(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】バタフライ弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/22 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
F16K1/22 D
F16K1/22 E
(21)【出願番号】P 2020193904
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】田中 直記
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-106682(JP,A)
【文献】特開2001-324029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0231070(US,A1)
【文献】実開昭58-029137(JP,U)
【文献】特開2017-180439(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0299803(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0148106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる通路及び所定の軸線上に配置された軸受孔を画定するボディと、
前記軸受孔に回動自在に通され、前記通路に臨む領域に形成された二面幅部及び前記二面幅部の中央を貫通するスリット孔を有すると共に外輪郭が円柱状をなすシャフトと、
前記スリット孔に嵌合されて前記シャフトに固定され前記通路を開閉するバタフライ弁と、を備え、
前記シャフトの
前記通路に臨む領域と前記バタフライ弁が近接する表面領域において、前記バタフライ弁の全開状態で流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する段差抑制部を有
し、
前記シャフトは、前記軸線の方向における前記二面幅部の両側で前記通路に臨むと共に前記軸受孔に隣接する領域において前記二面幅部から前記外輪郭に連続する凹状湾曲部を含み、
前記段差抑制部は、前記全開状態における前記二面幅部の上流側領域において前記シャフトに形成された上流側面取り部と、前記全開状態における前記凹状湾曲部の上流側領域において前記シャフトに形成された上流側湾曲面取り部を含む、
ことを特徴とするバタフライ弁装置。
【請求項2】
前記シャフトは、前記二面幅部の領域において、
前記バタフライ弁を締結する締結ネジを通して捩じ込む座繰り雌ネジ孔を有
する、
ことを特徴とする請求項1に記載のバタフライ弁装置。
【請求項3】
前記上流側面取り部は、前記座繰り雌ネジ孔の座繰り外縁を起点として上流側に下り傾斜するように形成されている、
ことを特徴とする請求項
2に記載のバタフライ弁装置。
【請求項4】
前記段差抑制部は、前記全開状態における前記二面幅部の下流側領域において前記シャフトに形成された下流側面取り部を含む、
ことを特徴とする請求項
1に記載のバタフライ弁装置。
【請求項5】
前記シャフトは、前記二面幅部の領域において、前記バタフライ弁を締結する締結ネジを通して捩じ込む座繰り雌ネジ孔を有し、
前記下流側面取り部は、前記座繰り雌ネジ孔の座繰り外縁を起点として下流側に下り傾斜するように形成されている、
ことを特徴とする請求項
4に記載のバタフライ弁装置。
【請求項6】
前記段差抑制部は、前記全開状態における前記凹状湾曲部の下流側領域において前記シャフトに形成された下流側湾曲面取り部を含む、
ことを特徴とする請求項
4又は5に記載のバタフライ弁装置。
【請求項7】
前記バタフライ弁は、前記ボディの軸受孔に組み付けられた前記シャフトに対して上流側から前記スリット孔に挿入されるように形成され、
前記段差抑制部は、前記バタフライ弁に形成されて、前記全開状態で上流側から前記二面幅部に向けて板厚が増加する上流側テーパ面を含む、
ことを特徴とする請求項
1ないし6いずれか一つに記載のバタフライ弁装置。
【請求項8】
前記バタフライ弁は、前記ボディの軸受孔に組み付けられた前記シャフトに対して上流側から前記スリット孔に挿入される上流側弁及び前記スリット孔に対して下流側から挿入される下流側弁を含む二分割に形成され、
前記上流側弁及び前記下流側弁は、それぞれ、前記スリット孔に嵌合される嵌合部を含み、
前記段差抑制部は、前記上流側弁に形成されて前記全開状態で上流側から前記二面幅部に向けて板厚が増加する上流側テーパ面と、前記下流側弁に形成されて前記全開状態で下流側から前記二面幅部に向けて板厚が増加する下流側テーパ面と、を含む、
ことを特徴とする請求項
1ないし6いずれか一つに記載のバタフライ弁装置。
【請求項9】
前記上流側面取り部と前記二面幅部とのなす角度をα、前記下流側面取り部と前記二面幅部とのなす角度をβとするとき、角度α=角度βを満たすように設定されている、
ことを特徴とする請求項
4ないし6いずれか一つに記載のバタフライ弁装置。
【請求項10】
前記角度α及び前記角度βは、10°~46.5°の範囲に設定されている、
ことを特徴とする請求項
9に記載のバタフライ弁装置。
【請求項11】
前記上流側面取り部と前記二面幅部とのなす角度をαとするとき、
前記角度αは、10°~46.5°の範囲に設定されている、
ことを特徴とする請求項
1ないし8いずれか一つに記載のバタフライ弁装置。
【請求項12】
前記下流側面取り部と前記二面幅部とのなす角度をβとするとき、
前記角度βは、10°~40°の範囲に設定されている、
ことを特徴とする請求項
4ないし6いずれか一つに記載のバタフライ弁装置。
【請求項13】
前記シャフトの外径をD、前記シャフトの外径方向における前記二面幅部の幅寸法をW1とするとき、
前記幅寸法W1は、0.4×D~0.7×Dの範囲に設定されている、
ことを特徴とする請求項
1ないし12いずれか一つに記載のバタフライ弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の通路を開閉するバタフライ弁を備えたバタフライ弁装置に関し、特に、自動二輪車等の車両に搭載されるエンジンの吸気系又は排気系に適用されて吸気又は排気の流量を調整するバタフライ弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバタフライ弁としては、円板状の弁体と、弁体を回動自在に支持する回転軸を備える構成において、弁体の厚さ方向に膨出すると共に互いに離隔して相対する二つのボスを設け、二つのボスにそれぞれ回転軸を嵌合したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このバタフライ弁においては、弁体の中央領域は厚さ方向に膨出していないため、流体の流れに対する抵抗は低減されるものの、通路を画定するボディに対してバタフライ弁を組み付ける際に、弁体を予め通路内に保持した状態で、ボディの軸受孔の両側から回転軸を挿入して弁体に嵌合させる必要があり、組付けが容易ではない。
【0004】
また、従来のバタフライ弁装置としては、通路及び軸受孔を画定するボディと、円板状の弁体と、弁体を挟持する表裏一対の板状の支持軸と、ボディの軸受孔に嵌め込まれると共に一対の支持軸の両端部を挿入する凹部を有する二つの軸部を備えたものが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
このバタフライ弁装置においては、表裏一対の支持軸が略矩形断面の板状をなすため、弁体が全開の状態で、弁体の表面に沿うように流れてきた流体は、一対の支持軸の直立壁をなす段差部分に衝突して掻き乱され、又、支持軸の下流側において渦や乱流を生じて流量の低下を招く虞がある。
【0006】
また、軸部材として、板状をなす表裏一対の支持軸と、ボディの軸受孔に挿入される二つの軸部を備える構成であるため、部品点数が多くて構造が複雑である。
さらに、弁体をボディの通路内に組み付ける際に、弁体を表裏一対の支持軸で挟持するように組み付けた後に、表裏一対の支持軸の両端部をボディの軸受孔に通路側から挿入しなければならず、組付けが容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-14408号公報
【文献】特開平8-4906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、組付け作業の容易化、流体の流れ抵抗の低減、全開時の流量増加を図れるバタフライ弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバタフライ弁装置は、流体が流れる通路及び所定の軸線上に配置された軸受孔を画定するボディと、軸受孔に回動自在に通され、通路に臨む領域に形成された二面幅部及び二面幅部の中央を貫通するスリット孔を含むと共に外輪郭が円柱状をなすシャフトと、スリット孔に嵌合されてシャフトに固定され通路を開閉するバタフライ弁とを備え、シャフトの通路に臨む領域とバタフライ弁が近接する表面領域において、バタフライ弁の全開状態で流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する段差抑制部を有し、シャフトは、軸線の方向における二面幅部の両側で通路に臨むと共に軸受孔に隣接する領域において二面幅部から外輪郭に連続する凹状湾曲部を含み、段差抑制部は、全開状態における二面幅部の上流側領域においてシャフトに形成された上流側面取り部と、全開状態における凹状湾曲部の上流側領域においてシャフトに形成された上流側湾曲面取り部を含む、構成となっている。
【0010】
上記バタフライ弁装置において、シャフトは、二面幅部の領域において、バタフライ弁を締結する締結ネジを通して捩じ込む座繰り雌ネジ孔を有する、構成を採用してもよい。
【0012】
上記上流側面取り部を含むバタフライ弁装置において、上流側面取り部は、座繰り雌ネジ孔の座繰り外縁を起点として上流側に下り傾斜するように形成されている、構成を採用してもよい。
【0014】
上記バタフライ弁装置において、段差抑制部は、全開状態における二面幅部の下流側領域においてシャフトに形成された下流側面取り部を含む、構成を採用してもよい。
【0015】
上記座繰り雌ネジ孔及び下流側面取り部を含むバタフライ弁装置において、下流側面取り部は、座繰り雌ネジ孔の座繰り外縁を起点として下流側に下り傾斜するように形成されている、構成を採用してもよい。
【0016】
上記下流側面取り部を含むバタフライ弁装置において、段差抑制部は、全開状態における凹状湾曲部の下流側領域においてシャフトに形成された下流側湾曲面取り部を含む、構成を採用してもよい。
【0020】
上記バタフライ弁装置において、バタフライ弁は、ボディの軸受孔に組み付けられたシャフトに対して上流側からスリット孔に挿入されるように形成され、段差抑制部は、バタフライ弁に形成されて、全開状態で上流側から二面幅部に向けて板厚が増加する上流側テーパ面を含む、構成を採用してもよい。
【0021】
上記バタフライ弁装置において、バタフライ弁は、ボディの軸受孔に組み付けられたシャフトに対して上流側からスリット孔に挿入される上流側弁及びスリット孔に対して下流側から挿入される下流側弁を含む二分割に形成され、上流側弁及び下流側弁は、それぞれ、スリット孔に嵌合される嵌合部を含み、段差抑制部は、上流側弁に形成されて全開状態で上流側から二面幅部に向けて板厚が増加する上流側テーパ面と、下流側弁に形成されて全開状態で下流側から二面幅部に向けて板厚が増加する下流側テーパ面を含む、構成を採用してもよい。
【0022】
上記上流側面取り部及び下流側面取り部を含むバタフライ弁装置において、上流側面取り部と二面幅部とのなす角度をα、下流側面取り部と二面幅部とのなす角度をβとするとき、角度α=角度βを満たすように設定されている、構成を採用してもよい。
【0023】
上記角度α=角度βを満たすバタフライ弁装置において、角度α及び角度βは、10°~46.5°の範囲に設定されている、構成を採用してもよい。
【0024】
上記上流側面取り部を含むバタフライ弁装置において、上流側面取り部と二面幅部とのなす角度をαとするとき、角度αは、10°~46.5°の範囲に設定されている、構成を採用してもよい。
【0025】
上記下流側面取り部を含むバタフライ弁装置において、下流側面取り部と二面幅部とのなす角度をβとするとき、角度βは、10°~40°の範囲に設定されている、構成を採用してもよい。
【0026】
上記バタフライ弁装置において、シャフトの外径をD、シャフトの外径方向における二面幅部の幅寸法をW1とするとき、幅寸法W1は、0.4×D~0.7×Dの範囲に設定されている、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0027】
上記構成をなすバタフライ弁装置によれば、構造の簡素化、組付け作業の容易化、流体の流れ抵抗の低減、全開時の流量増加等を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係るバタフライ弁装置の第1実施形態を示す斜視外観図である。
【
図2】第1実施形態に係るバタフライ弁装置を、通路に沿う断面で切断した斜視断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るバタフライ弁装置を、シャフトの軸線を含むと共に通路に垂直な面で切断して上流側から視た断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るバタフライ弁装置に含まれるシャフト及びバタフライ弁を、バタフライ弁の一方側面でかつ上流側斜めから視た斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係るバタフライ弁装置に含まれるシャフト及びバタフライ弁を、バタフライ弁の他方側面でかつ上流側斜めから視た斜視図である。
【
図6】シャフト及びバタフライ弁を分解した分解斜視図である。
【
図7】シャフト及びバタフライ弁をシャフトの軸線に垂直な中央の面で切断した断面図である。
【
図8】シャフト及びバタフライ弁をシャフトの軸線に垂直で締結ネジを通る面で切断した断面図である。
【
図9】第1実施形態において、上流側面取り部及び下流側面取り部の角度と流量との関係を示すグラフである。
【
図10】第1実施形態において、下流側面取り部の角度を一定にして上流側面取り部の角度を変化させた場合の角度と流量の関係を示すグラフである。
【
図11】シャフトの二面幅部の上流側にのみ上流側面取り部を設けた第2実施形態を示すものであり、シャフト及びバタフライ弁をシャフトの軸線に垂直な中央の面で切断した断面図である。
【
図12】第2実施形態において、上流側面取り部の角度と流量との関係を示すグラフである。
【
図13】シャフトの二面幅部の下流側にのみ下流側面取り部を設けた第3実施形態を示すものであり、シャフト及びバタフライ弁をシャフトの軸線に垂直な中央の面で切断した断面図である。
【
図14】第3実施形態において、下流側面取り部の角度と流量との関係を示すグラフである。
【
図15】本発明に係るバタフライ弁装置の第4実施形態を示すものであり、バタフライ弁の一方側面でかつ上流側斜めから視た斜視図である。
【
図16】第4実施形態において、シャフト及びバタフライ弁をシャフトの軸線に垂直な中央の面で切断した断面図である。
【
図17】第4実施形態において、シャフト及びバタフライ弁をシャフトの軸線に垂直で締結ネジを通る面で切断した断面図である。
【
図18】第4実施形態において、シャフトの二面幅部の上流側にも上流側面取り部を設けた第5実施形態を示すものであり、シャフト及びバタフライ弁をシャフトの軸線に垂直な中央の面で切断した断面図である。
【
図19】本発明に係るバタフライ弁装置の第6実施形態を示すものであり、シャフトと上流側弁及び下流側弁からなる二分割構造をなすバタフライ弁を分解した分解斜視図である。
【
図20】第6実施形態において、バタフライ弁がシャフトに固定された状態で、シャフトの軸線を含みかつバタフライ弁を厚み方向に二分割する面にて切断した断面図である。
【
図21】第6実施形態において、シャフト及びバタフライ弁をシャフトの軸線に垂直な中央の面で切断した断面図である。
【
図22】第6実施形態において、シャフトの二面幅部の上流側及び下流側に上流側面取り部及び下流側面取り部を設けた第7実施形態を示すものであり、シャフト及びバタフライ弁をシャフトの軸線に垂直な中央の面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
第1実施形態に係るバタフライ弁装置Mは、自動二輪車に搭載されるエンジンの吸気系に装着されるスロットル装置として機能するものである。
バタフライ弁装置Mは、
図1ないし
図3に示すように、ボディ10、駆動機構(不図示)により回転駆動されるシャフト20、バタフライ弁30、二つの締結ネジ40、二つの軸受B、シャフト20を軸線S方向の一方向に向けて付勢する付勢バネ50、バネ受け部材60、C型の止め輪70、キャップ80、燃料噴射系90を備えている。
【0030】
駆動機構としては、シャフト20の連結部22bに取り付けられて、スロットルワイヤーを連結するドラム又はモータの回転力を伝達する歯車列等が採用される。
また、燃料噴射系90は、燃料を噴射するインジェクタ91、燃料を供給するフィードパイプ92を備えている。
【0031】
ボディ10は、アルミニウム等の金属材料により形成され、上流側フランジ部11、下流側フランジ部12、流体が流れる通路13、シャフト20を通すべく軸線S上に配置された二つの軸受孔14、付勢バネ50を収容する収容凹部15、燃料噴射系90に含まれるインジェクタ91を嵌合する嵌合孔16、取付ボス部17を備えている。
【0032】
上流側フランジ部11は、吸気系において上流側の通路を画定する通路部材、例えば吸気ダクト又は吸気管に接続される。
下流側フランジ部12は、吸気系において下流側の通路を画定する通路部材、例えばシリンダヘッド又はシリンダヘッドに隣接する吸気管に接続される。
通路13は、流体としての吸気を通すように、軸線L方向に伸長する円筒状をなす。
【0033】
二つの軸受孔14は、軸線Lに垂直な軸線S上に並べて配置され、シャフト20が回転自在に通される円形孔をなす。
そして、二つの軸受孔14は、それぞれ、微小隙間をおいてシャフト20を通す小径孔14aと、軸受Bを嵌め込む大径孔14bとを含む。
【0034】
収容凹部15は、軸線S方向において一方の軸受孔14に連続し、付勢バネ50及びバネ受け部材60を収容する。
嵌合孔16は、
図2に示すように、バタフライ弁30よりも下流側において、燃料を斜め下流側に向けて噴射するインジェクタ91を嵌合させるべく形成されている。
取付ボス部17は、燃料噴射系90に含まれるフィードパイプ92をネジで固定するべく形成されている。
【0035】
シャフト20は、外輪郭が円柱状すなわち円形断面をなすと共に軸線S方向に伸長する金属棒材に適宜切削加工を施して形成されている。
そして、シャフト20は、
図3ないし
図5に示すように、一端部21、他端部22、通路13に臨む領域に形成された二面幅部23、バタフライ弁30を嵌合させるスリット孔24、締結ネジ40を通す二つの座繰り雌ネジ孔25、凹状湾曲部26、段差抑制部としての上流側面取り部27及び上流側湾曲面取り部27r、段差抑制部としての下流側面取り部28及び下流側湾曲面取り部28rを備えている。
【0036】
一端部21は、一方の軸受孔14に挿入されるものであり、円柱部21a、小径円柱部21b、環状溝21c、連結穴21dを備えている。
円柱部21aは、外径Dをなし、小径孔14aに微小隙間をおいて挿入されると共に軸受Bに嵌合されて回動自在に支持される。
小径円柱部21bは、円柱部21aの外径Dよりも僅かに小さい外径に形成され、付勢バネ50を受けるバネ受け部材60を軸線S方向に移動自在に支持する。
環状溝21cは、C型の止め輪70をスナップフィットにより嵌め込むように形成されている。
連結穴21dは、組付け時に又は組付け後の検査や調整時に、シャフト20の回転角度位置を適宜調整するべく、工具等を連結し得るように形成されている。
【0037】
他端部22は、他方の軸受孔14に挿入されるものであり、円柱部22a、駆動機構が連結される連結部22bを備えている。
円柱部22aは、外径Dをなし、小径孔14aに微小隙間をおいて挿入されると共に軸受Bに嵌合されて回動自在に支持される。
連結部22bは、不図示の駆動機構に連結される領域であり、ボディ10から軸線S方向に突出して駆動機構が連結される形態に形成されている。ここでは、連結部22bは、駆動機構を省略しているため、平坦面として示されている。
【0038】
二面幅部23は、
図3に示すように、ボディ10の通路13に臨む領域において、軸線Sを中心として径方向に等間隔だけ離れた平行な二つの平坦面23a,23bを画定するように外径Dの円柱状の部材を切削して形成されている。
ここで、シャフト20の外径方向における二面幅部23の幅寸法W1は、流体の流れ抵抗を減らすために、すなわち通路13を流れる流体の通路面積を増やすために小さくし、かつ、機械的強度を確保し得る寸法に形成されている。具体的には、シャフト20の外径Dとの関係において、幅寸法W1は0.4×D~0.7×Dの範囲に設定されている。
【0039】
スリット孔24は、
図6及び
図7に示すように、二面幅部23の中央を貫通すると共に軸線S方向に延在するように形成されている。
ここで、シャフト20の外径方向におけるスリット孔24の幅寸法W2は、バタフライ弁30がガタツキ無く嵌合され得る、すなわちバタフライ弁30の嵌合部分の板厚と同等又は僅かに大きい寸法に形成されている。また、スリット孔24の幅寸法W2は、二面幅部23の幅寸法W1との関係において、0.3×W1~0.5×W1の範囲に設定されている。
【0040】
二つの座繰り雌ネジ孔25は、
図6及び
図8に示すように、二面幅部23の領域に形成されて、それぞれ締結ネジ40を通して捩じ込むものであり、二面幅部23の平坦面23a側において座繰り外縁25a
1を画定する円錐面状の座繰り25a、二面幅部23の平坦面23b側において雌ネジ25bを備えている。
【0041】
凹状湾曲部26は、
図3ないし
図6に示すように、軸線S方向における二面幅部23の両側で通路13に臨むと共に軸受孔14に隣接する領域において、二面幅部23から外径Dをなす円柱状の外輪郭に連続する凹状湾曲面として形成されている。
そして、凹状湾曲部26は、二面幅部23の一方側の平坦面23aの両端に連続する第1湾曲部26aと、二面幅部23の他方側の平坦面23bの両端に連続する第2湾曲部26bを含む。
このように、凹状湾曲部26を設けたことにより、二面幅部23の両側領域における応力集中を抑制ない防止して、流体の流れ抵抗を低減することができる。
【0042】
上流側面取り部27は、シャフト20の二面幅部23とバタフライ弁30が近接する表面領域において、すなわち、バタフライ弁30の全開状態における二面幅部23の上流側領域において、
図4及び
図5中の矢印で示すように、流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する役割をなす。
上流側面取り部27は、二面幅部23の一方側の平坦面23aの上流側に形成された第1面取り部27aと、二面幅部23の他方側の平坦面23bの上流側に形成された第2面取り部27bを含む。
第1面取り部27aは、
図7及び
図8に示すように、座繰り雌ネジ孔25に入り込まないように、座繰り外縁25a
1を起点として上流側に下り傾斜する平坦面として形成されている。
第2面取り部27bは、スリット孔24の中央面及び軸線Sを含む平面に対して、第1面取り部27aと面対称に形成されている。
【0043】
上流側湾曲面取り部27rは、シャフト20の二面幅部23とバタフライ弁30が近接する表面領域において、すなわち、バタフライ弁30の全開状態における凹状湾曲部26の上流側領域において、流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する役割をなす。
上流側湾曲面取り部27rは、第1湾曲部26aの上流側に形成された第1湾曲面取り部27raと、第2湾曲部26bの上流側に形成された第2湾曲面取り部27rbを含む。
第1湾曲面取り部27raは、第1面取り部27a及び第1湾曲部26aに連続する凹状湾曲面として形成されている。
第2湾曲面取り部27rbは、第2面取り部27b及び第2湾曲部26bに連続する凹状湾曲面として形成されている。
【0044】
下流側面取り部28は、シャフト20の二面幅部23とバタフライ弁30が近接する表面領域において、すなわち、バタフライ弁30の全開状態における二面幅部23の下流側領域において、
図4及び
図5中の矢印で示すように、流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する役割をなす。
下流側面取り部28は、二面幅部23の一方側の平坦面23aの下流側に形成された第1面取り部28aと、二面幅部23の他方側の平坦面23bの下流側に形成された第2面取り部28bを含む。
【0045】
第1面取り部28aは、
図7及び
図8に示すように、座繰り雌ネジ孔25に入り込まないように、座繰り外縁25a
1を起点として下流側に下り傾斜する平坦面として形成されている。
第2面取り部28bは、スリット孔24の中央面及び軸線Sを含む平面に対して、第1面取り部28aと面対称に形成されている。
【0046】
下流側湾曲面取り部28rは、シャフト20の二面幅部23とバタフライ弁30が近接する表面領域において、すなわち、バタフライ弁30の全開状態における凹状湾曲部26の下流側領域において、流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する役割をなす。
下流側湾曲面取り部28rは、第1湾曲部26aの下流側に形成された第1湾曲面取り部28raと、第2湾曲部26bの下流側に形成された第2湾曲面取り部28rbを含む。
第1湾曲面取り部28raは、第1面取り部28a及び第1湾曲部26aに連続する凹状湾曲面として形成されている。
第2湾曲面取り部28rbは、第2面取り部28b及び第2湾曲部26bに連続する凹状湾曲面として形成されている。
【0047】
第1実施形態においては、
図7及び
図8に示すように、第1面取り部27aと二面幅部23の平坦面23aとのなす角度及び第2面取り部27bと二面幅部23の平坦面23bとのなす角度、すなわち、上流側面取り部27と二面幅部23とのなす角度がαとして示されている。
また、第1面取り部28aと二面幅部23の平坦面23aとのなす角度及び第2面取り部28bと二面幅部23の平坦面23bとのなす角度、すなわち、下流側面取り部28と二面幅部23とのなす角度がβとして示されている。
ここで、角度αと角度βとの関係は、角度α=角度βを満たすように設定されている。
【0048】
このように、角度αと角度βを同一の値とすることにより、円柱状の金属材料に加工を施してシャフト20を製造する際に、二面幅部23を切削加工により形成した後に、同一の傾斜角度で切削加工して上流側面取り部27及び下流側面取り部28を形成することができ、切削加工の段取り及び加工費を低減することができる。
【0049】
バタフライ弁30は、
図4ないし
図6に示すように、金属材料等により、スリット孔24にガタツキ無く嵌合される板厚寸法で、略円板状に形成されており、締結ネジ40を通す二つの貫通孔31を備えている。
すなわち、バタフライ弁30の板厚は、スリット孔24の幅寸法W2と同等か又は僅かに小さい寸法であり、0.3×W1~0.5×W1の範囲に設定される。
このような板厚にすることにより、バタフライ弁30の機械的強度を確保しつつ、全開時において通路13を流れる流体の通路面積を大きくすることができる。
バタフライ弁30は、シャフト20がボディ10の軸受孔14に通された後に、通路13内においてスリット孔24に嵌合されて、締結ネジ40によりシャフト20に固定され、通路13を開閉するように配置される。
そして、バタフライ弁30は、シャフト20の回転に応じて、所望の開度に通路13を開放する。
【0050】
締結ネジ40は、金属材料により形成された丸皿ネジ又は皿ネジであり、ここでは表面が凸状の湾曲面をなす丸皿ネジが採用されている。尚、流体の流れ抵抗を低減する観点からは、表面が平坦な皿ネジを採用してもよい。
【0051】
付勢バネ50は、圧縮型のコイルバネであり、
図3に示すように、ボディ10の収容凹部15内に配置されて、第1バネ受け部材61及び第2バネ受け部材62により挟持され、シャフト20を軸線S方向の一方側に付勢している。これにより、シャフト20の軸線S方向におけるガタツキが防止される。
【0052】
バネ受け部材60は、
図3に示すように、軸受Bに隣接する第1バネ受け部材61と、止め輪70に隣接する第2バネ受け部材62を含む。
第1バネ受け部材61は、シャフト20の小径円柱部21bに摺動自在に嵌め込まれて付勢バネ50の一端部を受ける。
第2バネ受け部材62は、シャフト20の小径円柱部21bに摺動自在に嵌め込まれて付勢バネ50の他端部を受ける。
【0053】
止め輪70は、C型のスナップリングであり、シャフト20の小径円柱部21bに第1バネ受け部材61、付勢バネ50、第2バネ受け部材62が嵌め込まれた後に、シャフト20の環状溝21cに嵌め込まれて、第2バネ受け部材62の軸線S方向外向きへの移動を規制する。
【0054】
キャップ80は、ボディ10に対してシャフト20及びバタフライ弁30が取り付けられて、シャフト20の回転角度位置を検査した後に取り付けられ、シャフト20の一端部21、付勢バネ50、バネ受け部材60を覆うと共に、通路13から軸受孔14に連通する通路を閉塞する。
【0055】
上記バタフライ弁装置において、上流側面取り部27に関する角度αと下流側面取り部28に関する角度βの値として、角度α及び角度βは10°~46.5°の範囲に設定されている。
角度α及び角度βが上記範囲に設定されることにより、
図9に示すように、上流側面取り部27及び下流側面取り部28を設けない場合(角度α,β=0°)に比べて、流量抵抗を低減でき、その結果、流体の流量を増加させることができる。特に、通路13の上流側と下流側の間の差圧が大きくなる、すなわち、全開時の流速が速くなる領域において流量を増加させることができる。
【0056】
また、角度βを一定(30°)にして、角度αを変化させたとき、
図10に示すように、角度αが25°~30°の領域において、流量が最も増加している。
以上述べたように、
図9及び
図10に示される結果を参照すれば、角度α及び角度βは、10°~46.5°の範囲、好ましくは20°~30°の範囲、さらに好ましくは25°~30°の範囲に設定される。
【0057】
上記バタフライ弁装置Mにおけるシャフト20及びバタフライ弁30の組み付け作業については、先ず、ボディ10の軸受孔14にシャフト20を挿入する。
続いて、ボディ10の大径孔14b及びシャフト20の円柱部21a,22aに軸受Bを嵌合する。
続いて、シャフト20のスリット孔24を軸線L方向に沿うように方向付けた角度位置にシャフト20を保持し、バタフライ弁30を通路13の上流側又は下流側から近づけてスリット孔24に嵌合させる。
続いて、バタフライ弁30が閉弁状態になるようにシャフト20を回転して保持し、締め付け工具を通路13内に挿入し、締結ネジ40を座繰り雌ネジ孔25及び貫通孔31に通して捩じ込む。
これにより、バタフライ弁30がシャフト20に固定される。
このように、シャフト20及びバタフライ弁30をボディ10に対して簡単な段取りで組み付けることができるため、全体として組付け作業の容易化を達成できる。
【0058】
上記のように、第1実施形態に係るバタフライ弁装置Mにおいては、シャフト20の二面幅部23とバタフライ弁30が近接する表面領域において、バタフライ弁30の全開状態で流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する段差抑制部として、上流側面取り部27及び下流側面取り部28並びに上流側湾曲面取り部27r及び下流側湾曲面取り部28rを含む。
これにより、構造の簡素化を達成しつつ、流体の流れ抵抗の低減、通路13内を流れる流量の増加、特に、
図9及び
図10に示されるように、差圧が大きい全開時において流量の増加を達成できる。
【0059】
また、シャフト20が、二面幅部23の領域において、締結ネジ40を通して捩じ込む座繰り雌ネジ孔25を有し、バタフライ弁30が、シャフト20のスリット孔24に嵌合された状態で締結ネジ40を通す貫通孔31を有するため、段差抑制部を採用しつつも、組付け作業の容易化を達成できる。
【0060】
また、上流側面取り部27と二面幅部23とのなす角度αと、下流側面取り部28と二面幅部23とのなす角度βとの関係が、角度α=角度βを満たすように設定されているため、円柱状の金属材料に加工を施してシャフト20を製造する際に、二面幅部23を切削加工により形成し、上流側面取り部27及び下流側面取り部28を同一の傾斜角度で切削加工により形成することで、切削加工の段取り及び加工費を低減することができる。
ここで、角度α及び角度βは、10°~46.5°の範囲に設定されることにより、通路13を流れる流体の流量を確実に増加させることができる。
【0061】
また、上流側面取り部27は、座繰り雌ネジ孔25の座繰り外縁25a1を起点として上流側に下り傾斜するように形成され、下流側面取り部28は、座繰り雌ネジ孔25の座繰り外縁25a1を起点として下流側に下り傾斜するように形成されているため、締結ネジ40の座面を確保できると共に面取り領域を大きくでき、二面幅部23とバタフライ弁30が近接する表面領域における段差を効率よく抑制することができる。
【0062】
さらに、シャフト20の外径をD、シャフト20の外径方向における二面幅部23の幅寸法をW1とするとき、幅寸法W1が0.4×D~0.7×Dの範囲に設定されている。
これにより、機械的強度を確保しつつ、通路13内において、流体の流れに対して妨げとなる部材の出っ張りを減らして、シャフト20の二面幅部23とバタフライ弁30が近接する表面領域における段差を効率よく抑制でき、バタフライ弁30の全開状態で流体の流れを流線的にすることができる。これにより、通路13内の実質的な通路面積を大きくして、流量を増加させることができる。
【0063】
図11は、本発明に係るバタフライ弁装置の第2実施形態を示すものであり、前述の第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態においては、段差抑制部として、バタフライ弁30の全開状態における二面幅部23の上流側領域において、シャフト20に形成された上流側面取り部27及び上流側湾曲面取り部27rを含むだけである。
第2実施形態において、上流側面取り部27と二面幅部23とのなす角度αは、10°~46.5°の範囲に設定される。
【0064】
図12は、上流側面取り部27(及び上流側湾曲面取り部27r)だけを設けた場合において、角度αを変化させたときの流量の変化を示すグラフである。
この結果から明らかなように、角度αを10°~46.5°の範囲に設定することにより、上流側面取り部27を設けない場合(角度α=0°)に比べて、流れ抵抗を低減でき、その結果、流体の流量を増加させることができる。特に、
図12において、差圧50pa,100pa,500paで違いが生じるように、差圧が大きい全開時において流量の増加を達成できる。
【0065】
図13は、本発明に係るバタフライ弁装置の第3実施形態を示すものであり、前述の第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第3実施形態においては、段差抑制部として、バタフライ弁30の全開状態における二面幅部23の下流側領域において、シャフト20に形成された下流側面取り部28及び下流側湾曲面取り部28rを含むだけである。
第3実施形態において、下流側面取り部28と二面幅部23とのなす角度βは、10°~40°の範囲に設定される。
【0066】
図14は、下流側面取り部28(及び下流側湾曲面取り部28r)だけを設けた場合において、角度βを変化させたときの流量の変化を示すグラフである。
この結果から明らかなように、角度βを10°~40°の範囲に設定することにより、下流側面取り部28を設けない場合(角度β=0°)に比べて、流れ抵抗を低減でき、その結果、流体の流量を増加させることができる。
【0067】
図15ないし
図17は、本発明に係るバタフライ弁装置の第4実施形態を示すものであり、前述の第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第4実施形態において、シャフト20は、一端部21、他端部22、二面幅部23、スリット孔24、二つの座繰り雌ネジ孔25、凹状湾曲部26、段差抑制部としての下流側面取り部28及び下流側湾曲面取り部28rを備えている。
【0068】
バタフライ弁130は、ボディ10の軸受孔14に組み付けられたシャフト20に対して、通路13の上流側からスリット孔24に挿入されるように形成されている。
すなわち、バタフライ弁130は、全開状態において、通路13の上流側に位置する上流側半体131と、通路13の下流側に位置する下流側半体132と、スリット孔24に嵌合される嵌合部133を備えている。
【0069】
上流側半体131は、全開状態で上流側から二面幅部23に向けて板厚が増加する上流側テーパ面としての第1テーパ面131a及び第2テーパ面131bを含む。
第1テーパ面131aは、二面幅部23の一方側の平坦面23aと同一側において、平坦面23aの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
第2テーパ面131bは、二面幅部23の他方側の平坦面23bと同一側において、平坦面23bの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
下流側半体132は、スリット孔24の幅寸法W2と同等か僅かに小さい一定の板厚をなし、二面幅部23の一方側の平坦面23aと同一側に形成された第1平面132aと、二面幅部23の他方側の平坦面23bと同一側に形成された第2平面132bを含む。
嵌合部133は、下流側半体132と同一の板厚に形成され、スリット孔24に嵌合された状態で締結ネジ40を通す二つの貫通孔133aを有する。
【0070】
第4実施形態において、シャフト20及びバタフライ弁130の組み付け作業は、前述の第1実施形態と同様に、ボディ10の軸受孔14及びシャフト20を組み付けた後に、
シャフト20のスリット孔24を軸線L方向に沿うように方向付けた角度位置にシャフト20を保持し、バタフライ弁130を通路13の上流側から近づけてスリット孔24に嵌合させる。
続いて、バタフライ弁130が閉弁状態になるようにシャフト20を回転して保持し、締め付け工具を通路13内に挿入し、締結ネジ40を座繰り雌ネジ孔25及び貫通孔133aに通して捩じ込む。
これにより、バタフライ弁130がシャフト20に固定される。
このように、シャフト20及びバタフライ弁130をボディ10に対して簡単な段取りで組み付けることができるため、全体として組付け作業の容易化を達成できる。
【0071】
上記のように、第4実施形態に係るバタフライ弁装置Mにおいては、シャフト20の二面幅部23とバタフライ弁130が近接する表面領域において、バタフライ弁130の全開状態で流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する段差抑制部として、上流側テーパ面(第1テーパ面131a及び第2テーパ面131b)、下流側面取り部28、及び下流側湾曲面取り部28rを含む。
また、下流側面取り部28に係る角度βについては、前述の実施形態で示した数値の範囲から選択される。
これにより、構造の簡素化を達成しつつ、流体の流れ抵抗の低減、通路13内を流れる流量の増加、特に、差圧が大きい全開時において流量の増加を達成できる。また、前述の実施形態と同様に、構造の簡素化、組付け作業の容易化等を達成できる。
【0072】
図18は、第4実施形態の変形例としての第5実施形態を示すものであり、前述の第1実施形態及び第5実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第5実施形態において、シャフト20は、一端部21、他端部22、二面幅部23、スリット孔24、二つの座繰り雌ネジ孔25、凹状湾曲部26、段差抑制部としての上流側面取り部27及び下流側面取り部28並びに上流側湾曲面取り部27r及び下流側湾曲面取り部28rを備えている。
【0073】
バタフライ弁230は、全開状態において、通路13の上流側に位置する上流側半体231と、通路13の下流側に位置する下流側半体132と、スリット孔24に嵌合される嵌合部133を備えている。
上流側半体231は、全開状態で上流側から二面幅部23に向けて板厚が増加する上流側テーパ面としての第1テーパ面231a及び第2テーパ面231bを備えている。
第1テーパ面231aは、二面幅部23の一方側の平坦面23aと同一側において、二面幅部23の上流側に形成された第1面取り部27aの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
第2テーパ面231bは、二面幅部23の他方側の平坦面23bと同一側において、二面幅部23の上流側に形成された第2面取り部27bの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
【0074】
上記のように、第5実施形態に係るバタフライ弁装置Mにおいては、シャフト20の二面幅部23とバタフライ弁230が近接する表面領域において、バタフライ弁230の全開状態で流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する段差抑制部として、上流側テーパ面(第1テーパ面231a及び第2テーパ面231b)、上流側面取り部27及び下流側面取り部28並びに上流側湾曲面取り部27r及び下流側湾曲面取り部28rを含む。
また、上流側面取り部27に係る角度αと下流側面取り部28に係る角度βについては、前述の実施形態で示した数値の範囲から選択される。
これにより、構造の簡素化を達成しつつ、流体の流れ抵抗の低減、通路13内を流れる流量の増加、特に、差圧が大きい全開時において流量の増加を達成できる。また、前述の実施形態と同様に、構造の簡素化、組付け作業の容易化等を達成できる。
特に、前述の第4実施形態に比べて、バタフライ弁230の上流側における板厚が薄くなるため、通路13内の実質的な通路面積がその分だけ大きくなり、流体の流れ抵抗をさらに低減することができる。
【0075】
図19ないし
図21は、本発明に係るバタフライ弁装置の第6実施形態を示すものであり、前述の第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第6実施形態において、シャフト20は、一端部21、他端部22、二面幅部23、スリット孔24、二つの座繰り雌ネジ孔25、凹状湾曲部26を備えている。
【0076】
バタフライ弁330は、ボディ10の軸受孔14に組み付けられたシャフト20に対して、通路13の上流側からスリット孔24に挿入される上流側弁331と、通路13の下流側からスリット孔24に挿入される下流側弁335を含む二分割に形成されている。
【0077】
上流側弁331は、バタフライ弁330の全開状態で上流側から二面幅部23に向けて板厚が増加する上流側テーパ面としての第1テーパ面331a及び第2テーパ面331bと、スリット孔24に嵌合される嵌合部332を備えている。
第1テーパ面331aは、二面幅部23の一方側の平坦面23aと同一側において、平坦面23aの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
第2テーパ面331bは、二面幅部23の他方側の平坦面23bと同一側において、平坦面23bの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
嵌合部332は、スリット孔24の幅寸法W2と同等か僅かに小さい一定の板厚で、かつ、軸線S方向におけるスリット孔24の約半分の長さに亘って嵌合される形状に形成され、締結ネジ40を通す一つの貫通孔332aを有する。
【0078】
下流側弁335は、バタフライ弁330の全開状態で下流側から二面幅部23に向けて板厚が増加する下流側テーパ面としての第1テーパ面335a及び第2テーパ面335bと、スリット孔24に嵌合される嵌合部336を備えている。
第1テーパ面335aは、二面幅部23の一方側の平坦面23aと同一側において、平坦面23aの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
第2テーパ面335bは、二面幅部23の他方側の平坦面23bと同一側において、平坦面23bの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
嵌合部336は、スリット孔24の幅寸法W2と同等か僅かに小さい一定の板厚で、かつ、軸線S方向におけるスリット孔24の約半分の長さに亘って嵌合される形状に形成され、締結ネジ40を通す一つの貫通孔336aを有する。
【0079】
この実施形態において、上流側弁331と下流側弁335とは、外周面の傾きを異ならせる加工を施す以外は同一の形状に形成されている。したがって、バタフライ弁330は上流側弁331と下流側弁335との二分割構造からなるものの、部品の種類としては一つである。それ故に、二分割構造を採用しつつも、コストの増加を抑えることができる。
【0080】
第6実施形態において、シャフト20及びバタフライ弁330の組み付け作業は、前述の第1実施形態と同様に、ボディ10の軸受孔14及びシャフト20を組み付けた後に、
シャフト20のスリット孔24を軸線L方向に沿うように方向付けた角度位置にシャフト20を保持し、上流側弁331を通路13の上流側から近づけてスリット孔24に嵌合させ、下流側弁335を通路13の下流側から近づけてスリット孔24に嵌合させる。
続いて、バタフライ弁330が閉弁状態になるようにシャフト20を回転して保持し、締め付け工具を通路13内に挿入し、締結ネジ40を座繰り雌ネジ孔25及び貫通孔332a,336aに通して捩じ込む。
これにより、上流側弁331及び下流側弁335がシャフト20に固定される。
このように、シャフト20及びバタフライ弁330をボディ10に対して簡単な段取りで組み付けることができるため、全体として組付け作業の容易化を達成できる。
【0081】
上記のように、第6実施形態に係るバタフライ弁装置Mにおいては、シャフト20の二面幅部23とバタフライ弁130が近接する表面領域において、バタフライ弁330の全開状態で流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する段差抑制部として、上流側テーパ面(第1テーパ面331a及び第2テーパ面331b)及び下流側テーパ面(第1テーパ面335a及び第2テーパ面335b)を含む。
これにより、構造の簡素化を達成しつつ、流体の流れ抵抗の低減、通路13内を流れる流量の増加、特に、差圧が大きい全開時において流量の増加を達成できる。また、前述の実施形態と同様に、構造の簡素化、組付け作業の容易化等を達成できる。
【0082】
図22は、第6実施形態の変形例としての第7実施形態を示すものであり、前述の第1実施形態及び第6実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第7実施形態において、シャフト20は、一端部21、他端部22、二面幅部23、スリット孔24、二つの座繰り雌ネジ孔25、凹状湾曲部26、段差抑制部としての上流側面取り部27及び下流側面取り部28並びに上流側湾曲面取り部27r及び下流側湾曲面取り部28rを備えている。
【0083】
バタフライ弁430は、ボディ10の軸受孔14に組み付けられたシャフト20に対して、通路13の上流側からスリット孔24に挿入される上流側弁431と、通路13の下流側からスリット孔24に挿入される下流側弁435を含む二分割に形成されている。
【0084】
上流側弁431は、バタフライ弁430の全開状態で上流側から二面幅部23に向けて板厚が増加する上流側テーパ面としての第1テーパ面431a及び第2テーパ面431bと、嵌合部332を備えている。
第1テーパ面431aは、二面幅部23の一方側の平坦面23aと同一側において、第1面取り部27aの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
第2テーパ面431bは、二面幅部23の他方側の平坦面23bと同一側において、第2面取り部27bの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
【0085】
下流側弁435は、バタフライ弁430の全開状態で下流側から二面幅部23に向けて板厚が増加する下流側テーパ面としての第1テーパ面435a及び第2テーパ面435bと、嵌合部336を備えている。
第1テーパ面435aは、二面幅部23の一方側の平坦面23aと同一側において、第1面取り部28aの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
第2テーパ面435bは、二面幅部23の他方側の平坦面23bと同一側において、第2面取り部28bの縁部に向けて延びる傾斜面として形成されている。
【0086】
上記のように、第7実施形態に係るバタフライ弁装置Mにおいては、シャフト20の二面幅部23とバタフライ弁430が近接する表面領域において、バタフライ弁430の全開状態で流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する段差抑制部として、上流側テーパ面(第1テーパ面431a及び第2テーパ面431b)、下流側テーパ面(第1テーパ面435a及び第2テーパ面435b)、上流側面取り部27及び下流側面取り部28並びに上流側湾曲面取り部27r及び下流側湾曲面取り部28rを含む。
また、上流側面取り部27に係る角度αと下流側面取り部28に係る角度βについては、前述の実施形態で示した数値の範囲から選択される。
これにより、構造の簡素化を達成しつつ、流体の流れ抵抗の低減、通路13内を流れる流量の増加、特に、差圧が大きい全開時において流量の増加を達成できる。また、前述の実施形態と同様に、構造の簡素化、組付け作業の容易化等を達成できる。
特に、前述の第6実施形態に比べて、バタフライ弁430の上流側及び下流側における板厚が薄くなるため、通路13内の実質的な通路面積がその分だけ大きくなり、流体の流れ抵抗をさらに低減することができる。
【0087】
上記実施形態においては、シャフトの二面幅部とバタフライ弁が近接する表面領域において、バタフライ弁の全開状態で流体の流れを流線的にするべく段差を抑制する段差抑制部として、シャフト20に対して加工により施された上流側面取り部27,下流側面取り部28,上流側湾曲面取り部27r,下流側湾曲面取り部28rと、バタフライ弁130,230,330,430に対して加工により施された上流側テーパ面(131a,131b,231a,231b,331a,331b,431a,431b)、下流側テーパ面(335a,335b,435a,435b)を示したが、シャフト又はバタフライ弁に対して加工又は型成形により施された段差抑制部であれば、その他の形態をなすものを採用してもよい。
【0088】
上記実施形態においては、段差抑制部としての上流側面取り部27及び下流側面取り部28が、二面幅部23に対して角度α,βで傾斜する平坦面をなす形態を示したが、これに限定されるものではなく、上流側面取り部及び下流側面取り部が凸状に湾曲した湾曲面として形成されてもよい。
【0089】
上記実施形態においては、バタフライ弁をシャフトに固定する手法として、締結ネジ40を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、組付けを容易に行うことができれば、その他の手法を採用してもよい。
【0090】
上記実施形態においては、シャフトにおいて、二面幅部23の両側に凹状湾曲部26を設けた場合を示したが、これに限定されるものではなく、シャフトの機械的強度が確保されて、流体の流れ抵抗を低減できるものであれば、凹状湾曲部26を廃止して、通路13に臨む全域において二面幅部を採用してもよい。
【0091】
上記実施形態においては、流体が流れる通路として、円形断面をなす円筒状の通路13を示したが、これに限定されるものではなく、楕円断面又は長円断面をなす筒状の通路を採用し、当該通路をバタフライ弁で開閉するものでもよい。
【0092】
上記実施形態においては、本発明のバタフライ弁装置として、一つの通路13を一つのバタフライ弁30,130,230,330,430で開閉するスロットル装置を示したが、これに限定されるものではなく、複数の通路が並列に配列されかつ各々の通路をバタフライ弁で開閉する複数のバタフライ弁を含む多連スロットル装置に適用されてもよい。
【0093】
以上述べたように、本発明のバタフライ弁装置は、構造の簡素化、組付け作業の容易化、流体の流れ抵抗の低減、全開時の流量増加等を達成できるため、小型化及び低コスト化等が要求される自動二輪車のスロットル装置として適用できるのは勿論のこと、排気ガスの流量を調整するバタフライ弁装置、又は、その他の車両における流体の流量を調整するバタフライ弁装置としても有用である。
【符号の説明】
【0094】
S 軸線
10 ボディ
13 通路
14 軸受孔
20 シャフト
23 二面幅部
24 スリット孔
25 座繰り雌ネジ孔
25a1 座繰り外縁
26 凹状湾曲部
27 上流側面取り部(段差抑制部)
27a 第1面取り部(上流側面取り部)
27b 第2面取り部(上流側面取り部)
27r 上流側湾曲面取り部(段差抑制部)
27ra 第1湾曲面取り部(上流側湾曲面取り部)
27rb 第2湾曲面取り部(上流側湾曲面取り部)
28 下流側面取り部(段差抑制部)
28a 第1面取り部(下流側面取り部)
28b 第2面取り部(下流側面取り部)
28r 下流側湾曲面取り部(段差抑制部)
28ra 第1湾曲面取り部(下流側湾曲面取り部)
28rb 第2湾曲面取り部(下流側湾曲面取り部)
30 バタフライ弁
31 貫通孔
40 締結ネジ
130 バタフライ弁
131a 第1テーパ面(上流側テーパ面、段差抑制部)
131b 第2テーパ面(上流側テーパ面、段差抑制部)
133a 貫通孔
230 バタフライ弁
231a 第1テーパ面(上流側テーパ面、段差抑制部)
231b 第2テーパ面(上流側テーパ面、段差抑制部)
330,430 バタフライ弁
331,431 上流側弁
331a,431a 第1テーパ面(上流側テーパ面、段差抑制部)
331b,431b 第2テーパ面(上流側テーパ面、段差抑制部)
332a,336a 貫通孔
335,435 下流側弁
335a,435a 第1テーパ面(下流側テーパ面、段差抑制部)
335b,435b 第2テーパ面(下流側テーパ面、段差抑制部)