(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】レーダーシステムのレーダー信号を処理する方法およびレーダーシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/32 20060101AFI20241007BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20241007BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20241007BHJP
【FI】
G01S13/32
G01S7/02 210
G01S13/931
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020173722
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】10 2019 127 922.4
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599158797
【氏名又は名称】インフィニオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Infineon Technologies AG
【住所又は居所原語表記】Am Campeon 1-15, 85579 Neubiberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス ビヒル
(72)【発明者】
【氏名】ディアン トレスナ ヌグラハ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ロジェ
(72)【発明者】
【氏名】ロマン イニアス
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-528420(JP,A)
【文献】特開2003-240845(JP,A)
【文献】特開2013-250122(JP,A)
【文献】特表2017-524898(JP,A)
【文献】特開2016-102787(JP,A)
【文献】特開2008-089315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを備えたレーダーシステムのレーダー信号を処理する方法であって、前記方法は、
複数の時間ベースレーダー信号を発生させるステップであって、
前記複数の時間ベースレーダー信号の各時間ベースレーダー信号
は、前記複数のアンテナのうちの関連付けられたアンテナによって受信されたレーダー信号に基づいているステップと、
前記
複数の時間ベースレーダー信号の各時間ベースレーダー信号を周波数ベースレーダー信号へ周波数変換し、これにより、複数の周波数ベースレーダー信号を形成するステップであって、
前記複数の周波数ベースレーダー信号の各周波数ベースレーダー信号
は、周波数ベース値および関連付けられた強度値の複数の対を含むステップと、
各周波数ベース値のために、
第1のビット数を用いて、第1の周波数ベースレーダー信号
の強度値を記憶するステップと、
残りの周波数ベースレーダー信号
の各強度値を記憶するステップであって、前記
残りの周波数ベースレーダー信号の
各強度値は、
前記第1のビット数よりも少ない
第2のビット
数を用いて記憶されるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記
第1の周波数ベースレーダー信号と前記
残りの周波数ベースレーダー信号との対応する強度値は、それぞれ対となった周波数ベース値において
異なる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記周波数ベースレーダー信号は、前記時間ベースレーダー信号のフーリエ変換、または、前記フーリエ変換から導出されたドップラー信号である、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記
第1の周波数ベースレーダー信号の強度値は、それぞれ仮数および指数を含む浮動小数点値として記憶されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記
残りの周波数ベースレーダー信号の強度値の
各々は、
強度値の浮動小数点値の指数を記憶することなく、強度値の浮動小数点値の仮数として記憶されている、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記
残りの周波数ベースレーダー信号の強度値の
各々は
、前記
残りの周波数ベースレーダー信号の強度値と前記
第1の周波数ベースレーダー信号の強度値との差である、
請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記複数の時間ベースレーダー信号は、少なくとも4つの時間ベースレーダー信号を含む、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
受信されたレーダー信号のそれぞれは、複数のチャープを含む送信された信号の反射信号である、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記複数のアンテナの各対間の間隔は、前記周波数ベースレーダー信号が実質的に雑音のみによって相互に区別される小ささである、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
レーダーシステムであって、前記レーダーシステムは、
各アンテナがレーダー信号を受信するように構成された複数のアンテナと、
メモリと、
プロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、複数の時間ベースレーダー信号を発生させるように構成されており、
前記複数の時間ベースレーダー信号の各時間ベースレーダー信号は、前記複数のアンテナのうちの関連付けられたアンテナによって受信されたレーダー信号に基づいており、
前記プロセッサは、前記
複数の時間ベースレーダー信号の各時間ベースレーダー信号を周波数ベースレーダー信号へ
周波数変換し、これにより、複数の周波数ベースレーダー信号を形成するように構成されており、
前記複数の周波数ベースレーダー信号の各周波数ベースレーダー信号は、周波数ベース値および関連付けられた強度値の複数の対を含み、
各周波数ベース値のために、
前記プロセッサは
、第1の周波数ベースレーダー信号
の強度値を前記メモリに記憶するように構成されており、
前記第1の周波数ベースレーダー信号の各強度値は、第1のビット数を用いて記憶され、
前記プロセッサは
、残りの周波数ベースレーダー信号
の各強度値を
前記メモリに記憶するように構成されており、前記
残りの周波数ベースレーダー信号の
各強度
値は、
前記第1のビット数よりも少ない
第2のビット
数を用いて記憶される、
レーダーシステム。
【請求項11】
前記
第1の周波数ベースレーダー信号と前記
残りの周波数ベースレーダー信号との対応する強度値は、それぞれ対となった周波数ベース値において
異なる、
請求項10記載のレーダーシステム。
【請求項12】
前記周波数ベースレーダー信号は、前記時間ベースレーダー信号のフーリエ変換、または、前記フーリエ変換から導出されたドップラー信号である、
請求項10または11記載のレーダーシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記
第1の周波数ベースレーダー信号の強度値を、それぞれ仮数および指数を含む浮動小数点値として記憶するように構成されている、
請求項10から12までのいずれか1項記載のレーダーシステム。
【請求項14】
前記
残りの周波数ベースレーダー信号の強度値の
各々は、
強度値の浮動小数点値の指数を記憶することなく、強度値の浮動小数点値の仮数として記憶されている、
請求項13記載のレーダーシステム。
【請求項15】
前記
残りの周波数ベースレーダー信号の強度値の
各々は
、前記
残りの周波数ベースレーダー信号の強度値と前記
第1の周波数ベースレーダー信号の強度値との差である、
請求項13記載のレーダーシステム。
【請求項16】
前記複数の時間ベースレーダー信号は、少なくとも4つの時間ベースレーダー信号を含む、
請求項10から15までのいずれか1項記載のレーダーシステム。
【請求項17】
前記レーダーシステムは、少なくとも1つの送信アンテナをさらに含み、
受信されたレーダー信号のそれぞれは、前記少なくとも1つの送信アンテナにより送信された複数のチャープを含む送信された信号の反射信号である、
請求項10から16までのいずれか1項記載のレーダーシステム。
【請求項18】
前記複数のアンテナの各対間の間隔は、前記周波数ベースレーダー信号が実質的に雑音のみによって相互に区別される小ささである、
請求項10から17までのいずれか1項記載のレーダーシステム。
【請求項19】
前記複数のアンテナの各対間の間隔は、約1mm~約10mmの範囲にある、
請求項10から18までのいずれか1項記載のレーダーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
種々の実施形態は、概して、レーダーシステムのレーダー信号を処理する方法およびレーダーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダーシステムは、典型的には、少なくとも一時的に記憶される必要のある大量の処理データを発生させる。メモリに大きなコストがかかるため、通常、レーダーデータには信号圧縮が適用される。
【0003】
米国特許出願公開第2016/0033631号明細書には、レーダーデータを圧縮する方法が記載されている。所与のアンテナに対する離散化されたデータを提供する第1段階の高速フーリエ変換(FFT)が完了した後、圧縮が適用され、ここでは、離散化されたデータのうちの少なくともいくつかのビンに対して、少なくとも1つの冗長符号ビットが排除された、低減されたデータセットが記憶される。このことは、同じアンテナで受信されたデータに対して圧縮が行われることを意味する。
【0004】
図1にこのことが示されている。4つのアンテナRX1,RX2,RX3,RX4の離散化された周波数ベースレーダーデータが、レンジビンまたはドップラービンを表す番号づけされたボックスとして示されている。(レンジビンまたはドップラービンを横断する)圧縮方向が、破線のボックス102で表されている。ドップラーは目標物の速度を表しており、レンジは目標物とレーダーアンテナとの間の距離を表している。
【0005】
真の信号圧縮が可能となる一方で、当該手法は欠点を有する場合もある。
【0006】
主たる欠点は感度の損失が生じうることであり、当該損失は、複数の目標物が存在する場合に特に関心事となりうる(「目標物」なる語はレーダーシステムの到達可能なレンジ内にある対象物をいうことができる)。例えば、目標物のうちの1つが長い距離(レンジとも称される)にあり、大きな断面積を有する場合がある。当該目標物は例えば自動車またはバスでありうる。これにより、高い周波数で大きな振幅の信号が発生しうる。
【0007】
複数のレンジビンを横断する圧縮がなされるとき、本来的に、高い周波数および大きな振幅の信号が、例えば歩行者によって発生しうる、より小さい振幅の信号をマスクしてしまうことがある。
【0008】
図6Aには、高い周波数および大きな振幅の信号が他の無関係のビンを損なうケースが示されている。周波数ベースレーダーデータの圧縮の結果が、x方向に沿ったレンジビンとy方向に沿ったチャープカウントとを有する、2次元のグレースケール画像600として示されている。強度がグレースケールとして表現されており、ここでは、全体として、より明るいグレーがより高い強度を表現している。ただし、660が付された黒い領域は最も高い強度を表している。660が付されたビンは、真の高強度信号を有している。662で表されているのは、偽の高強度信号(または過負荷となった信号)を有する、ビン660の高い強度の信号で損なわれたビンである。当該ビンに、真の、例えばより低い強度の信号が存在したとしても、検出されない。
【0009】
このことは、歩行者または類似の小さな目標物の検出がより複雑となりうることを意味する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
複数のアンテナを備えたレーダーシステムのレーダー信号を処理する方法を提供する。当該方法は、各時間ベースレーダー信号が複数のアンテナのうちの関連付けられたアンテナによって受信されたレーダー信号に基づいていてよい、複数の時間ベースレーダー信号を発生させることと、時間ベースレーダー信号の各時間ベースレーダー信号を周波数ベースレーダー信号へ変換し、これにより、各周波数ベースレーダー信号が周波数ベース値および関連付けられた強度値の複数の対を含む、複数の周波数ベースレーダー信号を形成することと、複数のアンテナのうちの1つのアンテナの1つの時間ベースレーダー信号に対応する1つの周波数ベースレーダー信号の周波数ベース値および強度値を記憶することと、1つの周波数ベースレーダー信号の対応する強度値に基づいて、別の複数の周波数ベースレーダー信号の複数の強度値の各強度値を記憶することであって、ここで、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号の強度値の記憶された表現は、対応する記憶された強度値よりも少ないビットを有することと、を含みうる。
【0011】
図中、同様の参照記号は、全体的に、異なる図を通して同じ要素を指している。図面は必ずしも縮尺通りに描かれておらず、代わりに、本発明の基本方式を説明するために全体的に強調がなされている。以下の説明では、以下の図面を参照しつつ、本発明の種々の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来技術による、レーダーデータを圧縮する方法を示す図である。
【
図2】種々の実施形態による、レーダーデータを圧縮する方法を示す図である。
【
図3A】動作中の、種々の実施形態によるレーダーシステムを示す概略図である。
【
図3B】種々の実施形態によるレーダーシステムを示す図である。
【
図4】種々の実施形態による、時間ベースレーダー信号のデータキューブを示す図である。
【
図5】種々の実施形態による、レーダー信号を処理する方法で発生した、複数のアンテナの周波数ベースレーダー信号を示す図である。
【
図6A】従来技術による、圧縮されたレーダーデータを示す図である。
【
図6B】種々の実施形態による、圧縮されたレーダーデータを示す図である。
【
図7】種々の実施形態による、レーダー信号を処理する方法を示すフローチャートである。
【
図8】種々の実施形態による、レーダー信号を処理する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明は、例示のために本発明を実施しうる特定の詳細および実施形態を示す添付の図面を参照している。
【0014】
「例示の」なる語は、本明細書においては、「例、事例または例示として用いる」ことを意味するものとして使用している。本明細書に説明しているいずれの実施形態または設計形態も、必ずしも他の実施形態または設計形態を上回る有意性または利点を有すると考えられるものではない。
【0015】
開示の種々の態様は、装置に対して、また方法に対して提供されている。装置の基本的な特性は方法の基本的な特性にも当てはまり、また逆に方法の基本的な特性は装置の基本的な特性にも当てはまることを理解されたい。したがって、簡明性のために、こうした特性の二重の説明は省略したところがある。
【0016】
メモリにおける信号圧縮、言い換えれば、元の表現よりも少ないビットを有する表現を用いた信号の記憶は、レーダーシステムのためのコスト上の競争力ある手段を可能にすることにとって重要でありうる。
【0017】
アンテナによって受信されうるレーダー信号は、時間の関数としての強度を有しうる。当該強度はアナログ信号として受信可能であり、記憶およびさらなる処理のためにデジタル数値に変換可能である。最近まで、レーダー信号用のフォーマットは整数または分数であった。新たなコンピューティングユニットは浮動小数点を支援可能であり、これにより、圧縮方法、すなわちレーダーのための新たな圧縮方法が要求可能となっている。
【0018】
種々の実施形態において、レーダーデータの圧縮は、単一のアンテナの「内部」において(例えば複数のレンジビンまたは複数のドップラービンに対して)ではなく、複数のアンテナを横断して実行可能である。複数のアンテナ間の間隔が充分に小さい場合、このことは、圧縮中に関連付けられるべき値が種々の実施形態においてより類似し、よって、圧縮中に関連付けられた値が従来技術よりも相互に近似することを意味する。
【0019】
例えば、周波数ベースレーダー信号は、例えば強度対レンジにつき、相互にきわめて小さい、例えば数ミリメートルの間隔を有する複数のアンテナに対して実質的に同じでありうる。複数のアンテナのうちの1つのアンテナの周波数ベースレーダー信号は、到達可能なレンジ内にある対象物(目標物)の数および/または対象物(目標物)のサイズおよび/または目標物の速度にかかわらず、複数のアンテナのうちの別のアンテナの対応する信号から、実質的に雑音のみによって区別されうる。
【0020】
種々の実施形態では、変換の結果、例えばアンテナのそれぞれに対する関連付けられた強度を有する離散化されたレンジを生じうる、複数のアンテナを横断するFFTの結果が、続いて、単一のもしくはきわめて少数のFFTレンジに対する圧縮データによって圧縮可能となる。特に、種々の実施形態では、アンテナのうちの第1のアンテナ、すなわちレンジビンのうちの1つに対しては、全数のビットを要求する関連付けられた強度の表現が記憶可能となるが、他のアンテナのうちの第2のアンテナに対しては、より少ないビットを要求するレンジビンに関連付けられた強度の表現が記憶可能となる。第2のアンテナの強度の表現は、第1のアンテナに基づくと理解されるので、より少ないビットを要求するだけでよい。これはすべてのレンジビンに適用可能であり、第3のアンテナ、第4のアンテナ等のすべてのレンジビンについても同様である。
【0021】
図3Aには、動作中の、種々の実施形態によるレーダーシステム300の概略図が示されており、
図3Bには、種々の実施形態によるレーダーシステム300の写真が示されている。
【0022】
図3Aから見て取れるように、レーダーシステム300は、複数のアンテナRX、特にRX1,RX2,…RXnを含みうる。アンテナRXは、レーダー信号334を受信するように構成可能であり、したがって受信器と称されることもある。種々の実施形態では、例えば
図3Bに示されている1つまたは複数の送信アンテナTXは、レーダーシステム300内に別個に設けられていてよい。種々の実施形態(図示せず)では、組み合わされた送受信アンテナを設けることもできる。
【0023】
図3Aでは、第2のアンテナRX2によって受信された信号334のみが目標物330からの反射に由来することが示されている。しかし、典型的なレーダー用途、特に種々の実施形態につき(例えば自動車産業において)考察される用途では、目標物330までの距離Lは、目標物330が検出可能なレンジ内にある場合、すべてのアンテナRXが目標物330から反射されたレーダー信号334を受信しうる、隣接したアンテナRX間の間隔dよりも格段に大きくなりうる。例えば、自動車産業におけるレーダーシステム300は、典型的にはλ=77GHzの波長で動作する。したがって、典型的には、アンテナ(受信器)RX間の間隔dは、約λ/2、すなわち約2mmであってよい。
図3Bには、隣接するアンテナRX間、例えば図示しているように、アンテナRX3とアンテナRX4との間に約2mmの間隔dを有するレーダーシステム300が示されている。距離Lは、典型的には約2m以上であってよく、言い換えれば、Lはdのおおよそ1000倍以上であってよい。
【0024】
種々の実施形態では、目標物330から反射されたレーダー信号334は、レーダーシステム300内に由来しうる。少なくとも1つの送信器TXが、(図示しない)送信されたレーダー信号を送信した可能性があり、その一部が目標物330によって反射されている。反射された部分の一部がレーダーシステム300へ反射されており、受信されたレーダー信号334としてアンテナRXによって受信可能となる。
【0025】
送信されたレーダー信号は、複数のチャープを含みうる。各チャープは、時間に関して単調に増大する(または代替的に単調に低下する)周波数を有する信号であってよい。
【0026】
レーダーシステム300は、当該レーダーシステム300の動作を制御するように構成可能な少なくとも1つのプロセッサ332(
図3Bを参照)を含みうる。例えば、プロセッサ332は、(例えば複数のチャープの送信のために)送信器TXおよびアンテナRXを制御するように構成可能である。プロセッサ332はさらに、受信されたレーダー信号334を処理するように構成可能である。
【0027】
レーダーシステムはさらに、メモリを含むことができる。
【0028】
レーダーシステム300、例えば少なくとも1つのプロセッサ332は、受信されたレーダー信号334から、時間に関して強度が変化する時間ベースレーダー信号400を発生させるように構成可能である。
【0029】
図4には、こうした時間ベースレーダー信号400が示されている。種々の実施形態では、時間ベースレーダー信号は、1つの軸線(例えばz軸)に沿った複数のアンテナRX、第2の軸線(例えばx軸)に沿った時間(「サンプル」として示されている)を有するデータキューブであってよい。レーダーシステム300は、複数のチャープを供給するように構成可能であり、チャープのそれぞれに対し、時間依存性の強度信号(強度は3次元ピクセルのそれぞれに対して記録された値であってよい)を、時間の関数としてアンテナRXのそれぞれに対して記録することができる。したがって、y軸に沿った各ラインで、チャープのうちいずれか1つに対する時間依存性のレーダー信号が記録可能となる。全サンプリング時間、すなわち最大サンプリング値は、チャープの長さに対応させることができる。
【0030】
時間上の所与の点で受信された反射信号334の周波数は、目標物330までの距離Lに依存しうる。すなわち、送信器TXによって送信された所与の周波数の信号は、信号が目標物330まで(光速で)走行してアンテナRXに戻るのに必要な時間の後、受信可能となる。
【0031】
このことは、時間ベースレーダー信号から周波数ベースレーダー信号への変換により、レーダーシステム300から目標物330までの距離に関する情報が得られることを意味する。さらに、例えばさらなる処理後、周波数ベースレーダー信号の例えばドップラー分析により、レーダーシステム300と目標物330との相対運動に関する情報が得られる。
【0032】
レーダーシステム300は、時間ベースレーダー信号400を周波数ベースレーダー信号へ変換するように構成可能である。複数のチャープのそれぞれに対して、また複数のアンテナRXのそれぞれに対して、個々の周波数ベースレーダー信号RXnCmfを発生させることができ、ここでnはアンテナRXの数のプレースホルダであり、mはチャープ番号のプレースホルダである。
【0033】
図5には、周波数ベースレーダー信号RX1C1f,RX2C1f,RX3C1f(および他のいくつかの番号が付されていない信号)、言い換えれば、1つのチャープと複数のアンテナRXとに対する周波数ベースレーダー信号が示されている。時間ベースレーダー信号400から周波数ベースレーダー信号RXnCmfへの変換は、高速フーリエ変換(FFT)によって行った。FFTに代えてもしくはこれに加えて、他の公知の周波数変換法も、時間ベースレーダー信号の変換に適用可能である(例えばドップラー分析)。周波数ベースレーダー信号RXnCmfでは、x軸に沿って延在する周波数が走査された距離と等価であるので、周波数軸には、サンプリングされたレンジRが単位メートルで示されている。y軸は、任意の対数単位での強度を有する。
【0034】
図5から見て取れるように、種々のアンテナ(受信器)はそのそれぞれが種々のグレースケールで表現されており、きわめて類似したスペクトルを有する。このことは、すべてのアンテナRXに対して強度が高い(かつほぼ同一である)、おおよそ1mからおおよそ6mまでの領域550において、特に明瞭である。これは、目標物330が検出される領域である。高強度を有するレンジの外側、例えば領域552では、すべてのアンテナRXが実質的に同等の量の雑音を示している(スペクトルの対数スケールに注意されたい)。
【0035】
よって、
図5から、周波数ベースレーダー信号RXnCmfの振幅が、それぞれの単一のRXチャネルの内部において、つまり、周波数(またはそれぞれのレンジR)チャネルを横断する場合よりも、或るアンテナから次のアンテナへとすなわちアンテナRXチャネルを横断する場合において、僅かしか変化しないことが理解されうる。
【0036】
種々の実施形態では、上述したように、レーダー信号300、例えばプロセッサ332は、(各単一のアンテナRXのスペクトルではなく)アンテナを横断するデータ圧縮を行うように構成可能であり、これは、レンジ次元におけるレンジにわたる圧縮またはドップラー次元におけるドップラービンにわたる圧縮を意味する。
【0037】
種々の実施形態では、レーダーシステム300、例えばプロセッサ332は、同じ周波数ベースレーダー信号RXnCmf(例えばFFT、例えばレンジまたはドップラー)を例えばメモリに記憶するように構成可能であり、さらにアンテナRX次元のみにおいて圧縮を行うように構成可能である。
【0038】
周波数ベースレーダー信号RXnCmfは、種々の実施形態では、周波数(レンジ)次元に沿って離散化することができる(
図7を参照)。複数のアンテナRXのそれぞれに対して、周波数ベースレーダー信号RXnCmfを同じビンへと離散化することができる。これにより、後に詳述するように、アンテナRX次元を横断する圧縮を行うことができる。このことは、種々の実施形態において、単一の周波数ビンに対して行うことができる。その結果、「ウォッシュアウト」(例えば過負荷)信号の確率を低減することができるので、高い周波数および大きな振幅の信号がより小さな振幅の信号をマスクしてしまうおそれを小さくすることができる。
【0039】
種々の実施形態では、単一の周波数ビンを使用することに代えて、少数の周波数ビン、例えば2つまたは3つの隣接する周波数ビンを、圧縮に使用可能である。圧縮に使用されるビンの数は、周波数ビンの全数に比較して小さくてよく、例えば周波数ビンの1%未満、例えば周波数ビンの0.1%未満であってよい。
【0040】
種々の実施形態では、限定された数のアンテナRXのみ、例えば4つより少ないアンテナを有する場合、圧縮は、アンテナRXを横断する圧縮と、周波数次元(例えばレンジまたはドップラー)に沿った圧縮と、の混合として行うことができる。例えば、当該圧縮は、2つのアンテナを横断して、付加的に例えば周波数次元に沿って行うことができる。
【0041】
種々の実施形態では、周波数ベースレーダー信号RXnCmfの圧縮の間に生じる損失が、例えば適切なFFTバッファリングスキーマを使用することにより、
図7および
図8の文脈において後述するように、低減可能または回避可能である。このことにより、種々の実施形態において、周波数ベースレーダー信号RXnCmfの損失なしの圧縮が可能となる。
【0042】
図7には、種々の実施形態による複数のアンテナを有するレーダーシステム、例えば上述したレーダーシステムのレーダー信号を処理する方法のフローチャート700が示されている。
【0043】
当該方法は、(710において)各時間ベースレーダー信号が複数のアンテナのうちの関連付けられたアンテナによって受信されたレーダー信号に基づいていてよい、複数の時間ベースレーダー信号を発生させることと、(720において)時間ベースレーダー信号の各時間ベースレーダー信号を周波数ベースレーダー信号へ変換し、これにより、各周波数ベースレーダー信号が周波数ベース値および関連付けられた強度値の複数の対を含む、複数の周波数ベースレーダー信号を形成することと、(730において)複数のアンテナのうちの1つのアンテナの1つの時間ベースレーダー信号に対応する1つの周波数ベースレーダー信号の周波数ベース値および強度値を記憶することと、(740において)1つの周波数ベースレーダー信号の対応する強度値に基づいて、別の複数の周波数ベースレーダー信号の複数の強度値の各強度値を記憶することであって、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号の強度値の記憶された表現は、対応する記憶された強度値よりも少ないビットを有することと、を含む。
【0044】
図8には、種々の実施形態による、レーダー信号を処理する方法、例えば
図7の文脈において上述した方法の図が示されている。
図2から
図5の文脈において上述したレーダーシステム300は、ここで示した方法を実行するように構成可能である。
【0045】
上述したように、レーダーシステム300は、複数のアンテナ(受信器)RXを有しうる。図示の実施形態では、4つのアンテナRX1,RX2,RX3,RX4を設けることができる。
【0046】
方法は、(710において)各時間ベースレーダー信号RX1Cmt,RX2Cmt,RX3Cmt,RX4Cmtが複数のアンテナRXの関連付けられたアンテナRX1,RX2,RX3,RX4によって受信されたレーダー信号に基づいていてよい、複数の時間ベースレーダー信号RXnCmtを発生させることを含みうる。
【0047】
複数の時間ベースレーダー信号RXnCmtは、
図4の文脈において説明したように、データキューブ400として表現することができる。
【0048】
方法はさらに、(720において)時間ベースレーダー信号RXnCmtの各時間ベースレーダー信号を周波数ベースレーダー信号へ変換し、これにより、各周波数ベースレーダー信号が周波数ベース値F(例示の実施形態ではF1~Fk)および関連付けられた強度値RXnCmfIの複数の対を含む、複数の周波数ベースレーダー信号RXnCmfを形成することを含みうる。言い換えれば、
図8に示しているように、複数の周波数ベースレーダー信号RXnCmfのそれぞれを周波数のビンF1~Fkへと離散化することができる。複数の周波数ベースレーダー信号RXnCmfのそれぞれは、種々の実施形態において、F1~Fkの同じ周波数ビンを有する。言い換えれば、F1の値は、第1のアンテナRX1の周波数ベースレーダー信号RX1Cmfと第4のアンテナRX4の周波数ベースレーダー信号RX4Cmfとに対して、同じであってよい。
【0049】
上述したように、変換は、種々の実施形態において、時間ベースレーダー信号のフーリエ変換または当該フーリエ変換から導出されたドップラー信号を含むことができる。
【0050】
方法はさらに、(730において)複数のアンテナRXのうちの1つのアンテナRX1の1つの時間ベースレーダー信号に対応する1つの周波数ベースレーダー信号RX1C1fIの周波数ベース値Fおよび強度値RXnCmfIを記憶することを含みうる。
【0051】
図8に示した例示の実施形態では、第1のアンテナRX1に対応する周波数ベースレーダー信号F,RX1C1fIが記憶される。しかし、他のいずれかのアンテナRXの周波数ベースレーダー信号を代わりに使用可能である。
図8に示したように、周波数ベース値Fは、例えば形式につき既知のものとして記憶可能である。さらに、k個の異なる周波数ビンに関連付けられた強度値に対応して、強度値RX1CmfIすなわちRX1CmfI(F1)~RX1CmfI(Fk)が記憶可能である。
【0052】
強度値RX1CmfIは、種々の実施形態において、浮動小数点値880として記憶可能である。これは、当該強度値RX1CmfIが、仮数M(有意桁とも称される)および指数Eとして記憶可能であることを意味する。また、浮動小数点値の底が予め定義されていない場合、底Bは任意に設けることができる。レーダーデータの強度値RXnCmfIが典型的には負の値を含まなくても、一般には符号ビットSを任意に設けることができる。
【0053】
方法はさらに、(740において)1つの周波数ベースレーダー信号RX1CmfIの対応する強度値RX1C1fI,880に基づいて、別の複数の周波数ベースレーダー信号(例えばRX2Cmf,RX3Cmf,RX4Cmf)の複数の強度値RXnCmfIの各強度値RXnCmfIを記憶することを含むことができ、ここで、複数の周波数ベースレーダー信号のうちの他の周波数ベースレーダー信号(例えばRX2C1fI,RX3C1fI,RX4C1fI)の強度値の記憶された表現882は、対応する記憶された強度値RX1C1fI,880よりも少ないビットを有する。
【0054】
「1つの周波数ベースレーダー信号と他の周波数ベースレーダー信号との対応する強度値」とは、厳密に同じ周波数ベース値Fとの対であってよい、すなわち同じ周波数ビン内にあってよい強度値RXnCmfI、または例えば上述したように、周波数ベース値Fにつき僅かに異なっていてもよい、例えば隣接する周波数ビン内もしくはこれに類似のもの内にあってよい強度値RXnCmfIである、と理解することができる。
【0055】
図8の例示の実施形態では、複数の周波数ベースレーダー信号のうちの他の周波数ベースレーダー信号RX2C1f,RX3C1f,RX4C1fの強度値RX2C1fI,RX3C1fI,RX4C1fIの記憶された表現のそれぞれが、別の仮数M,882から成るものでありうるが、指数Eを有さない(かつまた周波数ベース値Fを有さず、任意の底および/または符号を有さない)状態であり、このため、表現882は表現880よりも少ないビットを含む。
【0056】
異なるアンテナRXの周波数ベースレーダー信号RX1C1f,RX2C1f,RX3C1f,RX4C1fが相互にきわめて類似しているので、指数を排除して、なおダイナミックレンジ全体と完全な分解能とを維持することができる。これは、アンテナRXの1つのみ(当該例ではRX1)に対して各周波数ビンに対する指数を記憶すれば充分であることを意味している。他のアンテナRXの周波数ベースレーダー信号RX2C1f,RX3C1f,RX4C1fの強度RX2C1fI,RX3C1fI,RX4C1fIは、強度値RX2C1fI,RX3C1fI,RX4C1fIのそれぞれが、他の仮数M,882(当該例では、RX2C1fI,RX3C1fI,RX4C1fIにつき記憶されたそれぞれの仮数(もしくは各仮数)882)と1つの周波数ベースレーダー信号RX1C1fの対応する強度値RX1C1fIの指数Eとから完全に復元可能となるように、RX1C1fに(かつ相互に)類似していてよい。「対応する」とは、この場合にも、例えば、第4の周波数ビンF4の仮数882に対し、対応する指数Eが第4の周波数ビンF4の指数であってよいことを意味する。
【0057】
種々の実施形態では、1つの周波数ベースレーダー信号RX1C1fの対応する強度値RX1C1fI,880に基づいて、別の複数の周波数ベースレーダー信号RX2C1f,RX3C1f,RX4C1fの複数の強度値RX2C1fI,RX3C1fI,RX4C1fIの各強度値を記憶することであって、ここで、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号の強度値の記憶された表現が対応する記憶された強度値よりも少ないビットを有することは、仮数Mを記憶する代わりに、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号RX2C1f,RX3C1f,RX4C1fのそれぞれの強度値RX2C1fI,RX3C1fI,RX4C1fIと1つの周波数ベースレーダー信号RX1C1fの強度値RX1C1fI,880との間の差を記憶することを含みうる。
【0058】
複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号RX2C1f,RX3C1f,RX4C1fのそれぞれの強度値RX2C1fI,RX3C1fI,RX4C1fIと1つの周波数ベースレーダー信号RX1C1fの強度値RX1C1fI,880との間の差を記憶することにより、ビットを節約することができる。なぜなら、異なるアンテナRX1,RX2,RX3,RX4の周波数ベースレーダー信号RX1C1f,RX2C1f,RX3C1f,RX4C1fが類似しており、このため、当該差が、記憶のために格段に小さいダイナミックレンジを有し、ひいてはより少ないビットしか要求しないからである。
【0059】
図6Bには、種々の実施形態による、レーダー信号を処理する方法の結果601が示されている。上述した
図6Aの対応する従来技術と同様に、周波数ベースレーダーデータの圧縮の結果が、x方向に沿ったレンジビンとy方向に沿ったチャープカウントとを有する2次元グレースケール画像601として示されている。強度はグレースケールとして表現されており、ここで、元の高強度の赤色がグレースケールにおける黒に変換されている、660が付された黒の領域を除いて、全体としては、より明るいグレーがより高い強度を表現している。660の付されたビンは、真の高強度信号を有する。
【0060】
図6Bには、アンテナRX次元を横断するデータ圧縮が示されており、上述したように、アンテナ次元内での圧縮をともなう従来技術で発生するデータ損失の問題が(上述したように)大幅に改善されている。これは、
図6Bの(過負荷のない)領域664と
図6Aの領域662とを比較した場合に特に理解しやすい。双方の結果600,601は、同じレーダー信号から得られたものである。
【0061】
種々の例を以下に示す。
【0062】
例1は、複数のアンテナを備えたレーダーシステムのレーダー信号を処理する方法である。当該方法は、各時間ベースレーダー信号が複数のアンテナのうちの関連付けられたアンテナによって受信されたレーダー信号に基づいていてよい、複数の時間ベースレーダー信号を発生させることと、時間ベースレーダー信号の各時間ベースレーダー信号を周波数ベースレーダー信号へ変換し、これにより、各周波数ベースレーダー信号が周波数ベース値および関連付けられた強度値の複数の対を含む、複数の周波数ベースレーダー信号を形成することと、複数のアンテナのうちの1つのアンテナの1つの時間ベースレーダー信号に対応する1つの周波数ベースレーダー信号の周波数ベース値および強度値を記憶することと、1つの周波数ベースレーダー信号の対応する強度値に基づいて、別の複数の周波数ベースレーダー信号の複数の強度値の各強度値を記憶することであって、ここで、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号の強度値の記憶された表現は、対応する記憶された強度値よりも少ないビットを有することと、を含みうる。
【0063】
例2では、例1の対象事項は、任意手段として、1つの周波数ベースレーダー信号と他の周波数ベースレーダー信号との対応する強度値が、それぞれ対となった周波数ベース値において一致することを含みうる。
【0064】
例3では、例1または2の対象事項は、任意手段として、周波数ベースレーダー信号が、時間ベースレーダー信号のフーリエ変換、または該フーリエ変換から導出されたドップラー信号であることを含みうる。
【0065】
例4では、例1から3までのいずれか1つの対象事項は、任意手段として、1つの周波数ベースレーダー信号の強度値が、それぞれ仮数および指数を含む浮動小数点値として記憶されていることを含みうる。
【0066】
例5では、例4の対象事項は、任意手段として、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号の強度値の記憶された表現のそれぞれが、別の仮数から成り、強度値のそれぞれが、他の仮数と、1つの周波数ベースレーダー信号の対応する強度値の指数と、から復元可能であることを含みうる。
【0067】
例6では、例4の対象事項は、任意手段として、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号の強度値の記憶された表現のそれぞれが、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号の強度値と1つの周波数ベースレーダー信号の強度値との差であることを含みうる。
【0068】
例7では、例1から6までのいずれか1つの対象事項は、任意手段として、複数の時間ベースレーダー信号が、少なくとも4つの時間ベースレーダー信号を含むことを含みうる。
【0069】
例8では、例1から7までのいずれか1つの対象事項は、任意手段として、受信されたレーダー信号のそれぞれが、複数のチャープを含む送信された信号の反射信号であることを含みうる。
【0070】
例9では、例1から8までのいずれか1つの対象事項は、任意手段として、複数のアンテナの各対間の間隔が、周波数ベースレーダー信号が実質的に雑音のみによって相互に区別される小ささであることを含みうる。
【0071】
例10は、レーダーシステムである。当該レーダーシステムは、各アンテナがレーダー信号を受信するように構成された複数のアンテナ、メモリ、およびプロセッサを含み、当該プロセッサは、各時間ベースレーダー信号が複数のアンテナのうちの関連付けられたアンテナによって受信されたレーダー信号に基づいていてよい、複数の時間ベースレーダー信号を発生させ、時間ベースレーダー信号の各時間ベースレーダー信号を周波数ベースレーダー信号へ変換し、これにより、各周波数ベースレーダー信号が周波数ベース値および関連付けられた強度値の複数の対を含みうる、複数の周波数ベースレーダー信号を形成し、複数のアンテナのうちの1つのアンテナの1つの時間ベースレーダー信号に対応する1つの周波数ベースレーダー信号の周波数ベース値および強度値をメモリに記憶し、1つの周波数ベースレーダー信号の対応する強度値に基づいて、別の複数の周波数ベースレーダー信号の複数の強度値の各強度値を記憶し、ここで、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号の強度値の記憶された表現は、メモリ内の、対応する記憶された強度値よりも少ないビットを有しうるように構成されている。
【0072】
例11では、例10の対象事項は、任意手段として、1つの周波数ベースレーダー信号と他の周波数ベースレーダー信号との対応する強度値が、それぞれ対となった周波数ベース値において一致することを含みうる。
【0073】
例12では、例10または11の対象事項は、任意手段として、周波数ベースレーダー信号が、時間ベースレーダー信号のフーリエ変換、または該フーリエ変換から導出されたドップラー信号であることを含みうる。
【0074】
例13では、例10から12までのいずれか1つの対象事項は、任意手段として、プロセッサが、1つの周波数ベースレーダー信号の強度値を、それぞれ仮数および指数を含む浮動小数点値として記憶するように構成されていることを含みうる。
【0075】
例14では、例13の対象事項は、任意手段として、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号の強度値の記憶された表現のそれぞれが、別の仮数から成りうるものであり、強度値のそれぞれが、他の仮数と1つの対応する強度値の指数とから復元可能であることを含みうる。
【0076】
例15では、例13の対象事項は、任意手段として、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号の強度値の記憶された表現のそれぞれが、複数の周波数ベースレーダー信号の他の周波数ベースレーダー信号の強度値と1つの周波数ベースレーダー信号の強度値との差であることを含みうる。
【0077】
例16では、例10から15までのいずれか1つの対象事項は、任意手段として、複数の時間ベースレーダー信号が、少なくとも4つの時間ベースレーダー信号を含むことができることを含みうる。
【0078】
例17では、例10から16までのいずれか1つの対象事項は、さらに、少なくとも1つの送信アンテナを含むことができ、ここで、受信された各レーダー信号が、少なくとも1つの送信アンテナにより送信された複数のチャープを含む、送信された信号の反射信号であってよい。
【0079】
例18では、例10から17までのいずれか1つの対象事項は、任意手段として、複数のアンテナの各対間の間隔が、周波数ベースレーダー信号が実質的に雑音のみによって相互に区別される小ささであることを含みうる。
【0080】
例19では、例10から18までのいずれか1つの対象事項は、任意手段として、複数のアンテナの各対間の間隔が、約1mm~約10mmの範囲にあることを含みうる。
【0081】
例20は、レーダーシステムである。当該レーダーシステムは、それぞれレーダー信号を受信するように構成された複数のアンテナ、メモリ、および複数の時間ベースレーダー信号を発生させるように構成されたプロセッサを含むことができ、複数の時間ベースレーダー信号の各時間ベースレーダー信号は、複数のアンテナのうちの関連付けられたアンテナによって受信されたレーダー信号に基づきうるものであり、例1から9までのいずれか1つの方法を実行するように構成可能である。
【0082】
特定の実施形態に関連して本発明につき特定の図示および説明を行ったが、当業者には、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の思想および範囲から逸脱することなく、形式および詳細における種々の変更がなされうることを理解されたい。よって、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって示され、したがって、特許請求の範囲の等価物の意義および領域に該当するすべての変更が包含されることが意図されている。