(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】光電変換装置、撮像システム、移動体、半導体基板
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20241007BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20241007BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H04N25/70
(21)【出願番号】P 2020176076
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】河野 祥士
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/046045(WO,A1)
【文献】特開2018-019139(JP,A)
【文献】特開2017-108281(JP,A)
【文献】特開2019-129375(JP,A)
【文献】特開2020-127179(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119477(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0373105(US,A1)
【文献】特開2017-059739(JP,A)
【文献】特開2016-052041(JP,A)
【文献】特開2013-080797(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169754(WO,A1)
【文献】特開2018-182481(JP,A)
【文献】特開2012-235444(JP,A)
【文献】特開2013-093554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の画素と、第二の画素と、複数のマイクロレンズと、を有する光電変換装置であって、
前記第一の画素と第二の画素のそれぞれは第一の光電変換部と、前記第一の光電変換部を取り囲む第二の光電変換部とを有し、
前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とのそれぞれは前記マイクロレンズから光を受ける受光部を有し、
前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とは同一のマイクロレンズの下に配置され、
前記第一の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第一の面積比が、前記第二の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第二の面積比と異な
り、
前記第一の画素の受光面側に設けられた第一の分光フィルターと、前記第二の画素の受光面側に設けられた第二の分光フィルターと、の透過率がピークを示す波長が重複することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
第一の画素と、第二の画素と、複数のマイクロレンズと、を有する光電変換装置であって、
前記第一の画素と第二の画素のそれぞれは第一の光電変換部と、前記第一の光電変換部を取り囲む第二の光電変換部とを有し、
前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とのそれぞれは前記マイクロレンズから光を受ける受光部を有し、
前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とは同一のマイクロレンズの下に配置され、
前記第一の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第一の面積比が、前記第二の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第二の面積比と異なり、
前記第一の画素の受光面側に設けられた第一の分光フィルターと、前記第二の画素の受光面側に設けられた第二の分光フィルターとが対応する光の波長域が同じことを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
前記第一の画素と第二の画素とは、前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との総和が同じことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第一の画素と、前記第二の画素とが隣り合うことを特徴とする請求項1
乃至請求項3のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
複数の画素が、前記第一の画素と前記第二の画素とを含み二行二列に配される四画素からなる配列を繰り返して配置されることを特徴とする請求項
4に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記四画素それぞれの、前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との面積比が互いに異なることを特徴とする請求項
5に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第一の画素の受光面側に設けられた第一の分光フィルターと、前記第二の画素の受光面側に設けられた第二の分光フィルターとが、赤、緑、青、白のいずれか一色に対応することを特徴とする請求項
4乃至請求項
6のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第一の画素と、前記第二の画素と、第三の画素とを含み、
前記第一の画素と前記第二の画素との間に第一の素子分離部を有し、
前記第二の画素と前記第三の画素との間に第二の素子分離部を有し、
前記第一の光電変換部のそれぞれは電荷を転送する第一の転送トランジスタと接続され、
前記第一の画素の前記第一の転送トランジスタのゲートの端部から、前記第一の素子分離部と前記第一の画素との境界までの距離と、
前記第二の画素の前記第一の転送トランジスタのゲートの端部から、前記第二の素子分離部と前記第二の画素との境界までの距離とが等しいことを特徴とする請求項1乃至請求項
7のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第二の光電変換部のそれぞれは電荷を転送する第二の転送トランジスタと接続され、
前記第一の画素の前記第二の転送トランジスタのゲートの端部から、前記第一の素子分離部と前記第一の画素との境界までの距離と、
前記第二の画素の前記第二の転送トランジスタのゲートの端部から、前記第二の素子分離部と前記第二の画素との境界までの距離とが等しいことを特徴とする請求項
8に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記第一の画素と第二の画素とのそれぞれは半導体層と配線層とを有し、
前記第一の画素と第二の画素との前記配線層のうち前記第一の転送トランジスタ又は前記第二の転送トランジスタに接続される部分が同一の構造を有することを特徴とする請求項
9に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記第一の光電変換部の光学中心と、前記第二の光電変換部との光学中心との距離が、前記第二の光電変換部の断面の深さ方向に垂直な方向の幅の10%にあたる距離よりも近いことを特徴とする請求項1乃至請求項
10のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
遮光部と、前記遮光部によって遮光された遮光画素とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項
11のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記遮光部が、前記第一の画素と前記第二の画素とを含んで二行二列に配された画素の繰り返し単位のうち少なくとも一つを覆っていることを特徴とする請求項
12記載の光電変換装置。
【請求項14】
受光面における前記第一の光電変換部の面積と、受光面に対向する面における前記第一の光電変換部の面積とが異なることを特徴とする請求項1乃至請求項
13のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記光電変換装置は複数の半導体基板を積層して構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項
14のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項
15のいずれか一項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて画像を生成する信号処理部と、を有することを特徴とする光電変換システム。
【請求項17】
請求項
16に記載の光電変換システムと、
該光電変換システムの前記光電変換装置に被写体像を結像させるレンズと、を有することを特徴とするカメラ。
【請求項18】
前記レンズのF値が閾値よりも大きいときは前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との面積比が大きい画素の信号を選択し、
前記レンズのF値が閾値よりも小さいときは前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との面積比が小さい画素の信号を選択することを特徴とする、請求項
17に記載のカメラ。
【請求項19】
請求項1乃至請求項
15のいずれか1項に記載の光電変換装置を備える移動体であって、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて前記移動体の移動を制御する制御部を有することを特徴とする移動体。
【請求項20】
他の半導体基板に積層するための半導体基板であって、
第一の画素と、第二の画素と、複数のマイクロレンズと、を有し、
前記第一の画素と前記第二の画素とのそれぞれは第一の光電変換部と、前記第一の光電変換部を取り囲む第二の光電変換部とを有し、
前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とのそれぞれは前記マイクロレンズから光を受ける受光部を有し、
前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とは同一のマイクロレンズの下に配置され、
前記第一の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第一の面積比が、前記第二の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第二の面積比と異な
り、
前記第一の画素の受光面側に設けられた第一の分光フィルターと、前記第二の画素の受光面側に設けられた第二の分光フィルターと、の透過率がピークを示す波長が重複することを特徴とする半導体基板。
【請求項21】
他の半導体基板に積層するための半導体基板であって、
第一の画素と、第二の画素と、複数のマイクロレンズと、を有し、
前記第一の画素と前記第二の画素とのそれぞれは第一の光電変換部と、前記第一の光電変換部を取り囲む第二の光電変換部とを有し、
前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とのそれぞれは前記マイクロレンズから光を受ける受光部を有し、
前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とは同一のマイクロレンズの下に配置され、
前記第一の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第一の面積比が、前記第二の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第二の面積比と異なり、
前記第一の画素の受光面側に設けられた第一の分光フィルターと、前記第二の画素の受光面側に設けられた第二の分光フィルターとが対応する光の波長域が同じことを特徴とする半導体基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、この光電変換装置を備えた撮像システム、移動体、半導体基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には1つの画素の周囲を囲む形で受光面積の大きい画素が配置され、大小2つの画素の信号を組み合わせることによって固体撮像装置のダイナミックレンジを拡大する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0269245号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばカメラに特許文献1の固体撮像装置を導入した場合、2つの画素の受光面積比が単一のため、2つの画素に入射する光量の比はレンズのF値によって2つの画素の受光面積比から変化する。また、F値が大きくなった場合には2つの画素のうち一方に光が入射せず、ダイナミックレンジの拡大が不十分であるという課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの側面は、第一の画素と、第二の画素と、複数のマイクロレンズと、を有する光電変換装置であって、前記第一の画素と前記第二の画素とのそれぞれは第一の光電変換部と、前記第一の光電変換部を取り囲む第二の光電変換部とを有し、前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とのそれぞれは前記マイクロレンズから光を受ける受光部を有し、前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とは同一のマイクロレンズの下に配置され、前記第一の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第一の面積比が、前記第二の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第二の面積比と異なり、前記第一の画素の受光面側に設けられた第一の分光フィルターと、前記第二の画素の受光面側に設けられた第二の分光フィルターと、の透過率がピークを示す波長が重複する。本発明の他の側面は、第一の画素と、第二の画素と、複数のマイクロレンズと、を有する光電変換装置であって、前記第一の画素と前記第二の画素とのそれぞれは第一の光電変換部と、前記第一の光電変換部を取り囲む第二の光電変換部とを有し、前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とのそれぞれは前記マイクロレンズから光を受ける受光部を有し、前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とは同一のマイクロレンズの下に配置され、前記第一の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第一の面積比が、前記第二の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第二の面積比と異なり、前記第一の画素の受光面側に設けられた第一の分光フィルターと、前記第二の画素の受光面側に設けられた第二の分光フィルターとが対応する光の波長域が同じ。
【0006】
本発明の他の側面は、他の半導体基板に積層するための半導体基板であって、第一の画素と、第二の画素と、複数のマイクロレンズと、を有し、前記第一の画素と前記第二の画素とのそれぞれは第一の光電変換部と、前記第一の光電変換部を取り囲む第二の光電変換部とを有し、前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とのそれぞれは前記マイクロレンズから光を受ける受光部を有し、前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とは同一のマイクロレンズの下に配置され、前記第一の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第一の面積比が、前記第二の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第二の面積比と異なり、前記第一の画素の受光面側に設けられた第一の分光フィルターと、前記第二の画素の受光面側に設けられた第二の分光フィルターと、の透過率がピークを示す波長が重複する。本発明の他の側面は、他の半導体基板に積層するための半導体基板であって、第一の画素と、第二の画素と、複数のマイクロレンズと、を有し、前記第一の画素と前記第二の画素とのそれぞれは第一の光電変換部と、前記第一の光電変換部を取り囲む第二の光電変換部とを有し、前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とのそれぞれは前記マイクロレンズから光を受ける受光部を有し、前記第一の光電変換部と前記第二の光電変換部とは同一のマイクロレンズの下に配置され、前記第一の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第一の面積比が、前記第二の画素における前記第一の光電変換部の受光部の面積と前記第二の光電変換部の受光部の面積との第二の面積比と異なり、前記第一の画素の受光面側に設けられた第一の分光フィルターと、前記第二の画素の受光面側に設けられた第二の分光フィルターとが対応する光の波長域が同じ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レンズのF値によらずダイナミックレンジを拡大することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【
図2】第一の実施形態に係る光電変換装置の画素回路の構成例である。
【
図3】第一の実施形態に係る光電変換装置の平面構造を模式的に示す図面である。
【
図4】第一の実施形態に係るレンズの絞りとマイクロレンズの集光を模式的に示す図面である。
【
図5】第一の実施形態に係るレンズの絞りとマイクロレンズの集光を模式的に示す図面である。
【
図6】第一の実施形態に係る光電変換装置の平面構造を模式的に示す図面である。
【
図7】第一の実施形態に係る光電変換装置の平面構造を模式的に示す図面である。
【
図8】第一の実施形態に係る光電変換装置の平面構造を模式的に示す図面である。
【
図9】第一の実施形態に係る光電変換装置の断面構造を模式的に示す図面である。
【
図10】第一の実施形態に係る光電変換装置の基板の裏面から見た平面構造を模式的に示す図面である。
【
図11】第一の実施形態に係る光電変換装置の断面構造を模式的に示す図面である。
【
図12】第一の実施形態に係る光電変換装置の断面構造を模式的に示す図面である。
【
図13】第一の実施形態に係る光電変換装置の断面構造を模式的に示す図面である。
【
図14】第一の実施形態に係る光電変換装置の基板の裏面から見た平面構造を模式的に示す図面である。
【
図15】第一の実施形態に係る光電変換装置の画素の配置を模式的に示す図面である。
【
図16】第二の実施形態に係る光電変換装置の平面構造を模式的に示す図面である。
【
図17】第三の実施形態に係る光電変換装置の平面構造を模式的に示す図面である。
【
図18】第三の実施形態に係る光電変換装置の画素回路の構成例である。
【
図19】第三の実施形態に係る光電変換装置の基板の裏面から見た平面構造を模式的に示す図面である。
【
図20】第四の実施形態に係る光電変換装置の平面構造を模式的に示す図面である。
【
図21】第四の実施形態に係る光電変換装置の画素回路の構成例である。
【
図22】第四の実施形態に係る光電変換装置の基板の裏面から見た平面構造を模式的に示す図面である。
【
図23】第五の実施形態に係る光電変換装置の平面構造を模式的に示す図面である。
【
図25】第六の実施形態にかかる撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図26】第七の実施形態にかかる撮像システム及び移動体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態による光電変換装置およびその駆動方法について、
図1から
図15を用いて説明する。
【0010】
図1は第一の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
図2は第一の実施形態に係る光電変換装置の画素回路の構成例である。
図3は第一の実施形態に係る光電変換装置の平面構造を模式的に示す図面である。
図4、
図5は第一の実施形態に係るレンズの絞りとマイクロレンズの集光を模式的に示す図面である。
図6~
図9は第一の実施形態に係る光電変換装置の平面構造を模式的に示す図面である。
図10は第一の実施形態に係る光電変換装置の裏面から見た平面構造を模式的に示す図面である。
図11~
図13は第一の実施形態に係る光電変換装置の断面構造を模式的に示す図面である。
図14は第一の実施形態に係る光電変換装置の裏面から見た平面構造を模式的に示す図面である。
図15は第一の実施形態に係る光電変換装置の画素の配置を模式的に示す図面である。
【0011】
(光電変換装置の全体構成)
本実施形態による光電変換装置は、
図1に示すように画素領域301と、タイミングジェネレーター302と、列信号処理回路303と、信号処理回路304とを有している。
【0012】
画素領域301には複数行及び複数列にわたって複数の画素100がマトリクス状に配されている。
【0013】
画素領域301の画素アレイの各行には、行方向(
図1において横方向)に延在して、制御信号線305が配されている。制御信号線305は、行方向に並ぶ画素100にそれぞれ接続され、これら画素100に共通の信号線をなしている。また、画素領域301の画素アレイの各列には、列方向(
図1において縦方向)に延在して、垂直出力線209が配されている。垂直出力線209は、列方向に並ぶ画素100にそれぞれ接続され、これら画素100に共通の信号線をなしている。
図1においては1本の垂直出力線が描かれているが、出力される信号に応じ複数本の垂直出力線が接続されていてもよい。
【0014】
画素領域301を構成する画素100の数は、特に限定されるものではない。例えば、一般的なデジタルカメラのように数千行×数千列の画素100で画素領域301を構成してもよく、1行又は1列に並べた複数の画素100で画素領域301を構成してもよい。
【0015】
各行の制御信号線305はタイミングジェネレーター302に接続されている。画素100から読み出された画素信号は、垂直出力線209を介して列信号処理回路303に入力される。列信号処理回路303は画素100から読み出された画素信号を保持するメモリ等を含み得る。列信号処理回路303から出力される画素信号は信号処理回路304を介して列毎に順次出力される。
【0016】
(画素の構成)
本実施形態による画素100の構成と接続関係について説明する。
図2は第一の実施形態の画素回路の等価回路図である。それぞれの画素100は、光電変換部101を有し、光電変換部101はフォトダイオード(以下「PD」とも表記する)102とPD103を含む。
【0017】
画素回路10はPD102とPD103を有する。さらに転送トランジスタ201-1と201-2とを含む。さらにオーバーフロー用スイッチ205、FD容量202、ゲインコントロールスイッチ204、容量素子203、リセットスイッチ206、ソースフォロワトランジスタ207、セレクトスイッチ208を含んで構成される。
【0018】
各素子の機能と接続について説明する。
【0019】
PD102およびPD103は、それぞれ、光電変換部の一例である。PD102とPD103とのそれぞれに光が入射すると光電変換により電荷が発生する。PD102、PD103のそれぞれは、発生した電荷を信号電荷として蓄積する。PD102、PD103のアノードは接地電位に接続されている。PD102は転送トランジスタ201-1に接続され、PD103は転送トランジスタ201-2とオーバーフロー用トランジスタ205に接続されている。
【0020】
転送トランジスタ201-1とソースフォロワトランジスタ207の入力ノード(ゲート)が電気的に接続される。転送トランジスタ201-2とソースフォロワトランジスタ207の入力ノードが電気的に接続されている。
【0021】
転送トランジスタ201-1と201-2のゲートにはそれぞれ制御信号TX1、TX2が入力される。各制御信号がHighレベルのとき、ソースフォロワトランジスタ207の入力ノードに各フォトダイオードから信号電荷が転送される。
【0022】
オーバーフロー用スイッチ205は電源VDDとPD102に接続される。オーバーフロー用スイッチ205のゲートには制御信号OFが入力される。オーバーフロー用スイッチ205ではゲート電位に応じたポテンシャルバリアが形成される。制御信号OFがHighレベルのとき、電源VDDにPD102から信号電荷が転送される。制御信号OFが中間電位LM1(Low<LM1<High)以上のとき、電源VDDとPD102の間のポテンシャルバリアが他の領域のバリアより低いレベルになることによって、電源VDDに余剰な電荷を排出することができる。電源VDDとPD102の間のポテンシャルバリアは典型的には転送トランジスタ201-2のポテンシャルバリアよりも低くなる。
【0023】
転送トランジスタ201-1と201-2、ゲインコントロールスイッチ204、および、ソースフォロワトランジスタ207のゲートは、互いに接続され、1つのノードを構成している。この1つのノードを、フローティングディフュージョン(以降FD)ノードまたはFD部と呼ぶことがある。
図2において、FD部の持つ容量が、FD容量202として表されている。FD容量202は、FD部を構成する配線の寄生容量成分やFD部に接続されたトランジスタのゲートの寄生容量成分を含みうる。また、FD容量202は、FD部を構成する半導体領域のPN接合容量成分、および、FD部に接続されたトランジスタのソースまたはドレインのPN接合容量成分を含みうる。これらの容量成分に加えて、FD容量202は、PIP容量、MIM容量、MOS容量などの容量素子によって構成されてもよい。これらの容量素子が配される場合には、当該容量素子の一端が、転送トランジスタ201-1、201-2、ゲインコントロールスイッチ204、および、ソースフォロワトランジスタ207のゲートに接続される。
【0024】
ゲインコントロールスイッチ204は容量素子203の一方の端子とリセットスイッチ206に接続される。ゲインコントロールスイッチ204のゲートには制御信号GCが入力される。容量素子203に電荷が蓄積された状態で制御信号GCをLowレベルにし、ゲインコントロールスイッチ204をオフにすることで、容量素子203は容量202から分離される。また、制御信号GCがHighレベル/Lowレベルに切り替わり、ゲインコントロールスイッチ204のオン/オフが切り替わることで、容量素子203をFD容量の一部として扱うか否かを切り替えられ、電荷電圧変換のゲインを異ならせることができる。さらに、制御信号GCが中間電位LM1(Low<LM1<High)以上のとき、容量素子203とPD103の間のポテンシャルバリアが他の領域のバリアより低いレベルになることで、容量素子203に余剰な電荷を転送することができる。典型的にはFD容量202よりもポテンシャルバリアが低くなる。
【0025】
リセットスイッチ206およびソースフォロワトランジスタ207には電源VDDが接続される。リセットスイッチ206のゲートには制御信号RESが入力される。制御信号RESがHighレベルのとき、リセットスイッチ206がオンする。リセットスイッチ206がオンすることで、PD102、PD103、FD部、および、容量素子203の一部または全部をリセットすることができる。
【0026】
ソースフォロワトランジスタ207はセレクトスイッチ208を介して垂直出力線209に接続される。セレクトスイッチ208のゲートには制御信号SELが入力される。制御信号SELがHighレベルのとき、セレクトスイッチ208がONになり、ソースフォロワトランジスタ207と電流源でソースフォロワ回路が形成される。
【0027】
PD102のアノード、および、PD103のアノードは、それぞれ接地電位に接続される。また容量202および203のもう一方の端子はそれぞれ接地電位に接続されるものとして記載している。
【0028】
PD103は、信号電荷である電子にとってポテンシャルが低い領域を含み、当該領域の周囲には信号電荷に対するポテンシャルバリアが形成される。すなわち、PD103のカソードには、局所的に電位が高い領域が存在する。そのため、発生した信号電荷はPD103のカソードに蓄積される。信号電荷である電子が蓄積されることに伴い、PD103のカソード電位が下がる。その結果、PD103の周囲に形成されるポテンシャルバリアの高さは低くなる。
【0029】
光電変換により発生した電荷のうち、フォトダイオードに蓄積可能な量を超えて過剰な電荷が発生する場合がある。PD103に大量の光が入射し過剰な電荷が発生したときには、ポテンシャルバリアの最も低いところから過剰な電荷が外にあふれ出す。
【0030】
PD103とFD部の間には転送トランジスタ201-2が存在し、FD部と容量素子203との間にはゲインコントロールスイッチ204が存在する。転送トランジスタ201-2のゲート電位TX2によって、転送トランジスタ201-2のゲートの直下の領域、すなわち、転送トランジスタ201-2のチャネル領域のポテンシャルバリアの高さを制御することができる。また、同様に、ゲインコントロールスイッチ204のゲート電位GCによって、ゲインコントロールスイッチ204のゲートの直下の領域、すなわち、ゲインコントロールスイッチ204のチャネル領域のポテンシャルバリアの高さを制御することができる。
【0031】
フォトダイオードPD2とFD部の間のポテンシャルバリアがフォトダイオード周辺を囲むポテンシャルバリアの中で最も低くなるように転送トランジスタ201-2の制御信号TX2が制御される。このとき、PD103で発生した過剰な電荷は転送トランジスタ201-2を介して転送される。ゲインコントロールスイッチ204がオフであれば、転送された過剰な電荷はFD部に保持される。ゲインコントロールスイッチ204に入力される制御信号GCによって、ゲインコントロールスイッチ204のオン、オフが制御される。ゲインコントロールスイッチ204がオンであれば、転送された余剰な電荷はFD部及び容量素子203に保持される。
【0032】
図2に示すPDと回路による、ダイナミックレンジの拡大について説明する。
【0033】
PD102とPD103とのそれぞれに光が入射すると光電変換により電荷が発生し、PD102、PD103のそれぞれは、発生した電荷を信号電荷として蓄積する。
【0034】
PD102はPD103よりも受光面積が小さいため、PD102と比べ単位時間あたりに入射する光量が少ない。したがって、PD103が飽和するような強い光が入射する場合にも入射光量に対して線形に電荷を生成することが可能である。一方PD103はPD102よりも受光面積が大きいため、PD102と比べ単位時間あたりにより多くの光を受光する。したがって、入射する光が微弱な場合にも一定量の電荷の生成が可能である。さらに、PD103は電荷蓄積期間中に発生した余剰電荷をオーバーフロー用スイッチ205を介して排出することで画素の飽和を防ぎながら多くの電子を保持することが可能である。
【0035】
PD102で生じた電荷に基づく信号を読み出す時、ゲインコントロールスイッチ204がオフの状態で転送トランジスタ201-1をオンにし、PD102に蓄積された電荷をFD容量202に転送する。PD102に蓄積された電荷はFD容量202で電圧信号に変換される。選択スイッチ208をオンにすると、FD容量202で電圧信号に変換された電荷は垂直出力線209を介して列信号処理回路303に出力される。
【0036】
PD102で生じた電荷に基づく信号の読み出しの後、ゲインコントロールスイッチ204及びリセットスイッチ206をオンにし、FD容量202をリセットする。その後PD103で生じた電荷に基づく信号の読み出しを行う。
【0037】
PD103で生じた電荷に基づく信号の読み出し時には、ゲインコントロールスイッチ204をオンし、FD容量202と容量素子203との容量の和をFD容量として扱う。FD容量202のみをFD容量として使用するときと比べ、より多くの電子を転送することが可能となる。
【0038】
読み出された、PD102で生じた電荷に基づく信号と、PD103で生じた電荷に基づく信号とを後段の信号処理で加算することにより、画素100の光電変換部が単一であった場合よりもダイナミックレンジの広い信号を得ることができる。このように、光に対する感度の異なる光電変換部を用いて画素のダイナミックレンジを向上させることができる。ここでPD102とPD103は同一のタイミングで蓄積された信号のため、加算される信号も時間にずれのない信号となる。
【0039】
また、このような画素回路では、読み出しの際に3種類の信号を読み出すことでもダイナミックレンジを拡大可能である。第1のフォトダイオードPD1に蓄積された電荷に基づく信号、第2のフォトダイオードPD2に蓄積された電荷に基づく信号のそれぞれをFD容量202を用いて読み出す。さらに、第2のフォトダイオードPD2からあふれ出し、FD部及び容量素子203に蓄積された電荷に基づく信号をFD容量202と容量素子203との容量の和を用いて読み出すことで、画素のダイナミックレンジを向上させることができる。
【0040】
図3~5を用いて本発明の画素の構造と画素への光の入射について説明する。
【0041】
図3は光電変換部101の概略構成を示す模式図である。上述の通りPD102の面積はPD103よりも小さく、PD102は周囲をPD103に囲まれている。
図3においてはPD102とPD103との面積の総和はいずれの面積比の画素でも等しくなっているが、面積の総和が異なる画素を用いても構わない。ここで、面積の総和が同じであるとは2画素の面積の差が誤差5%までに含まれる場合を言い、好ましくは誤差3%以下の場合を指すものとする。
【0042】
図4、
図5は、カメラのレンズを通った光線の各画素への集光を模式的に表した図である。
図4は、レンズのF値が小さく、レンズの絞りを開いている時の図であり、
図5は、レンズのF値が大きく、レンズの絞りを絞っている時の図である。
【0043】
各画素の受光面側にはマイクロレンズが配置されており、レンズを通った光線はマイクロレンズでフォトダイオードに集光される。
【0044】
図4に示すように、レンズのF値が小さい時にはマイクロレンズに対して入射する光線の角度範囲が広いため、画素上におけるマイクロレンズの集光範囲は広くなり、画素の受光部全体に光が入射する。一方
図5に示すように、レンズのF値が大きい時には、マイクロレンズに対して入射する光線が画素に対して垂直方向に絞られ、画素上におけるマイクロレンズの集光範囲は画素中央に集中する。
【0045】
カメラにおいてある特定の面積比の画素で構成された光電変換装置を用いる場合、F値が大きくなり入射光が画素中央に集光されるようになると、PD102に集光される光の割合がPD103に対して大きくなる。場合によっては、PD103に光が入射しないこともある。
【0046】
このような課題を解決するため、本実施形態に係る光電変換装置では、画素毎にPD102とPD103とが複数の面積比を有する。言い換えれば、光電変換装置を構成する複数の画素はPD102とPD103との面積比が互いに異なる二以上の画素を含む。これにより、レンズのF値によって集光状況が変化した場合も面積比の異なる画素のうちいずれかの画素ではPD102、PD103の両方に光が入射するため、安定してダイナミックレンジの広い信号を作成することができる。また、例えばF値が特定の閾値を超えるか否かによって画像の形成に使用する画素を選択することも可能である。
【0047】
本発明において、PD103はPD102の周囲を取り囲むように構成されており、PD102とPD103との光学中心は略同一である。したがって、PD102で変換された電荷に基づく信号とPD103で変換された電荷に基づく信号を使用してダイナミックレンジ拡大を図る際にPD間の信号にずれが少なく、補正が容易である。各画素の光軸は、レンズのF値が最大値をとり、画素に入射する光線が最も絞られた状態でもPD102に光が入射される範囲で設定することができる。より具体的にはPD102の光学中心とPD103の光学中心とのズレは画素の径の10%にあたる距離よりも小さい。
【0048】
図6~
図8は、第一の実施形態における分光フィルターの配置を模式的に示している。
【0049】
図6では、1画素毎に赤、青、緑(
図6では順に、R、B、Gと表記している)の特定の一色の可視光の波長域に対応する分光フィルターが配されている。なお、
図6では赤、青、緑の分光フィルターが配された例であるが、さらに白色光、赤外光に対応した分光フィルターを設けるようにしても良い。なお、白色光の場合には、可視光、赤外光に対して分光特性を備えるフィルターを設けずに代わりに樹脂等を設けることがある。このような形態も、本明細書では特に断りが無い限り、分光フィルターの一例として取り扱う。また、白色光フィルターは、可視光には分光特性を有さない一方で、赤外光(近赤外光を含む)を透過しにくくするフィルターを用いても良い。
図6では、画素アレイ内の同じ受光面積比の画素には同じ色(波長域)に対応した分光フィルターが配置されている。この場合、PD102、PD103の受光面積比と分光フィルターの対応する色との組み合わせが一通りのため、ダイナミックレンジ拡大に用いる画素として用いやすくなる。
【0050】
しかし、
図6の場合は、F値に応じたダイナミックレンジ拡大に使用しやすい画素と使用しにくい画素が特定の色に集中する傾向がある。
【0051】
図7は、赤、青、緑の分光フィルターがベイヤー配列に従って配された形態を示している。
図7では2行2列の画素についてR、G、Bの配列を示しているが、他の画素についても、同様にベイヤー配列で分光フィルターが配されている。
図7に示すように画素と分光フィルターの組み合わせを場所によって異ならせ、同色に対応した分光フィルターの下に配される画素の面積比を変えることで、どの色に対応した画素もダイナミックレンジ拡大に、より簡易に使用できるようになる。
【0052】
なお、同色の分光フィルターが対応する波長域は完全に一致する場合に限られないが、可視光に対応する分光フィルターでは少なくとも透過率のピーク波長が重複すればよい。赤外光(IR)フィルターは近赤外光を選択的に透過させる。
【0053】
また、
図8のように複数の画素毎に1色の分光フィルターを配し、分光フィルターの下に配される画素の面積比パターンの配置を変えることで、受光面積比のパターンすべてを同一の分光フィルター内に配置する方法もある。例えば互いに隣接する二行二列の四画素に同色の分光フィルターを配置し、当該四画素を1単位として1単位ごとに色を異ならせる、いわゆるクワッドベイヤー配列の場合が考えられる。
【0054】
(変形例1)
第一の実施形態の変形例1について
図9、
図10を用いて説明する。
【0055】
図9は、第一の実施形態の画素の断面を模式的に示した図である。各画素900は光電変換部101を含む半導体層と配線904を含む配線層を含む。
【0056】
図9に示すように、画素の半導体層に光電変換部101側から光が入射する。半導体層はフォトダイオードである光電変換部101と、光電変換部101をPD102とPD103の2つに分割する画素分離層901を有する。
【0057】
この光電変換部層の受光面と対向する面に配線904を有する配線層が接続されている。配線904はPD102の転送トランジスタ902、PD103の転送トランジスタ903、制御線、出力線、電源線などを含む。
【0058】
図10は、第一の実施形態の画素と転送トランジスタの平面模式図である。配線904は省略している。各画素900の間には一定の幅を有し画素同士を分離する素子分離部905が配されている。
【0059】
ここで、素子分離部905の画素900-1と画素900-2との間に配される部分を905-1、画素900-2と画素900-3との間に配される部分を905-2とする。
【0060】
図10に示す4つの画素は、それぞれPD102、PD103の面積比が異なるが、各画素の転送トランジスタ902、903は、全ての画素で画素分離層の位置によらず光電変換部101内の相対位置として同じ位置にある。例えば
図9の画素の断面において、各画素の転送トランジスタの位置は常に画素中央部と画素端部である。画素の端部は素子分離部と画素との境界によって規定される。
【0061】
言い換えれば、画素900-1の転送トランジスタ902から素子分離部905-1までの距離と、画素900-2の転送トランジスタ902から素子分離部905-2までの距離は等しい。同様に、画素900-1の転送トランジスタ903から素子分離部905-1までの距離と、画素900-2の転送トランジスタ903から素子分離部905-2までの距離は等しい。
【0062】
このように各画素の受光部の面積比によらず同じ位置に転送トランジスタを配置することで、配線904を全ての画素で同様に作成することができる。一定の繰り返し単位をもって配線層を作成できるため、画素部のMOSや配線の設計が容易になる。
【0063】
(変形例2)
第一の実施形態の変形例2について
図11、
図12を用いて説明する。
【0064】
図11、
図12は、第一の実施形態の画素の断面を模式的に示した図である。
図11、12に示す画素の半導体層は、フォトダイオードである光電変換部101と、光電変換部101をPD102とPD103の2つに分割する画素分離層901を有する。
【0065】
PD102とPD103の受光部の面積比は各画素で異なるが、配線層側ではどの画素も同じ面積比になるように、イオン注入によって画素分離層901を作成する。画素分離層901は具体的には画素の導電型と反対の導電型を有する半導体領域や、絶縁体によって形成される。このような構成では、各画素の受光面の面積比によらず画素内の同じ位置にPD102の転送トランジスタ902を作ることができる。例えば
図11や
図12のように画素を二分する断面において、素子分離部によって境界を規定される各画素の端部から各転送トランジスタまでの距離を等しくすることができる。言い換えれば、各画素における転送トランジスタから該画素を分離する素子分離部までの距離が等しい。このような構成により、受光部の面積比の異なる画素同士で電荷転送の状態の違いを低減できる。
【0066】
(変形例3)
第一の実施形態の変形例3について
図13、
図14を用いて説明する。
【0067】
図13は、第一の実施形態の画素の断面を模式的に示した図であり、
図14は、本変形例の画素と転送トランジスタの平面模式図を示している。
【0068】
この例では、PD103の転送トランジスタ903は各画素の受光部の面積比によらず画素内の同じ位置にあるが、PD102の転送トランジスタ902の位置をPD102の大きさに応じて異ならせている。転送トランジスタ902の位置が画素によって異なるため、配線904の設計も画素によって変化する。この変形例に示す画素構造では、
図13に示すように、PD102とPD103の受光部の面積比と半導体層側の面積比とが一定かつ、受光部の面積比の異なる画素同士の電荷転送の状態が変わらないようにすることができる。
【0069】
図15は、第一の実施形態の画素配列全体を示している。
【0070】
図15に示すように、画素配列の一部を遮光部1501で覆い、画素配列全体のシェーディング等の補正を行うための遮光画素として使用することができる。遮光画素として使用される受光画素の受光面側にあたる方向に遮光部を形成する。画素配列については、遮光部1501で覆われているか否かにかかわらず同じ画素パターンの繰り返しである。
図15には面積比の異なる4つの画素を1組として繰り返し配置するパターンが示されている。
【0071】
このような画素配置により、遮光部1501で覆われた画素による補正計算が可能になる。
【0072】
以上第一の実施形態により、レンズのF値によらず、ダイナミックレンジを拡大した信号を作成することが可能である。
【0073】
(第二の実施形態)
本発明の別の実施形態を説明する。本実施形態では、前述の実施形態とは光電変換部の形状が異なる。
【0074】
第2の実施例の光電変換装置、画素回路構成とその動作は第一の実施例と同じであるため、重複する説明を省略し、主として第一の実施形態と異なる部分を説明する。
【0075】
図16は、第二の実施形態の画素構成の模式図である。画素100の光電変換部101がPD102とPD103からなる構成は第一の実施形態の画素構成と同様であるが、PD102の形状は四角形であり、PD102がPD103の相似形となっているため、信号処理が容易である。
【0076】
本実施例をカメラに用いることにより、第一の実施形態と同様に、レンズのF値によらず、ダイナミックレンジを拡大した信号を作成することができる。
【0077】
(第三の実施形態)
本実施形態について
図17~19を用いて説明する。
【0078】
本実施形態では、前述の実施形態とは光電変換部の形状が異なり、画素を位相差AF用信号の画素としても使用できる。第三の実施形態の光電変換装置、画素回路構成とその動作は第一の実施例と同じであるため、重複する説明を省略し、主として第一の実施形態と異なる部分を説明する。
【0079】
図17は、第三の実施形態の画素の平面構成の模式図である。
【0080】
画素100の光電変換部101に含まれるPD102は第一の実施形態の画素構成と同様であるが、PD103がPD1701、1702の2つに分割されている。
【0081】
図18は、第三の実施形態の画素回路構成の等価回路を示している。
【0082】
PD103がPD1701、1702の2つに分割されているため、PD1701、PD1702のそれぞれのカソードに転送トランジスタ201、電荷排出用スイッチ205を接続している。信号読み出し動作は第一の実施形態と同様であり、PD102の電荷の読み出し、PD1701の電荷の読み出し、PD1702の電荷の読み出しを順次行う。
【0083】
図19は、第三の実施形態の画素と転送トランジスタの平面模式図を示している。配線904は省略している。
【0084】
本実施例においてはPD102に転送トランジスタ1901を接続し、PD1701に転送トランジスタ1902を、PD1702に転送トランジスタ1903を接続している。
図19では、転送トランジスタ1901はPD102の面積に応じて位置を変更しているが、面積によらず一定の場所に形成してもよい。
【0085】
本実施例により、実施例1と同様に、レンズのF値によらずダイナミックレンジを拡大した信号を作成することができるとともに、PD1701、PD1702の信号を分割して取得することにより、画素を位相差AF用画素としても使用できる。
【0086】
(第四の実施形態)
本実施例について図面を用いて説明する。
【0087】
本実施例においては前述の実施形態とは光電変換部の形状が異なり、位相差AF用信号のダイナミックレンジを拡大できる。第四の実施形態の光電変換装置、画素回路構成とその動作は第1の実施例と同じであるため、重複する説明を省略し、主として第一の実施形態と異なる部分を説明する。
【0088】
図20は、第四の実施形態の画素構成を示している。PD102が画素2001、2002の2つに分割され、PD103は第三実施形態と同様に2003、2004の2つに分割されている。
【0089】
図21は、第四実施形態の画素回路構成を示している。PD102が画素2001、2002の2つに分割されているため、転送トランジスタ201が画素2001、2002のそれぞれに接続されている。画素2003、2004については第三実施形態と同様である。
【0090】
信号読み出し動作は第一実施形態との変更はなく、画素2001の読み出し、画素2002の読み出し、画素2003の読み出し、画素2004の読み出しを順次行う。
【0091】
図22は、第四の実施形態の画素と転送トランジスタの平面模式図を示している。配線904は省略している。
【0092】
本実施例においては、画素2001に転送トランジスタ2201、画素2002に転送トランジスタ2202、画素2003に転送トランジスタ2203、画素2004に転送トランジスタ2204が接続されている。
図20では転送トランジスタ2201、2202の位置は画素2001、2002の面積に応じて変更されているが、面積によらず一定の場所に形成してもよい。
【0093】
本実施例により、実施例1と同様に、レンズのF値によらずダイナミックレンジを拡大した信号を作成することができるとともに、画素を位相差AF用画素としても使用でき、位相差AF用信号のダイナミックレンジも拡大できる。
【0094】
(第五の実施形態)
本実施例について図面を用いて説明する。
【0095】
本実施例においては前述の実施形態とは光電変換部の形状が異なり、位相差AF用信号の瞳分割方向を選択できる。第五の実施形態の光電変換装置、画素回路構成とその動作は第1の実施例と同じであるため、重複する説明を省略し、主として第一の実施形態と異なる部分を説明する。
【0096】
図23は、第四の実施形態の画素構成を示している。PD102が画素2301、2302、2303、2304の4つに分割され、PD103は第三実施形態と同様に2305、2306、2307、2308の4つに分割されている。
【0097】
位相差検出による測距では瞳像を横(水平)方向に分離して位相差を検出する方式(縦線検出)と瞳像を縦(垂直)方向に分離して位相差を検出する方式(横線検出)がある。一般に縦線検出が採用される場合が多いが、横線を多く含む被写体に対しては縦線検出では測距が困難な場合がある。
【0098】
本実施形態では画素100を縦線検出と横線検出を切り替えることが可能な構造とする。PD102、PD103の4個の光電変換部のうちの2個を用いることで縦線検出あるいは横線検出を行うことができる。縦線検出と横線検出の両方、あるいはいずれか一方を選択して行うことができる。
【0099】
本実施例により、実施例1と同様に、レンズのF値によらずダイナミックレンジを拡大した信号を作成することができるとともに、画素を瞳分割方向の選択が可能な位相差AF用画素としても使用できる。
【0100】
以上、第1の実施形態から第5の実施形態まで
図1の光電変換装置の概略図を用いて説明したが、本発明は
図24に示したように回路を2つ以上の半導体基板に配置して、それらの基板を貼り合わせた積層構造にしてもよい。
図24に示した積層構造の光電変換装置は第1基板170と第2基板171を有する。
【0101】
なお、
図24に示した積層構造の光電変換装置は
図1に示した概略図を2枚の基板に分けた場合の一例である。この例では第1基板に画素領域61とタイミングジェネレーター62が配置される。第2基板171には列信号処理回路63と演算処理部64が配置されている。
図24の積層構造の光電変換装置は一例であって、本発明を限定するものではない。たとえば、第1基板に配されていたタイミングジェネレーター62は第2基板に配されるようにしても良い。また、
図24の例では第1基板の画素と第2基板の列信号処理回路63は画素の列ごとに電気的に接続されている。他には、例えば1つの画素毎に第2基板の信号処理回路が接続されてもよい。
図24では2枚の基板からなる積層構造で説明したが、例えばさらに回路を分割するか、回路や機能を追加するなどして3枚以上の基板からなる積層構造にしてもよい。
【0102】
(第六の実施形態)
本実施形態による光電変換システムについて、
図25を用いて説明する。
図25は、本実施形態による光電変換システムの概略構成を示すブロック図である。
【0103】
上記第1~第5実施形態で述べた光電変換装置は、種々の光電変換システムに適用可能である。適用可能な光電変換システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、光電変換システムに含まれる。
図25には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0104】
図25に例示した光電変換システムは、光電変換装置の一例である撮像装置1004、被写体像を撮像装置1004に結像させるレンズ1002を有する。さらに、レンズ1002を通過する光量を可変にするための絞り1003、レンズ1002の保護のためのバリア1001を有する。レンズ1002及び絞り1003は、撮像装置1004に光を集光する光学系である。撮像装置1004は、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置であって、レンズ1002により結像された光学像を電気信号に変換する。
【0105】
光電変換システムは、また、撮像装置1004より出力される出力信号の処理を行うことで画像を生成する画像生成部である信号処理部1007を有する。信号処理部1007は、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部1007は、撮像装置1004が設けられた半導体基板に形成されていてもよいし、撮像装置1004とは別の半導体基板に形成されていてもよい。また、撮像装置1004と信号処理部1007とが同一の半導体基板に形成されていてもよい。
【0106】
光電変換システムは、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部1010、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)1013を有する。更に光電変換システムは、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体1012、記録媒体1012に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)1011を有する。なお、記録媒体1012は、光電変換システムに内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0107】
更に光電変換システムは、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部1009、撮像装置1004と信号処理部1007に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部1008を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システムは少なくとも撮像装置1004と、撮像装置1004から出力された出力信号を処理する信号処理部1007とを有すればよい。
【0108】
撮像装置1004は、撮像信号を信号処理部1007に出力する。信号処理部1007は、撮像装置1004から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部1007は、撮像信号を用いて、画像を生成する。
【0109】
このように、本実施形態によれば、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置(撮像装置)を適用した光電変換システムを実現することができる。
【0110】
(第七の実施形態)
本実施形態の光電変換システム及び移動体について、
図26を用いて説明する。
図26は、本実施形態の光電変換システム及び移動体の構成を示す図である。
【0111】
図26(a)は、車載カメラに関する光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上記のいずれかの実施形態に記載の光電変換装置(撮像装置)である。光電変換システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、光電変換システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、光電変換システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0112】
光電変換システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御部である制御ECU330が接続されている。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0113】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を光電変換システム300で撮像する。
図26(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の光電変換システムを示した。車両情報取得装置320が、光電変換システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0114】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、光電変換システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0115】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0116】
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態に含まれる。
【0117】
また、上記第6実施形態、第7実施形態に示した光電変換システムは、光電変換装置を適用しうる光電変換システム例を示したものであって、本発明の光電変換装置を適用可能な光電変換システムは
図25及び
図26に示した構成に限定されるものではない。
【0118】
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0119】
100 画素
102 第一の光電変換部
103 第二の光電変換部