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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/093 20060101AFI20241007BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G03G9/093
G03G9/087 325
G03G9/087 331
G03G9/087
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020177942
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069024
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐
(72)【発明者】
【氏名】大久保 顕治
(72)【発明者】
【氏名】見目 敬
(72)【発明者】
【氏名】下田 卓
(72)【発明者】
【氏名】河村 政志
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-205579(JP,A)
【文献】特開2017-203889(JP,A)
【文献】特開2017-138592(JP,A)
【文献】特開2018-194836(JP,A)
【文献】特開2016-027399(JP,A)
【文献】特開2017-134367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母粒子と、該トナー母粒子の表面を被覆している有機ケイ素重合体とを含有するトナー粒子を有するトナーであって
該トナー母粒子が樹脂Aを含有し、
該樹脂Aは、下記式(1)で示される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、式(2)で示される構造を有し、
該トナー粒子の下記方法により算出されるネットワーク指数(NI)が-10000≦NI≦-2500であることを特徴とするトナー。
下記処理(i)~(iii)の処理を行った該トナーの100℃における貯蔵弾性率を縦軸に、処理pHを横軸に取り、最小二乗法における線形近似を行って得られた際の傾きがNIである。
処理(i) 25℃におけるpHを11.5、12.0、12.5に各々調整した水酸化ナトリウム水溶液中にそれぞれ該トナーを分散させて、水分散体を得る。
処理(ii) 前記処理(i)によって得られた該トナーの水分散体の温度を55℃に調節し、3時間撹拌する。
処理(iii) 前記処理(ii)で処理された水分散体をろ過、水洗浄後、乾燥する。
【化1】
[式(1)中、P 1 はポリエステル部位、L 1 は2価の連結基、R 1 ~R 3 は各々独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはヒドロキシ基を表す。mは正の値を表す。m個あるL 1 、R 1 ~R 3 の各構成は独立して異なっていてもよい。]
4 -SiO 3/2 式(2)
[式(2)中、R 4 は炭素原子数が1以上6以下のアルキル基、またはフェニル基を表す。]
【請求項2】
前記トナー粒子中の前記有機ケイ素重合体の含有量が0.50質量%以上7.0質量%以下である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナー粒子を下記処理方法(iv)で処理した際の、90℃における損失弾性率をG(90)としたとき、20000≦G(90)≦1×106である請求項1または2に記載のトナー。
処理(iv) トナー粒子をpH13.5のNaOH水溶液中に分散させ、50℃で3時間加熱後、ろ過、洗浄、乾燥を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット方式記録法に用いられるトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザービームプリンター(LBP)や複写機などにおいては、プロセススピードの高速化が求められている。また、世界的な需要の高まりから、様々な温度、湿度環境における安定した画像の出力が求められている。これらの性能を満たすためには、トナーの高温高湿度、低温低湿度環境における現像耐久性の向上が必要である。特許文献1においては、トナーの表層に有機ケイ素重合体を含有する表層を形成することにより、各環境下における現像耐久性を向上させる技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-200487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の省エネルギー化のさらなる需要の高まりから、上記現像耐久性の性能向上と共に、より低温で定着した際に安定した画像を出力することが求められている。上記特許文献1の技術を検討したところ、低温での定着時においては、出力画像の光沢が不均一になる場合があることが分かった。そのため、高温高湿度、低温低湿度環境下における現像耐久性が良好であり、低温定着時においても画像の光沢均一性が良好なトナーが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、トナー母粒子と、該トナー母粒子の表面を被覆している有機ケイ素重合体とを含有するトナー粒子を有するトナーであって
該トナー母粒子が樹脂Aを含有し、
該樹脂Aは、後述の式(1)で示される構造(但し、式中のP 1 はポリエステル部位)を有し、
該有機ケイ素重合体は、後述の式(2)で示される構造を有し、
該トナー粒子の下記方法により算出されるネットワーク指数(NI)が-10000≦NI≦-2500であることを特徴とするトナーに関する。
下記処理(i)~(iii)の処理を行った該トナーの100℃における貯蔵弾性率を縦軸に、処理pHを横軸に取り、最小二乗法における線形近似を行って得られた際の傾きがNIである。
処理(i) 25℃におけるpHを11.5、12.0、12.5に各々調整した水酸化ナトリウム水溶液中にそれぞれ該トナーを分散させて、水分散体を得る。
処理(ii) 上記処理(i)によって得られた該トナーの水分散体の温度を55℃に調節し、3時間撹拌する。
処理(iii) 上記処理(ii)で処理された水分散体をろ過、水洗浄後、乾燥する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は高温高湿度、低温低湿度環境下における現像耐久性が良好であり、出力画像の光沢均一性が良好なトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】トナー粒子表面のネットワークのイメージを表す図である。
図2】NIの算出方法におけるグラフの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明のトナーについて具体的に説明する。
【0009】
本発明は、トナー母粒子と、該トナー母粒子の表面を被覆している有機ケイ素重合体とを含有するトナー粒子を有するトナーであって、該トナー粒子の下記方法により算出されるネットワーク指数(NI)が-10000≦NI≦-2500であることを特徴とする。
【0010】
下記処理(i)~(iii)の処理を行った該トナーの100℃における貯蔵弾性率を縦軸に、処理pHを横軸に取り、最小二乗法における線形近似を行って得られた際の傾きがNIである。
処理(i)25℃におけるpHを11.5、12.0、12.5に各々調整した水酸化ナトリウム水溶液中にそれぞれ該トナーを分散させて、水分散体を得る。
処理(ii)上記処理(i)によって得られた該トナーの水分散体の温度を55℃に調節し、3時間撹拌する。
処理(iii)上記処理(ii)で処理された水分散体をろ過、水洗浄後、乾燥する。
【0011】
特許文献1にあるように、トナー母粒子は有機ケイ素重合体に被覆されていることにより、現像耐久性が向上する。しかしながら、トナー母粒子表面に形成された有機ケイ素重合体は、熱定着時において溶融せず、トナーが定着された際に、トナー母粒子の濡れ広がり方(変形)を阻害するため、光沢にムラが発生し易い。本発明のトナーは、ネットワーク指数(NI)を制御することによって、トナー母粒子表面に形成される有機ケイ素重合体の構造を制御し、現像耐久性と光沢均一性を両立できることを見出した。以下にネットワーク指数(NI)について、詳細に説明する。
【0012】
有機ケイ素重合体がトナー母粒子表面に存在する状態として、膜状に存在している場合と網目状(ネットワーク状)に形成している場合またはその両方が混在した場合が考えられる。膜状に近い(ネットワークが太い)と定着時におけるトナーが変形しにくい。一方、ネットワーク状に形成されて、各ネットワークが細い場合は、定着時におけるネットワークの破壊が起こると考えられるため、有利であることが示唆される。
【0013】
本発明のNIを算出するための処理(i)、処理(ii)では、トナー粒子の水分散体(トナースラリー)を高アルカリ、加温(55℃)環境下に晒すことによって、トナー母粒子表面の有機ケイ素重合体の一部を溶解させることができる。その際の溶解量はpHが高ければ高いほど多い。ネットワークが太い、またはネットワークがなく膜状である場合、処理pHを変化させた際、有機ケイ素重合体の膜厚が徐々に薄くなっていくため、処理後のトナー粒子の貯蔵弾性率は、pHの上昇と共に緩やかに減少していくことが考えられる。一方で、ネットワークが細い場合、低pH時(pH=11.5)においては、ほとんど溶解しないため、処理後のトナー粒子の貯蔵弾性率は高いが、pHを12.0、12.5と上昇させていくに連れて、細いネットワークが切れるため、貯蔵弾性率の減少幅(傾き)が急になる。このように、NIが小さい(傾きが大きい)場合は、ネットワークが細いことが示唆される。一方でNIが大きい(傾きが小さい)場合は、ネットワークが太い、または膜状に近いことが示唆される。
【0014】
図1に本発明のNIが大きい場合と、小さい場合のネットワーク状態のイメージを示す。本発明のトナーは、NIを-10000≦NI≦-2500の範囲に制御することによって、現像耐久性と光沢均一性を両立することが可能になった。NIが-2500より大きい場合、有機ケイ素重合体のネットワークが太く、定着時におけるトナーの変形が少ないため、光沢の均一性が悪化する。またNIが-10000より小さい場合、ネットワークが細くなりすぎることによって、現像耐久性が悪化する。NIの好ましい範囲としては、-8000≦NI≦-4000である。処理(i)~(iii)の工程を含めNIのより詳細な算出方法は後述する。
【0015】
本発明のNIを制御するための方法としては、有機ケイ素重合体を形成する際の条件やトナー母粒子の組成を変更する方法がある。この中でも有機ケイ素重合体を形成する際の条件を変更することが好ましい。以下に有機ケイ素重合体の形成方法について説明する。
【0016】
本発明の有機ケイ素重合体の形成方法は、本発明のトナーが-10000≦NI≦-2500を満たす限りどのような方法を用いても構わないが、以下に好ましい方法を示す。
【0017】
有機ケイ素重合体の形成方法としては、ゾルゲル法が挙げられる。ゾルゲル法は、液体原料を出発原料に用いて加水分解及び縮重合させ、ゾル状態を経てゲル化する方法であり、ガラス、セラミックス、有機-無機ハイブリット、ナノコンポジットを合成する方法に用いられる。一般的に、ゾルゲル反応では、反応媒体の酸性度によって生成するシロキサン結合の結合状態が異なることが知られている。具体的には、反応媒体が酸性である場合には、水素イオンが一つの反応基(例えばアルコキシ基)の酸素に親電子的に付加する。次に、水分子中の酸素原子がケイ素原子に配位して、置換反応によってヒドロキシ基になる。水が十分に存在している場合には、水素イオンひとつで反応基(例えばアルコキシ基)の酸素をひとつ攻撃するため、反応の進行に伴って媒体中の水素イオンの含有率及び反応基が少なくなると、ヒドロキシ基への置換反応が遅くなる。よって、シランに付いた反応基のすべてが加水分解する前に重縮合反応が生じ、比較的容易に、一次元的な線状高分子や二次元的な高分子が生成し易い。
【0018】
一方、媒体がアルカリ性の場合には、水酸化物イオンがケイ素に付加して5配位中間体を経由する。そのためすべての反応基(例えばアルコキシ基)が脱離しやすくなり、容易にシラノール基に置換される。特に、同一シランに3個以上の反応基を有するケイ素化合物を用いた場合には、加水分解及び重縮合が3次元的に生じて、3次元の架橋結合の多い有機ケイ素重合体が形成される。また、反応も短時間で終了する。
【0019】
従って、有機ケイ素重合体を形成するには、反応媒体がアルカリ性の状態でゾルゲル反応を進めることが好ましく、水系媒体中で製造する場合には、具体的には、pH8.0以上であることが好ましい。これによって、より強度の高い、耐久性に優れた有機ケイ素重合体を形成することができる。さらに本件のネットワーク指数を満たすようなネットワーク構造制御を行う場合には、pHは10.6以上が好ましい。以下に具体例を述べるが、本発明の有機ケイ素重合体を得る方法としてゾルゲル法を用いる場合、下記例に限定されるものではない。
【0020】
まず、トナー母粒子を作製し、トナー母粒子の水系分散液を作製する。この際のトナー母粒子の水系分散液に対する固形分濃度は10質量%以上40質量%以下が好ましい。次に、トナー母粒子の水系分散液を45℃~70℃に保持し、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを調整する。この際のpHとしては、所望のNIを得るために10.6以上12.5以下の範囲が好ましい。10.6以上である場合、NIをより小さくすることができる。12.5以下である場合、NIをより大きくすることができる。保持温度が45℃以上である場合、NIをより小さくすることができる。70℃以下である場合、より大きくすることができる。
【0021】
温度とpHを調整後、有機ケイ素重合体をトナー母粒子の水系分散液に投入する。投入する有機ケイ素重合体は事前に加水分解処理を行ったものが好ましい。加水分解はイオン交換水やRO水100質量部に対して、有機ケイ素化合物を5質量部以上100質量部以下添加し、pHを1.0以上7.0以下、温度15℃以上80℃以下に調整後、5~720分撹拌する。有機ケイ素重合体(またはその加水分解液)を投入後、温度を保持したまま、60分以上撹拌し、有機ケイ素重合体をトナー母粒子表面に形成させる。
【0022】
本発明のトナーは、トナー母粒子が下記式(1)で示される構造を有する樹脂Aを含有することが好ましい。
【0023】
【化1】
[式(1)中、P1は高分子部位、L1は2価の連結基、R1~R3は各々独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはヒドロキシ基を表す。mは正の値を表す。m個あるL1、R1~R3の各構成は独立して異なっていてもよい。]
【0024】
トナー母粒子が樹脂Aを含有する場合、式(1)で示される構造がシリル基を有するため、有機ケイ素重合体との親和性が向上し、トナー母粒子と表面に形成される有機ケイ素重合体との密着性が増し、現像耐久性が向上し易い。式(1)中のP1としては、特に限定されるものではないが、ポリエステル部位、ビニル系高分子部位、ポリウレタン部位、ポリカーボネート部位、フェノール樹脂部位、ポリオレフィン部位等が挙げられる。この中でも、光沢均一性との両立の観点から、ポリエステル部位またはビニル系高分子部位が定着時において変形し易いため好ましい。さらにポリエステル部位である場合、有機ケイ素重合体との密着性が向上し易く、適度なリーク性を有するため、低温低湿度環境下における現像耐久性が向上し易い。ポリエステル部位の製造に使用できる縮重合単量体としては多価カルボン酸と多価アルコールが使用できる。
【0025】
多価カルボン酸としてはシュウ酸、グルタル酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0026】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、イソソルビド、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0027】
また、ポリエステル部位は下記式(3)で示される構造を有することが好ましい。
【0028】
【化2】
【0029】
式(3)の構造を有する場合、有機ケイ素重合体との密着性がさらに向上し易い。
【0030】
ビニル系高分子部位の製造に使用できるビニル系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、及びp-フェニルスチレンのようなスチレン誘導体類;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、n-ステアリルアクリレート,シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、及び2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体類;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、n-ステアリルメタクリレート及びジブチルフォスフェートエチルメタクリレートなどのメタクリル系重合性単量体類;が挙げられる。
【0031】
式(1)中、R1~R3は各々独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはヒドロキシ基であり、この中でもアルコキシ基またはヒドロキシ基が好ましい。R1~R3がアルコキシ基またはヒドロキシ基である場合、Si-O-結合を有するため、有機ケイ素重合体との親和性が高く、密着性が向上するため、現像耐久性が向上し易い。
【0032】
式(1)中のL1は2価の連結基を表す。L1の構造は特に限定はされないが、例えば、下記式(4)~(6)で示される連結基を用いることができる。
【0033】
【化3】
[式(4)中、*はP1への結合部位、**はSiへの結合部位、R5はアルキレン基を表す。]
【0034】
【化4】
[式(5)中、*はP1への結合部位、**はSiへの結合部位、R6はアルキレン基を表す。]
【0035】
【化5】
[式(6)中、*はP1への結合部位、**はSiへの結合部位、R7はアルキレン基を表す。]
【0036】
この中でも、式(4)や式(5)のようにL1がカルボニル基を含有することが好ましい。L1がカルボニル基を含有する場合、低温低湿度環境下におけるチャージアップを抑制し易く、現像耐久性が向上し易い。同様の理由から、アミド結合を有することがさらに好ましい。式(4)で示される連結基は、例えば、樹脂中のカルボキシ基とアミノシランとの反応によって形成することができる。
【0037】
前記アミノシランとしては、特に限定されるものではないが、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメチルシラン、3-アミノプロピルシリコン等が挙げられる。
【0038】
式(5)、式(6)で示される連結基は、例えば、二重結合を有するシランカップリング剤を、二重結合を有する単量体と共重合させることで形成することができる。
【0039】
前記二重結合を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジアセトキシメトキシシラン、ビニルジアセトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、ビニルアセトキシメトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジエトキシシラン、ビニルトリヒドロキシシラン、ビニルメトキシジヒドロキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のようなビニル系シラン;3-[(メタ)アクリロキシ]プロピルトリメトキシシラン、3-[(メタ)アクリロキシ]プロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリル酸(トリエトキシシリル)メチル、(メタ)アクリル酸3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピル、(メタ)アクリル酸[ジメトキシ(メチル)シリル]メチル、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシリルオキシ)シランのような(メタ)アクリル系シラン;p-スチリルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0040】
上記シランカップリング反応で用いられるシランカップリング剤は加水分解したものを反応させても良い。
【0041】
前記樹脂Aの含有量はトナー母粒子中に対して0.05質量%以上20質量%以下であることが好ましい。また、樹脂A中のケイ素原子の含有量は、0.02質量%以上5.00質量%以下であることが好ましい。0.02質量%以上である場合、現像耐久性向上効果が発現し易い。5.00質量%以下である場合、光沢均一性が向上し易い。より好ましくは0.15質量%以上2.00質量%以下である。
【0042】
本発明の有機ケイ素重合体は式(2)で示される構造を有することが好ましい。
4-SiO3/2 式(2)
[式(2)中、R4は炭素原子数が1以上6以下のアルキル基、またはフェニル基を表す。]
【0043】
式(2)で表される構造中のSi原子の4個の原子価電子について、1個はR4との結合に関与し、残り3個はO原子との結合に関与している。O原子は、2個の原子価がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si-O-Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、-SiO3/2と表現される。本発明の有機ケイ素重合体が式(2)を含有する場合、有機ケイ素重合体の強度が高いため、現像耐久性が向上し易い。式(2)のような構造を得るには、1分子中に3つの反応基を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種または複数種を組み合わせて用いるとよい。
【0044】
3官能性シランとしては以下のものが挙げられる。
【0045】
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメトキシジクロロシラン、ビニルエトキシジクロロシラン、ビニルジメトキシクロロシラン、ビニルメトキシエトキシクロロシラン、ビニルジエトキシクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジアセトキシメトキシシラン、ビニルジアセトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、ビニルアセトキシメトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジエトキシシラン、ビニルトリヒドロキシシラン、ビニルメトキシジヒドロキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のような3官能性のビニルシラン;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルジエトキシメトキシシラン、アリルエトキシジメトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメトキシジクロロシラン、アリルエトキシジクロロシラン、アリルジメトキシクロロシラン、アリルメトキシエトキシクロロシラン、アリルジエトキシクロロシラン、アリルトリアセトキシシラン、アリルジアセトキシメトキシシラン、アリルジアセトキシエトキシシラン、アリルアセトキシジメトキシシラン、アリルアセトキシメトキシエトキシシラン、アリルアセトキシジエトキシシラン、アリルトリヒドロキシシラン、アリルメトキシジヒドロキシシラン、アリルエトキシジヒドロキシシラン、アリルジメトキシヒドロキシシラン、アリルエトキシメトキシヒドロキシシラン、アリルジエトキシヒドロキシシラン、のような3官能性のアリルシラン;p-スチリルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、のような3官能性のメチルシラン;エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、のような3官能性のエチルシラン;プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、のような3官能性のプロピルシラン;ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、のような3官能性のブチルシラン;ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシラン、のような3官能性のヘキシルシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような3官能性のフェニルシラン。有機ケイ素化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
また、上記有機ケイ素化合物以外に、1分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、1分子中に3つの反応基を有する有機ケイ素化合物(三官能性シラン)、1分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)または1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)を併用してもよい。例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0047】
ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、トリメチルシリルクロライド、トリエチルシリルクロライド、トリイソプロピルシリルクロライド、t-ブチルジメチルシリルクロライド、N,N‘-ビス(トリメチルシリル)ウレア、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフロロアセトアミド、トリメチルシリルトリフロロメタンスルホネート、1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン、トリメチルシリルアセチレン、ヘキサメチルジシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトライソシアネートシラン、メチルトリイソシアネートシラン、ビニルトリイソシアネートシラン。
【0048】
トナー粒子中の前記有機ケイ素重合体の含有量は0.50質量%以上7.0質量%以下であることが好ましい。有機ケイ素重合体の含有量が0.50質量%以上である場合、トナー母粒子を十分に被覆することができるため、現像耐久性が向上し易い。7.0質量%以下である場合、有機ケイ素重合体の膜状化を抑制し易く、光沢均一性が向上し易い。より好ましくは、0.80質量%以上5.0質量%以下であり、さらに好ましくは、0.80質量%以上2.0質量%以下である。
【0049】
本発明のトナー粒子は下記処理方法(iv)で処理した際の、90℃における損失弾性率をG(90)としたとき、2×104≦G(90)≦1×106であることが好ましい。
(iv) トナー粒子をpH13.5のNaOH水溶液中に分散させ、50℃、3時間加熱後、ろ過、洗浄、乾燥を行う。
【0050】
上記処理(iv)を行ったトナーは、有機ケイ素重合体の大部分が溶解され、トナー母粒子の変形特性を反映することが考えられる。よってG(90)が上記範囲内である場合、定着時において、適正な変形が行われる。G(90)≦1×106である場合、定着時において、トナー母粒子が十分に変形し、光沢均一性が向上し易い。また、20000≦G(90)である場合、ホットオフセットを抑制し易く、光沢均一性が向上し易い。G(90)のより好ましい範囲は、2×104≦G(90)≦1×105である。G(90)はトナー母粒子のガラス転移点(Tg)を変更すること、後述するワックスの量や種類を変更すること、後述する顔料等の着色剤の量や種類を変更すること、トナー母粒子を構成する樹脂のピーク分子量、重量平均分子量、架橋量などを変更することなどによって制御することができる。
【0051】
本発明のトナー母粒子は結着樹脂を含有することが好ましい。結着樹脂としてはポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂などを使用することができる。
【0052】
この中でも、現像耐久性の観点から、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂は前述の樹脂Aのポリエステル部位を合成する際と同様にして、製造することができる。ビニル系樹脂も、樹脂Aのビニル系高分子部位の製造と同様にして製造することができる。これらの結着樹脂は重合体で添加する他、懸濁重合法や乳化凝集重合法を用いて、粒子形成と同時に重合させても良い。
【0053】
本発明のトナー母粒子は、トナーの離型性を向上させるほか、G(90)を制御する目的としてワックスを含有しても良い。ワックスとしては、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、脂肪族炭化水素系ワックスのブロック共重合物、脂肪酸エステルを主成分とするワックス、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したもの、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。上記の中でも、G(90)を制御する目的として使用できるエステルワックスとしては例えば、以下のようなものが挙げられる。ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルのような1価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、または、1価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;エチレングリコールジステアレート、セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートのような2価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、または、2価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;グリセリントリベヘネートのような3価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、または、3価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートのような4価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、または、4価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートのような6価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、または、6価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ポリグリセリンベヘネートのような多価アルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、または、多価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;カルナバワックス、ライスワックスのような天然エステルワックス。ワックスの含有量は、トナー粒子100質量部に対して1.50質量部以上30.00質量部以下であることが好ましい。エステルワックスは単独で用いても良いし、脂肪族炭化水素ワックスなどと併用して用いても良い。
【0054】
本発明のトナー母粒子は着色剤を含有してもよい。該着色剤は特段限定されず、例えば以下に示す公知のものを使用することができる。
【0055】
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。
【0056】
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180、185。
【0057】
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。
【0058】
パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
【0059】
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
【0060】
C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254、269。
【0061】
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
【0062】
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独または混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。
【0063】
本発明のトナー母粒子は荷電制御剤を含有してもよい。該荷電制御剤としては公知のものが利用できる。荷電制御剤としてはトナーを負荷電性に制御するものと正荷電性に制御するものがある。トナーを負荷電性に制御するものとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0064】
モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系荷電制御剤。
【0065】
一方、トナーを正荷電性に制御するものとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0066】
ニグロシン及び脂肪酸金属塩のようなによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
【0067】
本発明のトナー母粒子の製造方法について説明する。本発明のトナー母粒子は従来公知の方法によって製造することができる。例えば、樹脂A、結着樹脂を構成する重合性単量体、ワックス、着色剤等を含む重合性単量体組成物を水系媒体に懸濁、造粒し、重合性単量体組成物中の重合性単量体を重合する懸濁重合法;樹脂A、結着樹脂、ワックス、着色剤等の各種トナー構成材料を混練、粉砕、分級する混練粉砕法;樹脂A、結着樹脂、ワックス、着色剤等の分散液を混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化凝集法;結着樹脂を構成する重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、樹脂Aを乳化、分散させた分散液と、ワックス、着色剤等の乳化分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;有機溶媒中に樹脂A、結着樹脂、ワックス、着色剤等を含む有機溶媒分散液を水系媒体に懸濁させて造粒する溶解懸濁法;等が使用できる。
【0068】
上記製造方法の中でも、懸濁重合法を用いることが好ましい。さらに懸濁重合法によって得られたトナー母粒子の水系分散液をそのまま用いて、有機ケイ素重合体の形成することと、有機ケイ素重合体がトナー粒子の表面に均一に析出し易く、より好ましい。
【0069】
トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールするために、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。架橋性単量体としては、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。多官能の架橋性単量体としては以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート。好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001質量部以上15.000質量部以下である。
【0070】
本発明において、トナーの画質向上のために、外添剤がトナー粒子に外部添加されていてもよい。外添剤としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、または酸化アルミニウム微粉体のような無機微粉体が好適に用いられる。これら無機微粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイルまたはそれらの混合物の疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。さらに、本発明のトナーは必要に応じて、上記以外の外添剤をトナー粒子に混合してもよい。無機微粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.50質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0071】
以下、トナーに係る各物性の測定方法に関して記載する。
【0072】
<ネットワーク指数(NI)の算出方法>
(トナー処理方法)
本発明のNIを得るために、以下のような(i)~(iii)の工程でトナーを処理した。
処理(i):スターラーチップを入れた容器にRO水20gを秤量し、温度を25℃に調整する。2M 水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを11.5、12.0、12.5に各々する。各々調整した、水溶液に対して、コンタミノンN(富士フイルム和光純薬社製)を1滴滴下し、トナーを2.0g投入する。超音波ホモジナイザー(VP-050 TAITEC社製)を用いて出力20%で、5分間分散処理を行い、トナーの水分散体を得る。
処理(ii):処理(i)によって得られたpHの異なるトナーの水分散体の温度を55℃に調節し、マグネチックスターラーを用いて3時間撹拌する。
処理(iii):処理(ii)で処理された水分散体を減圧ろ過し、RO水40gで5回洗浄した後、真空乾燥機で24時間乾燥する。
【0073】
処理(i)~(iii)で処理されたトナーは下記方法で貯蔵弾性率を測定した。
【0074】
(貯蔵弾性率の測定方法)
貯蔵弾性率の測定はMCR302(アントンパール社製)を用いて行った。
【0075】
トナー120mgを秤量し、錠剤成型機を用いて、20kNで1分間成形を行い、直径8mmの円盤状の試料を得た。
【0076】
得られた試料を用いて、下記条件で試料を測定治具にセットした。
測定治具名:Measuring plate PP08/SD:8mm sandblasted
セット条件:80℃ 0.1N
【0077】
次に、以下の条件にて、粘弾性測定を行った。
【0078】
周波数1Hz、ノーマルフォース100mNの設定で、印加歪みを0.5%から7.0まで、0.22%/分で変えながら、70℃から130℃まで2℃/分で昇温を行い、30分測定を行った。この際のサンプリングピッチは1ポイント/0.5分で行った。
【0079】
上記測定において、計算される貯蔵弾性率の100℃における値を用いてNIの算出を行った。
【0080】
(NIの計算方法)
pH11.5、12.0、12.5にて処理したトナーの100℃における貯蔵弾性率をそれぞれG(11.5)、G(12.0)、G(12.5)としたとき、横軸にpH(11.5、12.0、12.5)を取り、対応する貯蔵弾性率G(11.5)、G(12.0)、G(12.5)を縦軸にプロットし、グラフを作成する。プロットした3点を、最小二乗法を用いて線形近似を行う。得られた近似曲線の傾きをNIとする。グラフの概略図を図2に示す。
【0081】
<G(90)の算出方法>
前記NIの算出方法と同様にしてpHを13.5に調整したトナーの水分散液を得る。
【0082】
得られたトナーを50℃に加熱し、3時間撹拌する。処理後のトナー分散液を濾別、洗浄、乾燥し、上記NIの算出方法における貯蔵弾性率の測定方法と同様に測定した。得られたデータの、90℃における損失弾性率(Pa)の値を読み取り、G(90)とした。
【0083】
<トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の調整法(有機ケイ素重合体の取り出し)>
まず、外添剤などでトナー粒子の表面が処理されている場合は、下記方法によって外添剤を除去し、トナー粒子を得る。
【0084】
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(富士フイルム和光純薬社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
【0085】
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧ろ過器でろ過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
【0086】
次に、トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、以下のように調製する。
【0087】
トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.84)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出する。さらに新しいTHF200mLに交換して20時間抽出する。最後に再度新しいTHF200mLに交換して20時間抽出する(使用したTHFの総量は600mL、総抽出時間は60時間)。
【0088】
円筒濾紙中の濾物を40℃で数時間真空乾燥を行って得られたものがテトラヒドロフラン不溶分である。
【0089】
さらに、必要に応じてテトラヒドロフラン不溶分から顔料等の不溶分を除去し、有機ケイ素重合体を単離するために、上記の外添剤を除去する作業と同様の方法を行ってもよい(上記の「トナー」の代わりに「テトラヒドロフラン不溶分」を用いる。有機ケイ素重合体は遠心分離後の下層に単離されることが多い)。
【0090】
<トナー粒子のテトラヒドロフラン可溶分の調整法(樹脂Aの取り出し)>
トナー粒子中の樹脂Aの取り出しはテトラヒドロフラン(THF)を用いた抽出物を溶媒グラジエント溶出法により分離することで行う。調製方法を以下に示す。
【0091】
トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.84)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、抽出液を脱溶剤して得られた固体がTHF可溶分である。THF可溶分には樹脂Aが含まれる。これを複数回行い、必要な量のTHF可溶分を得る。
【0092】
溶媒グラジエント溶出法には、グラジエント分取HPLC(島津製作所製LC-20AP高圧グラジエント分取システム、Waters社製SunFire分取カラム50mmφ250mm)を用いる。カラム温度は30℃、流量は50mL/分、移動相には貧溶媒としてアセトニトリル、良溶媒としてTHFを用いる。抽出により得られたTHF可溶分0.02gをTHF1.5mLに溶解させたものを分離のための試料とする。移動相はアセトニトリル100%の組成から開始し、試料注入後5分経過した時点で毎分4%ずつTHFの比率を増加させ、25分かけて移動相の組成をTHF100%とする。得られた分画を乾固させることで成分を分離することができる。これにより樹脂Aを得ることができる。どの分画成分が樹脂Aであるかは後述するケイ素原子の含有量の測定及び13C-NMR測定により判別することができる。
【0093】
<樹脂A中のケイ素含有量の測定方法>
有機ケイ素重合体の含有量及び樹脂A中のケイ素含有量の測定は、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
【0094】
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中に樹脂A単体もしくは前記調整法で得たテトラヒドロフラン可溶分4g、または、有機ケイ素重合体もしくはテトラヒドロフラン不溶分4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
【0095】
また、バインダー粒子[商品名:Spectro Blend、成分:C81.0質量%,O2.9質量%,H13.5質量%,N2.6質量%、化学式:C1938ON、形状:粉末(44μm);(株)リガク製]100質量部に対して、SiO2粒子(疎水性フュームドシリカ)[商品名:AEROSIL NAX50、比表面積:40±10m2/g、炭素含有量:0.45%~0.85%;日本アエロジル(株)製]0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、前記SiO2粒子を5.0質量部、10.0質量部となるように前記バインダー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
【0096】
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO2粒子添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
【0097】
次に、分析対象の樹脂Aもしくは前記調整法で得たテトラヒドロフラン可溶分、または、有機ケイ素重合体もしくはテトラヒドロフラン不溶分を、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線から樹脂A中のケイ素原子の含有量を求める。
【0098】
<トナー中における有機ケイ素重合体の含有量の測定方法>
上記樹脂A中のケイ素含有量の測定方法において、測定サンプルをトナーに変更した以外は同様にして測定を行い、トナー中の有機ケイ素重合体の含有量を測定した。
【0099】
<式(2)で表される構造の確認方法>
トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(2)で表される構造は以下の方法を用いて確認する。
【0100】
式(2)のR4で表されるアルキル基は、13C-NMRにより確認する。
【0101】
13C-NMR(固体)の測定条件)
装置:JEOL RESONANCE製 JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:前記調製法で得たテトラヒドロフラン不溶分 150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:8000回
【0102】
当該方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si-CH3)、エチル基(Si-C25)、プロピル基(Si-C37)、ブチル基(Si-C49)、ペンチル基(Si-C511)、ヘキシル基(Si-C613)またはフェニル基(Si-C65-)に起因するシグナルの有無により、式(2)のR4で表されるアルキル基を確認する。
【0103】
<式(1)で表される構造の同定>
式(1)で表される構造中の高分子部位P1、L1部位、R1~R3部位は、1H-NMR分析、13C-NMR分析、29Si-NMR分析及びFT-IR分析を用いて行う。分析試料としては、前記調整法で得たテトラヒドロフラン可溶分、または別途合成した樹脂Aを用いる。
【0104】
1が前記式(4)で表されるようなアミド結合を含有する場合は、1H-NMR分析により同定できる。具体的には、アミド基のNH部位のプロトンのケミカルシフト値によって同定が可能であり、積分値の算出によってアミド基の定量が可能である。
【0105】
また、式(1)で表される構造中のR1~R3がアルコキシ基、またはヒドロキシ基を含有する場合には、前記「29Si-NMR(固体)の測定条件」と同じ方法によりアルコキシ基、またはヒドロキシ基のケイ素原子に対する価数を決定することが可能である。分析試料としては、前記調整法で得たテトラヒドロフラン可溶分、または別途合成した樹脂A等用いる。
【0106】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
【0107】
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)でろ過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調製する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
【0108】
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0109】
<樹脂の酸価の測定方法>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。樹脂の酸価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
【0110】
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
【0111】
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。
【0112】
前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作成されたものを用いる。
【0113】
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
【0114】
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。
【0115】
<重量平均粒子径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒子径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
【0116】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0117】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
【0118】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0119】
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0120】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒子径(D4)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒子径(D4)である。
【実施例
【0121】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例6~8、17、22及び24は参考例である。実施例中及び比較例中の各材料の「部」は特に断りがない場合、すべて質量基準である。
【0122】
<樹脂(P-1)の合成>
下記の手順により樹脂(P-1)を合成した。
【0123】
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブ中に下記材料を仕込み、窒素雰囲気下、常圧、200℃で5時間反応を行った。
・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2.1モル付加物:22.7部
・テレフタル酸:15.6部
・イソソルビド:0.58部
・エチレングリコール:1.86部
・テトラブトキシチタネート:0.1部
その後、トリメリット酸1.05部及びテトラブトキシチタネート0.12部を追加し、220℃で3時間反応し、さらに10mmHg~20mmHgの減圧下で2時間反応して樹脂(P-1)を得た。
【0124】
得られたポリエステル(P-1)の酸価は6.2mgKOH/g、Mw=14500であった。
【0125】
<樹脂(P-2)の合成>
下記の手順により樹脂(P-2)を合成した。
【0126】
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブ中に下記材料を仕込み、窒素雰囲気下、常圧、200℃で5時間反応を行った。
・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2.1モル付加物:39.6部
・テレフタル酸:8.0部
・イソフタル酸:7.6部
・テトラブトキシチタネート:0.1部
その後、トリメリット酸0.01部及びテトラブトキシチタネート0.12部を追加し、220℃で3時間反応し、さらに10mmHg~20mmHgの減圧下で所望の分子量が得られるまで反応して樹脂(P-2)を得た。
【0127】
得られた樹脂(P-2)の酸価は5.8mgKOH/g、Mw=15500であった。
【0128】
<樹脂(P-3)の合成>
樹脂(P-1)の合成において、トリメリット酸を加えず、テレフタル酸:15.6部を16.3部に変更し、反応時間を変更した以外は同様にして、樹脂(P-3)を得た。得られた樹脂(P-3)の酸価は0.4mgKOH/g、Mw=90000であった。
【0129】
<樹脂(P-4)の合成>
以下のようにして、スチレンアクリル樹脂(P-4)合成した。
【0130】
プロピレングリコールモノメチルエーテル100.0部を窒素置換しながら加熱し、液温120℃以上で還流させた。そこへ、スチレン72.9部、アクリル酸21.6部、及びtert-ブチルパーオキシベンゾエート[有機過酸化物系重合開始剤、日油(株)製、商品名:パーブチルZ]1.0部を混合したものを3時間かけて滴下した。
【0131】
滴下終了後、溶液を3時間撹拌した後、液温を170℃まで昇温しながら常圧蒸留した。液温が170℃に到達した後、1hPaに減圧し、1時間蒸留して脱溶剤し、樹脂固形物を得た。該樹脂固形物をテトラヒドロフランに溶解し、n-ヘキサンで再沈殿させて析出した固体を濾別することで樹脂(P-4)を得た。得られた樹脂(P-4)の酸価は159mgKOH/g、Mw=21000であった。
【0132】
<樹脂(A-1)の合成>
前記樹脂(P-1)中のカルボキシ基と、アミノシラン中のアミノ基とをアミド化し、樹脂(A-1)を以下のように合成した。
【0133】
N,N-ジメチルアセトアミド200.0部に、樹脂(P-1)40.0部を溶解し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン0.98部、縮合剤としてDMT-MM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルフォリニウムクロライド)を1.4部、トリエチルアミン1.12部を添加し、常温で5時間撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し再沈殿してろ過することで、樹脂(A-1)を得た。得られた樹脂(A-1)の物性を表2に示す。
【0134】
<樹脂(A-2)の合成>
樹脂(P-4)の合成において、スチレン72.9部をスチレン98.0部、アクリル酸21.6部をビニルトリエトキシシラン2.0部に変更した以外は同様にして、樹脂(A-2)を合成した。得られた樹脂(A-2)の物性を表2に示す。
【0135】
<樹脂(A-3)の合成>
樹脂(A-2)の合成において、ビニルトリエトキシシラン2.0部を3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.0部に変更した以外は同様にして樹脂(A-3)を合成した。得られた樹脂(A-3)の物性を表2に示す。
【0136】
<樹脂(A-4)の合成>
樹脂(A-1)10.0部をトルエン90.0部に溶解した溶液に、純水400.0部と混合撹拌し、希塩酸を用いてpHを4.0に調整し、常温で10時間撹拌させた後、撹拌を止め分液ロートに移し油相を抽出した。前記油相を濃縮し、メタノールで再沈殿することによって、樹脂(A-4)を得た。得られた樹脂(A-4)の物性を表2に示す。
【0137】
<樹脂(A-5)、(A-7)~(A-9)の合成>
樹脂(A-1)の合成において、表1のようにベース樹脂種、シランカップリング剤種と量、縮合剤量、塩基量を変更した以外は同様にして樹脂(A-5)、(A-7)~(A-9)を合成した。得られた樹脂(A-5)、(A-7)~(A-9)の物性を表2に示す。
【0138】
<樹脂(A-6)の合成>
樹脂(A-3)の合成において、tert-ブチルパーオキシベンゾエート1.0部を0.2部に変更し、反応時間を変更した以外は同様にして樹脂(A-6)を合成した。得られた樹脂(A-6)の物性を表2に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
表1中、3-APTESは3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-APTMSは3-アミノプロピルトリメチルシラン、DMT-MMは4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルフォリニウムクロライド、TEAはトリエチルアミンを示す。
【0141】
【表2】
【0142】
<トナー母粒子1の製造例>
(水系媒体1の調製工程)
反応容器中のイオン交換水1000.0部に、リン酸ナトリウム 14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1時間保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて撹拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体1を得た。
【0143】
(重合性単量体組成物の調製工程)
・スチレン :60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 :6.5部
前記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5時間分散させて、顔料分散液を調製した。前記顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン:14.0部
・n-ブチルアクリレート:26.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン):0.20部
・樹脂(A-1):6.0部
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃):10.0部
・ベヘン酸ベヘニル:10.0部
・荷電制御剤:0.5部
(3、5-ジ-tert-ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
【0144】
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて12000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
【0145】
(重合工程)
高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根に撹拌機を換え、150rpmで撹拌しながら70℃を保持して5時間重合を行い、95℃に昇温して2時間加熱することで重合反応を行い、トナー母粒子1の分散液を得た。
【0146】
<トナー母粒子2の製造例>
トナー母粒子1の製造例において、樹脂Aを入れなかったこと以外は同様にして、トナー母粒子2の分散液を得た。
【0147】
<トナー母粒子3~6、11~14の製造例>
トナー母粒子1の製造例において、樹脂Aの種類を表3のように変更した以外は同様にして、トナー母粒子3~6、11~14の分散液を得た。
【0148】
<トナー母粒子7の製造例>
トナー母粒子1の製造例において、ベヘン酸ベヘニルの部数を10.0部から5.0部に変更したことと、ジビニルベンゼンを0.20部から0.40部に変更した以外は同様にして、トナー母粒子7の分散液を得た。
【0149】
<トナー母粒子8の製造例>
トナー母粒子1の製造例において、ベヘン酸ベヘニル入れなかったことと、ジビニルベンゼンを0.20部から0.50部に変更したこと以外は同様にして、トナー母粒子8の分散液を得た。
【0150】
<トナー母粒子9の製造例>
トナー母粒子1の製造例において、ベヘン酸ベヘニルの部数を10.0部から20部に変更したことと、ジビニルベンゼンを0.20部から0.10部に変更した以外は同様にして、トナー母粒子9の分散液を得た。
【0151】
<トナー母粒子10の製造例>
トナー母粒子1の製造例において、ベヘン酸ベヘニルの部数を10.0部から25.0部に変更したこと、ジビニルベンゼンを入れなかったこと、スチレン14.0部を5.0部変更したこと、ブチルアクリレート26.0部を35.0部に変更したこと以外は同様にして、トナー母粒子10の分散液を得た。
【0152】
<トナー母粒子15の製造例>
トナー母粒子2の製造例において、顔料分散液にメチルトリエトキシランを9.0部加えたこと以外は同様にして、トナー母粒子15の分散液を得た。
【0153】
<トナー母粒子16の製造例>
トナー母粒子2の製造例において、ベヘン酸ベヘニル入れなかったこと以外は同様にして、トナー母粒子16の分散液を得た。
【0154】
<有機ケイ素化合物水溶液1の調製>
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを3.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を40℃にした。その後、メチルトリエトキシシラン40.0部を添加して120分間撹拌し、有機ケイ素化合物水溶液1を得た。
【0155】
<有機ケイ素化合物水溶液2の調製>
有機ケイ素化合物水溶液1の調製において、メチルトリエトキシシラン40.0部に加えて、テトラエトキシシラン8.0部を添加したこと以外は同様にして、有機ケイ素化合物水溶液2を得た。
【0156】
<有機ケイ素化合物水溶液3の調製>
有機ケイ素化合物水溶液1の調製において、メチルトリエトキシシラン40.0部をヘキシルトリエトキシシラン40.0部に変更した以外は同様にして、有機ケイ素化合物水溶液3を得た。
【0157】
<有機ケイ素化合物水溶液4の調製>
有機ケイ素化合物水溶液1の調製において、メチルトリエトキシシラン40.0部をテトラエトキシシラン40.0部に変更した以外は同様にして、有機ケイ素化合物水溶液4を得た。
【0158】
<トナー1の製造例>
(有機ケイ素重合体の形成工程)
前記トナー母粒子1の分散体1100部に対して、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを11.5に調整した。これを60℃に加温し、撹拌しながら前記有機ケイ素化合物水溶液1を加えた。添加後、300分温度を60℃に保持しながら撹拌を継続し、縮合反応を行った。
【0159】
(洗浄、乾燥工程)
有機ケイ素重合体の形成工程が終了したトナー粒子の分散液を冷却し、トナー粒子塩酸を加えてpH=1.5以下に調整し、1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。
【0160】
得られたトナーケーキを気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)を用いて乾燥し、さらにコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットしてトナー粒子1を得た。
【0161】
乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。
【0162】
得られたトナー粒子を外添することなく、トナー1として得た。得られたトナー1の物性を表4に示す。
【0163】
<トナー2~25、比較用トナー3、5の製造例>
トナー1の製造例において、トナー母粒子と有機ケイ素重合体の組成、量、形成条件を表3のように変更した以外は同様にして、トナー2~25、比較用トナー3、5の製造を行った。得られたトナー2~25、比較用トナー3、5の物性を表4に示す。
【0164】
<比較用トナー1の製造例>
トナー母粒子15の分散液を、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9.0に調整し、60℃に加温した後、300分撹拌し続けた。その後、洗浄、乾燥工程を行い、比較用トナー1を得た。得られた比較用トナー1の物性を表4に示す。
【0165】
<比較用トナー2の製造例>
トナー6の製造例において、有機ケイ素化合物水溶液1を用いず、メチルトリエトキシシランをそのまま8.0部加えたことと、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを11.5に調整する工程をpH9.0に変更した以外は同様にして比較用トナー2を得た。得られた比較用トナー2の物性を表4に示す。
【0166】
<比較用トナー4の製造例>
トナー母粒子16の分散液をトナー1の製造例と同様にして洗浄、乾燥工程を行った。得られたトナー粒子10部を0.3質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液100部中に超音波分散機を用いて分散し、トナーの分散液を得た。次に、別の容器にメチルトリエトキシシラン30部を0.3質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液100部中に超音波分散機を用いて分散し、25℃に温度を保持した。前記トナー分散液中に投入した。投入後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH11.4に調整し、温度を25℃に保持したまま、24時間反応させた。これをエタノールで洗浄後、イオン交換水でろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで洗浄を繰り返した後に濾別し、乾燥を行った。得られた比較用トナー4の物性を表4に示す。
【0167】
【表3】
(表3中、MTESはメチルトリエトキシシラン、TEOSはテトラエトキシシラン、HTESはヘキシルトリエトキシシランを表す)
【0168】
【表4】
【0169】
〔実施例1~25〕
実施例1~25では、トナー1~25を用いて、現像耐久性と光沢均一性の評価を行った。
【0170】
〔比較例1~5〕
比較例1~5では、比較用トナー1~5を用いて、現像耐久性と光沢均一性の評価を行った。
【0171】
[現像耐久性の評価方法]
市販のキヤノン製プリンターLBP-712Ciを使用し、耐久性の評価を行った。
【0172】
評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、上記トナーを100g充填したものを使用した。
【0173】
評価前のカートリッジはそれぞれ、高温高湿度(H/H)環境下(30℃ 80%RH)、低温低湿度(L/L)環境下(15℃ 10%RH)に24時間放置した。
【0174】
上記カートリッジを、シアンステーションに装着し、その他にはダミーカートリッジを装着することで評価を実施した。
【0175】
H/H、L/L環境下において、Canon Oce Red Label(80g/m2)を使用し、印字率が1%の画像を10,000枚出力した。
【0176】
上記画像出力後、全面ベタ画像を1枚出力し、濃度を測定した。
【0177】
濃度測定はX-Riteカラー反射濃度計(エックスライト社)を用いて行った。評価基準は以下の通りである。
【0178】
評価結果を表5に示す。
【0179】
(評価基準)
A:濃度が1.45以上
B:濃度が1.35以上
C:濃度が1.25以上
D:濃度が1.25未満
【0180】
続いて、ベタ白画像を出力して、白地部反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Dr-Dsをカブリ値とした。
【0181】
白地部反射濃度の測定は、反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC-6DS 東京電色社製)を用い、フィルターには、アンバーライトフィルターを用いた。
【0182】
数値が小さいほど評価が良好であることを示す。評価基準は以下の通りである。評価結果を表5に示す。
【0183】
(評価基準)
A:0.5%以下
B:0.5%より大きく1.0%以下
C:1.0%より大きく2.0%以下
D:2.0%より大きい
【0184】
[光沢均一性の評価]
上記現像耐久性の評価において用いた、LBP-712Ciを紙上の載り量を調節できるように改造し、定着器を取り外した。
【0185】
上記現像耐久性の評価に用いたものと同様のカートリッジを用いて、メディア(GF-C081、81.4g/m2)上にトナー載り量0.45mg/cm2で全面ベタ画像を出力した。次いで、取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードを調節できるように改造し、常温常湿(N/N)環境下(23℃、60%RH)、プロセススピードを280mm/sに設定した。温調を135℃に設定した外部定着器を用いて、上記未定着画像の定着を行った。定着された画像の上段3点、中段3点、下段3点の計9点の光沢度を測定した。測定にはPG-3D(日本電色工業製)を用いた。測定した光沢度の最も高い値(Gmax)と最も低い値(Gmin)の差(Gmax-Gmin)を光沢均一性の評価基準とした。
【0186】
(評価基準)
A:1.0%以下
B:1.0%より大きく2.0%以下
C:2.0%より大きく3.0%以下
D:3.0%より大きい
【0187】
【表5】
図1
図2