(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/90 20160101AFI20241007BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241007BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/10
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2020174476
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591280186
【氏名又は名称】株式会社オリバー
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦隅 明弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰昭
(72)【発明者】
【氏名】三杉 智也
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-156283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0091389(US,A1)
【文献】特開2016-101875(JP,A)
【文献】特開2017-204947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/90
H02J 50/10
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電部から受電部へ非接触給電を行うことが可能な給電システムであって、
前記給電部を搭載した給電体と、
前記受電部を搭載し、床面上を移動可能なカートとを備え、
前記給電部と前記受電部が近接状態で対向配置されることによって前記給電部から前記受電部へ非接触給電を行うことが可能であり、
前記カートは、上下方向に延設された支柱、および当該カートを基本的な進行方向である基本進行方向に沿って移動させるための操作部を有し、
前記給電体は、壁で構成され、
前記給電部は前記壁の表面に露出した状態で配置され、
前記受電部は、
前記支柱の前記基本進行方向における前記操作部と反対側の側面に配置され、
前記給電体には、
前記基本進行方向が前記壁の表面に垂直な状態で前記カートを前記給電体に対する所定位置に位置決めさせる位置決め手段が形成され、
前記カートが前記位置決め手段で位置決めされて前記所定位置で停止することによって前記給電部と前記受電部とが水平方向に近接状態で対向配置さていることを特徴とする給電システム。
【請求項2】
給電部から受電部へ非接触給電を行うことが可能な給電システムであって、
前記給電部を搭載した給電体と、
前記受電部を搭載し、床面上を移動可能なカートとを備え、
前記給電部と前記受電部が近接状態で対向配置されることによって前記給電部から前記受電部へ非接触給電を行うことが可能であり
、
前記カートは、上下方向に延設された支柱、および当該カートを基本的な進行方向である基本進行方向に沿って移動させるための操作部を有し、
前記給電体は
、全体的に縦長形状のスタンドからなり
、柱状の給電側柱部を有し、
前記給電側柱部の側面に前記給電部が露出した状態で配置され、
前記
支柱の前記基本進行方向の側の側面に前記受電部が配置され、
前記カートが
、前記基本進行方向が前記給電側柱部の前記給電部が露出している側面に垂直な状態となる所定位置で停止することによって
、前記給電部と前記受電部とが水平方向に近接状態で対向配置されることを特徴とする給電システム。
【請求項3】
給電部から受電部へ非接触給電を行うことが可能な給電システムであって、
前記給電部を搭載した給電体と、
前記受電部を搭載し、床面上を移動可能なカートとを備え、
前記給電部と前記受電部が近接状態で対向配置されることによって前記給電部から前記受電部へ非接触給電を行うことが可能であり
、
前記給電体は、全体に縦長形状の2本のスタンドを含み、
前記スタンドは柱状の給電側柱部を有し、
前記給電側柱部の側面に前記給電部が露出した状態で配置され、
2本の前記スタンドは、前記給電側柱部が配置された側の側面と反対側の側面同士が当接した状態で床面に起立し、
前記カートを構成する上下方向に延設された受電側柱部の側面に前記受電部が配置され、
前記カートが一方の前記スタンドに対する所定位置で停止することによって、当該スタンドに配置された前記給電部と前記受電部とが水平方向に近接状態で対向配置されることを特徴とする給電システム。
【請求項4】
請求項
2または
3に記載された給電システムであって、
前記スタンドには、前記カートを
前記所定位置
で位置決めさせる位置決め部が形成されていることを特徴とする給電システム。
【請求項5】
請求項
2乃至
4の何れか1つに記載された給電システムであって、
前記スタンドの下端部には、床面を走行可能にする車輪が設けられていることを特徴とする給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電装置から受電装置へ非接触で給電を行うことが可能な給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院などの施設において、タブレットやノートパソコンなどの移動端末の利用増加に伴って、カートに移動端末を載置し、移動端末をカートと共に移動させ、カート上でそのまま移動端末を使用することが多くなっている。そのため、カート上で移動端末を給電できることが望まれている。
【0003】
カート上で移動端末への給電を可能とするために、カートにバッテリを搭載し、コンセントに電源コードを差し込んでバッテリに給電する給電システムが開発されていたが、給電作業の簡素化や床面上のクリア化を図るため、非接触給電可能な給電装置と受電装置のうちの受電装置をカートに配置し、給電装置をテーブルに配置した給電システムが開発されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の給電システムによれば、給電部は、ナースステーションに設けられた複数のカートを収納可能なテーブルに搭載されているが、さらに給電システムの利便性の向上を図るために、ナースステーションに設けられたテーブル以外の箇所に給電部を配置してほしいという要望が出てくる可能性もある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、病院や介護施設に限られず、広くはオフィスや商業施設なども含めた室内空間において利便性を向上させることができる給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給電システムは、上記課題を解決するために、
給電部から受電部へ非接触給電を行うことが可能な給電システムであって、
前記給電部を搭載した給電体と、
前記受電部を搭載し、床面上を移動可能なカートとを備え、
前記給電部と前記受電部が近接状態で対向配置されることによって前記給電部から前記受電部へ非接触給電を行うことが可能であり、
前記カートは、上下方向に延設された支柱、および当該カートを基本的な進行方向である基本進行方向に沿って移動させるための操作部を有し、
前記給電体は、壁で構成され、
前記給電部は前記壁の表面に露出した状態で配置され、
前記受電部は、前記支柱の前記基本進行方向における前記操作部と反対側の側面に配置され、
前記給電体には、前記基本進行方向が前記壁の表面に垂直な状態で前記カートを前記給電体に対する所定位置に位置決めさせる位置決め手段が形成され、
前記カートが前記位置決め手段で位置決めされて前記所定位置で停止することによって前記給電部と前記受電部とが水平方向に近接状態で対向配置さていることを特徴とする。
また、本発明に係る給電システムは、上記課題を解決するために、
給電部から受電部へ非接触給電を行うことが可能な給電システムであって、
前記給電部を搭載した給電体と、
前記受電部を搭載し、床面上を移動可能なカートとを備え、
前記給電部と前記受電部が近接状態で対向配置されることによって前記給電部から前記受電部へ非接触給電を行うことが可能であり、
前記カートは、上下方向に延設された支柱、および当該カートを基本的な進行方向である基本進行方向に沿って移動させるための操作部を有し、
前記給電体は、全体的に縦長形状のスタンドからなり、柱状の給電側柱部を有し、
前記給電側柱部の側面に前記給電部が露出した状態で配置され、
前記支柱の前記基本進行方向の側の側面に前記受電部が配置され、
前記カートが、前記基本進行方向が前記給電側柱部の前記給電部が露出している側面に垂直な状態となる所定位置で停止することによって、前記給電部と前記受電部とが水平方向に近接状態で対向配置されることを特徴とする。
また、本発明に係る給電システムは、上記課題を解決するために、
給電部から受電部へ非接触給電を行うことが可能な給電システムであって、
前記給電部を搭載した給電体と、
前記受電部を搭載し、床面上を移動可能なカートとを備え、
前記給電部と前記受電部が近接状態で対向配置されることによって前記給電部から前記受電部へ非接触給電を行うことが可能であり、
前記給電体は、全体に縦長形状の2本のスタンドを含み、
前記スタンドは柱状の給電側柱部を有し、
前記給電側柱部の側面に前記給電部が露出した状態で配置され、
2本の前記スタンドは、前記給電側柱部が配置された側の側面と反対側の側面同士が当接した状態で床面に起立し、
前記カートを構成する上下方向に延設された受電側柱部の側面に前記受電部が配置され、
前記カートが一方の前記スタンドに対する所定位置で停止することによって、当該スタンドに配置された前記給電部と前記受電部とが水平方向に近接状態で対向配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る給電システムの斜視図である。
【
図2】(A)は第1実施形態に係る給電システムの平面図であり、(B)は第1実施形態に係る給電システムの正面図である。
【
図5】
図4の受電部付近を模式的に表した部分断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る給電システムの制御ブロック図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る給電システムの斜視図である。
【
図9】(A)は第2実施形態に係る給電システムの正面図であり、(B)は
図9(A)のC-C断面図である。
【
図10】第2実施形態に係るカートの斜視図である。
【
図11】第2実施形態に係る給電体の斜視図である。
【
図12】位置決め部の一部分を平面で見た説明図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る給電システムの斜視図である。
【
図14】第3実施形態に係るカートの斜視図である。
【
図15】(A)は第3実施形態に係る待機状態の給電体の斜視図であり、(B)は第3実施形態に係る使用状態の給電体の斜視図である。
【
図16】(A)は第3実施形態に係るカートを給電位置に近づけている状況の給電システムを表す斜視図であり、(B)は第3実施形態に係るカートが給電位置に位置決めされている状況の給電システムを表す斜視図である。
【
図17】本発明の第4実施形態に係る給電システムの斜視図である。
【
図18】本発明の第5実施形態に係る給電システムの斜視図である。
【
図19】第5実施形態に係る給電体の斜視図である。
【
図20】(A)は第5実施形態に係る給電体の平面図であり、(B)は第5実施形態に係る給電体の正面図であり、(C)は第5実施形態に係る給電体の右側面図である。
【
図21】第5実施形態に係る給電システムの変形例を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る給電システムについて、図面を参照して説明する。
【0011】
<第1実施形態>
最初に、
図1~
図7を用いて本発明の第1実施形態に係る給電システム1について説明する。
図1は給電システム1を表す斜視図であり、
図2(A)は給電システム1を表す平面図であり、
図2(B)は給電システム1を表す正面図であり、
図3は
図2(B)のA-A断面図である。
【0012】
図1~
図3に示すように、給電システム1は、受電装置12が搭載され、床Fの上を走行可能なカート10と、給電装置22が搭載された給電体20とを有する。なお、
図1~
図3は、受電装置12が給電装置22から給電可能な状態で保持されている給電システム1を表す図である。給電システム1において、受電装置12が給電装置22から給電可能な状態で保持されるためには、受電装置12と給電装置22が水平方向に近接状態で対向配置される必要がある。なお、受電装置12、および給電装置22に係る近接状態とは、受電装置12と給電装置22とが当接している状態、および厳密には当接していないが給電装置22から受電装置12に給電可能な距離の範囲に受電装置12、および給電装置22が相互に配置されている状態のことをいう。他の実施形態においても同様である。
【0013】
詳細は後述するが、給電体20の本体部分は床Fに立設された壁21で構成されている。したがって、カート10が給電体20(壁21)に対して所定位置で停止しているときに、受電装置12と給電装置22が近接状態で対向配置され、給電装置22から受電装置12に給電可能である。以下において、このカート10の給電体20(壁21)に対する給電可能な所定位置のことを「給電位置R1」と称する。
【0014】
また、後述するように、カート10は、基本的には、床Fの上を様々な方向に(自由自在に)走行可能であるが、基準とする進行方向が設定されている。以下において、カート10に係る方向として、基準とする進行方向を単に「進行方向」と称し、進行方向と反対の方向を「反対方向」と称する。また、カート10に対して、進行方向に対する右方向を「進行右方向」と称し、進行方向に対する左方向を「進行左方向」と称する。さらに、進行方向と反対方向とを合わせて「進行前後方向」と称し、進行右方向と進行左方向とを合わせて「進行左右方向」と称する。なお、進行方向は、受電装置12と給電装置22を給電可能に近接状態で対向配置させる(カート10を給電位置R1で位置決めする)ために、カート10を給電体20(壁21)に対して走行させる向きに一致している。
【0015】
また、給電体20(壁21)に係る方向として、壁21に正対したときに壁21の奥側から空間側に向けた方向を「壁前方向」と称し、壁21の空間側から奥側に向けた方向を「壁奥方向」と称する。さらに、壁21に正対したときの右方向を「壁右方向」と称し、左方向を「壁左方向」と称する。また、壁前方向と壁奥方向とを合わせて「壁前後方向」と称し、壁右方向と壁左方向とを合わせて「壁左右方向」と称する。なお、カート10、および給電体20の何れについても、床Fを基準として上下方向は共通する。
【0016】
次に、受電装置12、および給電装置22について説明する。受電装置12、および給電装置22は、受電装置12、および給電装置22が適宜に近接状態で対向配置されたときに給電装置22から受電装置12に給電可能に構成されている。受電装置12、および給電装置22のそれぞれは、給電装置22から受電装置12への給電を実現するために必要な様々な電子部品と、電子部品を格納すると共に外部から保護するための保護ケースとを具備する(図示なし)。
【0017】
受電装置12、および給電装置22は、給電装置22から受電装置12への給電が可能な範囲で、外観の形状・大きさ、および内部構造について特に限定されずに適宜に設定可能である。また、給電装置22から受電装置12への給電を実現するための方式(電磁誘導方式、磁界共鳴方式など)も適宜に設定可能である。
【0018】
なお、受電装置12、および給電装置22については電磁誘導方式が採用されている。そして、受電装置12、および給電装置22の詳細な説明は省略するが、受電装置12、および給電装置22の外観はともに、薄型の直方体形状に形成されている。すなわち、受電装置12、および給電装置22の保護ケースはともに、薄型の直方体形状に形成されている。
【0019】
また、電磁誘導方式で給電装置22から受電装置12に給電するためには、磁界を発生させる必要があり、そのために給電装置22は給電コイル部22bを具備し、受電装置12は受電コイル部12bを具備している(
図1~
図3には図示なし。
図7参照)。第1実施形態では、受電コイル部12b、および給電コイル部22bは、扁平に形成された円環状偏平鉄心に巻回されたコイル線で構成されている。
【0020】
さらに、給電コイル部22b、および受電コイル部12bによって給電装置22から受電装置12に給電するためには、給電コイル部22bと受電コイル部12bとが近接状態で対向配置する必要があるが、そのために、給電コイル部22bは、給電装置22の保護ケースの表面近傍で当該表面に平行に配置され、受電コイル部12bは受電装置12の保護ケースの表面近傍で当該表面に平行に配置されている。以下において、受電装置12、および給電装置22のそれぞれについて、受電コイル部12b、および給電コイル部22bが配置されている側の表面のことを「対向表面」と称する。また、受電コイル部12bと給電コイル部22bを対向配置させることを「受電装置12と給電装置22とを対向配置させる」と称することもある。したがって、給電システム1においては、受電装置12と給電装置22とが対向配置できるように、受電装置12がカート10に搭載され、給電装置22が給電体20に搭載されている。
【0021】
次に、カート10について説明する。
図4は、カート10を表す斜視図である。
図4に示すように、カート10は、本体部分を構成するカート本体11と、カート本体11の進行方向側に配された受電装置12と、受電装置12のスペーサーとして機能するスペーサー部13とを具備する。なお、カート10は、病院等で使用されるナースカートで構成されている。ただし、受電装置12が取り付けられる対象物は、ナースカートに限られず、他の用途で使用される床面を移動可能な搬送機器であっても良い。また、受電装置12には、所定の電線ケーブルを介して、電子機器に出力を供給することが可能な接続器が接続されている。あるいは、受電装置12には、所定の電線ケーブルを介して、ワイヤレス充電器が接続されているようにしても良い。
【0022】
カート本体11は、上下方向に延設された支柱14と、支柱14の上端に設けられた平板状の天板15と、支柱14の下端に設けられ、支柱14を支持する四肢構造のカート脚部16と、カート脚部16の各肢の先端底面に設けられ、床面Fに載置されるキャスター17とを有する。
【0023】
カート10において、平面視で、支柱14から進行方向側に所定距離をおいて2つのキャスター17が進行左右方向に並設され、支柱14から反対方向側に所定距離をおいて2つのキャスター17が進行左右方向に並設されている。進行方向側の2つのキャスター17に比べて反対方向側の2つのキャスター17の方が支柱14から離れて配されている。そして、カート脚部16は進行方向側よりも反対方向側に大きく張り出している。
【0024】
また、進行方向側の2つのキャスター17、および反対方向側の2つのキャスター17のそれぞれは、支柱14の中心を通る進行前後方向に沿った直線から進行右方向側、および進行左方向側へ同一距離ずつおいた位置に1つずつ配されている。言い換えると、カート10において、支柱14に対して、進行左方向側の2つのキャスター17と、進行右方向側の2つのキャスター17が左右対称に配置されている。
【0025】
なお、以下において、進行方向側に配された2つのキャスター17を「前側キャスター17F」と称し、反対方向側に配された2つのキャスター17を「後側キャスター17B」と称する。また、進行左方向側に配された2つのキャスター17を「左側キャスター17l」と称し、進行右方向側に配された2つのキャスター17を「右側キャスター17r」と称する。さらに、進行方向側且つ進行右方向側に配されたキャスター17を「前右キャスターFR」と称し、進行方向側且つ進行左方向側に配されたキャスター17を「前左側キャスターFL」と称し、反対方向側且つ進行右方向側に配されたキャスター17を「後右側キャスターFR」と称し、反対方向側且つ進行左方向側に配されたキャスター17を「後左側キャスターFL」と称する。
【0026】
また、カート脚部16の各先端の底面には、キャスター17を取り付けるための取付けリング部17Rが締結されており、取付けリング部17Rの底面にはキャスター17が締結されている。したがって、取付けリング部17Rを介してキャスター17がカート脚部16に接続されていることになる。
【0027】
取付けリング部17Rは、平面視で円環状に形成されており、少なくとも前側キャスター17Fに取り付けられた取付けリング部17Rの進行方向側半分部分は、締結されているカート脚部16の先端部分よりも進行方向の外側に張り出して形成されている。したがって、後述するように、給電する際には、前側キャスター17Fに取り付けられた取付けリング部17Rが給電体20の表面に当接する。
【0028】
なお、キャスター17の構造は適宜に設定可能であるが、例えば4つのキャスター17は全て自在式であり、平面視で360度回転可能に構成されている。したがって、カート10は、支柱14を起点として平面視で360度の範囲で放射状に走行、または回転させることができる。
【0029】
支柱14は、カート脚部16に固定支持された支柱本体部14Aと、上方側から支柱本体部14Aに挿入され、支柱本体部14Aに対して上下方向に摺動可能(昇降可能)な支柱可動部14Bとを有する。支柱本体部14Aは上側が開放され、下側が閉鎖された四角柱筒状に形成され、支柱可動部14Bは支柱本体部14Aの内面に対応した四角柱状に形成されている。
【0030】
支柱本体部14Aの反対方向側の側面の下端部、および上端部付近には、道具や書類などを収納するための収納トレイ18が上下方向に所定距離をおいて並設されている。収納トレイ18は、平面視横長矩形状に形成されており、進行方向側外縁の進行左右方向中央で支柱本体部14Aに接着されている。
【0031】
また、支柱本体部14Aの進行方向側の側面の上端部付近には、スペーサー部13が進行方向側に突出して形成されている。スペーサー部13は、直方体形の箱状に成形され、進行方向側が開口している。そして、スペーサー部13の開口している進行方向側の先端には受電装置12が配され、支持されている。このように、受電装置12がスペーサー部13を介してカート本体11に取り付けられているのは、後述するように、平面視で、天板15の進行方向側先端、および前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行方向側先端から、支柱本体部14Aの進行方向側の側面まで10~20cm離れており、カート10が給電位置R1で位置決めされたときに、受電装置12と給電装置22とを近接させるべく、その10~20cmの分の隙間を補填するためである。
【0032】
受電装置12は、対向表面が進行方向側を向くように、且つ、長辺方向が上下方向と平行になるように配置されている。なお、受電装置12の反対方向側端部がスペーサー部13の内部に挿入されている。そして、スペーサー部13は、受電装置12の挿入している部分の外周面との隙間が数ミリ(例えば、2~5ミリ)確保できるように形成されている。また、スペーサー部13の外観の短辺方向長さは、支柱本体部14Aの進行左右方向長さと略同一である。
【0033】
また、スペーサー部13の内部には、受電装置12が床Fの不陸に対応するための構造が収納されている。
図5は、スペーサー部13の内部構造を簡略化して表した説明図である。
図5に示すように、スペーサー部13の内部で進行前後方向略中央には、スペーサー部13の内部の進行前後方向に直交する断面と同一の縦長矩形状のベース板13aが支柱本体部14Aの進行方向側の側面と平行に形成されている。
【0034】
また、ベース板13aの上下両端部付近であって進行左右方向中央には、進行前後方向に延びた支持軸部13bが支持されている。支持軸部13bの進行方向側先端は、受電装置12の対向表面と反対側の表面に接続されている。したがって、受電装置12は、支持軸部13bによって支持されている。また、支持軸部13bの外周側には進行前後方向に沿ったバネ部材13cが嵌装されている。バネ部材13cは、受電装置12とベース板13aとの間に圧縮バネとして装着されている。そして、ベース板13aの各支持軸部13bの基端側に対応する位置には、支持軸部13bを支持しながら挿通させることが可能な挿通孔(図示なし)が形成されている。したがって、受電装置12が反対方向の荷重を受けると受電装置12に接続された支持軸部13bは、受電装置12に接続されたまま反対方向に移動する。このとき、バネ部材13cは圧縮されるので、受電装置12への荷重が解放されると、バネ部材13cは受電装置12を進行方向側へ付勢する。その結果、受電装置12に接続された支持軸部13bが進行方向側へ移動して元の状態に戻る。
【0035】
説明をカート本体11に戻す。天板15は、平面視で進行前後方向の方が長い矩形状に形成されており、電子機器(例えば、パーソナルコンピュータ:図示しない)を載置可能な寸法で構成されている。天板15は、進行左右方向については中央で支柱可動部14Bの先端に接続され、進行前後方向についてはやや進行方向寄りで支柱可動部14Bの先端に接続されている。
【0036】
また、天板15の反対方向側の外縁には、カート10を走行させるときに握るためのハンドル19が反対方向側に張り出して設けられている。なお、天板15は、収納トレイ18よりも進行左右方向に長く形成されており、カート10において、平面視で収納トレイ18は進行左右方向、および反対方向において、天板15からはみ出すことなく完全に覆われている。
【0037】
また、側面視において、天板15の進行方向側先端、受電装置12の進行方向側先端(対向表面)、および前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行方向側先端は、進行前後方向に沿った位置として揃っており、カート10において最も進行方向側に位置している。言い換えると、天板15の進行方向側先端、および前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行方向側先端から支柱本体部14Aの進行方向側の側面までの距離は15~20cmであり、受電装置12の厚さが3~5cmであるので、天板15の進行方向側先端、受電装置12の進行方向側先端(対向表面)、および前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行方向側先端を、進行前後方向における位置として揃えるために、受電装置12と支柱本体部14Aの間にスペーサー部13が取り付けられている。これは、カート10全体が進行方向を向いた状態で給電体20に当接するときに、受電装置12を安定的に給電装置22(壁21)に近接させるためである。なお、この進行方向側先端が揃うための条件として、このときの前側キャスター17Fが、
図1や
図3に示すように、カート10を走行させるために正常な状態で保持されているものとする。
【0038】
さらに、平面視において、天板15の進行左右方向の長さL1と、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行左右方向に沿った最大の外側両端間長さL2とは同一であり、カート10においては、天板15の進行左右方向の両端、および前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行左右方向に沿った外側両端が最も進行右方向側、および進行左方向側に位置している。
【0039】
次に、給電体20について説明する。
図6は、給電体20を表す斜視図である。
図6に示すように、給電体20は、本体部分として機能する壁21と、受電装置12に給電可能な給電装置22と、天板15に当接させてカート10を給電位置R1に位置決めするための2枚一対の天板位置誘導板23と、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rに当接させてカート10を給電位置R1に位置決めするための2枚一対のキャスター位置誘導板24と、カート10に対する目印となる壁面カート位置目印25とを具備する。なお、図示されていないが、給電装置22には、電源ケーブルが接続されており、適宜に外部に配線されている。
【0040】
壁21の用途や設置箇所は、特に限定されず、例えば、壁21として部屋や通路などの室内空間を区画するための壁が適用される。前述のように、給電装置22から受電装置12に給電するためには、給電装置22と受電装置12を近接状態で対向配置する必要がある。したがって、床Fに載置されたカート10に搭載されている受電装置12と対向配置可能となるように、給電装置22が壁21に取り付けられている。
【0041】
給電装置22は、対向表面が壁前方向を向くように、壁21に形成された嵌合凹部21hに嵌合されている。嵌合凹部21hは、当該嵌合凹部21aに嵌合された給電装置22が、床Fに載置されたカート10に搭載された受電装置12と対向配置できる位置、および向きに形成されている。受電装置12は長辺方向が上下方向と平行になり、短辺方向が進行左右方向と平行になるようにカート10に取り付けられているので、嵌合凹部21hも同様に、給電装置22の長辺方向が上下方向と平行になり、且つ、給電装置22の短辺方向が壁左右方向と平行になるように形成されている。さらに、嵌合凹部21hは、嵌合する給電装置22の上端、および下端のそれぞれが床Fに載置されたカート10に搭載された受電装置12の上端、および下端のそれぞれと同一高さになるように形成されている。なお、嵌合凹部21hは、当該嵌合凹部21hに嵌合した給電装置22の対向表面が壁21の表面と面一状態になるように形成されている。
【0042】
2枚一対の天板位置誘導板23は、進行方向を向いた状態のカート10、言い換えると、受電装置12の対向表面が壁21(給電体20)に正対した状態のカート10の天板15をきっちりと挟み込める(嵌入させる)ように、壁21に立設されている。具体的には、2枚一対の天板位置誘導板23のそれぞれは、縦長に形成された板部材からなり、長さ方向が上下方向と平行になるように、壁左右方向に所定距離をおいて壁21に並設されている。2枚の天板位置誘導板23の壁左右方向間の距離は、天板15の進行左右方向長さL1に一致している。また、2枚一対の天板位置誘導板23のそれぞれは、床Fに載置されたカート10に設けられている天板15が上端と下端の間に位置するように、側面で壁21に直角に接着されている。その結果、カート10が給電位置R1に位置決めされているとき、天板15の進行左右方向両端は、2枚一対の天板位置誘導板23の内側面に当接する(
図1、および
図2参照)。
【0043】
なお、前述の通り、天板15は支柱可動部14Bに支持されているので、支柱可動部14Bの上下方向の摺動に伴って昇降可能である。そこで、2枚一対の天板位置誘導板23のそれぞれは、最も高い位置に配された天板15、および最も低い位置に配された天板15が上端と下端の間に収まるように形成されている。
【0044】
2枚一対のキャスター位置誘導板24は、進行方向を向いた状態のカート10、言い換えると、受電装置12の対向表面が壁21(給電体20)に正対した状態のカート10の前側キャスター17Fの取付けリング部17Rをきっちりと挟み込める(嵌入させる)ように、壁21に立設されている。具体的には、2枚一対のキャスター位置誘導板24のそれぞれは、縦長に形成された板部材からなり、長辺方向が上下方向と平行になるように、壁左右方向に所定距離をおいて壁21に並設されている。2枚のキャスター位置誘導板24の壁左右方向間の距離は、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行左右方向の外側両端の最大幅L2に一致している。また、2枚一対のキャスター位置誘導板24のそれぞれは、床Fに載置されたカート10に設けられている前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが上端と下端の間に収まるように、側面で壁21に直角に接着されている。その結果、カート10が給電位置R1に位置決めされているとき、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行左右方向の外側両端は、2枚一対のキャスター位置誘導板24の内側面に当接している(
図1、および
図2参照)。なお、各キャスター位置誘導板24は、床Fに載置されている。
【0045】
また、第1実施形態では、前述の通り、天板15の進行左右方向の長さL1と、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行左右方向に沿った最大の外側両端間長さL2とが同一に設定されている。したがって、壁21に対して左側に配された天板位置誘導板23とキャスター位置誘導板24、および右側に配された天板位置誘導板23とキャスター位置誘導板24は上下方向に沿って並設されていることになる。
【0046】
そして、壁面カート位置目印25は、壁21に対して左側に配された天板位置誘導板23の下端とキャスター位置誘導板24の上端とを結ぶ直線、および右側に配された天板位置誘導板23の下端とキャスター位置誘導板24の上端とを結ぶ直線で表されている。
【0047】
また、給電システム1は、カート10の給電位置R1への位置決めに対する目印となる床面カート位置目印26を具備する。床面カート位置目印26は、床Fに表示され、進行方向を向いたカート10が壁21に当接している状態で、後側キャスター17Bを大体外側で囲えるコ字状で表されている。詳細には、床面カート位置目印26は、2枚のキャスター位置誘導板24の下端から、進行方向を向いたカート10が壁21に当接している状態で、後側キャスター17Bの反対方向側の端まで延びる壁21に直交する2本の直線と、当該2本の直線を結ぶ壁21の壁面に平行な1本の直線とで表されている。
【0048】
次に、受電装置12、および給電装置22で構成される給電システム1における制御回路の構成とその動作方法の一例を、
図7を用いて説明する。
図7に、給電システム1の制御ブロック図を示す。
図7に示すように、給電装置22の制御回路22aには、給電コイル部22bと、給電コイル部22bに接続された周波数変換部22cと、周波数変換部22cに接続された給電側A/D変換部22dと、給電側A/D変換部22dに接続された電源部22eが含まれている。一方、受電装置12の制御回路12aには、受電コイル部12bと、受電コイル部12bに接続された受電側A/D変換部12cと、受電側A/D変換部12cに接続された受電制御部12d、および出力制御部12eと、出力制御部12eに接続された表示部12fが含まれている。
【0049】
電源部22eには、商用周波数(50Hz、または60Hz)のAC100Vの交流電圧が供給される。電源部22eでは、電磁誘導を可能とする高周波交流電圧を得るために、AC100VをA/D変換しやすい交流電圧に降圧させる。また、給電側A/D変換部22dでは、降圧した交流電圧を周波数変換が可能な直流電圧に変換する。さらに、周波数変換部22cでは、直流電圧を電磁誘導による非接触給電が可能な周波数(例えば、数10kHz~数百kHz)の交流電圧に変換する。その結果、給電コイル部22bでは、高周波(数10kHz~数百kHz)の交流磁界を発生させる。
【0050】
次に、給電コイル部22bと受電コイル部12bとが対向配置された状態で電磁誘導による非接触給電を行う。給電コイル部22bが発生させる高周波(数10kHz~数百kHz)の交流磁界は、給電コイル部22bと対向配置された受電コイル部12bに電磁誘導で伝播される。そのため、受電コイル部11bには、高周波(数10kHz~数百kHz)の交流電圧が起電される。
【0051】
また、受電側A/D変換部12cでは、高周波の交流電圧を商用周波数(50Hz、または60Hz)の周波数に周波数変換が可能な直流電圧に変換する。出力制御部12eでは、直流電圧を、パソコンなどの電子機器等にて使用する商用周波数(50Hz又は60Hz)のAC100Vの交流電圧に変換して出力する。また、受電装置12にバッテリ等を内蔵している場合、または受電装置12が外部バッテリ等と接続されている場合には、受電制御部12dは、バッテリ等の充電状況に対応して受電側A/D変換部12cに制御指示を行う。また、表示部12fは、給電コイル部22bと受電コイル部12bとが対向配置された状態で電磁誘導による非接触給電を正常に行っていることを、出力制御部12eからの信号に基づいて、ランプ等によって表示する。
【0052】
このように、第1実施形態に係る給電システム1によれば、壁21に給電装置22を配置し、カート10を壁21の方に移動させて給電位置R1に位置決めすることによってカート10に搭載された受電装置12を給電することができる。ここで、天板15が天板位置誘導板23に挟まり、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rがキャスター位置誘導板24に挟まるので、確実にカート10を給電位置R1に位置決めすることができる。また、支柱本体部14Aの進行方向側にスペーサー部13が設けられており、スペーサー部13の進行方向側先端に受電装置12が取り付けられているので、天板15や前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行方向側先端が壁21に当接するような状態であっても、受電装置12と給電装置22とを近接させることができる。
【0053】
また、スペーサー部13には一対の支持軸部13bおよびバネ部材13cは上下方向に一定間隔をおいて並設されているので、例えば、給電位置R1付近に不陸が形成されている場合であっても、受電装置12を給電装置22に当接させる際に上下方向に所定間隔をおいて並設された支持軸部13bおよびバネ部材13cの進行前後方向への移動によって不陸を吸収させ、受電装置12の対向表面を上下方向と平行に保持することができる。
【0054】
ここで、第1実施形態の変形例について説明する。第1実施形態では、受電装置12と給電装置22とを近接させる機能を有すると共に、受電装置12を進行前後方向に移動させるスペーサー部13がカート10に搭載されているが、給電体20に搭載されていても良い。なお、この場合は、スペーサー部13は、給電装置22を上下方向に所定距離離れた2箇所で壁前後方向に移動可能にする。さらに、進行前後方向(壁前後方向)の寸法を適宜に変更してスペーサー部13をカート10、および給電体20の何れにも搭載しても良い。
【0055】
また、スペーサー部13は、受電装置12と給電装置22とを近接させる機能を有するが、受電装置12を進行前後方向に移動させるためのベース板13a、支持軸部13bおよびバネ部材13cが設けられていなくても良い。
【0056】
さらに、給電体20は、天板位置誘導板23、およびキャスター位置誘導板24の一方のみを具備するように構成されても良い。もしくは、給電体20は、天板位置誘導板23、およびキャスター位置誘導板24の双方を具備しないように構成されても良い。また、給電体20は、壁面カート位置目印25、および床面カート位置目印26の一方のみを具備するように構成されても良い。もしくは、給電体20は、壁面カート位置目印25、および床面カート位置目印26の双方を具備しないように構成されても良い。
【0057】
さらに、給電体20は、壁21で構成されているが、室内空間を仕切るパネル部材で構成されても良い。また、給電体20を構成する壁21は床Fに立設されているが、壁左右方向でカート10が当接する範囲には、床Fとの間に隙間が形成されていても良い。
【0058】
また、第1実施形態では、受電装置12、および給電装置22は、長辺方向が上下方向と平行になるように取り付けられているが、受電装置12、および給電装置22の水平方向に対する向きも、長辺方向が水平方向と平行など適宜に変更しても良い。
【0059】
<第2実施形態>
次に、
図8~
図12を用いて本発明の第2実施形態に係る給電システム101について説明する。
図8は、給電システム101を表す斜視図であり、
図9(A)は、給電システム101の正面図であり、
図9(B)は
図9(A)のC-C断面図である。
【0060】
図8~
図9に示すように、給電システム101は、受電装置12が搭載され、床Fの上を走行可能なカート110と、給電装置22が搭載された給電体120とを有する。なお、
図8、および
図9は、受電装置12が給電装置22から給電されているときの給電システム101を表す図である。給電システム101において、受電装置12が給電装置22から給電されているためには、受電装置12と給電装置22が水平方向に近接状態で対向配置される必要がある。
【0061】
詳細は後述するが、給電体120の本体部分は縦壁に埋め込まれて固定された棚121で構成されている。したがって、カート110が給電体120(棚121)に対して所定位置で停止しているときに、受電装置12と給電装置22が水平方向に近接状態で対向配置され、給電装置22から受電装置12に給電することが可能である。以下において、このカート110の給電体120(棚121)に対する給電可能な所定位置のことを「給電位置R2」と称する。
【0062】
また、後述するように、カート110は、第1実施形態に係るカート10のスペーサー部13が設けられていないことを除いて、カート10と同一に構成されている。したがって、カート110に対する方向については、第1実施形態と同一の名称を使用する。また、給電体120についても、棚121は、縦壁に埋め込まれて固定されていることから、給電体120に対する方向についても、第1実施形態と同一の名称を使用する。
【0063】
次に、カート110について説明する。
図10は、カート110を表す斜視図である。
図10に示すように、カート110は、本体部分を構成するカート本体11と、カート本体11に取り付けられた受電装置12とを具備する。カート110には、第1実施形態に係るカート10のスペーサー部13は設けられていない。受電装置12は、カート本体11の支柱本体部14Aの進行方向側の側面に直接取り付けられている。
【0064】
カート110は、スペーサー部13が設けられていないこと以外は、カート10と同一に構成されている。したがって、受電装置12が設けられている高さや向きはカート10と同一である。また、カート110の進行方向において、天板15の進行方向側先端と、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行方向側先端とは同一位置に形成されているが、第1実施形態に係るスペーサー部13が設けられていない分、受電装置12の進行方向側の表面(対向表面)はそれらよりも反対方向に所定距離をおいた位置に形成されている。
【0065】
次に、給電体120について説明する。
図11は、給電体120を表す斜視図である。給電体120の本体部分をなす棚121は、全体的に門型構造を呈し、水平方向に所定距離をおいた2つの上下方向に延びた柱部131と、両柱部131の上端部内面で水平方向に架設された横棚部132とを備える。そして、棚121は、縦壁(
図11において、図示なし)に当該棚121と正面視外縁で形成された矩形状および奥行きが同一に形成された凹部に嵌め込まれて、縦壁に面一状態で一体的に固定されている。
【0066】
棚121には、床Fに載置された2本の柱部131と横棚部132とで囲まれた空間Sが形成されている。空間Sにおいては、3つの給電装置22を収納する収納部133と、カート110の前側キャスター17Fの取付けリング部17Rを拘束してカート110を位置決めする位置決め部134と、収納部133の上方で2本の柱部131に水平方向に架設された天板135とが収納されている。収納部133、位置決め部134、および天板135は、棚121を構成している。
【0067】
収納部133は、2本の柱部131の上下方向略中央で水平方向に架設されており、正面視で横長矩形状の壁前方向側が開口した箱形構造であり、上下方向高さが、給電装置22の長辺方向長さより少し大きく形成されている。収納部133には、長辺方向が上下方向と平行になるように揃えられ、対向表面が壁前方向を向いた3つの給電装置22が、収納部133の壁前方向側表面と面一状態で水平方向に等間隔で並設されている。各給電装置22は、第1実施形態の場合と同一の高さに配されている。言い換えると、各給電装置22は、床Fに載置されたカート110に設けられた受電装置12と水平方向に対向配置可能となる高さで収納部133に取り付けられている。
【0068】
また、収納部133において、水平方向両端に配された給電装置22は、収納部133の水平方向両端から中央に向かって所定距離離れている。そして、水平方向両端に配された給電装置22から水平方向中央に向かって同一距離をおいて水平方向中央の給電装置22が配されている。水平方向両端に配された給電装置22の収納部133の水平方向両端から離れている距離、および中央の給電装置22と両端の給電装置22との距離は、各受電装置12に給電する際に隣接する3つのカート110が相互に干渉しない範囲で適宜に設定可能である。
【0069】
さらに、収納部133は、上面が、カート110の支柱本体部14Aの上端、言い換えると、支柱可動部14Bが最も低い位置で保持されているときの天板15の底面よりも低くなるように形成されている。この構成により、天板15の進行方向側先端が、進行方向に対して、給電装置22と面一状態の収納部133の壁前方側表面よりも壁後方側に進めるようにカート110を空間Sに入り込ませて、受電装置12を給電装置22に近接させることができる。
【0070】
なお、収納部133において、当該収納部133の壁前方側表面と面一状態で水平方向に所定間隔をおいて配された給電装置22以外の壁前方側表面部分には、収納部133を閉鎖する化粧板136が形成されている。言い換えると、収納部133の壁前方側は、3つの給電装置22と4枚の化粧板136で閉鎖されている。
【0071】
位置決め部134は、全体的に板状を呈し、床Fの表面(水平面)と平行に保持されている。また、位置決め部134は、床Fに載置されたカート110のキャスター17の取付けリング部17Rと上下方向高さが略同一となるように、収納部133の下方で2本の柱部131に水平方向に架設されている。
【0072】
ここで、
図12を用いて位置決め部134の詳細について説明する。
図12は、位置決め部134を説明するために位置決め部134の一部分を平面で見た説明図である。
図12に示すように、位置決め部134には、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rと当接してカート110を給電位置R2に案内して位置決めするガイド部137が形成されている。
【0073】
ガイド部137は、壁前方向側に突出した複数の三角状ガイド部137aと、三角状ガイド部137a同士の間で中央部が湾曲状に突出する円弧状ガイド部137bとを備えている。カート110は、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが三角状ガイド部137aと円弧状ガイド部137bとが交差する交差部137cに当接した状態で、給電位置R2に位置決めされる。
【0074】
なお、第2実施形態では、受電装置12が支柱本体部14Aの進行方向側の側面に直接取り付けられており、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rは、受電装置12の対向表面よりも進行方向側に張り出して形成されている。したがって、その張り出した分、取付けリング部17Rが当接する交差部137cは、給電装置22の受電装置12との対向表面、言い換えると収納部133の壁前方向側の表面よりも、壁奥方向側に形成されている。したがって、取付けリング部17Rが交差部137cに当接したときに、受電装置12と給電装置22とが近接される。言い換えると、カート110を給電位置R2に位置決めすることができる。
【0075】
このように、第2実施形態に係る給電システム101によれば、縦壁に嵌め込まれた給電体120に給電装置22を配置し、カート110を給電体120の内部に形成された空間Sの中に移動させて給電位置R2に位置決めすることによってカート110に搭載された受電装置12を給電することができる。ここで、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが三角状ガイド部137aと円弧状ガイド部137bとが交差する交差部137cに当接するので、確実にカート110を給電位置R2に位置決めすることができる。また、給電システム101においては、天板15が給電装置22の受電装置12との対向表面よりも進行方向側に移動でき、交差部137cが収納部133の壁前方向側の表面よりも壁奥方向側に形成されていることから、受電装置12を給電装置22に近接させることができるので、給電システム1のようなスペーサー部13を省き、部品点数を軽減することができる。
【0076】
ここで、第2実施形態に係る変形例について説明する。第2実施形態で、給電体120を構成する棚121は、縦壁に埋め込まれて、壁の表面と棚121の表面とは面一状態になっているが、凹部が形成されていない平坦な壁の表面に棚121の背面を当接させた状態で棚121を壁に固定するようにようにしても良い。
【0077】
また、給電装置22に受電装置12を水平方向に近接状態で対向配置できる範囲で棚121の構造を適宜に変更しても良い。さらには、給電体120に含まれる給電装置22の個数も3つに限られず適宜に変更しても良い。また、第2実施形態では、受電装置12、および給電装置22は、長辺方向が上下方向と平行になるように取り付けられているが、受電装置12、および給電装置22の水平方向に対する向きも、長辺方向が水平方向と平行など適宜に変更しても良い。
【0078】
さらに、位置決め部134の三角状ガイド部137aの壁前方側端部において、後述する第5実施形態の拘束片422dのように、三角状ガイド部137aの内側に移動可能であり、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの反対方向側を係止する機構を搭載し、より強固にカート110を給電体220に拘束して給電位置R2に位置決めできるようにしても良い。
【0079】
<第3実施形態>
次に、
図13~
図16を用いて本発明の第3実施形態に係る給電システム201について説明する。
図13は、給電システム201の斜視図である。
【0080】
図13に示すように、給電システム201は、受電装置12が搭載され、床Fの上を走行可能なカート210と、給電装置22が搭載された給電体220とを有する。なお、
図12は、受電装置12が給電装置22から給電されているときの給電システム201を表す図である。給電システム201において、受電装置12が給電装置22から給電されるためには、受電装置12と給電装置22が上下方向に近接状態で対向配置される必要がある。
【0081】
詳細は後述するが、給電体220は、床Fの中央、言い換えると周囲に壁が立設されていない箇所に設置されている。そして、カート210が、床Fに設置された給電体220に対して所定位置で停止しているときに、受電装置12と給電装置22が上下方向に近接状態で対向配置され、給電装置22から受電装置12に給電することが可能となる。以下において、カート210の床Fに設置された給電体220に対する給電可能な所定位置のことを「給電位置R3」と称する。
【0082】
また、後述するように、カート210は、受電装置12の取り付け位置、および天板15の上面に位置決め目印15mが形成されていること以外、第2実施形態に係るカート110と同一に構成されている。したがって、カート210に対する方向は、第1実施形態や第2実施形態と同一の名称を使用する。
【0083】
次に、カート210について説明する。
図14は、カート210を表す斜視図である。
図14に示すように、カート210は、本体部分を構成するカート本体11と、カート本体11に取り付けられた受電装置12とを具備する。
【0084】
受電装置12は、対向表面が下方の床Fを向くようにカート脚部16の底面に取り付けられている。また、受電装置12は、対向表面が床Fの表面と平行になるように、換言すると、支柱14と直交するようにカート脚部16に取り付けられている。さらに、受電装置12は、長辺方向が進行前後方向と平行になるようにカート脚部16に取り付けられている。
【0085】
また、天板15の反対方向側の進行左右方向両端部に、直径10mm程度の黒塗りの円形からなる位置決め目印15mが表示されている(
図13参照)。位置決め目印15mは、カート210を給電位置R3に位置決めするために表示されており、後述するように、天井に設置された2つの位置決め光源240が下方に直線上の光を照射するが、この光に位置決め目印15mを合わせると、カート210は給電位置R3に位置決めされる。
【0086】
次に、給電体220について説明する。給電体220は、床Fに対して昇降可能に構成されており、受電装置12に給電しない待機状態においては床Fに収納されており、受電装置12に給電する使用状態においては床Fの表面から突出している。
図15(A)は、待機状態の給電体220を表す斜視図であり、
図15(B)は、使用状態の給電体220を表す斜視図である。
【0087】
図15に示すように、給電体220は、本体部分をなす給電体本体221と、給電体本体221に取り付けられた給電装置22と、モーターなどの駆動源を有し、給電体本体221を昇降させる駆動機構(図示なし)とを具備する。
【0088】
給電体本体221は、全体的に円柱状に成形されている。給電体本体221は、少なくとも、直径が前側キャスター17Fの進行左右方向における最も狭い内側間、および前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの進行左右方向における最も狭い内側間よりも小さくなるように成形されている。言い換えると、給電体本体221に向かって真っ直ぐ進行してくるカート210の前側キャスター17F、および前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが当該給電体本体221の進行左右方向両外側に当接することなく当該給電体本体221を通過することができるように給電体本体221は成形されている。
図13に示すように、カート210が給電位置R3で位置決めされている状態では、前側キャスター17Fは、給電体本体221の中心よりも進行方向側に位置することになるので、カート210を給電位置R3に向けて進行方向に移動させるときには、前側キャスター17F、および前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが給電体本体221に引っ掛かることなく、給電体本体221の両側を通過する必要があるからである。
【0089】
給電体本体221の上面には、受電装置12を所定の一方向に案内する案内溝221aが形成されている。案内溝221aは、所定の一方向に対する一方側が開放して形成されている。また、案内溝221aは、所定の一方向に沿って、当該案内溝221aの中を受電装置12が摺動できるように受電装置12の短辺方向長さと略同一の幅で、且つ、数cm(例えば、1~2cm)の深さで形成されている。なお、案内溝221aの幅方向中心を通る直線は、給電体本体221に係る円柱状の中心を通る。また、後述するように、案内溝221aの開放されている側から所定の一方向に沿って受電装置12が挿入されるので、受電装置12を挿入し易くするために、受電装置12にとっての案内溝221aの開放されている入口部分は、外に向かって拡径すると共に、下方に傾斜して形成されている。
【0090】
また、案内溝221aの所定の一方向における開放している方と反対側は、閉鎖しているので、段差部が形成されていることになるが、この所定の一方向に対向する段差部は、受電装置12を係止させると共に、所定の一方向成分についてカート210を給電位置R3で位置決めさせるために機能する。さらに、案内溝221aの幅は、受電装置12の短辺方向長さと略同一であることから、案内溝221aの所定の一方向に沿った両縁に形成された段差部は、受電装置12を所定の一方向に直交する方向に拘束すると共に、所定の一方向に直交する方向についてカート210を給電位置R3で位置決めさせるために機能する。そこで、案内溝221aを区画する3方向からなる段差部のことを「位置決め段差部221b」と称する。
【0091】
なお、案内溝221aが形成されている向きである所定の一方向は適宜に設定可能であるが、給電体本体221の設置箇所に応じて適切に設定されることが望ましい。例えば、第3実施形態のように、床Fの中央に給電体本体221が設置されており、給電体本体221の付近でカート210の走行方向が制限されない場合、所定の一方向は、使用頻度の高いカート210の走行方向にしても良い。また、床Fの壁が立設されている付近に給電体本体221が設置されており、給電体本体221の付近で壁に沿った方向にカート210を走行させることが困難である場合、所定の一方向は、壁に直交する方向にしても良い。
【0092】
給電装置22は、対向表面が上方を向くように壁21に取り付けられている。給電装置22の対向表面は、案内溝221aの底面を構成し、外部に露出している。また、給電装置22は、対向表面が床Fの表面と平行になり、且つ、平面視でその長辺方向両外縁が案内溝221aの所定の一方向の両内縁(壁面)に一致し、その長辺方向が、案内溝221aの所定の一方向に沿うように配置されている。さらに、給電装置22は、平面視で、給電装置22の長辺方向中心且つ短辺方向中心が、給電体本体221の上面の中心と一致するように配置されている。したがって、給電装置22は、平面視で給電体本体221の中央に配置されていることになる。
【0093】
また、給電体220は、待機状態において、給電体本体221の上面が床Fの表面と面一状態になるように保持されている。そして、受電装置12に給電するために使用状態になるときに、所定高さまで上昇する。ここでの使用状態に係る所定高さとして、位置決め段差部221bの上下方向中央が、床Fに載置されたカート210に搭載された受電装置12の対向表面の位置と同一になる高さが設定されている。したがって、受電装置12を位置決め段差部221bに沿って移動させ、最終的に受電装置12を所定の一方向について位置決め段差部221bで係止させて、カート210を給電位置R3に位置決めすることができる。
【0094】
なお、給電体220の待機状態から使用状態への移行(使用状態の設定)、および給電体220の使用状態から待機状態への移行(待機状態の設定)を行う手段・方法は適宜に設定可能である。例えば、使用状態の設定、および待機状態の設定の操作を受け付ける操作手段が有線通信、または無線通信によって給電体220に接続され、当該操作手段への操作によって任意に使用状態の設定、および待機状態の設定を行えるようにしても良い。
【0095】
また、給電体本体221の内部に、または給電体本体221の外部に、カート210が給電体本体221に近接しているか否かを検知可能な検知手段が設置され、給電体220が当該検知手段、および上記の給電体本体221を昇降させる駆動源と通信接続されているマイクロチップを具備し、当該検知手段がカート210が給電体本体221に近接したことを検知すると、マイクロチップが給電体本体221を上昇させて使用状態の設定を行い、カート210が給電体本体221に近接していないことを検知すると、マイクロチップが給電体本体221を下降させて待機状態の設定を行うようにしても良い。
【0096】
なお、ここでの給電体本体221の内部とは、給電体本体221の内側に取り付けられていることと給電体本体221の表面に取り付けられていることを含む。また、給電体本体221の外部とは、給電体本体221から離れた位置に取り付けられていることである。
【0097】
また、給電システム3は、カート210を給電位置R3に位置決めしようとしている当該カート210の利用者を検知可能な位置決めセンサ230と(
図13~
図15に図示なし)、位置決めセンサ230がカート210の利用者を検知したことによって下方に直線上の光を照射する位置決め光源240と(
図13~
図15に図示なし)、キャスター用位置決め目印250とを具備する。
【0098】
位置決めセンサ230は、カート210が給電位置R3に位置決めされようとして給電体本体221の直上に配置されたとき、カート210の利用者を検知する。位置決めセンサ230に関する設置位置や検知方式は、カート210の利用者を検知できる範囲で適宜に設定可能であるが、第3実施形態では、位置決めセンサ230は、人感センサで構成され、天井のカート210が給電位置R3に配されたときのハンドル19から反対方向側に所定距離(例えば、30cm)離れた位置に設置されている。これにより、位置決めセンサ230は、カート210の利用者がカート210を給電位置R3の付近まで移動させたときに、当該利用者を検知することができる。
【0099】
位置決め光源240は、天井のカート210が給電位置R3に位置決めされたときの上下方向で各位置決め目印15mに対応する箇所に取り付けられている。各位置決め光源240は、位置決めセンサ230が人を検知すると、下方に向けて直線上の光(レーザー光線)を照射する。したがって、カート210が完全に給電位置R3に位置決めされていない状況でも、位置決め光源240から光が照射されると、当該位置決めに対する最終的な微調整を行うことができる。なお、受電装置12に給電しようとする人以外の人を検知することを防止するため、位置決め光源240は、位置決めセンサ230が所定時間(例えば、5秒)人を検知し続けると、光を照射するようにしても良い。
【0100】
キャスター用位置決め目印250は、カート210が給電位置R3に位置決めされたときに床Fの各キャスター17に合う位置に表示されている。したがって、カート210が給電位置R3から離れた位置に配されている状況でも、まずはキャスター用位置決め目印250を目指してカート210を移動させることができる。なお、第3実施形態において、キャスター用位置決め目印250は、各キャスター17を外側で沿って囲うL字状の表示で構成されている。
【0101】
次に、
図16を用いてカート210の給電位置R3への位置決めについて説明する。
図16(A)はカート210を給電体220(給電位置R3)に近づけている状況の給電システム201を表す斜視図であり、
図16(B)はカート210が給電位置R3に位置決めされている状況の給電システム201を表す斜視図である。
【0102】
カート210を給電位置R3に位置決めする場合は、まずはカート210の進行方向側が給電体本体221の案内溝221aの開放している部分に正対するようにカート210の向きを整え、カート210を給電体220の付近まで移動させる。ここで、カート210が給電体220にある程度近づくと、前述のように操作手段を用いて手動で給電体本体221を上昇させて給電体220を使用状態にする。あるいは、カート210が給電体本体221にある程度近づくと、検知手段によって自動で、給電体本体221が上昇して給電体220が使用状態になる。
【0103】
次に、キャスター17がキャスター用位置決め目印250に合うように、カート210をさらに給電体220に近づける。そして、
図16(A)に示すように、前側キャスター17Rが給電体本体221に差し掛かると、受電装置12を進行方向側先端から案内溝221aの開放している部分に挿入させて、そのまま位置決め段差部221bに沿わせながら、さらにカート210を進行方向に移動させる。そして、
図16(B)に示すように受電装置12が位置決め段差部221bに係止すると、カート210が給電位置R3で位置決めされて、給電装置22と受電装置12が上下方向に近接状態で対向配置されることになり、給電装置22から受電装置12に給電することができる。
【0104】
なお、受電装置12が位置決め段差部221bでしっかりと拘束されずにがたつく場合であっても、位置決め光源240からの光を位置決め目印15mに合わせることで、カート210の位置を微調整してカート210を給電位置R3に位置決めすることができる。
【0105】
このように、第3実施形態に係る給電システム201によれば、床Fの付近に壁が形成されていない箇所に設置された昇降可能な給電体220に給電装置22を配置し、カート210を給電体220の直上に移動させて給電位置R3に位置決めすることによって、受電装置12と給電装置22が上下方向に近接状態で対向配置されることとなり、給電装置22から受電装置12に給電することができる。さらに、給電体220は、床Fに設置されているが、待機状態において、給電体本体221の上面が床Fの表面と面一状態にされているので、給電体本体221が通行に支障を来すことを防止することができる。このことは、特に付近に壁が形成されておらず、人が行き来し易い箇所に対して有効である。
【0106】
また、付近に壁などが形成されていないので、カート210の走行については自由度が高い反面、カート210を正確に位置決めすることが困難であるが、キャスター用位置決め目印250によって、最初にある程度、カート210を給電位置R3に位置決めすることができる。さらに、最終的には受電装置12が位置決め段差部221bの所定の一方向に係止し且つ所定の一方向に直交する方向に拘束されるので、確実にカート210を給電位置R3に位置決めすることができる。また、位置決め段差部221bと受電装置12とでの給電位置R3への位置決めが困難または不可能な場合であっても、給電システム201は、位置決めセンサ230、位置決め光源240、および位置決め目印15mを具備するので、確実にカート210を給電位置R3に位置決めすることができる。
【0107】
ここで、第3実施形態に係る変形例について説明する。第3実施形態では、給電体220の待機状態において給電体本体221の上面と床Fの表面とが面一状態に保持されているが、給電体本体221の上面が床Fの表面よりも下方で保持され、給電体本体221の上方に床Fに対する蓋が配置されるようにしても良い。この場合、蓋は手動で開閉できるようにしても、自動で開閉できるようにしても良い。
【0108】
蓋の開閉が手動で行われる場合、直接の作業で蓋を開閉できるようにしても、リモコンなどの操作手段を操作することで蓋が開閉されるようにしても良い。一方、蓋の開閉が自動で行われる場合、例えば、前述の使用状態の設定の場合と同様に、カート110が給電体本体221の設置箇所に近づいたことが検知されたときに開放され、カート110が給電体本体221の設置箇所から離れたことが検知されたときに閉鎖されるようにしても良い。さらに、蓋の開閉と給電体本体221の昇降とが連動して自動で行えるようにしても良い。
【0109】
また、第3実施形態では、給電体本体221が昇降可能であり、給電体220を待機状態と使用状態とで切り替え可能に構成されているが、給電体220は、昇降機能を有さずに、使用状態で固定されているようにしても良い。あるいは、例えば、透明な板状部材で構成された蓋が床Fの中央に形成され、その直ぐ真下に対向表面が上方を向いた給電装置22が配置されるようにしても良い。ただし、この場合、カート210に搭載された受電装置12と給電装置22とを上下方向で近接状態にすることができないので、受電装置12に給電させるための性能として、板状部材による障害および受電装置12との距離を賄える性能とすることが望ましい。あるいは、受電装置12とカート脚部16との間に、第1実施形態に係るスペーサー部13のような部品を介在させて、受電装置12の対向表面が床Fの表面に近い高さで保持されるようにしても良い。さらには、カート210について、受電装置12が下降、および上昇を可能に構成しても良い。この場合、給電システム201に、受電装置12の下降、および上昇の操作を受け付ける操作手段が含まれ、当該操作手段への操作によって受電装置12の下降、および上昇を行えるようにしても良い。また、給電システム201に、給電体20に近接したことを検知する検知手段が含まれ、当該検知手段の検知によって受電装置12の下降、および上昇を行えるようにしても良い。
【0110】
また、第3実施形態では、カート210を給電位置R3に位置決めする場合は、給電体220を使用状態にした後で、受電装置12を案内溝221aの中に挿入させていたが、言い換えると、受電装置12と給電装置22を高さについて近接状態にした後で、対向配置させていたが、受電装置12を給電装置22に対向配置させた後で、受電装置12と給電装置22が高さについて近接状態になるようにしても良い。この場合、例えば、位置決めセンサ230、位置決め光源240、および位置決め目印15mを利用して、受電装置12を給電装置22に対向配置させた後で、給電体本体221が上昇し、受電装置12が案内溝221aに上から挿入するようにしても良い。
【0111】
さらに、給電体本体221の全体的な形状は円柱状に限定されず、適宜に変更しても良い。また、給電体220は、給電体本体221に案内溝221aおよび位置決め段差部221bが形成されておらず、給電体本体221の上面は平坦であり、給電体本体221の上面と給電装置22の対向表面とが面一状態となるように構成されていても良い。この場合、受電装置12を案内溝221aに挿入させる必要がないので、給電システム201の使用性が向上する。また、この場合、給電体本体221の上面は、受電装置12の対向表面よりも低い位置に形成する必要がある。
【0112】
さらに、案内溝221aは所定の一方向に対して一方側が閉鎖されているが、この一方側が開放されており、外側に向かって拡径し、下降するようにしても良い。この場合、案内溝221aに対して何れからも受電装置12を挿入させることができるので、給電システム201の使用性が向上する。
【0113】
また、第3実施形態では、位置決めセンサ230がカート利用者を検知することによって位置決め光源240が光を照射しているが、位置決め光源240が光を照射するタイミング、言い換えると、位置決めセンサ230の設置個所は適宜に変更可能であり、例えば、給電体本体221が上昇することに応じて光を照射し、下降することに応じて消灯するようにしても良い。また、位置決め光源240の数、および位置、ならびに位置決め目印15mの数、および位置も適宜に変更しても良い。さらに、キャスター用位置決め目印250の形状、および位置も適宜に変更しても良い。また、給電システム201は、一対の位置決め光源240と位置決め目印15m、およびキャスター用位置決め目印250の何れか一方、または双方を具備しないように構成しても良い。
【0114】
<第4実施形態>
次に、
図17を用いて本発明の第4実施形態に係る給電システム301について説明する。
図17は、給電システム301の斜視図である。
【0115】
図17に示すように、給電システム301は、受電装置12が搭載され、床Fの上を走行可能なカート210と、給電装置22が搭載された給電体320とを有する。なお、
図17は、受電装置12が給電装置22から給電されているときの給電システム301を表す図である。
図17に示すように、給電システム301において、受電装置12が給電装置22から給電されるためには、受電装置12と給電装置22が上下方向に近接状態で対向配置される必要がある。
【0116】
詳細は後述するが、給電体320は、床Fの壁Wの付近に設置されている。そして、カート210が、床Fに設置された給電体320に対して所定位置で停止しているときに、受電装置12と給電装置22が上下方向に近接状態で対向配置され、給電装置22から受電装置12に給電することが可能である。以下において、このカート210の床Fに設置された給電体320に対する給電可能な所定位置のことを「給電位置R4」と称する。なお、第4実施形態に係るカート210は、第3実施形態に係るカート210と同一に構成されている。また、給電体320について、給電体320は床Fから立設されている壁Wの付近に設置されていることから、給電体320に対する方向は、第1実施形態や第2実施形態と同一名称を使用する。
【0117】
次に、給電体320について説明する。給電体320は、床Fの表面から突出した状態で固定されている。給電体320は、本体部分をなす給電体本体321と、給電装置22とを具備する。
【0118】
給電体本体321は、固定されていること、ならびに設置されている箇所、および向き以外は第3実施形態の給電体本体221と同一に構成されている。給電体本体321そのものは、基本的(実質的)には、第3実施形態で使用状態に置かれている給電体本体221と同一に構成されている。したがって、給電体本体321は、第3実施形態と同様に、所定の一方向に形成された案内溝321a、および位置決め段差部321bを具備する。
【0119】
給電体本体321の設置されている向きについて、給電体本体321は、案内溝321aの所定の一方向が壁Wに直交し、且つ、受電装置12の入り口となる案内溝321aの所定の一方向に沿った開放している部分が、壁Wと反対側を向くように配置されている。したがって、案内溝321a、および位置決め段差部321bに係る所定の一方向は、壁前後方向と平行になる。ここで、給電体本体321は壁Wの付近に設置されていることから、受電装置12に給電するためには(カート210を給電位置R4に位置決めするためには)、受電装置12の対向表面を壁Wに近づけるようにカート210を走行させてくる必要がある。
【0120】
給電体本体321の設置されている箇所について、給電体本体321は、壁前後方向に対して、カート210の進行方向を壁Wに対面させた状態で前側キャスター17Fの取付けリング部17Rを壁Wに当接させると、壁前後方向に受電装置12が位置決め段差部321bに係止され、カート210が給電位置R4に位置決めされて受電装置12と給電装置22が上下方向に近接状態で対向配置されるように設置されている。
【0121】
また、壁Wの下端部には、第1実施形態に係るキャスター位置誘導板24と同様に、給電位置R4に位置決めされたカート210の前側キャスター17Fの取付けリング部17Rを壁左右方向に拘束する一対のキャスター位置誘導板330が設けられている。したがって、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが一対のキャスター位置誘導板330の間にきっちりと収まるようにカート210を移動させると、第3実施形態の場合と同様に、受電装置12が進行方向先端から案内溝221aに挿入し、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが壁Wに当接すると、受電装置12が位置決め段差部321bで所定の一方向(ここでは、壁前後方向)に係止されて、カート210は、給電位置R4に位置決めされる。なお、キャスター位置誘導板330も、給電システム4に含まれるものとする。
【0122】
このように、第4実施形態に係る給電システム301によれば、床Fの壁Wが付近に形成されている箇所に設置された給電体320に給電装置22を配置し、カート210を給電体320の直上に移動させて給電位置R4に位置決めすることによって、受電装置12と給電装置22が上下方向に近接状態で対向配置されることとなり、給電装置22から受電装置12に給電することができる。
【0123】
ここで、給電体本体321は、床Fの表面から突出した状態で固定されているが、床Fの付近に壁Wが形成されている箇所に設置されているため、人の行き来に対して支障を来すことを緩和することができると共に、昇降させるための機構が省かれている分、構造を簡素化して製品コストを抑えることができる。さらに、カート210は壁Wで壁前方向に係止されると共に、壁Wに設けられたキャスター位置誘導板330で壁左右方向に拘束されるので、壁Wを利用して、カート210を給電位置R4に位置決めすることができる。また、カート210は位置決め段差部321bで壁前方向に係止されると共に、壁左右方向に拘束されるので、確実にカート210を給電位置R4に位置決めすることができる。
【0124】
ここで、第4実施形態に係る変形例について説明する。第4実施形態では、給電体本体321は、床Fから突出した状態で固定されているが、第3実施形態の給電体本体221と同様に昇降可能に構成されても良い。また、給電体本体321の全体的な形状は円柱状に限定されず、適宜に変更しても良い。
【0125】
さらに、給電システム301は、位置決め段差部321b、およびキャスター位置誘導板330によってカート210を給電位置R4に位置決め可能に構成されているが、何れか一方を具備しないように構成しても良い。
【0126】
<第5実施形態>
次に、
図18~
図20を用いて本発明の第5実施形態に係る給電システム401について説明する。
図18は、給電システム401の斜視図である。
【0127】
図18に示すように、給電システム401は、受電装置12が搭載され、床Fの上を走行可能なカート110と、給電装置22が搭載された給電体420とを有する。なお、
図18は、受電装置12が給電装置22から給電されているときの給電システム401を表す図である。
図18に示すように、給電システム401において、受電装置12が給電装置22から給電されるためには、受電装置12と給電装置22が水平方向に近接状態で対向配置される必要がある。
【0128】
詳細は後述するが、給電体420は、走行可能に構成されている。そして、カート110が、給電体420に対して所定位置で停止しているときに、受電装置12と給電装置22が水平方向に近接状態で対向配置され、給電装置22から受電装置12に給電することが可能である。以下において、このカート110の給電体420に対する給電可能な所定位置のことを「給電位置R5」と称する。
【0129】
また、カート110は、第2実施形態に係るカート110と同一に構成されている。したがって、カート110に対する方向は、第1実施形態や第2実施形態と同一の名称を使用する。
【0130】
次に、給電体420について説明する。給電体420は、床Fの上を走行可能に構成されている。
図19は給電体420を表す斜視図であり、
図20(A)は給電体420を表す平面図であり、
図20(B)は給電体420を表す正面図であり、
図20(C)は給電体420を表す右側面図である。
図19~
図20に示すように、給電体420は、本体部分をなす給電体本体421と、給電装置22とを具備する。なお、第5実施形態において、便宜上、
図20に記載された「上」・「下」・「前」・「後」・「左」・「右」が示す矢印に基づいて前後方向、左右方向、および上下方向を特定する。
【0131】
給電体本体421は、給電装置22を所定高さに保持する全体的に縦長形状のスタンドで構成され、カート110を給電体420に対して給電位置R5で位置決めさせるための位置決め部422と、給電装置22が取り付けられる支柱部423と、当該給電体本体421を床Fの上で走行可能にする一対の2つの車輪424と、車輪424を位置決め部422に連結させる連結部425と、給電体420を安定的に起立させるための起立脚部426と、給電体420を移動させる際に掴むための把持部427とを具備する。
【0132】
位置決め部422は、全体的には、平板状であり、平面視で左右方向に横長の矩形状をベース部分として、当該ベース部分の前方側が左右対称で湾曲状に張り出す形状に成形されている。また、位置決め部422は、床Fに載置されたカート110に取り付けられている前側キャスター17Fの取付けリング部17Rと同一の高さに保持されている。換言すると、平板状に形成された位置決め部422の側面(厚み部分)は、床Fに載置されたカート110に取り付けられている前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの側面に対向する。
【0133】
位置決め部422の後方側の左右両端には、それぞれ水平方向外向き(左方向・右方向)に突出する突出部422aが形成されている。各突出部422aの前方側側面は、水平方向外向き(左方向・右方向)に進むにつれて後方側へ後退するように傾斜されている。この各突出部422aの前方側側面と、前方側側面に続く位置決め部422の突出部422aよりも前方側に形成されている左右両側面にカート110の前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが当接する。以下において、突出部422aの前方側側面のことを「第1当接側面422b」と称し、第1当接側面422bの前方側に続く側面のことを「第2当接側面422c」と称する。
【0134】
右側の第1当接側面422b、および第2当接側面422cには、前右側キャスター17FRの取付けリング部17Rの進行方向の進行左方向部分(内側部分)が当接し、左側の第1当接側面422b、および第2当接側面422cには、前左側キャスター17FLの取付けリング部17Rの進行方向の進行右方向部分(内側部分)が当接する。
【0135】
また、位置決め部422の前方側の左右両端には、通常状態ではそれぞれ水平方向外向き(左方向・右方向)に突出している拘束片422dが設けられている。拘束片422dによって、第1当接側面422b、および第2当接側面422cに当接する前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが進行前後方向、および進行左右方向に拘束されてカート110が給電位置R5に位置決めされる。
【0136】
拘束片422dの詳細な構造の説明は省略するが、拘束片422dは板ばね等の弾性部材で構成され、前方側から後方側へ向かって移動してくる前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが当接すると、変形して位置決め部422の内部に隠れる。カート110が進行方向に移動している間、取付けリング部17Rは拘束片422dに接触し続け、拘束片422dの位置決め部422の内部へ隠れる変形が維持される。
【0137】
そして、カート110が給電位置R5に到達すると(取付けリング部17Rが第1当接側面422b、および第2当接側面422cに当接すると)、取付けリング部17Rが拘束片422dから離れ、拘束片422dは元の突出した状態に戻る。この際には、拘束片422dの後方側の側面は、前側キャスター17Fの取付けリング部17Rの反対方向側に当接する。その結果、カート110に反対方向への荷重を与えない限り、取付けリング部17Rは拘束片422dによって進行前後方向に拘束される。ただし、カート110にある程度の反対方向への荷重が与えられると、再び拘束片422dが変形して位置決め部422の内部に隠れる。そして、平面視で取付けリング部17Rが拘束片422dを完全に通り過ぎると、拘束片422dは元の突出した状態に戻る。
【0138】
支柱部423は全体的に縦長に形成されており、位置決め部422の上面から鉛直方向に立設されている。支柱部423の前方側の上部には、給電装置22が、前側、左側、右側、および上側が完全に露出した状態で、長辺方向が上下方向と平行、且つ短辺方向が左右方向と平行になるように取り付けられている。そして、一体となった給電装置22と支柱部423で全体的に縦長矩形断面の柱状を呈する。したがって、支柱部423の左右方向幅は、給電装置22の短辺方向長さと同一であり、少なくとも、前後方向長さは、給電装置22の厚さよりも長く、高さは給電装置22の長辺方向長さよりも長い。
【0139】
給電装置22は、対向表面が前方側を向いた状態で取り付けられている。また、給電装置22は、上下方向に対して、床Fに載置されたカート110に取り付けられている受電装置12と対向配置できる高さで保持されている。また、給電装置22は、給電体本体421において、左右方向に対して、カート110の前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが位置決め部422で拘束されたときに受電装置12と前後方向に対向配置され、前後方向に対して、カート110の前側キャスター17Fの取付けリング部17Rが位置決め部422で拘束されたときに近接状態になる位置で保持されている。
【0140】
また、支柱部423は、後方側側面が位置決め部422の後方側側面と揃えられた状態で(面一状態で)形成されている。さらに、支柱部423は、平面視で前後方向において位置決め部422に収まる範囲で位置決め部422の左右方向中央に形成されている。
【0141】
位置決め部422と一対の車輪424を連結させる連結部425は、右側面視で、略L字を時計回りに90度回転させた断面形状であり、左右方向において、第2当接側面422c同士が離れた距離と同一長さに形成されている。そして、一対の車輪424の一方は連結部425の底面の後方側端部の右端に取り付けられ、他方は連結部425の底面の後方側端部の左端に取り付けられている。
【0142】
起立脚部426は、板状部材で構成され、正面視横長矩形状で、長辺方向に沿って左右対称に前方側が突出する湾曲状に成形されている。この起立脚部426の前面側の湾曲状と位置決め部422の前方側に形成された湾曲状とは略同一である。また、起立脚部426は、連結部425のすぐ前方側であって、位置決め部422の前方側側面から少し後方側に奥まった位置に形成されており、側面視で、起立脚部426の前方側先端は、支柱部423の前方側側面と上下方向に大体揃えられている。
【0143】
また、起立脚部426は、正面視横長矩形状に係る短辺方向が上下方向と平行になるように位置決め部422の底面に取り付けられており、当該短辺方向、すなわち幅方向で床Fに立設されているが、この短辺方向の高さは、位置決め部422の下方に配置されている連結部425と車輪424を合わせた高さと一致している。したがって、給電体420(特に、支柱部423)は、全体的に床Fに直交状態で且つ安定的に起立することができる。
【0144】
また、支柱部423の上面の給電装置22よりも後方側には、横長U字形状の把持部427が取り付けられている。したがって、例えば、利用者が給電体420の後方で把持部427を握って、給電体420の上端を後方に引き寄せると、給電体420は車輪424を支点として右側面視で時計回りに回転する。その結果、起立脚部426が床Fから離れることになるので、そのまま給電体420を水平方向に押すと給電体420をその方向に移動させることができる。
【0145】
このように、第5実施形態に係る給電システム401によれば、床Fを走行可能な給電体本体421に給電装置22を配置し、カート110を給電体420の正面(前方側)に移動させて給電位置R5に位置決めすることによって、受電装置12と給電装置22が水平方向に近接状態で対向配置されることとなり、給電装置22から受電装置12に給電することができる。給電体420は床Fを走行可能であるので、様々な状況に応じて移動させることができる。したがって、給電システム401の利便性が向上する。
【0146】
また、給電体420を移動させて給電位置R5を自由に設定することができ、しかもその場で給電体420を安定的に自立させることができるものの、車輪424が給電体本体421の後方側端部に設置されており、給電体本体421は全体的に縦長に形成されているので、衝突されるなど後方側へある程度の荷重を受けると、給電体420が後方側に倒れるおそれもある。ここで、給電システム401の使用性を向上させるためには、カート110を走行させながら減速させることなくそのまま給電位置R5に位置決めできることが望まれるが、そうすると、給電体420は倒れるおそれがある。そこで、給電体420は、
図19に示すように、後方側側面を壁Wに当接させた状態で設置することが望ましい。カート110の使用性を高めつつも、給電体420が後方側へ倒れることを防ぐことができるからである。
【0147】
また、給電体420の設置位置の自由度を高めるために、給電体420を2つ用いた給電システム501を実施することも可能である。給電システム501について
図21を用いて説明する。
図21は給電システム501を表す斜視図である。
図21に示すように、2つの給電体420を後方側側面で相互にもたれ合わせながら床Fに設置する。このように、給電体420を設置すると、一方の給電体420に対して前方側からカート110をある程度の速度で走行させながら当該一方の給電体420に係る給電位置R5に位置決めしようとしても、後方側に配置された他方の給電体420によって後方側へ倒れることが防止される。
【0148】
なお、給電システム401、501では、カート110を給電体220に拘束する手段として、拘束片422dが設けられているが、第2実施形態に係る位置決め部134のように、拘束片422dが設けられていないようにしても良い。
【0149】
<その他の変形例>
次に、第1実施形態~第5実施形態に共通する変形例について説明する。第1実施形態~第5実施形態で使用される受電装置12、および給電装置22の外観は、薄型の矩形状直方体で構成されているが、受電装置12、および給電装置22の外観形状は、円盤状など適宜に変更しても良い。また、給電体20、120、220、320、420を構成する各種部材の大きさや形状も適宜に変更しても良い。
【0150】
<前述した実施形態に開示されている発明>
この[発明を実施するための形態]における前段落までには、以下の発明A~発明Lが開示されている。発明A~発明Lの説明では、前述した発明を実施する形態における対応する構成の名称や表現、図面に使用した符号を参考のためにかっこ書きで付記している。但し、各発明を構成する手段などの要素はこの付記に限定されるものではない。
【0151】
(1)発明A
発明Aに係る発明は、
給電部(給電装置22)から受電部(受電装置12)へ非接触給電を行うことが可能な給電システム(給電システム1、101、201、301、401)であって、
前記給電部を搭載した給電体(給電体20、120、220、320、420)と、
前記受電部を搭載し、床面上を移動可能なカート(カート10、110、210)とを備え、
前記給電部と前記受電部が近接状態で対向配置されることによって前記給電部から前記受電部へ非接触給電を行うことが可能であり、
前記カートが前記給電体に対する所定位置(給電位置R1、R2、R3、R4、R5)で停止することによって前記給電部と前記受電部とが給電可能に近接状態で対向配置されることを特徴とする給電システム。
(2)発明B
発明Bに係る発明は、
発明Aに係る給電システムであって、
前記給電体(給電体20)は、壁(壁21)で構成され、
前記給電部は前記壁の表面に露出した状態で配置され、
前記受電部は、前記カート(カート10)を構成する上下方向に延設された柱部(支柱14)の側面に配置され、
前記カートが前記給電体に対する所定位置(給電位置R1)で停止することによって前記給電部と前記受電部とが水平方向に近接状態で対向配置されることを特徴とする給電システム。
(3)発明C
発明Cに係る発明は、
発明Bに係る給電システムであって、
前記給電体には、前記カートを前記給電体に対する所定位置に位置決めさせる位置決め手段(天板位置誘導板23、キャスター位置誘導板24)が形成されていることを特徴とする給電システム。
(4)発明D
発明Dに係る発明は、
発明Aに係る給電システムであって、
前記給電体(給電体220、320)は、床(床F)に設置され、
前記給電部は、給電の際に前記受電部と対向する表面が上方を向いて配置され、
前記受電部は、給電の際に前記給電部と対向する表面が下方を向いて配置され、
前記カートが前記給電体に対する所定位置(給電位置R3、R4)で停止することによって前記給電部と前記受電部とが上下方向に近接状態で対向配置されることを特徴とする給電システム。
(5)発明E
発明Eに係る発明は、
発明Dに係る給電システムであって、
前記給電体(給電体320)は、床面から上方に突出した突出体(給電体本体321)で構成され、
前記給電部は、当該給電部の給電の際に前記受電部と対向する表面が、前記給電体の上面から露出するように前記給電体に収納されていることを特徴とする給電システム。
(6)発明F
発明Fに係る発明は、
発明Dに係る給電システムであって、
前記給電体(給電体220)は、
床面に対して昇降可能な可動体(給電体本体221)で構成され、
下降して最も低い位置で保持されているときは少なくとも上面が前記床面と略同一または前記床面よりも下方に位置し、上昇して最も高い位置で保持されているときは少なくとも上面が前記床面よりも上方に位置するように構成され、
前記給電部は、当該給電部の給電の際に前記受電部と対向する表面が、前記給電体の上面から露出するように前記給電体に収納されていることを特徴とする給電システム。
(7)発明G
発明Gに係る発明は、
発明Eまたは発明Fに係る給電システムであって、
前記給電体は、床の周囲に壁が立設されていない箇所に配置されていることを特徴とする給電システム。
(8)発明H
発明Hに係る発明は、
発明Eまたは発明Fに係る給電システムであって、
前記給電体は、床の周囲に壁が立設されている箇所に配置されていることを特徴とする給電システム。
(9)発明I
発明Iに係る発明は、
発明Aに係る給電システムであって、
前記給電体(給電体420)は、
全体に縦長形状のスタンド(給電体本体421)からなり、
柱状の給電側柱部(支柱部423)を有し、
前記給電側柱部の側面に前記給電部が露出した状態で配置され、
前記カート(カート110)を構成する上下方向に延設された受電側柱部(支柱14)の側面に前記受電部が配置され、
前記カートが前記給電体に対する所定位置(給電位置R5)で停止することによって前記給電部と前記受電部とが水平方向に近接状態で対向配置されることを特徴とする給電システム。
(10)発明J
発明Jに係る発明は、
発明Aに係る給電システムであって、
前記給電体は、全体に縦長形状の2本のスタンド(給電体本体421)を含み、
前記スタンドは柱状の給電側柱部(支柱部423)を有し、
前記給電側柱部の側面に前記給電部が露出した状態で配置され、
2本の前記スタンドは、前記給電側柱部が配置された側の側面と反対側の側面同士が当接した状態で床面に起立し、
前記カートを構成する上下方向に延設された受電側柱部(支柱14)の側面に前記受電部が配置され、
前記カートが一方の前記スタンドに対する所定位置で停止することによって、当該スタンドに配置された前記給電部と前記受電部とが水平方向に近接状態で対向配置されることを特徴とする給電システム。
(11)発明K
発明Kに係る発明は、
発明Iまたは発明Jに係る給電システムであって、
前記スタンドには、前記カートを前記給電体に対する所定位置に位置決めさせる位置決め部(位置決め部422)が形成されていることを特徴とする給電システム。
(12)発明L
発明Lに係る発明は、
発明I乃至発明Jの何れか1つに係る給電システムであって、
前記スタンドの下端部には、床面を走行可能にする車輪(車輪424)が設けられていることを特徴とする給電システム。
【符号の説明】
【0152】
1,101,201,301,401,501…給電システム
10,110,210…カート
11,111,211…カート本体
12…受電装置
13…スペーサー部
14…支柱
14A…支柱本体部
14B…支柱可動部
15…天板
15m…位置決め目印
17…キャスター
17F…前側キャスター
17B…後側キャスター
17R…取付けリング部
20,120,220,320,420…給電体
21…壁
22…給電装置
23…天板位置誘導板
24…キャスター誘導板
25…壁面カート位置目印
26…床面カート位置目印
121…棚
131…柱部
132…横棚部
133…収納部
134…位置決め部
221,321…給電体本体
221a,321a…案内溝
221b,321b…位置決め段差部
230…位置決めセンサ
240…位置決め光源
250…キャスター用位置決め目印
221…給電体本体
221a…案内溝
221b…位置決め段差部
421…給電体本体
422…位置決め部
422a…突出部
422b…第1当接側面
422c…第2当接側面
423…支柱部
424…車輪
425…連結部
426…起立脚部
427…把持部