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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】緊急通報装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/04 20060101AFI20241007BHJP
   G08B 25/08 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H04M11/04
G08B25/08 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020171126
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062919
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】304014143
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】平 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 佳之
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-050170(JP,A)
【文献】特開2019-004307(JP,A)
【文献】特開2020-061681(JP,A)
【文献】特開2001-333210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0063153(US,A1)
【文献】特開2011-145733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B23/00-31/00
H04L12/00-12/22
12/50-12/66
45/00-49/9057
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP(Internet Protocol)網を通じて、所定の緊急通報受理機関に対し、緊急通報を行う緊急通報装置であって、
緊急通報後において、受信信号の種別を判別する信号種別判別手段と、
前記信号種別判別手段で判別された前記受信信号の種別に応じて、前記緊急通報受理機関と自機に接続された電話機との間の通話回線の接続制御を行う回線接続制御手段と
前記信号種別判別手段で判別された前記受信信号の種別に応じて、前記IP網に応答/切断信号を送出するように制御する応答/切断制御手段
を備え、
前記応答/切断制御手段は、前記受信信号の種別が情報受信端末起動信号である場合には、応答信号を送信し、前記受信信号の種別がモデム信号である場合には、切断信号を送信し、
前記回線接続制御手段は、前記信号種別判別手段で判別された前記受信信号の種別が、呼び出し信号である場合に、前記緊急通報受理機関と自機に接続された前記電話機との間に通話回線を接続するように制御する
ことを特徴とする緊急通報装置。
【請求項2】
請求項1に記載の緊急通報装置であって、
前記電話機のフック状態を検出するフック状態検出手段を備え、
前記回線接続制御手段は、前記フック状態検出手段でオフフック状態にあると判別された前記電話機と前記緊急通報受理機関との間に通話回線を接続するように制御する
ことを特徴とする緊急通報装置。
【請求項3】
IP(Internet Protocol)網を通じて、所定の緊急通報受理機関に対し、緊急通報を行う緊急通報装置であって、
緊急通報後において、受信信号の種別を判別する信号種別判別手段と、
前記信号種別判別手段で判別された前記受信信号の種別に応じて、前記緊急通報受理機関と自機に接続された電話機との間の通話回線の接続制御を行う回線接続制御手段と
前記電話機のフック状態を検出するフック状態検出手段
を備え、
自機に接続された前記電話機には、発信者番号通知サービスに対応する機能を備えた一般電話機が含まれており、
前記回線接続制御手段は、前記信号種別判別手段で判別された前記受信信号の種別が、情報受信端末起動信号であり、前記フック状態検出手段の検出結果が、前記一般電話機がオンフック状態である場合には、前記IP網と前記一般電話機との間に回線を接続して、応答信号を送出させ、前記一般電話機において前記IP網からのモデム信号の受信を終了した場合には、切断信号を送出することで、前記IP網との間に接続した前記回線を解放させ、前記信号種別判別手段で判別された前記受信信号の種別が、呼び出し信号である場合には、前記緊急通報受理機関と自機に接続された前記電話機のいずれかとの間に通話回線を接続するように制御する
ことを特徴とする緊急通報装置。
【請求項4】
請求項3に記載の緊急通報装置であって、
前記回線接続制御手段は、前記フック状態検出手段でオフフック状態にあると判別された前記電話機と前記緊急通報受理機関との間に通話回線を接続するように制御する
ことを特徴とする緊急通報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、警察機関、消防機関、海上保安庁といった緊急通報受理機関に対して、緊急通報を行う緊急通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、火災などの緊急事態の発生時において、消防機関などの所定の緊急通報受理機関に緊急通報する緊急通報装置が知られている。緊急通報装置は、例えば、通報者が通報ボタンを押下すると、緊急通報受理機関に電話をかけて通話回線を接続し、予め用意されている音声メッセージにより緊急事態の発生を自動通報するものである。この後、緊急通報受理機関から緊急通報装置に接続された呼び出し専用電話機(以下、専用電話機という。)に対して呼び返しがある。これに応じて鳴動する当該専用電話機の送受話器(ハンドセット)を、通報者が取り上げるオフフック操作を行うことにより、当該専用電話機と緊急通報受理機関との間に通話回線が接続され、通話を行うことができる。
【0003】
なお、緊急通報装置が、固定電話網(PSTN(Public Switched Telephone Network))に接続されている場合には、緊急通報後においては、緊急通報受理機関と当該緊急通報装置との間の通話回線が回線保留される。このため、緊急通報受理機関から呼び返しを行うと、呼び返し信号(以下、逆信という。)として、呼び出し信号(以下、IR信号という。)が固定電話網から送出されて、専用電話機が鳴動する。これに応じて、専用電話機の送受話器を取り上げることにより、緊急通報受理機関の担当者と通話が可能になる。
【0004】
しかし、近年においては、固定電話網に替えて、IP(Internet Protocol)網を利用することができるようになり、近い将来においては、固定電話網を全てIP網に移行することが予定されている。IP網は、インターネット・プロトコル・スイート技術(TCP/IP)を利用して相互接続されたネットワークを意味する。IP網に接続された緊急通報装置の運用においては、緊急通報後における回線保留の機能はなくなり、専用電話機に電話をかけ直す(コールバックする)ことにより、通話回線を接続して通報者と通話を可能にする方式が採用される。
【0005】
この場合に、着信時に発信者番号を通知するサービスの契約をしている加入電話回線を通じてIP網に接続された緊急通報装置から緊急通報を行った場合に、専用電話機が緊急通報受理機関からのコールバックを受けられないという事象が発生する。なお、着信時に発信者番号を通知するサービスは、ナンバー・ディスプレイ(登録商標)などと呼ばれて、電話会社により提供されているものであり、この明細書においては、発信者番号通知サービスと記載する。
【0006】
発信者番号通知サービスの契約をしている加入電話回線を通じてIP網に接続された緊急通報装置から緊急通報を行って、緊急通報受理機関が通報元に対してコールバックを行ったとする。この場合、IP網側から情報受信端末起動信号(以下、CAR信号という。)が送出され、着信側電話端末の発信者番号通知サービス対応機能を起動させるようにする。次に、着信側電話端末から応答があれば、IP網側からモデム信号として発信者番号を送出して、着信側電話端に発信者番号を通知して表示させるようにし、この後に、IR信号を送出して、着信側電話端末を呼び出すという手順を踏むことになる。なお、CAR信号送出後、着信側電話端末から6秒間の間に応答がなければ、IP網側から自動的にIR信号が送出されるようになっている。
【0007】
いうまでもなく、専用電話機は、緊急通報時の通話を可能にするものであるため、発信者番号通知サービスに対応していない。このため、緊急通報受理機関からのコールバックに応じて、最初に到来するCAR信号により専用電話機を鳴動させ、これに応じて当該専用電話機がオフフック操作されたとする。この場合、直後に到来するのは発信者番号であり、この後に到来するIR信号に対して応答することができないので、緊急通報受理機関と当該専用電話機との間に通話回線を接続できない。この問題を解決するための発明を、本願の出願人は先に出願しており、当該出願は後に記す特許文献1として既に出願公開されている。
【0008】
特許文献1では、CAR信号の到来では専用電話機を鳴動させず、IR信号が到来した場合に専用電話機を鳴動させることにより、緊急通報受理機関との間に通話回線を接続して、通話を可能にする発明が開示されている。なお、CAR信号は、1秒間を1周期とし、0.5秒オン、0.5秒オフとなる信号が連続するものである。また、IR信号は、3秒間を1周期とし、1秒オン、2秒オフとなる信号が連速するものである。また、モデム信号は、データ信号を音声帯域内の交流波形にキャリア変調した信号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-50170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された発明は、発信者番号通知サービスの契約をしている加入電話回線に接続された緊急通報装置から緊急通報を行った場合であっても、緊急通報受理機関と専用電話機との間に通話回線の接続を可能にする有効な手法である。しかし、発信者番号通知サービスの契約をしている加入電話回線を通じてIP網に接続されている緊急通報装置に関して、更に解決すべき課題の存在が明らかになった。具体的には、専用電話端末がオフフック状態にある場合の対応である。
【0011】
固定電話網(PSTN)に専用電話機が接続されている場合には、専用電話機の送受話器を取り上げて逆信を待っていても、発信者番号通知サービスが機能していないために特に問題が生じることはなく、IR信号に対して応答するため通話が可能である。しかし、IP網に専用電話機が接続されている場合であって、発信者番号通知サービスの契約をしている場合には、発信者番号通知サービスの動作となり、CAR信号に対して応答してしまう。この場合、緊急通報受理機関からの逆信信号に応じたIR信号に応答できず、緊急通報受理機関との間に通話回線を接続できないために、通話不可となる。
【0012】
以上のことに鑑み、この発明は、IP網を通じて緊急通報を行う緊急通報装置に接続された電話機がオフフック状態であっても、緊急通報受理機関からの逆信に応じて通話回線を接続して通話をできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の緊急通報装置は、
IP(Internet Protocol)網を通じて、所定の緊急通報受理機関に対し、緊急通報を行う緊急通報装置であって、
緊急通報後において、受信信号の種別を判別する信号種別判別手段と、
前記信号種別判別手段で判別された前記受信信号の種別に応じて、前記緊急通報受理機関と自機に接続された電話機との間の通話回線の接続制御を行う回線接続制御手段と
前記信号種別判別手段で判別された前記受信信号の種別に応じて、前記IP網に応答/切断信号を送出するように制御する応答/切断制御手段と
を備え、
前記応答/切断制御手段は、前記受信信号の種別が情報受信端末起動信号である場合には、応答信号を送信し、前記受信信号の種別がモデム信号である場合には、切断信号を送信し、
前記回線接続制御手段は、前記信号種別判別手段で判別された前記受信信号の種別が、呼び出し信号である場合に、前記緊急通報受理機関と自機に接続された前記電話機との間に通話回線を接続するように制御する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、IP網を通じて緊急通報を行う緊急通報装置に接続された電話機がオフフック状態であっても、緊急通報受理機関からの逆信に応じて通話回線を接続して通話を行うことが可能になる。これにより、緊急通報装置に対する信頼性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態の緊急通報装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図2】第1の実施の形態の緊急通報装置の動作について説明するためのブロック図である。
図3】第1の実施の形態の緊急通報装置の動作を説明するためのシーケンス図である。
図4】第2の実施の形態の緊急通報装置の動作について説明するためのブロック図である。
図5】第2の実施の形態の緊急通報装置の動作を説明するためのシーケンス図である。
図6】第3の実施の形態の緊急通報装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図7】第3の実施の形態の緊急通報装置の動作について説明するためのブロック図である。
図8】第3の実施の形態の緊急通報装置の動作を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しながら、この発明による緊急通報装置の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態の緊急通報装置は、自機に接続された専用電話機がオフフック状態であっても、緊急通報受理機関からの逆信に応答して通話を可能にすることができるものである。以下においては、この発明による緊急通報装置の3つの実施の形態について説明する。
【0018】
また、緊急通報先である緊急通報受理機関は、一般には、警察機関、海上保安庁、消防機関などであるが、警備会社などの任意の通報先を緊急通報受理機関とすることももちろん可能である。以下に説明する実施の形態においては、説明を簡単にするため、緊急通報装置は、火災の発生を通報するものであり、緊急通報受理機関は、消防機関である場合を例にして説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の緊急通報装置の構成例を説明するためのブロック図である。図1に示すように、緊急通報装置1は、IP網4を通じて、緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続し、緊急通報を行うことができるものである。IP網4は、TCP/IPを利用して相互接続されたネットワークを意味するが、電話会社側の通信に関する設備の全てを含む。また、この明細書において、IP網4には、アナログ回線変換装置6が接続されており、緊急通報装置1は、アナログ回線変換装置6を介して、IP網4に接続されている。従って、緊急通報装置1とアナログ回線変換装置6との間はアナログ回線によって接続されている。
【0020】
第1の実施の形態の緊急通報装置1には、専用電話機2と一般電話機3が接続されている。専用電話機2と一般電話機3とは、緊急通報受理機関からのコールバックに応答するための緊急通報時の呼び出し専用電話機として機能するものである。但し、一般電話機3は、図示しないSIPサーバなどの主装置にも接続され、通常時においては当該主装置を通じてIP網に接続され、目的とする相手先に電話をかけたり、かかってきた電話に応答したりすることができるものである。
【0021】
一般電話機3は、発信者番号通知サービスに対応したものであり、発信者番号通知サービスの契約をしている加入電話回線を通じてIP網4に接続されている。これにより、着信時において発信者番号の通知を受けて、これを自機が備える例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示部に表示することができる。なお、一般電話機3が接続された緊急通報装置1もまた、発信者番号通知サービスの契約をしている加入電話回線を通じてIP網4に接続されているものとする。
【0022】
図1に示すように、緊急通報装置1は、回線制御部101と、電話機制御部102と、CPU部103と、通報ボタン104とを備える。回線制御部101は、IP網4を通じた回線の接続制御を行うものであり、信号種別判別部1011、応答/切断制御部1012、通報制御部1013を備える。電話機制御部102は、緊急通報装置1に対して接続された回線と、専用電話機2や一般電話機3との接続制御を行うもので、フック状態検出部1021、回線接続制御部1022を備える。
【0023】
CPU103は、緊急通報装置1の各部を制御する主制御部であり、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを備えて構成されている。通報ボタン104は、通報者による押下操作を受け付けるボタンスイッチである。通報ボタン104が押下操作されると、所定の電気信号がCPU部103に供給され、通報ボタンが操作されたことがCPU部103に通知される。
【0024】
通報ボタン104が押下されると、CPU部103は、回線制御部101に対して緊急通報を行うことを指示する。これに応じて、通報制御部1013が機能し、この実施の形態では、消防機関である緊急通報受理機関5に対して緊急通報を行う。信号種別判別部1011は、緊急通報後、緊急通報受理機関5からのコールバックに応じて、IP網4を通じて送信されて来る自機宛ての信号の種別(受信信号の種別)を判別する。
【0025】
上述したように、緊急通報装置1は、発信者番号通知サービスの契約をしている加入電話回線を通じてIP網4に接続されている。このため、緊急通報装置1からの緊急通報に応じて、緊急通報受理機関5が緊急通報装置1に対してのコールバックを行うと(逆信を送信すると)、IP網4(電話会社側)から緊急通報装置1に対して、まず、CAR信号が送信される。これに応答することにより、発信者番号を通知するモデム信号が送信され、次に、IR信号が送信されることになる。また、CAR信号の送出から6秒間の間に応答がなければ、IP網4は、IR信号を送出する。
【0026】
このため、信号種別判別部1011は、受信した信号が、CAR信号なのか、IR信号なのかを判別して、これを関係する各部に通知する。応答/切断制御部1012は、信号種別判別部1011の判別結果や通報制御部1013からの制御信号に応じて、IP網4に対して応答を返したり、接続している回線を切断したりする制御を行う。
【0027】
フック状態検出部1021は、自機に接続されている専用電話機2と一般電話機3とのそれぞれのフック状態(オンフック状態なのか、オフフック状態なのか)を検出し、検出結果を回線接続制御部1022に通知する。回線接続制御部1022は、信号種別判別部1011からの判別結果やフック状態検出部1021からの検出結果に基づいて、IP網4と接続した通信のための回線を、専用電話機2や一般電話機3に接続する制御を行う。
【0028】
また、回線接続制御部1022は、緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続する場合であって、専用電話機2や一般電話機3がオフフック状態でない場合には、専用電話機2や一般電話機3を鳴動させて、着信を通知する。この後、回線接続制御部1022は、通報者によるオフフック操作を待って、通話回線を接続する処理を行う。すなわち、回線接続制御部1022は、専用電話機2や一般電話機3のフック状態をも考慮して、緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続する処理を行う。
【0029】
図1を用いて説明した構成を備える緊急通報装置1では、緊急通報後の緊急通報受理機関5からのコールバックに応じて、CAR信号を受信した場合には応答することはない。しかし、IR信号を受信した場合には、専用電話機2と一般電話機3との内、オフフック状態にある電話機との間に通話回線を接続する。なお、専用電話機2と一般電話機3とのいずれもがオフフック状態にない時には、従来通りに電話機を鳴動させて着信の発生を通知し、オフフック操作された電話機との間に通話回線を接続する。
【0030】
図2は、第1の実施の形態の緊急通報装置1の動作について説明するためのブロック図である。図2において、回線接続制御部1022は、その機能を分かり易く示すために、接続回路221、呼び出し制御部222を備えるものとして示しているが、これらの回路部が実現する機能だけを備えることを意図するものではない。回線接続制御部1022は、接続先の電話機を切り替えたり、電話機の鳴動を制御したり、応答信号を送出したりするなどの回線の接続制御のための種々の処理を行うことができるものであり、第2、第3の実施の形態でも同様である。
【0031】
緊急通報装置1の通報ボタン104が押下操作されると、CPU部103からの制御信号に応じて、通報制御部1013が機能する。通報制御部1013は、通話回線を接続し緊急通報受理機関5に対して発信して、応答/切断制御部1012を機能させて緊急通報受理機関の5の応答を検出し、その後、切断制御部1012を機能させて切断信号を送信して、接続した通話回線を切断する。この後、緊急通報受理機関5からのコールバックに応じた逆信の送出により、IP網4は、発信者番号通知サービスを実行する。すなわち、IP網4は、まず、緊急通報装置1に対して、CAR信号を送出し、これに応答があればモデム信号により発信者番号を通知し、終了信号(切断信号)が送出されてくれば、IR信号を送出する。また、IP網4は、CAR信号を送出してから6秒間の間に応答がない場合には、IR信号を送出する。
【0032】
このため、緊急通報後において、信号種別判別部1011は、自機宛てに送信されて来る信号を受信して、その受信信号の種別を判別し、判別結果を回線接続制御部1022に通知する。回線接続制御部1022は、信号種別判別部1011からの判別結果が、CAR信号の到来を示すものである場合には、何もせずに通話回線が未接続である状態を維持する。しかし、回線接続制御部1022は、信号種別判別部1011からの判別結果が、IR信号の到来を示すものである場合には、フック状態検出部1021からの専用電話機2と一般電話機3のフック状態の判別結果を考慮して、通話回線の接続制御を行う。
【0033】
例えば、信号種別判別部1011からの判別結果がIR信号であることを示し、フック状態検出部1021からの検出結果が、専用電話機2がオフフック状態で、一般電話機3がオンフック状態であることを示していたとする。この場合、回線接続制御部1022は、図2に示すように、接続回路221において、入力端Nと接続端aとを接続し、入力端Nと接続端bとは切り離し、オフフック状態にある専用電話機2をIP網4との回線に接続し、IP網4に対して応答信号を返信する。これにより、専用電話機2と緊急通報受理機関5との間に、IP網4を通じて通話回線が接続され、逆信通話が可能にされる。
【0034】
これとは逆に、信号種別判別部1011からの判別結果がIR信号であることを示し、フック状態検出部1021からの検出結果が、専用電話機2がオンフック状態で、一般電話機3がオフフック状態であることを示していたとする。この場合、回線接続制御部1022は、図2に示した状態とは逆に、接続回路221において、入力端Nと接続端aとは切り離し、入力端Nと接続端bとを接続し、オフフック状態にある一般電話機3をIP網4との回線を接続し、応答信号を返信する。これにより、一般電話機3と緊急通報受理機関5との間に、IP網4を通じて通話回線が接続され、逆信通話が可能にされる。
【0035】
また、信号種別判別部1011からの判別結果がIR信号であることを示し、フック状態検出部1021からの検出結果が、専用電話機2と一般電話機3との両方がオフフック状態であることを示していたとする。この場合、回線接続制御部1022は、接続回路221において、入力端Nと接続端aとを接続すると共に、入力端Nと接続端bとを接続し、通話回線をオフフック状態にある専用電話機2と一般電話機3との両方をIP網4との回線に接続し、応答信号を返信する。これにより、専用電話機2と緊急通報受理機関5との間と、一般電話機3と緊急通報受理機関5との間とに、IP網4を通じて通話回線が接続され、3者間で逆信通話が可能にされる。なお、専用電話機2と一般電話機3との間で、優先順位を決めておき、両方の電話機がオフフックだった場合に、優先順位の高い方の電話機と通話回線を接続するように制御することも可能である。
【0036】
また、信号種別判別部1011からの判別結果がIR信号であることを示し、フック状態検出部1021からの検出結果が、専用電話機2と一般電話機3との両方がオンフック状態であることを示していたとする。この場合には、呼び出し制御部222が機能し、専用電話機2と一般電話機3との両方に着信を通知して鳴動させるようにする。この後、専用電話機2または一般電話機3でオフフック操作がなされ、これがフック状態検出部1021で検出されて、回線接続制御部1022に通知される。この場合、接続回路221は、入力端Nとオフフック操作された電話側の接続端とを接続して、応答信号を返信し、オフフック操作された電話機と緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続して、逆信通話を可能にする。
【0037】
図3は、第1の実施の形態の緊急通報装置1の動作を説明するためのシーケンス図である。通報ボタン104が通報者によって押下操作されると、CPU部103からの制御に応じて、通報制御部1013が機能し、緊急通報番号119への緊急通報ダイヤルを行う(ステップS1)。これに応じて、IP網4は、消防機関である緊急通報受理機関5に発信して呼び出す(ステップS2)。これに応じて、緊急通報受理機関5の担当者が所定のいわゆる指令台を通じて応答操作を行うと、緊急通報受理機関5からは応答信号が送出され(ステップS3)、これがIP網4を通じて緊急通報装置1に送信される(ステップS4)。なお、ステップS3、S4で送出される応答信号は、使用される回線によっては送出されない場合もある。
【0038】
これにより、緊急通報装置1と緊急通報受理機関5との間にIP網4を通じて通話回線が接続される。緊急通報装置1の通報制御部1013は、予め用意されている通報メッセージ(音声メッセージ)を緊急通報受理機関5に自動送信する(ステップS5)。当該通報メッセージは、「火事です。火事です。」といった、発生した緊急事態の内容を示す音声メッセージや、住所や電話番号などが、音声情報として送信される。通報メッセージの全部の送出が終了すると、通報制御部1013は、応答/切断制御部1012を制御して、切断信号を送出する(ステップS6)。当該切断信号は、IP網4を通じて、緊急通報受理機関5に送信される(ステップS7)。これにより、緊急通報装置1と緊急通報受理機関5との間に接続された通話回線は解放される。
【0039】
このようにして、緊急通報が行われ、通報者は、図3に示すように、専用電話機2の送受話器を取り上げて(オフフック状態にして)、緊急通報受理機関5の担当者が応答するのを待っていたとする。この状態では、緊急通報受理機関5からのいわゆる逆信待ちの状態にあり、通話回線は非接続の状態にある。なお、図3においては、説明を簡単にするため、オンフック状態にある一般電話機3についての記載は省略している。
【0040】
緊急通報を受け付けた緊急通報受理機関5では、所定の指令台よりコールバック操作(逆信操作)を行うことにより、逆信(呼び返し信号)を送出する(ステップS11)。IP網4は、コールバックの相手先である緊急通報装置1が、発信者番号通知サービスの契約をしている加入電話回線に接続されたものであることを把握している。このため、IP網4は、緊急通報装置1に対して、CAR信号を送信する(ステップS12)。
【0041】
緊急通報後においては、緊急通報装置1の回線制御部101の信号種別判別部1011において受信信号の種別が判別され、判別結果が電話機制御部102の回線接続制御部1022に通知される。しかし、CAR信号に対して、何も行わないようになっている。このため、緊急通報装置1が自機宛てのCAR信号を受信しても、図3に示すようにこれに応じて信号を返信するなどのことはない。このため、CAR信号の送出から6秒が経過するまで、応答信号が送出されない場合、IP網4は、緊急通報装置1に対して、IR信号を送信する(ステップS13)。
【0042】
IR信号を受信した信号種別判別部1011は、受信した信号がIR信号であると判別したことを回線接続制御部1022に通知する。回線接続制御部1022は、接続回路221を入力端Nと接続端aとを接続するように制御して、オフフック状態にある専用電話機2とIP網4との間に通信を行うための回線を接続する(ステップS14)。更に、回線接続制御部1022は、この接続した回線を通じて、IP網4に対して応答信号を送出する(ステップS15)。これにより、逆信元の緊急通報受理機関5と、緊急通報元の緊急通報装置1に接続されているオフフック状態の専用電話機2との間にIP網4を通じて通話回線が接続され、逆信通話が可能になる(ステップS16)。
【0043】
このように、第1の実施の形態の緊急通報装置1は、CAR信号には応答せず、IR信号の到来を待って、オフフック状態にある電話機との間で通話回線を自動接続し、逆信通話を可能にする。従って、オフフック状態にある電話機が存在する場合には、電話機を呼び出して鳴動させるといった処理を行うことなく、オフフック状態にある当該電話機との間に通話回線を自動接続して、逆信通話を可能にしている。
【0044】
なお、ここでは、専用電話機2がオフフック状態で、一般電話機3がオンフック状態である場合を例にして説明した。しかし、専用電話機2がオンフック状態で、一般電話機3がオフフック状態である場合には、同様にして、一般電話機3と緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続し、逆信通話を行うことができる。従って、通報者が、専用電話機2または一般電話機3をオフフック状態にして、逆信を待っていても、通話回線を接続して、緊急通報受理機関5の担当者と逆信通話を行い、状況を説明するなどのことが可能になる。これにより、緊急通報受理機関5では、適切な対応を迅速に取ることが可能になる。
【0045】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態の緊急通報装置1の場合には、CAR信号が到来しても応答せず、IR信号が到来して初めてIP網4との間で回線を接続して応答信号を返信する構成を取っていた。上述したように、IP網4の構成として、CAR信号の送出から6秒を経過するまでに応答がなかった場合にIR信号が送出されるようになっている。このため、第1の実施の形態の緊急通報装置1の場合には、図3に示したように、逆信の送出(ステップS11)から逆信通話(ステップS16)が可能になるまでには、6秒以上の時間がかかってしまう。
【0046】
そこで、第2の実施の形態の緊急通報装置1Aでは、より迅速に逆信通話を可能にするものである。第2の実施の形態の緊急通報装置1Aもまた、図1を用いて説明した第1の実施の形態の緊急通報装置1と同様の構成を有するものである。すなわち、第2の実施の形態の緊急通報装置1Aもまた、IP網4を通じて緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続することができるものであり、専用電話機2と発信者番号通知サービスに対応した一般電話機3が接続されている。従って、緊急通報装置1Aもまた、発信者番号通知サービスの契約をしている加入電話回線を通じてIP網4に接続されているものとする。
【0047】
しかし、後述する回線制御部101Aの構成が、図2に示した第1の実施の形態の回線制御部101とは異なっている。図4は、第2の実施の形態の緊急通報装置1Aの動作について説明するためのブロック図である。また、図4図2とを比較すると分かるように、第2の実施の形態の緊急通報装置1Aは、回線制御部101Aにおいて、信号種別判別部1011からの判別結果が、応答/切断制御部1012Aにも供給されるようになっている。応答/切断制御部1012は、信号種別判別部1011からの判別結果に応じて、応答/切断の制御を行う。このような応答/切断制御部1012部分の構成を除けば、この第2の緊急通報装置1Aは、第1の実施の形態の緊急通報装置1と同様に構成されている。
【0048】
第2の実施の形態の緊急通報装置1Aが備える応答/切断制御部1012Aは、信号種別判別部1011からの判別結果に応じて応答信号と切断信号の出力制御を行うことにより、通話回線の迅速な接続を可能にしている。すなわち、応答/切断制御部1012Aは、信号種別判別部1011からの判別結果がCAR信号である場合には、即座に応答信号をIP網4に送出して、IP網4に対して発信者番号の提供を促す。これにより、IP網4からモデム信号による発信者番号が通知されることになる。
【0049】
応答/切断制御部1012Aは、信号種別判別部1011からの判別結果が発信者番号である場合には、即座に切断信号をIP網4に送出して、発信者番号を受信したことをIP網4に通知し、IR信号の送出を促す。これに応じてIP網4は、IR信号を送出することになる。以降の処理は、上述した第1の実施の形態の緊急通報装置1の場合と同様に行われる。すなわち、緊急通報装置1Aに接続されている電話機であって、オフフック状態の電話機があれば、当該オフフック状態の電話機と緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続して、逆信通話を成立させる。
【0050】
図5は、第2の実施の形態の緊急通報装置1Aの動作を説明するためのシーケンス図である。通報ボタン104が通報者によって押下操作されると、CPU部103からの制御に応じて、通報制御部1013が緊急通報処理を実行する。この緊急通報処理は、図3に示したステップS1~ステップS7までの処理と同様の処理となる。緊急通報が行われた後に、通報者は、図5に示すように、専用電話機2の送受話器を取り上げて(オフフック状態にして)、緊急通報受理機関5の担当者が応答するのを待っていたとする。この状態では、緊急通報受理機関5からのいわゆる逆信待ちの状態にあり、通話回線は非接続の状態にある。なお、図5においても、説明を簡単にするため、オンフック状態にある一般電話機3についての記載は省略している。
【0051】
緊急通報を受け付けた緊急通報受理機関5では、所定の指令台よりコールバック操作(逆信操作)を行うことにより、逆信(呼び返し信号)を送出する(ステップS21)。これに応じて、IP網4は、コールバックの相手先である緊急通報装置が、発信者番号通知サービスの契約をしている加入電話回線に接続されたものであることを把握しているので、緊急通報装置1Aに対して、CAR信号を送信する(ステップS22)。
【0052】
緊急通報後においては、緊急通報装置の回線制御部101Aの信号種別判別部1011において受信信号の種別が判別され、判別結果が応答/切断制御部1012Aと電話機制御部102の回線接続制御部1022に通知される。回線接続制御部1022では、CAR信号に対して、何も行わないようになっている。一方、応答/切断制御部1012Aでは、信号種別判別部1011よりCAR信号が到来したことの通知を受けると、即座に応答信号をIP網4に送出し、発信者番号の提供を促す(ステップS23)。
【0053】
これに応じて、IP網4からは緊急通報装置1Aに対して、発信者番号が送信される(ステップS24)。応答/切断制御部1012Aでは、信号種別判別部1011より発信者番号が到来したことの通知を受けると、即座に切断信号をIP網4に送出し、IR信号の送出を促す(ステップS25)。これに応じて、IP網4からは緊急通報装置1Aに対して、IR信号が送信される(ステップS26)。このように、CAR信号の到来に応じて応答信号を返し、発信者番号の到来に応じて切断信号を返すことによって、迅速にIR信号の送信をするように、IP網4に対して働きかけることができる。
【0054】
これにより、緊急通報装置1Aからの切断信号を受け付けたIP網4は、緊急通報装置1に対して、即座にIR信号を送信する(ステップS26)。応答/切断制御部1012Aでは、信号種別判別部1011より受信した信号が発信者番号であることの通知を受けても処理を行うことはない。しかし、IR信号の到来に応じて、電話機制御部102が機能することになる。すなわち、信号種別判別部1011からの判別結果が、受信した信号がIR信号であることを示すものであったとする。この場合、電話機制御部102の回線接続制御部1022は、フック状態検出部1021からの専用電話機2と一般電話機3のフック状態の判別結果を考慮して、通話回線の接続制御を行う。
【0055】
この場合、回線接続制御部1022は、接続回路221を、入力端Nと接続端aとを接続し、IP網4とオンフック状態にある専用電話機2との間の通信のための回線を接続する(ステップS27)。更に、回線接続制御部1022は、この接続した回線を通じて、IP網4に対して応答信号を送出する(ステップS28)。これにより、逆信元の緊急通報受理機関5と緊急通報元の緊急通報装置1Aとの間にIP網4を通じて通話回線が接続された状態となり、逆信通話が可能になる(ステップS29)。
【0056】
このように、第2の実施の形態の緊急通報装置1Aは、CAR信号の到来に対して応答信号を送出し、発信者番号の到来に対して切断信号を送出することによって、発信者番号通報サービスの手順を迅速に終了させる。これにより、IP網4からのIR信号の送出を早め、IR信号が到来した場合には、オフフック状態にある電話機との間で通話回線を自動接続し、逆信通話を可能にできる。従って、オフフック状態にある電話機が存在する場合には、電話機を呼び出して鳴動させるといった処理を行うことなく、オフフック状態にある当該電話機との間に迅速に通話回線を自動接続して、逆信通話を可能にできる。
【0057】
なお、ここでは、専用電話機2がオフフック状態で、一般電話機3がオンフック状態である場合を例にして説明した。しかし、専用電話機2がオンフック状態で、一般電話機3がオフフック状態である場合には、同様にして、一般電話機3と緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続し、逆信通話を行うようにすることが可能である。従って、通報者が、専用電話機2または一般電話機3をオフフック状態にして、逆信を待っていても、通話回線を接続して、緊急通報受理機関5の担当者と逆信通話を行い、状況を説明するなどのことが可能になる。これにより、緊急通報受理機関5では、適切な対応を迅速に取ることが可能になる。すなわち、IR信号の到来後の処理は、上述した第1の実施の形態の緊急通報装置1の場合と同様のものとなる。
【0058】
[第3の実施の形態]
上述の第2の実施の形態の緊急通報装置1Aの場合には、発信者番号通報サービスの手順を迅速に終了させることにより、IR信号の到来を早め、オフフック状態にある電話機との間で通話回線を自動接続し、迅速に逆信通話を開始できるようにした。しかし、発信者番号が通知されても何ら使用していなかった。そこで、この第3の実施の形態の緊急通報装置1Bの場合には、第2の実施の形態の場合と同様に、発信者番号通報サービスの手順を迅速に終了させるようにするが、更に、通知された発信者番号を使用し、使用者の利便性を向上させることができるものである。
【0059】
すなわち、第3の実施の形態の緊急通報装置1Bは、発信者番号としてIP網4から通知される緊急通報受理機関の緊急通報番号を、自機に接続されている発信者番号通知サービスに対応したオンフック状態にある一般電話機3の表示部に表示させる。これにより、一般電話機3を用いて緊急通報受理機関5からの逆信に応答する場合に、緊急通報受理機関5からの電話であることを認識して応答することができるようになる。
【0060】
図6は、第3の実施の形態の緊急通報装置1Bの構成例を説明するためのブロック図である。また、図7は、第3の実施の形態の緊急通報装置1Bの動作について説明するためのブロック図である。図6に示すように、第3の実施の形態の緊急通報装置1Bもまた、IP網4を通じて緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続することができるものである。また、第3の実施の形態の緊急通報装置1Bにも、専用電話機2と発信者番号通知サービスに対応した一般電話機3が接続されている。従って、緊急通報装置1Bもまた、発信者番号通知サービスの契約をしている加入電話回線を通じてIP網4に接続されているものとする。
【0061】
図6図1、及び、図7図2とを比較すると分かるように、第3の実施の形態の緊急通報装置1Bもまた、基本的な構成は、第1の実施の形態の緊急通報装置1と同様のものである。しかし、第3の実施の形態の緊急通報装置1Bの場合には、電話機制御部102Bの回線接続制御部1022Bの機能が、第1、第2の実施の形態の回線接続制御部1022とは異なっている。
【0062】
第3の実施の形態の緊急通報装置1Bにおいて、緊急通報後において、信号種別判別部1011からCAR信号を受信したことが、また、フック状態検出部1021から一般電話機3がオンフック状態であることが、回線接続制御部1022Bに通知されたとする。このように、CAR信号を受信し、一般電話機3がオンフック状態にあるときに、回線接続制御部1022Bは、IP網4と緊急通報装置1Bとの間に回線を接続し、接続回路221において、入力端Nと接続端bとを接続する。
【0063】
これにより、一般電話機3はCAR信号を受信し、オフフック状態となって、IP網4と一般電話機3との間に回線が接続される。従って、IP網4から緊急通報装置1Bに接続された一般電話機3に対して、発信者番号、この実施の形態の場合には、緊急通報受理機関5の緊急通報番号119が通知される。これに応じて、一般電話機3は、IP網4から提供された(通知された)発信者番号を、自機の表示部に表示させる。
【0064】
一般電話機3は、発信者電話番号等を通知するモデム信号の受信が完了すると、自身をオンフック状態にする。これにより、切断信号が、IP網4に送出され、IP網4と一般電話機3との間に接続されていた回線が解放される。なお、この第3の実施の形態の緊急通報装置1Bの場合には、一般電話機3のフック状態は、フック状態検出部1021により検出されて、これが回線接続制御部1022Bに通知される。これにより、回線接続制御部1022Bは、接続回路221において、入力端Nと接続端bとの接続も解除される。
【0065】
上述したように、切断信号がIP網4に送出されると、発信者番号通知サービスに関する一連の処理が終了したので、IP網4は、緊急通報受理機関5との間で通話回線を接続するために緊急通報装置1Bに対してIR信号を送信してくる。IR信号が緊急通報装置1Bで受信されると、受信した信号はIR信号であることが信号種別判別部1011で判別され、回線接続制御部1022Bに通知される。この場合、回線接続制御部1022Bは、フック状態検出部1021からの検出結果に基づいて、自機に接続されている専用電話機2と一般電話機3との内、オフフック状態にある電話機をIP網4との間で回線を接続するようにする。
【0066】
すなわち、回線接続制御部1022Bは、接続回路221を、オフフック状態にある電話機側に切り替える。この後、回線接続制御部1022Bは、応答信号をIP網4に送出することで、IP網4は、呼び出し元(逆信元)の緊急通報受理機関5と緊急通報装置1Bに接続されている当該電話機との間に通話回線を接続して通話を可能にする。このようにして、発信者番号通知サービスの機能を利用して、逆信もとの緊急通報受理機関5の緊急通報番号を一般電話機3の表示部に表示できるようにする。更に、オフフック状態になっている電話機と緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続して通話を可能にすることができる。
【0067】
なお、オフフック状態の電話機が存在しない場合には、呼び出し制御部222が機能して、専用電話機2と一般電話機3とを鳴動させて、着信(この例の場合には、緊急通報受理機関5からのコールバック)の発生を通知する。この後、オフフックされた電話機をIP網4との間に接続している回線に接続し、応答信号を送出することで、IP網4が機能し、緊急通報受理機関5と緊急通報装置1Bに接続された当該電話機との間に通話回線を接続して、逆信通話が可能にされる。
【0068】
図8は、第3の実施の形態の緊急通報装置1Bの動作を説明するためのシーケンス図である。通報ボタン104が通報者によって押下操作されると、CPU部103からの制御に応じて、通報制御部1013が緊急通報処理を実行する。この緊急通報処理は、図3に示したステップS1~ステップS7までの処理と同様の処理となる。緊急通報が行われた後に、通報者は、図8に示すように、専用電話機2の送受話器を取り上げて(オフフック状態にして)、緊急通報受理機関5の担当者が応答するのを待っていたとする。この状態では、緊急通報受理機関5からのいわゆる逆信待ちの状態にあり、通話回線は非接続の状態にある。なお、図8に示すように、一般電話機3は、オンフック状態になっていたとする。
【0069】
緊急通報を受け付けた緊急通報受理機関5では、所定の指令台よりコールバック操作(逆信操作)を行うことにより、逆信(呼び返し信号)を送出する(ステップS31)。IP網4は、コールバックの相手先である緊急通報装置1Bが、発信者番号通知サービスの契約をしている加入電話回線に接続されたものであることが把握できている。このため、IP網4は、緊急通報装置1Bに対して、CAR信号を送信する(ステップS32)。CAR信号を受信した緊急通報装置1Bでは、信号種別判別部1011において、CAR信号を受信したことが判別され、これが回線接続制御部1022Bに通知される。
【0070】
CAR信号が到来したことが通知された回線接続制御部1022Bは、発信者番号通サービスに対応した一般電話機3がオンフック状態にあるときには、一般電話機3とIP網4との間に通信のための回線を接続するように制御する(ステップS33)。すなわち、回線接続制御部1022Bは、CAR信号が到来したことが通知されると、フック状態検出部1021からの検出結果に基づいて、一般電話機3がオンフック状態にある場合には、接続回路221の入力端Nと接続端bとを接続する。これにより、一般電話機3にCAR信号が供給されて(ステップS34)、一般電話機3がオフフック状態になり、一般電話機3とIP網4との間に通信のための回線が接続される。
【0071】
なお、緊急通報装置1Bにおいては、例えば、CPU部103の不揮発性メモリにおいて、どの電話接続端にどのような電話機が接続されているのかを把握している。従って、自機に接続された一般電話機3は、発信者番号通知サービスに対応したものであることも把握している。
【0072】
一般電話機3がオフフック状態になることにより、回線接続制御部1022Bを通じて、応答信号がIP網4に送出される(ステップS35)。これに応じて、IP網4は、一般電話機3に対して、発信者番号として、緊急通報受理機関5の緊急通報番号を送信してくる(ステップS36)。一般電話機3は、IP網4からの発信者番号を受信して、これを自機の表示部に表示する。
【0073】
この後、一般電話機3は、自身をオンフック状態にし、切断信号がIP網4に送出され(ステップS37)、一般電話機3とIP網4との間に接続された回線が解放される。また、IP網4においては、発信者番号通知サービスに関する処理は終了したと認識され、IP網4からは、IR信号が送信されて来る(ステップS38)。緊急通報装置1BがIR信号を受信すると、信号種別判別部1011において、受信した信号はIR信号であることが判別され、これが回線接続制御部1022Bに通知される。
【0074】
この例において、回線接続制御部1022Bは、フック状態検出部1021からの検出結果に基づいて、オフフック状態にある専用電話機2をIP網4との回線に接続するように、接続回路221を入力端Nと接続端aとを接続するようする(ステップS39)。この後、回線接続制御部1022Bを通じて、応答信号がIP網4に送出される(ステップS40)。これに応じてIP網4は、オフフック状態にある専用電話機2と、逆信元の緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続し、逆信通話を可能にする(ステップS41)。
【0075】
なお、オンフック状態にある一般電話機3をオフフックすれば、一般電話機3と緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続し、逆信通話を行うことができる。この場合、一般電話機3の表示部には、緊急通報受理機関5の緊急通報番号が表示されているので、相手先は緊急通報受理機関5であることを認識して、逆信通話に参加できる。また、一般電話機3が、初めからオフフック状態にある場合には、発信者番号の通知は行われることなく、第2の実施の形態の場合と同様にして、通話回線の接続先として、緊急通報受理機関5からの逆信に自動接続して逆信通話を行うことができるようにされる。
【0076】
このように、この第3の実施の形態の緊急通報装置1Bの場合には、発信者番号通知サービスの手順を迅速に終了させるようにするが、その過程で得られる発信者番号を一般電話機に表示させて、使用者に提供できる。これにより、緊急通報後において、一般電話機3を用いて応答する場合であっても、通話の相手先が緊急通報受理機関であることを認識して通話を行うようにすることができる。また、第3の実施の形態に緊急通報装置1Bの場合にも、緊急通報後において、オフフック状態の電話機があれば、鳴動させることなく、当該オフフック状態の電話機と緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続し、逆信通話を迅速に開始させることができる。
【0077】
なお、この第3の実施の形態では、専用電話機2がオフフック状態となっており、一般電話機3がオンフックになっている場合を例にして説明した。しかし、一般電話機3がオンフック状態であれば、専用電話機2のフック状態とは無関係に一般電話機3とIP網4との間に回線を接続し、発信者番号通知サービスによる発信者番号の通知を受けて、表示出力するなどの対応を取ることが可能である。
【0078】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の緊急通報装置1、1A、1Bは、緊急通報後において、自機に接続された電話機でオフフック状態のものが存在する場合には、そのオフフック状態にある電話機と緊急通報受理機関との間に通話回線を接続し、逆信通話を可能にできる。従って、通報者が通報ボタン押下後、送受話器を取り上げて、緊急通報受理機関からの応答を待っていても、通話回線を接続して逆信通話を行える。
【0079】
また、第2の実施の形態の緊急通報装置1Aの場合には、発信者番号通報サービスの手順を迅速に終了させて、オフフック状態にある電話機と緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続して、逆信通話を可能にできる。
【0080】
また、第3の実施の形態の緊急通報装置の場合には、発信者番号通報サービスの手順を迅速に終了させることができるようにするととともに、発信者番号として提供される緊急通報受理機関の緊急通報番号を、一般電話機を通じて利用者に提供できる。従って、一般電話機を用いて、緊急通報受理機関と通話を行う場合に、相手先が緊急通報受理機関であることを認識した上で通話を行える。しかも、オフフック状態にある電話機がある場合には、そのオフフック状態にある電話機と緊急通報受理機関5との間に通話回線を接続して、逆信通話を可能にできる。
【0081】
[変形例]
なお、上述した実施の形態の緊急通報装置1、1A、1Bは、通報ボタンを押下操作した場合に、緊急通報を行うものとして説明したがこれに限るものではない。例えば、火災の発生を通報する緊急通報装置の場合には、熱センサや煙センサによって火災の発生を検知した場合に通報を行うようにしてもよい。また、不審者の侵入を検知する人感センサによって不審者の侵入を検知した場合に通報を行うようにすることもできる。このように、緊急通報装置は、通報ボタンの押下操作だけでなく、種々のセンサによって、緊急事態の発生を検知した場合に、緊急通報を行うものであってももちろんよい。
【0082】
また、上述した実施の形態では、専用電話機2と一般電話機3とが緊急通報装置に接続されているものとして説明した。この場合、複数の専用電話機や複数の一般電話機の接続が可能な緊急通報装置であってももちろんよい。この場合には、各電話機のフック状態を検知でき、電話機毎に回線への接続を切り替えることができるようにしておけばよい。また、第3の実施の形態の緊急通報装置1Bに適用する場合には、回線接続制御部1022Bが、発信者番号通知サービスに対応する一般電話機とIP網4との接続制御を行えるようにしておけばよい。
【0083】
また、上述した実施の形態では、IP網と緊急通報装置1、1A、1Bと回線を接続し、応答信号や切断信号を送出する場合には、電話機制御部102,102Bの回線接続制御部1022,1022Bが行うものとして説明した。しかし、これに限るものではない。例えば、緊急通報装置1、1A、1Bの回線接続制御部1022、1022Bが、回線制御部101、101Aの応答/切断制御部1012、1012Aを制御して、応答信号や切断信号をIP網4に送出するように構成することも可能である。
【0084】
なお、上述した実施の形態では、緊急通報装置1、1A、1Bには、専用電話機2と一般電話機3とが接続され、これがCPU部103の不揮発メモリで管理され、専用電話機2と一般電話機3との両方が、逆信通話が可能なものとして説明した。しかし、これに限るものではない。
【0085】
例えば、専用電話機を1次電話機、一般電話機を2次電話機として、逆信に対して、2次電話機は使用しない設定とすることもできる。この場合基本的には、第1の実施の形態の緊急通報装置1と第2の実施の形態の緊急通報装置1Aとの対応と同様の対応となる。
【0086】
また、逆信に対して、2次電話機は使用する設定とすることもできる。この場合基本的には、第3の実施の形態の緊急通報装置1Bとの対応と同様の対応となる。但し、2次電話機がオフフック状態の場合には、逆信通話が不可となる問題を発生させないようにするため、2次電話機を使用しない設定の場合と同様に、オフフック状態にある電話機と自動的に通話回線を接続するようにすればよい。
【0087】
また、回線制御部101、101A、電話機制御部102、102Nの各部の機能は、CPU部103のCPUで実行されるプログラムにより、CPU部103の機能として実現することもできる。すなわち、信号種別判別部1011、応答/切断制御部1012、1012A、通報制御部1013の各部の機能は、ソフトウェアにより実現することもできる。同様に、フック状態検出部1021、回線接続制御部1022、1022Bの各部の機能は、ソフトウェアにより実現することもできる。
【0088】
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、請求項の信号種別判別手段の機能は、実施の形態の緊急通報装置1、1A、1Bの信号種別判別部1011が実現している。また、請求項の回線接続制御手段の機能は、実施の形態の緊急通報装置1、1A、1Bの主に回線接続制御部1022,1022Bが実現している。また、請求項の応答/接続制御手段の機能は、主に第2の実施の形態の応答/切断制御部1012Aが実現している。また、請求項のフック状態検出手段の機能は、実施の形態の緊急通報装置1、1A、1Bのフック状態検出部1021が実現している。
【符号の説明】
【0089】
1、1A、1B…緊急通報装置、101、101A…回線制御部、1011…信号種別判別部、1012、1012A…応答/切断制御部、1013…通報制御部、102、102B…電話機制御部、1021…フック状態検出部、1022、1022B…回線接続制御部、221…接続回路、222…呼び出し制御部、103…CPU部、104…通報ボタン、2…専用電話機、3一般電話機、4…IP網、5…緊急通報受理機関、6…アナログ回線変換装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8