IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特許7566531消泡剤の添加方法および放射性廃液処理システム
<>
  • 特許-消泡剤の添加方法および放射性廃液処理システム 図1
  • 特許-消泡剤の添加方法および放射性廃液処理システム 図2
  • 特許-消泡剤の添加方法および放射性廃液処理システム 図3
  • 特許-消泡剤の添加方法および放射性廃液処理システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】消泡剤の添加方法および放射性廃液処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/04 20060101AFI20241007BHJP
   G21F 9/22 20060101ALI20241007BHJP
   G21F 9/16 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B01D19/04 A
G21F9/22 J
G21F9/22 P
G21F9/16 501
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020137743
(22)【出願日】2020-08-18
(65)【公開番号】P2022034113
(43)【公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】並木 千晶
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍明
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-106501(JP,U)
【文献】特開昭54-025287(JP,A)
【文献】特開2014-008455(JP,A)
【文献】特開2013-036786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00-19/04
G21F 9/22
G21F 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に発泡する可能性のある液体を収容する液体タンク内への消泡剤の添加方法であって、
前記液体タンク内の、前記液体の液面より上方の気相部に位置し、液面レベル計で警報発報となる液位の下部位の内側壁面に、予め前記液体により溶解する固形状又はゲル状の消泡剤を設置固定し、前記液体に発泡が生じ、前記警報発報となる液位の下に移動した際に、前記液体と前記消泡剤とを接触させる
ことを特徴とする消泡剤の添加方法。
【請求項2】
請求項1に記載の消泡剤の添加方法であって、
前記消泡剤が、ヒュームドシリカと、ジメチルポリシロキサン構造をもったシリコーンオイルと、PVAとを含む
ことを特徴とする消泡剤の添加方法。
【請求項3】
請求項に記載の消泡剤の添加方法であって、
前記消泡剤が、ポリエーテルを含まない
ことを特徴とする消泡剤の添加方法。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか1項記載の消泡剤の添加方法であって、
前記消泡剤を、前記液体タンク内の、前記液体の液面からの高さを変えて各々間隙を有して複数設置する
ことを特徴とする消泡剤の添加方法。
【請求項5】
放射性廃液を濃縮減容し固化体を製造する放射性廃液処理システムであって、
内部に濃縮廃液を収容する濃縮廃液タンクを具備し、
前記濃縮廃液タンク内の、前記濃縮廃液の液面より上方の気相部に位置し、液面レベル計で警報発報となる液位の下部位の内側壁面に、予め前記液体により溶解する固形状又はゲル状の消泡剤を設置固定し、前記濃縮廃液に発泡が生じ、前記警報発報となる液位の下に移動した際に、前記濃縮廃液と前記消泡剤とを接触させるよう構成された
ことを特徴とする放射性廃液処理システム。
【請求項6】
請求項記載の放射性廃液処理システムであって、
前記消泡剤が、ヒュームドシリカと、ジメチルポリシロキサン構造をもったシリコーンオイルと、PVAとを含み、ポリエーテルを含まない
ことを特徴とする放射性廃液処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、消泡剤の添加方法および放射性廃液処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、放射性廃液処理システムにおける濃縮廃液タンクや共沈タンクなど、タンク内の容積および液面高さを利用して液体の量を制御する工程を有するシステムにおいて、タンク内に泡が発生すると液面高さ計測に誤差が生じ、液量を制御できなくなる可能性がある。このため、タンク内に泡が発生した際は、タンク内に消泡剤を投入して消泡する。消泡剤の添加方法においては、添加対象の液体の液面を目視して発泡の状態を把握し、それに応じて消泡剤の添加量を調整し添加するのが一般的である。
【0003】
このような消泡剤の添加方法としては、液体を貯蔵するタンクに消泡剤をポンプにより所定量添加し、同時に液中気泡量を気泡検出装置で測定して制御装置によりポンプの出力を制御することにより消泡剤を液中の気泡量に比例して添加するというものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような調節では消泡剤の添加量を適切に設定するのが困難であり、その結果、添加量過少による発泡抑制の不十分化、添加量過多による後段トラブルといった問題が生じやすい。
【0004】
また他の消泡装置として、液体を貯蔵するタンク内の液面上に生じる泡を吸い込んで消滅させる泡吸引消滅装置を備えた液面追従式消泡装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この場合、通常の装置に加え、泡の吸引処理が必要となるため設備増大が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-113891号公報
【文献】特開2007-222721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した消泡剤の添加方法においては、発泡の程度を確認して消泡剤を添加するため、消泡剤投入設備をもつ必要性や、投入に手間を要することが課題であった。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、液体を貯蔵するタンクにおいて、簡易な構成で簡便に消泡を行うことができる消泡剤の添加方法および放射性廃液処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の消泡剤の添加方法は、内部に発泡する可能性のある液体を収容する液体タンク内への消泡剤の添加方法であって、前記液体タンク内の、前記液体の液面より上方の気相部に位置し、液面レベル計で警報発報となる液位の下部位の内側壁面に、予め前記液体により溶解する固形状又はゲル状の消泡剤を設置固定し、前記液体に発泡が生じ、前記警報発報となる液位の下に移動した際に、前記液体と前記消泡剤とを接触させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る消泡剤の添加方法を説明するための図。
図2】消泡剤を複数個設置した実施形態を説明するための図。
図3】消泡剤を、親水性フィルタを具備する容器に設置した実施形態を説明するための図。
図4】放射性廃液処理システムにおける実施形態を説明するための系統図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る消泡剤の添加方法および放射性廃液処理システムについて、図面を参照して説明する。
【0011】
まず、図1を参照して実施形態に係る消泡剤の添加方法について説明する。図1に示すように、液体タンク10内には、発泡する可能性のある液体11が収容されている。このような液体11としては、例えば、放射性廃液処理システムにおいて濃縮された放射性廃液等が挙げられる。この場合液体タンク10は、濃縮廃液タンクであるが、本実施形態では、濃縮された放射性廃液に限らず、その他の液体を供給するための給液タンクや共沈タンク等が含まれる。この液体タンク10において、例えば、液体11の攪拌や循環などの空気を抱きこむ動的な操作が加わると液体11に発泡が生じ、液面12の上に泡13が生じる可能性がある。
【0012】
このため、本実施形態では、液面12より上側に位置する気相の箇所、例えば、液体タンク10の上縁部壁面(液面レベル計で警報発報となる液位の下など)に、予め消泡剤14aを設置してある。そして、発生した泡13が液面12よりも上側に移動し、消泡剤14aに付着すると、消泡剤14a中の粒子成分が溶け出し、泡13の内部に分散することで消泡することが可能となる。
【0013】
消泡剤14aとしては、例えば、固形のものを使用することができる。この場合、粒状の消泡剤(例えば、シリコン粒子、シリコーンオイル、PVA(ポリビニルアルコール)を含有)をプレス機で固めて成型するなど、固形に成型できるものであれば特に限定されない。固形の消泡剤14aの場合は、液体タンク10の壁面に、例えば、接着剤等なんらかの方法で固定すれば良い。また、消泡剤14aは、固形のものに限らずゲル状のものでもよい。ゲル状の消泡剤14aの場合は、硬質表面に対する付着性が良く、液体タンク10の壁面に容易に取り付けることができる。
【0014】
また、図2に示すように、液面12に対し、高さを変えて、複数個の消泡剤14a、消泡剤14b、消泡剤14c等を設置しても良い。このような構成とすれば、液体タンク10内の液体11に泡13が発生した場合、まず、最下段に配置された消泡剤14aと泡13が接触することによって消泡が行われる。
【0015】
そして、消泡剤14aによる効果が十分でなく、さらに泡13が発生した場合は、順次上部に配置された消泡剤14b、消泡剤14cと泡13が接触することによって消泡が行われる。一方、消泡剤14aによる効果が十分であり、さらに泡13が発生することが無い場合は、泡13が消泡剤14b、消泡剤14cと接触することが無いので、過剰に消泡剤が添加されることは防止できる。
【0016】
このように、図2に示した構成を採用することによって、消泡剤14a、消泡剤14b、消泡剤14cを必要に応じて必要量添加することができ、過剰に消泡剤が添加されることも防止することができる。また、複数の消泡剤14a、消泡剤14b、消泡剤14cを添加することができるので、1つの消泡剤の消泡効果が低い場合であっても、消泡することが可能となる。
【0017】
ここで、消泡剤の粒子径に着目すると、一般的に、粒子径の大きな消泡剤よりも、粒子径の小さな消泡剤の方が、溶解速度が速く消泡効果が高い。粒子径の小さな消泡剤を設置するためには、図3に示すように、消泡剤14を消泡剤容器15内に収容し、かつ、消泡剤容器15には、消泡剤14の粒子径に比べて、孔径が小さなフィルタ16を設置する必要がある。
【0018】
このフィルタ16は、消泡剤容器15内の消泡剤14が外部に漏洩しないよう支持することができるとともに、液体11及び泡13が透過でき、消泡剤容器15内の消泡剤14と接触できる特性を有する必要がある。フィルタ16のフィルタ素材が疎水性である場合には、液体11及び泡13と消泡剤14との接触が阻害される。そこで、例えば、図3に示すように、液面12が上昇した際に、タンク10内の液体11及び泡13が消泡剤14を収容する消泡剤容器15内に速やかに浸透するよう、フィルタ素材が親水性のフィルタ16を有する消泡剤容器15とすることが好ましい。このように、親水性のフィルタ16を備える消泡剤容器15を設け、消泡剤容器15内に粒子径の小さな消泡剤14を収容しておくことで、液体11及び泡13と消泡剤14との混合が容易になり、迅速に消泡効果を得ることができる。本実施の形態によれば、発泡しない液体11に不必要な消泡剤14を添加することも防止することが可能となる。
【0019】
消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーンオイルにヒュームドシリカと混合したオイルコンパウンドを調整し、該シリコーンオイルコンパウンドとPVAを60℃で調整したのち風乾し乾燥粉体を作製、打錠成型したものを固形の消泡剤として使用することができる。オイルコンパウンド中のヒュームドシリカの含有量は、例えば3~10質量%程度、ヒュームドシリカの粒子径は10~30nm程度とすることが好ましい。ヒュームドシリカとしては、親水性のものと疎水性のものがあるが、消泡性の観点から疎水性のヒュームドシリカを用いることが好ましい。
【0020】
図4は、放射性廃液処理システム100における実施形態を説明するための系統図である。図4に示すように、放射性廃液処理システム100は、濃縮装置101、濃縮廃液タンク102、濃縮廃液タンク102内の固形消泡剤103、濃縮廃液ろ過装置104、混練装置105、ドラム缶106を具備している。
【0021】
放射性廃液処理システム100では、放射性廃液を濃縮減容し固化体を製造する。濃縮装置101の廃液は、イオン成分が多く含まれ高電導度で腐食しやすいので、濃縮装置101の腐食防止のためアルカリ性状に調整される。また、廃液は沸騰蒸発により高温に維持されているため懸濁物の脱水効果および凝析により沈殿が生じる。
【0022】
廃液は、濃縮装置101から濃縮廃液タンク102に排出され、濃縮廃液ろ過装置104に移送してろ過処理する。ろ過された高電導度のろ液は濃縮廃液タンク102に循環される。この時廃液中に含まれる不溶解性の固形分が除去され、ろ過液側には溶解性のイオン分のみが残る。固形分が取り除かれた廃液は、混錬装置105に移送されセメント固化処理されドラム缶106に貯蔵される。
【0023】
このような放射性廃液処理システム100における放射性廃液処理工程において、濃縮廃液タンク102内の廃液が発泡した場合には、液面の制御ができなくなる。このため、予防的に濃縮廃液タンク102内に固形消泡剤103が設置されている。固形消泡剤103の設置位置は、前述したとおり通常の液面の高さより高い液相の部分であり、例えば、液面レベル計で警報発報となる液位の下などの位置である。なお、放射性廃液を減容し固化する放射性廃液処理システム100においては、消泡剤を多量に混入すると固化工程で固化不良事象が起こる可能性が高くなる。
【0024】
本実施形態のように予防保全として、濃縮廃液タンク102の内側壁面に固形消泡剤103を設置しておくことで、必要以上の消泡剤を添加してしまう可能性を低減することができ、また濃縮廃液タンク102内の廃液が発泡しなければ消泡剤を添加しないことが可能となる。したがって、発泡しない廃液に不必要な消泡剤を添加することによって消泡剤が後段に悪影響を及ぼすこともない。
【0025】
また、セメント固化に影響を与える成分を含まない消泡剤を用いることによりさらに固化工程の不具合を低減することが可能となる。例えば、ポリエーテル化合物を主成分とする消泡剤を多量に添加すると、後段の固化工程において、反応遅延や固化が不均一になる等の障害が発生する可能性がある。そのためポリエーテル化合物を含まない消泡剤を使用することが好ましい。
【0026】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
10……液体タンク、11……液体、12……液面、13……泡、14……消泡剤、15……消泡剤容器、16……親水性フィルタ、100……放射性廃液処理システム、101……濃縮装置、102……濃縮廃液タンク、103……固形消泡剤、104……濃縮廃液ろ過装置、105……混練装置、106……ドラム缶。
図1
図2
図3
図4