(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20241007BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2020172242
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】下村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 益朗
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-002753(JP,A)
【文献】特開2019-191228(JP,A)
【文献】特開2018-022079(JP,A)
【文献】特開2006-091368(JP,A)
【文献】特開2014-032294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0177391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
13/14-13/16
13/34
15/00
15/02
15/14-15/16
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体から記録材にトナー像を転写する転写部を形成する転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加する電圧印加部と、
1つの開始指示により単一又は複数の記録材に画像を形成するプリントジョブを実行する際に、1枚目の記録材が前記転写部に到達する前に、前記転写部材に制御電圧を印加して該1枚目の記録材の搬送方向の先端側の所定の範囲を含む少なくとも一部が前記転写部を通過している際に前記転写部材に印加する転写電圧の目標値を設定する制御動作を実行することが可能な制御部と、
を有する画像形成装置において、
前記制御部は、前記プリントジョブを実行する際に、1枚目の記録材の前記所定の範囲に転写するトナー像に関する、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率に基づいて、該1枚目の記録材が前記転写部に到達する前の前記制御動作を実行するか否かを決定することが可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記被覆率が第1の値の場合に前記制御動作を実行し、前記被覆率が前記第1の値よりも小さい第2の値の場合に前記制御動作を実行しないように、前記制御動作を実行するか否かを決定することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記制御動作を実行しないと決定した場合、前回以前のプリントジョブにおける前記制御動作に基づいて、今回のプリントジョブの1枚目の記録材の前記所定の範囲を含む少なくとも一部が前記転写部を通過している際に前記転写部材に印加する転写電圧の目標値を設定することを特徴とする請求項
1又は
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体から記録材にトナー像を転写する転写部を形成する転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加する電圧印加部と、
1つの開始指示により単一又は複数の記録材に画像を形成するプリントジョブを実行する際に、1枚目の記録材が前記転写部に到達する前に、前記転写部材に制御電圧を印加して該1枚目の記録材の搬送方向の先端側の所定の範囲を含む少なくとも一部が前記転写部を通過している際に前記転写部材に印加する転写電圧の目標値を設定する制御動作を実行することが可能な制御部と、
を有する画像形成装置において、
前記制御部は、前記プリントジョブを実行する際に、1枚目の記録材の前記所定の範囲に転写するトナー像に関する、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率に基づいて、該1枚目の記録材が前記転写部に到達する前の前記制御動作における前記制御電圧を印加する時間を決定することが可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記被覆率が第1の値の場合よりも、前記被覆率が前記第1の値よりも小さい第2の値の方が、前記制御電圧を印加する時間が短くなるように、前記制御電圧を印加する時間を決定することを特徴とする請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体は、感光体から転写されたトナー像を記録材に転写するために前記トナー像を搬送する中間転写体、又は記録材に転写するトナー像を担持する感光体であることを特徴とする請求項
1乃至
5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体から被転写体にトナー像を転写する転写部を形成する転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加する電圧印加部と、
1つの開始指示により単一又は複数の記録材に画像を形成するプリントジョブを実行する際に、1枚目の記録材に形成する画像のトナー像の、前記像担持体から前記被転写体への転写を開始する前に、前記転写部材に制御電圧を印加して該トナー像を前記被転写体に転写する期間の少なくとも一部で前記転写部材に印加する転写電圧の目標値を設定する制御動作を開始することが可能な制御部と、
を有する画像形成装置において、
前記制御部は、前記プリントジョブを実行する際に、前記被転写体上の1枚目の記録材に形成する画像のトナー像が転写され得る画像形成領域の搬送方向の先端側の所定の範囲に転写するトナー像に関する、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率に基づいて、該1枚目の記録材に形成する画像のトナー像の、前記像担持体から前記被転写体への転写を開始するタイミングを決定することが可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記被覆率が第1の値の場合に前記制御動作を実行する期間とトナー像を前記被転写体に転写する期間とが重ならないようにし、前記被覆率が前記第1の値よりも小さい第2の値の場合に前記制御動作を実行する期間とトナー像を前記被転写体に転写する期間の少なくとも一部とが重なるようにするように、前記タイミングを決定することを特徴とする請求項
7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記被転写体は、前記像担持体から転写されたトナー像を記録材に転写するために搬送する中間転写体、又は前記像担持体からトナー像が転写される記録材であることを特徴とする請求項
7又は
8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式などを用いた画像形成装置において、転写部で像担持体から被転写体にトナー像を転写させる転写部材に印加する転写電圧は、定電圧制御又は定電流制御されるのが一般的である。像担持体から被転写体としての記録用紙などの記録材にトナー像を転写する転写部を例として更に説明する。
【0003】
転写電圧を定電圧制御する場合、次のような制御が行われる。転写部材としては、例えば転写ローラが使用される。この転写ローラとしては、ゴムに導電性粒子などの導電剤を分散させて体積抵抗を適宜に調整した材料で形成された弾性層を有するものが用いられることが多い。この種の材料は、環境によって電気抵抗値が数桁にわたって変化することがある。そのため、転写電圧が適切でない場合には、転写部で電流が不足して転写不良が発生したり、転写部で過剰な電流が像担持体に流入して転写メモリが発生したりするおそれがある。なお、転写メモリとは、像担持体上の通電履歴を除去しきれずに、後続の画像上に現れる現象のことをいう。
【0004】
そこで、環境によらず安定した転写電圧を転写部に印加するために、ATVC(Auto Transfer Voltage Control)制御が行われている。ATVC制御は、概略、転写部に記録材が存在しない前回転時に所定の目標電流値の電流が流れるように定電流制御で試験電圧を転写部に印加し、その際に転写電源が出力する電圧の電圧値に基づいて画像形成時(転写時)の転写電圧を設定する制御方式である。より詳細には、上記試験電圧の印加時に転写電源が出力する電圧(部材分担電圧)に、記録材の電気抵抗値に応じた記録材分担電圧を加味した電圧値を算出して、画像形成時(転写時)にはその算出した電圧値で転写電圧の定電圧制御を行う。また、記録材の搬送方向に関する先端が転写部に突入した後、該転写部に記録材の画像形成領域が到達する前に漏れ電流の検知及び転写電圧の変更を行う制御も知られている(特許文献1)。
【0005】
このように、従来、トナー像の転写を行う前に、転写電圧を設定するために転写部の電気特性(所定の電流を流した際に発生する電圧値、所定の電圧を印加した際に流れる電流値、電気抵抗値)に関する情報を取得する制御動作が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような制御動作を行うことにより、環境変動や記録材の差異などによる転写性のばらつきを抑制する効果が得られる。
【0008】
しかしながら、トナー像の転写を行う前に転写電圧を設定するために転写部に通電を行う制御動作を行うことによって、転写ローラや中間転写ベルトなどの部材の通電や回転による劣化が促進される場合がある。特に、画像形成装置が、比較的少ないプリント枚数のプリントジョブを繰り返す使われ方をされた場合に、影響が大きくなりやすい。
【0009】
そこで、本発明は、適正な転写電圧の設定を可能としつつ、転写電圧の制御動作による部材の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体から被転写体にトナー像を転写する転写部を形成する転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電圧印加部と、前記像担持体から前記被転写体にトナー像を転写する前に、前記転写部材に制御電圧を印加する制御動作を開始することが可能な制御部と、を有する画像形成装置において、前記制御部は、前記像担持体から前記被転写体に転写するトナー像に関する、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率に基づいて、該トナー像を前記被転写体に転写する前に開始され得る前記制御動作を実行するか否か、該制御動作の動作設定、又は該制御動作を実行する期間に対する該トナー像を前記被転写体に転写するタイミング、の決定を行うことが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、適正な転写電圧の設定を可能としつつ、転写電圧の制御動作による部材の劣化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】プリンタ制御装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】ATVC制御を行ってA4用紙の2枚にプリントを行った場合の2次転写電圧のタイムラインを示すチャート図である。
【
図4】単位ブロック内の被覆率を説明するための模式図である。
【
図5】記録材Pの先端部分の画像のパターンの例を示す模式図である。
【
図7】ATVC制御を行わずにA4用紙の2枚にプリントを行った場合の2次転写電圧のタイムラインを示すチャート図である。
【
図8】ATVC制御を行ってA4用紙の2枚にプリントを行った場合の1次転写電圧のタイムラインを示すチャート図である。
【
図9】画像の先端部分のパターンの例を示す模式図である。
【
図10】実施例2の制御のフローチャート図である。
【
図11】1次転写を前倒ししてA4用紙の2枚にプリントを行った場合の1次転写電圧のタイムラインを示すチャート図である。
【
図12】ATVC制御の代わりに逆極性の電圧の印加を行ってA4用紙の2枚にプリントを行った場合の2次転写電圧のタイムラインを示すチャート図である。
【
図13】実施例3の制御のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0014】
[実施例1]
(1)画像形成装置
図1は、本実施例の画像形成装置10の概略断面図である。本実施例の画像形成装置10は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザービームプリンタである。
【0015】
画像形成装置10は、複数の画像形成手段として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部(ステーション)1a、1b、1c、1dを有する。各画像形成部1a~1dは、一定の間隔をおいて1列に配置されている。各画像形成部1a~1dにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のa、b、c、dを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部1は、後述する感光ドラム2(2a、2b、2c、2d)、帯電ローラ3(3a、3b、3c、3d)、露光装置7(7a、7b、7c、7d)、現像装置4(4a、4b、4c、4d)、1次転写ローラ5(5a、5b、5c、5d)、ドラムクリーニング装置6(6a、6b、6c、6d)などを有して構成される。なお、電流、電圧の大小(高低)については、便宜上、その絶対値で比較した場合のものとして説明する。
【0016】
画像形成装置10は、トナー像を担持する第1の像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム2を有する。本実施例では、感光ドラム2は、負帯電性のOPC(有機光導電体)感光体であり、アルミニウム製のドラム基体上に感光層を有している。感光ドラム2は、駆動装置(図示せず)によって図中矢印R1方向(時計回り)に所定の周速度(表面の移動速度)で回転駆動される。本実施例では、この感光ドラム2の周速度が、画像形成装置10のプロセススピードに相当する。本実施例では、画像形成装置10のプロセススピードは、210mm/sである。画像形成開始信号が発せられると、感光ドラム2は所定のプロセススピードで回転駆動される。
【0017】
回転する感光ドラム2の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ3によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電ローラ3は、感光ドラム2の表面に所定の圧接力で接触している。帯電工程時に、帯電ローラ3には、図示しない帯電電圧印加手段としての帯電電源(高圧電源回路)により、所定の帯電電圧が印加される。
【0018】
帯電処理された感光ドラム2の表面は、露光手段としての露光装置(レーザースキャナ装置)7によって、各画像形成部1に対応する色成分の画像信号に応じて走査露光され、感光ドラム2上に静電像(静電潜像)が形成される。露光装置7は、後述するASIC314(
図2)から入力された各画像形成部1に対応する色成分の画像信号を、レーザー出力部にて光信号にそれぞれ変換する。そして、露光装置7は、変換された光信号であるレーザー光により、一様に帯電処理された感光ドラム2の表面を走査露光して、感光ドラム2上に静電像を形成する。本実施例では、露光装置7において、後述するホストコンピュータ300(
図2)から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザー光がレーザー出力部から出力される。そして、露光装置7において、このレーザー光が反射ミラーを介して感光ドラム2の表面に照射される。
【0019】
感光ドラム2上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム2上にトナー像(トナー画像、現像剤像)が形成される。本実施例では、現像装置4は、1成分接触現像方式のものである。現像装置4は、現像剤担持体としての現像ローラ8を有する。現像ローラ8は、その上に薄層状にトナーを担持し、駆動装置(図示せず)により回転駆動されることで、感光ドラム2と対向する現像位置にトナーを搬送する。また、現像工程時に、現像ローラ8には、図示しない現像電圧印加手段としての現像電源(高圧電源回路)により、所定の現像電圧が印加される。これにより、トナーが感光ドラム2の表面の電位に応じて静電吸着することで、感光ドラム2上の静電像がトナー像として現像される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム2上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム2の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像方式)。本実施例では、トナーの正規の帯電極性は負極性であり、トナー像を形成するトナーは主に負極性の電荷を有している。なお、各現像装置4a~4dには、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーが収納されている。後述するフルカラーモードでは、4つの現像装置4の全ての現像ローラ8が感光ドラム2に当接する。また、後述するモノクロモード(本実施例ではブラック単色モード)では、画像を形成する画像形成部1(本実施例ではブラック用の画像形成部1d)以外の現像装置4の現像ローラ8は感光ドラム2から離間する。これは、現像ローラ8及びトナーの劣化や消耗を抑制するためである。
【0020】
4つの感光ドラム2a~2dに対向するように、トナー像を担持する第2の像担持体としての、無端状のベルトで構成された中間転写体である中間転写ベルト20が配置されている。中間転写ベルト20は、複数の張架ローラ(支持部材)としての駆動ローラ21、クリーニング対向ローラ22及び2次転写対向ローラ23に掛け回され、所定のテンションで張架されている。中間転写ベルト20は、駆動ローラ21が駆動装置(図示せず)によって図中矢印R2方向(反時計回り)に回転駆動されることで、図中矢印R3方向(反時計回り)に、感光ドラム2の周速度と略等速、すなわち、所定プロセススピードで回転(周回移動)する。中間転写ベルト20の内周面(裏面)側には、各感光ドラム2a~2dに対応して、1次転写手段としてのローラ型の1次転写部材である1次転写ローラ5a~5dが配置されている。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト20を感光ドラム2に向けて押圧して、感光ドラム2と中間転写ベルト20とが接触する1次転写部(1次転写ニップ)T1を形成する。感光ドラム2上に形成されたトナー像は、1次転写部T1において、1次転写ローラ5の作用によって、被転写体としての回転している中間転写ベルト20上に1次転写される。1次転写工程時に、1次転写ローラ5には、1次転写電圧印加手段(1次転写電圧印加部)としての1次転写電源(高圧電源回路)40により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である1次転写電圧が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム2a~2d上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト20上に重ね合わされるようにして順次1次転写される。
【0021】
中間転写ベルト20の外周面(表面)側において、2次転写対向ローラ(内ローラ)23に対向する位置には、2次転写手段としてのローラ型の2次転写部材である2次転写ローラ(外ローラ)24が配置されている。2次転写ローラ24は、2次転写対向ローラ23に向けて押圧され、中間転写ベルト20を介して2次転写対向ローラ23に当接して、中間転写ベルト20と2次転写ローラ24とが接触する2次転写部(2次転写ニップ)T2を形成する。中間転写ベルト20上に形成されたトナー像は、2次転写部T2において、2次転写ローラ24の作用によって、中間転写ベルト20と2次転写ローラ24とに挟持されて搬送されている被転写体としての記録用紙などの記録材P上に2次転写される。2次転写工程時に、2次転写ローラ24には、2次転写電圧印加手段(2次転写電圧印加部)としての2次転写電源(高圧電源回路)44により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である2次転写電圧が印加される。記録材(転写材、シート)Pは、記録材収容部としてのカセット11に収容されている。記録材Pは、カセット11から給紙(給送)部材としての給紙ローラ14によって送り出され、搬送部材としての搬送ローラ15によってレジストローラ13まで搬送される。この記録材Pは、搬送部材としてのレジストローラ13によって、中間転写ベルト20上のトナー像の先端が2次転写部T2に移動するタイミングに合わせて2次転写部T2へと搬送される。給紙ローラ14、搬送ローラ15及びレジストローラ13は、記録材供給手段を構成する。
【0022】
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置12へと搬送される。定着装置12は、熱源を備えた定着ローラ12Aと、定着ローラ12Aに圧接する加圧ローラ12Bと、を有する。定着装置12は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを定着ローラ12Aと加圧ローラ12Bとによって加熱及び加圧しながら搬送することで、トナー像を記録材P上に定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Pは、画像形成装置10の装置本体の外部へと排出(出力)される。
【0023】
また、1次転写工程後に感光ドラム2上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって、感光ドラム2上から除去されて回収される。ドラムクリーニング装置6は、クリーニング部材としてのウレタンゴムなどの弾性体で形成された板状部材であるドラムクリーニングブレード61と、回収トナー容器と、を有する。ドラムクリーニング装置6は、感光ドラム2の表面に当接するドラムクリーニングブレード61によって、回転する感光ドラム2上から1次転写残トナーを掻き取って、回収トナー容器に収容する。また、中間転写ベルト20の外周面側において、クリーニング対向ローラ22に対向する位置には、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置32が配置されている。2次転写工程後に中間転写ベルト20上に残留したトナー(2次転写残トナー)は、ベルトクリーニング装置32によって、中間転写ベルト20上から除去されて回収される。ベルトクリーニング装置32は、クリーニング部材としてのウレタンゴムなどの弾性体で形成された板状部材であるクリーニングブレード31と、回収トナー容器と、を有する。ベルトクリーニング装置32は、中間転写ベルト20の表面に当接するクリーニングブレード31によって、回転する中間転写ベルト20上から2次転写残トナーを掻き取って、回収トナー容器に収容する。
【0024】
本実施例では、各画像形成部1において、感光ドラム2と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ3、現像装置4及びドラムクリーニング装置6とは、一体的に画像形成装置10の装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジを構成している。プロセスカートリッジは、例えば現像装置4内のトナーが無くなった場合、あるいは感光ドラム2が寿命に達した場合に新品に交換される。
【0025】
また、本実施例では、中間転写ベルト20、各張架ローラ21、22、23、各1次転写ローラ5、及びベルトクリーニング装置32は、一体的に画像形成装置10の装置本体に対して着脱可能な中間転写ベルトユニットを構成している。中間転写ユニットは、例えば中間転写ベルト20が寿命に達した場合に新品に交換される。
【0026】
本実施例では、画像形成装置10は、プリントモード(画像形成モード)として、フルカラーモードと、モノクロモード(本実施例ではブラック単色モード)と、を有している。フルカラーモードでは、4つの画像形成部1a~1dの全てで画像を形成してフルカラー画像を形成することができる。本実施例において、モノクロモードでは、4つの画像形成部1a~1dのうちブラック用の画像形成部1dのみで画像を形成して、ブラック単色画像を形成することができる。モノクロモードにおいて、画像を形成するブラック用の画像形成部1d以外の画像形成部1では、中間転写ベルト20から1次転写ローラ5が離間されて、中間転写ベルト20が感光ドラム2から離間される。また、モノクロモードにおいて、ブラック用の画像形成部1d以外の画像形成部1では、感光ドラム2や現像ローラ8の駆動が停止され、また現像ローラ8が感光ドラム2から離間される。なお、モノクロモードにおいて、ブラック用の画像形成部1d以外の画像形成部1では、1次転写電源40は1次転写ローラ5への電圧の印加は行わない。
【0027】
(2)転写構成
本実施例では、中間転写ベルト20の基材のベース樹脂材料としてポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂を用いた。なお、中間転写ベルト20の基材のベース樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン-1、ポリスチレン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルニトリル、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリアミド酸などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは混合して2種以上を使用することもできる。
【0028】
また、本実施例では、中間転写ベルト20の基材は、中間転写ベルト20に導電性を付与するために、イオン導電性の導電剤を含んでいる。イオン導電性の導電剤を含有するイオン導電性の中間転写ベルト20を採用することにより、電子導電性の導電剤を含有する電子導電性の中間転写ベルトを用いた場合に比べて、中間転写ベルト20の電気抵抗の製造公差を小さく抑えることができる。
【0029】
イオン導電性の導電剤としては、多価金属塩や第4級アンモニウム塩などが挙げられる。第4級アンモニウム塩には、カチオン部として、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトライソプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオンなどが挙げられ、アニオン部としては、ハロゲンイオンやフルオロアルキル基の炭素数が1~10個のフルオロアルキル硫酸イオンやフルオロアルキル亜硫酸イオン、フルオロアルキルホウ酸イオンなどが挙げられる。
【0030】
また、イオン導電性の導電剤として、イオン液体を用いてもよい。イオン液体とは、イオンのみからなる液体であって、幅広い温度範囲で液体として存在する塩であり、特に100℃以下の融点を有する塩を指す。上記イオン液体を構成するアニオン種としては、スルホニルイミドイオンなどが挙げられ、カチオン種としては、アンモニウム系イオン、イミダゾリウム系イオン、ピリジニウム系イオン、ピペリジニウム系イオン、ピロリジニウム系イオン、ホスホニウム系イオンなどが挙げられる。
【0031】
上記した各材料成分を熔融混練し、次いで、インフレーション成形、円筒押出し成形、インジェクションストレッチブロー成形などの成形方法を適宜選択して、樹脂組成物としての中間転写ベルト20を得ることができる。
【0032】
中間転写ベルト20は、上述の基材(基層)の表面に保護層を設けるなどして、他の層を有していてもよい。すなわち、中間転写ベルト20は、イオン導電性の導電部材で形成された層を有していればよい。
【0033】
なお、本実施例における中間転写ベルト20は、表面抵抗率は8.0×109Ω/□であり、体積抵抗率は5.0×109Ωcmである。抵抗率は、株式会社三菱化学アナリテック製の抵抗率計であるハイレスタUP及び測定電極であるハイレスタUP専用プローブURSプローブを用い、印加電圧250Vで測定した。
【0034】
1次転写ローラ5としては、例えば、金属ローラや、スポンジゴムなどの弾性部材の層(弾性層)を備えた弾性ローラなどを用いることができる。本実施例では、1次転写ローラ5として、直径6mmのニッケルメッキ鋼棒上に、弾性層としてNBRヒドリンゴムを肉厚3.7mmで被覆した弾性ローラを用いた。本実施例における1次転写ローラ5の電気抵抗値は、23℃、50%RH環境において、1次転写ローラ5を、アルミシリンダ上に4.9Nの力で押圧し、50mm/secの周速度で回転させた状態で、50Vを印加した場合において3.0×105Ωである。1次転写ローラ5の弾性層の材料は、イオン導電剤や電子導電剤が分散されて、電気抵抗が調整されている。また、本実施例では、1次転写ローラ5は、中間転写ベルト20の搬送方向(表面の移動方向、回転方向)に関して感光ドラム2に対し下流側に1.5mmだけオフセットされて配置される。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト20を内周面(裏面)側から外周面(表面)側に押圧することで、中間転写ベルト20の外周面を感光ドラム2の外周面(表面)に当接させ、中間転写ベルト20と感光ドラム2との接触部に1次転写部T1を形成する。フルカラーモードでは、4つの1次転写ローラ5a~5dの全てが中間転写ベルト20に当接する。また、モノクロモード(本実施例ではブラック単色モード)では、画像を形成する画像形成部1(本実施例ではブラック用の画像形成部1d)以外の1次転写ローラ5は中間転写ベルト20から離間する。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト20の移動に伴って従動して回転する。
【0035】
1次転写ローラ5には、1次転写電圧印加手段としての1次転写電源40、及び1次転写電流検知手段としての1次転写電流検知部(1次転写電流検知回路)50が接続されている。1次転写ローラ5には、1次転写電源40から1次転写電圧が印加される。1次転写電源40は、1次転写ローラ5に正極性の電圧と負極性の電圧とを選択的に印加できるようになっている。1次転写電流検知部50は、1次転写電源40が1次転写ローラ5(1次転写部T1)に電圧を印加している際に1次転写ローラ5(1次転写部T1、1次転写電源40)に流れる電流を検知する。1次転写電流検知部50は、電流の検知結果を示す信号を後述するエンジン制御部302(
図2)へと出力することができる。また、本実施例では、1次転写電源40は、1次転写ローラ5に印加する電圧の定電流制御と定電圧制御とを行うことができる。つまり、1次転写電源40は、1次転写電流検知部50により検知される電流が略一定となるように(目標電流値に近付くように)電圧の出力を調整して、1次転写ローラ5に印加する電圧を定電流制御することができる。また、1次転写電源40は、電圧の出力を略一定となるように(目標電圧値に近付くように)調整して、1次転写ローラ5に印加する電圧を定電圧制御することができる。1次転写電源40は、1次転写電圧検知手段として、1次転写ローラ5に印加している電圧を検知する1次転写電圧検知部(1次転写電圧検知回路)を有していてもよいし、出力する電圧の設定値から該電圧値を検知できるようになっていてもよい。1次転写電源40は、電圧の検知結果を示す信号を後述するエンジン制御部302(
図2)へと出力することができる。
【0036】
2次転写ローラ24としては、例えば、スポンジゴムなどの弾性部材の層(弾性層)を備えた弾性ローラを用いることができる。本実施例では、2次転写ローラ24として、直径8mmのニッケルメッキ鋼棒上に、弾性層としてNBRヒドリンゴムを肉厚6mmで被覆した弾性ローラを用いた。本実施例の2次転写ローラ24の電気抵抗値は、23℃、50%RH環境で、2次転写ローラ24を、アルミシリンダ上に9.8Nの力で押圧し、50mm/secの周速度で回転させた状態で、1000Vを印加した場合において3.0×107Ωである。2次転写ローラ24の弾性層の材料は、イオン導電剤や電子導電剤が分散されて、電気抵抗が調整されている。そして、2次転写ローラ24は、中間転写ベルト20を介して2次転写対向ローラ23と当接して、中間転写ベルト20と2次転写ローラ24との接触部に2次転写部T2を形成する。2次転写ローラ24は、中間転写ベルト20、又は記録材Pの移動に伴って従動して回転する。
【0037】
2次転写ローラ24には、2次転写電圧印加手段としての2次転写電源44、及び2次転写電流検知手段としての2次転写電流検知部(2次転写電流検知回路)54が接続されている。2次転写ローラ24には、2次転写電源44から2次転写電圧が印加される。2次転写電源44は、2次転写ローラ24に正極性の電圧と負極性の電圧とを選択的に印加できるようになっている。2次転写電流検知部54は、2次転写電源44が2次転写ローラ24(2次転写部T2)に電圧を印加している際に2次転写ローラ24(2次転写部T2、2次転写電源44)に流れる電流を検知する。2次転写電流検知部54は、電流の検知結果を示す信号を後述するエンジン制御部302(
図2)へと出力することができる。また、本実施例では、2次転写電源44は、2次転写ローラ24に印加する電圧の定電流制御と定電圧制御とを行うことができる。つまり、2次転写電源44は、2次転写電流検知部54により検知される電流が略一定となるように(目標電流値に近付くように)電圧の出力を調整して、2次転写ローラ24に印加する電圧を定電流制御することができる。また、2次転写電源44は、電圧の出力を略一定となるように(目標電圧値に近付くように)調整して、2次転写ローラ24に印加する電圧を定電圧制御することができる。2次転写電源44は、2次転写電圧検知手段として、2次転写ローラ24に印加している電圧を検知する2次転写電圧検知部(2次転写電圧検知回路)を有していてもよいし、出力する電圧の設定値から該電圧値を検知できるようになっていてもよい。2次転写電源44は、電圧の検知結果を示す信号を後述するエンジン制御部302(
図2)へと出力することができる。なお、本実施例では、2次転写対向ローラ23は、電気的に接地(グラウンドに接続)されている。
【0038】
(3)制御態様
図2は、本実施例におけるプリンタ制御装置304のシステム構成を示す概略ブロック図である。画像形成装置10は、制御部としてのプリンタ制御装置304を有する。プリンタ制御装置304は、大別して、コントローラ部301と、エンジン制御部302と、を有する。プリンタ制御装置304は、コントローラ部301のコントローラインターフェイス305を用いて、外部装置であるホストコンピュータ300と接続され、該ホストコンピュータ300との間での通信を行う。コントローラ部301では、ホストコンピュータ300から受信した情報に基づいて、画像処理部303で文字コードのビットマップ化やグレイスケール画像のハーフトーニング処理などを行う。そして、コントローラ部301は、エンジン制御部302のビデオインターフェイス310へ画像情報を送信する。この画像情報には、露光装置7の点灯タイミングを制御する情報、定着装置12の温調温度や転写電圧などのプロセス条件を制御するプリントモードの情報(後述する記録材情報を含む)、画像サイズの情報などが含まれる。
【0039】
露光装置7の点灯タイミングの情報は、コントローラ部301からASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)314に送信される。ASIC314は、露光装置7などの画像形成制御部340が制御している画像形成部1の一部を制御する。
【0040】
一方、プリントモードの情報や画像サイズの情報などの情報は、演算制御手段としてのCPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)311へ送信される。CPU311は、定着制御部320で定着装置12の加熱制御、給紙搬送制御部330で給紙ローラ14の動作間隔制御、画像形成制御部340でプロセススピードや現像/帯電/転写の制御を行う。斯かる制御において、CPU311は、必要に応じて、記憶手段としてのRAM313に情報をストアする。また、CPU311は、記憶手段としてのROM312やRAM313に保存されているプログラムを使用する。また、CPU311は、ROM312又はRAM313に保存されている情報(演算結果や各種センサの検知結果などを含む)を参照する。
【0041】
また、コントローラ部301は、ユーザーやサービス担当者などの操作者がホストコンピュータ300上で行った操作に基づいて入力される指示に応じて、プリント命令、キャンセル指示などをエンジン制御部302に送信する。これにより、コントローラ部301は、プリント動作(画像形成動作、印字動作)の開始や中止などの動作を制御する。
【0042】
ここで、画像形成装置10は、1つの開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるプリントジョブを実行する。プリントジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。より詳細には、画像形成時のタイミングは、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で異なり、感光ドラム2上や中間転写ベルト20上の画像形成領域が上記各位置を通過している期間に相当する。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置10の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。より詳細には、非画像形成時のタイミングは、感光ドラム2上や中間転写ベルト20上の非画像形成領域が、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う各位置を通過している期間に相当する。なお、感光ドラム2上や中間転写ベルト20上の画像形成領域とは、記録材Pに転写されて画像形成装置10から出力される画像が形成され得る領域であり、非画像形成領域は画像形成領域以外の領域である。
【0043】
(4)2次転写電圧の制御方法
<通常のプリント動作>
次に、本実施例における2次転写電圧の制御方法について説明する。本実施例では、中間転写ベルト20上のトナー像を記録材P上に2次転写するために、2次転写電源44から2次転写ローラ24に正極性の電圧が印加される。
【0044】
図3を参照して、本実施例の画像形成装置10において通常どおりATVC制御を行ってプリントを行う場合の2次転写電圧のタイムラインについて説明する。
図3は、通常どおりATVC制御を行って、記録材PとしてのA4用紙(横送り210mm)の2枚にプリントを行った場合の、2次転写電圧のタイムラインを示すチャート図である。この2次転写電圧の制御は、CPU311によって行われる。なお、2次転写部T2を記録材Pが通過することを「通紙」ともいう。
【0045】
まず、プリントジョブのプロセスがスタートすると、2次転写電源44から2次転写ローラ24に、2次転写電圧の初期バイアスが定電圧制御で印加される。初期バイアスは、通紙前に電圧の挙動を安定化させることを目的としており、起動後0.1sで安定する。この初期バイアスの電圧値は、環境(温度又は湿度の少なくとも一方)の情報である環境情報、記録材Pに関する情報である記録材情報、プリントモードの情報などに応じて最適な転写性が得られるように、予め決められた値が選択される。つまり、ROM312には、環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに応じて予め決められた初期バイアスの電圧値に関する情報が記憶されている。また、画像形成装置10には、画像形成装置10の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方を検知する環境検知手段として、例えば温湿度センサで構成される環境センサ(図示せず)が設けられている。CPU311は、この環境センサから環境情報を取得することができる。また、CPU311は、ホストコンピュータ300からコントローラ部301を介して入力されるプリントジョブの情報に含まれる記録材情報を取得することができる。なお、記録材Pに関する情報(記録材情報)とは、普通紙、上質紙、光沢紙、グロス紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙、紙質などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズ、剛性などの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、商品名、品番などを含む。)などの、記録材Pを区別することのできる任意の情報を包含するものである。記録材Pに関する情報によって区別される記録材Pごとに、記録材Pの種類を構成するものと見ることができる。また、CPU311は、ホストコンピュータ300からコントローラ部301を介して入力されるプリントジョブの情報に含まれるプリントモード(フルカラーモード、モノクロモードなど)の情報を取得することができる。したがって、CPU311は、上記取得した環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに基づいて、ROM312に記憶されている予め決められた初期バイアスの電圧値から対応するものを選択することができる。なお、記録材Pに関する情報は、例えば「普通紙モード」、「厚紙モード」といった、画像形成装置201の動作設定を指定するプリントモードの情報に含まれていたり、プリントモードの情報で代替されたりしてもよい。また、プリントジョブの情報の一部又は全てが、画像形成装置201に設けられた表示手段や入力手段を備えた操作部(図示せず)からCPU311に入力されてもよい。
【0046】
次に、前回転インピーダンス検知が行われる。この検知は、2次転写部T2に記録材Pが存在しない前回転時に所定の目標電流値(第1目標電流値)の電流が流れる電圧値を検知することを目的としている。つまり、前回転時に、2次転写電源44から2次転写ローラ24に、第1目標電流値の電流が流れるように定電流制御で試験電圧(制御電圧)が印加され、その際に2次転写電源44が出力する電圧の電圧値が2次転写電源44によって検知される。正確な電圧値を得るためには少なくとも2次転写ローラ24の1周分の検知結果を取得することが望ましい。本実施例では、2次転写ローラ24の直径は20mmである。そのため、2次転写ローラ24の1周分に相当する試験電圧の印加中の2次転写ローラ24の走行距離(電圧印加距離)は63mmとなる。また、本実施例では、画像形成装置10のプロセススピードは210mm/sである。そのため、2次転写ローラ24の1周分に相当する試験電圧の印加時間(電圧印加時間)は0.3sとなる。CPU311は、この電圧値の検知結果に基づいて、第1目標電流値の電流が流れる電圧値の平均値である平均電圧値(前)を算出する。この平均電圧値(前)は、タイムラインに示すように、紙間時及び後回転時に2次転写電源44から2次転写ローラ24に定電圧制御で印加する電圧の電圧値である平均電圧値(間)としても採用される。本実施例では、紙間時の2次転写ローラ24の走行距離(紙間の長さ)は42mm、後回転時の2次転写ローラ24の走行距離(後回転の長さ)は63mmである。そして、CPU311は、上記平均電圧値(前)に、記録材Pの分圧分の電圧値を足した電圧値である電圧値(先1)を算出する。上記第1目標電流値は、環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに応じて最適な転写性が得られるように、予め決められた値が選択される。また、上記記録材Pの分圧分の電圧値(記録材分担電圧値)は、環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに応じて最適な転写性が得られるように、予め決められた値が選択される。つまり、ROM312には、環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに応じて予め決められた、第1目標電流値、記録材分担電圧値に関する情報がそれぞれ記憶されている。CPU311は、上述と同様にして取得した環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに基づいて、ROM312に記憶されている予め決められた第1目標電流値、記録材分担電圧値から、それぞれ対応するものを選択することができる。なお、平均電圧値(前)を、等倍、係数倍、一定電圧を加える、などして(これらは単独でも組合せてもよい)決定した電圧値に、記録材分担電圧値を加えて、電圧値(先1)を決定することができる。本実施例では、平均電圧値(前)と同一の値に、記録材分担電圧値を加えて、1枚目の記録材Pの先端部分(更には、紙間時及び後回転時)に対する2次転写電圧の目標電圧値である電圧値(先1)とした。
【0047】
ここで、2次転写部T2に記録材Pの搬送方向に関する先端が突入する前後や、2次転写部T2から記録材Pの搬送方向に関する後端が抜ける前後は、2次転写部T2のインピーダンスが大きく変わりやすい。そのため、これらの期間に2次転写電圧を定電流制御していると、転写電流と転写電圧とが大きく振れ、転写性が安定しなかったり、転写メモリが発生したりする場合がある。そこで、本実施例では、記録材Pの搬送方向に関する先後端の部分では2次転写電圧の定電圧制御を行い、それ以外の部分では2次転写電圧の定電流制御を行う。
【0048】
なお、記録材Pの搬送方向に関する先端部分(以下、単に「先端部分」あるいは「紙先端」ともいう。)は、記録材Pの搬送方向に関する先端から後端側の予め決められた所定の幅の部分である。記録材Pの搬送方向に関する記録材Pの先端部分の幅は、上述のような2次転写電圧を定電流制御した場合に発生する可能性がある不具合を十分に抑制できるように適宜設定することができる。ただし、典型的には、この記録材Pの先端部分の幅は、2次転写ローラ24の1周分の長さ以下で十分であることが多い。本実施例では、この記録材Pの先端部分の幅は21mm(2次転写ローラ24の1周分の長さの約1/3)である。また、記録材Pの搬送方向に関する後端部分(以下、単に「後端部分」あるいは「紙後端」ともいう。)は、記録材Pの搬送方向に関する後端から先端側の予め決められた所定の幅の部分である。記録材Pの搬送方向に関する記録材Pの後端部分の幅は、上述のような2次転写電圧を定電流制御した場合に発生する可能性がある不具合を十分に抑制できるように適宜設定することができる。ただし、典型的には、この記録材Pの後端部分の幅は、2次転写ローラ24の1周分の長さ以下で十分であることが多い。本実施例では、この記録材Pの後端部分の幅は21mm(2次転写ローラ24の1周分の長さの約1/3)である。
【0049】
次に、1枚目の記録材Pが2次転写部T2に到達すると、該記録材Pの先端部分が2次転写部T2を通過している際には、2次転写電源44から2次転写ローラ24に、上述の電圧値(先1)で定電圧制御された2次転写電圧が印加される。
【0050】
次に、1枚目の記録材Pの先端部分と後端部分との間の部分(以下、単に「中間部分」あるいは「紙中」ともいう。)が2次転写部T2に到達すると、該記録材Pの中間部分が2次転写部T2を通過している際には、2次転写電源44から2次転写ローラ24に所定の目標電流値(第2目標電流値)で定電流制御された2次転写電圧が印加される。この第2目標電流値は、環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに応じて最適な転写性が得られるように、予め決められた値が選択される。つまり、ROM312には、環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに応じて予め決められた、第2目標電流値に関する情報が記憶されている。CPU311は、上述と同様にして取得した環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに基づいて、ROM312に記憶されている予め決められた第2目標電流値から対応するものを選択することができる。
【0051】
次に、1枚目の記録材Pの後端部分が2次転写部T2に到達すると、該記録材Pの後端部分が2次転写部T2を通過している際には、2次転写電源44から2次転写ローラ24に、次のような平均電圧値(後1)で定電圧制御された2次転写電圧が印加される。つまり、1枚目の記録材Pの中間部分に対する2次転写電圧の定電流制御を行うことで、上記第2目標電流値の電流が流れる正確な電圧値に関する情報を取得することができる。そこで、本実施例では、CPU311は、1枚目の記録材Pの中間部分に対する2次転写電圧の定電流制御中の電圧値の平均値である平均電圧値(中1)を算出する。この平均電圧値(中1)は、1枚目の記録材Pの後端部分に対する2次転写電圧の目標電圧値である平均電圧値(後1)、及び2枚目の記録材Pの先端部分に対する2次転写電圧の目標電圧値である平均電圧値(先2)として採用される。
【0052】
最後に、2枚目の記録材Pの中間部分が2次転写部T2を通過している際にも、1枚目と同様に2次転写電源44から2次転写ローラ24に2次転写電圧が定電流制御で印加される。そして、2枚目の記録材Pの中間部分に対する2次転写電圧の定電流制御中の平均電圧値(中2)を、2枚目の記録材Pの後端部分に対する2次転写電圧の目標電圧値である平均電圧値(後2)として採用する。これは、各記録材Pの差(電気抵抗の差)を考慮して、より正確な電圧値を目標電圧値として採用するためである。
【0053】
以上が、通常どおりATVC制御を行ってプリントを行った場合の2次転写電圧のタイムラインである。
【0054】
<本実施例の制御の原理>
上述のように、本実施例では、ATVC制御は、1枚目の記録材Pの先端部分に対する2次転写電圧の目標電圧値(定電圧値)、更には紙間時及び後回転時の目標電圧値を決定するために行われている。紙間時、後回転時の目標電圧値に関しては、異常な電流が流れて転写メモリが発生するなどの不具合の出ない範囲で制御していればよい。しかし、1枚目の記録材Pの先端部分に対する2次転写電圧の目標電圧値に関しては、直接画質に影響するため、最適な転写性が得られるように精度よく決めることが望まれる。
【0055】
しかしながら、プリントジョブを実行するたびにATVC制御を行うと、2次転写ローラ24や中間転写ベルト20などの部材の通電や回転による劣化が促進されたり、FPOTが遅くなったりする場合がある。なお、FPOTとは、画像形成装置にプリント指令が入力されてから画像が形成された最初の記録材が画像形成装置から排出されるまでにかかる時間のことをいう。特に、画像形成装置10が、比較的少ないプリント枚数のプリントジョブを繰り返す使われ方をされた場合に、影響が大きくなりやすい。そのため、ATVC制御の実行頻度は、なるべく抑えることが望ましい。
【0056】
そこで、本実施例では、記録材Pに2次転写する画像の画像情報に基づいて、1枚目の記録材Pの先端部分の画像の被覆率が所定の閾値より低い場合は、ATVC制御を実行しないこととする。この場合は、1枚目の記録材Pの先端部分に対する2次転写電圧は、最適な転写性が得られる値に対するずれ幅の許容量が比較的大きいと判断できるからである。以下、更に説明する。
【0057】
上述のように、ATVC制御において、1枚目の記録材Pの先端部分に対する2次転写電圧の目標電圧値は、環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに応じて、最適な転写性が得られるように、予め決められた値が選択される。これは、種々の条件において最適な転写性が得られるように、各条件における最適な目標電圧値を決めるためである。裏返すと、ATVC制御を実行しないということは、1枚目の記録材Pの先端部分に対する2次転写電圧の目標電圧値が最適値からずれる可能性があることを意味する。例えば、目標電圧値を最適値からより低い値に変更した場合、ベタ画像などにおいて、転写効率の低下に伴う濃度低下などの画像不良が発生するおそれがある。逆に、目標電圧値を最適値からより高い値に変更した場合、過剰な電位差による放電現象により、ハーフトーン画像などに放電起因の画像不良が発生するおそれがある。
【0058】
しかし、記録材Pに2次転写する画像が、ベタ画像やハーフトーン画像ではなく、低被覆率の画像の場合は、上述のような画像不良が顕在化しにくいことがわかっている。ここで、「被覆率」とは、所定面積当たりの画像領域(画像部、トナーが載る部分)の占める割合のことをいう。画像情報において、画像の色にかかわらず画像が存在するか否かで判断し、画像が存在する領域を画像領域とする。本実施例では、上記所定面積(単位ブロック)は、24ピクセル(主走査方向)×24ピクセル(副走査方向)の領域とする。なお、主走査方向(露光装置7の主走査方向)は、感光ドラム2の回転軸線と略平行な方向であり、中間転写ベルト20や記録材Pの搬送方向と略直交する方向に相当する。また、副走査方向は、主走査方向と略直交する方向であり、中間転写ベルト20や記録材Pの搬送方向と略平行な方向に相当する。一例として、24ピクセル×24ピクセル(総ピクセル数=576)のうち、画像領域が288ピクセルであった場合には、被覆率は50%となる。
【0059】
例えば、転写電圧を最適値からより低い値に変更した場合、低被覆率の画像では、ベタ画像に比べて転写するトナー量、すなわち、転写するトナーの総電荷量が少ないため、転写効率は低下しにくく転写性は維持される。逆に、転写電圧を最適値からより高い値に変更した場合も、低被覆率の画像では、放電によって乱されるトナー量自体が少ないため、画像不良として顕在化しにくい。
【0060】
このように、低被覆率の画像では、ベタ画像やハーフトーン画像と比較して、転写電圧の振れに伴う画像不良の発生するリスクは小さくなる。転写電圧の振れ幅を、低被覆率の画像において画像不良が発生しない範囲に抑えることで、転写電圧の目標電圧値をATVC制御によって最適化していなくても、画像不良を発生させないことが可能となる。
【0061】
以上の理由から、本実施例では、1枚目の記録材Pの先端部分に転写する画像の画像情報に基づいて、「ATVC制御実行の可否判断」を行う。
【0062】
<ATVC制御実行の可否判断の方法>
次に、本実施例における「ATVC制御実行の可否判断」の方法について説明する。
【0063】
図2に示すように、画像処理部303は、画像解析手段としての画像解析部401と、画像変換処理部402と、ハーフトーニング処理部403と、を有する。画像解析部401は、画像を解析することで、「ATVC制御実行の可否判断」を行う。画像変換処理部402は、文字コードの画像変換を行い、ハーフトーニング処理部403は、グレイスケール画像のハーフトーニング処理などを行い、画像をビットマップ化する。
【0064】
本実施例では、画像変換処理部402による処理は、600dpiの解像度で行われる。また、本実施例では、画像解析部401による計算処理は、画像変換処理部402による処理が終了し、ハーフトーニング処理403による処理を行う前の画像データに対して行われる。ただし、画像処理の順序はこれに限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0065】
<ATVC制御実行の可否判断の処理方法>
次に、画像解析部401における「ATVC制御実行の可否判断」の処理方法について説明する。
【0066】
まず、画像解析部401は、元画像(600dpi)を24ピクセル×24ピクセル(総ピクセル数=576)の単位ブロックに分割する。次に、画像解析部401は、全ての単位ブロックにおける被覆率を計算し、各単位ブロックの被覆率が所定の閾値よりも小さいか否かを判断する。画像解析部401は、単位ブロックにおける画像領域が占める割合が該閾値以上の場合は、該単位ブロックは非低被覆率ブロックであると判断する。一方、画像解析部401は、単位ブロックにおける画像領域が占める割合が該閾値未満の場合は、該単位ブロックは低被覆率ブロックであると判断する。本実施例では、被覆率の閾値は、30%に設定している。
図4は、単位ブロック内における画像領域の占める割合の例を示している。画像解析部401は、
図4(a)に示すように、単位ブロックにおける画像領域が占める割合が30%以上の場合は、該単位ブロックを非低被覆率ブロックとする。一方、画像解析部401は、
図4(b)に示すように、単位ブロックにおける画像領域が占める割合が30%未満の場合は、該単位ブロックを低被覆率ブロックとする。
【0067】
次に、画像解析部401は、各単位ブロックの被覆率の計算結果に基づいて、ATVC制御実行の可否を決定する。
図5は、2次転写部T2において1枚目の記録材Pの先端部分に2次転写する画像のパターンの例をパターンAからDで示している。
【0068】
本実施例では、画像解析部401は、1枚目の記録材Pの先端部分の画像において、主走査方向に沿って全ての単位ブロックが低被覆率ブロック又は余白部である場合、ATVC制御を実行しないと判断する。ここで、「余白部」とは、記録材P上のトナー像が転写され得る画像形成領域以外の領域である非画像形成領域、記録材P上の画像形成領域におけるベタ白部、及び、記録材P上の画像形成領域におけるベタ白部であるが電子透かし(地紋透かし)のような被覆率の低いドットパターンが形成される領域を含むものである。つまり、「余白部」とは、画像情報が有るが被覆率が閾値未満の部分(画像領域が無く被覆率が0%の部分を含む)、及び画像情報が無い部分を含むものである。上記主走査方向に沿って全ての単位ブロックが低被覆率ブロック又は余白部である領域を、いずれにしても所定面積当たりの画像領域が占める割合が閾値未満の領域であることから、「低被覆率領域」ともいう。つまり、本実施例では、画像解析部401は、1枚目の記録材Pの先端部が低被覆率領域である場合、ATVC制御を実行しないと判断する。
【0069】
パターンAは、画像のない余白部であり、2次転写電圧の目標電圧値を最適化していなくても、画像不良が発生しないため、ATVC制御を実行する必要がない。
【0070】
パターンBは、主走査方向に沿って全ての単位ブロックが低被覆率ブロックであるため、ATVC制御を実行する必要がない。
【0071】
パターンCは、主走査方向に沿って全ての単位ブロックが非低被覆率ブロックであり、2次転写電圧の目標電圧値を最適化しなかった場合、画像不良が生じるおそれがあるため、ATVC制御を実行する必要がある。
【0072】
また、パターンDは、主走査方向に沿って非低被覆率ブロックと低被覆率ブロックとが混在している。パターンDでは、2次転写電圧の目標電圧値を最適化しなかった場合、低被覆率ブロックの領域では問題無いものの、非低被覆率ブロックの領域において画像不良が生じるおそれがあるため、ATVC制御を実行する必要がある。
【0073】
このように、本実施例では、1枚目の記録材Pの先端部分の画像の画像情報に応じて、ATVC制御実行の可否判断を行う。
【0074】
<ATVC制御実行の可否判断の制御方法>
次に、本実施例におけるATVC制御実行の可否判断の制御方法について説明する。
図6は、該制御の手順の概略を示すフローチャート図である。
【0075】
まず、プリンタ制御装置304は、コントローラ部301においてプリントジョブの情報を受信すると、画像解析部401において1枚目の記録材Pの先端部分の画像の被覆率が30%未満であるか否かを判断する(S101)。なお、簡単のため、被覆率の判断方法の詳細についての重複する説明は省略するが、より詳細には、
図5を参照して上述したようにしてATVC制御を実行するか否かを判断する。S101で「No」の場合、プリンタ制御装置304は、CPU311において、通常どおりATVC制御を実行してプリントを実行するように制御する(S104)。一方、S101で「Yes」の場合、プリンタ制御装置304は、CPU311において、前回のATVC制御を実行した際に取得した平均電圧値(前)を採用できるか否かを判断する(S102)。なお、平均電圧値(前)は、ATVC制御が実行されるごとに、エンジン制御部302に設けられた不揮発性メモリ(図示せず)に更新して記憶されている。
【0076】
ここで、2次転写部T2に記録材Pが無い前回転時の2次転写部T2のインピーダンスは、画像形成装置10の設置環境や使用履歴(使用量の累積値)などによって変動する。前回のATVC制御を実行した際に求めた平均電圧値(前)を今回も採用できるか否かは、前回のATVC制御を実行した際の2次転写部T2のインピーダンスと現在の2次転写部T2のインピーダンスとの差異の程度に基づいて判断できる。後者の前者に対する乖離が十分に小さい場合には、前回のATVC制御を実行した際に求めた平均電圧値(前)を今回も採用できる。本実施例では、前回のATVC制御の実行時と現在とで画像形成装置10の設置環境の絶対水分量が所定の閾値(本実施例では3.0[g/m3])以上変動するか、又は前回のATVC制御の実行後のプリント枚数(所定のサイズに換算した場合の枚数であってよい)が所定の閾値(本実施例では5000枚)を超えた場合には、今回のATVC制御を実行すると判断する。つまり、本実施例では、前回のATVC制御の実行時と現在とでの画像形成装置10の設置環境の絶対水分量の変動が所定の閾値(本実施例では3.0[g/m3])未満であり、かつ、前回のATVC制御の実行後のプリント枚数が所定の閾値(本実施例では5000枚)以下である場合には、前回のATVC制御を実行した際に求めた平均電圧値(前)を今回も採用し、今回のATVC制御は実行しないと判断する。なお、絶対水分量は、CPU311が、環境センサ(図示せず)による温度及び湿度の検知結果に基づいて求めることができる。
【0077】
S102で「No」の場合、プリンタ制御装置304は、CPU311において、通常どおりATVC制御を実行してプリントを実行するように制御する(S104)。一方、S102で「Yes」の場合、プリンタ制御装置204は、CPU311において、ATVC制御を実行せずにプリントを実行するように制御する(S103)。
【0078】
図7を参照して、本実施例の画像形成装置10においてATVC制御を行わずにプリントを行う場合の2次転写電圧のタイムラインについて説明する。
図7は、ATVC制御を行わずに、記録材PとしてのA4用紙(横送り210mm)の2枚にプリントを行った場合の、2次転写電圧のタイムラインを示すチャート図である。
図3に示すATVC制御を行う場合と
図7に示すATVC制御を行わない場合とで異なるのは、次の点である。
図7に示すATVC制御を行わない場合では、1枚目の記録材Pの先端部分、紙間時、後回転時に対する目標電圧値が前回のATVC制御において得られた平均電圧値(前)に基づいて決定されている。これにより、
図7に示すATVC制御を行わない場合では、
図3に示すATVC制御を行う場合と比較して、前回転インピーダンス検知を行わない分の0.3sの時間短縮が図られている。
図3に示すATVC制御を行う場合では、プロセススタートからプロセスエンドまで2.9sの時間がかかり、この時間にわたり2次転写ローラ24に電圧が印加されている。これに対して、
図7に示すATVC制御を行わない場合では、プロセススタートからプロセスエンドまでの時間が2.6sに短縮されており、0.3sだけ2次転写ローラ24に対する電圧の印加時間が短縮されている。これにより、2次転写ローラ24や中間転写ベルト20などの部材の通電や回転による劣化を抑制することができる。また、ATVC制御を行わない分だけFPOTを短縮することができる。
【0079】
(5)画像出力実験結果
次に、本実施例の効果を検証するために行った、比較例と本実施例とにおける画像出力実験の結果について説明する。比較例の画像形成装置10は、プリントジョブを実行するたびにATVC制御を実行する点を除いて、その構成及び動作は本実施例の画像形成装置10のものと実質的に同じである。
【0080】
画像出力実験は、次の通紙耐久試験を通して行い、比較例と本実施例とで2次転写ローラ24の電気抵抗の上昇の比較を行った。試験環境は、温度を23℃、相対湿度を50%とした。記録材Pとしては、GFC-081(キヤノンマーケティングジャパン、商品名)を用いた。そして、プリントモードをフルカラーノーマルプリントモードとして、プリント枚数が1枚のプリントジョブを繰り返し、1万枚のプリントを行った。なお、フルカラーノーマルプリントモードは、記録材Pとして普通紙が用いられる場合に選択されるフルカラーモードの例である。
【0081】
出力画像としては、記録材Pの先端部分に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックそれぞれの印字率(画像比率)が2%、かつ、単位ブロック内の被覆率が8%の画像を有する画像を用いた。すなわち、比較例では、毎回のプリントジョブにおいてATVC制御が実行されるため、耐久試験を通して1万回のATVC制御が実行される。一方、本実施例では、耐久試験の開始時の1回と、5000枚ごとに実行される2回と、で合わせて3回しかATVC制御が実行されない。
【0082】
表1に、耐久試験の結果を示す。2次転写ローラ24の電気抵抗値は、23℃、50%RH環境において、2次転写ローラ24を、アルミシリンダ上に9.8Nの力で押圧し、50mm/secの周速度で回転させた状態で、1000Vを印加して測定した。ここで、2次転写ローラ24の電気抵抗が過度に上昇すると、2次転写電源44の容量の上限(電圧出力上限値)によって、所望の2次転写電圧を印加できなくなる場合がある。そのため、2次転写ローラ24の電気抵抗の上昇は、2次転写ローラ24の寿命を決める要因となる。なお、比較例と本実施例とのいずれにおいても、耐久試験を通して、記録材Pの先端部分の画像を含む記録材P上の画像に転写電圧(転写電流)の不足による転写不良や、転写電圧(転写電流)の過多による放電に起因する画像不良は発生しなかった。
【0083】
【0084】
表1より、本実施例の方が比較例よりも2次転写ローラ24の電気抵抗の上昇を抑制できていることがわかる。これは、2次転写ローラ24の通電劣化よる電気抵抗の上昇は、電圧が印加される総時間に比例しているからである。
【0085】
なお、本実施例では、低被覆率ブロックと非低被覆率ブロックとの境界を示す被覆率の閾値を30%に設定しているが、この閾値は本実施例の値に限定されるものではない。この閾値は、転写性や画像不良の発生程度などに鑑みて、適宜調整することができる。この閾値は、例えば、画像形成装置10の構成や個体ごとに変更してもよいし、同じ画像形成装置10においても、環境条件、記録材条件、プリントモードなどに応じて変更してもよい。
【0086】
また、本実施例では、単位ブロックの大きさを24ピクセル×24ピクセル(総ピクセル数=576)に設定している。しかし、この単位ブロックの大きさは本実施例の値に限定されるものではない。この単位ブロックの大きさは、転写性や画像不良の発生程度などに鑑みて、適宜調整することができる。
【0087】
また、本実施例では、環境変動などから転写部のインピーダンスが変化している可能性があると判断した場合は、再度ATVC制御を実行した。これに対して、環境変動などから転写部のインピーダンスが変化している可能性があると判断した場合に、転写部材に対する通電時間の短縮のために、例えば2次転写ローラ24の半周程度の前回転インピーダンス検知を行う、粗調を行ってもよい。これによっても、2次転写ローラ24や中間転写ベルト20などの部材の通電や回転による劣化の抑制、FPOTの短縮を図ることができる。なお、ATVC制御において、複数の異なる目標電流値で定電流制御した電圧を印加し、それぞれに対応する複数の電圧値を検知して電圧電流特性を求め、該電圧電流特性に基づいて所望の電流値に対応する電圧値を求めるようにしてもよい。この場合には、上記粗調の場合の目標電流値の数を通常のATVC制御(微調)の場合よりも少なくして、制御時間を短くするなどしてもよい。
【0088】
つまり、ATVC制御によって算出された目標電圧値で2次転写電圧が印加される記録材Pの先端部分の画像の被覆率が十分に小さい場合には、ATVC制御を実行しなかったり、ATVC制御における通電時間を短くしたりすることができる。これにより、転写部材の通電や回転による劣化を抑制し、またFPOTを短縮することができる。
【0089】
このように、本実施例の画像形成装置10は、トナー像を担持する像担持体20と、像担持体20から被転写体Pにトナー像を転写する転写部T2を形成する転写部材24と、転写部材24に電圧を印加する電圧印加部44と、像担持体20から被転写体Pにトナー像を転写する前に、転写部材24に制御電圧を印加する制御動作(本実施例ではATVC制御)を開始することが可能な制御部304と、を有する。そして、本実施例では、制御部304は、像担持体20から被転写体Pに転写するトナー像に関する、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率に基づいて、該トナー像を被転写体Pに転写する前に開始され得る制御動作を実行するか否かの決定を行うことが可能である。本実施例では、上記被転写体は、像担持体20からトナー像が転写される記録材Pであり、制御部304は、記録材Pの搬送方向に関する先端側の所定の範囲に転写するトナー像に関する被覆率に基づいて、該トナー像を記録材Pに転写する前に開始され得る制御動作に関して上記決定を行う。本実施例では、制御部304は、被覆率が第1の値の場合に制御動作を実行し、被覆率が第1の値よりも小さい第2の値の場合に制御動作を実行しないように、制御動作を実行するか否かの決定を行う。ただし、制御部304は、制御動作の動作設定として、制御電圧を印加する時間の決定を行ってもよい。この場合、制御部304は、被覆率が第1の値の場合よりも、被覆率が前記第1の値よりも小さい第2の値の方が、制御電圧を印加する時間が短くなるように、制御電圧を印加する時間の決定を行うことができる。また、本実施例では、制御部304は、被覆率が上記第1の値の場合に実行する前記制御動作に基づいて、トナー像を被転写体Pに転写する際に転写部材24に印加する転写電圧の目標値を設定する。
【0090】
言い換えれば、本実施例の画像形成装置10は、1つの開始指示により単一又は複数の記録材Pに画像を形成するプリントジョブを実行する際に、1枚目の記録材Pが転写部T2に到達する前に、転写部材24に制御電圧を印加して該1枚目の記録材Pの搬送方向の先端側の所定の範囲を含む少なくとも一部が転写部T2を通過している際に転写部材24に印加する転写電圧の目標値を設定する制御動作(ATVC制御)を実行することが可能な制御部304を有する。ここで、本実施例では、記録材Pの先端部分及び後端部分では転写電圧を定電圧制御、記録材Pの中央部分では転写電圧を定電流制御するものとしたが、例えば記録材Pの全域で転写電圧を定電圧制御するものであってもよい。そして、本実施例では、制御部304は、プリントジョブを実行する際に、1枚目の記録材Pの上記所定の範囲に転写するトナー像に関する、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率に基づいて、該1枚目の記録材Pが転写部T2に到達する前の制御動作を実行するか否かを決定することが可能である。本実施例では、制御部304は、被覆率が第1の値の場合に制御動作を実行し、被覆率が前記第1の値よりも小さい第2の値の場合に制御動作を実行しないように、制御動作を実行するか否かを決定する。また、本実施例では、制御部304は、制御動作を実行しないと決定した場合、前回以前のプリントジョブにおける制御動作に基づいて、今回のプリントジョブの1枚目の記録材の上記所定の範囲を含む少なくとも一部が転写部T2を通過している際に転写部材24に印加する転写電圧の目標値を設定する。ここで、本実施例では、前回のプリントジョブにおける制御動作の結果を用いるものとしたが、所望の制御精度などに応じて、前回以前のプリントジョブにおける制御動作の結果を適宜用いることができる。また、前回以前のプリントジョブにおける制御動作の結果を用いることができない場合は、今回のプリントジョブにおいて制御動作を実行するようにすればよい。この前回以前のプリントジョブにおける制御動作の結果を用いることができない場合には、前述のような環境変動(絶対水分量の変化など)や耐久変動(部材の所定量の使用や所定時間の経過など)があった場合の他、記録材の収容部(カセット)や装置のメンテナンス用の扉の開閉などがあった場合、該結果自体が無い場合などが含まれる。また、制御部304は、前述のように、制御動作を実行するか否かを決定する代わりに、制御動作における制御電圧を印加する時間を決定することも可能である。この場合、制御部304は、被覆率が第1の値の場合よりも、被覆率が第1の値よりも小さい第2の値の方が、制御電圧を印加する時間が短くなるように、制御電圧を印加する時間を決定することができる。また、本実施例では、上記像担持体は、感光体2から転写されたトナー像を上記被転写体としての記録材Pに転写するために搬送する中間転写体20である。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、例えばモノクロ画像形成装置にも適用できるものであり、上記像担持体は、上記被転写体としての記録材Pに転写するトナー像を担持する感光体であってもよい。
【0091】
以上説明したように、本実施例では、ATVC制御によって算出された目標電圧値で2次転写電圧が印加される記録材Pの先端部分の画像の被覆率が十分に小さい場合には、ATVC制御を実行する必要がないと判断し、ATVC制御を実行しない。したがって、本実施例によれば、ATVC制御の実行頻度を下げることで2次転写ローラ24や中間転写ベルト20などの部材の通電や回転による劣化を抑制することができる。また、本実施例によれば、ATVC制御の実行頻度を下げることでFPOTの遅延を抑制することができる。
【0092】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、実施例1における説明を援用し、ここでの再度の詳しい説明は省略する。
【0093】
本実施例では、1次転写部T1のATVC制御によって算出された目標電圧値で1次転写電圧が印加される部分の画像の被覆率が十分に小さい場合には、1次転写のタイミング(更には、各画像形成プロセス(帯電、露光、現像)のタイミング)を前倒しする。
【0094】
(1)1次転写電圧の制御方法
<通常のプリント動作>
次に、本実施例における1次転写電圧の制御方法について説明する。本実施例では、感光ドラム2上のトナー像を中間転写ベルト20上に1次転写するために、1次転写電源40から1次転写ローラ5に正極性の電圧が印加される。
【0095】
図8を参照して、本実施例の画像形成装置10においてATVC制御を行って通常どおりプリントを行う場合の1次転写電圧のタイムラインについて説明する。
図8は、一例として、第1の画像形成部(イエロー用の画像形成部)1aにおける、ATVC制御を行って記録材PとしてのA4用紙(横送り210mm)の2枚に通常どおりプリントを行った場合の、1次転写電圧のタイムラインを示すチャート図である。他の画像形成部1における1次転写電圧のタイムラインも同様である。この1次転写電圧の制御は、CPU311によって行われる。
【0096】
まず、プリントジョブのプロセスがスタートすると、1次転写電源40から1次転写ローラ5に、1次転写電圧の初期バイアスが定電圧制御で印加される。初期バイアスは、電圧の挙動を安定化させることを目的としており、起動後0.1sで安定する。この初期バイアスの電圧値は、環境(温度又は湿度の少なくとも一方)の情報である環境情報などに応じて最適な転写性が得られるように、予め決められた値が選択される。つまり、ROM312には、環境情報などに応じて予め決められた初期バイアスの電圧値に関する情報が記憶されている。CPU311は、環境センサ(図示せず)により取得した環境情報などに基づいて、ROM312に記憶されている予め決められた初期バイアスの電圧値から対応するものを選択することができる。
【0097】
次に、前回転インピーダンス検知が行われる。この検知は、1次転写部T1にトナー像が存在しない前回転時に所定の目標電流値の電流が流れる電圧値を検知することを目的としている。つまり、前回転時に、1次転写電源40から1次転写ローラ5に、所定の目標電流値の電流が流れるように定電流制御で試験電圧(制御電圧)が印加され、その際に1次転写電源40が出力する電圧の電圧値が1次転写電源40によって検知される。正確な電圧値を得るためには少なくとも1次転写ローラ5の1周分の検知結果を取得することが望ましい。本実施例では、1次転写ローラ5の直径は13.4mmである。そのため、1次転写ローラ5の1周分に相当する試験電圧の印加中の1次転写ローラ5の走行距離(電圧印加距離)は42mmとなる。また、本実施例では、画像形成装置10のプロセススピードは210mm/sである。そのため、1次転写ローラ5の1周分に相当する試験電圧の印加時間(電圧印加時間)は0.2sとなる。CPU311は、この電圧値の検知結果に基づいて、所定の目標電流値の電流が流れる電圧値の平均値である平均電圧値(前)を算出する。この平均電圧値(前)は、タイムラインに示すように、画像形成時(1次転写時)(本実施例では、更に紙間時及び後回転時)に1次転写電源40から1次転写ローラ5に印加する1次転写電圧の電圧値である平均電圧値(定)として採用される。上記目標電流値は、環境情報などに応じて最適な転写性が得られるように、予め決められた値が選択される。つまり、ROM312には、環境情報などに応じて予め決められた目標電流値に関する情報が記憶されている。CPU311は、上述と同様にして取得した環境情報などに基づいて、ROM312に記憶されている予め決められた目標電流値から対応するものを選択することができる。なお、平均電圧値(前)を、等倍、係数倍、一定電圧を加える、などして(これらは単独でも組合せてもよい)平均電圧値(定)を決定することができる。本実施例では、平均電圧値(前)と同一の値を、画像形成時(1次転写時)(更には、紙間時及び後回転時)の定電圧制御される1次転写電圧の目標電圧値である平均電圧値(定)とした。
【0098】
以上が、ATVC制御を行って通常どおりプリントを行った場合の1次転写電圧のタイムラインである。
【0099】
<本実施例の制御の原理>
実施例1で説明したのと同様に、1次転写部T1に関しても、プリントジョブを実行するたびにATVC制御を行うと、1次転写ローラ5や中間転写ベルト20などの部材の通電や回転による劣化が促進されたり、FPOTが遅くなったりする場合がある。特に、画像形成装置10が、比較的少ないプリント枚数のプリントジョブを繰り返す使われ方をされた場合に、影響が大きくなりやすい。
【0100】
そこで、本実施例では、中間転写ベルト20に1次転写する画像の画像情報に基づいて、1枚目の記録材Pに転写する画像に関する中間転写ベルト20上の画像形成領域の搬送方向の先端部分(以下、単に「画像の先端部分」ともいう。)の画像の被覆率が所定の閾値より低い場合は、1次転写の開始タイミングを前倒しすることとする。この場合は、1枚目の記録材Pに転写する画像に関する画像の先端部分に対する1次転写電圧は、最適な転写性が得られる値に対するずれ幅の許容量が比較的大きいと判断できるからである。以下、更に説明する。
【0101】
なお、画像の先端部分は、中間転写ベルト20上の画像形成領域の搬送方向に関する先端から後端側の予め決められた所定の幅の部分である。中間転写ベルト20上の画像形成領域の搬送方向に関する画像の先端部分の幅は、前回転インピーダンス検知に必要な時間などに基づいて適宜設定することができる。なお、中間転写ベルト20上の画像形成領域は、典型的には、2次転写部T2で記録材Pと接触する領域であり、実質的に記録材Pと同一のサイズとされる。ただし、中間転写ベルト20上の画像形成領域は、記録材Pのサイズよりも小さくてもよい。上述のように、本実施例では、ATVC制御の前回転インピーダンス検知のために0.2sが必要になる。本実施例では、画像形成装置10のプロセススピードは210mm/sであるので、電圧印加距離としては42mmである。つまり、非低被覆率ブロックの領域で1次転写が行われるタイミングよりも、時間で0.2s、距離で42mmだけ前に、ATVC制御の前回転インピーダンス検知を開始すれば、非低被覆率ブロックの領域でATVC制御により求めた平均電圧値(定)を印加することができる。したがって、本実施例では、この画像の先端部分の幅は42mmとした。つまり、少なくともこの画像の先端部分(先端から後端側に42mmの範囲)の画像の被覆率を判断して、搬送方向における画像の先端から後端側の低被覆率領域の幅を決定する。そして、非低被覆率領域が1次転写部T1に到達するまでにATVC制御が完了するように、1次転写の開始タイミングを前倒しして、ATVC制御の前回転インピーダンス検知を実行する期間と1次転写を実行する期間とを重ねる。
【0102】
1次転写の開始タイミングを前倒しして、ATVC制御の前回転インピーダンス検知を実行する期間と1次転写を実行する期間とを重ねる場合、1次転写電圧は、該検知と重なった期間では定電流制御され、重ならない期間では定電圧制御されることになる。
【0103】
<1次転写の開始タイミングを前倒しする方法>
次に、1次転写の開始タイミングを前倒しする方法について説明する。なお、FPOTを短縮するためには、1次転写の開始タイミングだけでなく、該1次転写の開始タイミングの前倒しに合わせて、各画像形成プロセス(帯電、露光、現像)の開始タイミングも前倒しする必要がある。ただし、ここでは、簡単のため、1次転写の開始タイミングの前倒しについて詳細に説明する。各画像形成プロセス(帯電、露光、現像)の開始タイミングは、該1次転写の開始タイミングの前倒しに合わせて前倒しすればよい。
【0104】
図9は、1枚目の記録材Pに転写する画像に関する中間転写ベルト20上の画像形成領域の搬送方向の先端から後端側に42mmの領域(画像の先端部分)の画像のパターンの例をパターンAからDで示している。
【0105】
なお、中間転写ベルト20に1次転写する画像の被覆率の判断方法は、実施例1で説明した記録材Pに2次転写する画像の被覆率の判断方法と同様であるが、各1次転写部T1で中間転写ベルト20に1次転写する画像ごとに判断する。ここで、フルカラーモードでは、1つの画像形成部1で1次転写の開始タイミングを前倒しする場合は、他の画像形成部1でも同様に1次転写の開始タイミングを前倒しする。そのため、各1次転写部Tでの1次転写の開始タイミングを前倒し可能な時間のうち最も短いものに合わせて、各1次転写部T1での1次転写の開始タイミングを前倒しするようにすることができる。また、2次転写部T2で記録材Pに2次転写する画像の被覆率の情報を、各1次転写部T1で中間転写ベルト20に1次転写する画像の被覆率の情報として代用してもよい。2次転写部T2で記録材Pに2次転写する画像は、各1次転写部T1で順次中間転写ベルト20に1次転写された画像である。そのため、2次転写部T2で記録材Pに2次転写する画像の先端部分の画像の被覆率に基づいて、上記最も短いものに相当する、1次転写の開始タイミングを前倒し可能な時間を求めることができる。また、モノクロモードでは、画像を形成する画像形成部1に関して1次転写の開始タイミングを前倒し可能な時間を求めればよい。この場合も、上記同様に、2次転写部T2で記録材Pに2次転写する画像の被覆率の情報を、1次転写部T1で中間転写ベルト20に1次転写する画像の被覆率の情報として代用してもよい。
【0106】
パターンAは、画像のない余白部であり、1次転写電圧の目標電圧値を最適化していなくても、画像不良が発生しないため、1次転写の開始タイミングを0.2s前倒しすることができる。つまり、前回転インピーダンス検知を実行する全期間と1次転写を実行する期間とが重なるように、1次転写の開始タイミングを前倒しすることができる。ここで、「余白部」とは、記録材P上のベタ白部において、電子透かし(地紋透かし)のような被覆率の低いドットパターンが形成されている領域も含む。
【0107】
パターンBは、主走査方向に沿って全ての単位ブロックが低被覆率ブロックであるため、1次転写の開始タイミングを0.2s前倒しすることができる。つまり、前回転インピーダンス検知を実行する全期間と1次転写を実行する期間とが重なるように、1次転写の開始タイミングを前倒しすることができる。
【0108】
パターンCは、主走査方向に沿って全ての単位ブロックが非低被覆率ブロックであり、1次転写電圧の目標電圧値を最適化しなかった場合、画像不良が生じるおそれがあるため、1次転写の開始タイミングを前倒ししない。つまり、前回転インピーダンス検知を実行する全期間と1次転写を実行する期間とが重ならないように、1次転写の開始タイミングを前倒しすることなく通常どおりプリントを行う。
【0109】
パターンDは、主走査方向に沿って非低被覆率ブロックと低被覆率ブロックとが混在している。パターンDでは、1次転写電圧の目標電圧値を最適化しなかった場合、低被覆率ブロックの領域では問題無いものの、非低被覆率ブロックの領域において画像不良が生じるおそれがあるため、1次転写の開始タイミングを前倒ししない。つまり、前回転インピーダンス検知を実行する全期間と1次転写を実行する期間とが重ならないように、1次転写の開始タイミングを前倒しすることなく通常どおりプリントを行う。
【0110】
また、パターンEは、先端から後端側に21mmまでの領域は画像のない余白部であり、先端から後端側に21mmまでの領域よりも後端側の領域には非低被覆率ブロックの領域がある。この場合、1次転写の開始タイミングを0.1s前倒しすることができる。つまり、前回転インピーダンス検知を実行する期間の半分と1次転写を実行する期間とが重なるように、1次転写の開始タイミングを前倒しすることができる。
【0111】
このように、本実施例では、1枚目の記録材Pに転写する画像に関する画像の先端部分の画像情報に応じて、「1次転写の開始タイミング前倒しの可否判断」を行う。
【0112】
<1次転写の開始タイミング前倒しの可否判断の制御方法>
次に、本実施例における1次転写の開始タイミング前倒しの可否判断の制御方法について説明する。
図10は、該制御の手順の概略を示すフローチャート図である。
【0113】
まず、プリンタ制御装置304は、コントローラ部301においてプリントジョブの情報を受信すると、画像解析部401において1枚目の記録材Pに転写する画像に関する画像の先端部分の搬送方向に関する低被覆率領域の幅を検知する(S201)。画像の被覆率の算出方法などは実施例1と同じであるため、ここでの再度の詳しい説明は省略する。次に、プリンタ制御装置301は、CPU311において、1次転写の開始タイミングの前倒し可能時間Ta[s](Ta=0sの場合を含む)を算出する(S202)。つまり、非低被覆率領域が1次転写部T1に到達するまでに前回転インピーダンス検知が完了するように、前回転インピーダンス検知を実行する期間と1次転写を実行する期間とを重ねられる時間(期間)を求める。次に、プリンタ制御装置301は、CPU311において、前倒し可能時間Ta[s]に合わせて各画像形成プロセス(帯電、露光、現像)のタイミング及び1次転写の開始タイミングを前倒ししてプリントを実行するように制御する(S203)。なお、上記前倒し可能時間Ta[s]に合わせてタイミングの前倒しをしてプリントを実行するとは、Ta=0sであり、タイミングの前倒しをしない場合を含むものである。
【0114】
図11を参照して、本実施例の画像形成装置10において1次転写の開始タイミングの前倒しをしてプリントを行う場合の1次転写電圧のタイムラインについて説明する。
図11は、一例として、第1の画像形成部1aにおける、1次転写の開始タイミングを前倒しして、記録材PとしてのA4用紙(横送り210mm)の2枚にプリントを行った場合の、1次転写電圧のタイムラインを示すチャート図である。ここでは、1枚目の記録材Pに転写する画像に関する画像の先端部分のパターンは、
図9に示すパターンEであるものとする。
図8に示す1次転写の開始タイミングの前倒しを行わない場合と
図11に示す1次転写の開始タイミングの前倒しを行う場合とで異なるのは、次の点である。
図11に示す1次転写の開始タイミングの前倒しを行う場合では、1枚目の記録材Pに転写する画像に関する画像の先端部分の低被覆率領域の幅分だけ、1次転写の開始タイミングが前倒しされ、前回転インピーダンス検知の途中から1次転写が開始されている。
図8に示す1次転写の開始タイミングの前倒しを行わない場合では、プロセススタートからプロセスエンドまで2.7sの時間がかかっている。これに対し、
図11に示す1次転写の開始タイミングの前倒しを行う場合では、1次転写の開始タイミングが0.1s前倒しされたことで、プロセススタートからプロセスエンドまでの時間が2.6sに短縮されている。これにより、1次転写ローラ5や中間転写ベルト20などの部材の通電や回転による劣化を抑制することができる。また、1次転写の開始タイミングを前倒しした分だけFPOTを短縮することができる。
【0115】
(2)画像出力実験結果
次に、本実施例の効果を検証するために行った、比較例と本実施例とにおける画像出力実験の結果について説明する。比較例の画像形成装置10は、1次転写の開始タイミングの前倒しを行わずに通常どおりにプリントジョブを実行する点を除いて、その構成及び動作は本実施例の画像形成装置10のものと実質的に同じである。
【0116】
画像出力実験では、比較例と本実施例とでFPOTの比較を行った。実験環境は、温度を23℃、相対湿度を50%とした。記録材Pとしては、GFC-081(キヤノンマーケティングジャパン、商品名)を用いた。そして、プリントモードをフルカラーノーマルプリントモードとして、1枚のプリントを行い、FPOTを測定した。出力画像としては、記録材Pの先端部分に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックそれぞれの印字率が2%、かつ、単位ブロック内の被覆率が8%の画像を有する画像を用いた。すなわち、比較例では、通常どおりプリントが実行されるが、本実施例では、1次転写の開始タイミング及び各画像形成プロセス(帯電、露光、現像)のタイミングが0.2s前倒しされる。表2に、実験結果を示す。なお、比較例と本実施例とのいずれにおいても、転写電圧(転写電流)の不足による転写不良や、転写電圧(転写電流)の過多による放電に起因する画像不良は発生しなかった。
【0117】
【0118】
表2より、本実施例の方が比較例よりもFPOTを短縮できていることがわかる。
【0119】
なお、本実施例では、画像の先端部分の被覆率が低い場合に1次転写のタイミングと各画像形成プロセスのタイミングとを前倒ししたが、更にFPOTを短縮するなどのために、次のようにしてもよい。例えば、前回のATVC制御の実行からの環境変動などが小さく、転写部のインピーダンスが変化している可能性が小さいと判断した場合に、例えば1次転写ローラ5の半周程度の前回転インピーダンス検知を行う、粗調を行ってもよい。
【0120】
つまり、ATVC制御によって算出された目標電圧値で1次転写電圧が印加される部分の画像の被覆率が十分に小さい場合には、1次転写の開始タイミングを前倒し、更にはATVC制御における転写部材に対する通電時間を短くすることができる。これにより、転写部材の通電や回転による劣化を抑制し、またFPOTを短縮することができる。
【0121】
このように、本実施例では、制御部304は、像担持体2から被転写体20に転写するトナー像に関する、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率に基づいて、該トナー像を被転写体20に転写する前に開始され得る制御動作を実行する期間に対する該トナー像を前記被転写体に転写するタイミングの決定を行うことが可能である。本実施例では、制御部304は、被転写体上のトナー像が転写され得る画像形成領域の搬送方向に関する先端側の所定の範囲に転写するトナー像に関する前記被覆率に基づいて、該トナー像を被転写体20に転写する前に開始され得る制御動作に関して上記決定を行う。本実施例では、制御部304は、被覆率が第1の値の場合に制御動作を実行する期間とトナー像を被転写体20に転写する期間とが重ならないようにし、被覆率が前記第1の値よりも小さい第2の値の場合に制御動作を実行する期間とトナー像を被転写体20に転写する期間の少なくとも一部とが重なるようにする。
【0122】
言い換えれば、本実施例の画像形成装置10は、1つの開始指示により単一又は複数の記録材Pに画像を形成するプリントジョブを実行する際に、1枚目の記録材Pに形成する画像のトナー像の、像担持体2から被転写体20への転写を開始する前に、転写部材5に制御電圧を印加して該トナー像を被転写体20に転写する期間の少なくとも一部で転写部材5に印加する転写電圧の目標値を設定する制御動作(ATVC制御)を開始することが可能な制御部304を有する。そして、本実施例では、制御部304は、プリントジョブを実行する際に、被転写体上の1枚目の記録材Pに形成する画像のトナー像が転写され得る画像形成領域の搬送方向の先端側の所定の範囲に転写するトナー像に関する、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率に基づいて、該1枚目の記録材Pに形成する画像のトナー像の、像担持体2から被転写体20への転写を開始するタイミングを決定することが可能である。本実施例では、制御部304は、被覆率が第1の値の場合に制御動作を実行する期間とトナー像を被転写体20に転写する期間とが重ならないようにし、被覆率が第1の値よりも小さい第2の値の場合に制御動作を実行する期間とトナー像を被転写体20に転写する期間の少なくとも一部とが重なるようにするように、上記タイミングを決定する。また、本実施例では、上記被転写体は、像担持体2から転写されたトナー像を記録材Pに転写するために搬送する中間転写体20である。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、例えばモノクロ画像形成装置にも適用できるものであり、上記被転写体は、像担持体2からトナー像が転写される記録材Pであってもよい。
【0123】
以上説明したように、本実施例では、ATVC制御によって算出された目標電圧値で1次転写電圧が印加される部分の画像の被覆率が十分に小さい場合には、1次転写のタイミング(更には、各画像形成プロセスのタイミング)を前倒しする。これにより、ATVC制御だけのための通電時間や回転時間を低減して、2次転写ローラ24や中間転写ベルト20などの部材の通電や回転による劣化を抑制することができる。また、1次転写の開始タイミングを前倒しすることで、FPOTを短縮することができる。
【0124】
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、実施例1における説明を援用し、ここでの再度の詳しい説明は省略する。
【0125】
実施例1では、ATVC制御の実行頻度を下げることで、部材の通電や回転による劣化を抑制することについて説明した。本実施例では、実施例1においてATVC制御を省略したのに代えて、ATVC制御の代わりに別の制御を行う方法について説明する。
【0126】
(1)イオン導電剤のブリードアウト
本実施例では、中間転写ベルト20の導電剤として、イオン導電性の導電剤(イオン導電剤)が使用されている。導電形態がイオン導電性の中間転写ベルトは、他の主要な導電形態である電子導電性の中間転写ベルトと比較して、例えば、次のようなメリットがある。つまり、電気抵抗が中抵抗の中間転写ベルトを作製したときに狙いの電気抵抗値を発現し易い。また、長期の使用による電気抵抗の変動が小さい。一方、イオン導電性の中間転写ベルトでは、継続的に一方向に電流を印加すると、中間転写ベルト内のイオン導電剤の解離や偏在(以下、単に「偏在」ともいう。)が発生することがある。そして、これにより、中間転写ベルトの表面にイオン導電剤がブリードアウトしたり、中間転写ベルトの電気抵抗が上昇したりすることがある。イオン導電剤がブリードアウトすると、中間転写ベルトの表面に接触する他の部材をイオン導電剤で汚染してしまうことで問題が発生することがある。例えば、中間転写ベルト上に残存したトナーを清掃するために設けられたクリーニングブレードの先端部分にイオン導電剤が付着すると、クリーニングブレードのクリーニング性能が低下し、クリーニング不良が発生してしまうおそれがある。
【0127】
また、このようなイオン導電剤のブリードアウトによる課題は、弾性層が含有する導電剤としてイオン導電剤が用いられた2次転写ローラ24にも当てはまり、2次転写ローラ24の電気抵抗の上昇を招いたりする。
【0128】
イオン導電剤のブリードアウト現象の対策として、非画像形成時に画像形成時とは逆極性の電圧を印加する調整動作を実行することで、画像形成時の電流と同じ方向の順方向積算電流値と、逆方向の逆方向積算電流値と、のバランスを取ることが効果的である。
【0129】
したがって、本実施例では、2次転写部T2のATVC制御によって算出された目標電圧値で2次転写電圧が印加される記録材Pの先端部分の画像の被覆率が十分に小さい場合には、ATVC制御を実行する必要がないと判断し、ATVC制御を実行しない。そして、その代わりに、画像形成時(2次転写時)とは逆極性の電圧を2次転写ローラ24に印加する。
【0130】
(2)2次転写電圧の制御方法
<2次転写電圧のタイムライン>
図12を参照して、本実施例の画像形成装置10においてATVC制御を行わずに逆極性の電圧を印加する場合の2次転写電圧のタイムラインについて説明する。
図12は、ATVC制御を行わずに逆極性の電圧を印加して、記録材PとしてのA4用紙(横送り210mm)の2枚にプリントを行った場合の、2次転写電圧のタイムラインを示すチャート図である。実施例1で説明した
図3に示すATVC制御を行う場合と
図12に示すATVC制御を行わずに逆極性の電圧を印加する場合とで異なるのは、次の点である。
図12に示すタイムラインでは、ATVC制御において前回転インピーダンス検知が行われる時間に対応する時間に、画像形成時(2次転写時)とは逆極性の電圧が2次転写ローラ24に印加されている。この逆極性の電圧の電圧値は、環境(温度又は湿度の少なくとも一方)の情報である環境情報、プリントモードの情報などに応じて予め決められた値が選択される。つまり、ROM312には、環境情報、プリントモードの情報などに応じて予め決められた上記逆極性の電圧の電圧値に関する情報が記憶されている。CPU311は、環境センサ(図示せず)により取得した環境情報、プリントモードの情報などに基づいて、ROM312に記憶されている予め決められた上記逆極性の電圧の電圧値から対応するものを選択することができる。また、
図12に示すタイムラインでは、1枚目の記録材Pの先端部分、紙間時、後回転時に対する目標電圧値が前回のATVC制御において得られた平均電圧値(前)に基づいて決定されている。
【0131】
実施例1では、ATVC制御を実行する必要がない場合には前回転インピーダンス検知をスキップしていたが、本実施例では、前回転インピーダンス検知を行っていた時間に画像形成時(2次転写時)とは逆極性の電圧を印加する。これにより、中間転写ベルト20や2次転写ローラ24のイオン導電剤のブリードアウトをより抑制することができる。
【0132】
<ATVC制御又は逆極性電圧印加の実行判断の制御方法>
次に、本実施例におけるATVC制御又は逆極性電圧印加の実行判断の制御方法について説明する。
図13は、該制御の手順の概略を示すフローチャート図である。
【0133】
まず、プリンタ制御装置304は、コントローラ部301においてプリントジョブの情報を受信すると、画像解析部401において1枚目の記録材Pの先端部分の画像の被覆率が30%未満であるか否かを判断する(S301)。なお、簡単のため、被覆率の判断方法の詳細についての重複する説明は省略するが、より詳細には、
図5を参照して実施例1で説明したのと同様にしてATVC制御を実行するか否かを判断する。S301で「No」の場合、プリンタ制御装置304は、CPU311において、通常どおりATVC制御を実行してプリントを実行するように制御する(S304)。一方、S301で「Yes」の場合、プリンタ制御装置304は、CPU311において、前回のATVC制御を実行した際に取得した平均電圧値(前)を採用できるか否かを判断する(S302)。このときの判断方法は、
図6を参照して実施例1で説明したものと同様である。本実施例では、前回のATVC制御の実行時と現在とで画像形成装置10の設置環境の絶対水分量が所定の閾値(本実施例では3.0[g/m
3])以上変動するか、又は前回のATVC制御の実行後のプリント枚数(所定のサイズに換算した場合の枚数であってよい)が所定の閾値(本実施例では5000枚)を超えた場合には、今回のATVC制御を実行すると判断する。
【0134】
S302で「No」の場合、プリンタ制御装置304は、CPU311において、通常どおりATVC制御を実行してプリントを実行するように制御する(S304)。一方、S302で「Yes」の場合、プリンタ制御装置304は、次のようにする。つまり、CPU311において、ATVC制御の前回転インピーダンス検知が行われる時間に対応する時間に画像形成時(2次転写時)とは逆極性の電圧を2次転写ローラ24に印加してプリントを実行するように制御する(S303)。
【0135】
(3)画像出力実験結果
次に、本実施例の効果を検証するために行った、比較例と本実施例とにおける画像出力実験の結果について説明する。比較例の画像形成装置10は、プリントジョブを実行するたびにATVC制御を実行する点を除いて、その構成及び動作は本実施例の画像形成装置10のものと実質的に同じである。
【0136】
画像出力実験は、次の通紙耐久試験を通して行い、比較例と本実施例とで中間転写ベルト20のクリーニング性能の比較と、2次転写ローラ24の電気抵抗の上昇の比較と、を行った。試験環境は、温度を23℃、相対湿度を50%とした。記録材Pとしては、GFC-081(キヤノンマーケティングジャパン、商品名)を用いた。そして、プリントモードをフルカラーノーマルプリントモードとして、プリント枚数が1枚のプリントジョブを繰り返し、1万枚のプリントを行った。
【0137】
出力画像としては、記録材Pの先端部分にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックそれぞれの印字率が2%、かつ、単位ブロック内の被覆率が8%の画像を有する画像を用いた。すなわち、比較例では、毎回のプリントジョブにおいてATVC制御が実行されるため、耐久試験を通して1万回のATVC制御が実行される。一方、本実施例では、耐久試験の開始時の1回と、5000枚ごとに実行される2回と、で合わせて3回しかATVC制御が実行されず、残りの9997回は逆極性の電圧の印加が行われる。
【0138】
表3に、耐久試験の結果を示す。2次転写ローラ24の電気抵抗値は、23℃、50%RH環境において、2次転写ローラ24を、アルミシリンダ上に9.8Nの力で押圧し、50mm/secの周速度で回転させた状態で、1000Vを印加して測定した。また、クリーニング性能は、耐久試験中に出力画像のサンプリングを行い、1万枚のプリントが終了するまでに、出力画像上にクリーニング不良が発生するか否かを観察することで評価した。評価基準は、クリーニング不良が発生しない場合を「○(良好)」、発生する場合を「×(不良)」とした。なお、比較例と本実施例とのいずれにおいても、耐久試験を通して、記録材Pの先端部分の画像を含む記録材P上の画像に転写電圧(転写電流)の不足による転写不良や、転写電圧(転写電流)の過多による放電に起因する画像不良は発生しなかった。
【0139】
【0140】
表3より、本実施例の方が比較例よりも2次転写ローラ24の電気抵抗の上昇を抑制でき、中間転写ベルト20のクリーニング性能も維持できていることがわかる。これは、逆極性の電圧を印加することで、2次転写ローラ24及び中間転写ベルト20のイオン導電剤のブリードアウトを抑制できているためであると考えられる。
【0141】
なお、本実施例では、ATVC制御を実行しない場合に画像形成時とは逆極性の電圧を印加したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、本実施例において画像形成時とは逆極性の電圧を印加した期間に、次のように電圧を制御することができる。例えば、単純に印加電圧をOFFにしたり、印加電圧の絶対値を小さくしたりすることができる。また、電圧をパルス状に印加したり、印加電圧の極性を画像形成時とは逆極性と同極性とに交互(単数回でも複数回でもよい)に切り替えたりする(すなわち、印加電圧を交番電圧とする)ことができる。これらは組み合わせてもよい。印加電圧をOFFにしたり、印加電圧の絶対値を小さくしたりすることは、イオン導電性の転写部材のブリードアウトの抑制、電子導電性の転写部材の通電劣化の抑制に効果がある。また、印加電圧をパルス状としたり交番電圧としたりすることは、特にイオン導電性の転写部材のブリードアウトの抑制に効果がある。これらの電圧の制御は、ブリードアウトや通電劣化の抑制効果などの観点から、画像形成装置の構成に合わせて適宜調整することができる。
【0142】
また、ATVC制御に代えて行う別の制御動作(調整動作)は、ブリードアウトを抑制するための動作に限定されるものではない。例えば、2次転写ローラ24に画像形成時とは逆極性の電圧を印加して、2次転写ローラ24に付着したトナーを除去する、2次転写ローラ24のクリーニング動作であってもよい。この場合、別途クリーニング動作を実行する時間を削減できるので、部材の劣化の抑制やダウンタイムの抑制に効果がある。
【0143】
このように、制御部304は、像担持体20から被転写体Pに転写するトナー像に関する、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率に基づいて、該トナー像を被転写体Pに転写する前に開始され得る制御動作(調整動作)の動作設定の決定を行うことが可能である。この場合、制御部304は、制御動作の動作設定として、制御電圧の絶対値、制御電圧の極性、又は制御電圧の波形の決定を行うことができる。例えば、制御部304は、被覆率が第1の値の場合よりも、被覆率が前記第1の値よりも小さい第2の値の方が、制御電圧の絶対値が小さくなるように、制御電圧の絶対値の決定を行うことができる。また、制御部304は、被覆率が第1の値の場合に制御電圧の極性をトナー像を被転写体20に転写する際に転写部材24に印加する転写電圧の極性と同極性とし、被覆率が第1の値よりも小さい第2の値の場合に制御電圧の極性を転写電圧とは逆極性とするように、制御電圧の極性の決定を行うことができる。また、制御部304は、被覆率が第1の値の場合に制御電圧を直流電圧とし、被覆率が第1の値よりも小さい第2の値の場合に制御電圧をパルス状の電圧又は交番電圧とするように、制御電圧の波形の決定を行うことができる。
【0144】
以上説明したように、本実施例では、ATVC制御によって算出された目標電圧値で2次転写電圧が印加される記録材Pの先端部分の画像の被覆率が十分に小さい場合には、ATVC制御を実行する必要がないと判断し、ATVC制御を実行しない。そして、その代わりに、画像形成時(2次転写時)とは逆極性の電圧を2次転写ローラ24に印加する。これにより、2次転写ローラ24や中間転写ベルト20のイオン導電剤のブリードアウトを抑制し、結果的にクリーニングブレードの良好なクリーニング性能を維持し、また2次転写ローラ24の電気抵抗の上昇を抑制することができる。
【0145】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0146】
上述の実施例では、1次転写部材、2次転写部材は、それぞれローラ状の部材であったが、これらは、例えば、ブラシ状の部材、シート状の部材などであってもよい。
【0147】
また、上述の実施例では、画像形成装置には画像形成部は4つ設けられていたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、例えば5つ以上(例えば6つ)設けられていてもよい。
【0148】
また、上述の実施例における2次転写対向ローラに対応するローラ(内ローラ)を2次転写部材として用いて、これにトナーの正規の帯電極性と同極性の2次転写電圧を印加するようにしてもよい。この場合、上述の実施例における2次転写ローラに対応するローラ(外ローラ)を対向ローラとして用いて、これを電気的に接地すればよい。
【符号の説明】
【0149】
1 画像形成部
2 感光ドラム
5 1次転写ローラ
20 中間転写ベルト
24 2次転写ローラ
304 プリンタ制御装置