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特許7566494電気的接触子及び電気的接触子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電気的接触子及び電気的接触子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
G01R1/067 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020093038
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021188984
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】久我 智昭
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0031493(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0094100(KR,A)
【文献】特開2004-138592(JP,A)
【文献】特開2015-57775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する単一の板状部材で形成された電気的接触子の製造方法であって、
前記板状部材が重ならない状態で、前記板状部材が巻き回される度に螺旋径が徐々に大きくなるようにして、上半分のたる状の形状を形成し、さらに、前記板状部材が巻き回される度に前記螺旋径が徐々に小さくなるようにして、下半分のたる状の形状を形成する第1の工程と、
前記第1の工程により一時的にたる状に成形加工した前記板状部材を、上下の螺旋構造が重なる竹の子状になるまで縦方向から圧縮する第2の工程と、
前記第2の工程により一時的に竹の子状となった前記板状部材に対して、所定の硬化処理を施して、竹の子状の電気的接触子を形成する第3の工程と
を有することを特徴とする電気的接触子の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程は、たる状に成形加工した前記板状部材を、収納プレートに収納した後、竹の子状になるまで圧縮プレートで上から押し付けて圧縮することを特徴とする請求項1に記載の電気的接触子の製造方法。
【請求項3】
前記板状部材は、ベリリウム銅又はパラジウム合金であって、前記硬化処理は、析出硬化系の熱処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気的接触子の製造方法。
【請求項4】
導電性を有する単一の板状部材で形成された電気的接触子であって、
前記板状部材が重ならない状態で、前記板状部材が巻き回される度に螺旋径が徐々に大きくなるようにして、上半分のたる状の形状を形成し、さらに、前記板状部材が巻き回される度に前記螺旋径が徐々に小さくなるようにして、下半分のたる状の形状を形成し、
一時的にたる状に成形加工した前記板状部材を、上下の螺旋構造が重なる竹の子状になるまで縦方向から圧縮し、
一時的に竹の子状となった前記板状部材に対して、所定の硬化処理を施して、竹の子状の電気的接触子として製造される
ことを特徴とする電気的接触子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接触子及び電気的接触子の製造方法に関し、例えば、半導体ウェハ上の集積回路や被検査体の通電試験に用いる電気的接触子及び電気的接触子の製造方法に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ上に形成された集積回路や、パッケージ化された集積回路等の被検査体は、それぞれの製造段階において電気的特性の検査が行なわれる。半導体ウェハ上の集積回路の電気的検査には、プローブカード等の電気的接続装置が用いられ、パッケージ化された集積回路の電気的検査にはソケット等の電気的接続装置が用いられる。このような電気的接続装置では、第1の接触対象と第2の接触対象に接触する電気的接触子が用いられ、電気的接触子を介して第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号の導通を行なっている。
【0003】
従来、電気的接触子には、様々なものがあるが、複数の構成部品を組み合わせて形成される電気的接触子がある。このような複数の構成部品で形成される電気的接触子を用いて、第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号を導通させる場合、構成部品同士の接触箇所で抵抗が大きくなり、電気的な導通性に影響が生じ得る。
【0004】
特許文献1には、薄肉帯状の基板を曲げ加工して、螺旋状の筒状スリーブと、筒状スリーブの一端に第1端子と、筒状スリーブの他端に第2端子とを一体成形したスプリングプローブが開示されている。このようなスプリングプローブは、薄肉帯状の基板で一体的に形成されているので、導電性が良好となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-12992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のスプリングプローブを用いて、第1の接触対象と第2の接触対象との間に電気信号を導通させた場合、スプリングプローブにおける電気的な導通経路は、螺旋状に巻き回した1対のコイルスプリングを経由するので、経路長が長くなってしまい、電気的な導通性の向上が要求される。
【0007】
ここで、例えば、板状部材を螺旋状に巻き回した内側部材の一部が外側部材に覆われて形成される竹の子ばねを電気的接触子としてそのまま用いることが考えられる。
【0008】
竹の子ばね構造の電気的接触子は、1個の板状部材を巻き回して形成するので、構成部材間の接触箇所を無くすことができる。そのため、竹の子ばね構造の電気的接触子における導通経路上での抵抗値を小さくできる。さらに、竹の子ばね構造の電気的接触子における導通経路の経路長も短くでき、電気的な導通性も良好となることが期待できる。
【0009】
ところで、被検査体の検査時には、電気的接触子と、第1の接触対象及び第2の接触対象との電気的な接触を確実にするため、電気的接触子には、上下方向の弾性を有することが望ましい。したがって、竹の子ばね構造の電気的接触子には、例えば、斜め上方に延びる第1板状部材と、斜め下方に延びる第2板状部材とを備え、第1板状部材と第2板状部材とをそれぞれ巻き回して、軸方向の中央部よりも上方向の竹の子のばね部と、前記中央部よりもよりも下方向の竹の子ばね部とを形成することが考えられる。
【0010】
しかしながら、竹の子ばね構造の電気的接触子を形成するには、内側部材の一部を外側部材で覆うように重ねながら巻き回していくことになるが、その作り込みが難しくなってしまうという課題がある。
【0011】
例えば、一方向に巻き回して竹の子ばねを2個形成し、これらの大径側の端部同士を互いに溶接などで固定することで、軸方向の中央部よりも上方向と下方向にそれぞれ竹の子ばね構造を形成することも考えられるが、その場合、単一の材料を用いて形成されず、別部材同士の接続部分を有することになるので、機械的な機能性及び電気的な導通性の観点から懸念がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、単一の材料から上下方向の竹の子ばね構造が一体的に形成され、機械的にシンプルで機能性に優れ、且つ電気回路としてロスの無い接続ができる電気的接触子及び電気的接触子の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の本発明は、導電性を有する単一の板状部材で形成された電気的接触子の製造方法であって、(1)前記板状部材が重ならない状態で、前記板状部材が巻き回される度に螺旋径が徐々に大きくなるようにして、上半分のたる状の形状を形成し、さらに、前記板状部材が巻き回される度に前記螺旋径が徐々に小さくなるようにして、下半分のたる状の形状を形成する第1の工程と、(2)前記第1の工程により一時的にたる状に成形加工した前記板状部材を、上下の螺旋構造が重なる竹の子状になるまで縦方向から圧縮する第2の工程と、(3)前記第2の工程により一時的に竹の子状となった前記板状部材に対して、所定の硬化処理を施して、竹の子状の電気的接触子を形成する第3の工程とを有することを特徴とする。
【0014】
第2の本発明は、導電性を有する単一の板状部材で形成された電気的接触子であって、(1)前記板状部材が重ならない状態で、前記板状部材が巻き回される度に螺旋径が徐々に大きくなるようにして、上半分のたる状の形状を形成し、さらに、前記板状部材が巻き回される度に前記螺旋径が徐々に小さくなるようにして、下半分のたる状の形状を形成し、(2)一時的にたる状に成形加工した前記板状部材を、上下の螺旋構造が重なる竹の子状になるまで縦方向から圧縮し(3)一時的に竹の子状となった前記板状部材に対して、所定の硬化処理を施して、竹の子状の電気的接触子として製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、単一の材料から上下方向の竹の子ばね構造が一体的に形成され、機械的にシンプルで機能性に優れ、且つ電気回路としてロスの無い接続ができる電気的接触子及び電気的接触子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る接続子の構成を示す構成図である。
図2】実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
図3】実施形態に係る接続子の形成過程の概略を示す説明図である。
図4】実施形態に係るコイリングマシンの成形部の概略を示す説明図である。
図5】実施形態に係るたる状の接続子の製造方法を説明する説明図である。
図6】実施形態に係る圧縮・硬化処理において接続子(たる状ばね)を収納する収納プレートの一例を示す説明図である。
図7】実施形態に係る圧縮・硬化処理によって接続子を製造する手順の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る電気的接触子及び電気的接触子の製造方法のこの実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
この実施形態では、本発明に係る電気的接触子を、後述するように、電気的接続装置の構成部材である電気的接続ユニットに搭載される接続子に適用する場合を例示する。本発明に係る電気的接触子は、第1の接触対象と第2の接触対象に電気的に接触し、第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号を導通可能なものに適用できる。なお、この実施形態では、電気的接続ユニットの接続子に、本発明の電気的接触子を適用する場合を例示するが、本発明は被検査体の電極端子と接続するプローブ等にも適用できる。
【0019】
また、この実施形態では、本発明に係る電気的接続装置が、半導体ウェハ上に形成されている集積回路を被検査体とし、当該被検査体の電気的検査に用いられる電気的接続装置とする場合を例示する。なお、本発明に係る電気的接続装置は、本発明に係る電気的接触子を用いて、第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号を導通させて電気的に接続させるものに適用できる。
【0020】
(A-1)この実施形態の構成
(A-1-1)電気的接続装置
図2は、実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
【0021】
図2の電気的接続装置10は、主要な構成部材を図示しているが、これらの構成部材に限定されず、実際には図2に示していない構成部材も有する。また、以下では、図2中の上下方向に着目して、「上」、「下」を言及するものとする。
【0022】
図2において、この実施形態に係る電気的接続装置10は、平板状の支持部材12と、前記支持部材12の下面12aに保持される平板状の配線基板14と、前記配線基板14と電気的に接続される電気的接続ユニット15と、前記電気的接続ユニット15と電気的に接続すると共に複数のプローブ20を有するプローブ基板16とを有する。
【0023】
電気的接続装置10は、支持部材12、配線基板14、電気的接続ユニット15、プローブ基板16を組み立てる際に、多数の固定部材(例えば、ボルト等の螺合部材など)を用いているが、図2ではこれらの固定部材を図示していない。
【0024】
電気的接続装置10は、例えば半導体ウェハ上に形成された半導体集積回路等を被検査体2とし、被検査体2の電気的な検査を行なうものである。具体的には、被検査体2をプローブ基板16に向けて押圧し、プローブ基板16の各プローブ20の先端部と被検査体2の電極端子2aとを電気的に接触させ、図示しないテスタ(検査装置)から被検査体2の電極端子2aに電気信号を供給し、さらに被検査体2の電極端子2aからの電気信号をテスタ側に与えることにより、被検査体2の電気的な検査を行なう。
【0025】
検査対象である被検査体2はチャックトップ3の上面に載置される。チャックトップ3は、水平方向のX軸方向、水平面上においてX軸方向に対して垂直なY軸方向、水平面(X-Y平面)に対して垂直なZ軸方向に位置調整が可能であり、さらに、Z軸回りのθ方向に回転姿勢も調整可能である。被検査体2の電気的検査を実施する際には、上下方向(Z軸方向)に昇降可能なチャックを移動させて、被検査体2の電極端子2aをプローブ基板16の各プローブ20の先端部に電気的に接触させる。そのため、電気的接続装置10のプローブ基板16の下面と、チャックトップ3の上面の被検査体2とが相対的に近づくように移動させる。
【0026】
[支持部材]
支持部材12は、配線基板14の変形(例えば、撓み等)を抑えるものである。例えば、プローブ基板16は多数のプローブ20を有しているため、配線基板14側に取り付けられるプローブ基板16の重量は大きくなっている。また、被検査体2の電気的な検査を行なう際、プローブ基板16が、チャックトップ3上の被検査体2によって押し付けられることにより、プローブ基板16の下面に突出しているプローブ20の先端部と被検査体2の電極端子2aとが電気的に接触する。このように、電気的検査の際、下から上に向けて突き上げる反力(コンタクト荷重)が作用し、配線基板14にも大きな荷重が加えられる。支持部材12は、配線基板14の変形(例えば、撓み等)を抑える部材として機能する。
【0027】
また、支持部材12には、上面と下面とを貫通させた複数の貫通孔121が設けられている。複数の貫通孔121のそれぞれは、後述するプローブ基板16の上面に配置させる複数のアンカー50のそれぞれの位置と対応する位置に設けられており、かつ、配線基板14に設けた複数の貫通孔141のそれぞれの位置と対応する位置に設けられている。
【0028】
支持部材12の各貫通孔121には、スペーサ(以下、「支持部」とも呼ぶ。)51が、支持部材12の上方から下方に向けて挿通され、スペーサ(支持部)51の下端部と、対応するアンカー50とが固定可能な構成となっている。例えば、スペーサ(支持部)51の下端部は雄ネジ部となっており、またプローブ基板16の上面に配置されるアンカー50の略中央部は雌ネジ部501となっており、スペーサ(支持部)51の下端部(雄ネジ部)がアンカー50の雌ネジ部に螺合することで固定できる。これにより、プローブ基板16の上面と、支持部材12の上面との間の距離を所定の距離長に保持できるようにしている。
【0029】
[配線基板]
配線基板14は、例えばポリイミド等の樹脂材料で形成されたものであり、例えば略円形板状に形成されたプリント基板等である。配線基板14の上面の周縁部には、テスター(検査装置)のテストヘッド(図示しない)と電気的に接続するための多数の電極端子(図示しない)が配置されている。また、配線基板14の下面には、配線パターンが形成されており、配線パターンの接続端子14aが、電気的接続ユニット15に設けられている接続子30の上端部と電気的に接続するようになっている。
【0030】
さらに、配線基板14の内部には配線回路(図示しない)が形成されており、配線基板14の下面の配線パターンと、配線基板14の上面の電極端子とは、配線基板14内部の配線回路を介して接続可能となっている。したがって、配線基板14内の配線回路を介して、配線基板14の下面の配線パターンの接続端子14aに電気的に接続する電気的接続ユニット15の各接続子30と、配線基板14の上面の電極端子に接続するテストヘッドとの間で電気信号を導通させることができる。配線基板14の上面には、被検査体2の電気的検査に必要な複数の電子部品も配置されている。
【0031】
また、配線基板14には、当該配線基板14の上面と下面とを貫通させた複数の貫通孔141が設けられている。複数の貫通孔141のそれぞれは、プローブ基板16の上面に配置される複数のアンカー50のそれぞれの位置と対応する位置に配置され、かつ、支持部材12の複数の貫通孔121のそれぞれの位置と対応する位置に配置されている。
【0032】
なお、各貫通孔141の開口形状は、挿通される支持部51の形状に対応した形状とすることができる。また、各貫通孔141に支持部51を挿通可能にするために、各貫通孔141の内径は、支持部51の外径と同程度又はわずかに大きくなっている。
【0033】
この実施形態では、支持部51が円柱部材である場合を例示するため、貫通孔141の開口形状が略円形である場合を例示するが、これに限定されない。例えば、支持部51の断面形状が略正方形等の直角柱の部材や、当該断面形状が多角形の多角柱の部材等であってもよく、そのような例の場合でも、貫通孔141の開口形状は、支持部51を挿通可能な形状とすることができる。
【0034】
[電気的接続ユニット]
電気的接続ユニット15は、複数の接続子30を有している。電気的接続装置10の組み立て状態では、各接続子30の上端部を、配線基板14の下面の配線パターンの接続端子14aに電気的に接続し、また各接続子30の下端部を、プローブ基板16の上面に設けられたパッドに接続する。プローブ20の先端部が被検査体2の電極端子に電気的に接触するので、被検査体2の電極端子はプローブ20及び接続子30を通じてテスター(検査装置)と電気的に接続するので、被検査体2はテスター(検査装置)による電気的な検査が可能となる。
【0035】
例えば、電気的接続ユニット15には、各接続子30を挿通するための複数の挿通孔があり、各挿通孔に接続子30が挿通されることにより、各接続子30の上端部及び下端部が突出するようになっている。なお、電気的接続ユニット15において、複数の接続子30を装着する仕組みは、貫通孔を設ける構成に限定されず、種々の構成を広く適用できる。電気的接続ユニット15の周囲にはフランジ部151が設けられている。
【0036】
[プローブ基板]
プローブ基板16は、複数のプローブ20を有する基板であり、略円形若しくは多角形(例えば16角形等)に形成されたものである。プローブ20は、例えば、カンチレバー型のプローブ等を用いることができるが、これに限定されない。また、プローブ基板16は、例えばセラミック板で形成される基板部材161と、この基板部材161の下面に形成された多層配線基板162とを有する。
【0037】
セラミック基板である基板部材161の内部には、板厚方向に貫通する多数の導電路(図示しない)が形成されており、また基板部材161の上面には、パッド161aが形成されており、基板部材161内の導電路の一端が、当該基板部材161の上面の対応するパッド161aと接続するように形成されている。さらに、基板部材161の下面では、基板部材161内の導電路の他端が、多層配線基板162の上面に設けられた接続端子と接続されるように形成されている。
【0038】
多層配線基板162は、例えばポリイミド等の合成樹脂部材で形成された複数の多層基板で形成されており、複数の多層基板の間に配線路(図示しない)が形成されている。多層配線基板162の配線路の一端は、セラミック基板である基板部材161側の導電路の他端と接続しており、多層配線基板162の他端は、多層配線基板162の下面に設けられたプローブランドに接続されている。多層配線基板162の下面に設けられたプローブランドには、複数のプローブ20が配置されており、プローブ基板16の複数のプローブ20は、電気的接続ユニット15を介して、配線基板14の対応する接続端子14aと電気的に接続している。
【0039】
(A-1-2)接続子(電気的接触子)
図1は、実施形態に係る接続子の構成を示す構成図である。図3は、実施形態に係る接続子の形成過程の概略を示す説明図である。
【0040】
図1に示すように、電気的接触子の一例である接続子30は、第1の接触対象としての配線基板14の接続端子14aと接触する第1接触部31と、第1接触部31が接続端子14aと接触して荷重を受けたときに上下方向に弾性的に付勢する上方向の竹の子ばね構造を備える上部弾性部32と、第2の接触対象としての基板部材161のパッド161aと接触する第2接触部33と、第2接触部33がパッド161aと接触して荷重を受けたときに上下方向に弾性的に付勢する下方向の竹の子ばね構造を備える下部弾性部34と、上部弾性部32及び下部弾性部34を接続する中央部35を有する。
【0041】
第1接触部31には、第1の接触対象と接触する先端面があり、当該先端面が斜め上方に伸びている。また、第2接触部33には、第2の接触対象と接触する先端面があり、当該先端面が斜め下方に伸びている。第1接触部31及び第2接触部33の形状は限定されるものでは無く種々様な加工処理を行っても良い。
【0042】
図1の接続子30は、図3(A)の板状部材Mを成形加工して、図3(B)に示すようなたる状の接続子30Pを形成した後、後述する圧縮・硬化処理を用いて図3(C)に示すような目的形状(上下方向の竹の子ばね構造)の接続子30を形成する。図3の板状部材Mは、図1の接続子30(接続子30P)の成形加工前の部材であり、導電性材料で形成された板状の部材である。すなわち、接続子30は、1枚の板状部材から、複数の工程を得て、竹の子状に重ねて螺旋巻きする構造(上下方向の竹の子構造)が形成されることになるので、電気信号の導通性を安定化させることができる。換言すると、複数の部品を組み合わせて形成される電気的接触子は、複数の部品同士が互いに接触しあって電気信号を導通することになるので、複数の部品間の接触箇所で抵抗が大きくなり、導通性が不安定になることがある。これに対して、板状部材を成形加工して形成される接続子30は、部品間の接触箇所がないので、抵抗値を小さくでき、電気信号の導通性を安定化できる。
【0043】
また、接続子30は、上下方向に対して竹の子状の弾性体を有するため、第1の接触対象と、第2の接触対象との接触を確実にすることができる。このため、この実施形態の接続子30は、片方向だけの竹の子状の弾性体を有する接続子よりも、有利な効果を奏する。
【0044】
図3(A)に示す板状部材Mには、導電性を有する貴金属又は金属で形成された板状部材等種々様々な板状部材を適用することができるが、例えば、Cu-Be系合金(ベリリウム銅)等の析出硬化型銅合金が高ばね性を有する材料として好適である。析出硬化型銅合金では、溶体化処理された過飽和固溶体を時効処理することにより、微細な析出物が均一に分散して、合金の強度が高くなると同時に、銅中の固溶元素量が減少し電気伝導性を向上できる。また、パラジウム合金も析出硬化型銅合金と同様に、板状部材Mとして好適である。
【0045】
図3(B)に示す接続子30Pは、板状部材Mを成形加工して形成されるたる状の接続子である。接続子30Pは、上述の接続子30の各構成部と対応する構成を有する。即ち、図3(B)に示すように、接続子30Pは、第1接触部31Pと、上部弾性部32Pと、第2接触部33Pと、下部弾性部34Pと、上部弾性部32P及び下部弾性部34Pを接続する中央部35Pを有する。
【0046】
接続子30と接続子30Pとの違いは、接続子30が、板状部材Mを螺旋状に巻き、巻き回した内側部材の一部が外側部材に覆われて形成される竹の子構造となっているに対して、接続子30Pは、板状部材Mが重ならずに螺旋状に巻かれて形成されるたる状である。
【0047】
この実施形態では、目的形状(上下方向の竹の子構造)の接続子30を形成するために、まず、図3(A)に示す板状部材Mから、図3(B)に示すたる状の接続子30Pを形成した後、後述する圧縮・硬化処理により、図3(C)に示す接続子30を作り込む。以下では、接続子30の製造方法について述べる。
【0048】
[接続子の製造方法]
まず、接続子30を製造する手順として、例えば、図4に示すようなコイリングマシン60を用いて、接続子30Pを製造する。図5は、実施形態に係るたる状の接続子30Pの製造方法を説明する説明図である。
【0049】
図4にコイリングマシンの成形部の概略を示す。図4に示すように、コイリングマシン60は、連続的に板状部材Mを供給するためのフィードローラ61と、板状部材Mの一方向に対して垂直方向に押圧し、板状部材Mの巻きぐせを修正する押圧部62と、フィードローラ61により供給された板状部材Mを適切な位置へ誘導するための板状部材ガイド部63と、板状部材ガイド部63を経由して供給された板状部材Mを螺旋形状(この実施形態では、たる状)に加工するための螺旋径調整部64とを有する。
【0050】
図5(A)に示す板状部材Mは、例えば、図示しないリールスタンドからコイリングマシン60(フィードローラ61)に対して供給される。フィードローラ61を介して供給された板状部材Mは、押圧部62により巻きぐせが修正され、板状部材ガイド部63を経由して、螺旋径調整部64に供給される。
【0051】
供給された板状部材Mは、前後(図4におけるA方向、B方向)に動く螺旋径調整部64に当接させて、螺旋径を調整することにより、所望の螺旋形状(たる状)のばねを製造する。なお、この実施形態では、螺旋径が変化するたる状のばねを製造するために、調整が容易なことから螺旋径調整部64を1つだけ使用する例を示しているが、2以上の螺旋径調整部64を使用しても良い。また、板状部材Mをたる状に形成すための螺旋径調整部64の移動距離や移動のタイミングの制御は、NC式、カム式を問わず、従来と同様の手法で制御できる。
【0052】
図5(B)では、上半分のたる状のばね(上部弾性部32P)が示されている。上部弾性部32Pは、板状部材Mが巻き回される度に螺旋径rが徐々に大きくなるように、螺旋径調整部64を調整して上半分のたる状のばねを形成する。
【0053】
上部弾性部32Pは、図5(B)に示すように、螺旋径r~螺旋径rcで巻き回された螺旋構造(階層構造)を有する。螺旋径rは、螺旋径rが最も小さく、螺旋径r、螺旋径rと巻き回される度に螺旋径が大きくなり、螺旋径rcで最大となる。
【0054】
一方、下部弾性部34Pでは、板状部材Mが巻き回される度に螺旋径rが徐々に小さくなるように、螺旋径調整部64を調整して下半分のたる状のばねを形成する。
【0055】
そして、板状部材Mが図5(C)に示すようなたる状に形成されたところで、図示しない切断手段によって切断して、後方より供給される板状部材Mとたる状に形成された接続子30Pとを切り離す。
【0056】
この実施形態では、接続子30P(上部弾性部32P及び下部弾性部34P)は、中央部35Pを介して上下対称の螺旋構造が形成されるが、必ずしも上部弾性部32P及び下部弾性部34Pは、上下対称の螺旋構造で形成しなければならない訳ではない。例えば、各螺旋階層の螺旋径rは、上部弾性部32P及び下部弾性部34Pで、上下対称の関係で同一で無くても良く、又螺旋の階層構造も同一で無くても良い。
【0057】
次に、接続子30P(たる状のばね)を圧縮した状態(竹の子構造になるまで圧縮した状態)で、硬化処理(熱処理)を施すことにより、接続子30(竹の子ばね)を製造する手順を示す。
【0058】
図6は、実施形態に係る圧縮・硬化処理において接続子30P(たる状ばね)を収納する収納プレートの一例を示す図である。図6において、収納プレート70は、収納プレート本体部71と、接続子30Pをセットする複数の収納穴72とを備える。
【0059】
収納プレート70(収納プレート本体部71)の材質は、後述する硬化処理(熱処理)に耐えることが可能であれば、種々様々な材質を用いることができる。収納穴72の形状についても、図6に示すような円形状(楕円、真円)に限らず、接続子30Pを縦方向に収納(固定)できるのであれば種々様々な形状を適用することができる。
【0060】
図7は、実施形態に係る圧縮・硬化処理によって接続子(竹の子ばね)を製造する手順の概略を示す図である。
【0061】
図7(A)に示すように、収納プレート70(収納穴72)には、コイリングマシン60によって製造された接続子30Pをそれぞれセットする。また、各接続子30Pは、収納プレート70と底面を支持する固定プレート80によって固定される。
【0062】
圧縮プレート90は、金属板等で形成され、収納プレート70及び固定プレート80に対して対称となるように配置される。圧縮プレート90は、図示しない押圧手段によって下に移動しながら接続子30Pの上部から圧縮(押圧)する。なお、圧縮プレート90は、後述する硬化処理と併せて加熱されていても良い。そして、図7(B)に示すように、たる状の接続子30Pが圧縮されて、竹の子構造となったタイミングで圧縮プレート90の下方向への移動を停止する。
【0063】
次に、圧縮処理により一時的に竹の子構造となった接続子30Pに対して硬化処理を施す。硬化処理を施すことによって、接続子30Pに竹の子構造が保持されて接続子30(竹の子ばね)となる。
【0064】
硬化処理については、接続子30Pの元となった板状部材Mによって種々様々な処理を適用することができるが、例えば、板状部材MがCu-Be系合金であった場合には既存の析出硬化系の熱処理を用いる。即ち、接続子30Pに対して、溶体化処理(例えば800度以上の高温から急冷し過飽和となったBeを固溶したままのα相を得る)を行った後、時効処理(溶体化処理したものを315℃程度に加熱し、過飽和のBeをγ相として析出し硬化させる)を行う。時効処理によって合金が硬化されることにより、竹の子構造が保持されて接続子30(竹の子ばね)となる。
【0065】
また、接続子30Pの元となった板状部材Mがパラジウム合金であった場合にも上記同様に析出硬化系の熱処理によって、硬化処理を行っても良く、他の材質も種々様々な硬化処理(焼き入れ、焼き戻し等)を適用することができる。
【0066】
(A-2)この実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、螺旋状に重ね巻きする竹の子ばね構造の加工制約を解決することが可能となった。即ち、材料が重ならない状態で板材を巻き上げる加工(板材をたる状にする加工)を行った後、硬化処理時に目的の形状(竹の子構造)を作り込む事とした。
【0067】
上記製造方法で製造されたこの実施形態の電気的接触子(接続子)は、単一の材料から上下方向の竹の子ばね構造が一体的に形成されることから、機械的にシンプルで機能性に優れ、且つ電気回路としてロスの無い接続ができる。
【0068】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても、本発明の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の実施形態においても適用できる。
【0069】
上述した実施形態では、コイリングマシン60によって板状部材M(ばね材)をたる状に加工した後、収納プレート70にたる状のばねをセットし、圧縮・硬化処理により目的の竹の子ばね構造を作り込んでいたが、コイリングマシン60に圧縮手段、硬化手段を設けて、コイリングマシン60のみで竹の子ばね構造の接続子30を製造しても良い。特に、硬化処理時間が短く、少量の接続子30を製造する場合には、このような構成が有効である。
【符号の説明】
【0070】
30、30P…接続子、31…第1接触部、32…上部弾性部、33…第2接触部、34…下部弾性部、35…中央部、60…コイリングマシン、61…フィードローラ、62…押圧部、63…板状部材ガイド部、64…螺旋径調整部、70…収納プレート、71…収納プレート本体部、72…収納穴、80…固定プレート、90…圧縮プレート、M…板状部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7