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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】接続装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20241007BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20241007BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20241007BHJP
【FI】
G01R1/073 Z
G01R31/28 K
G01R31/26 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020091982
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021188947
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】原子 翔
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-047889(JP,A)
【文献】特開2014-197198(JP,A)
【文献】特開2018-049174(JP,A)
【文献】実開平02-067264(JP,U)
【文献】特開2003-234385(JP,A)
【文献】特開2019-159220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0109015(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110068711(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 1/06-1/073、
31/26-31/27、
31/28-31/3193、
H01L 21/64-21/66、
G02B 6/26-6/27、
6/30-6/34、
6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された電気信号に基づいて光信号を発光する複数の被検査体と、検査装置との間を接続して、前記検査装置からの電気信号をそれぞれの前記被検査体に供給して、それぞれの前記被検査体から発光された光信号を前記検査装置に与える接続装置において、
1個の電気的接触子と1個の光学的接続子とを1組とし、複数組の電気的接触子及び光学的接続子と、
それぞれの組の前記電気的接触子及び前記光学的接続子を挿入させる複数の貫通孔を有する基板と、
前記基板の一方の面に配置され、少なくとも、前記基板の前記貫通孔に挿入されている前記光学的接続子を固定する板状の固定部材と
を備え、
前記基板の複数の前記貫通孔のうち、前記光学的接続子が挿入される前記貫通孔には、当該貫通孔に対して着脱可能な鍔付管状部材が挿入され、前記鍔付管状部材の鍔部が当該貫通孔の周縁部を支持し、
前記固定部材が、前記電気的接触子が挿入される前記貫通孔に接続する電気的接続用孔と、前記光学的接続子が挿入される前記貫通孔に対して、挿入されている前記鍔付管状部材の管内と接続すると共に、当該貫通孔の周縁部を支持する前記鍔付管状部材の前記鍔部を接触する光学的接続用孔とを有し、
それぞれの前記電気的接触子が、前記基板の前記貫通孔に挿入されて、前記検査装置の電気信号端子と、対応する前記被検査体の電気信号端子とに対して電気的に接触し、
前記基板の前記貫通孔に挿入されている前記鍔付管状部材に、それぞれの前記光学的接続子が挿入され、当該光学的接続子は、先端部が対応する前記被検査体の発光に対して光学的に接続可能な位置で当該鍔付管状部材に固定される
ことを特徴とする接続装置。
【請求項2】
前記固定部材の前記基板と対向する対向面には、前記光学的接続用孔の周縁部に、前記鍔付管状部材の前記鍔部を収める凹部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の接続装置。
【請求項3】
前記固定部材の前記対向面に設けられている前記凹部と、対応する前記鍔付管状部材の前記鍔部との間に、弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の接続装置。
【請求項4】
前記鍔付管状部材に挿入される前記光学的接続子は接着材で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン基板等の基板上に、電気回路と光回路とを有する半導体素子(以下、「光デバイス」とも呼ぶ。)を集積する半導体レーザ集積技術の開発が進んでいる。このような半導体ウェハ上に形成された多数の光デバイスの特性を同時に検査する検査装置では、半導体ウェハ上の光デバイスと検査装置とを接続する接続装置が用いられる。
【0003】
半導体ウェハ上の複数の光デバイスの検査に用いられる接続装置は、各光デバイスに対して電気信号を供給するための電気的接続子と、供給された電気信号に基づいて各光デバイスが発光した光を受光する光学的接続子とを有する。
【0004】
接続装置において光デバイスが発光した光を受光する受光手段には様々な手段があるが、特許文献1には、光ファイバを用いて光デバイスからの光信号を受光することが開示されている。より具体的には、接続装置の構成部材であるセラミック基板において、光デバイスの発光部の位置と対応する位置に設けた貫通孔に光ファイバを挿入し、光ファイバが光デバイスの発光部からの光を受光することが開示されている。
【0005】
従来、図5に例示するように、光デバイスの発光部が発光した光を効率良く受光するため、セラミック基板91に設けた貫通孔92に光ファイバ42を挿入し、発光部に対する光ファイバ42の位置合わせを行ない、貫通孔92の内壁面と光ファイバ42とを接着材46で直接接着して固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-211265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術のように、セラミック基板等の基板に設けた貫通孔に光ファイバを直接固定してしまうと、光ファイバが基板に接触してしまい、光ファイバが破損してしまうことが生じ得、さらに破損してしまった光ファイバを個別に交換することが難しく、基板全体を交換する必要が生じてしまうおそれがある。半導体ウェハ上に形成された多数の光デバイスを同時に検査する場合、基板に設ける光ファイバの数も多くなるため、光ファイバの破損や交換等も増加し得ることになる。
【0008】
そのため、上述した課題に鑑み、基板に設ける各光学的接続子(例えば光ファイバ等)を保護することができ、基板に設けた光学的接続子の取り扱いを容易にすることができる接続装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、第1の本発明は、供給された電気信号に基づいて光信号を発光する複数の被検査体と、検査装置との間を接続して、検査装置からの電気信号をそれぞれの被検査体に供給して、それぞれの被検査体から発光された光信号を検査装置に与える接続装置において、1個の電気的接触子と1個の光学的接続子とを1組とし、複数組の電気的接触子及び光学的接続子と、それぞれの組の電気的接触子及び光学的接続子を挿入させる複数の貫通孔を有する基板と、基板の一方の面に配置され、少なくとも、基板の貫通孔に挿入されている光学的接続子を固定する板状の固定部材とを備え、基板の複数の貫通孔のうち、光学的接続子が挿入される貫通孔には、当該貫通孔に対して着脱可能な鍔付管状部材が挿入され、鍔付管状部材の鍔部が当該貫通孔の周縁部を支持し、固定部材が、電気的接触子が挿入される貫通孔に接続する電気的接続用孔と、光学的接続子が挿入される貫通孔に対して、挿入されている鍔付管状部材の管内と接続すると共に、当該貫通孔の周縁部を支持する鍔付管状部材の鍔部を接触する光学的接続用孔とを有し、それぞれの電気的接触子が、基板の貫通孔に挿入されて、検査装置の電気信号端子と、対応する被検査体の電気信号端子とに対して電気的に接触し、基板の貫通孔に挿入されている鍔付管状部材に、それぞれの光学的接続子が挿入され、当該光学的接続子は、先端部が対応する被検査体の発光に対して光学的に接続可能な位置で当該鍔付管状部材に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板に設ける各光学的接続子を保護することができ、光学的接続子の交換でき、基板に設けた光学的接続子の取り扱いを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る接続装置の構成を示す構成図である。
図2図1の点線部分の拡大断面図であり、実施形態に係る接続子基板における電気的接触子及び光学的接続子の保持構造を示す図である。
図3】実施形態に係る鍔付フェルールの構成を示す構成図である。
図4】変形実施形態に係る鍔付フェルールの構成を示す構成図である。
図5】従来の接続子基板における電気的接触子及び光学的接続子の保持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)実施形態
以下では、本発明に係る接続装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。光学的接続子保持構造とは、複数の光学的接続子を保持する基板において、複数の光学的接続子を保持する構造である。
【0014】
(A-1)実施形態の構成
図1は、実施形態に係る接続装置の構成を示す構成図である。
【0015】
図1において、実施形態に係る接続装置1は、配線基板11と、当該配線基板11の下面に配置される接続子基板12とを有する。
【0016】
図1は、実施形態に係る接続装置1の主要な構成部材を模式的に図示したものであり、これらの部材に限定されない。また、図1の接続装置1は、配線基板11、接続子基板12等を組み立てる際には、実際は、例えばボルト等の固定部材を用いて基板間を固定するが、これらボルト等の固定部材の図示を省略している。また、図1の接続装置1の各構成部材の厚みや寸法などは現実のものと異なることに留意すべきである。さらに、図1に示す接続装置1の構成は、技術的思想を具体化するための構成を例示したものであり、構成部材の材質、形状、構造、配置等は図1に限定されない。以下では、図1の上方向又は下方向に着目して、「上」、「下」を言及する。
【0017】
[被検査体]
被検査体5は、電気信号が供給されると、光を発光する半導体素子(光デバイス)である。被検査体5は、電気回路と光回路とを有する光デバイスを適用することができ、例えば、シリコンフォトニクスチップ、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等とすることができる。この実施形態では、被検査体5としての光デバイスが、シリコンフォトニクス技術により、半導体ウェハ上に高密度に集積されて形成された半導体素子とする。被検査体5は、電気信号を供給するための電気信号端子(以下では、「第2の接触対象」とも呼ぶ。)51と、光信号を発光する光信号端子(以下、「発光部」とも呼ぶ。)52とを有する。
【0018】
図1に示すように、半導体ウェハ上に形成された被検査体5が検査システム10のステージ4の上面に載置される。被検査体5の特性検査のときに、検査装置(以下、「テスタ」とも呼ぶ。)2に接続している接続装置1と被検査体5とが電気的に接続されて、半導体ウェハ上に形成された複数の被検査体5が同時に検査される。
【0019】
[接続装置]
接続装置1は、半導体ウェハ上に形成された複数の被検査体(光デバイス)5を同時に検査するため、検査装置(テスタ)2から電気信号を供給するための端子(以下、「第1の接触対象」とも呼ぶ。)と、被検査体5の電気信号端子(第2の接触対象)51と電気的に接触する電気的接触子41と、被検査体5の光信号端子(発光部)52と光学的に接続する光学的接続子42とを有して、検査装置(テスタ)2と被検査体5との間を電気的に接続するプローブカードである。
【0020】
ここで、「第1の接触対象」は、被検査体5の検査時に、検査装置(テスタ)2が出力した電気信号の供給を受ける電気信号端子をいう。「第2の接触対象」は、被検査体5が、電気的接触子41を介して、検査に必要な電気信号が供給される電気信号端子をいう。したがって、被検査体5の検査時には、接続装置1によって保持される各電気的接触子41は、検査装置(テスタ)2の電気信号端子(第1の接触対象)に電気的に接触すると共に、被検査体5の電気信号端子(第2の接触対象)に電気的に接触することにより、検査装置(テスタ)2の電気信号端子(第1の接触対象)からの電気信号を、被検査体5の電気信号端子(第2の接触対象)に導通させる。
【0021】
「発光部」としての光信号端子52は、電気信号の供給を受けた被検査体5が光信号を発光する部分である。
【0022】
接続装置1は、検査装置(テスタ)2と接続しており、検査装置2から被検査体5の特性検査に係る電気信号が供給され、電気的に接続している被検査体5に対して電気信号を供給する。また、被検査体5の特性検査を行なう際、接続装置1は、上下方向に可動するステージ4の上面に載置された被検査体5と近接させ、被検査体5の電気信号端子51と電気的に接続すると共に、被検査体5の光信号端子52と光学的に接続する。
【0023】
より具体的には、被検査体5の特性検査をするとき、接続装置1の接続子基板12と被検査体5とを相対的に近接させ、接続子基板12に保持されている電気的接触子41及び光学的接続子42を、被検査体5(光デバイス)の電気信号端子51及び光信号端子52に対応する位置に近接させて配置させる。そして、接続子基板12の電気的接触子41と、被検査体5の電気信号端子51とを電気的に接触させると共に、光学的接続子42と、被検査体5の光信号端子52とを光学的に接続させる。
【0024】
「光学的接続」とは、被検査体5としての光デバイスが発光した光信号の光損失が可能な限り少なくなるように、被検査体5の光信号端子52に対して光学的接続子42を接続配置させることをいう。光学的接続子42と光信号端子52とは、互いに近接する非接触の状態で光学的に接続させるようにしてもよい。光学的接続は、光デバイス(被検査体5)の光信号端子52の端面と、光学的接続子42の端面との位置精度を良好(例えば、位置ずれ量が閾値未満)とし、光デバイス(被検査体5)が発光する光の光軸と、接続子基板12の光学的接続子42の光軸との軸精度を良好(例えば、光軸のずれ量が閾値未満)とし、光信号端子52の端面(例えば上端面)と光学的接続子42の端面(例えば下端面)との間隙長を閾値未満となるように、光学的接続子42を配置させる。
【0025】
被検査体5の検査時に、検査装置2から検査に係る電気信号が接続装置1に供給され、接続装置1は、電気的接触子41を介して被検査体5の電気信号端子51に電気信号を供給する。そして、電気信号が被検査体5に供給されると、被検査体5が電気信号を光信号に変換して光信号を発光し、その光信号が光学的接続子42に入射する。
【0026】
接続装置1には、図示しない光電変換素子が設けられており、被検査体5から受光した光信号を電気信号に変換して、電気信号を検査装置2に供給する。このように光電変換によって、受光した光の光量に基づく電気信号を検査装置2に供給することにより、検査装置2において被検査体5の特性を検査することができる。
【0027】
このように、接続装置1は被検査体5に対して検査に係る電気信号を供給し、被検査体5から発光された光を接続装置1は受光するため、実施形態に係る接続装置1は「受光型電気的接続装置」ともいえる。
【0028】
なお、接続装置1は、被検査体5から受光した光信号を光電変換せずに、検査装置2に供給するようにしてもよく、その場合、検査装置2が光電変換機能を内部に備えるようにしてもよい。
【0029】
[配線基板]
配線基板11は、例えばポリイミド等の樹脂材料で形成されたプリント配線基板である。配線基板11の上面の周縁部には、検査装置(テスタ)2のテストヘッド(図示しない)の接続端子21と電気的に接続するための接続端子111が設けられている。配線基板11の下面には配線パターンが形成されており、配線パターンの各接続端子(図示しない)が、電気的接触子41の上端部(上端先端部)と電気的に接続するようになっている。
【0030】
また、配線基板11には、検査装置2の接続端子22と電気的に接続する接続端子112が設けられており、光学的接続子42により受光された光信号を光電変換した電気信号が、接続端子112から検査装置2の接続端子22に導通される。なお、配線基板14の上面には、被検査体5の検査に必要な複数の電子部品を配置してもよい。
【0031】
[接続子基板]
接続子基板12は、複数の電気的接触子41及び光学的接続子42を保持する基板である。この実施形態では、例えば1つの被検査体(光デバイス)5に、1組の電気信号端子51及び光信号端子52が設けられており、被検査体5を検査する際に、1つの被検査体(光デバイス)5の1組の電気信号端子51及び光信号端子52に対して、1組の電気的接触子41及び光学的接続子42を接続させる場合を例示する。したがって、接続子基板12には、被検査体5の数に応じた組数の電気的接触子41及び光学的接続子42が保持される。
【0032】
接続子基板12は、セラミック基板121と、当該セラミック基板121の上面に配置される固定用板部材122とを有する。固定用板部材122は、後述するように、セラミック基板121に設けられる鍔付管状部材(鍔付フェルール)45を固定するものである。
【0033】
(電気的接触子)
電気的接触子41は、被検査体5の電気信号端子51に対して電気的に接触する接触子であり、例えば導電性材料で形成されるプローブを適用できる。電気的接触子41は、例えばカンチレバータイプのプローブや、垂直タイプのプローブなどを適用することができるが、これに限定されず、任意の形状のプローブを適用できる。
【0034】
(光学的接続子)
光学的接続子42は、例えば光ファイバを適用できる。光学的接続子42は、被検査体5の光信号端子52に対して光学的に接続可能な位置に配置されて、光信号端子52から発光された光信号が入射される。光学的接続子42に適用する光ファイバは、シリコンフォトニクスデバイス(光デバイス)に対応させるため、シリコンの屈折率に合わせた材料で形成されるようにしてもよい。
【0035】
電気的接触子41と光学的接続子42とは、検査時に検査対象とする被検査体5の電気信号端子51と光信号端子52に対して正確に接続するように、位置合わせされてセラミック基板121に設けられる。
【0036】
(光学的接続子の保持構造)
図2は、図1の点線部分40の拡大断面図であり、実施形態に係る接続子基板12における電気的接触子41及び光学的接続子42の保持構造を示す図である。
【0037】
セラミック基板121には、複数の光学的接続子42を保持するため、基板厚さ方向に複数の貫通孔132が設けられている。セラミック基板121に設けられる複数の貫通孔132のそれぞれの位置は、検査対象とする各被検査体(光デバイス)5の光信号端子52の位置と対応する位置に設けられている。
【0038】
したがって、各貫通孔132に光学的接続子42が挿入された状態で、接続装置1とステージ4とが近接するように相対移動すると、各貫通孔132に保持されている光学的接続子42の下端部(以下では、「先端部」とも呼ぶ。)が、被検査体5の光信号端子52に対して、光学的に接続可能な位置に配置される。例えば、被検査体5が半導体ウェハの基板面に対して垂直上方に光を発光するものである場合、貫通孔12に挿入された光学的接続子42の下端部(先端部)は、被検査体5の光信号端子52に対して垂直上方の位置に配置される。これにより、被検査体5からの光を、損失を少なくして効率的に光学的接続子42に入射させることができる。
【0039】
また、接続子基板12に保持される電気的接触子41は、当該電気的接触子41の先端部が、各被検査体5の電気信号端子51に対して電気的に接触が可能な位置に配置される。
【0040】
図2に例示するように、セラミック基板121に配置される各貫通孔132には、鍔付管状部材(以下、「鍔付フェルール」とも呼ぶ。)45が挿入され、鍔付フェルール45の管内に光学的接続子42が挿通される。
【0041】
従来、例えばセラミック基板の貫通孔に光学的接続子を挿入して、位置合わせをした光学的接続子を保持するため、貫通孔に挿入した光学的接続子と貫通孔の内壁面とを接着している。そのため、例えば、作業中等に、基板に設けた光学的接続子を動かしたときなどに、光学的接続子が、基板に設けた貫通孔の縁と接触してしまい折れ曲がり等により、光学的接続子が破損してしまうことがあった。更に、破損してしまった光学的接続子の交換等が必要となったときには、光学的接続子を個別に交換することは難しくセラミック基板全体を交換している。
【0042】
これに対して、この実施形態によれば、セラミック基板121の貫通孔132に鍔付フェルール45を挿入した後、鍔付フェルール45の管内に光学的接続子42を挿入する。このように、貫通孔132に挿入された鍔付フェルール45の管内に光学的接続子42を挿入することで、従来よりも光学的接続子42の破損等を防ぐことができる。つまり、鍔付フェルール45は光学的接続子42の保護部材として機能して、光学的接続子42を保護することができる。
【0043】
また、この実施形態では、光学的接続子42を鍔付フェルール45の管内に挿入する際、位置合わせをした光学的接続子42を保持するため、鍔付フェルール45の管内内壁面と光学的接続子42の外周面とを接着材46で接着するが、鍔付フェルール45の外周面と貫通孔132の内壁面とは接着しないようにする。換言すると、光学的接続子42が挿入されている鍔付フェルール45は、貫通孔132に対して脱着可能に挿入されている。このように、光学的接続子42と鍔付フェルール45とを接着材46で接着しているので、光学的接続子42が破損したときには、互いに接着させた光学的接続子42及び鍔付フェルール45を貫通孔132から取り外して交換することができる。つまり、光学的接続子42が破損したときには、破損した光学的接続子42と、これと固定されている鍔付フェルール45とを一緒に取り外して、破損した光学的接続子42を個別に交換等することが可能となる。
【0044】
図3は、実施形態に係る鍔付フェルール45の構成を示す構成図である。図3(A)は、実施形態に係る鍔付フェルール45の外観斜視図であり、図3(B)は、実施形態に係る鍔付フェルール45の断面図である。
【0045】
図3(A)に示すように、実施形態の鍔付フェルール45は、絶縁材料で形成された管状部材のフェルール本体部451と、フェルール本体部451の一方の端部(図3では上端部)に、絶縁材料で形成された鍔部452とを有する。
【0046】
フェルール本体部451は、例えば管状部材であり、フェルール本体部451の管内径(つまり、長手方向の貫通孔の内径)は光学的接続子42の外形(例えば外形の直径)よりも、わずかに大きく形成されている。つまり、光ファイバ等の光学的接続子42がフェルール本体部451の管内を挿通できるように、フェルール本体部451の管内径の大きさが形成されている。
【0047】
また、フェルール本体部451の外径の寸法は、セラミック基板121の貫通孔132の内径と同程度、若しくは、わずかに大きく形成されている。つまり、セラミック基板121の貫通孔132にフェルール本体部451を挿入可能とするため、フェルール本体部451の外径が形成されている。
【0048】
なお、上述したように、フェルール本体部451の長手方向の貫通孔の断面形状は、光ファイバ等の光学的接続子42の外形と同様に円形又は略円形とすることが望ましいが、フェルール本体部451の外径断面形状は円形、方形等としてもよく、その場合、セラミック基板121に設ける貫通孔132の断面形状はフェルール本体部451の外径断面形状に合わせた形状としてもよい。
【0049】
鍔部452は、フェルール本体部451の一方の端部(図3では上端部)に設けられる構成部材であり、鍔部452の断面形状の外形寸法(大きさ)は、フェルール本体部451自体の断面形状の外形寸法(大きさ)よりも大きく形成されており、セラミック基板121の貫通孔132の内径寸法よりも大きい。したがって、鍔付フェルール45のフェルール本体部451が貫通孔132に挿入されたときに、鍔部452が、セラミック基板121の貫通孔132の入口周縁部(セラミック基板121の上面)に接触して、鍔部452が鍔付フェルール45を支持する。換言すると、鍔部452は、鍔付フェルール45を支持する支持部として機能する。
【0050】
また、鍔部452は、フェルール本体部451の管内径(長手方向の貫通孔の直径)と同程度の径をもつ貫通孔453が設けられており、鍔部452がフェルール本体部451の上端部に設けられたときに、鍔部452の貫通孔453は、フェルール本体部451の管内径(貫通孔)と連続した孔を形成する。これにより、鍔付フェルール45の管内への光学的接続子42の挿入が可能となる。
【0051】
なお、鍔部452は、フェルール本体部451とは異なる別の構成部材として形成され、例えば接着材等でフェルール本体部451の上端部に鍔部452が固定されることで、鍔付フェルール45を形成するようにしてもよい。または、鍔部452とフェルール本体部451とが物理的に一体として形成されたものであってもよい。いずれにしても、鍔部452が鍔付フェルール45を支持しながら、セラミック基板121の貫通孔132への挿入を可能とすると共に、鍔付フェルール45の管内(貫通孔453)への光学的接続子42の挿通が可能なように、鍔付フェルール45は形成されている。
【0052】
(固定用板部材)
固定用板部材122は、セラミック基板121の上面に配置される板状部材であり、セラミック基板121の各貫通孔132に挿入された鍔付フェルール45を固定する固定部材である。これにより、鍔付フェルール45の抜け落ちを防止することができ、貫通孔132に挿入された鍔付フェルール45を確実に固定することができる。
【0053】
固定用板部材122の下面には、セラミック基板121の各貫通孔132の位置と対応する位置のそれぞれに凹部62が形成されており、各貫通孔132に挿入された鍔付フェルール45の鍔部452が各凹部62に収まるようにしている。これにより、セラミック基板121の貫通孔132に鍔付フェルール45が挿入されたときに、セラミック基板121の上面に突出する鍔部452を無くすことができる。また、固定用板部材122が鍔付フェルール45の鍔部452を上方から下方に向けて押さえることにより、貫通孔132に挿入された鍔付フェルール45を確実に固定することができる。
【0054】
固定用板部材122の下面の各凹部62の深さ(上下方向の長さ)は、鍔付フェルール45の鍔部452の高さ(上下方向の長さ)と同程度、若しくはわずかに大きく形成することが望ましい。また、各凹部62の天井部(上方の底面部)の中央には、光ファイバ等の光学的接続子42の挿通を可能とするため、貫通孔61が形成されている。
【0055】
[接続子基板の組み立て]
次に、図2を参照して、セラミック基板121の各貫通孔132に鍔付フェルール45を挿入して、光学的接続子42を設けるまでの接続子基板12の組み立て方法の一例を説明する。なお、接続子基板12の組み立て方法は、以下の例に限定されない。
【0056】
まず、鍔付フェルール45のフェルール本体部451を、セラミック基板121の貫通孔132の上方から挿入して、鍔部452が貫通孔132の入口周縁部に当接するまで、フェルール本体部451を貫通孔132に挿入する。
【0057】
ここで、鍔付フェルール45のフェルール本体部451の長手方向の長さは、セラミック基板121の厚さと同程度の長さとすることが望ましい。したがって、セラミック基板121の貫通孔132に、鍔付フェルール45のフェルール本体部451が挿入され、鍔部452が貫通孔132の入口周縁部に接触した状態のときには、貫通孔132に挿入されたフェルール本体部451の下端部が、セラミック基板121の下面の位置と同程度の位置となる。
【0058】
セラミック基板121の各貫通孔132に、光学的接続子(例えば光ファイバ)42が予め挿通された鍔付フェルール45をそれぞれ挿入する。ここで、鍔付フェルール45の管内に挿通された光学的接続子42は、被検査体5の光信号端子52に対して光学的接続が可能となる位置に位置合わせを行なう。例えば、鍔付フェルール45の管内に挿通された光学的接続子42の姿勢が、セラミック基板121の基板面に対して垂直となるように調整したり、光学的接続子42の下方の先端部の位置と、鍔付フェルール45のフェルール本体部451の下端部の位置との相対的な位置関係の調整をしたりする。
【0059】
そして、鍔付フェルール45の管内で位置合わせをした光学的接続子42を固定するため、光学的接続子42の外壁面と、鍔付フェルール45の管内の内壁面との間に接着材46を挿入して、光学的接続子42と鍔付フェルール45とを接着して固定する。このように、光学的接続子42と鍔付フェルール45とを接着して固定することで、鍔付フェルール45が光学的接続子42の折れ曲がりや破損等を防止することができる。換言すると、鍔付フェルール42が光学的接続子42の保護部材として機能する。
【0060】
つまり、従来のように、セラミック基板121の各貫通孔132に各光学的接続子42を挿入すると、各光学的接続子42が各貫通孔132に接触して光学的接続子42の破損等が生じやすかったが、この実施形態によれば、鍔付フェルール45が光学的接続子42の保護部材として機能するので、光学的接続子42を貫通孔132に挿入するときの破損等を防止できる。
【0061】
さらに、セラミック基板121の各貫通孔132に挿入された各鍔付フェルール45は、当該貫通孔132に固定されていないので、光学的接続子42の交換が必要になったときには、その光学的接続子42とこれに固定されている鍔付フェルール45とを同時にセラミック基板121の貫通孔132から取り外すことができるので、光学的接続子42の個別交換が可能となる。つまり、従来は、光学的接続子42の個別交換ができず、光学的接続子42を交換するときには、複数の光学的接続子42が設けられているセラミック基板121全体を交換することが必要であったが、この実施形態によれば、交換が必要な光学的接続子42を個別交換できるので、光学的接続子42の交換作業が簡単になる。
【0062】
次に、セラミック基板121の上面に突出している各鍔付フェルール45の鍔部452が、固定用板部材122の下面の凹部62に嵌るように、セラミック基板121の上面に固定用板部材122を配置する。
【0063】
ここで、セラミック基板121と固定用板部材122との位置合わせを確実にするため、例えば、セラミック基板121及び固定用板部材122に、図示しない位置合わせピン及びピン受け部を設け、セラミック基板121及び固定用板部材122の位置合わせピンとピン受け部とを嵌合させながら、セラミック基板121の上面に固定用板部材122を配置するようにしてもよい。
【0064】
さらに、セラミック基板121の上面に配置させた固定用板部材122を固定するため、例えばボルトなどの固定部材を用いて、セラミック基板121と、当該セラミック基板121の上面に配置した固定用板部材122とを固定するようにしてもよい。このように、セラミック基板121と固定用板部材122とを確実に固定することにより、貫通孔132に挿入された鍔付フェルール45を確実に固定することができる。
【0065】
(A-2)実施形態の効果
以上のように、従来は、セラミック基板の各貫通孔に、直接、各光学的接続子を挿入していたので、光学的接続子がセラミック基板と接触してしまい、光学的接続子が破損等してしまうことがあった。これに対して、この実施形態によれば、セラミック基板の各貫通孔に、予め光学的接続子が挿入された鍔付フェルールを挿入するので、光学的接続子を貫通孔に挿入する際の破損を防ぐことができる。
【0066】
また、実施形態によれば、セラミック基板の貫通孔と鍔付フェルールとは接着せず、鍔付フェルールと当該鍔付フェルールの管内に挿入した光学的接続子とを接着材等で固定することにより、破損してしまった光学的接続子を鍔付フェルールと一緒に、セラミック基板の貫通孔から取り出すことができるので、セラミック基板に設ける光学的接続子の交換性が良好となる。
【0067】
さらに、実施形態によれば、セラミック基板の貫通孔に挿入した鍔付フェルールを、固定用板部材で、上方から下方に向けて押さえて固定することにより、貫通孔に挿入された鍔付フェルールの抜け落ちやぐらつき等を無くし、鍔付フェルールを確実に固定することができる。
【0068】
また、実施形態によれば、固定用板部材の下面には、各鍔付フェルールの鍔部を嵌めるための複数の凹部が設けられているので、セラミック基板の上面に固定用板部材を配置することにより、セラミック基板の上面に突出する鍔部を無くしながら、各鍔付フェルールを確実に固定することができる。
【0069】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0070】
(B-1)上述した実施形態では、図3を用いて鍔付フェルール45の構成を説明したが、鍔付フェルールは、図3に例示した構成に限定されず、別の構成としてもよい。図4を用いて鍔付フェルールの変形例を例示する。
【0071】
(B-1-1)図4(A)に例示する鍔付フェルール45Aは、鍔部452の上面に、例えば合成ゴム部材、ポリウレタン等の合成樹脂材料で形成された弾性部材454を有するものである。なお、弾性部材454の中央部には、光学的接続子42の挿入を可能とするため、貫通孔が設けられている。
【0072】
例えば、被検査体5の端子(電気信号端子51、光信号端子52)に対して、接続装置1の電気的接触子41等を電気的に接続させる際、接続装置1には、下から上に向けたコンタクト荷重が作用する。したがって、鍔部452の上面に弾性部材454を設けることにより、荷重を抑えることができ、鍔付フェルール45Bの破壊や、当該鍔付きフェルール45Bの管内に挿入された光学的接続子42の破損等を防ぐことができる。
【0073】
なお、図4(A)の例では、鍔部452の上面に弾性部材454が設けられた場合を例示するが、これに限定されない。例えば、鍔部452を嵌める、固定用板部材122下面の各凹部62の上面部(天井部)に弾性部材(図4(A)の弾性部材454と同等の部材)を設けるようにしてもよい。
【0074】
換言すると、貫通孔132に挿入された鍔付フェルール45の鍔部452と、当該鍔部452を嵌める固定用板部材122の凹部62との間に、荷重を抑えるための弾性部材を設けるようにしてもよい。
【0075】
(B-1-2)図4(B)は、鍔付フェルール45Bの鍔部452Bが、例えば合成ゴム部材、ポリウレタン等の合成樹脂材料で形成された弾性部材である場合を例示する。この場合も、(B-1-1)と同様に、コンタクト荷重を抑えることができる。また、上述した実施形態と同様に、鍔部452Bが貫通孔132の入口周縁部に当接することで、貫通孔132に挿入された鍔付フェルール45Bを支持することができる。
【0076】
(B-2)上述した実施形態では、セラミック基板の上面に突出する鍔部を無くすために、固定用板部材の下面に凹部を設けたが、変形例として、セラミック基板の貫通孔の入口周縁部に凹部(ザグリ)を設けるようにしてもよい。これにより、セラミック基板の貫通孔に鍔付フェルールが挿入されたときに、鍔部が貫通孔の入口周縁部の凹部(ザグリ)に嵌るので、鍔部の突出を無くすことができる。
【0077】
(B-3)上述した実施形態では、固定部材としての固定用板部材が板状部材で形成される場合を例示したが、セラミック基板の貫通孔に挿入された鍔付フェルールを固定することができれば、固定部材はこれに限定されない。例えば、セラミック基板の上面に配置する固定部材は、合成樹脂製のフィルム等としてもよい。例えば(B-2)で述べたように、セラミック基板の貫通孔の入口周縁部に凹部(ザグリ)を設けた場合に、固定部材としてのフィルムで、貫通孔に挿入されている鍔付フェルールを固定することができる。
【符号の説明】
【0078】
1…接続装置、11…配線基板、12…接続子基板、121…セラミック基板、122…固定用板部材、123…貫通孔、41…電気的接触子、42…光学的接続子、45、45A及び45B…鍔付フェルール、451…フェルール本体部、452及び452B…鍔部、453…貫通孔、454…弾性部材、46…接着材、61…貫通孔、62…凹部。
図1
図2
図3
図4
図5