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特許7566498電池素子のロール体、その製造方法および該ロール体を含む全固体電池
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  • 特許-電池素子のロール体、その製造方法および該ロール体を含む全固体電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電池素子のロール体、その製造方法および該ロール体を含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20241007BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241007BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241007BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20241007BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/0562
H01M10/052
H01M50/531
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020099834
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021193664
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友治
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-026806(JP,A)
【文献】特表2003-508887(JP,A)
【文献】特表2003-508886(JP,A)
【文献】特開2000-138076(JP,A)
【文献】特表2020-532840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/39
4/64-4/84
50/50-50/598
B32B 1/00-43/00
H01B 1/00-1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広巾長尺の第1の樹脂シートの第1の面上に、負極集電体層と、負極活物質層とがこの順に設けられた負極シートを巻回した負極ロール状原反を準備する工程と、
広巾長尺の第2の樹脂シートの第1の面上に、正極集電体層と、正極活物質層とがこの順に設けられた正極シートを巻回した正極ロール状原反を準備する工程と
を有し、前記負極活物質層および前記正極活物質層の少なくとも一方の上にさらに固体電解質層が設けられ、
前記負極ロール状原反から繰り出されてくる前記負極シートと、前記正極ロール状原反から繰り出されてくる前記正極シートとを、前記第1の樹脂シートの前記第1の面と前記第2の樹脂シートの前記第1の面とが対向するように、または、前記第1の樹脂シートの前記第1の面と反対側の面と、前記第2の樹脂シートの前記第1の面と反対側の面とが対向するように重ね合わせ、前記負極シートと前記正極シートとを重ね合わせた状態で、複数の狭巾シートにスリットするスリット工程と、
前記複数の狭巾シートを、それぞれロール状に巻き取り、電池素子のロール体とする巻取り工程と
をさらに有し、
前記負極ロール状原反を準備する工程が、前記広巾長尺の第1の樹脂シート上に、前記負極集電体層と、前記負極活物質層とを、この順に塗布形成する工程を含み、
前記正極ロール状原反を準備する工程が、前記広巾長尺の第2の樹脂シート上に、前記正極集電体層と、前記正極活物質層とを、この順に塗布形成する工程を含み、
前記負極活物質層および前記正極活物質層の少なくとも一方の上にさらに前記固体電解質層を塗布形成する、電池素子のロール体の製造方法。
【請求項2】
前記スリット工程は、前記負極ロール状原反から繰り出されてくる前記負極シートと、前記正極ロール状原反から繰り出されてくる前記正極シートとを重ねた合わせた状態で、スリッタヘッドによって前記複数の狭巾シートに切断する工程を含み、
前記巻取り工程は、前記狭巾シートが所定回数または所定径まで巻き上がると、巻終端を切断する工程を含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ロール体の少なくとも最外周面および最内周面を、絶縁性保護膜で覆う保護膜形成工程をさらに有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ロール体に、前記負極集電体層が露出する負極集電体露出部、および前記正極集電体層が露出する正極集電体露出部を形成する工程をさらに有する、請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記負極集電体露出部に負極リードを接続し、前記正極集電体露出部に正極リードを接続する工程をさらに有する、請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に用いる電池素子のロール体およびその製造方法、ならびにそのようなロール体を使用した全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池は、正極と、負極と、固体電解質層とを備えている。例えば、正極集電体上に、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、及び負極集電体がこの順で積層されている。全固体電池としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)を正極活物質とし、窒化リン酸リチウム(LiPON)を固体電解質とし、金属リチウムを負極活物質とした全固体電池が実用化されている。
【0003】
特許文献1には、正極を構成するための第1のグリーンシートと、負極を構成するための第2のグリーンシートと、固体電解質層を構成するための第3のグリーンシートを、適宜積層して作製した積層体を焼結することにより全固体電池を得ることができることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、仮基板上に、正極活物質層、正極集電体層を形成し、仮基板を分離して露出させた正極活物質層上に、固体電解質層、負極集電体層を形成する工程が記載されている。
【0005】
特許文献3には、電極層及び固体電解質層が積層された構造を有する電池要素を有する全固体電池の製造方法であって、前記電池要素を、前記構造の少なくとも一部とともに焼成される結晶性のセラミックスを含んだ封止層によって封止することを特徴とする全固体電池の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-149374号公報
【文献】特開2016-001599号公報
【文献】特開2016-167356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術に比べ、全固体電池をより簡単に、かつ大量に生産することが可能な電池素子のロール体およびその製造方法、ならびにそのようなロール体を使用した全固体電池を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の長尺の樹脂シート上に、負極集電体層と、負極活物質層とがこの順に設けられた負極シートと、第2の長尺の樹脂シート上に、正極集電体層と、正極活物質層とがこの順に設けられた正極シートとを、前記負極活物質層および前記正極活物質層の少なくとも一方の上にさらに固体電解質層が設けられ、前記負極活物質層と前記正極活物質層との間に前記固体電解質層が挟まれるように対向して巻回した電池素子のロール体である。
【0009】
本発明による電池素子のロール体では、負極シートと正極シートを、第1の長尺の樹脂シートの負極集電体層および負極活物質層が設けられた面と、第2の長尺の樹脂シートの正極集電体層および正極活物質層面が設けられた面とが向かい合った状態で、負極活物質層と正極活物質層との間に固体電解質層が挟まれるように巻き回してあるため、負極シートと正極シートのそれぞれの樹脂シートに挟まれた領域は、負極集電体層、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層、正極集電体層が順次積層された積層構成となり、この積層構成が樹脂シートにより電気的に絶縁されて、多数巻き回された電池素子のロール体となっている。
【0010】
本発明によるロール体では、前記ロール体の最外周面および最内周面は、絶縁性保護膜で覆うことがきる。
前記ロール体の最外周面および最内周面が固体電解質層が露出した状態では、イオン伝導率が低下するなど好ましくない。ラミネートフィルム等の電池ケースでカバーすることもできるが、直接、絶縁性保護膜で覆う方が好ましい。
【0011】
本発明によるロール体では、前記ロール体の少なくとも一部、典型的には最外周面および最内周面に、前記負極集電体層が露出する負極集電体露出部、および前記正極集電体層が露出する正極集電体露出部を設けることができる。
この場合、負極集電体露出部に負極リードを、正極集電体露出部に正極リードを接続することで、他の電気部品等との電気的な接合を行うことができる。
本発明による全固体電池は、前記ロール体を電池ケース内に収納した全固体電池とすることができる。
【0012】
本発明は、広巾長尺の第1の樹脂シート上に、負極集電体層と、負極活物質層とがこの順に設けられた負極シートを巻回した負極ロール状原反を準備する工程と、広巾長尺の第2の樹脂シート上に、正極集電体層と、正極活物質層とがこの順に設けられた正極シートを巻回した正極ロール状原反を準備する工程とを有し、前記負極活物質層および前記正極活物質層の少なくとも一方の上にさらに固体電解質層が設けられ、前記負極ロール状原反から繰り出されてくる前記負極シートと、前記正極ロール状原反から繰り出されてくる前記正極シートとを、前記第1の樹脂シートの前記第1の面と前記第2の樹脂シートの前記第1の面とが対向するように、または、前記第1の樹脂シートの前記第1の面と反対側の面(すなわち、前記第1の樹脂シートの2つの面のうち、前記負極集電体層が設けられていない方の面)と、前記第2の樹脂シートの前記第1の面と反対側の面(すなわち、前記第2の樹脂シートの2つの面のうち、前記正極集電体層が設けられていない方の面)とが対向するように重ね合わせ、前記負極シートと前記正極シートとを重ね合わせた状態で、複数の狭巾シートにスリットするスリット工程と、を有し、前記複数の狭巾シートをそれぞれロール状に巻き取り、電池素子のロール体とする巻取り工程とをさらに有する、電池素子のロール体の製造方法である。
【0013】
本発明の製造方法によれば、樹脂シートを介して、負極集電体層、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層、正極集電体層が順次積層された積層構成が多数巻き回された任意の寸法の電池素子のロール体を効率よく、大量に生産することができる。
【0014】
本発明の製造方法では、前記スリット工程において、前記負極ロール状原反から繰り出されてくる前記負極シートと、前記正極ロール状原反から繰り出されてくる前記正極シートとを重ねた合わせた状態で、スリッタヘッドによって前記複数の狭巾シートに切断するようにし、また前記巻取り工程において、前記狭巾シートが所定回数または所定径まで巻き上がると、巻終端を切断するようにすることができる。
これにより任意の電池容量に合わせた全固体電池用の電池素子のロール体を製造することができる。
【0015】
本発明の製造方法では、前記負極ロール状原反を準備する工程が、前記広巾長尺の第1の樹脂シート上に、前記負極集電体層と、前記負極活物質層とを、この順に塗布形成し、前記正極ロール状原反を準備する工程が、前記広巾長尺の第2の樹脂シート上に、前記正極集電体層と、前記正極活物質層とを、この順に塗布形成し、前記負極活物質層および前記正極活物質層の少なくとも一方の上にさらに前記固体電解質層を塗布形成するようにするとよい。
塗布形成は、各層のペースト(塗工液)を樹脂シート上に、順次塗布、乾燥させて積層形成できるため、塗布巾、塗布長の制約が少なく、同じ積層構成を大量に生産するのに適している。
【0016】
本発明の製造方法は、前記ロール体の最外周面および最内周面を、絶縁性保護膜で覆う保護膜形成工程をさらに有するものとすることができる。
本発明の製造方法はまた、ロール体の少なくも一部、典型的には最外周面および最内周面に、前記負極集電体層が露出する負極集電体露出部、および前記正極集電体層が露出する正極集電体露出部を形成する工程をさらに有するものとすることができる。
この場合、前記負極集電体露出部に負極リードを、前記正極集電体露出部に正極リードを接続することで、他の電気部品等との電気的な接合を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、樹脂シートを介して、負極集電体層、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層、正極集電体層が順次積層された積層構成が多数巻き回された任意の寸法の電池素子のロール体を効率よく、大量に生産することができる。
また、各層のペースト(塗工液)を樹脂シート上に、順次塗布、乾燥させて積層形成することで、塗布巾、塗布長の制約が少なく、同じ積層構成を大量に生産するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の1つの実施形態によるロール体の模式図であって、(a)はロール体の全体を示す図、(b)はロール体の断面積層構造を示す図である。
図2】本発明の製造方法の1つの実施形態を説明するための工程フロー図である。
図3】本発明の製造方法の1つの実施形態におけるスリット工程を説明するための模式図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図4】本発明の製造方法の1つの実施形態における負極シートおよび正極シートの断面積層構成を示した模式図であって、(a)は負極シートと正極シートを準備した状態を示す図、(b)は負極シートと正極シートを積層した状態を示す図、(c)は負極シートと正極シートを複数積層した状態を示す図である。
図5】本発明の製造方法の1つの実施形態において集電体露出部を形成した場合の断面積層構造を示す模式図である。
図6】本発明の製造方法の1つの実施形態において集電体露出部にリードを接続した場合の断面積層構造を示す模式図である。
図7】本発明の1つの実施形態による全固体電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の1つの実施形態によるロール体の模式図である。図1(a)は、本発明の1つの実施形態によるロール体1の全体像を模式的に示す。図1(b)は、ロール体1の部分的な積層構造を模式的に示す。
この実施形態による電池素子のロール体1は、長尺の樹脂シート21上に、負極集電体層22と、負極活物質層23と、固体電解質層24とが形成されてなる負極シート20と、長尺の樹脂シート上31に、正極集電体層32と、正極活物質層33と、固体電解質層34とが形成されてなる正極シート30とを、それぞれの樹脂シートが向かい合った状態で(すなわち、負極活物質層23と正極活物質層33との間に固体電解質層24,34が挟まれるように対向して)多数巻回したものである。
なお、この実施形態では、負極活物質層23の上に固体電解質層24が、正極活物質層33の上に固体電解質層34が、それぞれ形成されているが、固体電解質層24,34は、いずれか一方のみを形成することとしてもよい。
負極シート20と正極シート30を、その樹脂シート21,31が向かい合った状態で巻き回してあるため、負極シートと正極シートのそれぞれの樹脂シートに挟まれた領域は、図1(b)に示すように、負極集電体層22、負極活物質層23、固体電解質層24,34、正極活物質層33、正極集電体層32が順次積層された積層構成となり、この積層構成が樹脂シート21、22により電気的に絶縁されて多数巻き回された電池素子のロール体1となる。
【0020】
樹脂シートとしては、例えば、ポリイミド、ポリエステル、及びポリプロピレン、ポリエチレ、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂等を使用することができる。これら樹脂シートは、絶縁性を有し、且つ加熱に対して安定性を有するものが好ましく、例えば、ポリイミドを好適に使用することができる。樹脂シートの厚みを50μm以下、好ましくは、25μm以下にすることが好ましい。
【0021】
負極集電体の大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。負極集電体の材質としては、例えば、ダイス鋼、金、白金、インジウム、ニッケル、銅、ステンレス鋼などを使用することができる。負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状などが挙げられる。
負極集電体の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ法、蒸着法、及びCVD法等が挙げられる。また、銅などの金属粉等に対して、溶剤、樹脂等を適宜混合することにより、ペーストを調製し、そのペーストを樹脂シートの上に塗布し、乾燥させることにより形成することもできる。
負極集電体の厚みとしては、例えば、5μm~500μm、好ましくは、10μm~50μmとすることができる。
【0022】
負極活物質層としては、負極活物質を含有する層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。負極活物質としては、例えば、リチウム、リチウム合金、インジウム、スズ、鉛、ケイ素、ケイ素酸化物、及び炭素材料、リチウム含有リン酸化物、具体例としては、Li3V2(PO4)3、Li3Fe2(PO4)3、Li4Ti5O12等が挙げられる。これらの負極活物質粒子のうちの1種のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
【0023】
負極活物質層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ法、蒸着法、及びCVD法等が挙げられる。また、負極活物質粒子に対して、溶剤、樹脂等を適宜混合することにより、ペーストを調製し、そのペーストをシートの上に塗布し、乾燥させることにより形成することもできる。また、負極活物質層を形成するに際して、公知の導電剤等を含有させてもよい。例えば、炭素粉末や黒鉛粉末の負極活物質をポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリアセチレン、セルロース等の樹脂とともに分散してペーストを調製し、負極集電体層上に塗布・乾燥させて負極極活物質層を形成することができる。負極活物質層は、所望の密度を得るために、必要に応じて加熱やプレスを行ってもよい。
負極活物質層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm~100μm、好ましくは0.1μm~50μm、より好ましくは0.5μm~25μmとすることができる。
【0024】
正極集電体層の形状、材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。正極集電体層は、例えば、ダイス鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン合金、銅、ニッケルなどを使用することができる。正極集電体層の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状などが挙げられる。
正極集電体層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、例としては、スパッタ法、蒸着法、及びCVD法等が挙げられる。また、炭素粉末、金属粉等に対して、溶剤、樹脂等を適宜混合することにより、ペーストを調製し、そのペーストを樹脂シートの上に塗布し、乾燥させることにより形成することもできる。
正極集電体の厚みとしては、例えば、5μm~500μm、好ましくは、10μm~50μmとすることができる。
【0025】
正極活物質層としては、正極活物質を含有する層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、これら複合酸化物の一部を他の遷移金属で置換したもの、二酸化マンガン、五酸化バナジウムなどのような遷移金属化合物、硫化鉄などの遷移金属カルコゲン化合物を用いることができる。具体例としては、Li3V2(PO4)3、Li3Fe2(PO4)3、LiMnPO4、LiCoO2,LiNiO2、LiFePO4,LiCoPO4、LiNiPO4、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiMn2O4,LiNi0.5Mn1.5O4、Li4Ti5O12等が挙げられる。これらの正極活物質のうちの1種のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
【0026】
正極活物質層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ法、蒸着法、パルスレーザー堆積法、CVD法、エアロゾルデポジション法、スプレー法、フラックス法、およびゾルゲル法が挙げられる。また、正極活物質粒子に対して、溶剤、樹脂等を適宜混合することにより、ペーストを調製し、そのペーストをシートの上に塗布し、乾燥させることにより形成することもできる。正極活物質層を形成するに際し、公知の導電剤等を含有させてもよい。例えば、正極活物質と、アセチレンブラック等の導電剤をポリフッ化ビニリデン等の樹脂とともに分散してペーストを調製し、正極集電体層上に塗布・乾燥させて正極活物質層を形成することもできる。正極活物質層は、所望の密度を得るために、必要に応じて加熱やプレスを行ってもよい。
正極活物質層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm~100μm、好ましくは0.1μm~50μm、より好ましくは0.5μm~25μmとすることができる。
【0027】
固体電解質層としては、窒化リン酸リチウム、硫化物系リチウムイオン伝導性固体電解質、および酸化物系リチウムイオン伝導性固体電解質で構成される層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例としては、LiPON、Li3Zr2Si2PO12、Li7La3Zr2O12、Li5La3Ta2O12、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3、Li1.5Ti1.7Al0.8P2.8Si0.2O12、及びLa2/3-xLi3xTiO3等が挙げられる。
固体電解質層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例としては、スパッタ法、蒸着法、パルスレーザー堆積法、CVD法、エアロゾルデポジション法、スプレー法、フラックス法、および、ゾルゲル法等が挙げられる。また、固体電解質粒子に対して、溶剤、樹脂等を適宜混合することにより、ペーストを調製し、そのペーストをシートの上に塗布し、乾燥させることにより形成することもできる。
【0028】
樹脂としては、例えばポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。
溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等を用いることができる。
固体電解質層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm~100μm、好ましくは0.1μm~50μm、より好ましく、0.5μm~25μmとすることができる。
【0029】
次に、本発明の全固体電池の製造方法の一例について説明する。
図2は本発明の製造方法の1つの実施形態について説明するための工程フロー図である。この実施形態の全固体電池の製造方法は、広巾長尺の樹脂シート21を準備し、負極集電体層22、負極活物質層23、固体電解質層24を順次積層形成した負極シート20が多数巻回された負極ロール状原反を準備する工程と、広巾長尺の樹脂シート31を、正極集電体層32、正極活物質層33、固体電解質層34を順次積層形成した正極シート30が多数巻回された正極ロール状原反を準備する工程と、負極ロール状原反から繰り出されてくる負極シート20と、正極ロール状原反から繰り出されてくる正極シート30とを、負極活物質層23と正極活物質層33との間に固体電解質層24,34が挟まれるように重ね合わせ、負極シート20と正極シート30とを重ね合わせた状態で、複数の狭巾シートにスリットするスリット工程と、を有し、複数の狭巾シートを、それぞれロール状に巻き取り、電池素子のロール体とする巻取り工程をさらに有するものである。
なお、この実施形態では、負極活物質層23の上に固体電解質層24を、正極活物質層33の上に固体電解質層34を、いずれも形成しているが、固体電解質層24,34のうちいずれか一方のみを形成することとしてもよい。
【0030】
図3は、本発明の製造方法の1つの実施形態におけるスリット工程を説明するための模式図である。(a)は斜視的に示した図、(b)は側面的に示した図である。
スリット工程において、負極ロール状原反から繰り出されてくる負極シート20と、正極ロール状原反から繰り出されてくる正極シート30とを、重ね合わせた状態で、例えば、ニップロール4で重ねて、スリッタヘッド5によって複数の狭巾シートに切断し、各狭巾シートをロール状に巻き取り、複数のロール体1とする。
スリット工程はスリッタ装置によって行われる。スリッタ装置は、ロール状の原反から繰り出されてくる巾広のシートを、スリッタヘッドによって複数の狭巾の状シートに切断し、各狭巾のシートを巻芯にロール状に巻き取る装置である。例えば、図3(b)のように、狭巾のシートが所定回数または所定径まで巻き上がると、カッター機構61,62によって巻終端を切断した後、狭巾のロール状に巻き取られたロール体1を取り出すと共に、巻芯をスリッタ装置内に復帰させる巻芯回転機構71,72を有する。
【0031】
図4は、本発明の製造方法の1つの実施形態における負極シートおよび正極シートの積層構成を示した模式図である。
図4を用いて、本発明の製造方法の一例を説明すると、広巾長尺の樹脂シート21を準備し、負極集電体層22、負極活物質層23、固体電解質層24を順次積層形成する。
積層形成する方法は、例えば、各層の母材となる物質を、溶剤、樹脂等と適宜混合することによりペーストを調製し、各層のペーストを樹脂シートの上に、例えばグラビア方式、スクリーン方式等の他の塗布方式で、順次、塗布し、乾燥させることにより負極シート20を形成する。塗布後、必要によりロールプレス等で加熱プレスしてもよい。同様に、正極を構成するための正極シート30を形成する。これにより図4(a)に示すような積層構成を有する、負極シート20が多数巻回された負極ロール状原反と正極シート30が多数巻回された正極ロール状原反を準備する。
【0032】
次にスリット装置の巻出機構に負極ロール状原反と正極ロール状原反をセットし、負極ロール状原反から負極シート20を繰り出し、正極ロール状原反から正極シート30を繰り出す。負極ロール状原反から繰り出された負極シート20と、正極ロール状原反から繰り出されてくる正極シート30は、ニップロール4でそれぞれの固体電解質が向い合った状態に重ねられ、図4(b)に示すような積層構成となる。
負極シート20と正極シート30はこの状態でスリッタヘッド5によって複数の狭巾シートに切断し、ロール状に巻き取られることで、図4(c)に示すように、負極シート20と正極シート30が複数積層された状態となる。この積層状態は、固体電解質層24、34が向い合い、かつ、負極集電体層22正極集電体層32が樹脂シート21、31で絶縁されたロール体1となる。
【0033】
図4では、負極シート20と正極シート30をニップロール4でそれぞれの固体電解質が向い合った状態に重ねているが、それぞれの樹脂シートが向い合った状態に重ねても構わない。どちらの向きに重ね合わせても、ロール状に巻かれることにより、負極シート20と正極シート30の樹脂シートが重なり合い、それぞれの樹脂シートに挟まれた領域は、負極集電体層、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層、正極集電体層が順次積層された積層構成となる。
【0034】
以上、本発明の製造方法について説明したが、本発明は、電池形状や用途により必要な工程を追加することができる。例えば、ロール体1の特性を十分に引き出すためにロール状態でアニール処理をしてもよい。
【0035】
他には、ロール状に巻き取ったロール体1の少なくとも一部、典型的には最外周面および最内周面に、負極集電体層および正極集電体層が露出する集電体露出部を形成してよい(図5)、負極集電体層の集電体露出部に負極リードを、正極集電体層の集電体露出部に正極リードを接続することで他の電気部品等との電気的な接合を行うことができる(図6)。露出部の形成方法は、例えば、ショットブラスト、サンドブラスト、研磨、溶出、及び、切削などの方法を用いることができる。
また、ロール体の最外周面および最内周面を、集電体露出部を除いて絶縁性保護膜で覆う保護膜形成工程を含むこともができる。
【0036】
上述したように作製されたロール体1は、例えば図7に示すように電池ケース内に収納される。電池ケースとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、従来の全固体電池で使用可能な公知のラミネートフィルムや筐体などが挙げられる。全固体電池の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円筒型、角型、ボタン型、コイン型、扁平型などが挙げられる。
【符号の説明】
【0037】
1 ロール体
20 負極シート
21、31 樹脂シート
22 負極集電体層
23 負極活物質層
24、34 固体電解質層
32 正極集電体層
33 正極活物質層
4 ニップロール
5 スリッタヘッド
61、62 カッター機構
71.72 巻芯回転機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7