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特許7566480半導体加工用保護シートおよび半導体装置の製造方法
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  • 特許-半導体加工用保護シートおよび半導体装置の製造方法 図1A
  • 特許-半導体加工用保護シートおよび半導体装置の製造方法 図1B
  • 特許-半導体加工用保護シートおよび半導体装置の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】半導体加工用保護シートおよび半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241007BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241007BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241007BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20241007BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 Q
H01L21/78 V
H01L21/304 622J
C09J7/38
C09J7/29
C09J201/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020060552
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021163768
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 孝文
(72)【発明者】
【氏名】田村 和幸
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-012998(JP,A)
【文献】特開2005-343997(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066408(WO,A1)
【文献】特開2011-216513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
C09J 7/38
C09J 7/29
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の主面上に中間層と粘着剤層とをこの順で有する半導体加工用保護シートであって、
前記中間層および前記粘着剤層がエネルギー線硬化性であり、
前記中間層が充填剤を含んでおらず、
50℃におけるエネルギー線硬化前の半導体加工用保護シートのヤング率が600MPa以上1800MPa以下である半導体加工用保護シート。
【請求項2】
前記基材の他方の主面上に緩衝層を有する請求項1に記載の半導体加工用保護シート。
【請求項3】
前記基材のヤング率が1000MPa以上である請求項1または2に記載の半導体加工用保護シート。
【請求項4】
前記中間層の厚みが60μm以上250μm以下である請求項1から3のいずれかに記載の半導体加工用保護シート。
【請求項5】
半導体ウエハ表面に溝が形成された半導体ウエハの裏面を研削して、その研削により半導体ウエハを半導体チップに個片化する工程において、半導体ウエハの表面に貼付されて使用される請求項1から4のいずれかに記載の半導体加工用保護シート。
【請求項6】
前記中間層を形成するための中間層用組成物が、重量平均分子量が30万~150万のアクリル系重合体(A)と、重量平均分子量が5万~25万のエネルギー線硬化性のアクリル系重合体(B)と、を含有する請求項1から5のいずれかに記載の半導体加工用保護シート。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の半導体加工用保護シートを、凹凸を有する半導体ウエハの表面に貼付する工程と、
前記半導体ウエハの表面側から溝を形成する工程、または、前記半導体ウエハの表面もしくは裏面から前記半導体ウエハ内部に改質領域を形成する工程と、
前記半導体加工用保護シートが表面に貼付され、かつ前記溝または前記改質領域が形成された半導体ウエハを、裏面側から研削して、前記溝または前記改質領域を起点として、複数のチップに個片化させる工程と、
個片化された半導体チップから、前記半導体加工用保護シートを剥離する工程と、を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体加工用保護シートおよび半導体装置の製造方法に関する。特に、凹凸を有する半導体ウエハの裏面研削を行い、その応力等で半導体ウエハを個片化する方法に好適に使用される半導体加工用保護シート、および、当該半導体加工用保護シートを用いる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の小型化、多機能化が進む中、それらに搭載される半導体チップも同様に、小型化、薄型化が求められている。チップの薄型化のために、半導体ウエハの裏面を研削して厚さ調整を行うことが一般的である。また、薄型化されたチップを得るために、ウエハの表面側から所定深さの溝をダイシングブレードにより形成した後、ウエハ裏面側から研削を行い、研削によりウエハを個片化し、チップを得る先ダイシング法(DBG:Dicing Before Grinding)と呼ばれる工法を利用することもある。DBGでは、ウエハの裏面研削と、ウエハの個片化を同時に行うことができるので、薄型チップを効率よく製造できる。
【0003】
従来、半導体ウエハの裏面研削時や、DBGによるチップの製造時には、ウエハ表面の回路を保護し、また、半導体ウエハ及び半導体チップを保持するために、ウエハ表面にバックグラインドシートと呼ばれる粘着テープを貼付するのが一般的である。
【0004】
DBGにおいて使用するバックグラインドシートとしては、基材と、基材の一方の面に設けられた粘着剤層とを備える粘着テープが使用されている。このような粘着テープの一例として、特許文献1および特許文献2には、ヤング率の高い基材と、基材の一方の面に緩衝層が設けられ、他方の面に粘着剤層が設けられた粘着テープが開示されている。
【0005】
近年、先ダイシング法の変形例として、レーザーでウエハ内部に改質領域を設け、ウエハ裏面研削時の応力等でウエハの個片化を行う方法が提案されている。以下、この方法をLDBG(Laser Dicing Before Grinding)と記載することがある。LDBGでは、ウエハは改質領域を起点として結晶方向に切断されるため、ダイシングブレードを用いた先ダイシング法よりもチッピングの発生を低減できる。その結果、抗折強度に優れたチップを得ることができ、また、チップのさらなる薄型化に寄与できる。また、ダイシングブレードによりウエハ表面に所定深さの溝を形成するDBGと比較して、ダイシングブレードによりウエハを削り取る領域がないため、つまり、カーフ幅が極小であるため、チップの収率に優れる。
【0006】
一方、MPUやゲートアレー等に用いる多ピンのLSIパッケージをプリント配線基板に実装する場合には、半導体チップとして、その接続パッド部に共晶ハンダ、高温ハンダ、金等からなる凸状電極(バンプ)が形成されたものを用い、所謂フェースダウン方式により、それらのバンプをチップ搭載用基板上の相対応する端子部に対面、接触させ、溶融/拡散接合するフリップチップ実装方法が採用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/156389号
【文献】特開2015-183008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この実装方法で用いる半導体チップは、凸状電極が形成された半導体ウエハのように凹凸を有する半導体ウエハを個片化して得られる。このような凹凸を有する半導体ウエハをDBGにより研削する場合にも、上記のように、研削時の回路面の保護およびウエハ個片化後のチップの移動防止等のために、半導体ウエハの回路面にはバックグラインドテープが貼付される。
【0009】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載のバックグラインドテープを、凹凸を有する半導体ウエハの回路面に貼付して、DBGにより研削する場合、特許文献1および特許文献2に記載のバックグラインドテープは、半導体ウエハの凹凸に十分追従できず、研削時に回路面に水が浸入する、ウエハ個片化後のチップの移動(チップシフト)が生じる等の問題があった。また、このようなバックグラインドテープにおいて、凹凸に対応するため、軟質の中間層を設けた場合、凹凸には追従できるものの、当該バックグラインドテープを半導体ウエハから剥離する際に、凸状電極に糊残りが生じるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、DBG等により凹凸を有する半導体ウエハを薄く加工する場合であっても、ウエハの凹凸に十分追従でき、研削後のチップのクラックを抑制でき、かつ剥離時に糊残りが抑制されている半導体加工用保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様は、以下の通りである。
[1]基材と、基材の一方の主面上に中間層と粘着剤層とをこの順で有する半導体加工用保護シートであって、
中間層および粘着剤層がエネルギー線硬化性であり、
50℃におけるエネルギー線硬化前の半導体加工用保護シートのヤング率が600MPa以上である半導体加工用保護シートである。
【0012】
[2]基材の他方の主面上に緩衝層を有する[1]に記載の半導体加工用保護シートである。
【0013】
[3]基材のヤング率が1000MPa以上である[1]または[2]に記載の半導体加工用保護シートである。
【0014】
[4]中間層の厚みが60μm以上250μm以下である[1]から[3]のいずれかに記載の半導体加工用保護シートである。
【0015】
[5]半導体ウエハ表面に溝が形成された半導体ウエハの裏面を研削して、その研削により半導体ウエハを半導体チップに個片化する工程において、半導体ウエハの表面に貼付されて使用される[1]から[4]のいずれかに記載の半導体加工用保護シートである。
【0016】
[6][1]から[5]のいずれかに記載の半導体加工用保護シートを、凹凸を有する半導体ウエハの表面に貼付する工程と、
半導体ウエハの表面側から溝を形成する工程、または、半導体ウエハの表面もしくは裏面から半導体ウエハ内部に改質領域を形成する工程と、
半導体加工用保護シートが表面に貼付され、かつ溝または改質領域が形成された半導体ウエハを、裏面側から研削して、溝または改質領域を起点として、複数のチップに個片化させる工程と、
個片化された半導体チップから、半導体加工用保護シートを剥離する工程と、を有する半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、DBG等により凹凸を有する半導体ウエハを薄く加工する場合であっても、ウエハの凹凸に十分追従でき、研削後のチップのクラックを抑制でき、かつ剥離時に糊残りが抑制されている半導体加工用保護シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1Aは、本実施形態に係る半導体加工用保護シートの一例を示す断面模式図である。
図1B図1Bは、本実施形態に係る半導体加工用保護シートの他の例を示す断面模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る半導体加工用保護シートが半導体ウエハの回路面に貼付された様子を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、図面を用いて詳細に説明する。まず、本明細書で使用する主な用語を説明する。
【0020】
半導体ウエハの個片化とは、半導体ウエハを回路毎に分割し、半導体チップを得ることを言う。
【0021】
半導体ウエハの「表面」とは回路、電極等が形成された面を指し、「裏面」は回路等が形成されていない面を指す。
【0022】
DBGとは、ウエハの表面側に所定深さの溝を形成した後、ウエハ裏面側から研削を行い、研削によりウエハを個片化する方法を言う。ウエハの表面側に形成される溝は、ブレードダイシング、レーザーダイシングやプラズマダイシングなどの方法により形成される。
【0023】
また、LDBGとは、DBGの変形例であり、レーザーでウエハ内部に改質領域を設け、ウエハ裏面研削時の応力等でウエハの個片化を行う方法を言う。
【0024】
「チップ群」とは、半導体ウエハの個片化後に、本実施形態に係る半導体加工用保護シート上に保持された、複数の半導体チップをいう。これらの半導体チップは、全体として、半導体ウエハの形状と同様の形状を構成する。
【0025】
本明細書において、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0026】
「エネルギー線」とは、紫外線、電子線等を指し、好ましくは紫外線である。
【0027】
(1.半導体加工用保護シート)
本実施形態に係る半導体加工用保護シート1は、図1Aに示すように、基材10上に中間層20および粘着剤層30がこの順に積層された構成を有している。
【0028】
本実施形態に係る半導体加工用保護シートは、凹凸を有する半導体ウエハに貼付されて使用される。凹凸を有する半導体ウエハとしては、たとえば、凸状電極が形成された半導体ウエハが例示される。
【0029】
たとえば、図2に示すように、本実施形態に係る半導体加工用保護シート1は、凸状電極としてのバンプ102が半導体ウエハ101に形成されたバンプ付き半導体ウエハのバンプ形成面101aに、粘着剤層30の主面30aが貼付されて使用される。バンプは、半導体ウエハに形成された回路と電気的に接続するように形成されているので、バンプ形成面101aは回路面である。
【0030】
本実施形態では、DBGまたはLDBGにより、バンプ付き半導体ウエハは個片化され、複数の半導体チップとなる。すなわち、半導体加工用保護シートの貼付前後に、表面(回路面)に溝が形成された後に、または、半導体ウエハの内部に改質領域が形成された後に、半導体加工用保護シートが回路面に貼付された半導体ウエハは、回路面とは反対側の面である裏面が研削される。
【0031】
半導体ウエハに凸状電極等の凹凸が形成されている場合、研削により半導体ウエハの厚みが薄くなると、半導体ウエハの厚みに対する凹凸の大きさが相対的に大きくなる。そのため、半導体加工用保護シートに凹凸が適切に埋め込まれていない場合、DBGまたはLDBGを行うことにより、以下のような問題がより顕在化する。すなわち、裏面研削時に半導体ウエハの回路面に水が浸入したり、研削後に個片化されたチップが移動しチップ同士が衝突してチップにクラックが生じる等の問題が顕在化する。さらに、研削後に、半導体加工用保護シートを剥離する際に、半導体加工用保護シートは、被着体である複数の半導体チップにその一部が付着したまま剥離されてしまう(糊残りが生じる)という問題も顕在化する。
【0032】
そこで、本実施形態では、半導体加工用保護シートの物性を以下のようにして制御している。
【0033】
(1.1 50℃におけるエネルギー線硬化前の半導体加工用保護シートのヤング率)
本実施形態では、50℃における半導体加工用保護シートのヤング率が600MPa以上である。ヤング率が上記の範囲内であることにより、ウエハが個片化された後であっても、個片化されたチップを十分保持することができる。その結果、個片化されたチップが移動しチップ同士が衝突してチップにクラックが生じることが抑制される。
【0034】
後述するが、本実施形態に係る半導体加工用保護シートの構成要素である粘着剤層および中間層はエネルギー線硬化性であるため、上記のヤング率は、エネルギー線硬化前のヤング率である。チップクラックが生じるのは、粘着剤層および中間層をエネルギー線で硬化させる前だからである。
【0035】
50℃におけるエネルギー線硬化前の半導体加工用保護シートのヤング率は、610MPa以上であることが好ましく、620MPa以上であることがより好ましい。
【0036】
上記のヤング率の上限値は特に規定されないが、半導体加工用保護シートの粘着性の観点から、たとえば、3000MPaである。
【0037】
本実施形態では、50℃におけるエネルギー線硬化前の半導体加工用保護シートのヤング率は、引張試験により測定する。具体的には、JIS K 7127(1999)に準拠して引張試験を行い、引張荷重、引張ひずみ等からヤング率を算出する。
【0038】
半導体加工用保護シートは、図1Aに記載の構成に限定されず、本発明の効果が得られる限りにおいて、他の層を有していてもよい。すなわち、基材、中間層および粘着剤層がこの順で積層されていれば、たとえば、基材と中間層との間に他の層が形成されていてもよいし、中間層と粘着剤層との間に他の層が形成されていてもよい。半導体加工用保護シートが他の層を有している場合には、他の層を含めた半導体加工用保護シート全体としてのヤング率が上記の範囲内であればよい。
【0039】
特に、本実施形態では、図1Bに示すように、基材において、粘着剤層が形成されている主面とは反対側の主面30b上に緩衝層40を有していることが好ましい。緩衝層40を有していることにより、上記の問題の発生をさらに抑制することができる。
【0040】
なお、緩衝層は、比較的軟質であるため、半導体加工用保護シートのヤング率を低下させる傾向にある。したがって、半導体加工用保護シートが緩衝層を有する場合には、半導体加工用保護シートのヤング率が上記の範囲内となるように調整する必要がある。
【0041】
以下では、図1Bに示す半導体加工用保護シート1の構成要素について詳細に説明する。
【0042】
(2.基材)
基材としては、半導体ウエハを支持できる材料で構成されていれば制限されない。たとえば、バックグラインドテープの基材として使用されている各種の樹脂フィルムが例示される。基材は、1つの樹脂フィルムからなる単層フィルムから構成されていてもよいし、複数の樹脂フィルムが積層された複層フィルムから構成されていてもよい。
【0043】
(2.1 基材の物性)
本実施形態では、基材は剛性が高いことが好ましい。基材の剛性が高いことにより、半導体加工用保護シートのヤング率を上記の範囲内とすることが容易となる。研削により半導体ウエハの厚みが薄くなってもウエハが破損することなく保持できる。具体的には、基材のヤング率が1000MPa以上であることが好ましく、1500MPa以上であることがより好ましく、2000MPa以上であることがさらに好ましい。
【0044】
基材の厚みは、本実施形態では、15μm以上200μm以下であることが好ましく、40μm以上150μm以下であることがより好ましい。
【0045】
(2.2 基材の材質)
基材の材質としては、基材のヤング率が上記の範囲内である材料が好ましい。本実施形態では、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0046】
(3.中間層)
中間層は、基材と粘着剤層との間に配置される層である。本実施形態では、中間層は、エネルギー線硬化性である。したがって、エネルギー線硬化前には、中間層の粘弾性が低いため、中間層は粘着剤層とともに半導体ウエハの表面上に形成された凹凸に十分追従して、凹凸を粘着剤層および中間層に埋め込むことができる。その結果、半導体ウエハが非常に薄く研削されて凸状電極等に力が掛かる場合であっても、粘着剤層および中間層は凸状電極等を十分に保護することができる。
【0047】
一方、エネルギー線硬化後には、粘着剤層だけでなく中間層も硬化収縮する。したがって、半導体ウエハまたは個片化後の半導体チップから半導体加工用保護シートを剥離した場合であっても、中間層の弾性率が上がるため、半導体加工用保護シート全体での弾性率も向上し、粘着剤層が半導体ウエハまたは個片化後の半導体チップに付着したままになりにくい(糊残りが抑制される)。
【0048】
また、凸状電極等が粘着剤層を突き抜けた場合には、中間層が凸状電極等を埋め込み保護する。中間層は1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。
【0049】
中間層20の厚みは、半導体ウエハの凹凸の大きさ、たとえば、凸状電極の高さを考慮して設定すればよい。本実施形態では、中間層20の厚みは60μm以上250μm以下であることが好ましく、100μm以上200μm以下であることがより好ましい。なお、中間層の厚さは、中間層全体の厚さを意味する。たとえば、複数層から構成される中間層の厚さは、中間層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0050】
(3.1 中間層用組成物)
中間層は上述したようにエネルギー線硬化性であるため、エネルギー線硬化性を有する組成物(中間層用組成物)から形成されることが好ましい。本実施形態では、中間層用組成物は、重量平均分子量が30万~150万のアクリル系重合体(A)と、重量平均分子量が5万~25万のエネルギー線硬化性のアクリル系重合体(B)とを含有することが好ましい。アクリル系重合体(A)は、非エネルギー線硬化性またはエネルギー線硬化性であるが、本実施形態では、非エネルギー線硬化性であることが好ましい。
【0051】
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。このような方法による測定は、たとえば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC-8120GPC」に、高速カラム「TSK gurd column HXL-H」、「TSK Gel GMHXL」、「TSK Gel G2000 HXL」(以上、全て東ソー社製)をこの順序で連結したものを用い、カラム温度:40℃、送液速度:1.0mL/分の条件で、検出器を示差屈折率計として行われる。
【0052】
(3.1.1 アクリル系重合体(A))
上述したように、アクリル系重合体(A)は、エネルギー線硬化性であってもよいし、非エネルギー線硬化性であってもよい。本実施形態では、アクリル系重合体(A)が非エネルギー線硬化性である場合について説明する。(アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する非エネルギー線硬化性のポリマーであることが好ましい。具体的には、アクリル系重合体(A)は、アルキル(メタ)アクリレート(a1)由来の構成単位と、官能基含有モノマー(a2)由来の構成単位とを有するアクリル系共重合体からなることがより好ましい。
【0053】
アルキル(メタ)アクリレート(a1)としては、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレートが使用される。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
これらの中でも、アルキル(メタ)アクリレート(a1)は、アルキル基の炭素数が4~8であるアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。具体的には、n-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、アルキル(メタ)アクリレート(a1)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
アクリル系重合体(A)における、アルキル(メタ)アクリレート(a1)由来の構成単位の含有量は、アクリル系重合体(A)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50~99.5質量%、より好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは80~95質量%である。
【0056】
この含有量が50質量%以上であれば、粘着シートの保持性能を高めて、凹凸が大きい被着体に対する追従性等を良好にしやすくなる。また、99.5質量%以下であれば、(a2)成分由来の構成単位を一定量以上確保できる。
【0057】
官能基含有モノマー(a2)は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基、シアノ基、窒素原子含有環基、アルコキシシリル基等の官能基を有するモノマーである。官能基含有モノマー(a2)としては、上記した中でも、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、及びエポキシ基含有モノマーから選ばれる1種以上が好ましい。
【0058】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール等が挙げられる。
【0059】
カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0060】
エポキシ含有モノマーとしては、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル及び非アクリル系エポキシ基含有モノマーが挙げられる。エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3-エポキシシクロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、非アクリル系エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジルクロトネート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0061】
官能基含有モノマー(a2)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
官能基含有モノマー(a2)の中では、カルボキシ基含有モノマーがより好ましく、中でも(メタ)アクリル酸がさらに好ましく、アクリル酸が最も好ましい。官能基含有モノマー(a2)として、カルボキシ基含有モノマーを使用すると、中間層の凝集力が高められ、中間層の保持性能等をより一層良好にしやすくなる。
【0063】
アクリル系重合体(A)における、官能基含有モノマー(a2)由来の構成単位の含有量は、アクリル系重合体(A)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0.5~40質量%、より好ましくは3~20質量%、さらに好ましくは5~15質量%である。
【0064】
(a2)成分由来の構成単位の含有量が0.5質量%以上であれば、中間層の凝集力が高くなり、また、(B)成分との相溶性も良好としやすくなる。一方、含有量が40質量%以下であれば、(a1)成分由来の構成単位を一定量以上確保できる。
【0065】
アクリル系重合体(A)は、アルキル(メタ)アクリレート(a1)と官能基含有モノマー(a2)の共重合体であってもよいが、(a1)成分と、(a2)成分と、これら(a1)及び(a2)成分以外のその他のモノマー(a3)との共重合体であってもよい。
【0066】
その他のモノマー(a3)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。その他のモノマー(a3)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
アクリル系重合体(A)における、その他のモノマー(a3)由来の構成単位の含有量は、アクリル系重合体(A)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~10質量%、さらに好ましくは0~5質量%である。
【0068】
アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30万~150万、より好ましくは40万~110万、さらに好ましくは45万~90万である。Mwをこれら上限値以下とすることで、アクリル系重合体(A)はアクリル系重合体(B)との相溶性が良好となる。また、Mwを上記範囲内とすることで、粘着シートの保持性能を高めやすくなる。
【0069】
中間層用組成物中のアクリル系重合体(A)の含有量は、中間層用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは40~95質量%、より好ましくは45~92質量%、さらに好ましくは60~90質量%以上である。
【0070】
なお、中間層用組成物が、後述するように有機溶剤等の希釈液で希釈される場合には、中間層用組成物の全量とは、希釈液を除いた固形分全量を意味する。後述する粘着剤層用組成物についても同様である。
【0071】
(3.1.2 アクリル系重合体(B))
アクリル系重合体(B)は、エネルギー線重合性基が導入されることでエネルギー線硬化性を有するアクリル系重合体である。アクリル系重合体(B)は、重量平均分子量(Mw)が5万~25万となるものである。本発明では、中間層に(B)成分を用いることで、エネルギー線硬化前には、半導体ウエハの裏面研削時に凸状電極を十分埋め込みつつ、研削後にエネルギー線硬化することにより、中間層の凝集破壊を防ぎつつ、半導体チップからの良好な剥離が容易となる。
【0072】
アクリル系重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは6万~22万、より好ましくは7万~20万、さらに好ましくは8.5万~15万である。
【0073】
アクリル系重合体(B)は、エネルギー線重合性基が導入され、かつ(メタ)アクリレート由来の構成単位を有するアクリル系重合体である。アクリル系重合体(B)が有するエネルギー線重合性基は、アクリル系重合体の側鎖に導入することが好ましい。エネルギー線重合性基は、エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合を含む基であればよく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられるが、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0074】
アクリル系重合体(B)は、アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位と、官能基含有モノマー(b2)由来の構成単位とを有するアクリル系共重合体(B0)に、エネルギー線重合性基を有する重合性化合物(Xb)を反応させた反応物であることが好ましい。
【0075】
アルキル(メタ)アクリレート(b1)としては、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレートが使用され、その具体例としては、(a1)成分として例示したものが挙げられる。これらの中でも、アルキル(メタ)アクリレート(b1)は、アルキル基の炭素数が4~8であるアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。具体的には、n-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、それらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
アクリル系共重合体(B0)における、アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位の含有量は、アクリル系共重合体(B0)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50~95質量%、より好ましくは60~85質量%、さらに好ましくは65~80質量%である。この含有量が50質量%以上であれば、形成される中間層の形状を十分に維持することができる。また、95質量%以下であれば、重合性化合物(Xb)との反応点となる(b2)成分由来の構成単位を一定量確保できる。
【0077】
官能基含有モノマー(b2)は、上記した官能基含有モノマー(a2)において例示された官能基を有するモノマーが挙げられ、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、及びエポキシ基含有モノマーから選ばれる1種以上が好ましい。これらの具体的な化合物としては、(a2)成分として例示された化合物と同様のものが例示できる。
【0078】
また、官能基含有モノマー(b2)としては、ヒドロキシ基含有モノマーが好ましく、中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの各種のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを使用することで、比較的容易にアクリル系共重合体(B0)に、重合性化合物(Xb)を反応させることが可能になる。
【0079】
また、アクリル系重合体(A)に使用される官能基含有モノマー(a2)と、アクリル系重合体(B)に使用される官能基含有モノマー(b2)における官能基は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよいが、異なることが好ましい。すなわち、例えば、官能基含有モノマー(a2)がカルボキシ基含有モノマーであれば、官能基含有モノマー(b2)が水酸基含有モノマーであることが好ましい。このように、互いの官能基が異なると、例えば、アクリル系重合体(B)を、後述する架橋剤によって優先的に架橋させたりすることが可能になり、上記した粘着シートの保持性能等をより良好にしやすくなる。
【0080】
アクリル系共重合体(B0)における、官能基含有モノマー(b2)由来の構成単位の含有量は、アクリル系共重合体(B0)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは10~45質量%、より好ましくは15~40質量%、さらに好ましくは20~35質量%である。10質量%以上であれば、重合性化合物(Xb)との反応点を比較的多く確保でき、エネルギー性重合性を側鎖に導入しやすくなる。また、45質量%以下であれば、形成される中間層の形状を十分に維持することができる。
【0081】
アクリル系共重合体(B0)は、アルキル(メタ)アクリレート(b1)と官能基含有モノマー(b2)の共重合体であってもよいが、(b1)成分と、(b2)成分と、これら(b1)及び(b2)成分以外のその他のモノマー(b3)との共重合体であってもよい。
【0082】
その他のモノマー(b3)としては、上述のモノマー(a3)として例示したものが挙げられる。
【0083】
アクリル系共重合体(B0)における、その他のモノマー(b3)由来の構成単位の含有量は、アクリル系共重合体(B0)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~10質量%、さらに好ましくは0~5質量%である。
【0084】
重合性化合物(Xb)は、エネルギー線重合性基と、アクリル系共重合体(B0)の(b2)成分由来の構成単位中の官能基と反応し得る置換基(以下、単に「反応性置換基」ともいう)とを有する化合物である。
【0085】
エネルギー線重合性基としては、上述のとおり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、重合性化合物(Xb)は、エネルギー線重合性基を1分子あたり1~5個有する化合物であることが好ましい。
【0086】
重合性化合物(Xb)における反応性置換基としては、官能基含有モノマー(b2)が有する官能基に応じて適宜変更すればよいが、例えば、イソシアネート基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられ、反応性等の観点から、イソシアネート基が好ましい。重合性化合物(Xb)は、イソシアネート基を有すると、例えば、官能基含有モノマー(b2)の官能基がヒドロキシ基である場合に、アクリル系共重合体(B0)に容易に反応することが可能になる。
【0087】
具体的な重合性化合物(Xb)としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらの重合性化合物(Xb)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
これらの中でも、上記反応性置換基として好適なイソシアネート基を有しており、且つ主鎖とエネルギー線重合性基との距離が適当となる化合物であるとの観点から、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。
【0089】
重合性化合物(Xb)は、アクリル系重合体(B)における官能基含有モノマー(b2)由来の官能基全量(100当量)のうち、好ましくは40~98当量、より好ましくは60~90当量、さらに好ましくは70~85当量が官能基に反応される。
【0090】
中間層用組成物において、アクリル系重合体(B)の含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、5~60質量部であることが好ましく、10~35質量部であることがより好ましい。(B)成分の含有量をこのように比較的少なくすることで、中間層が、半導体ウエハの凹凸に追従しやすくなる。
【0091】
(3.1.3 架橋剤)
中間層用組成物は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられ、これらの中では、イソシアネート系架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤を使用すると、例えば(B)成分がヒドロキシ基を有する場合には、架橋剤はアクリル系重合体(B)を優先的に架橋する。
【0092】
中間層用組成物は、例えば塗布後に加熱されることで、架橋剤によって架橋される。中間層は、アクリル系重合体、特に低分子量のアクリル系重合体(B)等が架橋されることで、塗膜が適切に形成され、中間層としての機能を発揮しやすくなる。
【0093】
架橋剤の含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~7質量部、さらに好ましくは1~5質量部である。
【0094】
イソシアネート系架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体等も挙げられる。
【0095】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記した中では、トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートの多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン等)アダクト体が好ましい。
【0096】
また、エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属にアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、トリス(2,4-ペンタンジオネート)等が配位した化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ-β-アジリジニルプロピオネート、トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリス-1-(2-メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート、ヘキサ〔1-(2-メチル)-アジリジニル〕トリフオスファトリアジン等が挙げられる。
【0099】
(3.1.4 光重合開始剤)
中間層用組成物は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。中間層用組成物は、光重合開始剤を含有することで、中間層用組成物の紫外線等によるエネルギー線硬化を進行させやすくなる。
【0100】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2-ジエトキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジフェニサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ベンジルジメチルケタール、ジベンジル、ジアセチル、1-クロルアントラキノン、2-クロルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-フォスフィンオキサイド等の低分子量重合開始剤、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}等のオリゴマー化された重合開始剤などが挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの中では、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
【0101】
光重合開始剤の含有量は、少ないアクリル系重合体(B)の含有量でも十分に硬化が進みやすくするために、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~8質量部である。
【0102】
中間層用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の添加剤を含有してもよい。他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料、粘着付与剤等が挙げられる。これらの添加剤を含有する場合、それぞれの添加剤の含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~6質量部、より好ましくは0.01~2質量部である。
【0103】
なお、半導体加工用保護シートのヤング率は、例えば、アクリル系重合体(B)を使用する場合には、アクリル系重合体(B)を構成するモノマーの種類及び量、アクリル系重合体(B)に導入されるエネルギー線重合性基の量等により調整可能である。例えば、エネルギー線重合性基の量を増やすと、ヤング率は高くなる傾向にある。さらには、中間層に配合される架橋剤の量、光重合開始剤の量等によっても適宜調整可能である。
【0104】
(4.粘着剤層)
粘着剤層は、半導体ウエハの回路面に貼付され、回路面から剥離されるまで、回路面を保護し、半導体ウエハを支持する。本実施形態では、粘着剤層は、エネルギー線硬化性である。したがって、エネルギー線硬化前には、粘着剤層は、中間層とともに半導体ウエハの表面上に形成された凹凸に十分追従して、凹凸を半導体加工用保護シートに埋め込むことができる。その結果、半導体ウエハが非常に薄く研削されて凸状電極等に力が掛かる場合であっても、半導体加工用保護シートは凸状電極等を十分に保護することができる。
【0105】
一方、エネルギー線硬化後には、粘着剤層は硬化収縮する。したがって、半導体ウエハまたは個片化後の半導体チップから半導体加工用保護シートを剥離した場合であっても、粘着剤層が凝集破壊しにくいので、粘着剤層の一部が半導体ウエハまたは個片化後の半導体チップに付着したままになりにくい(糊残りが抑制される)。
【0106】
また、粘着剤層は1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。
【0107】
粘着剤層の厚みは、半導体ウエハを十分支持できるような厚みであれば特に制限されない。本実施形態では、粘着剤層の厚みは5μm以上500μm以下であることが好ましく、8μm以上100μm以下であることがより好ましい。なお、粘着剤層の厚さは、粘着剤層全体の厚さを意味する。たとえば、複数層から構成される粘着剤層の厚さは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0108】
(4.1 粘着剤層用組成物)
粘着剤層は上述したようにエネルギー線硬化性であるため、エネルギー線硬化性を有する組成物(粘着剤層用組成物)から形成されることが好ましい。本実施形態では、粘着剤層用組成物は、粘着剤層は樹脂を有する組成物であることが好ましい。
【0109】
粘着剤層用組成物は、粘着剤層に粘着性を発現し得る粘着剤成分(粘着性樹脂)として、例えば、アクリル系重合体、ポリウレタン、ゴム系ポリマー、ポリオレフィン、シリコーン等を含有する。これらの中では、アクリル系重合体が好ましい。
【0110】
粘着剤層用組成物は、粘着性樹脂とは別にエネルギー線硬化性化合物が配合されることでエネルギー線硬化性を有してもよいが、上記した粘着性樹脂自体がエネルギー線硬化性を有することが好ましい。粘着性樹脂自体がエネルギー線硬化性を有する場合、粘着性樹脂にエネルギー線重合性基が導入されるが、エネルギー線重合性基は粘着性樹脂の主鎖または側鎖に導入されることが好ましい。
【0111】
また、粘着性樹脂とは別にエネルギー線硬化性化合物が配合される場合、そのエネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性基を有するモノマー、オリゴマーが使用される。オリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が10000未満のオリゴマーであり、例えばウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。また、粘着性樹脂自体がエネルギー線硬化性を有する場合であっても、粘着剤層用組成物には、粘着性樹脂以外にもエネルギー線硬化性化合物が配合されてもよい。
【0112】
以下、粘着剤層用組成物に含有されるエネルギー線硬化性の粘着性樹脂が、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(C)」ともいう)である場合についてより詳細に説明する。
【0113】
(4.1.1 アクリル系重合体(C))
アクリル系重合体(C)は、エネルギー線重合性基が導入され、かつ(メタ)アクリレート由来の構成単位を有するアクリル系重合体である。エネルギー線重合性基は、アクリル系重合体の側鎖に導入することが好ましい。
【0114】
アクリル系重合体(C)は、アルキル(メタ)アクリレート(c1)由来の構成単位と、官能基含有モノマー(c2)由来の構成単位とを有するアクリル系共重合体(C0)に、エネルギー線重合性基を有する重合性化合物(Xc)を反応させた反応物であることが好ましい。
【0115】
アルキル(メタ)アクリレート(c1)としては、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレートが使用され、その具体例としては、(a1)成分として例示したものが挙げられる。これらの中でも、アルキル(メタ)アクリレート(c1)は、アルキル基の炭素数が4~8であるアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。具体的には、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、それらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
アクリル系共重合体(C0)における、アルキル(メタ)アクリレート(c1)由来の構成単位の含有量は、形成される粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、アクリル系共重合体(C0)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~97質量%、さらに好ましくは70~96質量%である。
【0117】
例えば、アルキル(メタ)アクリレート(c1)は、上記の2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびn-ブチル(メタ)アクリレートに加えて、エチル(メタ)アクリレートメチル(メタ)アクリレートを含有してもよい。これらのモノマーを含有させることで、粘着剤層の粘着性能を所望のものに調整しやすくなる。
【0118】
官能基含有モノマー(c2)は、上記した官能基含有モノマー(a2)として例示された官能基を有するモノマーが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、及びエポキシ基含有モノマーから選ばれる1種以上が好ましい。これらの具体的な化合物としては、(a2)成分として例示された化合物と同様のものが例示できる。
【0119】
官能基含有モノマー(c2)としては、上記した中でも、ヒドロキシ基含有モノマーがより好ましく、中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0120】
(c2)成分として、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを使用することで、比較的容易にアクリル系共重合体(C0)に、重合性化合物(Xc)を反応させることが可能になる。また、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを使用すると、中間層の引張強度が高くなり、糊残りを防止しやすくなる。
【0121】
アクリル系共重合体(C0)における、官能基含有モノマー(c2)由来の構成単位の含有量は、アクリル系共重合体(C0)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは2~35質量%、さらに好ましくは3~30質量%、よりさらに好ましくは10~30質量%である。
【0122】
含有量が1質量%以上であれば、重合性化合物(Xc)との反応点となる官能基を一定量確保できる。そのため、エネルギー線の照射により粘着剤層を適切に硬化できるので、エネルギー線照射後の粘着力を低くすることが可能になる。また、含有量が40質量%以下であれば、粘着剤層用組成物の溶液を塗布し、粘着剤層を形成する際、十分なポットライフを確保することができる。
【0123】
アクリル系共重合体(C0)は、アルキル(メタ)アクリレート(c1)と官能基含有モノマー(c2)の共重合体であってもよいが、(c1)成分と、(c2)成分と、これら(c1)及び(c2)成分以外のその他のモノマー(c3)との共重合体であってもよい。
【0124】
その他のモノマー(c3)としては、上述のモノマー(a3)として例示したものが挙げられる。
【0125】
アクリル系共重合体(C0)における、その他のモノマー(c3)由来の構成単位の含有量は、アクリル系共重合体(C0)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~10質量%、さらに好ましくは0~5質量%である。
【0126】
重合性化合物(Xc)は、上述の重合性化合物(Xb)と同様に、エネルギー線重合性基と、アクリル系共重合体(C0)の(c2)成分由来の構成単位中の官能基と反応し得る置換基(反応性置換基)とを有する化合物であり、好ましくは、エネルギー線重合性基を1分子あたり1~5個有する化合物であることが好ましい。
【0127】
反応性置換基及びエネルギー線重合性基の具体例は、重合性化合物(Xb)と同様であり、したがって、反応性置換基はイソシアネート基が好ましく、エネルギー線重合性基は(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0128】
また、具体的な重合性化合物(Xc)としては、上述の重合性化合物(Xb)として例示したものと同様のものが挙げられ、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。なお、重合性化合物(Xc)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
重合性化合物(Xc)は、アクリル系共重合体(C0)における官能基含有モノマー(c2)由来の官能基全量(100当量)のうち、好ましくは30~98当量、より好ましくは40~95当量が官能基に反応される。
【0130】
アクリル系重合体(C)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万~150万、より好ましくは25万~100万、さらに好ましくは35万~80万である。このようなMwを有することで、粘着剤層に適切な粘着性を付与することが可能になる。
【0131】
粘着性樹脂がエネルギー線硬化性を有する場合であっても、粘着剤層用組成物には、粘着性樹脂以外のエネルギー線硬化性化合物が含まれることが好ましい。このようなエネルギー線硬化性化合物としては、分子内に不飽和基を有し、エネルギー線照射により重合硬化可能なモノマー又はオリゴマーが好ましい。
【0132】
具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート,ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーが挙げられる。
【0133】
これらの中でも、比較的分子量が高く、粘着剤層の弾性率を低下させにくい観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0134】
(4.1.2 架橋剤)
粘着剤層用組成物は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。粘着剤層用組成物は、例えば塗布後に加熱されることで、架橋剤によって架橋される。粘着剤層は、アクリル系重合体(C)が架橋剤によって架橋されることで、塗膜が適切に形成され、粘着剤層としての機能を発揮しやすくなる。
【0135】
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤が挙げられ、これらの中では、イソシアネート系架橋剤が好ましい。架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、イソシアネート系架橋剤の具体例は、中間層用組成物に使用され得る架橋剤として例示されたものが挙げられ、その好ましい化合物も同様である。
【0136】
架橋剤の含有量は、アクリル系重合体(C)100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~7質量部、さらに好ましくは0.3~4質量部である。
【0137】
(4.1.3 光重合開始剤)
粘着剤層用組成物は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、上述の中間層用組成物に使用される光重合開始剤として例示されたものが挙げられる。なお、光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記した中では、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
【0138】
光重合開始剤の含有量は、アクリル系重合体(C)100質量部に対して、好ましくは0.5~15質量部、より好ましくは1~12質量部、さらに好ましくは4.5~10質量部である。
【0139】
粘着剤層用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の添加剤を含有してもよい。他の添加剤としては、例えば、粘着付与剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。これらの添加剤を含有する場合、それぞれの添加剤の含有量は、アクリル系重合体(C)100質量部に対して、好ましくは0.01~6質量部、より好ましくは0.02~2質量部である。
【0140】
なお、半導体加工用保護シートのヤング率は、例えば、アクリル系重合体(C)を使用する場合には、アクリル系重合体(C)を構成するモノマーの種類及び量、アクリル系重合体(C)に導入されるエネルギー線重合性基の量等により調整可能である。例えば、エネルギー線重合性基の量を増やすと、ヤング率は高くなる傾向にある。さらには、粘着剤層に配合される架橋剤の量、光重合開始剤の量等によっても適宜調整可能である。
【0141】
(5.緩衝層)
緩衝層は、図1Bに示すように、粘着剤層が形成されている基材の主面と反対側の主面上に形成されている。緩衝層40は、基材と比較して軟質の層であり、半導体ウエハの裏面研削時の応力を緩和して、半導体ウエハに割れ及び欠けが生じることを防止する。また、半導体加工用保護シートを貼付した半導体ウエハは、裏面研削時に、半導体加工用保護シートを介して真空テーブル上に配置されるが、半導体加工用保護シートの構成層として緩衝層を有することで、真空テーブルに適切に保持されやすくなる。
【0142】
緩衝層の厚さは、1~100μmであることが好ましく、5~80μmであることがより好ましく、10~60μmであることがさらに好ましい。緩衝層の厚さを上記範囲とすることで、緩衝層が裏面研削時の応力を適切に緩和できるようになる。
【0143】
緩衝層は、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層用組成物から形成される層であってもよいし、ポリプロピレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、LDPEフィルム、LLDPEフィルム等のフィルムであってもよい。
【0144】
なお、緩衝層を有する基材は、基材の片面または両面に緩衝層をラミネートして得られる。
【0145】
(5.1 緩衝層用組成物)
エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層用組成物は、エネルギー線が照射されることで硬化することが可能になる。
【0146】
また、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層用組成物は、より具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート(d1)と環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物(d3)とを含むことが好ましい。また、緩衝層用組成物は、上記(d1)及び(d3)成分に加えて、多官能重合性化合物(d2)及び/又は官能基を有する重合性化合物(d4)を含有してもよい。また、緩衝層用組成物は、上記の成分に加えて、光重合開始剤を含有してもよい。さらに、緩衝層用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤や樹脂成分を含有してもよい。
【0147】
以下、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層用組成物中に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0148】
(5.1.1 ウレタン(メタ)アクリレート(d1))
ウレタン(メタ)アクリレート(d1)とは、少なくとも(メタ)アクリロイル基及びウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線照射により重合硬化する性質を有するものである。ウレタン(メタ)アクリレート(d1)は、オリゴマーまたはポリマーである。
【0149】
成分(d1)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは2,000~60,000、さらに好ましくは3,000~20,000である。また、成分(d1)中の(メタ)アクリロイル基数(以下、「官能基数」ともいう)としては、単官能、2官能、もしくは3官能以上でもよいが、単官能又は2官能であることが好ましい。
【0150】
成分(d1)は、例えば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。なお、成分(d1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0151】
成分(d1)の原料となるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であれば特に限定されない。2官能のジオール、3官能のトリオール、4官能以上のポリオールのいずれであってもよいが、2官能のジオールが好ましく、ポリエステル型ジオールまたはポリカーボネート型ジオールがより好ましい。
【0152】
多価イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族系ジイソシアネート類;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート類等が挙げられる。
【0153】
これらの中でも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0154】
上述のポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させてウレタン(メタ)アクリレート(d1)を得ることができる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、少なくとも1分子中にヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。
【0155】
具体的なヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリルアミド;ビニルアルコール、ビニルフェノール、ビスフェノールAのジグリシジルエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる反応物;等が挙げられる。
【0156】
これらの中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0157】
末端イソシアネートウレタンプレポリマー及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させる条件としては、必要に応じて添加される溶剤、触媒の存在下、60~100℃で、1~4時間反応させる条件が好ましい。
【0158】
緩衝層用組成物中の成分(d1)の含有量は、緩衝層用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~60質量%、さらに好ましくは25~55質量%である。
【0159】
(5.1.2 多官能重合性化合物(d2))
多官能重合性化合物とは、光重合性不飽和基を2つ以上有する化合物をいう。光重合性不飽和基は、炭素-炭素二重結合を含む官能基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルベンジル基等が挙げられる。光重合性不飽和基は2種以上を組み合わせてもよい。多官能重合性化合物中の光重合性不飽和基と成分(d1)中の(メタ)アクリロイル基とが反応したり、成分(d2)中の光重合性不飽和基同士が反応することで、三次元網目構造(架橋構造)が形成される。多官能重合性化合物を使用すると、光重合性不飽和基を1つしか含まない化合物を使用した場合と比較して、エネルギー線照射により形成される架橋構造が増加するため、緩衝層が特異な粘弾性を示し、裏面研削時の応力を緩和することが容易となる。
【0160】
なお、成分(d2)の定義と、後述する成分(d3)や成分(d4)の定義とは重複する部分があるが、重複部分は成分(d2)に含まれる。例えば、環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有し、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物は、成分(d2)と成分(d3)の両方の定義に含まれるが、本発明において当該化合物は、成分(d2)に含まれるものとする。また、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基等の官能基を含有し、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物は、成分(d2)と成分(d4)の両方の定義に含まれるが、本発明において当該化合物は、成分(d2)に含まれるものとする。
【0161】
上記観点から、多官能重合性化合物中における光重合性不飽和基の数(官能基数)は、2~10が好ましく、3~6がより好ましい。
【0162】
また、成分(d2)の重量平均分子量は、好ましくは30~40000、より好ましくは100~10000、さらに好ましくは200~1000である。
【0163】
具体的な成分(d2)としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸ビニル、アジピン酸ジビニル、N,N'-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。なお、成分(d2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0164】
緩衝層用組成物中の成分(d2)の含有量は、緩衝層用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは2~40質量%、より好ましくは3~20質量%、さらに好ましくは5~15質量%である。
【0165】
(5.1.3 環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物(d3))
成分(d3)は、環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物であり、さらには、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、より好ましくは1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。成分(d3)を用いることで、得られる緩衝層用組成物の成膜性を向上させることができる。
【0166】
なお、成分(d3)の定義と、後述する成分(d4)の定義とは重複する部分があるが、重複部分は成分(d4)に含まれる。例えば、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基と、環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基と、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基等の官能基とを有する化合物は、成分(d3)と成分(d4)の両方の定義に含まれるが、本発明において当該化合物は、成分(d4)に含まれるものとする。
【0167】
具体的な成分(d3)としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート等の脂環基含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルフォリン(メタ)アクリレート等の複素環基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。なお、成分(d3)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0168】
脂環基含有(メタ)アクリレートの中ではイソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、複素環基含有(メタ)アクリレートの中ではテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0169】
緩衝層用組成物中の成分(d3)の含有量は、緩衝層用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~60質量%、さらに好ましくは25~55質量%である。
【0170】
また、緩衝層用組成物中の成分(d2)と成分(d3)との含有量比〔(d2)/(d3)〕は、好ましくは0.1~3.0、より好ましくは0.15~2.0、さらに好ましくは0.18~1.0である。
【0171】
(5.1.4 官能基を有する重合性化合物(d4))
成分(d4)は、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基等の官能基を含有する重合性化合物であり、さらには、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、より好ましくは1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0172】
成分(d4)は、成分(d1)との相溶性が良好であり、緩衝層用組成物の粘度を適度な範囲に調整しやすくなる。また、緩衝層を比較的薄くしても緩衝性能が良好になる。
【0173】
成分(d4)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有化合物、アミド基含有化合物、アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
【0174】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシー3-フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する水酸基含有(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、成分(d4)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0175】
緩衝層用組成物中の成分(d4)の含有量は、緩衝層用組成物の成膜性を向上させるために、緩衝層用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは5~40質量%、より好ましくは7~35質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。
【0176】
また、緩衝層用組成物中の成分(d3)と成分(d4)との含有量比〔(d3)/(d4)〕は、好ましくは0.5~3.0、より好ましくは1.0~3.0、さらに好ましくは1.3~3.0である。
【0177】
(5.1.5 成分(d1)~(d4)以外の重合性化合物(d5))
緩衝層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の成分(d1)~(d4)以外のその他の重合性化合物(d5)を含有してもよい。
【0178】
成分(d5)としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル化合物:等が挙げられる。なお、成分(d5)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0179】
緩衝層用組成物中の成分(d5)の含有量は、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~10質量%、さらに好ましくは0~5質量%、特に好ましくは0~2質量%である。
【0180】
(5.1.6 光重合開始剤)
緩衝層用組成物には、緩衝層を形成する際、光照射による重合時間を短縮させ、また、光照射量を低減させる観点から、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0181】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物、さらには、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられ、より具体的には、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロルニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8-クロールアンスラキノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0182】
緩衝層用組成物中の光重合開始剤の含有量は、エネルギー線重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.3~5質量部である。
【0183】
(5.1.7 その他の添加剤)
緩衝層用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。これらの添加剤を配合する場合、緩衝層用組成物中の各添加剤の含有量は、エネルギー線重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01~6質量部、より好ましくは0.1~3質量部である。
【0184】
エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層用組成物から形成される緩衝層は、上記組成の緩衝層用組成物をエネルギー線照射により重合硬化して得られる。つまり、当該緩衝層は、緩衝層用組成物を硬化した物である。
【0185】
したがって、当該緩衝層は、成分(d1)由来の重合単位及び成分(d3)由来の重合単位を含むことが好ましい。また、当該緩衝層は、成分(d2)由来の重合単位及び/又は成分(d4)由来の重合単位を含有していてもよいし、、成分(d5)由来の重合単位を含有していてもよい。緩衝層における各重合単位の含有割合は、通常、緩衝層用組成物を構成する各成分の比率(仕込み比)に一致する。
【0186】
(6.剥離シート)
半導体加工用保護シートの表面には、剥離シートが貼付されていてもよい。剥離シートは、具体的には、半導体加工用保護シートの粘着剤層の表面に貼付される。剥離シートは、粘着剤層表面に貼付されることで輸送時、保管時に粘着剤層を保護する。剥離シートは、剥離可能に半導体加工用保護シートに貼付されており、半導体加工用保護シートが使用される前(すなわち、ウエハ貼付前)には、半導体加工用保護シートから剥離されて取り除かれる。
【0187】
剥離シートは、少なくとも一方の面が剥離処理をされた剥離シートが用いられ、具体的には、剥離シート用基材の表面上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
【0188】
剥離シート用基材としては、樹脂フィルムが好ましく、当該樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0189】
剥離シートの厚さは、特に制限ないが、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μmである。
【0190】
(7.半導体加工用保護シートの製造方法)
本実施形態に係る半導体加工用保護シートを製造する方法は、基材の一方の主面上に中間層および粘着剤層を形成し、基材の他方の主面上に緩衝層を形成できる方法であれば特に制限されず、公知の方法を用いればよい。
【0191】
まず、中間層を形成するための組成物として、たとえば、上述した成分を含有する中間層用組成物、または、当該中間層用組成物を溶媒等により希釈した組成物を調製する。同様に、粘着剤層を形成するための粘着剤層用組成物として、たとえば、上述した成分を含有する粘着剤層用組成物、または、当該粘着剤層用組成物を溶媒等により希釈した組成物を調製する。同様に、緩衝層を形成するための緩衝層用組成物として、たとえば、上述した成分を含有する緩衝層用組成物、または、当該粘着剤層用組成物を溶媒等により希釈した組成物を調製する。
【0192】
溶媒としては、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、トルエン、キシレン、n-プロパノール、イソプロパノール等の有機溶剤が挙げられる。
【0193】
そして、第1の剥離シートの剥離処理面に緩衝層用組成物を、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の方法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を半硬化させて剥離シート上に緩衝層膜を形成する。剥離シート上に形成した緩衝層膜を基材に貼り合わせて、緩衝層膜を完全に硬化させて、緩衝層を形成する。
【0194】
本実施形態では、塗布膜の硬化は、エネルギー線の照射により行うことが好ましい。また、塗布膜の硬化は、一度の硬化処理で行ってもよいし、複数回に分けて行ってもよい。
【0195】
続いて、第2の剥離シートの剥離処理面に、中間層用組成物を公知の方法により塗布して加熱乾燥して第2の剥離シート上に中間層を形成する。その後、第2の剥離シート上の中間層と緩衝層が形成されていない基材の面とを貼り合わせて、第2の剥離シートを除去する。
【0196】
続いて、第3の剥離シートの剥離処理面に、粘着剤層用組成物を公知の方法により塗布し、加熱乾燥して第3の剥離シート上に粘着剤層を形成する。その後、第3の剥離シート上の粘着剤層と中間層とを貼り合わせることにより、基材の一方の主面上に中間層および粘着剤層がこの順で形成され、基材の他方の主面上に緩衝層が形成された半導体加工用保護シートが得られる。なお、第3の剥離シートは、半導体加工用保護シートの使用時に除去すればよい。
【0197】
(8.半導体装置の製造方法)
本発明に係る半導体加工用保護シートは、DBGにおいて、半導体ウエハの表面に貼付してウエハの裏面研削が行われる際に好ましく使用される。特に、本発明に係る半導体加工用保護シートは、半導体ウエハを個片化した際に、カーフ幅の小さいチップ群が得られるLDBGに好ましく使用される。
【0198】
半導体加工用保護シートの非限定的な使用例として、以下に半導体装置の製造方法をさらに具体的に説明する。
【0199】
半導体装置の製造方法は、具体的には、以下の工程1~工程4を少なくとも備える。
工程1:上記の半導体加工用保護シートを、凹凸を有する半導体ウエハの表面に貼付する工程
工程2:当該半導体ウエハの表面側から溝を形成し、又は当該半導体ウエハの表面若しくは裏面から当該半導体ウエハ内部に改質領域を形成する工程
工程3:半導体加工用保護シートが表面に貼付され、かつ上記溝又は改質領域が形成された半導体ウエハを、裏面側から研削して、溝又は改質領域を起点として、複数のチップに個片化させる工程
工程4:個片化された半導体ウエハ(すなわち、複数の半導体チップ)から、半導体加工用保護シートを剥離する工程
【0200】
以下、上記半導体装置の製造方法の各工程を詳細に説明する。
【0201】
(工程1)
工程1では、凹凸を有する半導体ウエハ表面に、本実施形態に係る半導体加工用保護シートを粘着剤層を介して貼付する。本実施形態に係る半導体加工用保護シートは上述した特性を有しているため、凹凸に十分追従し埋め込んで保護することができる。
【0202】
本工程は、後述する工程2の前に行われてもよいが、工程2の後に行ってもよい。例えば、半導体ウエハに改質領域を形成する場合には、工程1を工程2の前に行うことが好ましい。一方で、半導体ウエハ表面に、ダイシング等により溝を形成する場合には、工程2の後に工程1を行う。すなわち、後述する工程2で形成した溝を有するウエハの表面に、本工程1にて半導体加工用保護シートを貼付することになる。
【0203】
本製造方法で用いられる半導体ウエハはシリコンウエハであってもよいし、またガリウム砒素、炭化ケイ素、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、窒化ガリウム、インジウム燐などのウエハや、ガラスウエハであってもよい。半導体ウエハの研削前の厚さは特に限定されないが、通常は500~1000μm程度である。また、半導体ウエハは、通常、その表面に回路が形成されている。ウエハ表面への回路の形成は、エッチング法、リフトオフ法などの従来汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。特に、本実施形態では、半導体ウエハの回路面には、凸状電極(バンプ)が形成されている。その結果、凸状電極が形成されていない半導体ウエハに比べて、半導体ウエハの回路面には凹凸が存在している。なお、凸状電極の高さは、特に限定されないが、通常、5~200μmである。
【0204】
(工程2)
工程2では、半導体ウエハの表面側から溝を形成し、又は半導体ウエハの表面又は裏面から半導体ウエハの内部に改質領域を形成する。
【0205】
本工程で形成される溝は、半導体ウエハの厚さより浅い深さの溝である。溝の形成は、従来公知のウエハダイシング装置等を用いてダイシングにより行うことが可能である。また、半導体ウエハは、後述する工程3において、溝に沿って複数の半導体チップに分割される。
【0206】
また、改質領域は、半導体ウエハにおいて、脆質化された部分であり、研削工程における研削によって、半導体ウエハが薄くなったり、研削による力が加わったりすることにより半導体ウエハが破壊されて半導体チップに個片化される起点となる領域である。すなわち、工程2において溝及び改質領域は、後述する工程3において、半導体ウエハが分割されて半導体チップに個片化される際の分割線に沿うように形成される。
【0207】
改質領域の形成は、半導体ウエハの内部に焦点を合わせたレーザーの照射により行い、改質領域は、半導体ウエハの内部に形成される。レーザーの照射は、半導体ウエハの表面側から行っても、裏面側から行ってもよい。なお、改質領域を形成する態様において、工程2を工程1の後に行いウエハ表面からレーザー照射を行う場合、半導体加工用保護シートを介して半導体ウエハにレーザーを照射することになる。
【0208】
半導体加工用保護シートが貼付され、かつ溝又は改質領域を形成した半導体ウエハは、チャックテーブル上に載せられ、チャックテーブルに吸着されて保持される。この際、半導体ウエハは、表面側がテーブル側に配置されて吸着される。
【0209】
(工程3)
工程1及び工程2の後、チャックテーブル上の半導体ウエハの裏面を研削して、半導体ウエハを複数の半導体チップに個片化する。
【0210】
ここで、裏面研削は、半導体ウエハに溝が形成される場合には、少なくとも溝の底部に至る位置まで半導体ウエハを薄くするように行う。この裏面研削により、溝は、ウエハを貫通する切り込みとなり、半導体ウエハは切り込みにより分割されて、個々の半導体チップに個片化される。
【0211】
一方、改質領域が形成される場合には、研削によって研削面(ウエハ裏面)は、改質領域に至ってもよいが、厳密に改質領域まで至らなくてもよい。すなわち、改質領域を起点として半導体ウエハが破壊されて半導体チップに個片化されるように、改質領域に近接する位置まで研削すればよい。例えば、半導体チップの実際の個片化は、後述するピップアップテープを貼付してからピップアップテープを延伸することで行ってもよい。
【0212】
また、裏面研削の終了後、チップのピックアップに先立ち、ドライポリッシュを行ってもよい。
【0213】
個片化された半導体チップの形状は、方形でもよいし、矩形等の細長形状となっていてもよい。また、個片化された半導体チップの厚さは特に限定されないが、好ましくは5~100μm程度であるが、より好ましくは10~45μmである。レーザーでウエハ内部に改質領域を設け、ウエハ裏面研削時の応力等でウエハの個片化を行う、LDBGによれば、個片化された半導体チップの厚さを50μm以下、より好ましくは10~45μmとすることが容易になる。また、個片化された半導体チップの大きさは、特に限定されないが、チップサイズが好ましくは600mm未満、より好ましくは400mm未満、さらに好ましくは120mm未満である。
【0214】
本実施形態に係る半導体加工用保護シートを使用すると、このように薄型及び/又は小型の半導体チップであっても、裏面研削時(工程3)、及び半導体加工用保護シート剥離時(工程4)に半導体チップにクラックが生じることが防止される。
【0215】
(工程4)
次に、個片化された半導体ウエハ(すなわち、複数の半導体チップ)から、半導体加工用保護シートを剥離する。本工程は、例えば、以下の方法により行う。
【0216】
本実施形態では、半導体加工用保護シートの中間層および粘着剤層が、エネルギー線硬化性粘着剤から形成されているので、エネルギー線を照射して中間層および粘着剤層を硬化収縮させ、被着体(個片化された半導体ウエハ)に対する粘着力を低下させる。次いで、個片化された半導体ウエハの裏面側に、ピックアップテープを貼付し、ピックアップが可能なように位置及び方向合わせを行う。この際、ウエハの外周側に配置したリングフレームもピックアープテープに貼り合わせ、ピックアップテープの外周縁部をリングフレームに固定する。ピックアップテープには、ウエハとリングフレームを同時に貼り合わせてもよいし、別々のタイミングで貼り合わせてもよい。次いで、ピックアップテープ上に保持された複数の半導体チップから半導体加工用保護シートを剥離する。
【0217】
本実施形態に係る半導体加工用保護シートは上述した特性を有しているので、凹凸、特に凸状電極に付着したままにならずに、良好な剥離を行うことができる。
【0218】
その後、ピックアップテープ上にある複数の半導体チップをピックアップし基板等の上に固定化して、半導体装置を製造する。
【0219】
なお、ピックアップテープは、特に限定されないが、例えば、基材と、基材の一方の面に設けられた粘着剤層を備える粘着シートによって構成される。
【0220】
以上、本発明に係る半導体加工用保護シートについて、DBGまたはLDBGにより半導体ウエハを個片化する方法に使用する例について説明したが、本発明に係る半導体加工用保護シートは、半導体ウエハを個片化した際に、カーフ幅の小さく、より薄化されたチップ群が得られるLDBGに好ましく使用できる。
【0221】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例
【0222】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0223】
本実施例における測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0224】
(50℃におけるエネルギー線硬化前の半導体加工用保護シートのヤング率)
50℃において、実施例および比較例で作製したエネルギー線硬化前の半導体加工用保護シートをJIS K 7127(1999)に準拠して、試験速度200mm/分で引張試験を行い、ヤング率を測定した。
【0225】
(DBGチップクラック評価)
直径12インチのシリコンウェハのウェハ表面から溝を形成した後、実施例および比較例で作製した半導体加工用保護シートをウエハ表面に貼付して、裏面研削によりウエハを個片化する、先ダイシング法により厚さ50μm、チップサイズ5mm角のチップに個片化した。その後半導体加工用保護シートを剥離せず、ウエハ研削面から個片化されたチップの角部分をデジタル顕微鏡(製品名「VHX-1000」、KEYENCE社製)により観察し、各チップのクラックの有無を観察し、700チップにおけるクラック発生率を測定し、以下の評価基準で評価した。
A:1.0%未満、B:1.0~2.0%、C:2.0%超
【0226】
(LDBGチップクラック評価)
直径12インチ、厚み775μmのシリコンウエハに、実施例および比較例で作製した半導体加工用保護シートを、バックグラインド用テープラミネーター(リンテック社製、装置名「RAD-3510F/12」)を用いて貼付した。レーザーソー(ディスコ社製、装置名「DFL7361」)を用い、ウエハに格子状の改質領域を形成した。なお、格子サイズは5mm×5mmとした。
【0227】
次いで、裏面研削装置(ディスコ社製、装置名「DGP8761」)を用いて、厚さ50μmになるまで研削(ドライポリッシュを含む)を行い、ウエハを複数のチップに個片化した。
【0228】
研削工程後にエネルギー線(紫外線)照射を行い、半導体加工用保護シートの貼付面の反対面にダイシングテープ(リンテック社製、Adwill D-176)を貼付後、半導体加工用保護シートを剥離した。その後、個片化されたチップをデジタル顕微鏡(製品名「VHX-1000」、KEYENCE社製)で観察し、クラックの発生したチップを数え、700チップにおけるクラック発生率を測定し、以下の評価基準で評価した。
A:1.0%未満、B:1.0~2.0%、C:2.0%超
【0229】
(バンプ吸収性評価)
バンプ高さ80μm、ピッチ200μm、直径100μmのSn-3Ag-0.5Cu合金からなる球状バンプ付きウエハ(8インチウエハ、Waltz社製)に、以下の実施例及び比較例で作製した半導体加工用保護シートを、ラミネーター(製品名「RAD-3510F/12」、リンテック社製)を用いて貼付した。なお、貼付する際、装置のラミネートテーブル及びラミネートロールの温度は50℃に設定した。
【0230】
ラミネート後、デジタル光学顕微鏡(製品名「VHX-1000」、KEYENCE社製)を用いて基材側からバンプ周辺に生じた円形の空隙の直径を測定した。
【0231】
空隙の直径が小さいほど、半導体加工用保護シートのバンプ吸収性が高いことを示す。以下の基準より、バンプ吸収性の優劣を判定した。
○:空隙の直径が150μm未満である。
×:空隙の直径が150μm以上である。
【0232】
(バンプ部への糊残り評価)
バンプ高さ80μm、ピッチ200μm、直径100μmのSn-3Ag-0.5Cu合金からなる球状バンプ付きウエハ(8インチウエハ、Waltz社製)に、以下の実施例及び比較例で作製した半導体加工用保護シートを、ラミネーター(製品名「RAD-3510F/12」、リンテック社製)を用いて貼付した。なお、貼付する際、装置のラミネートテーブル及びラミネートロールの温度は50℃に設定した。
【0233】
ラミネート後、UV照射装置(製品名「RAD-2000m/12」、リンテック社製)にて照射速度15mm/secで、半導体加工用保護シート側からUVを照射した。次いで、評価ウエハから、ウエハマウンター(製品名「RAD-2700F/12」、リンテック社製)を用いて、剥離速度4mm/秒、温度40℃の条件で半導体加工用保護シートを剥離した。電子顕微鏡(製品名「VE-9800」、KEYENCE社製)を用いて、剥離後の半導体加工用保護シートの粘着剤層面のバンプを埋め込んでいた部分を観察角度45°から観察して、粘着剤層の破断有無を確認した。
【0234】
以下の基準より、糊残りの優劣を判定した。
A:破断箇所なし(糊残りなし)。
B:破断箇所あり(糊残りあり)。
【0235】
(実施例1)
(1)基材
基材として、両面易接着層付PETフィルム(東洋紡社製 コスモシャイン A4300、厚み:50μm、23℃におけるヤング率:2550MPa)を準備した。
【0236】
(2)緩衝層
(ウレタンアクリレート系オリゴマーの合成)
ポリエステルジオールと、イソホロンジイソシアネートとを反応させて得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて、重量平均分子量(Mw)が約5000のウレタンアクリレート系オリゴマー(UA-1)を得た。
【0237】
(緩衝層用組成物の調製)
上記で合成したウレタンアクリレート系オリゴマー(UA-1)50質量部、イソボルニルアクリレート(IBXA)40質量部、及び、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(HPPA)20質量部を配合し、さらに光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASFジャパン社製、製品名「イルガキュア1173」)1.0質量部を配合し、緩衝層用組成物を調製した。
【0238】
(緩衝層付き基材の作成)
別の剥離シート(リンテック社製、商品名「SP-PET381031」)の剥離処理面に、緩衝層用組成物を塗布し、塗布膜を形成した。次いで、この塗布膜に対して、紫外線を照射し、塗布膜を半硬化して厚さが53μmの緩衝層形成膜を形成した。
【0239】
なお、上記の紫外線照射は、ベルトコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、装置名「US2-0801」)及び高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製、装置名「H08-L41」)を使用し、ランプ高さ230mm、出力80mW/cm、光線波長365nmの照度90mW/cm、照射量50mJ/cmの照射条件下にて行った。
【0240】
そして、形成した緩衝層形成膜の表面と、基材とを貼り合わせ、緩衝層形成膜上の剥離シート側から再度紫外線を照射して、当該緩衝層形成膜を完全に硬化させ、厚さ53μmの緩衝層を形成した。なお、上記の紫外線照射は、上述の紫外線照射装置及び高圧水銀ランプを使用し、ランプ高さ220mm、換算出力120mW/cm、光線波長365nmの照度160mW/cm、照射量650mJ/cmの照射条件下にて行った。
【0241】
(3)中間層付基材
n-ブチルアクリレート(BA)91質量部、及びアクリル酸(AA)9質量部を共重合して非エネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(a)(Mw:60万)を得た。
【0242】
アクリル系共重合体(a)とは別に、n-ブチルアクリレート(BA)62質量部、メチルメタクリレート(MMA)10質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)28質量部を共重合して得たアクリル系重合体に、アクリル系重合体の全水酸基(100当量)のうち80当量の水酸基に付加するように、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、エネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(b)(Mw:10万)を得た。
【0243】
この非エネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(a)100重量部に、エネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(b)を13重量部添加し、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)を2.79重量部添加し、光開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、Irgacure184)を3.71重量部添加し、トルエンを用いて固形分濃度37%に調整し、30分間撹拌を行って中間層用組成物を調整した。
【0244】
次いで、調整した中間層用組成物の溶液を、PET系剥離フィルム(リンテック社製 SP-PET381031 厚み38μm)に塗布し、乾燥させ厚さ55μmの中間層を形成した。これを上記緩衝層付き基材の緩衝層が形成された面の反対面に貼り合わせ、さらに中間層用組成物の溶液をPET系剥離フィルム(リンテック社製 SP-PET381031 厚み38μm)に重ねて塗布し、これを合計3回繰り返し、厚さ165μmの中間層付基材を形成した。
【0245】
(4)粘着剤層
(粘着剤層用組成物の調製)
n-ブチルアクリレート(BA)52質量部、メチルメタクリレート(MMA)20質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)28質量部を共重合して得たアクリル系重合体に、アクリル系重合体の全水酸基(100当量)のうち90当量の水酸基に付加するように、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、エネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(c)(Mw:50万)を得た。
【0246】
このエネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(c)100質量部に、エネルギー線硬化性化合物である多官能ウレタンアクリレート(三菱ケミカル社製、シコウUT-4332)を12質量部、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)を1.1質量部、光重合開始剤として光重合開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド(BASF社製, IrgacureTPO)を1質量部配合し、メチルエチルケトンで希釈し、固形分濃度34質量%の粘着剤層用組成物の塗工液を調製した。
【0247】
(半導体加工用保護シートの作製)
剥離シート(リンテック社製、商品名「SP-PET381031」)の剥離処理面に、上記で得た粘着剤層用組成物の塗工液を塗工し、加熱乾燥させて、剥離シート上に厚さが10μmの粘着剤層を形成した。
【0248】
その後、上記中間層付基材の中間層が形成された面に、粘着剤層を貼り合わせ、半導体加工用保護シートを作製した。基材の種類、中間層および粘着剤層の組成および厚みを表1に示す。
【0249】
(実施例2)
緩衝層を以下の緩衝層用組成物を用いて形成し、中間層の厚みが120μmであること以外は実施例1と同様に半導体加工用保護シートを得た。基材の種類、中間層および粘着剤層の組成および厚みを表1に示す。
【0250】
ウレタンアクリレート系オリゴマー(UA-1)50質量部、イソボルニルアクリレート(IBXA)40質量部、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(HPPA)20質量部、及び、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)10質量部を配合し、さらに光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASFジャパン社製、製品名「イルガキュア1173」)1.0質量部を配合し、緩衝層形成用組成物を調製した。
【0251】
(実施例3)
中間層の厚みが240μmであること以外は実施例1と同様に半導体加工用保護シートを得た。基材の種類、中間層および粘着剤層の組成および厚みを表1に示す。
【0252】
(実施例4)
実施例1の緩衝層付き基材を、以下の緩衝層付き基材に変更した以外は実施例1と同様に半導体加工用保護シートを得た。基材の種類、中間層および粘着剤層の組成および厚みを表1に示す。
【0253】
緩衝層として低密度ポリエチレンフィルム(厚み:27.5μm)を準備した。
実施例1で用いた基材の両面に当該緩衝層をドライラミネート法により積層し、LDPE/PET/LDPEの順に積層された緩衝層付き基材を得た。
【0254】
(実施例5)
実施例1の緩衝層付き基材を、実施例1のPET基材に変更した以外は実施例1と同様に半導体加工用保護シートを得た。すなわち、基材には緩衝層が形成されていない。基材の種類、中間層および粘着剤層の組成および厚みを表1に示す。
【0255】
(比較例1)
実施例1の緩衝層付き基材を、EVAフィルム基材(グンゼ社製ファンクレアLEAG120)に変更し、中間層用組成物のアクリル系共重合体(b)の添加量を67質量部に変更し、中間層の厚みを100μmとし、粘着剤層用組成物として以下の粘着剤層用組成物を用いた以外は実施例1と同様に半導体加工用保護シートを得た。すなわち、基材には緩衝層が形成されていない。基材の種類、中間層および粘着剤層の組成および厚みを表1に示す。
【0256】
n-ブチルアクリレート(BA)70質量部、i-ブチルアクリレート(iBA)15質量部、メチルメタクリレート(MMA)5質量部、及び4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)10質量部を共重合して得たアクリル系重合体に、アクリル系重合体の全水酸基(100当量)のうち90当量の水酸基に付加するように、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、エネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(d)(Mw:50万)を得た。
【0257】
このエネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(d)100質量部に、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)を1.8質量部、光重合開始剤として2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(BASF社製, Irgacure651)を7.29質量部配合し、トルエンで希釈し、固形分濃度25質量%の粘着剤組成物の塗工液を調製した。
【0258】
(比較例2)
以下のようにして作製した中間層付基材を用い、粘着剤層用組成物として以下の粘着剤層用組成物を用いた以外は実施例1と同様に半導体加工用保護シートを得た。基材の種類、中間層および粘着剤層の組成および厚みを表1に示す。
【0259】
中間層付基材
単官能ウレタンアクリレートを40質量部(固形分比)、イソボニルアクリレート(IBXA)を45質量部(固形分比)及びヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)を15質量部(固形分比)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(製品名「カレンズMT PE1」、昭和電工社製、第2級4官能のチオール含有化合物、固形分濃度100質量%)を3.5質量部(固形分比)、UV反応型熱架橋剤を1.8質量部、及び光重合開始剤として、2-ヒドロキシー2-メチル-1-フェニループロパン-1-オン(製品名「ダロキュア1173」、BASF社製、固形分濃度100質量%)を1.0質量部配合し、調整したUV硬化型樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム系剥離フィルム(リンテック社製 SP-PET381031 厚み38μm)上にファウンテンダイ方式で、硬化後の厚みが400μmとなるように塗布して塗膜した。そして、塗膜側から紫外線照射して半硬化層を形成した。
【0260】
なお、紫外線照射は、紫外線照射装置として、ベルトコンベア式紫外線照射装置(製品名「ECS-401GX」,アイグラフィクス社製)を用い、紫外線源として、高圧水銀ランプ(H04-L41アイグラフィクス社製)を使用し、照射条件として光波長365nmの照度112mW/cm、光量177mJ/cm(アイグラフィクス社製「UVPF-A1」にて測定)の条件下にて行った。
【0261】
形成した半硬化層の上に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製ルミラー75U403 厚み75μm)をラミネートしPETフィルム側からさらに紫外線照射(上記の紫外線照射装置、紫外線源を用い、照射条件として、照度271mW/cm、光量1200mJ/cm)を行い、完全に硬化させて、基材のPETフィルム上に厚さ400μmの中間層を形成した。
【0262】
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)60質量部、エチルアクリレート(EA)15質量部、メチルメタクリレート(MMA)5質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)20質量部を共重合して得たアクリル系重合体に、アクリル系重合体の全水酸基(100当量)のうち60当量の水酸基に付加するように、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、エネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(e)(Mw:50万)を得た。
【0263】
このエネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(e)100質量部に、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)を1.2質量部、光重合開始剤として2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(BASF社製, Irgacure651)を7.29質量部配合し、トルエンで希釈し、固形分濃度25質量%の粘着剤組成物の塗工液を調製した。
【0264】
(比較例3)
中間層用組成物にアクリル系共重合体(b)が含まれない以外は実施例1と同様に半導体加工用保護シートを得た。基材の種類、中間層および粘着剤層の組成および厚みを表1に示す。
【0265】
(比較例4)
中間層の厚みが300μmである以外は実施例1と同様に半導体加工用保護シートを得た。基材の種類、中間層および粘着剤層の組成および厚みを表1に示す。
【0266】
【表1】
【0267】
得られた試料(実施例1~5および比較例1~4)に対して、上記の測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0268】
【表2】
【0269】
表2より、半導体加工用保護シートのヤング率が上述した範囲内であり、中間層にUV硬化性の化合物が含まれている場合には、凹凸を有するウエハをDBGおよびLDBGにより個片化した場合であっても、凹凸が十分埋め込まれ、チップシフトに起因するクラック発生率が低く、バンプの埋め込み性とバンプからの剥離性とが両立できることが確認できた。
【符号の説明】
【0270】
1…半導体加工用保護シート
10…基材
20…中間層
30…粘着剤層
40…緩衝層
図1A
図1B
図2