 第4レンズ群
L5 第5レンズ群
L6 第6レンズ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11