(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/447 20060101AFI20241007BHJP
B41J 2/45 20060101ALI20241007BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20241007BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20241007BHJP
H04N 1/036 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B41J2/447 101B
B41J2/447 101P
B41J2/447 101K
B41J2/45
G03G15/04
G03G21/14
H04N1/036
(21)【出願番号】P 2020142795
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英史
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-090758(JP,A)
【文献】特開平05-318822(JP,A)
【文献】特開2010-054707(JP,A)
【文献】特開2015-229246(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0333723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/447
B41J 2/45
G03G 15/04
G03G 21/14
H04N 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な第1の感光体と、
前記第1の感光体の回転軸線方向に沿って配列され、前記第1の感光体を露光する光を発する第1の複数の発光部と、
回転可能な第2の感光体と、
前記第2の感光体の回転軸線方向に沿って配列され、前記第2の感光体を露光する光を発する第2の複数の発光部と、
基準クロックを生成する基準クロック生成部と、
前記基準クロックを変調してスペクトラム拡散された変調クロックを所定の周期で生成する変調クロック生成部と、
前記変調クロックをカウントし、前記第1の複数の発光部が発光を開始するタイミングを制御する第1の制御信号を前記所定の周期の整数倍の周期で生成し、かつ、前記変調クロックをカウントし、前記第2の複数の発光部が発光を開始するタイミングを制御する第2の制御信号を前記所定の周期の整数倍の周期で生成する制御信号生成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の制御信号の位相と、前記第2の制御信号の位相とは、前記所定の周期の整数倍ずれていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の制御信号が生成される周期と、前記第2の制御信号が生成される周期とは互いに等しい、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置は、前記変調クロックをカウントし、前記第1の感光体の回転軸線方向における1ライン分の静電潜像を形成する際の前記第1の複数の発光部の発光時間を設定する設定部を備え、
前記設定部により設定された前記第1の複数の発光部の発光時間は、前記変調クロックの周期の整数倍であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記変調クロックの周期の整数倍の値として設定された前記発光時間に対し、前記変調クロックの周波数と前記
第1の制御信号の位相に基づいて補正を行うことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の複数の発光部と、前記第2の複数の発光部のそれぞれは、基板上に分離して配置された複数の電極を含む第1電極層と、前記第1電極層に積層され、電圧が印加されることで発光する発光層と、前記発光層に対して前記第1電極層が配置されている側とは反対側に配置され、光が透過可能な第2電極層とを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1の複数の発光部、及び、前記第2の複数の発光部のそれぞれは、有機ELである、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成方式を用いてシートに画像を形成する電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で画像を形成する場合、まず感光体の表面に画像データに応じた光を照射することにより感光体の表面に静電潜像を形成する。その後、現像装置によって感光体の表面の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、トナー像をシートに転写し、定着装置によりシートに転写されたトナー像を加熱しシートに定着させる。
【0003】
また画像形成装置において、露光ヘッドにより感光体に光を照射して静電潜像を形成する構成が知られている。露光ヘッドは、感光体の回転軸線方向に配列された複数の発光部と、複数の発光部から出射された光を感光体の表面に結像させるレンズを備える。発光部には、例えばLEDや有機ELが用いられる。このような露光ヘッドを用いることで、レーザ光を回転多面鏡により偏向走査して静電潜像を形成するレーザ走査方式の構成と比較して、部品点数の削減を図ることができ、画像形成装置の小型化や製造コストの削減を図ることができる。
【0004】
ここで露光ヘッドは、発光部を駆動させる駆動信号を伝送する配線がアンテナの役割をして、放射ノイズの発生源になり易い構造となっている。これに対して特許文献1では、放射ノイズ対策として、SSCG(SpreadSpectrum Clock Generator)によりシステムクロックをスペクトラム拡散して放射ノイズ成分のピーク周波数ゲインを抑える構成が記載されている。
【0005】
またスペクトラム拡散を行う場合、クロック周期変動に起因して発光部の発光時間が変動し、画像濃度の周期ムラが発生するおそれがある。そこで特許文献1では、露光ヘッドにおいて、発光部の発光時間の基準値に対する差を複数の走査線間で相殺するように、変調周期に対応した変調波形の位相が複数の走査線でずれるように構成している。これにより複数の走査線間で発光部の発光時間の変動によるムラを相殺し、画像濃度の周期ムラを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、画像パターンと変調周期の位相によっては、副走査方向の画像濃度にムラが発生するおそれがある。以下、この課題について図を用いて説明する。
【0008】
図27(a)は、特許文献1に記載の露光ヘッド130の構成を示す図である。
図27(a)に示す様に、露光ヘッド130は、20個のSLED(:Self-ScanningLight Emitting Device)チップ131を有する。SLEDチップ131は、主走査方向に沿って千鳥配列されている。
【0009】
図27(b)は、SLEDチップ131の構成を示す図である。
図27(b)に示す様に、一つのSLEDチップ131には、256個の発光部132が主走査方向に並んで設けられている。これらの発光部132は、不図示の駆動部により、副走査方向の解像度に対応した走査周期で、
図27(b)に示す左端部の発光部132から右端部の発光部132へと順次、点灯制御される。このように露光ヘッド130は、複数の発光部132から出射された光により走査露光を行って走査線を形成しライン画像を形成する。ここで発光部132を駆動させる駆動部は、SSCGによってスペクトラム拡散された変調クロックにより各々の発光部132の点灯制御を行う。以下、駆動部による発光部132の点灯制御について図を用いて説明する。
【0010】
図27(c)は、変調クロックの周波数変調と走査周期を示す図である。
図27(c)において、走査周期をQ1で示し、変調クロックの周期をQ2で示す。また、
図27(c)に示す白丸は、256個の発光部132のうち、
図27(b)に示す左端部から43個目の発光部132が発光するポイント、即ち1ラインの走査の開始後、その周期の1/6の時間が進んだポイントを示す。
図27(c)に示す様に、駆動部は、変調クロックの周期Q2と走査周期Q1とがπ/2ずれるように点灯制御を行う。このように駆動部が点灯制御を行うことで、4回の走査で各々の発光部132の発光時間に影響を与えるクロック周波数変動が平均化され、発光部132の発光時間が4つの走査線(4ライン)で平均化されて積算光量が平均化される。
【0011】
図28(a)、
図28(b)は、画像形成装置に入力される入力画像と、画像形成装置の画像形成によってシートに出力される出力画像とを比較した図である。
図28(a)、
図28(b)に示す入力画像と出力画像は、画像全体の一部を構成するライン画像のうち、副走査方向に隣接した任意の4ラインを抜き出した画像である。また
図28(a)、
図28(b)に示す入力画像と出力画像は、
図28(a)、
図28(b)に示す左端部から右端部にかけて、41個目~45個目の発光部132(以下、「発光部132a~132e」という)が形成する画素に着目した画像である。即ち、
図28(a)、
図28(b)に示す入力画像と出力画像の画素のうち、主走査方向の左端部の画素は発光部132aが形成する画素を意味し、主走査方向の右端部の画素は発光部132eが形成する画素を意味する。
【0012】
図28(a)に示す様に、発光部132a~132eを使用して、N+2ライン目とN+3ライン目で画像を形成する場合、N+2ライン目では変調クロックの周波数が低いため、点灯時間が長く、出力画像の濃度は濃くなる。これに対し、N+3ライン目では、変調クロックの周波数が高いため、点灯時間が短く、出力画像の濃度は薄くなる。従って、N+2ライン目とN+3ライン目を合わせて見ると、濃度は平均化されて入力画像と同じになる。
【0013】
しかし画像パターンによっては、上記のように画像の濃度が上手く平均化されない場合がある。
図28(b)に示す様に、発光部132a~132eを使用して、N+1ライン目とN+2ライン目で画像を形成する場合を考える。この場合、N+1ライン目とN+2ライン目は共に変調クロックの周波数が低くなるため、点灯時間が長く、出力画像の濃度が濃くなる。このため、出力画像のN+2ライン目とN+3ライン目を合わせて見ても、濃度が入力画像に近づくように上手く平均化されずに、入力画像よりも濃い濃度となってしまう。
【0014】
このように特許文献1の構成では、画像パターンによっては、副走査方向において出力画像の濃度にムラが発生する可能性がある。なお、特許文献1の露光ヘッド130は、SLEDチップ131を採用するため、上述した点灯制御を行う場合、主走査方向にも時間に応じて濃度ムラが発生する。
【0015】
そこで本発明は、スペクトラム拡散された変調クロックを用いて発光素子(例えばLED)の点灯を制御する構成において、副走査方向での画像の濃度ムラを抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、回転可能な第1の感光体と、前記第1の感光体の回転軸線方向に沿って配列され、前記第1の感光体を露光する光を発する第1の複数の発光部と、回転可能な第2の感光体と、前記第2の感光体の回転軸線方向に沿って配列され、前記第2の感光体を露光する光を発する第2の複数の発光部と、基準クロックを生成する基準クロック生成部と、前記基準クロックを変調してスペクトラム拡散された変調クロックを所定の周期で生成する変調クロック生成部と、前記変調クロックをカウントし、前記第1の複数の発光部が発光を開始するタイミングを制御する第1の制御信号を前記所定の周期の整数倍の周期で生成し、かつ、前記変調クロックをカウントし、前記第2の複数の発光部が発光を開始するタイミングを制御する第2の制御信号を前記所定の周期の整数倍の周期で生成する制御信号生成部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スペクトラム拡散された変調クロックを用いて発光素子の点灯を制御する構成の画像形成装置において、副走査方向での画像の濃度ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】感光ドラムと露光ヘッドの斜視図と断面図である。
【
図3】露光ヘッドが備えるプリント基板の実装面を示す図である。
【
図6】発光部の配置を説明するための模式図である。
【
図10】発光素子アレイチップのシステム構成を示すブロック図である。
【
図12】画像データ格納部のタイミングチャートである。
【
図13】パルス信号生成部のブロック図とパルス幅テーブルを示す図である。
【
図14】パルス信号生成部の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【
図15】アナログ部の構成を示すブロック図である。
【
図17】発光素子アレイチップ40の間で受け渡されるチップセレクト信号と変調クロック、ライン同期信号、画像データ信号の関係を示すタイミングチャートである。
【
図18】変調クロックの周波数の変動と波形を示す図である。
【
図19】ライン同期信号と画像形成時の発光部の点灯区間を示すタイミングチャートである。
【
図20】画像コントローラ部の構成を示すブロック図である。
【
図21】同期信号生成部が各色のライン同期信号を生成する動作を示すタイミングチャートである。
【
図23】発光部の点灯区間と変調クロックとライン同期信号の関係を示すタイミングチャートである。
【
図24】発光部が1画素を形成する際の発光時間と積算光量との関係を示すグラフである。
【
図25】発光部の点灯時間の補正を行った時のパルス信号生成部のタイミングチャートである。
【
図26】変調クロックの周波数と延長サイクルとの関係を示す図である。
【
図27】従来の露光ヘッドとSLEDチップの構成を示す図である。
【
図28】従来の構成において、画像形成装置に入力される入力画像と、画像形成装置の画像形成によってシートに出力される出力画像とを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<画像形成装置>
以下、本発明に係る画像形成装置Aの全体構成を画像形成時の動作とともに図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
画像形成装置Aは、イエローY、マゼンダM、シアンC、ブラックKの4色のトナーをシートに画像を転写して画像を形成するフルカラー画像形成装置である。なお、以下の説明において、上記各色のトナーを使用する部材には添え字としてY、M、C、Kを付するものの、各部材の構成や動作は使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じであるため、区別を要する場合以外は添え字を適宜省略する。
【0021】
図1は、画像形成装置Aの断面概略図である。
図1に示す様に、画像形成装置Aは、画像を形成する画像形成部を有する。画像形成部は、回転可能な感光体としての感光ドラム1(1Y、1M、1C、10K)を有する。また帯電装置2(2Y、2M、2C、2K)、露光ヘッド6(6Y、6M、6C、6K)、現像部としての現像装置4(4Y、4M、4C、4K)、転写装置5(5Y、5M、5C、5K)を有する。
【0022】
なお、第1感光体としての感光ドラム1Yに対して、第2感光体は感光ドラム1M、1C、1Kのいずれかである。また感光ドラム1Mを第1感光体とする場合、第2感光体は感光ドラム1Y、1C、1Kのいずれかである。つまり第1感光体を感光ドラム1Y、1M、1C、1Kのいずれかとする場合、第2感光体はその他の感光ドラムのいずれかである。露光ヘッド6も同様に、第1露光ヘッドとしての露光ヘッド6Yに対して、第2露光ヘッドは露光ヘッド6M、6C、6Kのいずれかである。つまり第1露光ヘッドを露光ヘッド6Y、6M、6C、6Kのいずれかとする場合、第2露光ヘッドはその他の露光ヘッドのいずれかである。
【0023】
次に、画像形成装置Aによる画像形成動作について説明する。画像を形成する場合、まずシートカセット99a又はシートカセット99bに収納されたシートSが、ピックアップローラ91a、91b、給送ローラ92a、92b、搬送ローラ93a~93cによってレジストローラ96に送られる。その後、シートSは、レジストローラ96によって所定のタイミングで搬送ベルト11に送り込まれる。
【0024】
一方、画像形成部においては、まず帯電装置2Yにより感光ドラム1Yの表面が帯電させられる。次に、画像読取部90によって読み取られた画像データ又は不図示の外部機器から送信された画像データに応じて露光ヘッド6Yが感光ドラム10Y表面に光を照射し、感光ドラム10Yの表面に静電潜像を形成する。その後、現像装置4Yにより感光ドラム1Yの表面に形成された静電潜像にイエローのトナーを付着させ、感光ドラム1Yの表面にイエローのトナー像を形成する。感光ドラム1Yの表面に形成されたトナー像は、転写装置5Yに転写バイアスが印加されることで、搬送ベルト11によって搬送されているシートSに転写される。
【0025】
同様のプロセスにより、感光ドラム1M、1C、1Kにも、露光ヘッド6M、6C、6Kから光が照射されて静電潜像が形成され、現像装置4M、4C、4Kによってマゼンダ、シアン、ブラックのトナー像が形成される。そして転写装置5M、5C、5Kに転写バイアスが印加されることで、これらのトナー像がシートS上のイエローのトナー像に対して重畳的に転写される。これによりシートSの表面には画像データに応じたフルカラーのトナー像が形成される。
【0026】
その後、トナー像を担持するシートSは、搬送ベルト97によって定着装置94に搬送され、定着装置94において加熱、加圧処理が施される。これによりシートS上のトナー像がシートSに定着される。その後、トナー像が定着されたシートSは、排出ローラ98によって排出トレイ95に排出される。
【0027】
<露光ヘッド>
次に、露光ヘッド6の構成について説明する。
【0028】
図2(a)は、感光ドラム1と露光ヘッド6の斜視図である。
図2(b)は、感光ドラム1と露光ヘッド6の断面図である。
図3(a)、
図3(b)は、露光ヘッド6が備えるプリント基板22の一方側と他方側の実装面を示す図である。
図3(c)は、
図3(b)に示す領域Vの拡大図である。
【0029】
図2に示す様に、露光ヘッド6は、感光ドラム1の表面と対向する位置に、不図示の固定部材によって固定されている。露光ヘッド6は、光を出射する発光素子アレイチップ40と、発光素子アレイチップ40を実装するプリント基板22を有する。また発光素子アレイチップ40から出射された光を感光ドラム1上に結像(集光)させるロッドレンズアレイ23と、ロッドレンズアレイ23とプリント基板22が固定されるハウジング24を有する。
【0030】
またプリント基板22における発光素子アレイチップ40の実装面と反対側の面にはコネクタ21が実装されている。コネクタ21は、画像コントローラ部70(
図9)から送信される発光素子アレイチップ40の制御信号の伝送や電源ラインを接続するために設けられている。発光素子アレイチップ40は、コネクタ21を介して駆動される。
【0031】
図3に示す様に、プリント基板22には、20個の発光素子アレイチップ40が千鳥状に二列に配列されて実装されている。また各々の発光素子アレイチップ40内には、その長手方向(矢印X方向)に所定の解像度ピッチで748個の発光部50が配列されている。
本実施形態において、発光素子アレイチップ40の上記解像度ピッチは1200dpi(約21.16μm)である。また各々の発光素子アレイチップ40が有する発光部50の長手方向の一端部から他端部までの距離は約15.8mmである。即ち、露光ヘッド6は、矢印X方向に合計で14960個の発光部50を備えており、これにより約316mm(≒約15.8mm×20チップ)の長手方向の画像幅に対応した露光処理が可能となっている。
【0032】
発光素子アレイチップ40の長手方向において、隣接する発光素子アレイチップ40の発光部50の間隔L1は約21.16μmとなっている。つまり各々の発光素子アレイチップ40の境界部において発光部50の長手方向のピッチは1200dpiの解像度のピッチとなっている。また発光素子アレイチップ40の短手方向(矢印Y方向)において、二列に並んだ発光素子アレイチップ40の発光部50の間隔L2は約105μm(1200dpiで5画素分、2400dpiで10画素分)となっている。
【0033】
本実施形態において、発光素子アレイチップ40の長手方向である矢印X方向は、感光ドラム1の回転軸線方向であり、発光素子アレイチップ40の短手方向である矢印Y方向は、感光ドラム1の回転方向である。また矢印Z方向は、後述する層構造の発光部50の各層が重なる積層方向である。なお、発光素子アレイチップ40の長手方向は、感光ドラム1の回転軸線方向に対して±1°程度傾いていても構わない。また発光素子アレイチップ40の短手方向も感光ドラム1の回転方向に対して±1°程度傾いていても構わない。
【0034】
<発光素子アレイチップ>
次に、発光素子アレイチップ40の構成について説明する。
【0035】
図4は、発光素子アレイチップ40の概略図である。
図5は、
図4に示すM-M断面で切断した断面図である。
図6は、発光部50の配置を説明するための模式図である。
【0036】
図4に示す様に、発光素子アレイチップ40は、発光部50を制御するための回路部46を内蔵した発光基板42と、複数の発光部50が発光基板42上に規則的に配置された発光領域44と、ワイヤボンディング用パッド48を有する。発光素子アレイチップ40の外部と回路部46との信号の出入力や回路部46への電源供給は、ワイヤボンディング用パッド48を通じて行われる。なお、回路部46は、アナログ駆動回路、デジタル制御回路、又はその両方を含んだ回路を用いることができる。
【0037】
図5に示す様に、発光部50は、発光基板42と、発光基板42上に矢印X方向に一定の間隔(
図6に示す間隔d1)で二次元配列された複数の下部電極54と、発光層56と、上部電極58から構成されている。
【0038】
下部電極54(複数の電極を有する第1電極層)は、発光基板42上に層状で、且つ、分離して形成された複数の電極であって、各画素に対応して設けられた電極である。つまり各々の下部電極54は、それぞれ一画素を形成するために設けられている。
【0039】
上部電極58(第2電極層)は、発光層56に対する下部電極54が配置された側と反対側の位置において、発光層56に積層されている。上部電極58は、発光層56の発光波長の光を透過させることが可能(透過可能)な電極である。
【0040】
回路部46(駆動部)は、
図7に示す画像コントローラ部70により画像データに基づいて生成される各種の制御信号に基づいて発光部50を発光させる。具体的には、回路部46は、画像データに応じて選択された下部電極54の電位を制御し、選択された下部電極54と上部電極58との間に電位差を生じさせる。陽極である上部電極58と陰極である下部電極54との間に電位差が生じると、陰極から電子が発光層56に流れ込み、陽極から正孔が発光層56に流れ込む。発光層56において電子と正孔が再結合することによって発光層56が発光する。
【0041】
発光層56が発光することで上部電極58に向かう光は、上部電極58を透過して出射される。また発光層56から下部電極54に向かう光は、下部電極54より上部電極58に向けて反射され、その反射光も上部電極58を透過して出射される。このようにして発光部50は光を出射する。なお、発光層56から上部電極58に直接向かって出射される光と、下部電極54より反射されて上部電極58から出射される光との間で出射タイミングに時間差は生じるものの、発光部50の層の厚さは極めて薄いため、ほぼ同時とみなすことができる。
【0042】
なお、本実施形態において、発光基板42はシリコン基板である。上部電極58は、発光層56の発光波長に対して透明であることが好ましい。例えば酸化インジウム錫(ITO)などの透明電極を用いることにより開口率は実質的に100%となって、発光層56で発光された光は上部電極58を通ってそのまま出射される。また本実施形態において、上部電極58は各々の下部電極54に対して共通に設けられた陽極であるが、各々の下部電極54それぞれに対して個別に設ける構成としても、複数の下部電極54毎に一つの上部電極58を設ける構成としてもよい。
【0043】
また発光層56は、有機EL膜や無機EL層などが用いられる。発光層56として有機EL膜を用いる場合、発光層56は電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層、正孔注入層、電子ブロック層、正孔ブロック層などの機能層を必要に応じて含む積層構造体であってもよい。また発光層56は矢印X方向に連続的に形成されていても、下部電極54と同等の大きさに分断されていてもよい。また各々の下部電極54を複数のグループに分割し、分割したグループ毎にそのグループに属する下部電極54の上部に一つの発光層56を積層させる構成としてもよい。
【0044】
なお、発光層56として有機EL層や無機EL層などの水分に弱い発光材料を用いる際は発光領域44への水分侵入を阻止するために封止しておくことが望ましい。封止方法としては、例えばシリコンの酸化物、シリコンの窒化物、アルミの酸化物などの薄膜の単体あるいは積層した封止膜を形成する。封止膜の形成方法としては段差などの構造の被覆性能に優れた方法が好ましく、例えば原子層堆積法(ALD法)などを用いることができる。なお、封止膜の材料、構成、形成方法などは一例であり、上述した例には限定されず、適宜好適なものを選択すればよい。
【0045】
また下部電極54は、発光層56の発光波長に対して反射率の高い金属を材料とするのが好ましい。例えばAg、Al、又はAgとAlの合金などが用いられる。また下部電極54は、回路部46の形成と共にSiプロセスを用いて形成され、回路部46の駆動部に直結される。このように下部電極54をSiプロセスによって形成することで、プロセスルールが0.2μm程度で高精度となるため、下部電極54を精度良く高密度に配置できる。さらに下部電極54を高密度に配置できるため、発光領域44の殆どを発光させることができ、発光領域44の利用効率を高めることができる。なお、各々の下部電極54の間には発光層56の有機材料が充填されており、各々の下部電極54は有機材料によって仕切られている。
【0046】
なお、工場からの製品出荷前の段階において、下部電極54を駆動し、ロッドレンズアレイ23を介して感光ドラム1上に集光された光が所定の光量になるように下部電極54に印加する電圧を調整する光量調整が行われる。また光量調整の他に、発光素子アレイチップ40とロッドレンズアレイ23との間隔を調整するピント調整がなされる。
【0047】
図6に示す様に、発光部50は、発光領域44において、矢印X方向に所定の間隔で配置されている。本実施形態では、発光部50の矢印X方向の幅W1は20.90μmであり、矢印X方向に隣接する発光部50同士の間隔d1は0.26μmである。即ち、発光部50は、矢印X方向において21.16μm(1200dpi)ピッチに配列されている。また発光部50の矢印Y方向の幅W2も、幅W1と同様に20.90μmである。即ち、本実施形態の発光部50は、一辺を20.90μmとする正方形状をなしており、その面積は436.81μm
2の大きさとなる。これは一画素の面積447.7456μm
2に対して約97.6%を占める。有機発光材料はLEDに比較して光量が少ない。これに対して上記のように発光部50を正方形として隣接する発光部50との間の距離を小さくすることで、感光ドラム1の電位を変化させる程度の光量を得るための発光面積を確保することが可能となる。
【0048】
なお、一画素の占有面積に対し90%以上の発光部50の面積を確保することが望ましい。従って、1200dpiの出力解像度の画像形成装置Aに対しては発光部50の一辺の幅を約20.07μm以上で形成することが望ましい。また2400dpiの出力解像度の画像形成装置Aに対しては発光部50の一辺の幅を約10.04μm以上で形成することが望ましい。また本発明において発光部50の形状は正方形に限られず、画像形成装置Aの出力解像度に対応する露光領域サイズの光を出射して出力画像の画質が画像形成装置Aの設計仕様を満たすレベルであれば、四角形以上の多角形、円形、楕円形などでもよい。また矢印Y方向に隣接する発光部50同士の間隔d2、発光部50の矢印Y方向の列数は、露光ヘッド6の走査速度、露光処理に必要な光量、解像度などに基づいて決定される。
【0049】
<露光ヘッドのシステム構成>
次に、露光ヘッド6と露光ヘッド6の制御を行う画像コントローラ部70の構成について説明する。画像コントローラ部70は、画像形成装置Aの本体側に設けられている。
【0050】
図7、
図8は、画像コントローラ部70と露光ヘッド6のシステム構成を示すブロック図である。
図7、
図8に示す様に、画像コントローラ部70は、画像データ生成部71(71Y、71M、71C、71K)、チップデータ変換部72(72Y、72M、72C、72K)、CPU73(73Y、73M、73C、73K)を備える。また画像コントローラ部70は、同期信号生成部74(74Y、74M、74C、74K)、基準クロック生成部57、SSCLK生成部55(55Y、55M、55C、55K)を備える。
【0051】
画像コントローラ部70は、上述した各部位を使用して、画像データの処理や画像形成タイミングの処理、露光ヘッド6Y~6Kを制御するための制御信号の送信などを行う。なお、これらの部位は、画像形成動作を行う場合にイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックに対応する四つの画像データについて同様の処理を並列処理するため、以下の説明では添え字を適宜省略する。また露光ヘッド6Y~6Kに関しても、画像コントローラ部70から各種の信号が入力されて、それぞれで同様の処理を行うため、以下の説明では添え字を適宜省略する。
【0052】
画像データ生成部71には、画像読取部90により読み取られた原稿の画像データや外部機器からネットワークを介して転送された画像データが入力される。画像データ生成部71は、入力された画像データに対して、CPU73により指示された解像度でディザリング処理を行い、画像を出力するための画像データを生成する。
【0053】
SSCLK生成部55(変調クロック生成部)は、スペクトラム拡散クロックIC(SSCG:SpreadSpectrum Clock Generator)である。SSCLK生成部55は、基準クロック生成部57により生成された基準クロックに対して周波数変調(スペクトラム拡散)した変調クロックを生成する。この変調クロックを図面中では「SSCLK」と表記する。CPU73は、SSCLK生成部55により生成される変調クロックの変調の周期と強度を設定する。
【0054】
同期信号生成部74(制御信号生成部)は、画像データの主走査方向の1ライン毎の区切りを表すライン同期信号(制御信号)を周期的に生成する。CPU73は、予め設定された感光ドラム1の回転速度に対し、感光ドラム1表面が回転方向に1200dpiの画素サイズ移動する周期を1ライン周期として、同期信号生成部74に信号周期の時間間隔を指示する。例えば感光ドラム1が200mm/sで回転する場合、1ライン周期を105.8μsとして時間間隔を指示する。
【0055】
なお、厳密には、同期信号生成部74は、SSCLK生成部55により生成され、入力された変調クロックをカウントし、CPU73で指示された値とコンペアした時にパルスを発生させるため、クロックカウント数として設定が行われる。即ち、
図9に示す様に、同期信号生成部74は、SSCLK生成部55から入力された変調クロックに応じてカウントアップするカウンタを備える。カウンタは、CPU73が指示した値Hにカウント値が一致すると0にクリアされる。つまり同期信号生成部74は、変調クロックをカウントし、主走査方向の1ライン分の静電潜像を形成する際に画像データに応じて選択された発光部50が発光を開始するタイミングを制御する制御信号であるライン同期信号を周期的に生成する。
【0056】
チップデータ変換部72は、同期信号生成部74で生成され、ライン同期信号線78を介して入力されたライン同期信号に同期して、1ライン分の画像データを各々の発光素子アレイチップ40に分割する。そしてチップデータ変換部72は、チップセレクト信号線75、クロック信号線76、画像データ信号線77を介して、クロック信号及び画像データの有効範囲を表すチップセレクト信号と共に1ライン分の画像データを各々の発光素子アレイチップ40へ送信する。
【0057】
露光ヘッド6Y~6Kがそれぞれ備えるヘッド情報格納部171は、通信信号線79を介してCPU73Y~73Kと接続されている。ヘッド情報格納部171は、ヘッド情報として、各々の発光素子アレイチップ40の発光量や実装位置情報を格納する。発光素子アレイチップ40は、画像コントローラ部70から入力された上記の各信号の設定値に基づいて発光部50を発光させる。
【0058】
また一つの露光ヘッド6が備える各々の発光素子アレイチップ40は、チップセレクト信号線75を介して、他の発光素子アレイチップ40とカスケード接続されている。ここでは説明の便宜上、
図8に示す発光素子アレイチップ40を、チップデータ変換部72からチップセレクト信号線75で接続された順に発光素子アレイチップ40a~発光素子アレイチップ40cとする。各々の発光素子アレイチップ40は、他の発光素子アレイチップ40で使用されるチップセレクト信号を生成し、チップセレクト信号線75を介して送信する。例えば発光素子アレイチップ40aは、発光素子アレイチップ40bで使用されるチップセレクト信号を生成し、チップセレクト信号線75を介して送信する。同様に、発光素子アレイチップ40bは、発光素子アレイチップ40cで使用されるチップセレクト信号を生成し、チップセレクト信号線75を介して送信する。このように一つの露光ヘッド6が備える合計20個の発光素子アレイチップ40は、それぞれチップセレクト信号を生成して、チップセレクト信号線75を介して他の発光素子アレイチップ40に送信する。
【0059】
<発光素子アレイチップのシステム構成>
次に、発光素子アレイチップ40のシステム構成について説明する。
【0060】
図10は、発光素子アレイチップ40のシステム構成を示すブロック図である。
図10に示す様に、発光素子アレイチップ40の回路部46は、デジタル部80とアナログ部86から構成されている。アナログ部86は、後述する通り、デジタル部80で生成されたパルス信号に基づいて、発光部50を駆動させるための信号を生成する。
【0061】
デジタル部80は、通信IF部81、レジスタ部82、チップセレクト信号生成部83、画像データ格納部84、パルス信号生成部85(設定部)を備える。デジタル部80は、これらの部位により、変調クロックに同期して通信信号により予め設定された設定値、チップセレクト信号、画像データ信号、ライン同期信号に基づいて、発光部50を発光させるためのパルス信号を生成し、アナログ部86へ送信する。
【0062】
チップセレクト信号生成部83は、入力されたチップセレクト信号を遅延させ、チップセレクト信号線75を介して接続された他の発光素子アレイチップ40で使用されるチップセレクト信号を生成する。
【0063】
レジスタ部82は、画像データ格納部84で使用される露光タイミング情報、パルス信号生成部85で生成されるパルス信号の幅情報及び位相情報(遅延情報)、アナログ部86で設定される駆動電流の設定情報などを格納する。通信IF部81は、CPU73から入力された通信信号に基づいて、レジスタ部82に対する設定値のライト及びリードを制御する。
【0064】
画像データ格納部84は、入力されたチップセレクト信号が有効な間の画像データを保持し、ライン同期信号に同期して発光素子アレイチップ40が有する発光部50の全ての画像データをパルス信号生成部85に同時に出力する。パルス信号生成部85は、画像データ格納部84から入力された画像データに応じて、レジスタ部82で設定されたパルス信号の幅情報及び位相情報に基づいて、発光部50をONにするタイミングを制御するパルス信号が生成し、アナログ部86に出力する。
【0065】
<画像データ格納部>
次に、画像データ格納部84の動作について説明する。以下の説明において、チップセレクト信号cs、ライン同期信号lsyncを負論理信号とするものの、これらは正論理信号であってもよい。
【0066】
図11は、画像データ格納部84の回路構成図である。
図11に示す様に、クロックゲート回路30は、チップセレクト信号csの反転信号と変調クロックであるSSCLKの論理積を出力とし、チップセレクト信号csが有効な時のみフリップフロップ回路31にクロック信号s_SSCLKを出力する。フリップフロップ回路31は、画像データ格納部84へ入力された画像データ信号dataを大元の入力とし、発光素子アレイチップ40に設けられた発光部50の数と同数の748個が直列接続されている。
【0067】
フリップフロップ回路31は、クロックゲート回路30から送られてきたクロック信号s_SSCLKで動作する。フリップフロップ回路32は、フリップフロップ回路31の出力を入力とし、ライン同期信号lsyncで動作する。フリップフロップ回路32の出力は、画像データbuf_data_0_000~buf_data_0_747として、パルス信号生成部85に出力される。
【0068】
図12は、画像データ格納部84のタイミングチャートである。
図12に示す各記号の意味は、
図11に示す記号と同じ意味である。
図12に示す様に、cs=0をSSCLKの立上りで捉えた時刻T0からT1の間、画像データはdata→dly_data_000→dly_data_001という具合に順にシフトしていく。cs=0は、クロック信号が発光部50の数と同数である748だけ入力される。これにより主走査方向の1ライン分の画像データがdly_data_000~dly_data_747に保持される。
【0069】
時刻T1以降は、cs=1であるため、シフト動作は行われずに保持される。時刻T2でlsync=0をSSCLKの立上りで捉えると、dly_data_000→buf_data_0_000→dly_data_001→buf_data_0_001という具合に主走査方向の1ライン分の画像データが一斉にbuf_data_0_000~buf_data_0_747として、パルス信号生成部85に出力される。
【0070】
<パルス信号生成部>
次に、パルス信号生成部85について説明する。なお、パルス信号生成部85は、各々の発光素子アレイチップ40が有する発光部50の数と同数である748個、存在するものの、その構造は全て同じであるため、ここでは一つのパルス信号生成部85を例示して説明する。
【0071】
図13(a)は、パルス信号生成部85のブロック図である。
図13(b)は、レジスタ部82に格納されているパルス幅テーブルを示す図である。
図14は、パルス信号生成部85の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
図13、
図14に示す様に、パルス信号生成部85は、パルス幅選択部15、加算部16、出力決定部17、カウンタ部18を有する。
【0072】
パルス幅選択部15は、画像データ格納部84から入力される画像データに応じた値を
図13(b)に示すパルス幅テーブルから選択することでパルス信号のパルス幅bを決定する。加算部16は、全てのパルス信号生成部85で共通なライン遅延信号と、パルス信号生成部85毎に異なる画素遅延信号とを加算し、パルス信号の遅延時間aを決定する。
【0073】
カウンタ部18は、変調クロックをカウントし、ライン同期信号周期cごとにカウントをリセットする。つまりカウンタ部18は、
図14に示すタイミングC1、タイミングC2でカウントをリセットする。
【0074】
出力決定部17は、カウンタ部18により生成されたカウントがaとなるタイミングでパルスをHiとし、パルス幅bの時間経過したカウントがa+bとなるタイミングで出力をLowして、パルス信号を生成する。即ち出力決定部17は、
図14に示すタイミングAで出力をHiとし、タイミングBで出力をLowとするようにパルス信号を生成する。このようにパルス信号生成部85は、変調クロックをカウントしてパルス信号を生成し、主走査方向の1ライン分の静電潜像を形成する際の発光部50の発光時間を設定する。
【0075】
なお、パルス幅テーブル、ライン遅延信号、画素遅延信号は、レジスタ部82から送信されている。このため、レジスタ部82のデータを書き換えることにより、それぞれの値をクロック周期単位で変更することができる。本実施形態では、ライン遅延信号によってライン遅延は「6」、画素遅延信号は全てのパルス信号生成部85で同一の「4」が指定され、全てのパルス信号生成部85においてa=10とする。また画像データは1bitである。従って、パルス幅テーブルで設定されたパルス幅bは、
図13(b)に示す値となる。
【0076】
<アナログ部>
次に、アナログ部86の構成について説明する。なお、以下の説明では、二つの発光部50を駆動させる二つの駆動部61について説明するものの、全ての発光部50が同様に駆動される。
【0077】
図15は、アナログ部86の構成を示すブロック図である。
図15に示す様に、アナログ部86は、発光部50を駆動させる駆動部61、DAC62(デジタルアナログ変換器)、駆動部選択部67を備える。
【0078】
DAC62は、レジスタ部82で設定されているデータに基づいて、駆動電流を決定するアナログ電圧を信号線63を介して駆動部61に供給する。パルス信号生成部85で生成されたパルス信号は、信号線66を介して、駆動部61に入力される。このように駆動部61には、駆動電流を決定するアナログ電圧とパルス信号が入力される。そして駆動部61は、これらの信号に基づいて、後述する駆動回路によって発光部50の駆動電流と発光時間を制御する。
【0079】
駆動部選択部67は、レジスタ部82に設定されているデータに基づいて、駆動部61を選択する駆動部セレクト信号を、信号線64、65を介して、二つの駆動部61に供給する。ここで駆動部セレクト信号は、選択された駆動部61に接続されている信号のみがHiとなるように生成される。例えば
図13に示す上側の駆動部61が選択される場合、信号線64のみにHiが供給され、信号線65にはLowが供給される。二つの駆動部61は、駆動部セレクト信号がHiになるタイミングで、DAC62から駆動電流を決定するアナログ電圧が設定される。このようにCPU73は、レジスタ部82を介して駆動部61を順次選択し、選択した駆動部61のアナログ電圧を設定することにより、一つのDAC62を用いて全ての駆動部61のアナログ電圧を設定する。
【0080】
次に、駆動部61の構成について説明する。
図16は、駆動部61の回路図である。
図16に示す様に、駆動部61は、MOSFET112~115、コンデンサ116、インバータ117を備える。
【0081】
MOSFET112は、ゲート電圧の値に応じて発光部50に駆動電流を供給し、ゲート電圧がLowレベルの場合、駆動電流がオフ(消灯)するように電流を制御する。MOSFET114のゲートには、信号線63が接続されている。MOSFET114は、信号線63を介して入力されるパルス信号がHiの場合、コンデンサ116に充電された電圧をMOSFET112に受け渡す。
【0082】
MOSFET115は、駆動部選択部67から信号線64を介して送信された駆動部セレクト信号がゲートに接続されている。MOSFET115は、入力された駆動部セレクト信号がHiの場合にオンし、DAC62から出力され、信号線63を介して伝送されたアナログ電圧をコンデンサ116に充電する。本実施形態では、DAC62は、画像形成前のタイミングでコンデンサ116にアナログ電圧を設定し、画像形成動作中はMOSFET115をオフ状態にして電圧レベルを保持し続ける。
【0083】
上記の動作により、MOSFET112は、設定されたアナログ電圧とパルス信号に応じて、駆動電流を発光部50に供給する。また発光部50の入力容量が大きく、オフ時の応答速度が遅い場合、MOSFET113によってオフ時の応答速度を速めることができる。MOSFET1103のゲートには、インバータ117によりパルス信号を論理反転させた信号が入力されている。パルス信号がLowの場合、MOSFET113のゲートはHiとなり、発光部50の入力容量に充電された電荷を強制的に放電する。
【0084】
<画像データ転送>
次に、画像コントローラ部70から発光素子アレイチップ40への画像データ転送について説明する。
【0085】
図17は、発光素子アレイチップ40の間で受け渡されるチップセレクト信号cs_x、cs_x_1~cs_x_19と、変調クロック(SSCLK)、ライン同期信号lsync_x、画像データ信号dataの関係を示すタイミングチャートである。
【0086】
ここで
図17に示すcs_xは、
図8に示す様に、チップデータ変換部72からチップセレクト信号線75を介して発光素子アレイチップ40aに入力されるチップセレクト信号を示す。同様に、
図17に示すcs_x_1は、
図8に示す発光素子アレイチップ40aから発光素子アレイチップ40bに入力されるチップセレクト信号を示し、
図17に示すcs_x_2は、
図8に示す発光素子アレイチップ40bから発光素子アレイチップ40cに入力されるチップセレクト信号を示す。また
図17に示すcs_x_19は、
図8に示す発光素子アレイチップ40aから最後にカスケード接続される20番目の発光素子アレイチップ40に入力されるチップセレクト信号を示す。
【0087】
また
図17において、カスケード接続された発光素子アレイチップ40のうち、n番目に接続された発光素子アレイチップ40が備える発光部50を主走査方向の1ライン分、発光させるための画像データをdata(n-1)と示す。例えば発光素子アレイチップ40aが備える発光部50を1ライン分、発光させるための画像データはdata0であり、発光素子アレイチップ40cが備える発光部50を1ライン分、発光させるための画像データはdata2である。
【0088】
図17に示す様に、チップセレクト信号は、発光素子アレイチップ40が備える発光部50を1ライン分、発光させるための画像データ信号data0を転送するのに必要なクロックサイクル数ΔC0サイクルだけLowとする。本実施形態では、クロック1サイクルあたり発光部50の1個分の画像データを転送し、ΔC0は748サイクルとする。なお、1サイクルで、発光部50の複数個分の画像データを転送する構成や、複数サイクルで発光部50の1個分の画像データを転送する構成としてもよい。
【0089】
チップデータ変換部72から発光素子アレイチップ40に入力されたチップセレクト信号cs_xは、チップセレクト信号生成部83によってΔC1サイクルだけ遅延され、チップセレクト信号cs_x_1として出力される。ΔC1は、ΔC0にチップセレクト信号の生成に必要な分の遅延時間を加えた値である。本実施形態では、チップセレクト信号の生成に2サイクルかかるものとし、ΔC1=750サイクルする。これにより発光素子アレイチップ40aのチップセレクト信号生成部83は、チップセレクト信号cs_x_1とチップセレクト信号cs_xとが同時にLowとならないように、チップセレクト信号cs_x_1を生成する。
【0090】
他の発光素子アレイチップ40も同様に、出力するチップセレクト信号が入力されたチップセレクト信号と同時にLowとならないように、出力するチップセレクト信号を生成する。この結果、各チップセレクト信号は、cs_x→cs_x_1→cs_x_2→・・・cs_x_19と順次Lowとなる。
【0091】
またライン同期信号lsync_xの周期ΔC2は、全ての発光素子アレイチップ40に画像データを送るため、最後にカスケード接続された20番目の発光素子アレイチップ40にチップセレクト信号cs_x_19が入力されるまでの時間より大きな値とする。これを式で表すと次の式1となる。
【0092】
(式1)
ΔC2≧ΔC1×20
【0093】
本実施形態では、ΔC2=16000サイクルとする。このようにライン同期信号lsync_xの一周期内で転送された発光部50のデータに基づいて、
図12に示す時刻T2のように、次のlsync_x周期で各々の発光部50が一斉に点灯制御が行われる。
【0094】
<変調クロックの周期とライン同期信号の周期との関係>
次に、SSCLK生成部55により生成される変調クロックの周期と、同期信号生成部74により生成されるライン同期信号の周期との関係について説明する。
【0095】
上述の通り、SSCLK生成部55は、基準クロックに対して周波数変調した変調クロックを生成する。本実施形態において、SSCLK生成部55は、変調クロックが1600サイクルで1周期となる変調周期であり、その周波数の中心値は100MHz±1%のセンタースプレッドの変調を行う。
【0096】
図18(a)は、変調クロックの周波数の変動を示す図である。
図18(a)に示す変調クロックの色が濃い部分は周波数が高く、色が薄い部分は周波数が低いことを示し、中間濃度の部分は基準となる周波数になっており、その変調周期ΔCsは1600サイクルである。これは周波数で換算すると62.5kHzの変調周波数となる。なお、放射ノイズ対策においてクロック変調周波数は10~100kHzで行う場合が多いものの、この値はCISPRなどの目標値を満たす範囲で設定すればよい。
【0097】
図18(b)は、
図18(a)に示す(1)、(2)、(3)の時点での変調クロックの波形を示す図である。
図18(b)に示す様に、変調サイクルで最も周波数が低くなる(1)の時点では、(2)の時点の基準となる周波数に対して周波数が1%低くなっている。また変調サイクルで最も周波数が高くなる(3)の時点では、(2)の時点の基準となる周波数に対して周波数が1%高くなっている。ここで変調クロックの周期ΔCsが1600サイクルであり、ライン同期信号lsync_xの周期ΔC2が16000であることから、変調クロックの周期ΔCsとライン同期信号lsync_xの周期ΔC2との関係は次の式2で表すことができる。式2において、Nは1以上の整数であり、本実施形態ではN=10である。
【0098】
(式2)
ΔC2=N×ΔCs
【0099】
また式2は、クロックの変調周期Tfと主走査方向の1ライン分の静電潜像を形成する時間Tlとの関係を次の式3としている。
【0100】
(式3)
Tf=Tl/N
【0101】
図19(a)は、本実施形態における、ライン同期信号lsync_xと画像形成時の発光部50の点灯区間を示すタイミングチャートである。
図19(a)では、変調クロックの変調に関し、
図18(a)と同様の濃淡と波形の両方で示している。
図19(a)に示す様に、発光部50は、ライン同期信号lsync_xに対し、パルス信号の遅延時間aとして10サイクル経ってから画像を形成するための発光(点灯)を開始し、点灯区間はパルス幅bとして10000サイクル点灯する。またライン同期信号lsync_xの1周期は、変調クロックの変調の10周期分となっている。
【0102】
また式2、式3の通り、ライン同期信号lsync_xの周期が変調クロックの周期の整数倍となるように設定されているため、変調クロックが所定の位相となるタイミングで、毎回のライン同期信号lsync_xが発生する。従って1ライン毎の発光部50の点灯時間が一定となり、1ライン毎の発光部50の積算光量が一定となるため、出力画像の1ライン毎の濃度が均一化される。このため、本実施形態の構成によれば、スペクトラム拡散によって放射ノイズを低減しつつ、副走査方向での画像の濃度にムラが発生することを抑制することができる。
【0103】
つまり、仮にライン同期信号lsync_xの周期が変調クロックの周期の整数倍となるように設定されていない場合、例えば
図19(b)に示す様に、変調クロックの位相が180度ずれたタイミングで次回のライン同期信号lsync_xが発生する。この場合、発光部50の点灯区間は変調クロックの周期ΔCsである1600サイクルの6.25倍であることから、端数となる0.25に該当する最後の400サイクルは、変調クロックの周波数が中心周波数より低い周波数でカウントする。このため、この間の発光部50の点灯時間は中心周波数での400サイクルより長い時間となり、全体では中心周波数のみで10000サイクル分の時間より長くなるため積算光量が大きくなる。一方、前回の発光部50の点灯時間は、
図19(a)に示す様に、端数となる0.25に該当する最後の400サイクルは変調クロックの周波数が中心周波数より高めの周波数でカウントするため、実際の時間は中心周波数での400サイクルより短い時間となる。このため、全体の発光部50の点灯区間は中心周波数のみで10000サイクル分の時間より点灯区間は短くなるため積算光量は小さくなる。このように1ライン毎にライン同期信号lsync_xが発生する時の変調クロックの位相が異なる場合、発光部50の点灯時間が1ライン毎に異なり、出力画像における1ライン毎の画像濃度が不均一になり、副走査方向において濃度ムラが発生する。
【0104】
これに対して本実施形態の構成によれば、ライン同期信号lsync_xの周期が変調クロックの周期の整数倍となるように設定されているため、1ライン毎の発光部50の点灯時間を同じにすることができる。従って、出力画像における1ライン毎の画像濃度が均一化され、出力画像の副走査方向の濃度ムラを抑制することができる。
【0105】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る画像形成装置の第2実施形態について図を用いて説明する。第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の図面、同一の符号を付して説明を省略する。
【0106】
図20は、本実施形態に係る画像形成装置Aの画像コントローラ部70の構成を示すブロック図である。
図20に示す様に、本実施形態に係る画像コントローラ部70の構成は、第1実施形態の構成に対し、SSCLK生成部55と同期信号生成部74が全色で共通となっている点が異なる。同期信号生成部74は、各色のライン同期信号lsync_xを個別に生成する。その他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
【0107】
図21は、同期信号生成部74がイエローのトナー像を形成する際のライン同期信号lsync_x(Y)とマゼンダのトナー像を形成する際のライン同期信号lsync_x(M)を生成する動作を示すタイミングチャートである。なお、以下では、シアンとブラックのトナー像を形成する際のライン同期信号lsync_x(C)、lsync_x(K)の生成についての説明を省略するものの、これらはマゼンダのライン同期信号lsync_x(M)の生成と同様に生成される。
【0108】
図21(a)に示す様に、同期信号生成部74のカウンタは、入力される変調クロックに応じてカウントアップし、CPU73が指示した値Nとカウント値が同じ値になると0にクリアされる。同期信号生成部74は、変調クロックの立ち上がりエッジにおいて、カウンタの値が0の場合に1サイクル幅のLowパルスであるライン同期信号lsync_x(Y)を生成し、カウンタの値が1600の場合に1サイクル幅のLowパルスであるライン同期信号lsync_x(M)を生成する。
【0109】
このようにトナー像の色毎にライン同期信号lsync_xをずらすことで、イエロー色のトナー像とマゼンダ色のトナー像との間でシートSの搬送方向の色ずれが生じる場合に、この色ずれを補正することができる。例えばイエロー色のトナー像とマゼンダ色のトナー像が1/2ライン分ずれている場合、ライン同期信号lsync_x(Y)に対してライン同期信号lsync_x(M)の位相を半周期ずらすことで副走査方向の書き出しタイミングを1/2ラインずらし、色ずれを補正することができる。
【0110】
ここで同期信号生成部74がライン同期信号lsync_x(M)を生成するタイミングは、SSCLK生成部55による変調クロックの周期のサイクル数ΔCsのM倍の値が設定される。ここでいうMの値は、1以上の整数であり、式3に示すN未満の数である。これにより
図21(b)に示す様に、ライン同期信号lsync_x(M)の生成タイミング(位相)は、ライン同期信号lsync_x(Y)に対し、変調クロックの変調周期のサイクル数ΔCs×Mサイクル分(ここでは1サイクル分)ずれることになる。つまりSSCLK生成部55により生成される変調クロックの変調周期の1周期をTfとした場合、ライン同期信号lsync_xの周波数の位相はTf×Mとされる。このように各色のライン同期信号lsync_xが生成されるタイミングをΔCs単位でずらすことで、各色の露光ヘッド6の発光部50のライン毎の点灯時間を一定とし、出力画像のライン毎の濃度を均一化させることができる。
【0111】
このように本実施形態の構成によれば、スペクトラム拡散によって放射ノイズを低減し、副走査方向での画像の濃度にムラが発生することを抑制しつつ、シートSの搬送方向の色ずれを補正することができる。
【0112】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る画像形成装置の第3実施形態について図を用いて説明する。第1実施形態、第2実施形態と説明の重複する部分については、同一の図面、同一の符号を付して説明を省略する。
【0113】
本実施形態の構成は、第2実施形態の構成に対し、画像データが1bitから2bit(4階調)に変更された構成である。この変更に対応するため、
図22に示す様に、レジスタ部82に格納されているパルス幅テーブルの値が、第1実施形態の数値から変更されている。その他の構成は、第2実施形態の構成と同様である。
【0114】
図22に示す様に、レジスタ部82に格納されているパルス幅テーブルの値として、画像データの値に対するパルス幅bがSSCLK生成部55により生成された変調クロックの周期ΔCsの整数倍となるように設定されている。換言すれば、発光部50が1画素を形成するための発光時間をTv、変調クロックの周期をTfとする場合、Tv=Tf×K(Kは1以上の整数)としている。
【0115】
図23(a)は、画像データが「2」の場合の露光ヘッド6Yの発光部50の点灯区間と変調クロックとライン同期信号lsync_x(Y)の関係を示すタイミングチャートである。
図23(b)は、
図23(a)に対し、ライン同期信号lsync_x(Y)の位相を800サイクル遅れさせた場合のタイミングチャートである。
図23において、発光部50の点灯区間の変調クロックの周波数は
図21と同様に濃淡で表現されており、変調クロックの周波数が高い周波数であれば濃く、低い周波数であれば薄く表現している。
【0116】
本実施形態の構成では、
図23(a)に示す構成、
図23(b)に示す構成のいずれの構成においても、発光部50の点灯区間の変調クロックの周波数の平均は中央値となっている。つまり変調クロックとライン同期信号lsync_x(Y)の位相関係に関し、
図23(a)に示す関係と
図23(b)に示す関係のいずれの関係においても、発光部50の点灯区間において、発光時間Tvが等しくなることがわかる。
【0117】
このように本実施形態の構成によれば、クロック変調の位相とライン同期信号の位相との関係に関して第2実施形態で説明した制約が無い場合でも、1ラインを形成する際の発光部50の点灯時間を同じにすることができる。従って、出力画像における1ライン毎の画像濃度が均一化され、副走査方向の濃度ムラを抑制することができる。
【0118】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る画像形成装置の第4実施形態について図を用いて説明する。第1~第3実施形態と説明の重複する部分については、同一の図面、同一の符号を付して説明を省略する。
【0119】
図24は、発光部50が1画素を形成する際の発光時間Tvと積算光量との関係を示すグラフである。
図24に示す様に、発光部50の発光時間Tvと積算光量との関係は個々の発光部50によってばらつき、また目標光量に対してもずれた値となる。例えば、
図24に示す様に、発光時間Tvに対して積算光量が非線形であって積算光量が目標光量より低い発光部50も存在すれば、発光時間Tvと積算光量との関係が線形性を有し目標光量より積算光量が高い発光部50も存在する。このように個々の発光部50で発光時間Tvに対する積算光量がばらつく原因としては、発光部50の個体差や発光部50を駆動させる回路部46のばらつきなどが考えられる。
【0120】
これに対して本実施形態の構成は、
図24に破線で示す発光部50の積算光量のずれを抑制するために、パルス信号生成部85により生成されるパルス信号のパルス幅bを補正する構成である。概略を説明すると、
図23に示す様に、設計値で画像データが「2」であり、第3実施形態と同様にΔCs×6のサイクル数で点灯区間(Y)を設定する場合、目標光量はPtであるものの、発光部50の積算光量はPtより低いPaとなる。この場合、発光部50の画像データが「2」の時の補正として発光時間を延ばすことにより、積算光量を目標光量であるPtに近づける。以下、発光部50の積算光量の具体的な補正方法について説明する。なお、本実施形態に係る画像形成装置Aにおいて、後述する発光部50の積算光量の補正に関する制御以外の構成は、第3実施形態の構成と同様の構成である。
【0121】
図25は、
図24に破線で示す発光部50の積算光量を目標光量であるPtとするために発光部50の点灯時間である点灯区間(Y)の補正を行った時のパルス信号生成部85のタイミングチャートである。
図25において、発光部50の点灯区間の変調クロックの周波数は
図21と同様に濃淡で表現されており、変調クロックの周波数が高い周波数であれば濃く、低い周波数であれば薄く表現している。
【0122】
図25に示す様に、本実施形態では、ライン同期信号lsync_x(Y)の立下りから点灯区間(Y)までの遅延時間aに対応するサイクル数を10とし、変調クロックが上限周波数である101MHzに到達しているところから点灯区間(Y)が始まる。ここで仮にSSCLK生成部55により基準クロックがスペクトラム拡散されておらず、常に中心周波数の100MHzで動作している場合、発光部50の積算光量をPtとするためには、単純に2μsec分だけパルス幅bを延長すればよい。即ち、ΔCs×6に相当する9600サイクル分のパルス幅bに対し、2μsecに相当する200サイクル分、パルス幅bを延長すればよい。
【0123】
しかし本実施形態では、SSCLK生成部55により基準クロックがスペクトラム拡散されているため、その分の誤差が生じる。本実施形態の場合、
図25に示すタイミングB1、タイミングB2の時点において、変調クロックの周波数は共に上限の101MHzである。このため、単純に200サイクル延長する場合、この区間は中心周波数よりも周波数が高いため、実際の延長時間が短くなる。そこで200サイクル区間の平均周波数となる100.75MHzでの2μsecに対応する延長サイクル数ES1を次の式4を用いて求める。
【0124】
(式4)
ES1=2/(1/100.75)=201.5
【0125】
このように延長サイクル数を、式4から求められた値である202サイクル(小数点以下は四捨五入)として補正する。これにより発光部50の積算光量を目標光量であるPtに高い精度で補正することができる。
【0126】
次に、ライン同期信号lsync_x(Y)が、第2実施形態で説明した色ずれ補正により
図25に示すタイミングから100サイクル後に位相が遅れる場合について説明する。この場合、
図26(a)、
図26(b)に示す様に、タイミングB2は100サイクル後のタイミングB2´となる。従って、200サイクル間の平均周波数である100.5MHzでの2μsecに対する延長サイクル数ES2を次の式5から求める。
【0127】
(式5)
ES2=2/(1/100.5)=201
【0128】
このように延長サイクル数を式5から求められた値である201サイクルで補正する。これにより発光部50の積算光量を目標光量であるPtに高い精度で補正することができる。
【0129】
以上説明した通り、本実施形態において、パルス信号生成部85は、パルス幅テーブルを参照して決定するパルス信号のパルス幅bに対し、ライン同期信号lsync_x(Y)の位相と変調クロックの周波数に基づいて補正を行う。このような構成により、発光部50の積算光量の精度を高め、画像品質の向上を図ることができる。
【0130】
なお、第1~第4実施形態においては、各々の露光ヘッド6の発光部50を同時に発光及び消灯させるOLDE方式の構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、露光ヘッド6にSLEDチップを採用し、SLEDチップを順次発光させる構成としても、上述した副走査方向での画像の濃度ムラを抑制する効果を得ることができる。しかしながら、露光ヘッド6をOLED方式とすることにより、主走査方向での画像の濃度ムラをも抑制することができるため、露光ヘッド6をOLED方式とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0131】
1…感光ドラム(感光体)
6…露光ヘッド
42…発光基板(基板)
46…回路部(駆動部)
50…発光部
54…下部電極(複数の電極を含む第1電極層)
55…SSCLK生成部(変調クロック生成部)
56…発光層
57…基準クロック生成部
58…上部電極(第2電極層)
74…同期信号生成部(制御信号生成部)
85…パルス信号生成部(設定部)
A…画像形成装置