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特許7566500補聴器フィッティングシステム、補聴器フィッティング方法、補聴器フィッティング制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】補聴器フィッティングシステム、補聴器フィッティング方法、補聴器フィッティング制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
H04R25/00 L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020102968
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021197635
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】三上 敦史
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 英典
(72)【発明者】
【氏名】波多野 寛之
(72)【発明者】
【氏名】上原 慶太
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-247559(JP,A)
【文献】特開2017-152865(JP,A)
【文献】特表2016-531655(JP,A)
【文献】特開2001-008295(JP,A)
【文献】国際公開第2013/190791(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00-25/04
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補聴器装用閾値を測定する周波数の音を発生させる音発生部と、
前記音を補聴器装用者の補聴器装用閾値の前記周波数での目標値に応じて設定した音圧に増幅して出力するアンプ部と、
出力された前記音を提示する提示部と、
補聴器装用者による操作を受付可能な応答部と、
前記音発生部及び前記アンプ部の各動作を制御するとともに、補聴器装用閾値の測定に影響を与えうる入力後の音に対する補聴機能に関する設定を測定中に無効化する制御、及び、前記音の提示中における前記応答部での前記操作の受付状況に応じて補聴器の音響利得に関する設定を調整する制御を行う制御部と
を備えた補聴器フィッティングシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の補聴器フィッティングシステムにおいて、
前記制御部は、
前記音の発生及び出力と補聴器の設定調整とに関する一連の制御を、補聴器装用閾値を測定する予め選択された全ての周波数について連続して実行することを特徴とする補聴器フィッティングシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の補聴器フィッティングシステムにおいて、
前記制御部は、
前記一連の制御を前記応答部で前記操作が受け付けられるまで繰り返し得ることを特徴とする補聴器フィッティングシステム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の補聴器フィッティングシステムにおいて、
前記制御部は、
前記音響利得に関する設定を予め定められた範囲内で調整する制御を行うことを特徴とする補聴器フィッティングシステム。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の補聴器フィッティングシステムにおいて、
前記応答部は、
前記操作の受付に伴って振動することを特徴とする補聴器フィッティングシステム。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の補聴器フィッティングシステムにおいて、
補聴器を両耳装用する補聴器装用者における片耳の補聴器装用閾値を測定する場合に、前記音に対応するマスキング音を発生させて非測定耳の補聴器から提示するマスキング音発生部をさらに備え、
前記制御部は、
前記音発生部、前記アンプ部、前記マスキング音発生部の各動作、及び、測定耳の補聴器の設定調整を制御することを特徴とする補聴器フィッティングシステム。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の補聴器フィッティングシステムを用いた補聴器フィッティング方法。
【請求項8】
補聴器装用閾値の測定に影響を与えうる入力後の音に対する補聴機能に関する設定を無効化した状態で、補聴器装用閾値を測定する周波数の音を補聴器装用者の補聴器装用閾値の前記周波数での目標値に応じて設定した音圧で提示する提示工程と、
補聴器装用者によりなされた操作の受付状況を監視する監視工程と、
前記操作の受付状況に応じて補聴器の音響利得に関する設定を自動調整する調整工程と
を含む補聴器フィッティング方法。
【請求項9】
コンピュータを、少なくとも、
補聴器装用閾値の測定に用いる周波数の音の発生、出力、音圧を制御し、前記音を補聴器装用者の補聴器装用閾値の前記周波数での目標値に応じて設定した音圧で出力させる音制御部と、
前記音の出力中に補聴器装用者によりなされた操作の受付状況を監視する監視部と、
補聴器装用閾値の測定に影響を与えうる入力後の音に対する補聴機能に関する設定を測定中に無効化する制御、及び、前記操作の受付状況に応じて補聴器の音響利得に関する設定を調整する制御を行う補聴器制御部
として機能させる補聴器フィッティング制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補聴器のフィッティングに関し、特に、その過程で行われる音場での補聴器装用閾値の測定(ファンクショナルゲインの測定)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
補聴器のフィッティングを日本で行う際には、日本聴覚医学会により発表された「補聴器適合検査の指針(2010)」に沿って補聴器装用の効果を確認するのが一般的である(非特許文献1を参照。)。この指針においては、「語音明瞭度曲線または語音明瞭度の測定」及び「環境騒音の許容を指標とした適合検査」の2項目が必須項目として定められ、さらに「音場での補聴器装用閾値の測定(ファンクショナルゲインの測定)」等の6項目が必要に応じて追加する参考項目として定められており、これら8項目についての指針が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】日本聴覚医学会著,「補聴器適合検査の指針(2010)」,Audiology Japan Vol.53 No.6, p.708-726,2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補聴器装用の効果の確認においては、音場での音圧を聴力レベルで校正されたスピーカが接続されたオージオメータ又は補聴効果測定装置を用いて、補聴器非装用時閾値と装用時閾値が測定され、それらの差(ファンクショナルゲイン)が測定される。補聴器非装用時閾値と装用時閾値は、所定周波数毎に、スピーカから出力される音圧を増減させ、聞き取れる最も小さな音圧を測定することで得ることができる。装用時閾値の測定前には、オージオグラム等に基づいて補聴器フィッターにより補聴器の利得調整が行われ(手順1)、その上で、調整した利得が目標とする補聴器装用閾値に対して適切であるかを確認するために、装用時閾値の測定がなされる(手順2)。
【0005】
具体的には、図9に例示したオージオグラムに示される補聴器非装用時の閾値(△)から、手順1,2を経て、補聴器装用時の閾値(▲)へと補聴器の利得設定が調整されていく。調整した利得で思い通りの補聴器装用閾値にならなければ、人手を介して手順1,2が繰り返されることとなるため、作業効率の面で課題がある。また、測定及び調整が何度も繰り返されれば、それだけ補聴器フィッターや補聴器装用者(被検者)には時間的にも精神的にも負担が増すため、測定及び調整は最小限に抑制することが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、補聴器のフィッティングを効率化する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の補聴器フィッティングシステム、補聴器フィッティング方法、補聴器フィッティング制御プログラムを採用する。なお、以下の括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
すなわち、本発明の補聴器フィッティングシステムは、補聴器装用閾値を測定する周波数の音を発生させる音発生部と、音を補聴器装用者の補聴器装用閾値の目標値に応じた音圧に増幅して出力するアンプ部と、出力された音を提示する提示部と、補聴器装用者による操作を受付可能な応答部と、音発生部及びアンプ部の各動作を制御するとともに、音の提示中における応答部での操作の受付状況に応じて補聴器の設定を調整する制御を行う制御部とを備えている。
【0009】
また、本発明の補聴器フィッティング方法は、補聴器装用閾値を測定する周波数の音を目標値に応じた音圧で提示する提示工程と、補聴器装用者によりなされた操作の受付状況を監視する監視工程と、操作の受付状況に応じて補聴器の設定を自動調整する調整工程とを含む。
【0010】
そして、本発明の補聴器フィッティング制御プログラムは、少なくとも、補聴器装用閾値の測定に用いる周波数の音の発生、出力、音圧を制御する音制御部と、音の出力中に補聴器装用者によりなされた操作の受付状況を監視する監視部と、操作の受付状況に応じて補聴器の設定を調整する制御を行う補聴器制御部として、コンピュータを機能させるためのものである。
【0011】
補聴器フィッティングにおいて音場での補聴器装用閾値の測定(ファンクショナルゲインの測定)を行う場合は、オージオメータ等の装置を用いて補聴器装用閾値の測定がなされ、その結果に基づいて、補聴器フィッターにより補聴器の利得設定の調整が行われる。そして、所望の装用閾値に達しなければ、所望の装用閾値に達するまでの間、この手順が繰り返される。補聴器の再調整を行うたびに測定が中断されるため、繰り返す回数が多いほど補聴器フィッティングの所要時間が長くなり、補聴器装用者にも補聴器フィッターにも大きな負担となる。また、そのことに起因して、提示音に対する補聴器装用者による誤応答(誤操作)や補聴器フィッターによる補聴器の誤調整を招く可能性があり、そうなれば悪循環に陥ってしまう。
【0012】
これに対し、本発明の補聴器フィッティングシステム、補聴器フィッティング方法、補聴器フィッティング制御プログラムによれば、音の提示中(出力中)に補聴器装用者によりなされた操作の受付状況に応じて補聴器の設定が自動的に調整されるため、補聴器フィッティングを効率化することができる。また、補聴器フィッティングに要する時間が短縮されるため、補聴器装用者や補聴器フィッターにかかる負荷を軽減することができる。
【0013】
好ましくは、上記の補聴器フィッティングシステムにおいて、制御部は、音の発生及び出力と補聴器の設定調整とに関する一連の制御を、補聴器装用閾値を測定する予め選択された全ての周波数について連続して実行する。また、制御部は、一連の制御を補聴器装用閾値が目標値に達するまで繰り返し得る。
【0014】
この態様によれば、制御部による一連の制御が測定対象とする全ての周波数について連続して実行され、また、補聴器装用閾値が目標値になるまでそのような制御が繰り返され得るため、補聴器フィッティングを一段と効率化することができ、補聴器装用者や補聴器フィッターにかかる負荷を一段と軽減することができる。
【0015】
より好ましくは、上記の補聴器フィッティングシステムにおいて、制御部は、補聴器の音響利得に関する設定を調整する制御を行う。また、制御部は、音響利得に関する設定を予め定められた範囲内で調整する制御を行う。
【0016】
この態様によれば、補聴器の音響利得に関する設定が人手を介することなく補聴器装用閾値の測定に伴って自動的に調整されるため、補聴器フィッティングをさらに効率化をすることができる。また、音響利得に関する設定が予め定められた範囲内で調整されるため、何らかの誤作動や異常により著しく大きな値が設定されることを未然に防止することができ、確実に補聴器装用者の聴覚保護を図ることが可能となる。
【0017】
さらに好ましくは、上記の補聴器フィッティングシステムにおいて、制御部は、音響利得に関する設定に加え、補聴器装用閾値の測定に影響を与えうる補聴器の機能に関する設定を測定中に無効化する制御を行う。
【0018】
この態様によれば、補聴器装用閾値の測定に影響を与えうる騒音抑制、指向性、突発音抑制、ハウリング抑制等の機能に関する設定が測定中に無効化されるため、補聴器装用閾値をより適切に測定することが可能となる。
【0019】
また、好ましくは、上記の補聴器フィッティングシステムにおいて、応答部は、操作の受付に伴って振動する。
【0020】
補聴器装用閾値の測定中は、提示される音に集中すべく補聴器装用者が目を瞑って検査を受けることも多いが、この態様によれば、応答部が操作の受付に伴って振動するため、目を瞑ったまま操作がなされた場合でも、正しく操作がなされたことを補聴器装用者に認識させることができる。
【0021】
さらに好ましくは、上記の補聴器フィッティングシステムにおいて、補聴器を両耳装用する補聴器装用者における片耳の補聴器装用閾値を測定する場合に、上記の音に対応するマスキング音を発生させて非測定耳の補聴器から提示するマスキング音発生部をさらに備え、制御部は、音発生部、アンプ部、マスキング音発生部の各動作、及び、測定耳の補聴器の設定調整を制御する。
【0022】
この態様によれば、補聴器装用者が補聴器を両耳装用する場合に、提示部から提示される音、すなわち測定音(検査音)に対応するマスキング音が非測定耳(非検査耳)の補聴器から出力されるため、非測定耳を測定音からマスキングして測定音が聞こえないようにすることができ、測定耳(検査耳)についての補聴器装用閾値の測定をより適切に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、補聴器のフィッティングを効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】補聴器フィッティングシステムが動作する環境の構成図である。
図2】補聴器フィッティングシステムの構成を示す機能ブロック図である。
図3】補聴器と制御部との間の通信態様例を示す図である。
図4】補聴器のフィッティングの流れを示すフローチャートである。
図5】純音聴力検査の流れを示すフローチャートである。
図6】純音聴力検査のオージオグラムの一例を示す図である。
図7】実施形態における音場閾値測定処理の手順例を示すフローチャートである。
図8】補聴器の機能及び設定の一例を説明する図である。
図9】音場閾値測定のオージオグラムの一例を示す図である。
図10】比較例における音場装用閾値測定処理の手順例を示すフローチャートである。
図11】変形例1の補聴器フィッティングシステムの構成を示す図である。
図12】変形例2の補聴器フィッティングシステムの構成を示す図である。
図13】変形例3の補聴器フィッティングシステムの構成を示す図である。
図14】変形例4の補聴器フィッティングシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は好ましい例示であり、本発明はこの例示に限定されるものではない。
【0026】
〔補聴器フィッティングシステムの動作環境〕
図1は、一実施形態の補聴器フィッティングシステム100が動作する環境の構成図である。
【0027】
補聴器フィッティングシステム100は、所望の補聴器装用閾値を得られるように補聴器の設定を自動的に調整するシステムである。補聴器フィッティングの過程では、補聴器装用者又は装用予定者(以下、「被検者」と称する。)に対して純音聴力検査や補聴器装用閾値の測定等がなされるが、これらはいずれも、外部の環境音の影響を受けにくい無響室又は防音室等(以下、「測定室」と称する。)で行われる。
【0028】
検査や測定に用いられる音(以下、「検査音」と称する。)は、オージオメータ10や補聴効果測定装置12(以下、これらを「測定装置」と総称する。)により設定されて出力される。また、補聴器装用閾値の測定に用いられる測定音は、測定装置10(12)から出力されると測定室内に配置されたスピーカ20から提示される。測定装置は、オージオメータや補聴効果測定装置に限らず、校正された音を出力できる装置であればよい。
【0029】
スピーカ20は、測定装置10(12)と組み合わせて使用する場合に測定周波数において小さな音(0dBHLに対応する音圧)から大きな音(90dBHL又は100dBHLに対応する音圧)を出力する上での精度が十分なもの(例えば、音圧レベルが安定している、高調波ひずみや雑音レベルが十分に小さい等に該当するもの)が用いられ、検査音が自由進行平面波として被検者に届くよう、被検者の頭部中心と同じ高さにし、被検者に対して正面に配置される。また、スピーカ20から被検者が座る位置までの距離は、1m程度離れていることが望ましい。
【0030】
スピーカ20は、測定室に据え付けてもよいし、キャスターの付いた移動式のものを用いてもよいが、いずれの場合にも、被検者の頭部中心に相当する位置にて設定通りの音圧になるよう、測定装置10(12)の音響校正を予め行っておく。
【0031】
被検者は、補聴器装用閾値の測定時には片耳又は両耳に補聴器HAを装用する。補聴器HAを片耳装用する被検者の場合には、補聴器を装用しない耳には通常イヤーマフや耳栓を用いて遮音するが、補聴器を両耳装用する被検者の場合には、非検査耳の補聴器から検査耳の検査周波数に合わせてマスキング音を提示してもよい。
【0032】
また、被検者は、応答装置30を把持している。応答装置30は、検査音が聞こえたら押下する応答ボタン30aと、応答ボタン30aの押下に伴って発光するライト30bとを備えている。応答ボタン30aの押下に伴いライト30bが発光することで、被検者は正しく操作したことを認識できるとともに、押下したことが検査者に伝わっている安心感を得ることができる。なお、被検者は、検査音に集中すべく目を瞑って検査を受けることも多いため、発光に加え、応答ボタン30aの押下に伴って持ち手部分が振動することで、被検者が正しく操作したことを認識できるようにしてもよい。但し、振動は検査や測定に影響のある音を発しないこと及び検査音の周波数に影響を与えないことが望ましい。
【0033】
応答装置30は、測定装置10(12)と有線接続されており、被検者が応答ボタン30aを押下すると、そのことが測定装置10(12)を介してコンピュータ40により検知される。なお、有線式に代えて、無線式の応答ボタンを用いてもよい。
【0034】
コンピュータ40は、CPUやRAM、HDD、各種I/F、モニタ等の一般的な機能を備えたコンピュータに、測定装置10(12)による測定及び補聴器HAの調整を制御するためのプログラム(以下、「制御プログラム」と称する。)が実装されたものである。測定装置10(12)には、外部のコンピュータ等による制御を可能とするインタフェースが予め搭載されており、所定の設定を行った上でコンピュータ40と接続することにより、測定装置10(12)のコンピュータ40による制御が可能となる。また、コンピュータ40には、通信機器50も接続されており、通信機器50は、無線通信機能が搭載された補聴器HAと無線で接続されている。補聴器装用閾値の測定中には、応答装置30の状態に応じてコンピュータ40により補聴器HAを調整する制御が、通信機器50を経由して行われる。
【0035】
なお、補聴器との通信には、通信機器50に代えて、有線接続による通信機器を用いることも可能である。補聴器との通信態様については、さらに後述する。
【0036】
〔補聴器フィッティングシステムの構成〕
図2は、補聴器フィッティングシステム100の構成を示す機能ブロック図である。
【0037】
補聴器フィッティングシステム100は、例えば、音発生部1、アンプ部2、提示部3、応答部4、制御部5、補聴器通信部6等で構成されている。
【0038】
音発生部1は、検査音の周波数を制御部5の指示に従って設定し、検査音を電気的に発生させる。アンプ部2は、音発生部1が発生させた検査音を制御部5の指示通りの音圧に増幅して出力する。提示部3は、アンプ部2から出力された検査音を提示する。応答部4は、被検者による検査音に対する応答を受け付け、その旨を示す信号を制御部5に送信する。制御部5は、音発生部1による検査音の周波数設定と発生、及び、アンプ部2による検査音の増幅と出力を制御するとともに、応答部4からの信号入力の有無に応じて所定のアルゴリズムに基づいて補聴器HAの内部設定の調整を制御する。補聴器通信部6は、制御部5と補聴器HAとの間の通信を司り、制御部5からの制御信号を補聴器HAに送信するとともに、補聴器HAの設定記憶部からのデータ情報等の信号を制御部5に送信する。
【0039】
なお、検査音の出力時に考慮される校正値は、予め行われる音響校正において周波数毎に求められており、アンプ部2に保持されている。そして、アンプ部2が或る周波数の装用閾値に対応する音圧を設定する際に、当該周波数での校正値が適用され、アンプ部2では校正された音圧に増幅される。なお、校正値は、制御部5に保持されて、制御部5からアンプ部2に送られてもよい。
【0040】
本実施形態においては、音発生部1及びアンプ部2は測定装置10(12)に設けられており、提示部3はスピーカ20に設けられており、応答部4は応答装置30に設けられており、制御部5(制御プログラム)はコンピュータ40に設けられており、補聴器通信部6は通信機器50に設けられている。
【0041】
なお、応答装置30が測定装置10(12)に接続されていることから、応答部4(応答装置30)から制御部5(コンピュータ40)への信号入力は、正確には測定装置10(12)を介してなされるが、図2においては便宜上その図示を省略している。また、制御部5及び補聴器通信部6は、測定装置内に実装されてもよい(その場合には、コンピュータ40及び通信機器50は不要となる)。制御部5が実行する処理の詳細については、別の図面を参照しながら詳しく後述する。
【0042】
〔補聴器との通信態様例〕
図3は、補聴器と制御部5(コンピュータ40)との間の通信態様例を示す図であり、補聴器業界で汎用的に使用される通信機器を用いた3つの態様を示している。
【0043】
図3中(A):通信態様1を示している。この態様においては、コンピュータ40と通信機器50とがUSBケーブル等で有線接続され、通信機器50と補聴器とが無線接続される。商用の通信機器では、Noahlink Wirelessが通信態様1に該当する。
【0044】
図3中(B):通信態様2を示している。この態様においては、通信機器52が通信ドングル52aと本体52bとに分かれており、通信ドングル52aがコンピュータ40とUSB接続され、本体52bが補聴器とCSケーブル等で有線接続されて、通信ドングル52aと本体52bとが無線接続される。商用の通信機器では、NOAHlink(登録商標)が通信態様2に該当する。
【0045】
図3中(C):通信態様3を示している。この態様においては、通信機器54がコンピュータ40とUSBケーブル等で有線接続されるとともに、補聴器ともCSケーブル等で有線接続される。商用の通信機器では、HI-PROが通信態様3に該当する。
【0046】
被検者にとっては、補聴器に直接又は間接的に有線接続される機器が少ないほど快適に感じられ、上述した3つの通信態様を比較すると、快適さの度合いは、通信態様1>通信態様2>通信態様3の順に小さくなる。通信態様1は、被検者にとって最も快適であるものの、その利用は、補聴器に対応する無線通信機能が搭載されている場合にのみ可能となる。
【0047】
なお、上述した商用の通信機器に代えて、独自の通信機器を用いて補聴器との通信を行ってもよい。また、コンピュータ40にWiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等に対応した無線通信の機能が搭載されている場合には、それらの各通信プロトコルに則って補聴器との通信を行ってもよいし、無線通信を行うために搭載された無線チップやアンテナ等のデバイスを用いて、独自の制御プロトコルにより補聴器との通信を行ってもよい。そのような構成においては、コンピュータ40が通信機器を兼ねる(コンピュータ40に補聴器通信部6が設けられる)ため、独立した通信機器は不要となる。
【0048】
〔補聴器のフィッティング〕
図4は、補聴器のフィッティングの流れを示すフローチャートである。
なお、図4においては、通常実施される手順を実線枠で囲んで示し、状況に応じて実施される手順を破線枠で囲んで示している。以下、流れに沿って説明する。
【0049】
ステップS10:先ず、純音聴力検査が実施される。純音聴力検査は、純音を用いてどの位小さな音が聞こえるかを調べる検査である。
【0050】
ステップS20:必要があれば、純音聴力検査に続いて語音聴力検査が実施される。語音聴力検査は、言葉を聞き取る能力や聞き分ける能力を調べる検査である。
【0051】
純音聴力検査及び語音聴力検査においては、気導聴力及び骨導聴力が検査される。気導聴力の検査においては気導受話器から音を出力し、骨導聴力の検査においては骨導受話器の振動子を振動させて、それぞれ被検者の裸耳の聴力が測定される。なお、純音聴力検査についてはさらに後述する。
【0052】
ステップS30:次に、聴力検査の結果に応じて補聴器の利得設定等が調整される。
【0053】
ステップS40:その上で、音場装用閾値測定(音場での補聴器装用閾値の測定)が実施される。音場装用閾値測定は、音場における補聴器を装用した状態での聴力を測定するものであり、検査音はスピーカから発せられる。そして、音場装用閾値測定の結果に応じて、補聴器の再調整がなされる。なお、本実施形態においては、音場装用閾値測定及び補聴器の再調整が同時並行して自動で実行される。なお、音場装用閾値測定については、別のフローチャートを参照しながら詳しく後述する。
【0054】
ステップS50:音場装用閾値測定を終えた後に、必要があれば、音場語音聴力検査が実施される。音場語音聴力検査は、音場において言葉を聞き取る能力を調べる検査であり、音場装用閾値測定と同様に、検査音(言葉)はスピーカから発せられる。
【0055】
以上の手順を終えると、補聴器のフィッティングが終了する。
【0056】
なお、補聴器の調整を行う補聴器フィッターは、通常は検査や測定を行う人(以下、「検査者」と称する。)と同一人物であり、補聴器フィッティングの全ての手順を担うが、一部の手順を別の人物が担う場合もある。例えば、医療機関での補聴器フィッティングにおいては、補聴器の調整は言語聴覚士が行う一方、検査や測定は臨床検査士が行う場合もある。
【0057】
〔純音聴力検査〕
図5は、純音聴力検査の流れを示すフローチャートである。
【0058】
日本では、純音聴力検査で用いる音圧、周波数及びそれらの精度等がJIS T1201-1に規定されており、この規定に則って純音聴力検査が実施される。純音聴力検査においては、気導聴力の検査後に、必要に応じて骨導聴力の検査がなされる。また、各検査は片耳ずつ、例えば右耳→左耳の順で実施される。すなわち、気導聴力と骨導聴力の両方の検査が実施される場合には、例えば右耳の気導聴力→左耳の気導聴力→右耳の骨導聴力→左耳の骨導聴力の順で検査が実施されることとなる。
【0059】
図5に図示されているフローチャートは、各検査において測定される周波数の順序の一例を表している。JIS T1201-1では、125Hz~8kHzの11周波数が規定されているが、このうち、通常測定される周波数を実線枠で囲んで示し、状況に応じて測定される周波数を破線枠で囲んで示している。以下、右耳の気導聴力を検査する流れを説明する。
【0060】
ステップS100:最初に、周波数を1kHzに設定し、音圧は小さい音圧から徐々に(例えば、5dBずつ)上げていく。被検者は、気導受話器から検査音が聞こえたら応答ボタンを押下する(以下、このような手法を「上昇法」と称する。)。応答ボタンが押下されたら、音圧を一旦20dB下げてから再び徐々に上げていき、被検者は、検査音が聞こえたら応答ボタンを再び押下する。被検者の応答を3回確認したら、1kHzでの閾値を定める。なお、定められた閾値は、オージオグラムに記録する。
【0061】
ステップS102~S112:続いて、周波数を1オクターブずつ上げ、2kHz、4kHz、8kHzの各周波数について、ステップS100と同様の手順で被検者の応答を確認し、各周波数での閾値を定める。必要に応じて、1.5kHz、3kHz、6kHzのうち必要な周波数を選択し、より詳しく確認を行う場合もある。
【0062】
ステップS114:8kHzまで確認を行ったら、一旦1kHzに戻る。なお、ここで改めて1kHzについての確認を行ってもよいし、確認せずに次の周波数に移行してもよい。
【0063】
ステップS116~S122:今度は、周波数を1オクターブずつ下げ、500Hz、250Hz、125Hzについて、ステップS100と同様の手順で被検者の応答を確認し、各周波数での閾値を定める。必要に応じて、750Hzの確認を行う場合もある。
【0064】
以上の手順を終えると、右耳の気導聴力の検査が終了し、これに続いて左耳の気導聴力の検査が右耳と同様の流れで実施されることとなる。なお、非検査耳には通常イヤーマフや耳栓を用いて遮音するが、非検査耳側の受話器からマスキング音を出力してもよい。但し、非検査耳の聴力が検査耳の聴力より著しく低い場合には、遮音しない場合もある。
【0065】
上述した周波数の順序はあくまで一例であり、これに限定されない。例えば、実線枠で囲った周波数について先ず確認を行い、その結果で必要があると判断されたら、破線枠で囲った周波数のうちいずれかについての確認を行ってもよい。また、必要があれば、測定周波数の追加や削除を行ってもよい。なお、骨導聴力の検査においては、骨導振動子の精度に関する事情や周波数の重要度を考慮し、8kHz及び125Hzでの確認は行われない。
【0066】
図6は、純音聴力検査のオージオグラムの一例を示す図である。
【0067】
図示の例では、気導聴力及び骨導聴力の両方の検査結果が記録されている。表中の「○」は右耳の気導聴力を示しており、「×」は左耳の気導聴力を示しており、「[」は右耳の骨導聴力を示しており、「]」は左耳の骨導聴力を示している。このオージオグラムから、被検者の平均聴力レベルは、3分法で右耳が45.0dB、左耳が21.7dBであり、右耳が左耳よりも聴力レベルが低いことが分かる。
【0068】
こうした純音聴力検査の結果に基づいて、補聴器フィッターにより各周波数における補聴器装用閾値の目標値(目標レベル)や奨励する補聴器の利得が設定される。推奨する補聴器の利得は、ハーフゲイン法やNAL-NL1法をはじめとする種々の処方式から選択された適切な処方式を用いて算出される。そして、目標レベルの音が聞こえるようにするために、補聴器に推奨する利得設定を先ず行い(図4中のステップS30)、その上で、音場装用閾値測定及び補聴器の再調整がなされることとなる。
【0069】
なお、本実施形態においては、利得設定が誤って大きな値で設定された場合における聴覚保護や、上昇法により閾値を測定することを考慮し、最初に設定される補聴器の利得設定値は、奨励する利得設定よりも低い設定とすることが好ましい。例えば、最初に設定される利得設定値は、奨励する利得設定より3~7dB程度低い値とすることが好ましい。設定した利得より小さな利得で目標レベルの音を聞き取ることができる場合もあるからである。ただし、最初に設定される利得設定値は低いほど(例えば10dB低い値)設定に伴うリスクは下がるが、逆に測定時間も長くなってしまうため、奨励する利得設定に対して下げる幅と測定時間との適切なバランスを考慮して設定を行う必要がある。
【0070】
〔音場装用閾値測定処理〕
図7は、本実施形態における音場閾値測定処理の手順例を示すフローチャートである。
【0071】
音場閾値測定処理は、所望の補聴器装用閾値となるように、補聴器の利得調整を、補聴器フィッティングシステム100を構成する各機能部1~6の連携により人手を介することなく実行する処理であり、制御部5(コンピュータ40に実装された制御プログラム)により処理の実行が制御される。以下、手順例に沿って説明する。
【0072】
ステップS200:制御部5は、音発生部1に測定周波数を設定させる(音制御部)。なお、音場閾値測定処理において測定される周波数は、基本的には上述した純音閾値検査(図4)における場合と同様である。例えば、当該ステップの最初の実行時には、音発生部1は、測定周波数を「1kHz」に設定する。
【0073】
ステップS202:制御部5は、アンプ部2に測定周波数での目標レベルに応じた音圧を校正値を踏まえて設定させる(音制御部)。
【0074】
ステップS203:制御部5は、検査音の出力を開始させる(音制御部)。具体的には、制御部5は、音発生部1に測定周波数の検査音を発生させ、アンプ部2に検査音を設定された音圧に増幅させて出力させる。これにより、提示部3から検査音が提示される。
【0075】
ステップS204:制御部5は、応答ボタンが押下されたか否かを確認する(監視部)。制御部5は、応答ボタンの状態、すなわち応答部4からの信号入力の有無を監視しており、信号入力があれば応答ボタンが押下されたことを検知できる。確認の結果、応答ボタンが押下されない場合には(ステップS204:No)、制御部5は、ステップS205を実行する。
【0076】
一方、応答ボタンが押下された場合には(ステップS204:Yes)、制御部5は、現在の利得設定が適切であるとして、ステップS207を実行する。なお、ステップS203とステップS204を複数回繰り返し、過半数で応答ボタンの押下がなされたことを確認してからステップS207に進み、半数以下でステップS205に進んでもよい。
【0077】
ステップS205:制御部5は、所定時間が経過したか否かを確認する(監視部)。所定時間が未だ経過していない場合には(ステップS205:No)、制御部5は、ステップS204に戻る。一方、所定時間が経過した場合には(ステップS205:Yes)、制御部5は、現在の利得設定が不適切であるとして、ステップS206を実行する。所定時間の設定に関しては、音が提示され、被検者が音を認知し、応答ボタンを操作するために必要な時間を設定することが好ましい。制御部5にて所定時間の設定を可変できることが好ましい。所定時間の例としては、約2秒があげられる。ただし、加齢などにより音の認知やボタン操作の反応により時間がかかることが想定される。そのような場合には、約3~4秒に設定することが好ましい。一方、所定時間が長くなりすぎると全体的な測定時間が長くなり、被検者及び検査者の時間的な負担が増えることも想定されるため、負担と反応の正確性とのバランスを考慮して適切に設定することが好ましい。
【0078】
ステップS206:制御部5は、補聴器の利得設定を予め定められたアルゴリズムに従って調整する(補聴器制御部)。例えば、制御部5は、補聴器通信部6を通じて補聴器の内部メモリに記憶されている利得設定を一段階上げて更新する。なお、補聴器の機能及びそれらの機能に対応する設定値については、別の図面を用いてさらに後述する。
【0079】
ステップS207:制御部5は、アンプ部2に検査音の出力を停止させる(音制御部)。これにより、提示部3から検査音が提示されなくなる。
【0080】
ステップS208:制御部5は、未測定の周波数が残っているか否かを確認する(音制御部)。具体的には、制御部5は、音場装用閾値測定の対象とする周波数のうち、未だ測定していない周波数が残っている場合には(ステップS208:Yes)、ステップS200に戻り、残りの周波数について、ステップS200~S207の手順を繰り返す。例えば、測定対象とする周波数が1kHz、2kHz、4kHz、8kHz、500Hz、250Hz、125Hzの7周波数である場合には、これら7周波数について、それぞれステップS200~S207の手順を実行することとなる。
【0081】
一方、未測定の周波数が残っていない場合、すなわち測定対象とする全ての周波数についての測定を終えた場合には(ステップS208:No)、音場装用閾値測定処理が終了する。
【0082】
このように、本実施形態の音場閾値測定処理においては、各周波数にて目標レベルの音圧による検査音が提示され、それに対し被検者から応答があれば(応答ボタンが押下されれば)、利得設定は適切であるとして、次の周波数の測定に移行する。これに対し、所定時間内に被検者の応答がなければ(応答ボタンが押下されなければ)、利得設定は不適切であるとして、補聴器の利得設定を上げて、再び被検者の応答を確認し、適切な利得設定になるまでこの手順が繰り返される。したがって、音場閾値測定処理によれば、全ての周波数についての補聴器の利得設定が自動で進行し、同時に補聴器装用閾値も得られる。
【0083】
音場閾値測定処理は、測定対象の全ての周波数について1回ずつ測定を行ったら終了としてもよいし、確認のために、全ての周波数、又は、確認を要する周波数だけを対象として、再び音場閾値測定処理を実行してもよい。また、測定結果から補聴器の再設定が必要とされる場合には、適宜実施する。
【0084】
なお、上記の手順例はあくまで一例であり、これに限定されない。例えば、補聴器の利得設定が所望の音場閾値に達するまでの間、上述した一連の手順を繰り返し実行するよう構成することも可能であるが、想定外の事態により実行が延々と繰り返されることを避けるため、所定の回数で実行を打ち切るよう構成することが好ましい。
【0085】
また、音場装用閾値測定の対象とする周波数は、基本的には純音聴力検査における周波数と同様であるが、補聴器の利得調整の仕様に応じて、周波数を追加してさらに細やかに測定できるよう構成してもよいし、特定の周波数(例えば、125Hzや8kHzに対応する利得調整ポイントが搭載されていない補聴器の場合の125Hz及び8kHz)については、音場装用閾値測定処理では測定を行わずに、音場装用閾値測定の対象外とするか、或いは、純音聴力検査における場合と同様に、検査音圧を徐々に上げていき被検者による応答に応じて音場装用閾値測定をするか、を予め選択できるように構成してもよい。
【0086】
どの程度の細やかさで装用閾値の測定及び補聴器の再調整を繰り返すかは、補聴器の利得設定の細かさやフィルタバンクのオーバーラップ度合い等に依存する。例えば、1kHzでの測定を行ってその利得設定を調整した後に、2kHzでの測定を行ってその利得設定を調整したことで、2kHzの利得設定に引きずられて1kHzの音響利得にも影響が出てしまう場合には、改めて1kHzでの確認を行い、所望の状態になっていなければ、装用閾値の測定及び補聴器の再調整を再度実行するよう制御してもよい。
【0087】
なお、上記の手順例においては、応答ボタンが押下された場合に補聴器の利得設定を上げているが、これに加えて、応答ボタンが所定時間を超えて押下され続けた場合には、補聴器の利得設定を下げるように制御してもよい。また、利得設定を可能とする範囲(利得設定の上限値及び下限値)を定め、その範囲内で利得設定を上げる又は下げる制御を行ってもよい。そのような構成とする場合に、制御により上限値又は下限値に達したものの目標レベルに収束していない場合には、その旨をコンピュータ40の画面にアラートとして表示してもよい。
【0088】
また、上記の手順例においては、補聴器の利得調整の制御のみを行っているが、利得以外の設定値を併せて制御してもよい。例えば、音場装用閾値測定に影響を与えうる騒音抑制機能、指向性機能、突発音抑制機能、ハウリング抑制機能等に対する設定についても制御を行うよう構成し、測定開始前にこれらの機能をOFFにし、測定終了後に再び元の設定に戻すように制御を行ってもよい。或いは、利得設定の結果により、それらの機能の奨励設定が元の設定と相違する場合には、測定に基づく利得設定値に基づいて各設定を適切な値に設定するよう制御してもよい。
【0089】
補聴器を両耳装用する被検者の場合には、非検査耳の補聴器から検査耳の検査周波数に合わせてマスキング音を提示するが、そのような制御を所定のアルゴリズムに基づいて行ってもよい。例えば、検査耳で1kHzの測定を行う際に、非検査耳の補聴器から、1kHzに対応したバンドノイズ等を非検査耳の聴力レベルに合わせた適切な音圧で提示するように制御してもよい。
【0090】
〔補聴器の機能及び設定〕
図8は、補聴器の機能及び設定の一例を説明する図である。
【0091】
現在、多くの補聴器にはDSP(Digital Signal Processor)が搭載されている。そうした補聴器においては、音質及び音量の調整に関する各種の設定が内部メモリに記憶されており、補聴器の音質や音量は、これらの設定に基づいてデジタル信号処理が行われることで調整される。
【0092】
図8中(A):或る補聴器におけるデジタル信号処理に関する機能ブロック図である。この補聴器に入力される音は、2つのマイクロホンで電気信号に変換され、さらにA/Dコンバータでデジタル信号に変換されてから、デジタル信号処理によりDSPに実装された各種の機能が適用されて音質及び音量が調整されたのち、デジタル信号がD/Aコンバータで電気信号に変換され、最終的にイヤホンで音に変換されて出力される。
【0093】
図示されているように、この補聴器には、フィルタバンクにより分割された周波数帯域毎の音響利得調整機能(Band1-10)、音響圧縮処理機能(CH1-4:AGC-i)、出力制限機能(CH1-10:AGC-o)等が搭載されており、これらの機能によって音質及び音量が調整される。また、その他に、指向性機能、騒音抑制機能(NR)、突発音抑制機能(PNS)、ハウリング抑制機能(AFBC)が搭載されている。
【0094】
図8中(B):各機能に対応する設定の一例を示す図である。図8中(A)に示される各機能に関する設定として、例えば、Band4(1kHz)の音響利得(BandGain)は、32段階中の「12」に設定されており、Band5(1.5kHz)の音響利得は、32段階中の「13」に設定されている。これらの設定は、補聴器のフィッティングを行うコンピュータのモニタ上では、人間が理解しやすいように、図8中(B)に示されるような10進表記の設定値を用いた表やグラフ等で表現される。
【0095】
これに対し、補聴器の内部メモリでは、各設定値に応じた値、具体的には各設定値が設定範囲内の何段階目かを示す値に対応するバイナリ値が記憶され、それらが連結されてなる「0」と「1」が羅列した文字列として記憶されている。例えば、Band4(1kHz)の音響利得の設定値「12」は、メモリ上では「01101」と記憶されており、Band5(1.5kHz)の音響利得の設定値「13」は、メモリ上では「01110」と記憶されている。なお、各設定値は、記憶されているメモリ上のアドレスを特定することで参照や更新が可能である。
【0096】
このような補聴器を用いてフィッティングを行う場合を検討する。例えば、1kHzについて、被検者の聴力レベルと処方式から音響利得が算出され、音響利得の初期設定値が「12」と算出された場合には、音場装用閾値測定の前段階での補聴器調整(図4中のステップS30)において、1kHzの音響利得を「12」に設定した上で、音場装用閾値測定処理(図7)が実行される。
【0097】
音場装用閾値測定処理では、1kHzでの目標レベルが35dBHLである場合には、先ず、音発生部1で測定周波数が「1kHz」に設定されてその検査音が発生し、アンプ部2で目標レベル「35dBHL」に対応する音圧が設定されて検査音がその音圧に増幅され(図7中のステップS200~S203)、これにより提示部3から検査音が提示される。その後、所定時間を経過しても被検者により応答ボタンが押下されなければ(図7中のステップS205:Yes)、制御部5により補聴器の利得設定を1段階上げる制御、すなわち設定値を「12」から「13」に上げる制御がなされ(図7中のステップS206)、メモリ上に記憶されている設定値が「12」に対応する「01101」から「13」に対応する「01110」に更新される。そして、所定時間を経過しても応答ボタンが押下されなければ、制御部5により補聴器の利得設定をさらに1段階上げる制御、すなわち設定値を「13」から「14」に上げる制御がなされ、メモリ上に記憶されている設定値が「13」に対応する「01110」から「14」に対応する「01111」に更新される。その後も、応答ボタンが押下されなければ、同様の制御を繰り返される。一方、応答ボタンが押下されれば、現在の設定値が適切であるとして、次の周波数の測定に移行する(図7中のステップS208:Yes)。なお、一度に調整される利得設定は1段階に限定されない。例えば、利得設定を1段階変更することにより変化する音響利得が0.5dB相当である場合には、2段階(1.0dB相当)や3段階(1.5dB相当)を一度に調整するようにアルゴリズムを組んでもよい。より具体的には、図7中のステップS206において、設定値を「12」から一回の調整で「14」に上げる制御がなされてもよい。
【0098】
なお、この補聴器におけるBand7の2.5kHzは、純音聴力検査では通常測定を行わない周波数であるが、そのような周波数については、音場装用閾値測定処理により測定を行ってもよいし、近接する2kHz及び3kHzの測定結果に基づいて平均値をとったり、或いは予め規定した方法に沿って重み付けしたりすることにより音響利得を設定してもよい。このとき、参照する周波数の範囲をさらに拡げて1.5kHzや4kHz等も考慮してもよい。
【0099】
これに対し、この補聴器におけるBand5の1.5kHzは、純音聴力検査の測定候補に含まれる周波数ではあるが、そのような周波数であっても、測定の簡略化を優先する場合には、敢えて音場装用閾値測定処理の測定対象とせずに、近接する1kHz及び2kHzの測定結果に基づいて音響利得を設定してもよい。このとき、参照する周波数の範囲をさらに拡げて500Hzや4kHz等も考慮してもよい。
【0100】
ところで、制御部5と補聴器との間の通信方式は、補聴器の仕様に依存する。例えば、メモリ上のデータをブロック単位で変更する方式の場合には、変更対象の設定値データを含むブロックのデータをまるごと送信し、補聴器通信部6を介して変更する。また、例えば、メモリ上のデータをビット単位で変更可能な方式の場合には、変更対象の設定値ビットのみを送信し、補聴器通信部6を介して変更する。いずれにせよ、制御部5による補聴器の設定値の制御は、補聴器の仕様に応じた通信方式により、補聴器通信部6を通じて、既定のアルゴリズムに基づいて行われる。
【0101】
なお、図8に示した補聴器の設定は、あくまで一例として挙げたものである。補聴器に搭載されている機能は機種によって様々であり、それらの機能に応じた設定が記憶されている。また、周波数帯域の分割態様についても、機種により異なる場合がある。
【0102】
図9は、音場閾値測定のオージオグラムを示す図である。
【0103】
表中の「△」は、補聴器非装用時の閾値(補聴器を装用していない状態での音の聞こえ)を示しており、「▲」は、補聴器装用時の閾値(補聴器を装用した状態での音の聞こえ)を示している。なお、図9に例示されたオージオグラムは、図6に例示された純音聴力検査のオージオグラムとは別の被検者のものである。
【0104】
本実施形態の音場装用閾値測定処理を実行すれば、音場装用閾値測定と補聴器の音響利得の再調整を自動で進行させることができ、補聴器の音響利得を初期設定した後に行う全ての測定周波数についての一連の処理を、人手を介することなく完結させることが可能となる。
【0105】
〔比較例:音場装用閾値測定処理〕
図10は、一部に自動化を含む一般的な音場装用閾値測定処理の手順例を比較例として示すフローチャートであり、従来の一般的な音場装用閾値測定の流れを表している。なお、図10においては、特に人手を介する手順を二重線枠で囲んで示している。なお、全ての手順が人手を介して行われる場合もあり、依然として広く実施されている。以下、手順例に沿って説明する。
【0106】
ステップS300:オージオメータ(又は補聴効果測定装置)で、測定周波数が設定される。例えば、最初の測定では、測定周波数が「1kHz」に設定される。
【0107】
ステップS302:オージオメータ(又は補聴効果測定装置)で、測定周波数での目標レベルに応じた音圧が校正値を踏まえて設定される。
【0108】
ステップS303:オージオメータ(又は補聴効果測定装置)で設定された測定周波数及び音圧による検査音の出力が開始される。これにより、検査音がスピーカから提示される。
【0109】
ステップS304:オージオメータ(又は補聴効果測定装置)は、応答ボタンが押下されたか否かを確認する。確認の結果、応答ボタンが押下されない場合には(ステップS304:No)、ステップS305を実行する。
【0110】
一方、応答ボタンが押下された場合には(ステップS304:Yes)、ステップS307を実行する。なお、測定音の提示を複数回行い、過半数で応答ボタンの押下がなされたことを確認してからステップS307に進む場合もある。
【0111】
ステップS305:オージオメータ(又は補聴効果測定装置)は、所定時間が経過したか否かを確認する。所定時間が未だ経過していない場合には(ステップS305:No)、ステップS304に戻る。一方、所定時間が経過した場合には(ステップS305:Yes)、ステップS306に進む。
【0112】
ステップS306:補聴器フィッターは、補聴器の現在の利得設定が不適切であると判断する。
【0113】
ステップS307:オージオメータ(又は補聴効果測定装置)で検査音の出力が停止される。これにより、検査音がスピーカから提示されなくなる。
【0114】
ステップS308:オージオメータ(又は補聴効果測定装置)は、未測定の周波数が残っているか否かを確認する。確認の結果、未測定の周波数が残っている場合には(ステップS308:Yes)、ステップS300に戻り、残りの周波数について、ステップS300~S307の手順を繰り返す。
【0115】
一方、未測定の周波数が残っていない場合、すなわち測定対象とする全ての周波数についての測定を終えた場合には(ステップS308:No)、ステップS310に進む。
【0116】
ステップS310:補聴器フィッターは、利得設定が不適切な周波数があるか否かを確認する。補聴器フィッターは、上記のステップS306でなされた判断の記録を参照することにより、利得設定が不適切な周波数の有無を確認可能である。確認の結果、利得設定が不適切な周波数がある場合には(ステップS310:Yes)、ステップS312に進む。一方、利得設定が不適切な周波数がない場合、すなわち、全ての周波数に対する利得設定が適切である場合には(ステップS310:No)、音場装用閾値測定処理が終了する。
【0117】
ステップS312:補聴器フィッターは、補聴器を再調整する。具体的には、補聴器フィッターは、利得設定が不適切であると判断された周波数に対する音響利得を上げる設定を行う。
【0118】
ステップS314:補聴器フィッターは、再測定する周波数を選択する。具体的には、補聴器フィッターは、前ステップS312で利得設定を再調整した周波数をリストアップしてオージオメータ(又は補聴効果測定装置)に設定する。
【0119】
その後、ステップS300に戻り、再測定する周波数に対して、ステップS300~S308が繰り返し実行される。そして、このような一連の処理が、全ての周波数に対する利得設定が適切になるまで繰り返されることとなる。
【0120】
このように、比較例の音場装用閾値測定処理においては、補聴器の利得設定が不適切であるか否かを補聴器フィッターが判断し、その周波数についての利得設定の再調整を補聴器フィッターが行うため、その度に測定が中断されるため、非常に効率が悪い。また、中断により測定時間が長くなれば、集中力の低下は避けられず、被検者には、提示された検査音に対し誤った応答をする可能性が生じるとともに、補聴器フィッターには、補聴器に誤った利得設定を行う可能性が生じる。このように、比較例の音場装用閾値測定処理は、補聴器フィッターに対しても被検者に対しても負荷がかかる。そして、中断して補聴器の再調整を行う回数が増えるほど、精神的にも肉体的にも大きな負担となる。
【0121】
これに対し、上述した実施形態の音場装用閾値測定処理(図7)によれば、全ての周波数についての音場装用閾値測定及び補聴器の利得設定の再調整が、補聴器フィッターを介することなく自動で進行するため、音場装用閾値測定と補聴器の再調整を効率よく行うことができる。その結果、測定時間が短縮されることから、被検者や補聴器フィッターにかかる負荷を軽減することができる。したがって、被検者による検査音に対する誤応答や補聴器フィッターによる補聴器の誤調整を抑制することができ、補聴器の再調整率の低減に寄与することが可能となる。
【0122】
〔変形例1〕
図11は、上述した実施形態の変形例1(補聴器フィッティングシステム102)の構成を説明する図である。
【0123】
変形例1においては、音発生部1及びアンプ部2に加え、提示部5(制御プログラム)が測定装置60(62)内に設けられており、提示部3がスピーカ20に設けられており、応答部4が応答装置30に設けられており、補聴器通信部6が通信機器50に設けられている。すなわち、変形例1は、提示部5(制御プログラム)が測定装置60(62)内に設けられており、コンピュータが不要な点において、上述した実施形態と異なっている。
【0124】
〔変形例2〕
図12は、上述した実施形態の変形例2(補聴器フィッティングシステム104)の構成を説明する図である。
【0125】
変形例2においては、音発生部1及び制御部5(制御プログラム)がコンピュータ70に設けられており、アンプ部2が増幅器80に設けられており、提示部3がスピーカ20に設けられており、応答部4が応答装置30に設けられており、補聴器通信部6が通信機器50に設けられている。すなわち、変形例2は、音発生部1がコンピュータ70に設けられるとともにアンプ部2が増幅器80に設けられており、オージオメータ(又は補聴効果測定装置)が不要な点において、上述した実施形態と異なっている。
【0126】
変形例2においては、検査音はコンピュータ70で発生するが、測定に十分な音圧で出力することができないため、増幅器80が別途用いられている。増幅器80は、専用の増幅装置に限定されず、測定に十分な性能を有していれば(検査音の周波数や出力音圧の安定性、雑音レベルや高調波ひずみの小ささ等の要件を満たしていれば)よい。例えば、コンピュータ70から音圧を適切に制御することが可能なオーディオアンプ等でもよい。
【0127】
〔変形例3〕
図13は、上述した実施形態の変形例3(補聴器フィッティングシステム106)の構成を説明する図である。
【0128】
変形例3においては、音発生部1、制御部5(制御プログラム)及び補聴器通信部6がタブレット端末90に設けられており、アンプ部2が増幅器80に設けられており、提示部3がスピーカ20に設けられており、応答部4が無線式の応答装置32に設けられている。
【0129】
タブレット端末には、WiFiやBluetooth等に対応した無線通信の機能が搭載されているのが一般的である。変形例3では、タブレット端末90に搭載された無線通信の機能を利用し、アンプ部2との間の通信、応答部3との間の通信、補聴器HAとの間の通信が、全て無線通信で行われる。すなわち、変形例3においては、タブレット端末90が通信機器を兼ねているため、独立した通信機器は不要となる。
【0130】
〔変形例4〕
図14は、上述した実施形態の変形例4(補聴器フィッティングシステム108)の構成を説明する図である。
【0131】
変形例4においては、音発生部1、応答部4、制御部5(制御プログラム)及び補聴器通信部6がタブレット端末92に設けられており、アンプ部2が増幅器80に設けられており、提示部3がスピーカ20に設けられている。
【0132】
タブレット端末92の画面には、応答ボタンが表示される。被検者は、測定中にタブレット端末92を持ち、検査音が聞こえたら画面上の応答ボタンをタップすることで応答を行う。すなわち、変形例4においては、タブレット端末92が応答ボタンを兼ねているため、独立した応答装置は不要となる。
【0133】
なお、タブレット端末92は、応答ボタンのタップに伴いバイブレータを振動させてもよい。バイブレータは、タブレット端末92に予め搭載されたものを利用してもよいし、搭載されていなければ別途搭載して利用してもよい。
【0134】
変形例4は、測定が開始されてから終了するまでのタブレット端末92の操作が被検者により行われることを想定した態様である。そのため、例えば一人の検査者(補聴器フィッター)が、それぞれ別の測定室に居る複数の被検者を同時に受け持って測定を行うことが可能となる。
【0135】
なお、万一の事態に備えて、タブレット92を制御するためのリモコンを別途設けてもよい。そのような構成によれば、例えば、タブレット端末92が異常動作をして想定外の大きな音が提示された場合に、検査者(補聴器フィッター)が測定室の外部からリモコンを操作することにより、タブレット92を制御し、測定を中断又は強制終了したり、或いは、アンプ部3からの出力を強制的に遮断したりする等の対処を行うことが可能となる。
【0136】
〔本発明の優位性〕
以上のように、上述した実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
【0137】
(1)測定対象とする全ての周波数についての、検査音の制御を含めた音場装用閾値測定及び補聴器調整を連続して自動で進行させるため、音場装用閾値測定及び補聴器調整、ひいては補聴器フィッティングの作業を効率化することができる。
【0138】
(2)音場装用閾値測定及び補聴器調整の作業が効率化されるため、補聴器フィッティングの所要時間を従来よりも短縮することができ、補聴器装用者(被検者)や補聴器フィッター(検査者)にかかる負担や時間的制約を軽減することができる。
【0139】
(3)補聴器装用者や補聴器フィッターにかかる負担が軽減されるため、補聴器装用者による検査音に対する誤応答や、補聴器フィッターによる補聴器の誤調整を抑制することができ、補聴器の再調整率の低減に寄与することが可能となる。
【0140】
(4)補聴器フィッティングの作業が効率化されて所要時間が短縮されるため、補聴器フィッターの顧客一人当たりの処置や接客時間を削減することができ、より多くの顧客を受け持つことが可能となる。
【0141】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、変形例1~4の他にも種々に変形して実施することが可能である。
【0142】
例えば、上述した実施形態における測定(検査)と補聴器調整とを自動制御する態様は、音場語音聴力検査の場面に適用することも可能である。例えば、補聴器装用者に音場語音聴力検査を実施した際に、その結果が最近実施した語音聴力検査の結果と著しく異なる場合には、補聴器の利得設定が適切でないことが疑われる。そのような場合に、上述した実施形態における閾値測定に代えて、語音聴力検査を自動で行うアルゴリズム(例えば、特願2020-015001等)に基づいて語音聴力検査を行うと同時に、補聴器の利得設定を自動調整するように制御を行ってもよい。
【0143】
その他、補聴器装用閾値調整システム100,102,104,106,108に関する説明の過程で挙げた構成や数値等はあくまで例示であり、本発明の実施に際して適宜に変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0144】
1 音発生部 (提示工程)
2 アンプ部 (提示工程)
3 提示部 (提示工程)
4 応答部
5 制御部 (監視工程、音制御部、監視部、補聴器制御部)
6 補聴器通信部
10 オージオメータ
12 補聴効果測定装置
20 スピーカ
30 応答装置
40 コンピュータ
50 通信機器
80 増幅器
90 タブレット端末
100 補聴器フィッティングシステム
図1
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