(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】捲回装置、および捲回体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20241007BHJP
B65H 18/10 20060101ALI20241007BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20241007BHJP
【FI】
H01M10/04 W
B65H18/10
H01M10/0587
(21)【出願番号】P 2020167009
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山辺 純成
(72)【発明者】
【氏名】山華 雅司
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-184160(JP,A)
【文献】特開2014-120281(JP,A)
【文献】特開2014-135260(JP,A)
【文献】特開2009-259722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
B65H 18/10
H01M 10/0587
H01M 6/02
H01G 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の搬送物を捲回する巻き芯と、
前記巻き芯へ前記搬送物を案内するローラと、を備え、
前記巻き芯は、第1棒状部材と、前記第1棒状部材との間で前記搬送物を把持する第2棒状部材と、前記第1棒状部材及び前記第2棒状部材を開閉させる開閉機構と、を備え、
前記第1棒状部材は、第1延設軸に沿って延びる第1支持体と、前記第2棒状部材に対する対向面を形成する第1弾性体とを備え、
前記第1支持体から前記第2棒状部材が位置する側への前記第1弾性体の突出量は、前記第1延設軸に沿って前記第1弾性体の中央部から前記開閉機構側へ向かうにつれて小さくなる、
捲回装置。
【請求項2】
前記第1弾性体は、前記中央部から前記開閉機構側へ向かうにつれて前記支持体側へ向かう曲面を有する、
請求項1に記載の捲回装置。
【請求項3】
前記第1弾性体の前記突出量は、前記中央部から前記開閉機構とは反対側へ向かうにつれて小さくなる、
請求項1又は2に記載の捲回装置。
【請求項4】
前記第2棒状部材は、第2延設軸に沿って延びる第2支持体と、前記第1棒状部材に対する対向面を形成する第2弾性体とを備え、
前記第2支持体から前記第1棒状部材が位置する側への前記第2弾性体の突出量は、前記第2延設軸に沿って中央部から前記開閉機構側へ向かうにつれて小さくなる、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の捲回装置。
【請求項5】
前記第1弾性体は、前記搬送物を把持した際に前記第1棒状部材と前記搬送物とが接触する部分において前記突出量が最大となる、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の捲回装置。
【請求項6】
前記第1棒状部材と前記第2棒状部材とが平行又は略平行な状態では、前記第1棒状部材と前記第2棒状部材との距離は、前記中央部から前記開閉機構側へ向かうにつれて大きくなる、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の捲回装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の捲回装置を用いて前記搬送物が捲回された捲回体を製造する製造方法であって、
前記第1棒状部材と前記第2棒状部材との間に前記搬送物を挿入することと、
前記第1棒状部材と前記第2棒状部材とを閉じることにより、前記中央部及び前記中央部の周辺と前記第2棒状部材とが接触した状態で前記搬送物を把持することと、
前記第1棒状部材及び前記第2棒状部材を回転させることにより前記搬送物を捲回することと、
を備える、捲回体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、捲回装置、および捲回体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池内部に含まれるコイルなどの捲回体を製造する捲回装置がある。このような捲回装置は、帯状(シート状)の搬送物をクランプ(把持)した状態で回転することにより捲回体を巻き取る巻き芯と、巻き芯へ搬送物を案内するガイドローラと、搬送物を供給するリールとを備える。巻き芯とガイドローラの間には、搬送物を切断するためのカッターが設けられ、カッターとガイドローラの間には、一対の繰り出しローラが設けられる。一対の繰り出しローラは、搬送物を2つのローラの間に挟んで保持する。搬送物に所定以上の引っ張り力が加えられると、2つのローラが回転し、搬送物が巻き芯へ送り出される。
【0003】
巻き芯は、開閉可能な1対の棒状部材と、1対の棒状部材を開閉させる開閉機構を備える。一対の棒状部材のそれぞれは、開閉機構により片側支持される。繰り出しローラから送り出された搬送物は、1対の棒状部材の間でクランプされる。1対の棒状部材の間で搬送物がクランプされた状態で巻き芯が回転することにより、搬送物が捲回される。そして、カッターで搬送物を切断することにより、捲回体が製造される。
【0004】
棒状部材の間で搬送物をクランプする際には、棒状部材間が平行でない状態で巻き芯が組付けられることがある。捲回装置では、棒状部材間が平行でない状態で搬送物をクランプする場合でも、棒状部材と搬送物の角との片当たりの発生が防止され、搬送物と棒状部材との間での隙間の発生が有効に防止されることが、求められている。そして、搬送物と棒状部材との間での隙間の発生を防止する等して、一対の棒状部材の間で搬送物を適切にクランプすることが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、一対の棒状部材の間で搬送物を適切にクランプできる捲回装置、及び捲回体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、捲回装置は、巻き芯と、ローラとを備える。巻き芯は、帯状の搬送物を捲回する。ローラは、巻き芯へ搬送物を案内する。巻き芯は、第1棒状部材と、第1棒状部材との間で搬送物を把持する第2棒状部材と、第1棒状部材及び第2棒状部材を開閉させる開閉機構とを備える。第1棒状部材は、延設軸に沿って延びる支持体と、第2棒状部材に対する対向面を形成する弾性体とを備え、支持体から第2棒状部材が位置する側への弾性体の突出量は、延設軸に沿って弾性体の中央部から開閉機構側へ向かうにつれて小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る捲回装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る捲回装置により製造される捲回体の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る捲回装置の巻き芯に搬送物が取り付けられた状態を示す概略図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る捲回装置の巻き芯に搬送物が捲回される様子を示す概略図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る捲回装置の巻き芯の構成の一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る捲回装置の一対の棒状部材の間で搬送物をクランプする様子を示す概略図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す状態から棒状部材の間がさらに閉じた様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る捲回装置1の構成を示す図である。捲回装置1は、帯状の搬送物が捲回された捲回体(捲回物)を製造する装置である。捲回体は、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池に用いられるコイル(電極群)である。
【0011】
本実施形態の捲回装置1は、正電極シート101と、負電極シート102と、電気的絶縁性を有する2つのセパレータシート103、104を用いて二次電池の電極群を製造する。
図2は、本実施形態の捲回装置1で製造されるコイル100を示す。正電極シート101は、二次電池の正極を形成する電極シートである。負電極シート102は、二次電池の負極を形成する電極シートである。セパレータシート103、104は、正電極シート101と負電極シート102との間に挿入され、正電極シート101と負電極シート102との接触による短絡を防止する。一般的に、セパレータシート103、104は、正電極シート101及び負電極シート102よりも薄く形成される。捲回装置1は、セパレータシート103、104を間に介して正電極シート101及び負電極シート102を重ね合わせた搬送物105を捲回することで、二次電池のコイル100を製造する。製造されたコイル100では、セパレータシート103、104によって、正極と負極の間が電気的に絶縁するセパレータが形成される。
【0012】
なお、捲回装置1は、正電極シート101と、負電極シート102とを用いて二次電池の電極群を製造する装置であってもよい。この場合、正電極シート101及び負電極シート102の一方と一体に、絶縁層が形成される。このため、正電極シート101と負電極シート102を捲回することで製造される電極群では、絶縁層が、正極と負極との間を電気的に絶縁するセパレータとなる。また、正電極シート101と負電極シート102は、逆であってもよい。例えば、正電極シート101の代わりに負電極シートが用いられ、負電極シート102の代わりに正電極シートが用いられてもよい。
【0013】
捲回装置1は、リール10と、ガイドローラ20と、カッター30と、巻き芯40とを備える。
【0014】
リール10は、搬送するシートの種類に対応する数だけ設けられる。本実施形態では、4つのリール10が設けられている。リール10のそれぞれは、搬送物105を構成する4つのシート(101-104)のうちの1つが捲回されたロール状の原反を保持し、シートを所定の長さだけ間欠的に送り出す。例えば、正電極シート101に対応するリール10は、正電極シート101を間欠的に送り出す供給機構を備え、正電極シート101を供給する。
【0015】
ガイドローラ20は、リール10から供給された正電極シート101、負電極シート102、及びセパレータシート103、104を巻き芯40へ案内する。
【0016】
なお、ガイドローラ20の数や配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく、リール10および巻き芯40の配置などに応じて適宜変更することができる。また、ガイドローラ20には、正電極シート101の張力を制御するダンサーローラ、負電極シート102の張力を制御するダンサーローラなどを設けることもできる。
【0017】
カッター30は、巻き芯40とガイドローラ20の間に設けられている。カッター30は、ガイドローラ20から搬送された搬送物105を切断する。
【0018】
巻き芯40は、図示しないフレームなどに取り付けられている。巻き芯40には、サーボモータ等のモータが接続されている。巻き芯40は、モータの駆動により、フレーム等に対して回転する。
【0019】
巻き芯40は、重ね合わされた搬送物105を把持(クランプ)した状態で回転することにより、搬送物105を外周面に巻き付けることができる。回転軸に垂直又は略垂直な断面における巻き芯40の断面形状は、製造される捲回体の形態に応じて適宜変更される。
【0020】
なお、巻き芯は、複数設けられてもよい。例えば、巻き芯40の周辺に、搬送物を巻き付けるための別の巻き芯体がさらに配置されてもよい。
【0021】
図3及び
図4は、
図1における巻き芯40とカッター30の周辺を拡大して示す図である。カッター30とガイドローラ20の間には、
図3に示すように、一対の繰り出しローラ21が設けられる。一対の繰り出しローラ21は、搬送物105を2つのローラの間に挟んで保持する。搬送物105に所定の引っ張り力が加えられると、2つのローラが回転し、搬送物105が巻き芯40へ送り出される。
【0022】
巻き芯40は、第1棒状部材41と第2棒状部材42とからなる1対の棒状部材を備える。第1棒状部材41及び第2棒状部材42のそれぞれは、搬送物105を把持する把持体である。繰り出しローラ21から送り出された搬送物105が第1棒状部材41と第2棒状部材42との間に挿入されることにより、搬送物105が第1棒状部材41と第2棒状部材42との間でクランプされる。
図4に示すように、第1棒状部材41と第2棒状部材42との間で搬送物105がクランプされた状態で巻き芯40が回転することにより、搬送物105が捲回される。その後、カッター30を用いて搬送物105が切断されることにより、コイル100が捲回体として製造される。
【0023】
図5及び
図6は、巻き芯40の構成を示す図である。
図5は、巻き芯40の回転軸Rに対して略平行な方向のうちの一方から見た図である。
図6は、
図5のA-A線断面図である。
図6は、回転軸Rに対して垂直又は略垂直な断面で巻き芯40を示す図である。
【0024】
図5に示すように、巻き芯40は、第1棒状部材41と第2棒状部材42と、第1棒状部材41及び第2棒状部材42の間を開閉させる開閉機構43とを備える。
【0025】
開閉機構43は、第1棒状部材41及び第2棒状部材42のそれぞれの一端を回動可能に支持している。第1棒状部材41及び第2棒状部材42のそれぞれは、開閉機構43により片側支持される。第1棒状部材41の回動軸と第2棒状部材42の回動軸のそれぞれは、巻き芯40の回転軸Rに対して垂直又は略垂直である。開閉機構43は、第1棒状部材41及び第2棒状部材42をそれぞれ回動させることにより、第1棒状部材41及び第2棒状部材42の間を開く又は閉じる。なお、開閉機構43の代わりに、第1棒状部材41と第2棒状部材42との間に、ばねを設けてもよい。
【0026】
第1棒状部材41は、支持体(第1支持体)411と、弾性体(第1弾性体)412とを備える。弾性体412は、ねじ413により支持体411に固定されている。
【0027】
支持体411は、剛性が高い材料により形成される。支持体411は、例えば、超鋼製の材料により形成される。支持体411の一端は、開閉機構43に接続されている。支持体411は、長手軸C1(第1延設軸)に沿って延設されている。長手軸C1は、第1棒状部材41の回動軸に対して垂直又は略垂直となる。また、長手軸C1は、第1棒状部材41の長手軸である。
【0028】
ここで、第1棒状部材41の回動軸に対して平行又は略平行な方向を第1棒状部材41の幅方向と規定し、第1棒状部材41の回動軸を中心とする周方向を第1棒状部材41の開閉方向と規定する。第1棒状部材41の開閉方向は、第1棒状部材41の幅方向に対して垂直又は略垂直であり、かつ、第1棒状部材41の長手軸に対して垂直又は略垂直である。また、長手軸C1に沿う方向について、開閉機構43が配置される側を軸側とし、軸側とは反対側を先端側とする。
【0029】
支持体411は、第2棒状部材42が配置される側を向く支持面414を有する。支持面414は、長手軸C1及び第1棒状部材41の幅方向に対して平行又は略平行な平面である。
【0030】
支持面414には、弾性体412が取り付けられている。弾性体412は、支持体411よりも剛性が低く弾性率が小さい材料により形成される。弾性体412は、例えば、ゴム及びそれに準ずる弾性体により形成される。弾性体412は、例えば、力学的強度に優れたウレタンゴムにより形成される。弾性体412は、弾性率が小さい(柔らかい)プラスチック素材や、樹脂により形成されてもよい。
【0031】
支持体411には、長手軸C1に沿う方向の両端部にねじ穴(図示しない)が形成されている。また、弾性体412には、支持体411の長手軸C1に沿う方向の両端部に貫通孔(図示しない)が形成されている。ねじ穴及び貫通孔に挿入されたねじ413により、弾性体412が支持体411に固定されている。ねじ413は、例えば、皿ねじである。なお、弾性体412を支持体411に固定する方法は、ねじ止めを用いた方法に限定されない。例えば、弾性体412を支持体411の支持面414に接着することにより、弾性体412を支持体411に固定してもよい。
【0032】
弾性体412は、第2棒状部材42と対向する対向面415を有する。対向面415は、第2棒状部材42が配置される側を向く。対向面415は、第1棒状部材41の幅方向に対して平行又は略平行な曲面である。対向面415では、長手軸C1に沿う方向における中央部が第1棒状部材41と第2棒状部材42との間に挿入された搬送物105と接触する接触面として機能する。なお、弾性体412の対向面415における長手軸C1に沿う方向の中央部は、弾性体412の対向面415の長手軸C1に沿う方向の両端の間の任意の部分に設定することが可能であり、弾性体412の対向面415において長手軸C1に沿う方向の中央(中心)を含んでいなくても構わない。
【0033】
弾性体412は、長手軸C1に沿う方向における中央部において厚みT1が最大となる形状に形成されている。対向面415では、長手軸C1に沿う方向における中央部において、支持面414からの突出量が最大となる。弾性体412には、長手軸C1に沿う方向における中央部に、支持面414からの高さ(突出量)が最大となる最大突出部416が形成される。最大突出部416は、長手軸C1に沿う方向について、対向面415の搬送物105と接触する範囲に形成される。最大突出部416は、長手軸C1に沿う方向について、対向面415の搬送物105と接触する範囲の中央に形成されることが好ましい。弾性体412は、長手軸C1に沿う方向について、最大突出部416から開閉機構43が位置する側へ離れるにつれて、厚みT1が小さくなるとともに支持面414からの高さ(突出量)が小さくなる。また、弾性体412は、長手軸C1に沿う方向について、最大突出部416から開閉機構43とは反対側(先端側)へ離れるにつれて、厚みT1が小さくなるとともに支持面414からの突出量が小さくなる。
【0034】
第2棒状部材42は、第1棒状部材41の構成と同様の構成を有する。第2棒状部材42は、長手軸C2(第2延設軸)に沿って延設される支持体(第2支持体)421と、弾性体(第2弾性体)422とを備える。弾性体412は、ねじ423を用いて支持体421に固定されている。支持体421は、第1棒状部材41が配置される側を向く支持面424を備え、支持面424には、弾性体422が取り付けられている。弾性体412は、第1棒状部材41が配置される側を向く対向面425を備える。弾性体422には、長手軸C2に沿う方向における中央部に、厚みT2(支持面424からの突出量)が最大となる最大突出部426が形成される。
【0035】
図5は、長手軸C1と長手軸C2とが平行又は略平行な状態(以下、平行状態と呼ぶ)を示している。平行状態では、第1棒状部材41の長手軸C1と第2棒状部材42の長手軸C2とが、平行又は略平行になる。また、平行状態では、第1棒状部材41の支持体411の支持面414と第2棒状部材42の支持体421の支持面424とが、平行又は略平行になる。平行状態では、最大突出部416と最大突出部426とは、長手軸C1及び長手軸C2に沿う方向について同じ又は略同じ位置に位置する。平行状態における最大突出部416と最大突出部426との長手軸C1及び長手軸C2に沿う方向についての位置は厳密に一致する必要はなく、長手軸C1及び長手軸C2に沿う方向について最大突出部416が最大突出部426に対してわずかにずれていてもよい。
【0036】
平行状態では、第1棒状部材41の対向面415と第2棒状部材42の対向面425との距離Dは、長手軸C1及び長手軸C2に沿う方向について最大突出部416及び最大突出部426が配置される位置において最小となる。すなわち、第1棒状部材41と第2棒状部材42との距離Dは、長手軸C1及び長手軸C2に沿う方向について、対向面415搬送物105と接触する範囲の中央付近において最小となる。また、第1棒状部材41と第2棒状部材42との距離Dは、長手軸C1及び長手軸C2に沿う方向について、最大突出部416及び最大突出部426から開閉機構43が位置する側(第1棒状部材41及び第2棒状部材42の回動軸が位置する側)へ離れるにつれて大きくなる。また、第1棒状部材41と第2棒状部材42との距離は、長手軸C1及び長手軸C2に沿う方向について、最大突出部416及び最大突出部426から開閉機構43とは反対側へ離れるにつれて大きくなる。
【0037】
上記構成により、平行状態では、第1棒状部材41の対向面415と第2棒状部材42の対向面425との距離Dは、最大突出部416及び最大突出部426が配置される位置において、開閉機構43が位置する側の端部における、第1棒状部材41の対向面415と第2棒状部材42の対向面425との距離よりも小さくなる。また、第1棒状部材41の対向面415と第2棒状部材42の対向面425との距離Dは、最大突出部416及び最大突出部426が配置される位置において、開閉機構43とは反対側の端部よりも小さくなる。すなわち、第1棒状部材41及び第2棒状部材42の中央部では、長手軸C1及び長手軸C2に沿う方向についての両端部に比べて、第1棒状部材41と第2棒状部材42との距離Dが小さくなる。
【0038】
次に、本実施形態の捲回装置1を用いた捲回体の製造方法と、本実施形態の捲回装置1の効果について説明する。
【0039】
本実施形態の捲回装置1を用いて、搬送物105の捲回体であるコイル100を製造する際には、まず、繰り出しローラ21により、セパレータシート103、104が巻き芯40へ送り出される。次に、巻き芯40の第1棒状部材41と第2棒状部材42との間で、セパレータシート103、104がクランプされる。次に、セパレータシート103、104に張力がかけられた状態で、巻き芯40を回転させる。この際、巻き芯40の回転を開始するとともに、繰り出しローラ21により、正電極シート101及び負電極シート102を巻き芯40の第1棒状部材41と第2棒状部材42との間へ挿入する。正電極シート101及び負電極シート102のそれぞれは、セパレータシート103、104の間に挿入され、セパレータシート103、104との間の摩擦力により、巻き芯40へ送り出される。正電極シート101、負電極シート102、セパレータシート103、104を含む搬送物105が巻き芯40にクランプされた状態で、巻き芯40を回転させることにより、搬送物105が巻き芯40の周りに捲回される。その後、搬送物105をカッター30により切断し、その後、搬送物105が周りに捲回された巻き芯40から巻き芯40を引き抜くことにより、搬送物105の捲回体であるコイル100が作成される。
【0040】
本実施形態では、第1棒状部材41は、第2棒状部材42に対向する対向面415を形成する弾性体412を備える。弾性体412の厚み(突出量)T1は、長手軸(第1延設軸)C1に沿って最大突出部416から開閉機構43側へ向かうにつれて小さくなっている。対向面415は、最大突出部416から開閉機構43側へ向かうにつれて支持体411側へ向かう曲面である。また、第2棒状部材42も第1棒状部材41と同様の構成を備える。このため、第1棒状部材41と第2棒状部材42とが平行又は略平行な状態では、第1棒状部材41と第2棒状部材42との距離Dは、最大突出部416から第1棒状部材41の回動軸側(開閉機構43側)へ向かうにつれて大きくなる。
【0041】
図7は、長手軸C1と長手軸C2とが平行でない状態で、搬送物105がクランプされる様子を示す図である。
図8は、
図7に示す状態から棒状部材の間がさらに閉じた様子を示す概略図である。上記構成により、棒状部材41、42の長手軸C1、C2が平行でない状態で搬送物105がクランプされる場合、最大突出部416、426の近傍において、対向面415、425間の距離が最も小さくなる。このため、
図7に示すように、対向面415、425において、最大突出部416、426又はその近傍が搬送物105に始めに接触する。このため、棒状部材41、42は、最大突出部416、426が設けられる部分及びその近傍において、搬送物105を確実にクランプすることができる。すなわち、棒状部材41、42間が平行でない状態で搬送物105をクランプする場合であっても、片当たりの発生が防止され、棒状部材41、42の中央部において搬送物105をクランプすることができる。これにより、搬送物105が適切にクランプされ、セパレータシート103、104のような薄い材料をクランプする場合であっても、棒状部材間から搬送物が抜け落ちることが防止される。
【0042】
上記構成により、本実施形態によれば、棒状部材41、42間が平行でない状態で巻き芯40が組付けられた場合であっても、片当たりの発生が防止されることにより、棒状部材41、42と搬送物105との接触面積を確保することができる。このため、セパレータシート103、104のような薄い材料をクランプする場合であっても、セパレータシート103、104を適切にクランプすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、搬送物105と接触する対向面415、425は、弾性体412、422により形成される。このため、搬送物105をクランプする際には、最大突出部416、426及びその近傍が搬送物105に接触した後、
図8に示すように、搬送物105から作用する圧力により、弾性体412が弾性変形する。弾性体412が弾性変形することにより、最大突出部416、426に加えて、最大突出部416、426の周辺部分においても、対向面415、425と搬送物105とが接触する。これにより、対向面415、425と搬送物105との接触面積が大きくなり、搬送物105がさらに適切にクランプされる。
【0044】
本実施形態では、対向面415、425が弾性体412、422により形成されているため、厚さや材質が異なる種類に搬送物105を変更した場合でも、弾性体412、422が弾性変形することにより、搬送物105を有効にクランプすることができる。すなわち、搬送物105の種類の変更による厚さや材質の変化を吸収することができる。これにより、巻き芯40の種類の変更や巻き芯40の組付けの調整を行うことなく、搬送物105の種類を変更することができる。
【0045】
搬送物105と接触する弾性体412、422は、支持体411、421に比べて早く劣化する。本実施形態では、弾性体412、422は、ねじ413、423により、支持体411、421に固定されている。このため、弾性体412、422は、支持体411、421に対して容易に着脱することができる。これにより、劣化した弾性体412、422のみを容易に取り換えることができる。
【0046】
なお、対向面415は、曲面以外の形状に形成されていてもよい。例えば、対向面415は、最大突出部416から開閉機構43側へ向かうにつれて支持体411側へ向かう平面と、最大突出部416から開閉機構43とは反対側へ向かうにつれて支持体411側へ向かう平面とにより形成されていてもよい。
【0047】
また、対向面415は、最大突出部416から開閉機構43側へ向かうにつれて支持体411側へ向かう曲面と、最大突出部416から開閉機構43とは反対側へ向かって長手軸C1及び支持面414と平行に延設される平面により形成されていてもよい。
【0048】
第2棒状部材42の対向面425は、第2棒状部材42の長手軸C2に対して平行な平面に形成されていてもよい。また、第2棒状部材42には弾性体422が設けられなくてもよい。これらの場合であっても、最大突出部416を有する弾性体412が第1棒状部材41に設けられることにより、第1棒状部材41と第2棒状部材42との距離Dは、最大突出部416から第1棒状部材41の回動軸側(開閉機構43側)へ向かうにつれて大きくなり、棒状部材41、42の長手軸C1、C2が平行でない状態で搬送物105がクランプされる場合、最大突出部416又はその近傍において、対向面415、425間の距離が最も小さくなる。これにより、上記説明と同様に、搬送物105が適切にクランプされる。
【0049】
また、上述の実施形態では、捲回装置の一例として、二次電池の電極群を製造する捲回装置1について説明したが、これに限るものではない。捲回装置は、帯状体が捲回された捲回体を製造する装置であればよい。例えば、上述の実施形態及びその変形例に係る構成は、二次電池の電極群以外の捲回体を製造する捲回装置にも適用することができる。また、捲回体を製造に用いられる複数の帯状体の枚数は、3枚以下であってもよく、5枚以上であってもよい。
【0050】
これらの少なくとも一つの実施形態又は実施例によれば、第1支持体から第2棒状部材が位置する側への第1弾性体の突出量は、第1延設軸に沿って第1弾性体の中央部から開閉機構側へ向かうにつれて小さくなる。これにより、一対の棒状部材の間で搬送物を適切にクランプできる捲回装置、及び捲回体の製造方法を提供することができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…捲回装置、10…リール、20…ガイドローラ、21…繰り出しローラ、30…カッター、40…巻き芯、41、42…棒状部材、43…開閉機構、100…コイル、101…正電極シート、102…負電極シート、103、104…セパレータシート、105…搬送物、411、421…支持体、412、422…弾性体、413、423…ねじ、414、424…支持面、415、425…対向面、416、426…最大突出部、C1、C2…長手軸、T1、T2…厚み、D…距離。