IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マキタの特許一覧 ▶ ミネベア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図1
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図2
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図3
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図4
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図5
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図6
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図7
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図8
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図9
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図10
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図11
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図12
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図13
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図14
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図15
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図16
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図17
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図18
  • 特許-ネジ締め機及びトルクセンサ 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ネジ締め機及びトルクセンサ
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20241007BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20241007BHJP
   G01L 3/10 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B25B23/14 610B
B25F5/00 G
G01L3/10 311
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020134020
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030201
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 崇陽
(72)【発明者】
【氏名】井筒 悠太
(72)【発明者】
【氏名】江口 功太郎
(72)【発明者】
【氏名】李 奎
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-061465(JP,U)
【文献】特開平09-029654(JP,A)
【文献】特開2018-062268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14;
B25F 5/00;
G01L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ及び前記ロータの周囲に配置されるステータを有するモータと、
前記モータよりも前方に配置され、前記モータにより駆動され、ビットを取付け可能な出力軸と、
前記ロータのロータシャフトの周囲に配置され、前記出力軸に掛かるトルクが伝達要素を介して伝達し、前記出力軸に係るトルクで間接的に捩じられる中空の捩じれ部と、
前記捩じれ部に配置される歪ゲージと、
前記歪ゲージの後方に配置され、前記歪ゲージからの信号が入力される増幅回路と、
記捩じれ部の前端部の周囲に配置され、前記捩じれ部と一体的に形成され、前記出力軸に連結される第1の板状部と、
前記増幅回路が配置される前方を向く前面を有し前記捩じれ部の後端部の周囲に配置され、前記捩じれ部と一体的に形成され、前記歪ゲージ及び前記増幅回路を収容するギヤケースに固定される第2の板状部、と、を備え
前記歪ゲージ及び前記増幅回路は、いずれもフレキシブル基板上に固定される、
ネジ締め機。
【請求項2】
前記モータは、ロータ及び前記ロータの周囲に配置されるステータを有し、
前記捩じれ部は、前記ロータのロータシャフトの周囲に配置され、
前記ロータシャフトの前端部は、前記第1の板状部よりも前方に配置される、
請求項1に記載のネジ締め機。
【請求項3】
前記第1の板状部よりも前方に配置される遊星歯車機構を備え、
前記第1の板状部は、前記遊星歯車機構を介して前記出力軸に連結される、
請求項に記載のネジ締め機。
【請求項4】
前記遊星歯車機構は、前記捩じれ部よりも前方に配置され、前記第1の板状部の外周面に設けられたギヤに噛み合うインターナルギヤと、前記ロータシャフトの前端部に設けられたピニオンギヤとを有する、
請求項に記載のネジ締め機。
【請求項5】
前記歪ゲージは4つ配置されており、前記フレキシブル基板を折り曲げることによって、前記捩じれ部の周方向に並べて配置される、
請求項に記載のネジ締め機。
【請求項6】
前記増幅回路は、前記第2の板状部に、折り曲げられずに配置される、
請求項に記載のネジ締め機。
【請求項7】
前記増幅回路には、複数の第1リード線が接続されており、
前記第1リード線は、第1コネクタに接続されており、
前記モータを制御するための制御回路基板を備え、
前記制御回路基板には、複数の第2リード線が接続されており、
前記第2リード線は、第2コネクタに接続されており、
前記第1コネクタは、前記第2コネクタに接続される、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のネジ締め機。
【請求項8】
出力軸に係るトルクで間接的に捩じれる中空の捩じれ部と、
前記捩じれ部に配置される歪ゲージと、
前記歪ゲージの後方に配置され、前記歪ゲージからの信号が入力される増幅回路と、
記捩じれ部の前端部の周囲に配置され、前記捩じれ部と一体的に形成され、前記出力軸に連結される第1の板状部
前記増幅回路が配置される前方を向く前面を有し前記捩じれ部の後端部の周囲に配置され、前記捩じれ部と一体的に形成され、前記歪ゲージ及び前記増幅回路を収容するギヤケースに固定される第2の板状部、と、を備え
前記歪ゲージ及び前記増幅回路は、いずれもフレキシブル基板上に固定される、
トルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ネジ締め機及びトルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ネジ締め機に係る技術分野において、特許文献1に開示されているような工具が知られている。特許文献1において、工具は、トルクセンサとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-122429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品の組立工程において、ネジ締め機を用いるねじ締め作業が実施される。製品の管理のために、出力軸に掛かるトルクの検出信号を記録する場合がある。また、トルクの検出信号を増幅する増幅回路がネジ締め機に設けられる場合がある。トルクの検出信号を適正に記録するために、増幅回路に入力されるトルクの検出信号がノイズの影響を受けることを抑制する必要がある。
【0005】
本開示は、増幅回路に入力されるトルクの検出信号がノイズの影響を受けることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、モータと、モータにより駆動され、ビットを取付け可能な出力軸と、出力軸に掛かるトルクが伝達要素を介して伝達し、前記出力軸に係るトルクで間接的に捩じられる中空の捩じれ部と、捩じれ部と一体的に形成される板状部と、捩じれ部に配置される歪ゲージと、板状部に配置され、歪ゲージからの信号が入力される増幅回路と、を備える、ネジ締め機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、増幅回路に入力されるトルクの検出信号がノイズの影響を受けることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るネジ締め機を示す前方からの斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係るネジ締め機を示す側面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るネジ締め機を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る遊星歯車機構の近傍を抽出した斜視図である。
図5図5は、第1実施形態に係るトルクセンサを示す左前方からの斜視図である。
図6図6は、第1実施形態に係るトルクセンサを示す右前方からの斜視図である。
図7図7は、第1実施形態に係るトルクセンサを示す左後方からの斜視図である。
図8図8は、第1実施形態に係るトルクセンサを示す右側面図である。
図9図9は、第1実施形態に係るトルクセンサを示す左側面図である。
図10図10は、第1実施形態に係るトルクセンサを示す断面図である。
図11図11は、第1実施形態に係るトルクセンサからカバーを外した状態を示す左前方からの斜視図である。
図12図12は、第1実施形態に係る歪ゲージが固定されたフレキシブル基板及び増幅回路が固定されたフレキシブル基板を示す左前方からの斜視図である。
図13図13は、第1実施形態に係る歪ゲージが固定されたフレキシブル基板及び増幅回路が固定されたフレキシブル基板を示す右前方からの斜視図である。
図14図14は、第1実施形態に係る歪ゲージが固定されたフレキシブル基板を示す左前方からの斜視図である。
図15図15は、第1実施形態に係る歪ゲージが固定されたフレキシブル基板を示す右前方からの斜視図である。
図16図16は、第1実施形態に係るフレキシブル基板を示す左前方からの斜視図である。
図17図17は、第1実施形態に係るフレキシブル基板を示す右前方からの斜視図である。
図18図18は、第1実施形態に係る歪ゲージ及び増幅回路を示す回路図である。
図19図19は、第2実施形態に係るネジ締め機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
実施形態においては、「左」、「右」、「前」、「後」、「上」、及び「下」の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、ネジ締め機の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。
【0011】
ネジ締め機は、モータを動力源とする。モータの回転軸AXと平行な方向を適宜、軸方向、と称する。回転軸AXの周囲を周回する方向を適宜、周方向又は回転方向、と称する。回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。
【0012】
回転軸AXは、前後方向に延伸する。軸方向と前後方向とは一致する。軸方向一方側は、前方であり、軸方向他方側は、後方である。また、径方向において、回転軸AXに近い位置又は接近する方向を適宜、径方向内側、と称し、回転軸AXから遠い位置又は離隔する方向を適宜、径方向外側、と称する。
【0013】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。
【0014】
<ネジ締め機>
図1は、本実施形態に係るネジ締め機1を示す前方からの斜視図である。図2は、本実施形態に係るネジ締め機1を示す側面図である。図3は、本実施形態に係るネジ締め機1を示す断面図である。ネジ締め機1は、組立工場において使用される産業用の電動ドライバである。製品の組立工程において、ネジ締め機1によるねじ締め作業が実施される。組立工場として、自動車の組立工場が例示される。製品として、自動車が例示される。
【0015】
図1図2、及び図3に示すように、ネジ締め機1は、ハウジング2と、ギヤケース4と、バッテリ装着部5と、モータ6と、遊星歯車機構7と、出力軸8と、トルクセンサ9と、第1リード線11と、第2リード線12と、ファン13と、トリガスイッチ14と、正逆切換レバー15と、制御回路基板16と、制御回路基板ケース17とを備える。
【0016】
ハウジング2は、合成樹脂製である。ハウジング2は、左ハウジング2Lと、右ハウジング2Rとを含む。左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとは、ねじ2Sにより固定される。左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとが固定されることにより、ハウジング2が形成される。
【0017】
ハウジング2は、モータ収容部21と、グリップ部22と、制御回路基板収容部23とを有する。
【0018】
モータ収容部21は、モータ6を収容する。モータ収容部21は、筒状部を有する。モータ収容部21は、グリップ部22よりも上方に配置される。
【0019】
グリップ部22は、作業者に握られる。グリップ部22は、モータ収容部21よりも下方に配置される。グリップ部22は、モータ収容部21から下方に突出する。トリガスイッチ14は、グリップ部22に配置される。
【0020】
制御回路基板収容部23は、制御回路基板16を収容する。制御回路基板収容部23は、グリップ部22よりも下方に配置される。制御回路基板収容部23は、グリップ部22の下端部に接続される。前後方向及び左右方向のそれぞれにおいて、制御回路基板収容部23の外形の寸法は、グリップ部22の外形の寸法よりも大きい。
【0021】
ギヤケース4は、トルクセンサ9、遊星歯車機構7、及び出力軸8の一部を収容する。ギヤケース4は、モータ6よりも前方に配置される。ギヤケース4は、筒状である。ギヤケース4は、金属製である。本実施形態において、ギヤケース4は、アルミニウム製である。ギヤケース4は、モータ収容部21の前部の開口を覆うように配置される。ギヤケース4は、モータ収容部21に固定される。ギヤケース4の後部は、モータ収容部21の内側に配置される。モータ収容部21の少なくとも一部は、ギヤケース4の周囲に配置される。ギヤケース4の前部は、モータ収容部21よりも前方に配置される。
【0022】
バッテリ装着部5は、制御回路基板収容部23の下部に形成される。バッテリ装着部5は、バッテリパック20に接続される。バッテリパック20は、バッテリ装着部5に装着される。バッテリパック20は、バッテリ装着部5に着脱可能である。バッテリパック20は、二次電池を含む。本実施形態において、バッテリパック20は、充電式のリチウムイオン電池を含む。バッテリ装着部5に装着されることにより、バッテリパック20は、ネジ締め機1に電力を供給することができる。モータ6は、バッテリパック20から供給される電力に基づいて駆動する。制御回路基板16は、バッテリパック20から供給される電力に基づいて作動する。
【0023】
モータ6は、ネジ締め機1の動力源である。モータ6は、電動モータである。モータ6は、インナロータ型のブラシレスモータである。モータ6は、モータ収容部21に収容される。モータ6は、ステータ61と、ロータ62とを有する。ステータ61は、ロータ62の周囲に配置される。ロータ62は、回転軸AXを中心に回転する。
【0024】
ステータ61は、ステータコア61Aと、前インシュレータ61Bと、後インシュレータ61Cと、コイル61Dと、センサ回路基板61Eと、短絡部材61Fとを有する。
【0025】
ステータコア61Aは、筒状である。ステータコア61Aは、積層された複数の鋼板を含む。前インシュレータ61Bは、ステータコア61Aの前部に配置される。後インシュレータ61Cは、ステータコア61Aの後部に配置される。コイル61Dは、複数設けられる。複数のコイル61Dは、前インシュレータ61B及び後インシュレータ61Cを介してステータコア61Aに巻かれる。センサ回路基板61Eは、ロータ62の回転を検出する複数の回転検出素子を有する。センサ回路基板61Eは、後インシュレータ61Cに支持される。短絡部材61Fは、ヒュージング端子を介して複数のコイル61Dを接続する。短絡部材61Fは、後インシュレータ61Cに支持される。短絡部材61Fは、リード線(不図示)を介して制御回路基板16に接続される。
【0026】
ロータ62は、ロータコア62Aと、永久磁石62Bと、ロータシャフト63とを有する。
【0027】
ロータコア62Aは、ステータコア61A及びコイル61Dの内側に配置される。ロータコア62Aは、円筒状である。ロータコア62Aは、ロータシャフト63の周囲に配置される。ロータコア62Aは、積層された複数の鋼板を含む。永久磁石62Bは、複数設けられる。永久磁石62Bは、ロータコア62Aに保持される。ロータコア62Aは、軸方向に延伸する貫通孔を有する。貫通孔は、周方向に複数形成される。永久磁石62Bは、ロータコア62Aの複数(本実施形態では4つ)の貫通孔のそれぞれに配置される。
【0028】
センサ回路基板61Eの回転検出素子は、複数(本実施形態では4つ)の永久磁石62Bの磁界を検出することによって、ロータ62の回転を検出する。制御回路基板16は、回転検出素子の検出信号に基づいて、コイル61Dに駆動電流を供給する。
【0029】
ロータシャフト63は、軸方向に延伸する。ロータシャフト63は、回転軸AXを中心に回転する。ロータシャフト63の回転軸AXは、出力軸8の回転軸と一致する。ロータシャフト63の前部は、ベアリング64に回転可能に支持される。ロータシャフト63の後部は、ベアリング65に回転可能に支持される。ベアリング64は、トルクセンサ9に保持される。ベアリング65は、モータ収容部21に設けられたベアリング保持部67に保持される。ロータシャフト63の前端部は、ベアリング64よりも前方に配置される。ロータシャフト63の前端部は、ギヤケース4の内部に配置される。
【0030】
ロータシャフト63の前端部にピニオンギヤ71Sが設けられる。ロータシャフト63は、ピニオンギヤ71Sを介して、遊星歯車機構7に連結される。
【0031】
遊星歯車機構7は、ギヤケース4に収容される。遊星歯車機構7は、ロータシャフト63と出力軸8とを連結する。遊星歯車機構7は、ロータシャフト63の回転を減速し、ロータシャフト63よりも低い回転速度で出力軸8を回転させる。遊星歯車機構7は、モータ6が発生した回転力を出力軸8に伝達する動力伝達機構として機能する。遊星歯車機構7は、複数(本実施形態では3つ)のギヤを有する。遊星歯車機構7は、トルクセンサ9よりも前方に配置される。
【0032】
図4は、本実施形態に係る遊星歯車機構7の近傍を抽出した斜視図である。図3及び図4に示すように、遊星歯車機構7は、プラネタリギヤ71Pと、キャリア71Cと、サンギヤ72Sと、プラネタリギヤ72Pと、キャリア72Cと、インターナルギヤ70とを有する。
【0033】
プラネタリギヤ71Pは、複数設けられる。複数(本実施形態では3つ)のプラネタリギヤ71Pは、ピニオンギヤ71Sの周囲に配置される。複数のプラネタリギヤ71Pのそれぞれは、ピニオンギヤ71Sに噛み合う。キャリア71Cは、複数のプラネタリギヤ71Pを回転可能に支持する。サンギヤ72Sは、キャリア71Cの前方に配置される。サンギヤ72Sの直径は、キャリア71Cの直径よりも小さい。キャリア71Cとサンギヤ72Sとは一体である。キャリア71Cとサンギヤ72Sとは一緒に回転する。プラネタリギヤ72Pは、複数設けられる。複数のプラネタリギヤ72Pは、サンギヤ72Sの周囲に配置される。複数のプラネタリギヤ72Pのそれぞれは、サンギヤ72Sに噛み合う。キャリア72Cは、複数のプラネタリギヤ72Pを回転可能に支持する。インターナルギヤ70は、複数のプラネタリギヤ72Pの周囲に配置される。インターナルギヤ70は、ギヤケース4の内側に配置される。インターナルギヤ70は、回転しない。インターナルギヤ70は、トルクセンサ9に連結される。
【0034】
ロータシャフト63は、ピニオンギヤ71S、プラネタリギヤ71P、及びキャリア71Cを介して、サンギヤ72Sに連結される。サンギヤ72Sは、モータ6が発生する回転力により回転する。インターナルギヤ70は、サンギヤ72Sの周囲に配置される。複数のプラネタリギヤ72Pは、径方向においてサンギヤ72Sとインターナルギヤ70との間に配置される。複数のプラネタリギヤ72Pのそれぞれは、サンギヤ72Sに噛み合う。複数のプラネタリギヤ72Pのそれぞれは、インターナルギヤ70に噛み合う。キャリア72Cは、複数のプラネタリギヤ72Pを回転可能に支持する。キャリア72Cは、出力軸8に接続される。キャリア72Cは、回転軸AXを中心に回転する。
【0035】
モータ6の駆動によりロータシャフト63が回転すると、ピニオンギヤ71Sが回転し、プラネタリギヤ71Pがピニオンギヤ71Sの周囲を公転する。プラネタリギヤ71Pの公転により、キャリア71C及びサンギヤ72Sは、ロータシャフト63の回転速度よりも低い回転速度で回転する。サンギヤ72Sが回転すると、プラネタリギヤ72Pがサンギヤ72Sの周囲を公転する。プラネタリギヤ72Pの公転により、キャリア72Cは、キャリア71Cの回転速度よりも低い回転速度で回転する。このように、モータ6が駆動すると、キャリア72Cは、ロータシャフト63よりも低い回転速度で回転する。
【0036】
出力軸8は、モータ6により駆動される。出力軸8は、ビット(先端工具)を取付け可能である。出力軸8は、モータ6が発生する回転力により、ビットを取付けられた状態で回転する。出力軸8は、遊星歯車機構7を介してモータ6から伝達された回転力に基づいて回転する。出力軸8の少なくとも一部は、遊星歯車機構7よりも前方に配置される。
【0037】
出力軸8は、スピンドル81と、チャック82とを含む。
【0038】
スピンドル81は、モータ6から伝達された回転力に基づいて回転軸AXを中心に回転する。スピンドル81は、ベアリング83及びベアリング84により回転可能に支持される。スピンドル81は、キャリア72Cに接続される。キャリア72Cの回転により、スピンドル81は、回転軸AXを中心に回転する。スピンドル81は、断面が略6角形のビットが挿入される、同じく断面が略6角形の挿入孔81Aを有する。このビットと挿入孔の略6角形の形状によって、スピンドルに対してビットが回転方向に固定される。挿入孔81Aは、スピンドル81の前端部から後方に延伸するように形成される。チャック82は、挿入孔81Aに挿入されたビットの凹み部がボールを介して、前方への抜け止めをする。チャック82は、スピンドル81の前部の周囲に配置される。スピンドル81が回転することにより、回転方向に固定され、前方へと抜け止めされた状態のビットが回転する。
【0039】
トルクセンサ9は、出力軸8に掛かるトルクを検出する。出力軸8に掛かるトルクは、回転軸AXを中心に掛かる軸トルクである。ビットが出力軸8に取付けられた状態で、ねじ締め作業が実施される。トルクセンサ9により検出されるトルクは、ねじ締め作業において出力軸8に掛かるねじの締め付けトルクを含む。トルクセンサ9から出力される検出信号は、出力軸8に掛かるトルクの検出信号を示す。
【0040】
トルクセンサ9は、捩じれ部90と、板状部91と、板状部92と、歪ゲージ93と、増幅回路94と、カバー97とを有する。
【0041】
トルクセンサ9は、出力軸8に連結される。本実施形態において、トルクセンサ9の板状部91が、遊星歯車機構7のインターナルギヤ70に連結される。トルクセンサ9は、遊星歯車機構7を介して、出力軸8に連結される。
【0042】
トルクセンサ9は、ギヤケース4に収容される。トルクセンサ9は、ステータ61よりも前方に配置される。トルクセンサ9は、出力軸8よりも後方に配置される。すなわち、前後方向において、トルクセンサ9は、ステータ61の前端部6Fと出力軸8の後端部8Rとの間に配置される。本実施形態において、トルクセンサ9は、ファン13と遊星歯車機構7との間に配置される。
【0043】
トルクセンサ9は、ロータシャフト63の周囲に配置される。ロータシャフト63の前端部は、トルクセンサ9の前端部9Fよりも前方に配置される。ピニオンギヤ71Sは、ロータシャフト63の前端部に設けられる。ピニオンギヤ71Sは、トルクセンサ9の前端部9Fよりも前方に配置される。ファン13及びモータ6は、トルクセンサ9の後端部9Rよりも後方に配置される。
【0044】
第1リード線11は、複数設けられる。増幅回路94には、複数の第1リード線11が接続されている。第1リード線11は、第1コネクタ31に接続されている。
【0045】
ギヤケース4には、孔40が形成されている。孔40は、ギヤケース4の内部と外部とを繋ぐように形成される。孔40から、第1リード線11が排出される。第1リード線11の一端部は、ギヤケース4の内部に配置され、増幅回路94に接続される。第1リード線11の他端部は、ギヤケース4の外部に配置され、第1コネクタ31に接続される。
【0046】
第2リード線12は、複数設けられる。制御回路基板16には、複数の第2リード線12が接続されている。第2リード線12は、第2コネクタ32に接続されている。
【0047】
第1コネクタ31は、第2コネクタ32に接続される。
【0048】
ファン13は、ステータ61の前方に配置される。ファン13は、モータ6を冷却するための気流を生成する。ファン13は、ロータシャフト63に固定される。ファン13は、ロータシャフト63の回転により回転する。モータ収容部21は、吸気口18と、排気口19とを有する。吸気口18は、排気口19よりも後方に設けられる。ファン13が回転することにより、ハウジング2の外部の空気が、吸気口18を介してハウジング2の内部に流入する。ハウジング2の内部に流入した空気は、ハウジング2の内部を流通することにより、モータ6を冷却する。ハウジング2の内部を流通した空気は、排気口19を介して、ハウジング2の外部に流出する。
【0049】
トリガスイッチ14は、モータ6を起動するために操作される。トリガスイッチ14は、グリップ部22に配置される。トリガスイッチ14は、トリガ部材14Aと、スイッチ本体14Bとを含む。スイッチ本体14Bは、グリップ部22に収容される。トリガ部材14Aは、グリップ部22の前部の上部から前方に突出する。トリガ部材14Aは、作業者に操作される。トリガ部材14Aが操作されることにより、モータ6の駆動と停止とが切り換えられる。
【0050】
正逆切換レバー15は、グリップ部22の上部に設けられる。正逆切換レバー15は、作業者に操作される。正逆切換レバー15が操作されることにより、モータ6の回転方向が正転方向と逆転方向とに切り換えられる。モータ6の回転方向が切り換えられることにより、出力軸8の回転方向が切り換えられる。
【0051】
制御回路基板16は、コンピュータシステムを含む。制御回路基板16は、モータ6を制御するための制御指令を出力する。制御回路基板16は、制御回路基板収容部23に収容される。制御回路基板16は、複数の電子部品が実装された基板16Pを含む。基板16Pに実装される電子部品として、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ、トランジスタ、コンデンサ、及び抵抗が例示される。
【0052】
制御回路基板ケース17は、制御回路基板16を収容する。制御回路基板ケース17は、制御回路基板収容部23の内部空間に配置される。制御回路基板16の少なくとも一部は、制御回路基板ケース17に収容される。
【0053】
<トルクセンサ>
図5は、本実施形態に係るトルクセンサ9を示す左前方からの斜視図である。図6は、本実施形態に係るトルクセンサ9を示す右前方からの斜視図である。図7は、本実施形態に係るトルクセンサ9を示す左後方からの斜視図である。図8は、本実施形態に係るトルクセンサ9を示す右側面図である。図9は、本実施形態に係るトルクセンサ9を示す左側面図である。図10は、本実施形態に係るトルクセンサ9を示す断面図であり、図5のA-A線断面矢視図に相当する。図11は、本実施形態に係るトルクセンサ9からカバー97を外した状態を示す左前方からの斜視図である。
【0054】
図3図4図5図6図7図8図9図10、及び図11に示すように、トルクセンサ9は、捩じれ部90と、板状部91と、板状部92と、歪ゲージ93と、増幅回路94と、フレキシブル基板95と、フレキシブル基板96と、カバー97と、第1リード線11と、第1コネクタ31とを有する。
【0055】
捩じれ部90は、出力軸8に掛かるトルクにより捩じれる。捩じれ部90は、中空である。捩じれ部90は、円筒状である。捩じれ部90の中心軸と回転軸AXとは一致する。捩じれ部90は、ロータシャフト63が配置される孔90Aを有する。孔90Aは、捩じれ部90の前端部と後端部とを貫通する貫通孔である。孔90Aは、前後方向に延伸する。ベアリング64は、孔90Aの後部に保持される。ロータシャフト63の前部は、捩じれ部90の孔90Aの内側に配置される。
【0056】
板状部91は、捩じれ部90の前端部の周囲に配置される。板状部91は、捩じれ部90と一体的に形成される。板状部91の外形は、実質的に円形状である。板状部91の外径は、捩じれ部90の外径よりも大きい。板状部91は、前面91Aと、後面91Bと、外周面91Cとを有する。前面91Aは、前方を向く。前面91Aは、回転軸AXに平行な軸と直交する。後面91Bは、後方を向く。後面91Bは、回転軸AXに平行な軸と直交する。外周面91Cにギヤ91Gが設けられる。インターナルギヤ70は、板状部91の周囲に配置される。ギヤ91Gは、インターナルギヤ70に噛み合う。トルクセンサ9は、板状部91を介して、インターナルギヤ70に連結される。
【0057】
板状部92は、捩じれ部90の後端部の周囲に配置される。板状部92は、捩じれ部90と一体的に形成される。板状部92の外形は、実質的に円形状である。板状部92の外径は、捩じれ部90の外径よりも大きい。板状部92の外径は、板状部91の外径よりも大きい。板状部92は、前面92Aと、後面92Bと、外周面92Cとを有する。前面92Aは、前方を向く。前面92Aは、回転軸AXに平行な軸と直交する。後面92Bは、後方を向く。後面92Bは、回転軸AXに平行な軸と直交する。板状部92は、ファン13の前方に配置される。板状部92は、ギヤケース4に固定される。
【0058】
歪ゲージ93は、捩じれ部90に配置される。歪ゲージ93は、出力軸8に掛かるトルクを間接的に検出する。ここで、トルクが大きい場合には、出力される信号(電圧)が大きくなり、トルクが小さい場合には、出力される信号(電圧)が小さくなる。歪ゲージ93から出力される信号(電圧)は、出力軸8に掛かるトルクの検出信号を含む。歪ゲージ93は、捩じれ部90の表面に固定される。捩じれ部90は、出力軸8に掛かるトルクが遊星歯車機構7を介して伝達する。つまり、捩じれ部90は、出力軸8に掛かるトルクが間接的にかかることで、捩じられる。歪ゲージ93は、出力軸8に掛かるトルクが遊星歯車機構7を介して伝達し、出力軸8に掛かるトルクで間接的に捩じられる捩じれ部90の歪を検出する。なお、本実施形態では、出力軸8に掛かるトルクが捩じれ部90を伝達する伝達要素を、遊星歯車機構7としたが、トルクが伝達される要素であれば、遊星歯車機構以外の要素でもよい。
【0059】
増幅回路94は、板状部92に配置される。本実施形態において、増幅回路94は、板状部92の前面92Aに配置される。増幅回路94は、ギヤケース4の内部に配置される。歪ゲージ93からの信号(電圧)は、増幅回路94に入力される。増幅回路94は、歪ゲージ93からの信号を増幅する。
【0060】
フレキシブル基板95は、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)である。フレキシブル基板95は、ベースフィルムと、ベースフィルムに設けられた配線とを有する。ベースフィルムは、絶縁性材料で形成される。配線は、導電性材料で形成される。ベースフィルムは、柔軟性である。フレキシブル基板95は、折り曲げることができる。
【0061】
フレキシブル基板95と同様、フレキシブル基板96は、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)である。フレキシブル基板96は、ベースフィルムと、ベースフィルムに設けられた配線とを有する。
【0062】
フレキシブル基板95は、捩じれ部90の表面に配置される第1部分951と、フレキシブル基板96に接続される第2部分952とを有する。第1部分951は、折り曲げられた状態で、捩じれ部90の表面に配置される。第1部分951は、例えば接着剤により、捩じれ部90の表面に固定される。
【0063】
図11に示すように、フレキシブル基板96は、板状部92の前面92Aの一部に配置される。回転軸AXと直交する面内において、フレキシブル基板96は、円弧状である。フレキシブル基板96は、折り曲げられない状態で、板状部92の前面92Aに配置される。フレキシブル基板96は、例えば接着剤により、板状部92の前面92Aに固定される。フレキシブル基板95の第2部分952は、フレキシブル基板96に接続される。
【0064】
歪ゲージ93は、フレキシブル基板95上に固定される。歪ゲージ93は、フレキシブル基板95を介して、捩じれ部90の表面に固定される。
【0065】
増幅回路94は、フレキシブル基板96上に固定される。増幅回路94は、フレキシブル基板96を介して、板状部92の前面92Aに固定される。
【0066】
歪ゲージ93は、周方向に4つ配置されている。4つの歪ゲージ93は、フレキシブル基板95の第1部分951を折り曲げることによって、捩じれ部90の周方向に並べて配置される。4つの歪ゲージ93は、周方向に90[°]毎に等間隔で配置される。
【0067】
増幅回路94は、板状部92に、折り曲げられずに配置される。増幅回路94は、板状部92の前面92Aに、フレキシブル基板96を折り曲げずに配置される。
【0068】
カバー97は、増幅回路94及びフレキシブル基板96を覆うように配置される。カバー97は、増幅回路94及びフレキシブル基板96を覆った状態で、板状部92に固定される。カバー97は、板状部92の前面92Aから前方に突出する。
【0069】
第1リード線11は、複数設けられる。第1リード線11の上端部は、フレキシブル基板96に固定される。第1リード線11の上端部は、フレキシブル基板96の配線を介して、増幅回路94に接続される。第1リード線11の下端部は、第1コネクタ31に接続される。第1コネクタ31は、第2コネクタ32に接続される。第2コネクタ32は、第2リード線12を介して、制御回路基板16に接続される。
【0070】
出力軸8に掛かるトルクにより捩じれ部90が捩じれると、歪ゲージ93は、トルクに対応する信号を出力する。歪ゲージ93からの信号は、増幅回路94に入力される。増幅回路94は、増幅した歪ゲージ93の信号を制御回路基板16に送信する。増幅回路94から出力される信号は、出力軸8に掛かるトルクの検出信号である。トルクセンサ9の検出信号は、増幅回路94により増幅された歪ゲージ93からの信号を含む。
【0071】
増幅回路94は、増幅した歪ゲージ93の信号を制御回路基板16に送信する。増幅回路94から制御回路基板16に入力される信号(電圧)は、歪ゲージ93から増幅回路94に入力される信号(電圧)よりも高い。増幅回路94で増幅された歪ゲージ93からの信号は、第1リード線11、第1コネクタ31、第2コネクタ32、及び第2コネクタ32を介して、制御回路基板16に送信される。
【0072】
図12は、本実施形態に係る歪ゲージ93が固定されたフレキシブル基板95及び増幅回路94が固定されたフレキシブル基板96を示す左前方からの斜視図である。図13は、本実施形態に係る歪ゲージ93が固定されたフレキシブル基板95及び増幅回路94が固定されたフレキシブル基板96を示す右前方からの斜視図である。図14は、本実施形態に係る歪ゲージ93が固定されたフレキシブル基板95を示す左前方からの斜視図である。図15は、本実施形態に係る歪ゲージ93が固定されたフレキシブル基板95を示す右前方からの斜視図である。図16は、本実施形態に係るフレキシブル基板95を示す左前方からの斜視図である。図17は、本実施形態に係るフレキシブル基板95を示す右前方からの斜視図である。
【0073】
第1部分951は、捩じれ部90の周囲の一部に配置される。第1部分951は、折り曲げられた状態で、捩じれ部90の表面の一部に配置される。第1部分951は、支持部951Aと、曲折部951Bとを有する。
【0074】
歪ゲージ93は、支持部951Aに支持される。支持部951Aは、周方向に間隔をあけて4つ設けられる。支持部951Aの表面は、平坦である。支持部951Aは、開口951Cと、端子951Dとを有する。端子951Dは、フレキシブル基板95の配線に接続される。歪ゲージ93の少なくとも一部は、開口951Cの内側に配置される。歪ゲージ93の少なくとも一部が開口951Cの内側に配置された状態で、歪ゲージ93は、支持部951Aの表面に固定される。歪ゲージ93の少なくとも一部は、開口951Cを介して、捩じれ部90の表面に固定される。歪ゲージ93の少なくとも一部が開口951Cの内側に配置された状態で、歪ゲージ93と端子951Dとが接続される。歪ゲージ93と端子951Dとが接続されることにより、歪ゲージ93とフレキシブル基板95の配線とが接続される。
【0075】
曲折部951Bは、隣り合う2つの支持部951Aの間に配置される。曲折部951Bは、周方向に間隔をあけて3つ設けられる。曲折部951Bは、捩じれ部90の表面に接触するように、円弧状に折り曲げられる。
【0076】
第2部分952は、第1部分951の後端部の一部から径方向外側に突出するように設けられる。第2部分952の表面は、平坦である。第2部分952は、フレキシブル基板96の配線に接続される端子952Aを有する。端子952Aは、フレキシブル基板95の配線に接続される。フレキシブル基板96の配線と端子952Aとが接続されることにより、フレキシブル基板95の配線とフレキシブル基板96の配線とが接続される。
【0077】
増幅回路94は、フレキシブル基板96に支持される。フレキシブル基板96の表面は、平坦である。増幅回路94は、フレキシブル基板96の配線に接続される。歪ゲージ93は、端子951D、フレキシブル基板95の配線、端子952A、及びフレキシブル基板96の配線を介して、増幅回路94に接続される。
【0078】
図18は、本実施形態に係る歪ゲージ93及び増幅回路94を示す回路図である。4つの歪ゲージ93のそれぞれの抵抗は、Rg1,Rg2,Rg3,Rg4である。4つの歪ゲージ93により、ブリッジ回路98が形成される。4つの歪ゲージ93は、所謂、4アクティブゲージ方式により結線される。
【0079】
捩じれ部90が捩じれると、歪ゲージ93が歪んで、抵抗Rg1,Rg2,Rg3,Rg4が変化する。ブリッジ回路98にブリッジ電圧Vが入力された状態で、抵抗Rg1,Rg2,Rg3,Rg4が変化すると、抵抗Rg1と抵抗Rg2との間の電圧Vb1、及び抵抗Rg3と抵抗Rg4との間の電圧Vb2が変化する。ブリッジ回路98の出力電圧Vは、電圧Vb1と電圧Vb2との差である(V=Vb2-Vb1)。
【0080】
増幅回路94は、抵抗Rと、抵抗Rと、抵抗Rと、抵抗Rと、オペアンプ94Aとを含む。抵抗R、抵抗R、抵抗R、抵抗R、及びオペアンプ94Aのそれぞれは、フレキシブル基板96のベースフィルムに支持される。オペアンプ94Aには、第1の入力信号として、抵抗Rを介して電圧Vb1が入力され、第2の入力信号として、抵抗Rを介して電圧Vb2が入力される。オペアンプ94Aから増幅された電圧Vが出力される。電圧Vは、増幅された歪ゲージ93の信号に相当する。電圧Vは、第1リード線11及び第1コネクタ31を介して、制御回路基板16に送信される。なお、増幅回路94は、図示のものに限らず、例えばPGA(Programmable Gain Amplifier)であっても良い。また、ブリッジ回路98と増幅回路94との間にフィルタ回路を設けても良い。この場合、後述するノイズ影響をより抑制可能である。
【0081】
<動作>
ねじ締め作業において、制御回路基板16は、トリガスイッチ14の操作信号に基づいて、出力軸8を回転させるためにモータ6を起動する。ねじ締め作業において、ねじが作業対象にねじ込まれると、出力軸8に掛かるトルクが高くなる。出力軸8に掛かるトルクは、キャリア72C及びプラネタリギヤ72Pを介してインターナルギヤ70に伝達される。インターナルギヤ70に係るトルクは、板状部91を介してトルクセンサ9に伝達される。出力軸8に掛かるトルクは、トルクセンサ9により検出される。
【0082】
トルクセンサ9の板状部92は、ギヤケース4に固定されている。トルクセンサ9の捩じれ部90は、インターナルギヤ70により回転方向に捩られる。なお、板状部91及び板状部92もトルクを受けるが、板状部91及び板状部92のそれぞれは、捩じれ部90よりも太径である。そのため、板状部91及び板状部92のねじれ変形は、捩じれ部90のねじれ変形よりも小さい。トルクセンサ9の捩じれ部90が回転方向に捩じられると、捩じれ部90の表面に配置されている4つの歪ゲージ93が変形する。歪ゲージ93の変形により、捩じれ部90に掛かるトルクを示す信号(電圧)が歪ゲージ93から増幅回路94に入力される。増幅回路94は、歪ゲージ93からの信号を増幅する。増幅回路94で増幅された歪ゲージ93からの信号は、第1リード線11、第1コネクタ31、第2コネクタ32、及び第2コネクタ32を介して、制御回路基板16に送信される。
【0083】
制御回路基板16は、トルクセンサ9の検出信号を取得する。制御回路基板16は、トルクセンサ9の検出信号に基づいて、出力軸8に掛かるトルクを算出する。制御回路基板16に目標トルクが登録されている。制御回路基板16は、トルクセンサ9の検出信号に基づいて、ねじが作業対象に目標トルクで締め付けられるように、モータ6を制御する。
【0084】
制御回路基板16は、トルクセンサ9の検出信号に基づいて、出力軸8に掛かるトルクが目標トルクに到達したと判定したとき、モータ6の駆動を停止する。これにより、制御回路基板16は、トルクセンサ9の検出信号に基づいて、ねじが作業対象に目標トルクで締め付けられるように、モータ6を制御することができる。
【0085】
本実施形態において、ネジ締め機1は、無線通信装置(不図示)を有する。無線通信装置は、ハウジング2の規定部位に配置される。無線通信装置は、無線免許が不要な通信方式で近距離無線通信を実施可能である。無線通信装置は、例えば米国電気電子学会(IEEE:Institute of Electrical and Electronics Engineers)で標準化されたIEEE802.15.1の規格に準拠した通信方式で無線通信を実施可能である。
【0086】
制御回路基板16は、トルクセンサ9の検出信号を無線通信装置に送信する。無線通信装置は、トルクセンサ9の検出信号を、ネジ締め機1の外部に配置されている管理コンピュータに送信する。管理コンピュータは、ねじ締め作業におけるトルクセンサ9の検出信号を記録する。
【0087】
<効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、歪ゲージ93は、捩じれ部90に配置される。増幅回路94は、板状部92に配置される。板状部92は、捩じれ部90と一体的に形成される。増幅回路94は、歪ゲージ93の近傍に配置される。歪ゲージ93と増幅回路94との距離が短くなることにより、歪ゲージ93から増幅回路94に入力される信号がノイズの影響を受けることが抑制される。
【0088】
歪ゲージ93及び増幅回路94は、いずれもフレキシブル基板(95,96)に固定される。歪ゲージ93からの信号は、フレキシブル基板95の配線及びフレキシブル基板96の配線を介して、増幅回路94に入力される。歪ゲージ93からの信号は、フレキシブル基板(95,96)の配線を介して増幅回路94に入力されるので、歪ゲージ93から増幅回路94に入力される信号がノイズの影響を受けることが抑制される。
【0089】
歪ゲージ93は、4つ配置される。4つの歪ゲージ93は、フレキシブル基板95の第1部分951を折り曲げることによって、捩じれ部90の周方向に並べて配置される。第1部分951の支持部951Aに歪ゲージ93が固定された後、曲折部951Bが折り曲げられることにより、4つの歪ゲージ93は、捩じれ部90の周方向に配置される。
【0090】
増幅回路94は、板状部92の前面92Aに、フレキシブル基板96を折り曲げずに配置される。これにより、増幅回路94に応力が掛かることが抑制される。フレキシブル基板96に増幅回路94が固定された後、フレキシブル基板96が板状部92の前面92Aに接続されることにより、増幅回路94は、板状部92に配置される。
【0091】
増幅回路94には、複数の第1リード線11が接続される。第1リード線11は、第1コネクタ31に接続される。モータ6を制御するための制御回路基板16には、複数の第2リード線12が接続される。第2リード線12は、第2コネクタ32に接続される。第1コネクタ31は、第2コネクタ32に接続される。これにより、増幅回路94で増幅された歪ゲージ93からの信号は、第1リード線11、第1コネクタ31、第2コネクタ32、及び第2リード線12を介して、制御回路基板16に送信される。
【0092】
なお、増幅回路94と制御回路基板16とを接続する第1リード線11及び第2リード線12がノイズの影響を大きく受ける可能性は低い。その理由は、同じレベルのノイズがフレキシブル基板(95,96)及びリード線(11,12)のそれぞれに作用した場合、増幅される前の電圧に与える影響は相対的に大きく、増幅された後の電圧(より高い電圧)に与える影響は相対的に小さいからである。そのため、トルクセンサ9と制御回路基板16とが規定距離離れている場合において、歪ゲージ93と増幅回路94との距離が短いことが重要であり、増幅回路94と制御回路基板16とを接続するリード線(11,12)の長さは短いことは相対的に重要ではない。
【0093】
トルクセンサ9は、遊星歯車機構7を介して出力軸8に連結される。これにより、出力軸8に掛かるトルクが遊星歯車機構7を介してトルクセンサ9に伝達される。
【0094】
遊星歯車機構7は、モータ6が発生する回転力により回転するサンギヤ72Sと、サンギヤ72Sの周囲に配置されるインターナルギヤ70と、サンギヤ72Sとインターナルギヤ70との間に配置される複数のプラネタリギヤ72Pと、プラネタリギヤ72Pを支持するキャリア72Cとを有する。キャリア72Cは、出力軸8に接続される。インターナルギヤ70は、トルクセンサ9に連結される。これにより、モータ6が発生した回転は、出力軸8に伝達され、出力軸8に掛かるトルクは、トルクセンサ9に伝達される。
【0095】
トルクセンサ9は、ロータシャフト63の周囲に配置される筒状である。ロータシャフト63の前端部は、ピニオンギヤ71S、プラネタリギヤ71P、及びキャリア71Cを介して、サンギヤ72Sに連結される。これにより、前後方向のネジ締め機1の寸法が大きくなることが抑制される。
【0096】
捩じれ部90の前端部に板状部91が接続され、捩じれ部90の後端部に板状部92が接続される。インターナルギヤ70は、板状部91に設けられたギヤ91Gに噛み合う。捩じれ部90は、板状部91を介してインターナルギヤ70に連結される。板状部92は、ギヤケース4に固定される。そのため、出力軸8にトルクが掛かった場合、捩じれ部90は、インターナルギヤ70から回転方向に捩られるようにトルクを受けることができる。そのため、捩じれ部90に配置された歪ゲージ93は、出力軸8に掛かるトルクを良好に検出することができる。
【0097】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その構成要素の説明を簡略又は省略する。
【0098】
図19は、本実施形態に係るネジ締め機101を示す断面図である。ネジ締め機101は、ハウジング2と、ギヤケース4と、バッテリ装着部5と、モータ6と、遊星歯車機構7と、出力軸8と、トルクセンサ9と、第1リード線11と、第2リード線12と、ファン13と、トリガスイッチ14と、正逆切換レバー15と、制御回路基板16と、制御回路基板ケース17とを備える。
【0099】
ギヤケース4は、トルクセンサ9、遊星歯車機構7、及び出力軸8の一部を収容する。トルクセンサ9の捩じれ部90は、ギヤケース4に収容される。捩じれ部90は、出力軸8に掛かるトルクにより捩じれる。上述の実施形態と同様、捩じれ部90に歪ゲージ93が配置される。
【0100】
増幅回路94は、ギヤケース4の内部に配置される。図19に示す例において、増幅回路94は、ギヤケース4の内部の下部に配置される。本実施形態において、増幅回路94は、ギヤケース4の内面に固定される。歪ゲージ93からの信号は、リード線33を介して増幅回路94に入力される。
【0101】
ギヤケース4には、孔40が形成されている。孔40は、ギヤケース4の内部と外部とを繋ぐように形成される。増幅回路94には、複数の第1リード線11が接続されている。孔40から、第1リード線11が排出される。第1リード線11の一端部は、ギヤケース4の内部に配置され、増幅回路94に接続される。第1リード線11の他端部は、ギヤケース4の外部に配置される。
【0102】
第1リード線11の他端部は、第1コネクタ31に接続される。制御回路基板16には、複数の第2リード線12が接続される。第2リード線12は、第2コネクタ32に接続される。第1コネクタ31は、第2コネクタ32に接続される。増幅回路94により増幅された歪ゲージ93からの信号は、第1リード線11、第1コネクタ31、第2コネクタ32、及び第2リード線12を介して、制御回路基板16に送信される。
【0103】
以上説明したように、本実施形態によれば、捩じれ部90は、ギヤケース4の内部に配置される。歪ゲージ93は、捩じれ部90に配置される。増幅回路94は、ギヤケース4の内部に配置される。増幅回路94は、歪ゲージ93の近傍に配置される。歪ゲージ93と増幅回路94との距離が短くなるので、歪ゲージ93から増幅回路94に入力される信号がノイズの影響を受けることが抑制される。
【0104】
なお、本実施形態においても、増幅回路94と制御回路基板16とを接続する第1リード線11及び第2リード線12がノイズの影響を大きく受ける可能性は低い。その理由は、同じレベルのノイズがリード線33及びリード線(11,12)のそれぞれに作用した場合、増幅される前の電圧に与える影響は相対的に大きく、増幅された後の電圧(より高い電圧)に与える影響は相対的に小さいからである。そのため、トルクセンサ9と制御回路基板16とが規定距離離れている場合において、歪ゲージ93と増幅回路94との距離が短いことが重要であり、増幅回路94と制御回路基板16とを接続するリード線(11,12)の長さは短いことは相対的に重要ではない。
【0105】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、増幅回路94は、板状部91の後面91Bに配置されてもよい。
【0106】
上述の実施形態において、増幅回路94は、捩じれ部90の表面に配置されてもよい。
【0107】
上述の実施形態において、ネジ締め機(1,101)として、電動ドライバを例にして説明した。ネジ締め機(1,101)は、モータ6と、モータ6が発生する回転力により回転する出力軸8とを有していればよい。ネジ締め機(1,101)は、震動ドライバドリル、アングルドリル、インパクトドライバ、ハンマドリル、マルノコ、及びレシプロソーの少なくとも一つでもよい。
【0108】
上述の実施形態においては、ネジ締め機(1,101)の電源としてバッテリ装着部5に装着されるバッテリパック20が使用されることとした。ネジ締め機(1,101)の電源として、商用電源(交流電源)が使用されてもよい。
【0109】
上述の実施形態においては、モータ6は電動モータであり、ネジ締め機(1,101)は、モータ6を動力源とする電動工具であることとした。ネジ締め機(1,101)は、空気モータを動力源としてもよい。また、ネジ締め機(1,101)の動力源は、電動モータ又は空気モータに限定されず、他の動力源でもよい。ネジ締め機(1,101)の動力源は、例えば油圧モータでもよいし、エンジンにより駆動するモータでもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…ネジ締め機、2…ハウジング、2L…左ハウジング、2R…右ハウジング、2S…ねじ、4…ギヤケース、5…バッテリ装着部、6…モータ、6F…前端部、7…遊星歯車機構、8…出力軸、8R…後端部、9…トルクセンサ、9F…前端部、9R…後端部、11…第1リード線、12…第2リード線、13…ファン、14…トリガスイッチ、14A…トリガ部材、14B…スイッチ本体、15…正逆切換レバー、16…制御回路基板、16P…基板、17…制御回路基板ケース、18…吸気口、19…排気口、20…バッテリパック、21…モータ収容部、22…グリップ部、23…制御回路基板収容部、31…第1コネクタ、32…第2コネクタ、33…リード線、40…孔、61…ステータ、61A…ステータコア、61B…前インシュレータ、61C…後インシュレータ、61D…コイル、61E…センサ回路基板、61F…短絡部材、62…ロータ、62A…ロータコア、62B…永久磁石、63…ロータシャフト、64…ベアリング、65…ベアリング、67…ベアリング保持部、70…インターナルギヤ、71C…キャリア、71P…プラネタリギヤ、71S…ピニオンギヤ、72C…キャリア、72P…プラネタリギヤ、72S…サンギヤ、81…スピンドル、81A…挿入孔、82…チャック、83…ベアリング、84…ベアリング、90…捩じれ部、90A…孔、91…板状部、91A…前面、91B…後面、91C…外周面、91G…ギヤ、92…板状部、92A…前面、92B…後面、92C…外周面、93…歪ゲージ、94…増幅回路、94A…オペアンプ、95…フレキシブル基板、96…フレキシブル基板、97…カバー、98…ブリッジ回路、101…ネジ締め機、951…第1部分、951A…支持部、951B…曲折部、951C…開口、951D…端子、952…第2部分、952A…端子、AX…回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19