(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
G03G9/087
G03G9/087 325
G03G9/087 331
(21)【出願番号】P 2020177941
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】下田 卓
(72)【発明者】
【氏名】見目 敬
(72)【発明者】
【氏名】大久保 顕治
(72)【発明者】
【氏名】河村 政志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-250294(JP,A)
【文献】特開2017-015916(JP,A)
【文献】特開2015-096949(JP,A)
【文献】特開2017-203889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と樹脂Aと樹脂Bを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記樹脂Aは、高分子部位と前記高分子部位に結合している下記式(1)で表される1価の基とを有し、前記樹脂Bは、結晶性ポリエステル部位を含有することを特徴とするトナー。
【化1】
(式(1)中、L
1
は-NH-、-NHR
6-を表し、R
1~R
3は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上のアルキル基、炭素数1以上のアルコキシ基、炭素数6以上のアリール基またはヒドロキシ基を表し
、R
6
はそれぞれ炭素数が4以下であるアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基である。)
【請求項2】
前記R
1~R
3のうち、少なくとも1つが、アルコキシ基又はヒドロキシ基を表す、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記樹脂Bの含有量が、前記結着樹脂100質量部に対し、2.0質量部以上50.0質量部以下である請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記樹脂Aのケイ素濃度が0.02質量%以上10.0質量%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
前記トナー中の前記樹脂Aの含有量aと、前記樹脂Bの含有量bの比率(a/b)が0.1以上10.0以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項6】
前記樹脂Aの重量平均分子量が、3000以上100000以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナー粒子の全樹脂中における前記樹脂Aの含有量が、0.5質量%以上20.0質量%以下である請求項1~6のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項8】
前記トナー粒子の全樹脂中における前記結着樹脂の含有量が、50.0質量%以上である請求項1~7のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項9】
前記結着樹脂はスチレンユニット、アクリルユニット、およびメタクリルユニットからなる群より選択される少なくとも一種のユニットを含有し、前記樹脂Aにおける高分子部位が、スチレンユニット、アクリルユニット、およびメタクリルユニットからなる群より選択される少なくとも一種のユニットを含有する請求項1~
8のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項10】
前記結着樹脂はポリエステル部位を含有し、前記樹脂Aにおける高分子部位が、ポリエステル部位を含有する請求項1~
8のいずれか1項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法などの乾式静電複写方法によって形成される静電潜像を現像してトナー画像を形成するために用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンター、ファックスなどに用いられる乾式静電複写方式の電子写真においては、省エネルギー化が大きな技術的課題として考えられており、画像定着装置にかかる熱量の大幅な削減が望まれている。したがって、トナーにおいては、より少ないエネルギーでの画像定着が可能な、いわゆる「低温定着性」のニーズが高まっている。
トナーの低温定着性を改善するための一般的な方法としては、使用する結着樹脂の軟化を目的として、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くする方法や結着樹脂の分子量を小さくする方法が挙げられる。しかしながら、単に結着樹脂のTgを低くさせるだけ、あるいは分子量を小さくするだけでは、トナーの保存安定性の低下や、定着時の離型性不足による定着部材へのオフセットの発生などが起こる。
そこで、結着樹脂のTgを低下させずにトナーの定着性を向上させる方法として、特許文献1では、ビニルモノマーと、不飽和二重結合及びアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤とが共重合されたビニル系樹脂を結着樹脂として含有するトナーが提案されている。また、特許文献2では、結晶性を有するポリエステル樹脂を結着樹脂に添加したトナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-239573号公報
【文献】特開2004-191927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたトナーは、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤が架橋する際に生成されるシロキサン結合によるシリコーン樹脂特有の離型効果により優れた耐定着オフセット性及び感光体からの転写性が得られる。しかしながら、特許文献1に記載されたトナーは低温定着性が十分でないという課題があった。
特許文献2に記載されたトナーは、低温定着性は良好なものの、得られた定着画像は時間の経過により結晶性ポリエステル部位が結晶成長することで、定着画像の耐擦過性が低下するという課題があった。
また、特許文献1に記載されたトナーに、特許文献2に記載された結晶性ポリエステルをそのまま含有させても、時間の経過により結晶性ポリエステル部位が結晶成長し、定着画像の耐擦過性は低下することが分かった。
これら課題に鑑み、本発明は、優れた低温定着性を有し、時間の経過によっても耐擦過性を有する定着画像が得られるトナーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、結着樹脂と樹脂Aと樹脂Bを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記樹脂Aは、高分子部位と前記高分子部位に結合している下記式(1)で表される1価の基とを有し、前記樹脂Bは、結晶性ポリエステル部位を含有することを特徴とするトナーである。
【0006】
【化1】
(式(1)中、L
1
は-NH-、-NHR
6-を表し、R
1~R
3は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上のアルキル基、炭素数1以上のアルコキシ基、炭素数6以上のアリール基またはヒドロキシ基を表し
、R
6
はそれぞれ炭素数が4以下であるアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた低温定着性を有し、時間の経過によっても耐擦過性を有する定着画像が得られるトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明のトナーを具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
【0009】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0010】
本発明のトナーは、結着樹脂と樹脂Aと樹脂Bを含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記樹脂Aは、高分子部位と前記高分子部位に結合している下記式(1)で表される1価の基とを有し、前記樹脂Bは、結晶性ポリエステル部位を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明者らは、上記のような構成のトナーを採用することで、優れた低温定着性を有し、時間の経過によっても耐擦過性を有する定着画像が得られることを見出した。
【0012】
この理由については、以下のように推察している。
【0013】
結晶性ポリエステル部位が含有されたトナーは、定着時に前記結晶性ポリエステルの融点以上にトナーが加熱されることで、溶融した前記ポリエステルが結着樹脂を相溶することで、前記トナーの粘度が低下しながら紙へと定着される。
【0014】
結晶性ポリエステル部位が含有された従来のトナーにより定着された画像は、プリンター本体外に排紙される過程で、定着温度から室温付近へと温度が急激に低下していく。この間の時間が短いために、前記ポリエステルは、核形成し結着樹脂と相分離しながら結晶成長していくよりも、結着樹脂に相溶した状態のまま存在しやすくなる。
【0015】
これら相溶した状態のまま存在する前記ポリエステルは、定着画像内における運動性が高いために、時間の経過により、定着画像中において結晶化した状態で存在するポリエステルに配列して、結着樹脂と相分離した状態で存在することとなる。このようにして大きく成長した結晶性ポリエステルは、結晶の成長に伴い、結着樹脂との界面に歪みを有した状態となりやすい。このために、前記界面部分は外部からの応力に対し相対的に弱い部分となり、定着画像に擦過力(ずり応力)が加わった際、前記界面部分に沿って定着画像が破壊され、定着画像が紙から剥がれやすくなる。
【0016】
これに対し、本発明のトナーは樹脂Aを含有する。前記樹脂Aのカルボニル基と前記樹脂Bに含有される結晶性ポリエステルのエステル基部位は親和性が高いため、定着後のトナーにおいて、樹脂Aと樹脂Bは近い位置に存在しやすい。すると、樹脂A中のシリル基を核としてポリエステルの不均一核形成が促進され、ポリエステルの結晶核が形成されやすくなると考えられる。このため、樹脂Aが存在しない場合よりも樹脂Bの結晶核は多く形成されやすくなり、定着画像中において、樹脂Bの結晶は、より微分散された状態で存在し、大きく結晶成長することが低減されることとなる。本発明の樹脂AにおけるL1が、炭素数4以下のアルキレン基、-O-、-OR5-、-NH-、または-NHR6-である場合、樹脂Aのカルボニル基とシラン部位の距離が十分近いため、上述の効果がより顕著になると考えられる。
【0017】
一方、結着樹脂は高分子鎖を有する。一般的に、分子鎖が長い高分子鎖同士は相互に絡み合いやすい。このため、前記樹脂A中に存在するカルボニル基は、前記樹脂Bのエステル基部位に対する親和性が高い一方、樹脂Aにおける高分子部位は結着樹脂の高分子鎖と絡み合う形態を取りやすい。このため、前記シリル基を起点として形成された樹脂Bの結晶核において、樹脂Aの高分子部位は結着樹脂と絡み合った状態で存在しやすいと考えられ、前記樹脂Aは樹脂Bと結着樹脂との界面領域に存在すると考えられる。
【0018】
ここで、定着画像に擦過力(ずり応力)が加わった際、前記樹脂Aの高分子部位と結着樹脂との絡み合い効果によって、結着樹脂と樹脂Bとの界面接着性が向上するため、前記界面に加わる応力が緩和され、定着画像は耐擦過性が向上すると考えられる。
【0019】
以上のように、本発明のトナーは、結着樹脂と、式(1)で示される特定の構造を有する樹脂A、結晶性ポリエステル部位を含有する樹脂Bを含有することで、低温定着性に優れ、時間の経過によっても耐擦過性を有する定着画像を得ることができる。
【0020】
以下に本発明の樹脂Aについて、詳細に説明する。
【0021】
本発明の樹脂Aは、式(1)で表される樹脂を含有することが好ましく、式(1)で表される樹脂であることがより好ましい。
【0022】
【化2】
(式(1)中、L
1は炭素数4以下のアルキレン基、-O-、-OR
5-、-NH-、-NHR
6-を表し、R
1~R
3は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上のアルキル基、炭素数1以上のアルコキシ基、炭素数6以上のアリール基またはヒドロキシ基を表し、R
5、R
6はそれぞれ炭素数が4以下であるアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基である。)
【0023】
前記樹脂A中のケイ素原子の含有量(ケイ素濃度)は、0.02質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
前記樹脂A中のケイ素原子の含有量が0.02質量%以上であれば、樹脂A中のシリル基が結晶核となりやすい。
【0025】
一方、前記樹脂A中のケイ素原子の含有量が10.0質量%以下であれば、樹脂A中の高分子部位(例えば、ポリマー部位)が結着樹脂により配向しやすい。また、前記ケイ素原子の含有量が5.0質量%以下であれば、前記高分子部位が結着樹脂に対してさらに配向しやすくなる。樹脂A中のケイ素原子の含有量の測定方法は後述する。
【0026】
前記式(1)中のL1は炭素数4以下のアルキレン基、-O-、-OR5-、-NH-、-NHR6-である場合、上述のように樹脂A中のカルボニル基とシリル基との距離が近くなるために、樹脂Bに含有される結晶性ポリエステル部位の不均一核形成が促進される。この中でも、L1は-O-、-OR5-、-NH-、-NHR6-である場合、これらの基は電子求引性基であるため、樹脂Bに含有される結晶性ポリエステル部位のエステル基部位を引き付ける作用がより強まるため、好ましい。
【0027】
また、R5、R6はそれぞれ炭素数が4以下であるアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基である。前記アルキレン基の炭素数は、1以上3以下であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。前記ヒドロキシアルキレン基の炭素数は、1以上3以下であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。この中でも、R5、R6が電子求引性基であるヒドロキシアルキレン基の場合、樹脂Bに含有される結晶性ポリエステルのエステル基部位を引き付ける作用がさらに強まるため、さらに好ましい。
【0028】
前記式(1)中のR1~R3は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上のアルキル基、炭素数1以上のアルコキシ基、炭素数6以上のアリール基またはヒドロキシ基である。
【0029】
前記アルキル基の炭素数は、1以上12以下であることが好ましく、1以上4以下であることがより好ましく、1以上3以下であることがさらに好ましい。
【0030】
前記アルコキシ基の炭素数は、1以上6以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましく、1または2であることがさらに好ましい。
【0031】
前記アリール基の炭素数は、6以上12以下であることが好ましく、6以上10以下であることがより好ましい。
【0032】
これらの中でも、式(1)中のR1~R3のうち、少なくとも一つはアルコキシ基又はヒドロキシ基であることが好ましい。さらには、式(1)中のR1~R3は、それぞれ独立してアルコキシ基又はヒドロキシ基であることがより好ましい。
【0033】
これらアルコキシ基又はヒドロキシ基は、樹脂Bのエステル基部位に対する親和性がより高いために、樹脂Bに含有される結晶性ポリエステルをさらに引き寄せやすい。このために、前述の不均一核形成反応がより促進されやすい。
【0034】
式(1)中のR1~R3のうち、少なくとも一つをヒドロキシ基とするためには、例えば、R1~R3の一つ以上がアルコキシ基である樹脂を加水分解し、アルコキシ基をヒドロキシ基に変換してもよい。
【0035】
加水分解の方法は、どのような方法でも構わないが、例えば以下の手法がある。
【0036】
式(1)中のR1~R3の一つ以上がアルコキシ基である樹脂を適当な溶媒(重合性単量体でも構わない)に溶解、又は懸濁し、酸やアルカリを用いてpHを酸性に調整、混合し、加水分解させる。
【0037】
また、トナー粒子製造中に加水分解を起こさせても構わない。
【0038】
樹脂Aは高分子部位を有する。前記高分子部位はポリマー構造を有していれば、特に限定されるものではない。前記高分子部位は、前記結着樹脂の分子鎖と絡み合い構造を取りやすいため、定着画像に擦過力(ずり応力)が加わった際、樹脂Bと結着樹脂との界面部における応力緩和作用が増大し、耐擦過性が向上する。
【0039】
樹脂A中の高分子部位の具体例として、ポリエステル部位、スチレンアクリル酸共重合体などのビニル重合体部位、ポリウレタン部位、ポリカーボネート部位、フェノール樹脂部位、ポリオレフィン部位などが挙げられる。
【0040】
これらの中でも、前記高分子部位が、スチレンアクリル酸共重合体部位、又はポリエステル部位を含有することが好ましい。
【0041】
前記高分子部位が、スチレンアクリル酸共重合体部位を含有することとは、前記高分子部位がスチレンアクリル酸共重合体のみからなっていてもよいし、スチレンアクリル酸共重合体と他の重合体とのブロック共重合体やグラフト共重合体、又はそれらの混合物でもよい。ここで、スチレンアクリル酸共重合体とは、スチレン系単量体(スチレンユニット)と、アクリル酸系単量体(アクリルユニット)及びメタクリル酸系単量体(メタクリルユニット)からなる群より選ばれる少なくとも一の単量体(ユニット)との共重合体を意味する。
【0042】
スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。スチレン系単量体は一種類で用いることもできるが、これらの中から選ばれる二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0043】
アクリル酸系単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレートのようなアクリル酸アルキルエステル類;ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどのアクリル酸ジエステル類;アクリル酸などが挙げられる。
【0044】
メタクリル酸系単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレートのようなメタクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸などが挙げられる。
【0045】
アクリル酸系単量体、及びメタクリル酸系単量体は一種類で用いることもできるが、これらの中から選ばれる二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0046】
スチレンアクリル酸共重合体部位は、スチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、又はスチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体を含むことが好ましい。
【0047】
スチレンアクリル酸共重合体を形成する全単量体中、スチレン系単量体の割合は、45質量%以上80質量%以下であることが好ましい。一方、アクリル酸系単量体及びメタクリル酸系単量体からなる群より選ばれる少なくとも一の単量体(例えば、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル)の割合は、20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0048】
また、前記高分子部位が、ポリエステル部位を含有する場合の実施形態について説明するが、これらに限定されるわけではない。
【0049】
ポリエステル部位は、主鎖の繰り返し単位中にエステル結合(-CO-O-)を有する高分子部位をいう。例えば、多価アルコール(アルコール成分)と多価カルボン酸(カルボン酸成分)との縮重合体構造が挙げられる。
【0050】
多価カルボン酸としてはシュウ酸、グルタル酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0051】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0052】
前記式(1)における高分子部位と、結着樹脂とが同種の構造である場合は、これら高分子部位と、結着樹脂との親和性がより強くなる。
【0053】
すなわち、結着樹脂が、スチレンアクリル酸共重合体を含有する樹脂であり、前記高分子部位が、スチレンアクリル酸共重合体を含有する場合、又は、結着樹脂が、ポリエステル部位を含有する樹脂であり、前記高分子部位が、ポリエステル部位を含有する場合、上述の親和性がさらに強くなる。このため、定着画像に擦過力(ずり応力)が加わった際、樹脂Bと結着樹脂との界面部における応力緩和作用がさらに増大し、耐擦過性が向上する。
【0054】
式(1)の構造を有する樹脂は、高分子部位(例えば、ポリマー部位)中のカルボキシル基とアミノシランを反応させる方法、前記高分子樹脂中の水酸基とカルボキシシランを反応させる方法、前記高分子樹脂中の水酸基とイソシアネートシランを反応させる方法、前記高分子樹脂中のイソシアネート基とアミノシランを反応させる方法などで形成することができる。
【0055】
アミノシランとしては、限定はされないが、アミノメチルシリコン、アミノエチルシリコン、3-アミノプロピルシリコン、4-アミノブチルシリコン、アミノメチルトリメチルシラン、アミノエチルトリメチルシラン、3-アミノプロピルトリメチルシラン、4-アミノブチルトリメチルシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノエチルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、4-アミノブチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルジエトキシメチルシラン、アミノエチルジエトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、4-アミノブチルジエトキシメチルシラン、アミノメチルジメトキシエチルシラン、アミノエチルジメトキシエチルシラン、3-アミノプロピルジメトキシエチルシラン、4-アミノブチルジメトキシエチルシラン、アミノメチルジエトキシエチルシラン、アミノエチルジエトキシエチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシエチルシラン、4-アミノブチルジエトキシエチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)-プロピル]シランなどが挙げられる。
【0056】
カルボキシシランとしては、3-カルボキシプロピルトリメトキシシラン、β-カルボキシエチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(β-メトキシエトキシ)シラン、N-β-(カルボキシメチル)アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどがあげられる。
【0057】
イソシアネートシランとしては、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートエチルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルジメチルメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルジメチルエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルジメトキシメチルシラン、3-イソシアネートプロピルジエトキシメチルシランなどが挙げられる。
【0058】
前記樹脂Aの重量平均分子量(Mw)は、3000以上100000以下であることが好ましく、5000以上30000以下であることがより好ましい。
【0059】
重量平均分子量が3000以上であれば、樹脂Aに含有される式(1)の構造に結合している高分子部位と、結着樹脂の分子鎖との親和性が十分となる。この場合、定着画像に擦過力(ずり応力)が加わった際、樹脂Bと結着樹脂との界面部における応力緩和作用により、定着画像は耐擦過性を有する。
【0060】
一方、重量平均分子量が100000以下であれば、樹脂Bに含有される結晶性ポリエステルの結晶成長を妨げることなく、樹脂Bの結晶化度が向上しやすくなる。
重量平均分子量(Mw)の測定方法は後述する。
【0061】
前記トナー粒子の全樹脂中における前記樹脂Aの含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、3.0質量%以上であることがさらに好ましい。前記樹脂Aの含有量が前記範囲である場合、定着画像における樹脂Bの不均一核形成が十分に行われ、樹脂Bが微分散することで良好な耐擦過性を有する。また、前記含有量は、20.0質量%以下であることが好ましい。前記含有量が20.0質量%以下であれば、樹脂Bによる結着樹脂の粘度低下作用が十分となり、トナーは良好な低温定着性を有する。
【0062】
前記トナー粒子は、結着樹脂を含有する。結着樹脂は、トナー粒子中の前記樹脂Aおよび、前記樹脂B以外の樹脂成分である。トナー粒子の全樹脂中の前記結着樹脂の含有量は、50.0質量%以上であると定着性と耐擦過性が良好な定着画像を得ることができるため好ましい。
【0063】
前記結着樹脂は特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0064】
トナーの現像特性及び耐久性の観点から、結着樹脂は、スチレンアクリル酸共重合体を含有する樹脂、又は、ポリエステル部位を含有する樹脂であることが好ましい。
【0065】
スチレンアクリル酸共重合体を含有する樹脂としては、スチレンアクリル酸共重合体を有していれば、スチレンアクリル酸共重合体のみからなる樹脂であってもよいし、スチレンアクリル酸共重合体と他の重合体とのブロック共重合体やグラフト共重合体、又はそれらの混合物であってもよい。
【0066】
ここで、スチレンアクリル酸共重合体とは、スチレン系単量体と、アクリル酸系単量体及びメタクリル酸系単量体からなる群より選ばれる少なくとも一の単量体との共重合体を意味する。
【0067】
前記スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。スチレン系単量体は一種類で用いることもできるが、これらの中から選ばれる二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0068】
アクリル酸系単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレートのようなアクリル酸アルキルエステル類;ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどのアクリル酸ジエステル類;アクリル酸などが挙げられる。
【0069】
メタクリル酸系単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレートのようなメタクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸などが挙げられる。
【0070】
アクリル酸系単量体、及びメタクリル酸系単量体は一種類で用いることもできるが、これらの中から選ばれる二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0071】
スチレンアクリル酸共重合体を含有する樹脂は、スチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、又はスチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体を含むことが好ましい。
【0072】
スチレンアクリル酸共重合体を形成する全単量体中、スチレン系単量体の割合は、45質量%以上80質量%以下であることが好ましい。一方、アクリル酸系単量体及びメタクリル酸系単量体からなる群より選ばれる少なくとも一の単量体(例えば、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル)の割合は、20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0073】
ポリエステル部位を含有する樹脂としては、下記に挙げるカルボン酸成分とアルコール成分との縮重合物を用いることができる。カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及び、トリメリット酸が挙げられる。アルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、及び、ペンタエリスリトールが挙げられる。
【0074】
また、前記ポリエステル部位は、ウレア基を含有したポリエステルであってもよい。ポリエステルとしては末端などのカルボキシ基はキャップしないことが好ましい。
【0075】
結着樹脂中のスチレンアクリル酸共重合体を含有する樹脂、又は、ポリエステル部位を含有する樹脂の含有量は、50.0質量%以上100.0質量%以下であることが好ましく、80.0質量%以上100.0質量%以下であることがより好ましい。含有量が前記範囲であると、以下に示す樹脂Bの結着樹脂に対する粘度低下効果が十分となり、良好な低温定着性を示す。これら結着樹脂は単独又は混合して使用できる。
【0076】
結着樹脂には、架橋剤が含有されていてもよい。架橋剤が含有されることにより、トナーの弾性を高めることができる。トナーの弾性が十分に高ければ、樹脂Bによる結着樹脂の粘度低下効果が大き過ぎる場合であっても、粘度低下したトナーが定着ローラーにつきにくくなる効果が期待でき、低温定着性がより高まると考えられる。
【0077】
架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。
【0078】
例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が挙げられる。
【0079】
これらは、単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。架橋剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上15.000質量部以下であることが好ましい。
【0080】
樹脂Bは、結晶性ポリエステル部位を含有する樹脂である。ここで、結晶性ポリエステル部位を含有する樹脂における「結晶性」とは、示差走査熱量計(DSC)による測定において、明確な吸熱ピークを有するポリエステル部位を含有する樹脂のことを意味する。
【0081】
また、明確な吸熱ピークを有するとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)による測定において、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が8℃以内であることを意味する。
【0082】
前記結晶性ポリエステル部位を構成する化合物として、炭素数2以上16以下の脂肪族ジオールと炭素数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸とを縮重合させて得られる重合物、炭素数2以上16以下の脂肪族ジオールと炭素数8以上16以下の芳香族ジカルボン酸とを縮重合させて得られる重合物、及び、芳香族ジオールと炭素数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸とを縮重合させて得られる重合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合物が挙げられる。
【0083】
炭素数2以上16以下の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオールなどが挙げられる。
【0084】
炭素数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸が挙げられる。また、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。
【0085】
炭素数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸は、炭素数2以上16以下の不飽和脂肪族
ジカルボン酸であってもよく、フマル酸、マレイン酸等を例示することができる。
【0086】
芳香族ジオールとしては、ビスフェノールA、またはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオールが挙げられる。
【0087】
炭素数8以上16以下の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレ
フタル酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、並びにそれらのアルキルエステルが挙げられる。前記アルキルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、及び、イソプロピル基などが挙げられる。
【0088】
また、結晶性ポリエステル部位を含有する樹脂は、その成分が前述のポリエステル構造を有する重合物のみから構成される樹脂以外にも、前記ポリエステル構成を有する成分と他の成分からなるハイブリッドポリマー(ブロック共重合体、グラフト共重合体)も含む。但し、後者の場合には、ハイブリッドポリマーを構成する樹脂における、前記結晶性ポリエステル部位を含有する樹脂の構成成分は50質量%以上である。
【0089】
結晶性ポリエステル部位を含有する樹脂のジオール成分の炭素数、およびジカルボン酸の炭素数については、例えばトナー粒子を熱分解GC/MSで分析することによって求めることができる。
【0090】
前記樹脂Bの融点は、20℃以上90℃以下であることが好ましく、40℃以上70℃以下であることが、トナーの保存安定性と低温定着性のバランスの観点からより好ましく、さらに好ましくは50℃以上65℃以下である。樹脂Bの融点が40℃以上であると、トナーの保存安定性が増し、90℃以下であると、十分な低温定着性を得ることができる。
【0091】
本発明において、樹脂Bの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、2.0質量部以上であることが好ましく、10.0質量部以上であることがより好ましい。樹脂Bの含有量が2.0質量部以上であれば、結着樹脂に対する粘度低下効果が良好となり、低温定着性を示す。樹脂Bの含有量が10.0質量部以上であれば、前記効果がさらに良好となり、優れた低温定着性を示す。一方、樹脂Bの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、50.0質量部以下であることが好ましく、30.0質量部以下であることがより好ましい。樹脂Bの含有量は50.0質量部以下であれば、定着画像は良好な耐擦過性を示し、30.0質量部以下であれば、定着画像はより良好な耐擦過性を示す。
【0092】
前記樹脂Bの重量平均分子量(Mw)は、2000以上50000以下であることが好ましく、5000以上30000以下であることがより好ましい。樹脂Bの重量平均分子量が2000以上であれば、トナー粒子内における樹脂Bの結晶化度が向上し、低温定着性を有することができる。一方、重量平均分子量が50000以下であれば、定着画像内において、樹脂Aのシリル基を核とする結晶成長が進行しやすく、定着画像の耐擦過性を有することができる。樹脂Bの重量平均分子量(Mw)の測定方法は後述する。
【0093】
トナー中の樹脂Aの含有量をa質量%とし、トナー中の樹脂Bの含有量をb質量%としたとき、前記樹脂Aの前記樹脂Bに対する比(a/b)が、0.1以上10.0以下であることが好ましく、0.1以上6.0以下であることがより好ましい。(a/b)が上記範囲であれば、樹脂Bの不均一核形成反応が生じやすくなり、樹脂Bが定着画像中に微分散しやすくなる。(a/b)の算出方法は後述する。
【0094】
前記トナー粒子は、紙との離型性を向上させるために、必要に応じてワックスを含有してもよい。前記ワックスは、特に制限はなく、以下のワックスを例示することができる。
【0095】
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又はそれらのブロック共重合物;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類が挙げられる。前記ワックスは、1種を又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0096】
これらのうち、炭化水素系ワックスを含有することが好ましい。
【0097】
ワックスの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0098】
トナー粒子は着色剤を含有してもよい。前記着色剤は特に制限はなく、例えば以下に示す公知のものを使用することができる。
【0099】
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。
【0100】
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180。
【0101】
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。
【0102】
パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
【0103】
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
【0104】
C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254。
【0105】
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
【0106】
C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
【0107】
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
【0108】
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
【0109】
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。必要により、着色剤には表面処理を施してもよい。
【0110】
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
【0111】
トナー粒子は荷電制御剤を含有してもよい。前記荷電制御剤としては、公知のものが使用できる。特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
【0112】
荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
【0113】
有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、又はエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーンが挙げられる。
【0114】
一方、トナー粒子を正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
【0115】
ニグロシン及び脂肪酸金属塩のようなによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
【0116】
これら荷電制御剤は単独で又は2種類以上組み合わせて含有することができる。これらの荷電制御剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0117】
トナー粒子は、そのままトナーとして用いてもよいが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、いわゆる外添剤である流動化剤、クリーニング助剤などを添加してトナーとしてもよい。
【0118】
外添剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0119】
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていてもよい。外添剤のBET比表面積は、10m2/g以上450m2/g以下であることが好ましい。
【0120】
BET比表面積は、BET法(好ましくはBET多点法)に従って、動的定圧法による低温ガス吸着法により求めることができる。例えば、比表面積測定装置(商品名:ジェミニ2375 Ver.5.0、(株)島津製作所製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することにより、BET比表面積(m2/g)を算出することができる。
【0121】
これらの種々の外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0122】
トナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
【0123】
キャリアとしては、例えば、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金など、公知の材料からなる磁性体を用いることができる。これらの中ではフェライトを用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性体の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粒子を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
【0124】
キャリアとしては、体積平均粒径が15μm以上100μm以下のものが好ましく、25μm以上80μm以下のものがより好ましい。
【0125】
トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができる。例えば、混練粉砕法といった乾式製造法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法を好ましく用いることができる。さらに、湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができる。
【0126】
例えば、混練粉砕法によりトナー粒子を製造する場合、結着樹脂、樹脂A、樹脂B及びワックスと、必要に応じて、着色剤、荷電制御剤、及びその他の添加剤をヘンシェルミキサ、ボールミルなどの混合機により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練して各種材料を分散又は溶解し、冷却固化工程、粉砕工程、分級工程、必要に応じて表面処理工程を経てトナー粒子を得る。
【0127】
粉砕工程では、機械衝撃式、ジェット式などの公知の粉砕装置を用いるとよい。また、分級工程及び表面処理工程の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0128】
次に湿式製造法である懸濁重合法によりトナー粒子を製造する場合について述べる。
【0129】
以下に、懸濁重合法を用いたトナー粒子の製造例について工程ごとに説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0130】
(重合性単量体組成物の調製工程)
懸濁重合法においてはまず、結着樹脂を生成するための重合性単量体、樹脂A、樹脂B、ワックスと、必要に応じて、着色剤、荷電制御剤、架橋剤、重合開始剤、及びその他の添加剤をボールミル、超音波分散機のような分散機を用いてこれらを均一に溶解又は分散して重合性単量体組成物を得る。前記重合性単量体としては、前述のスチレンアクリル酸共重合体を形成する単量体として例示したものが挙げられる。
【0131】
(重合性単量体組成物の分散工程(造粒工程))
次に、重合性単量体組成物を予め用意しておいた水系媒体中に投入し、高剪断力を有する撹拌機や分散機により、重合性単量体組成物からなる液滴を所望のトナー粒子のサイズに造粒する。
【0132】
造粒工程における水系媒体は分散安定剤を含有していることが、トナー粒子の粒径制御、粒度分布のシャープ化、製造過程におけるトナー粒子の合一を抑制するために好ましい。
【0133】
分散安定剤としては、一般的に立体障害による反発力を発現させる高分子と、静電気的な反発力で分散安定化を図る難水溶性無機化合物とに大別される。
【0134】
難水溶性無機化合物の微粒子は、酸やアルカリにより溶解するため、重合後に酸やアルカリで洗浄することにより溶解させて容易に除去することができるため、好適に用いられる。
【0135】
難水溶性無機化合物の分散安定剤としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、リンのいずれかが含まれているものが好ましく用いられる。より好ましくは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、リンのいずれかが含まれていることが望まれる。具体的には、以下のものが挙げられる。
【0136】
リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイド。前記難水溶性無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用してもよいが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて前記無機分散剤粒子を生成させて用いることができる。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性のリン酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。
【0137】
分散安定剤に有機系化合物、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンを併用しても構わない。これら分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部以上20.0質量部以下使用することが好ましい。
【0138】
さらに、これら分散安定剤の微細化のため、重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下の界面活性剤を併用してもよい。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用できる。例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0139】
(重合工程)
造粒工程の後、又は造粒工程を行いながら、好ましくは50℃以上90℃以下の温度に設定して、重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体の重合を行い、トナー粒子分散液を得る。
【0140】
重合工程では容器内の温度分布が均一になる様に撹拌操作を行うことが好ましい。重合開始剤を添加する場合、任意のタイミングと所要時間で行うことができる。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温してもよく、さらに、未反応の重合性単量体、副生成物などを系外に除去するために反応後半、又は反応終了後に、一部水系媒体を蒸留操作により留去してもよい。蒸留操作は常圧又は減圧下で行うことができる。
【0141】
懸濁重合法において使用する重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5時間以上30時間以下であるものが好ましい。また、重合性単量体100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下の添加量で用いて重合反応を行うと、分子量5000から50000の間に極大を有する重合体を得ることができる。
【0142】
重合開始剤としては、一般的に油溶性開始剤が用いられる。例えば、以下のものが挙げられる。
【0143】
2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリルのようなアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシピバレート、クメンヒドロパーオキサイドのようなパーオキサイド系開始剤を挙げることができる。
【0144】
重合開始剤は必要に応じて水溶性開始剤を用いてもよく、以下のものが挙げられる。
【0145】
過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄又は過酸化水素。
【0146】
これらの重合開始剤は単独又は複数を併用して使用でき、重合性単量体の重合度を制御するために、連鎖移動剤、重合禁止剤などをさらに添加し用いることも可能である。
【0147】
(固液分離工程、洗浄工程及び乾燥工程)
トナー粒子表面に付着した分散安定剤を除去する目的で、トナー粒子分散液を酸又はアルカリで処理してもよい。
【0148】
得られたトナー粒子分散液からトナー粒子を得るための固液分離は、一般的な濾過方法で行うことができ、その後トナー粒子表面から除去しきれなかった異物を除去するため、リスラリーや洗浄水のかけ洗いなどによってさらに洗浄を行うことが好ましい。十分な洗浄が行なわれた後に、再び固液分離してトナーケーキを得る。その後、公知の乾燥手段により乾燥され、必要であれば分級により所定外の粒径を有する粒子群を分離してトナー粒子を得る。このとき分離された所定外の粒径を有する粒子群は最終的な収率を向上させるために再利用してもよい。
【0149】
(外添工程)
得られたトナー粒子に対し、必要に応じて外添剤を添加してもよい。外添工程は、外添剤とトナー粒子を、高速回転する羽根を備えた混合装置に入れ、十分混合することによって行う。
【0150】
溶解懸濁法においてトナー粒子を得る場合には、有機溶媒に、結着樹脂、樹脂A、樹脂B、及びワックス、並びに必要に応じて、着色剤、及び荷電制御剤などその他材料を均一に溶解又は分散して樹脂溶液を調製する。得られた樹脂溶液を水系媒体中に分散して造粒し、造粒された粒子中に含有される有機溶媒を除去して、所望の粒径を有するトナー粒子を得る。
【0151】
得られたトナー粒子は、前記の懸濁重合法と同様の方法で、固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程を必要に応じて行うとよい。
【0152】
溶解懸濁法における樹脂溶液に用いる有機溶媒は、結着樹脂、樹脂A、樹脂B、及びワックスなどトナー粒子の原材料となるものと相溶するものであれば特に限定されないが、溶媒除去の観点から水の沸点以下でもある程度の蒸気圧があるものが好ましい。
【0153】
例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを用いることができる。
【0154】
乳化凝集法によってトナー粒子を得る場合には、まず、結着樹脂の微粒子、樹脂Aの微粒子及びワックスの微粒子、並びに必要に応じて、着色剤及び荷電制御剤などその他材料の微粒子を、分散安定剤を含有する水系媒体中で分散混合する。水系媒体中には、界面活性剤が添加されていてもよい。その後、公知の凝集剤を添加することによって所望のトナー粒子の粒径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行う。さらに必要に応じて、熱による形状制御を行う。
【0155】
得られたトナー粒子は、懸濁重合法と同様の方法で、固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程を必要に応じて行うとよい。洗浄工程では、得られた粒子の洗浄、濾過を繰り返すことによりトナー粒子中の不純物を除去することができる。具体的にはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びそのNa塩などのキレート剤を含有した水溶液を用いてトナー粒子を洗浄し、さらに純水で複数回洗浄することが好ましい。
【0156】
トナー粒子、およびトナーの粒径は、高精細かつ高解像の画像を得るという観点から、重量平均粒径が3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。トナー粒子、およびトナーの重量平均粒径は細孔電気抵抗法により測定することができる。例えば「コールター・カウンター Multisizer 3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定することができる。
【0157】
以下、トナーに係る各物性の測定方法に関して記載する。
【0158】
<トナーのガラス転移温度(Tg)の測定方法>
トナーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、トナー10mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30~200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度40℃~100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
【0159】
<トナーの重量平均粒子径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒子径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
【0160】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0161】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
【0162】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0163】
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0164】
具体的な測定法は以下の通りである。
【0165】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒子径(D4)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒子径(D4)である。
【0166】
<トナーと外添剤の分離>
トナー粒子の表面に外添剤を有するトナーにおいては、トナー粒子と外添剤を下記方法により分離し、トナー粒子を得る。
【0167】
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に前記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
【0168】
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラなどで採取する。採取したトナー粒子を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量のトナー粒子を得る。
【0169】
<トナー粒子から樹脂Aを取り出す方法>
トナー粒子中の樹脂Aの取り出しはテトラヒドロフラン(THF)を用いた抽出物を溶媒グラジエント溶出法により分離することで行う。調製方法を以下に示す。
【0170】
トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.84)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、抽出液を脱溶剤して得られた固体がTHF可溶分である。THF可溶分には樹脂Aが含まれる。これを複数回行い、必要な量のTHF可溶分を得る。
【0171】
溶媒グラジエント溶出法には、グラジエント分取HPCL(島津製作所製LC-20AP高圧グラジエント分取システム、Waters社製SunFire分取カラム50mmφ250mm)を用いる。カラム温度は30℃、流量は50mL/分、移動相には良溶媒としてTHF、クロロホルム、トルエンを適時選択し、貧溶媒としてアセトニトリル、アセトン、メタノール、n-ヘキサンを適時選択する。前記THF可溶分0.02gを良溶媒1.5mlに溶解させたものを試料としてグラジエント分取HPCLにかける。移動相は貧溶媒100%の組成から開始し、試料注入後5分経過した時点で、毎分4%ずつ良溶媒の比率を増加させ、25分かけて移動相の組成を良溶媒100%とする。得られた分画を乾固させることで樹脂Aを得る。どの分画区間が樹脂Aであるかは後述するケイ素原子の含有量の測定、及び、13C-NMR測定により判別することができる。必要に応じて溶媒グラジエント溶出を繰り返すことで、必要な量の樹脂Aを得る。
【0172】
<樹脂A中のケイ素原子の含有量の測定方法>
樹脂A中のケイ素原子の含有量は、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。
【0173】
なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。
【0174】
測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。検出器はプロポーショナルカウンタ(PC)を用いる。測定はPETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定し、下記検量線を用いて算出する。
【0175】
測定サンプルは、樹脂A(又は式(1)で表される樹脂)そのものを用いるか、前記取り出し方法によりトナー粒子から取り出した樹脂を用いる。
【0176】
測定用ペレットは、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いる。専用のプレス用アルミリングの中に測定サンプル4gを入れて平らにならし、20MPaで60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
【0177】
含有量を求めるための検量線を作成するためのペレットとして、バインダー[商品名:Spectro Blend、成分:C 81.0、O 2.9、H 13.5、N 2.6(質量%)、化学式:C19H38ON、形状:粉末(44μm);(株)リガク製]100質量部に対して、SiO2(疎水性フュームドシリカ)[商品名:AEROSIL NAX50、比表面積:40±10、炭素含有量:0.45~0.85%;日本アエロジル(株)製]が0.50質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合し、ペレット成型したものを用意する。同様にして、SiO2が5.00質量部、10.00質量部、15.00質量部となるように混合・ペレット成型したものをそれぞれ用意する。
【0178】
得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSi添加濃度を横軸として、一次関数の検量線を得る。
【0179】
次に、測定サンプルについても同様に、Si-Kα線の計数率を測定する。そして、得られた検量線からケイ素原子の含有量(質量%)を求める。
【0180】
<式(1)で表される樹脂の構造確認(R1~R3)>
式(1)で表される樹脂におけるR1~R3の構造は、29Si-NMR(固体)測定、及び、13C-NMR(固体)測定により確認する。測定条件は以下のとおりである。測定サンプルは樹脂A(又は式(1)で表される樹脂)そのものを用いるか、前記取り出し方法によりトナー粒子から取り出した樹脂を用いる。
【0181】
(29Si-NMR(固体)の測定条件)
装置:JEOL RESONANCE製 JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料量:150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:97.38MHz(29Si)
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
試料回転数:10kHz
コンタクト時間:10ms
遅延時間:2s
積算回数:2000~8000回
【0182】
前記測定により、ケイ素に結合した酸素原子の数に応じた複数のシラン成分をカーブフィッティングにてピーク分離・積分することで存在比を求めることができる。このようにして、式(1)で表される樹脂のR1~R3のアルコキシ基又はヒドロキシ基の数を確認できる。
【0183】
(13C-NMR(固体)の測定条件)
装置:JEOL RESONANCE製 JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料量:150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
【0184】
前記測定により、式(1)中のR1~R3の種類により各種ピークに分離し、それぞれを同定してR1~R3の構造を決定する。
【0185】
<樹脂Aの構造確認(高分子部位、及び式(1)におけるL1)>
樹脂Aにおける高分子部位、及び式(1)におけるL1の構造は13C-NMR(固体)測定により確認できる。測定条件は上記(13C-NMR(固体)の測定条件)と同様である。測定サンプルは樹脂A(又は式(1)で表される樹脂)そのものを用いるか、前記取り出し方法によりトナー粒子から取り出した樹脂を用いる。
【0186】
前記測定により、樹脂Aにおける高分子部位、及び式(1)におけるL1の種類により各種ピークに分離し、それぞれを同定して樹脂Aにおける高分子部位、及び式(1)におけるL1の構造を決定する。
【0187】
<トナー粒子から樹脂Bを取出す方法>
一方、トナー粒子中の樹脂Bの取り出しはTHFを用いた抽出物を溶媒グラジエント溶出法により分離することで行う。前記<トナー粒子から樹脂Aを取り出す方法>と同様の操作で必要な量のTHF可溶分を得る。THF可溶分には樹脂Bが含まれる。
【0188】
移動相には良溶媒としてTHF、クロロホルム、トルエンを適時選択し、貧溶媒としてアセトンまたはメタノールを適時選択し、前記<トナー粒子から樹脂Aを取り出す方法>と同様の操作で分画を乾固することで樹脂Bを得る。どの分画区間が樹脂Bを構成する結晶性ポリエステルであるかは、1H-NMR分析、13C-NMR分析、FT-IR分析、GC-MS分析、GPC分析などの公知の分析手法により判別できる。前記分析手法により、トナー粒子中の樹脂Bに含有される結晶性ポリエステルの種類と構造を同定する。別途、樹脂Bを合成することにより得てもよい。
【0189】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
樹脂A、樹脂B、又はトナー粒子の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
【0190】
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調製する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
【0191】
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソ-社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0192】
<樹脂の酸価の測定方法>
酸価とは、試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。樹脂の酸価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
【0193】
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
【0194】
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。
【0195】
前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作成されたものを用いる。
【0196】
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
【0197】
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。
【0198】
<樹脂Bの融点測定方法>
樹脂Bの融点(最大吸熱ピークのピーク温度)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、トナー10mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30~200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30~200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、本発明の樹脂Bの融点とする。
【0199】
<樹脂Aの含有量aと樹脂Bの含有量bの比率(a/b)の算出方法>
トナー中の樹脂Aの含有量aは、トナーから樹脂Aを取り出す過程で求めることができる。<トナー粒子から樹脂Aを取り出す方法>において、秤量したトナー質量と、前記トナーから得られた樹脂Aの質量より、トナー中の樹脂Aの含有量aを算出することができる。
【0200】
トナー中の樹脂Bの含有量bは、トナーから樹脂Bを取り出す過程で求めることができる。<トナー粒子から樹脂Bを取り出す方法>において、秤量したトナー質量と前記トナーから得られた樹脂B質量より、トナー中の樹脂Bの含有量bを算出することができる。
得られたa、bそれぞれの値より、比率(a/b)を算出する。
【実施例】
【0201】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。実施例及び比較例中の各材料の「部」及び「%」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0202】
<スチレンアクリル酸共重合体(a-1)の製造例>
下記の手順により、スチレンアクリル酸共重合体(a-1)を製造した。
【0203】
プロピレングリコールモノメチルエーテル100.0部を窒素置換しながら加熱し、液温120℃以上で還流させた。そこへ、重合性単量体として、スチレン83.4部、アクリル酸ブチル20.9部、アクリル酸1.0部、及び、重合開始剤として、tert-ブチルパーオキシベンゾエート[日油(株)製、商品名:パーブチルZ]0.6部を混合したものを3時間かけて滴下した。滴下終了後、溶液を3時間撹拌した後、液温を170℃まで昇温しながら常圧蒸留した。液温が170℃に到達した後、1hPaに減圧し、1時間蒸留して脱溶剤し、樹脂固形物を得た。前記樹脂固形物をテトラヒドロフランに溶解し、n-ヘキサンで再沈殿させて析出した固体を濾別することでスチレンアクリル酸共重合体(a-1)を得た。
【0204】
得られたスチレンアクリル酸共重合体(a-1)の酸価は10.6mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は13000であった。
【0205】
<スチレンアクリル酸共重合体(a-2)の製造例>
スチレンアクリル酸共重合体(a-1)の製造例において、重合性単量体を、スチレン82.0部、メタクリル酸10.0部、アクリル酸8.0部に変更し、重合開始剤の量を1.0部にそれぞれ変更した以外は、同様の操作で、スチレンアクリル酸共重合体(a-2)を得た。
【0206】
得られたスチレンアクリル酸共重合体(a-2)の酸価は161.0mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は46000であった。
【0207】
<ポリエステル部位(a-3)の製造例>
下記の手順によりポリエステル部位(a-3)を製造した。
【0208】
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えた反応容器中に下記材料を仕込み、窒素雰囲気下、常圧、200℃で5時間反応を行った。
・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2.1モル付加物 :39.6部
・テレフタル酸 : 8.0部
・イソフタル酸 : 7.6部
・テトラブトキシチタネート : 0.1部
その後、トリメリット酸0.01部及びテトラブトキシチタネート0.12部を追加し、220℃で3時間反応し、さらに10~20mmHgの減圧下で2時間反応してポリエステル樹脂(a-3)を得た。
【0209】
得られたポリエステル部位(a-3)の酸価は6.1mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は10200であった。
【0210】
<ポリエステル部位(a-4)及び(a-5)の製造例>
ポリエステル部位(a-3)の製造例において、より低分子量体を得るために、又は、より高分子量体を得るために、反応圧力、反応温度、反応時間を適宜調整した以外は同様にして、ポリエステル部位(a-4)及び(a-5)を製造した。
【0211】
得られたポリエステル部位(a-4)の酸価は28.0mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は3100であった。
【0212】
また、得られたポリエステル部位(a-5)の酸価は1.2mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は99500であった。
【0213】
<樹脂A;式(1)で表される樹脂(A-1)の製造例>
下記の手順により式(1)で表される樹脂(A-1)を製造した。
【0214】
N,N-ジメチルアセトアミド200.00部に、スチレンアクリル酸共重合体(a-1)50.00部を溶解し、シラン化合物として、3-アミノプロピルトリエトキシシラン1.20部、トリエチルアミン2.90部、縮合剤としてDMT-MM〔4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド〕を2.90部添加し、常温で5時間撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し再沈殿して濾過することで、式(1)で表される樹脂(A-1)を得た。得られた式(1)で表される樹脂(A-1)の重量平均分子量Mwは13200であった。
【0215】
<樹脂A;式(1)で表される樹脂(A-2)~(A-10)、(A-12)~(A-14)、(A-16)及び(A-18)の製造例>
式(1)で表される樹脂(A-1)の製造例において、樹脂Aの高分子部位の種類;シラン化合物の種類及び添加量;トリエチルアミン及びDMT-MMの添加量を表1のように変更した以外は同様にして、式(1)で表される樹脂(A-2)~(A-10)、(A-12)~(A-14)、(A-16)及び(A-18)を得た。
【0216】
<樹脂A;式(1)で表される樹脂(A-11)の製造例>
式(1)で表される樹脂(A-1)10.0部をトルエン90.0部に溶解した溶液に、純水400.0部と混合撹拌し、希塩酸を用いてpHを4.0に調整し、常温で10.8時間撹拌させた後、撹拌を止め分液ロートに移し油相を抽出した。前記油相を濃縮し、メタノールで再沈殿することによって、式(1)で表される樹脂(A-11)を得た。
【0217】
得られた樹脂(A-11)を29Si-NMR(固体)測定によって分析したところ、樹脂(A-11)の式(1)におけるR1~R3は、いずれもヒドロキシ基であった。
【0218】
<樹脂A;式(1)で表される樹脂(A-15)の製造例>
下記の手順により式(1)で表される樹脂(A-15)を製造した。
【0219】
クロロホルム500.00部に、ポリエステル部位(a-3)50.00部を溶解し、窒素雰囲気下、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン1.20部とチタン(IV)テトライソプロポキシド1.00部を添加し、常温で5時間撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し再沈殿して濾過することで、式(1)で表される樹脂(A-15)を得た。
【0220】
<樹脂A;式(1)で表される樹脂(A-17)の製造例>
式(1)で表される樹脂(A-15)の製造例において、シラン化合物の種類を6-イソシアネートヘキシルトリエトキシシランに変更した以外は同様にして、式(1)で表される樹脂(A-17)を得た。
【0221】
得られた樹脂A;式(1)で表される樹脂(A-1)~(A-18)の構造及び物性を表2に示す。
【0222】
【0223】
【0224】
<樹脂B;結晶性ポリエステル(B-1)の製造例>
下記の手順により樹脂B(B-1)を製造した。
【0225】
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えた反応容器中に下記材料を仕込んだ。
・1,6-ヘキサンジオール :64.2部
・セバシン酸 :100.0部
減圧操作により系内を窒素置換した後、窒素フローした状態で160℃のオイルバスに浸けた。原料が融解後、オルトチタン酸テトラブチル0.19部を系内に加え、メカニカルスターラーにより3時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて180℃まで徐々に昇温し、更に3.5時間保持した。粘稠な状態となったところで加熱を停止し、系内に窒素を導入して冷却し、反応を停止させた。系内にクロロホルムを加えて生成物を溶解し、これを大量のメタノール中へ注ぎ入れた。沈殿物をろ過し、真空乾燥を行うことで、樹脂B(B-1)を得た。得られた樹脂B(B-1)の重量平均分子量(Mw)は20000、融点は64℃であった。
【0226】
<樹脂B;結晶性ポリエステル(B-2)の製造例>
樹脂B;結晶性ポリエステル(B-1)の製造例において、1,6-ヘキサンジオールの代わりに、1,12-ドデカンジオールを110.0部に変更した以外は同様の操作により、樹脂B(B-2)を得た。得られた樹脂B(B-2)の重量平均分子量(Mw)は20300、融点は83℃であった。
【0227】
<樹脂B;結晶性ポリエステルを含有する樹脂(B-3)の製造例>
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えた反応容器中に前記結晶性ポリエステル(B-1)64.2部を入れ、窒素置換後、脱水クロロホルム(関東化学製)140.0部を加え、撹拌して完全に溶解させた。
【0228】
次に、前記反応容器を氷浴で冷却しながら予め脱水しておいたトリエチルアミン(関東化学社製)2.3部を加えて良く撹拌させた。その後、2-ブロモイソブチリルブロミド(Aldrich社製)7.0部を溶液の温度が10℃以下を保つようにフラスコを氷浴で冷却しながら徐々に滴下していき、滴下が終了したらそのまま窒素フロー下で室温、24時間撹拌した。前記撹拌終了後、前記反応容器中の内容物を大量のエタノール中に投入し、析出物を回収した。この析出物を減圧乾燥することで、結晶性ポリエステルを含有する樹脂(B-3)前駆体を得た。
【0229】
次いで、反応容器に下記の原料を仕込んだ。
・スチレン :220.0部
・結晶性ポリエステルを含有する樹脂(B-3)前駆体 :10.0部
・ジメチルホルムアミド :40.0部
・N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン
(PMDETA;Aldrich社製) :0.4部
系内を撹拌して溶解させた後、液体窒素を用いて真空凍結脱気処理を3回繰り返し、再度撹拌して全てを溶解させてから1時間窒素置換を行った。その後、窒素フロー下で0.34部の臭化銅(I)(CuBr;Aldrich社製)を加えて1分間撹拌後、100℃のオイルバス中で重合反応を開始させた。異なる重合反応時間においてサンプリングした前記反応容器中の内容物を、それぞれ大量のエタノール中に投入し、析出物を回収した。これらの析出物を減圧乾燥することで、スチレンと結晶性ポリエステル(B-1)からなるブロックポリマーを複数種得た。得られた前記ブロックポリマーのうち、重量平均分子量(Mw)が32000のものを、結晶性ポリエステルを含有する樹脂(B-3)とした。前記樹脂(B-3)の融点は66℃であった。
【0230】
<非結晶性ポリエステル樹脂Cの製造例>
下記の手順により非結晶性ポリエステル樹脂Cを製造した。
【0231】
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えた反応容器中に下記材料を仕込み、窒素雰囲気下、常圧、190℃で1時間撹拌を行った。
・エチレングリコール :48.6部
・ネオペンチルグリコール :65.0部
・テレフタル酸 :95.7部
その後、ジブチル錫オキサイド0.12部を追加し、220℃で3時間反応し、さらに10~20mmHgの減圧下で230℃にて4時間反応させ、非結晶性ポリエステル樹脂Cを得た。得られ非結晶性ポリエステル樹脂Cのガラス転移温度(Tg)は58℃、重量平均分子量(Mw)は9800であった。
【0232】
<トナー粒子1の製造例>
反応容器に、イオン交換水390.0部、及びリン酸ナトリウム(12水和物)〔ラサ工業(株)製〕14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。次に、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmにて撹拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、前記水系媒体に塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体1を得た。
【0233】
一方、下記材料をアトライタ(日本コークス工業(株)製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を投入して、220rpmで5.0時間分散させた後、ジルコニア粒子を取り除き、着色剤が分散された分散液1を調製した。
・スチレン 60.0部
・着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5部
次に、調製した前記分散液1に下記材料を加えた。
・スチレン 15.0部
・アクリル酸n-ブチル 25.0部
・スチレンアクリル酸共重合体(a-1) 4.0部
・樹脂A(A-1) 8.0部
・樹脂B(B-1) 20.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・ワックス(フィッシャートロプシュワックス、融点:78℃) 3.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散させることで、重合性単量体組成物1を調製した。
【0234】
前記水系媒体1の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12,000rpmに保ちながら、前記水系媒体1中に前記重合性単量体組成物1を投入し、重合開始剤として、t-ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま前記撹拌装置にて12,000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
【0235】
前記撹拌装置からプロペラ撹拌羽根を備えた撹拌機に変更し、150rpmで撹拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、さらに85℃に昇温して2.0時間加熱保持を行った。その後、前記水系分散液を55℃まで冷却し、6.0時間保持させたのち、室温まで冷却することで、トナー粒子分散液1を得た。
【0236】
得られたトナー粒子分散液1に塩酸を添加し、pHを1.4以下として、前記分散安定剤を溶解し、ろ過、洗浄、乾燥を行うことによって、トナー粒子1を得た。
【0237】
<トナー粒子2の製造例>
還流冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を入れた。
・トルエン 100.0部
・スチレン 75.0部
・アクリル酸n-ブチル 25.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・t-ブチルパーオキシピバレート 3.0部
前記反応容器内を毎分200回転で撹拌し、70℃に加熱して10時間保持し、樹脂溶解液2を得た。
【0238】
次いで、
・樹脂溶解液2 203.6部
・スチレンアクリル酸共重合体(a-1) 4.0部
・樹脂A(A-1) 8.0部
・樹脂B(B-1) 20.0部
・ワックス(フィッシャートロプシュワックス、融点:78℃) 3.0部
・着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5部
上記成分に直径1.7mmのジルコニア粒子を投入して、220rpmで10.0時間分散させた後、ジルコニア粒子を取り除き、樹脂組成物溶解液2を得た。
【0239】
次に、トナー粒子1の製造と同様の操作で得られた水系媒体1中に前記樹脂組成物溶解液2を投入し、クレアミクスにて15000回転/分を維持しつつ10分間の造粒工程を行い、樹脂組成物分散液2を得た。
【0240】
前記樹脂組成物分散液2を95℃に昇温して、120分間撹拌を行うことで樹脂組成物分散液2中のトルエンを除去した。その後、前記樹脂組成物分散液2を55℃まで冷却し、6.0時間保持したのち、室温まで冷却することで、トナー粒子分散液2を得た。
【0241】
得られたトナー粒子分散液2に塩酸を添加し、pHを1.4以下として、分散安定剤を溶解し、ろ過、洗浄、乾燥を行うことによって、トナー粒子2を得た。
【0242】
<トナー粒子3の製造例>
反応容器に下記材料を入れ、溶解させた。
・スチレン 75.0部
・アクリル酸n-ブチル 25.0部
・スチレンアクリル酸共重合体(a-1) 4.0部
・樹脂A(A-1) 8.0部
・樹脂B(B-1) 20.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・n-ラウリルメルカプタン 3.2部
次に、ネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.5部とイオン交換水150.0部からなる水溶液を添加して分散させた。さらに、ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部とイオン交換水10.0部からなる水溶液を添加した。反応容器を窒素置換させたのちに70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで、固形分濃度12.5質量%、重量平均粒径0.2μmの樹脂粒子分散液を得た。
【0243】
また、フィッシャートロプシュワックス(融点:78℃)100.0部、ネオゲンRK15.0部をイオン交換水385.0部に混合させ、湿式ジェットミル JN100((株)常光製)を用いて1時間分散させた。得られた分散液にイオン交換水を添加することで、固形分濃度20.0質量%のワックス分散液を得た。
【0244】
また、着色剤として、C.I.ピグメントブルー15:3を100.0部、ネオゲンRK15.0部をイオン交換水885.0部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて1時間分散させた。得られた分散液にイオン交換水を添加することで、固形分濃度10.0質量%の着色剤分散液を得た。
【0245】
上記操作で得られた、前記樹脂粒子分散液80.0部、前記ワックス分散液9.0部、前記着色剤分散液6.0部を反応容器に入れ、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて撹拌させた。次に、前記撹拌操作をしながら反応容器内の温度を30℃に調整して、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=8.0に調整した。次に、凝集剤として、硫酸下マグネシウム0.3部をイオン交換水10.0部に溶解させた水溶液を、30℃で撹拌しながら、10分間かけて添加した。
【0246】
さらに3分間経過後に昇温を開始し、50℃まで昇温することで、凝集粒子の生成を行った。前記凝集粒子の粒径を「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)」にて測定した。
【0247】
前記凝集粒子の重量平均粒径が、6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム0.9部とネオゲンRK5.0部を反応容器に添加して前記凝集粒子の粒子成長を停止させた。
【0248】
その後、反応容器を65℃まで昇温させ、8時間保持させた後に、反応容器を85℃に昇温させ、1分間保持させた後に、55℃まで冷却させ、さらに6.0時間保持させたのちに室温まで冷却することで、トナー粒子分散液3を得た。
【0249】
得られたトナー粒子分散液3をろ過、洗浄し、これを数回繰り返した後に、乾燥を行うことによって、トナー粒子3を得た。
【0250】
<トナー粒子4の製造例>
トナー粒子1の製造例において、樹脂Aの種類を(A-1)から(A-12)に変更した以外は同様にして、トナー粒子4を得た。
【0251】
<トナー粒子5の製造例>
トナー粒子1の製造例において、樹脂Aの種類を(A-1)から(A-13)に変更した以外は同様にして、トナー粒子4を得た。
【0252】
<トナー粒子9~13、17~21、24~35の製造例>
トナー粒子1の製造例において、樹脂Aの種類と添加部数、および、樹脂Bの種類と添加部数を表3に記載されたようにそれぞれ変更した以外は同様にして、トナー粒子9~13、17~21、24~35を得た。
【0253】
<トナー粒子6の製造例>
反応容器に下記材料を入れたのち、直径1.7mmのジルコニア粒子を投入し、220rpmで10.0時間分散させた後、ジルコニア粒子を取り除き、樹脂組成物溶解液6を得た。
・トルエン 100.0部
・非結晶性ポリエステル樹脂C 100.0部
・ポリエステル部位(a-3) 4.0部
・樹脂A(A-3) 8.0部
・樹脂B(B-1) 20.0部
・ワックス(フィッシャートロプシュワックス、融点:78℃) 3.0部
・着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5部
次に、トナー粒子1の製造例と同様の操作で得られた水系媒体1中に前記樹脂組成物溶解液6を投入し、クレアミクスにて15000回転/分を維持しつつ10分間の造粒工程を行い、樹脂組成物分散液6を得た。
【0254】
前記樹脂組成物分散液6を95℃に昇温して、120分間撹拌を行うことで樹脂組成物分散液6中のトルエンを除去した。その後、55℃まで冷却し、6.0時間保持したのちに室温まで冷却することで、トナー粒子分散液6を得た。
【0255】
得られたトナー粒子分散液6に塩酸を添加し、pHを1.4以下として、分散安定剤を溶解し、ろ過、洗浄、乾燥を行うことによって、トナー粒子6を得た。
【0256】
<トナー粒子7の製造例>
トナー粒子6の製造例において、樹脂(A-3)を樹脂(A-1)に変更した以外は同様の操作によって、トナー粒子7を得た。
【0257】
<トナー粒子8の製造例>
トナー粒子2の製造例において、樹脂溶解液2を101.8部に変更し、スチレンアクリル酸共重合体(a-1)をポリエステル部位(a-3)に変更し、さらに非結晶性ポリエステル樹脂Cを50.0部加える変更をした以外は同様の操作によって、トナー粒子8を得た。
【0258】
<トナー粒子14の製造例>
トナー粒子2の製造例において、スチレンアクリル酸共重合体(a-1)をポリエステル部位(a-3)に、樹脂A(A-3)の部数を20.0部に、樹脂B(B-1)の部数を10.0部に変更した以外は同様の操作によって、トナー粒子14を得た。
【0259】
<トナー粒子15の製造例>
トナー粒子14の製造例において、樹脂B(B-1)の部数を2.0部に変更した以外は同様の操作によって、トナー粒子15を得た。
【0260】
<トナー粒子16の製造例>
トナー粒子14の製造例において、樹脂A(A-3)の部数を30.0部に、樹脂B(B-1)の部数を2.0部に変更した以外は同様の操作によって、トナー粒子16を得た。
【0261】
<トナー粒子22の製造例>
トナー粒子14の製造例において、樹脂A(A-3)の部数を8.0部に、樹脂B(B-1)の部数を50.0部に変更した以外は同様の操作によって、トナー粒子22を得た。
【0262】
<トナー粒子23の製造例>
トナー粒子22の製造例において、樹脂B(B-1)の部数を60.0部に変更した以外は同様の操作によって、トナー粒子23を得た。
【0263】
<トナー粒子36の製造例>
トナー粒子1の製造例において、樹脂A(B-1)8.0部をトリメトキシビニルシラン4.0部に変更した以外は同様にして、トナー粒子36を得た。
【0264】
<トナー粒子37の製造例>
トナー粒子1の製造例において、樹脂A(B-1)8.0部を3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4.0部に変更した以外は同様にして、トナー粒子37を得た。
【0265】
<トナー粒子38の製造例>
トナー粒子1の製造例において、樹脂Bを入れないこと以外は同様にして、トナー粒子38を得た。
【0266】
【0267】
ここで、TMVSはトリメトキシビニルシランを表し、MPTMSはメタクリロキシプロピルトリメトキシシランを表す。
【0268】
<トナー1~32、及び、比較トナー1~6の製造例>
得られたトナー粒子1~32、及び、トナー粒子33~38のそれぞれ100.0部に対して、BET値が200m2/gであり、一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粒子0.6部をヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で混合した。
【0269】
前記混合処理後、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1~32、及び、比較トナー1~6を得た。
【0270】
〔実施例1~32、及び、比較例1~6〕
得られたトナー1~32、及び、比較トナー1~6のそれぞれについて以下の方法に従って性能評価を実施した。評価結果については表4に示す。
【0271】
[低温定着性の評価]
画像形成装置として定着ユニットを外したカラーレーザープリンタ(HP Color LaserJet 3525dn、HP社製)を用意し、シアンカートリッジからトナーを取り出して、代わりに評価するトナーを充填した。次いで、受像紙(HP Laser Jet90、HP社製、90g/m2)上に、充填したトナーを用いて、縦2.0cm横15.0cmの未定着のトナー画像(トナーの載り量:0.9mg/cm2)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。次いで、取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードを調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。
【0272】
まず、常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度60%)、プロセススピードを335mm/sに設定し、初期温度を140℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で前記未定着画像の定着を行った。
【0273】
低温定着性の評価基準は以下の通りである。低温側定着開始点とは、低温オフセット現象(トナーの一部が定着器に付着してしまう現象)が観察されない下限温度のことである。
【0274】
評価C以上を良好と判断した。
【0275】
(評価基準)
A:低温側定着開始点が165℃以下
B:低温側定着開始点が170℃以上180℃以下
C:低温側定着開始点が185℃以上195℃以下
D:低温側定着開始点が200℃以上210℃以下
E:低温側定着開始点が215℃以上
【0276】
[耐擦過性の評価]
前記低温定着性の評価により得られた定着画像を用いて、耐擦過性の評価を行った。
【0277】
前記評価によって得られた定着画像を常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度60%)で30日間静置させた。次に、650g/cm2(63.7kPa)の荷重をかけた砂消しゴムで、前記定着画像を5往復擦り、擦る前後の画像濃度低下率を算出した。
【0278】
画像濃度の測定は、以下の手順で実施した。マクベス反射濃度計 RD918(マクベス社製)を用いて付属の取扱説明書に沿って、画像濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。前記相対濃度は、定着画像上の異なる5点を測定し、その平均値を擦過試験前の画像濃度値とした。
【0279】
これら結果から、定着画像の耐擦過性を評価した。評価C以上を良好と判断した。
【0280】
(評価基準)
A:画像濃度低下率が15.0%未満
B:画像濃度低下率が15.0%以上20.0%未満
C:画像濃度低下率が20.0%以上25.0%未満
D:画像濃度低下率が25.0%以上30.0%未満
E:画像濃度低下率が30.0%以上
【0281】
[保存安定性の評価]
各トナー5gを50mlの樹脂製カップに取り、温度50℃/相対湿度10%で5日間放置し、凝集塊の有無を調べ、下記の基準で評価した。評価C以上を良好と判断した。
【0282】
(評価基準)
A:凝集塊発生せず
B:軽微な凝集塊が発生、軽い振とうでほぐれる
C:軽微な凝集塊が発生、軽く指で押すと崩れる
D:凝集塊が発生、軽く指で押しても崩れない
E:完全に凝集
【0283】
得られた各トナーの物性、および性能評価の結果を表4に示す。
【0284】