(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】エア導入出部材、温調ポット型、プリフォームの温度調整方法、及びブロー成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/64 20060101AFI20241007BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2020195044
(22)【出願日】2020-11-25
(62)【分割の表示】P 2020542465の分割
【原出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2019015104
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】荻原 学
(72)【発明者】
【氏名】長崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】堀内 一宏
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-067206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形された、有底状のプリフォーム(1)を保持部材(50)により保持された状態で前記プリフォーム(1)を温度調整または冷却するエア導入出部材であって、
前記プリフォーム(1)のネック部(3)に気密可能に当接するエアノズル(16)と、前記エアノズル(16)に対して同心的に配置されて前記プリフォームに挿入される中空ロッド(18)とを少なくとも備えており、
前記エアノズル(16)の上部には第1の空気入出口(16a)が設けられ、
前記中空ロッド(18)の上部には第2の空気入出口(18c)が設けられ、
前記エアノズル(16)と前記中空ロッド(18)との間には第1の空気流通路(21a)が形成されており、
前記中空ロッド(18)の内部には第2の空気流通路(21b)が形成されている、
エア導入出部材。
【請求項2】
前記中空ロッド(18)の前記プリフォーム(1)に挿入される部位の直径は、前記プリフォーム(1)に挿入されない部位の直径よりも大きく、且つ、前記プリフォーム(1)の内周面の直径より小さく形成されている、
請求項1に記載のエア導入出部材。
【請求項3】
前記中空ロッド(18)を別の外形の前記中空ロッドに交換することで、
前記プリフォーム(1)の内周面と前記中空ロッド(18)の外周面との間に形成される空気流通路(22)の断面の面積を調整することを特徴とする、
請求項2に記載のエア導入出部材。
【請求項4】
前記中空ロッド(18)の前記プリフォーム(1)に挿入される部位の軸方向に垂直な断面は円形断面である、
請求項1に記載のエア導入出部材。
【請求項5】
前記中空ロッド(18)の前記プリフォーム(1)に挿入される部位の軸方向に垂直な断面は円形断面であり、且つ周方向の少なくとも一箇所に切欠部を有する断面形状である、
請求項1に記載のエア導入出部材。
【請求項6】
前記中空ロッド(18)の前記プリフォーム(1)に挿入される部位の軸方向に垂直な断面は楕円形又は多角形の断面形状である、
請求項1に記載のエア導入出部材。
【請求項7】
前記中空ロッド(18)は、軸方向に見て、前記プリフォーム(1)の前記ネック部(3)に対応する部分の外径が、それ以外の部分の外径より大きい断面形状である、
請求項1に記載のエア導入出部材。
【請求項8】
前記プリフォーム(1)を温度調整または冷却する冷却用空気が、前記第1の空気流通路(21a)へ流入して第2の空気流通路から排出される、
請求項1に記載のエア導入出部材。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のエア導入出部材と共に用いられて前記保持部材(50)より下方に配置され、前記プリフォーム(1)が挿入される温調ポット型(17)。
【請求項10】
射出成形された有底状のプリフォーム(1)を、保持部材(50)により保持して、温度調整部(20)において温度調整する、プリフォームの温度調整方法において、
前記プリフォーム(1)を温調ポット型(17)のキャビティ(17a)に挿入するステップと、
エアノズル(16)及び中空ロッド(18)を下降させるステップと、
前記プリフォーム(1)のネック部(3)に前記エアノズル(16)を当接させ、且つ、前記中空ロッド(18)を前記プリフォーム(1)内に挿入するステップと、
下降後、前記エアノズル(16)の内周と前記中空
ロッド(18)の外周との間に形成された第1の空気流通路(21a)と前記中空
ロッド(18)の内部に形成された第2の空気流通路(21b)とを、前記プリフォーム(1)の内部を介して連通させるステップと、を備える、
プリフォームの温度調整方法。
【請求項11】
前記第1の空気流通路(21a)と第2の空気流通路(21b)とを、前記プリフォーム(1)の内部を介して連通させた後、前記第1の空気流通路(21a)に冷却用空気を流通させるステップ、を更に備える、
請求項10に記載のプリフォームの温度調整方法。
【請求項12】
有底状のプリフォーム(1)を射出成形する射出成形部(10)と、前記射出成形部(10)で成形した前記プリフォーム(1)を温度調整する温度調整部(20)と、前記温度調整部(20)で温度調整した前記プリフォーム(1)をブロー成形するブロー成形部(30)と、前記プリフォーム(1)のネック部(3)を保持し前記ブロー成形部(30)に間欠的に搬送可能な保持部材(50)と、を少なくとも備えており、
前記温度調整部(20)は、温調ポット型(17)と、エアノズル(16)と、中空ロッド(18)と、を少なくとも備え、
前記温調ポット型(17)は前記プリフォーム(1)が挿入されて、前記プリフォーム(1)と前記ポット型(17)の温調キャビティ(17a)とが密着可能であり、
前記エアノズル(16)は、前記プリフォーム(1)の前記ネック部(3)と当接可能で、前記中空ロッド(18)との間に第1の空気流通路(21a)が形成されており、
前記中空ロッド(18)は、内部に第2の空気流通路(21b)が形成されており、
前記エアノズル(16)と前記中空ロッド(18)とが下降することで、前記プリフォーム(1)の内部を介し、前記第1の空気流通路(21a)と前記第2の空気流通路(21b)とが連通する、
ブロー成形装置。
【請求項13】
前記第1の空気流通路(2
1a)と前記第2の空気流通路(2
1b)とが、前記プリフォーム(1)の内部を介して連通した後、前記第1の空気流通路(21a)に冷却用空気を流通可能な、
請求項12に記載のブロー成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットパリソン式のブロー成形装置におけるプリフォームの温度調整装置及び温度調整方法等に関する。具体的には、射出成形時間が短く高温状態で離型されたプリフォームに対しても短時間で適切な温度調整処理を行うことのできるプリフォームの温度調整装置及び温度調整方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリフォームを射出成形する射出成形部と、射出成形部で成形したプリフォームを温度調整する温度調整部と、温度調整部で温度調整したプリフォームをブロー成形するブロー成形部とを備えたブロー成形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のブロー成形装置は、射出成形部及びブロー成形部のみを主に備えた従来のブロー成形装置(例えば、特許文献2参照)に温度調節部を追加したものである。射出成形部で成形されたばかりのプリフォームは、ブロー成形に適した温度分布を備えていないため、射出成形部とブロー成形部との間により積極的にプリフォームの温度調整が可能な温度調整部を設けることにより、プリフォームをブロー成形に適した温度まで温度調整することを可能にしていた。なお、この温度調整部は、加熱ポット型(加熱ブロック)や加熱ロッドを用い、プリフォームを非接触で加熱して、温度調整する方式になっている。
【0003】
また、プリフォームの底部のみを短時間かつ局所的に冷却して、底部が肉厚である容器が良好に成形できる温度調整法も存在する。具体的には、温調ポッド型のキャビティ内にプリフォームを挿入して、プリフォームの底部及び底部に連続する胴部の下部の外周面を温調ポッド型の下方に配置された冷却ポットと冷却ロッドに密着させて確実に冷却し、底部に連続する胴部の下部を除く胴部を温調ポッド型の上方に配置された加熱ブロックにより所定の温度に昇温させることにより、ブロー成形を行った際に所望の厚さを有する底部と、均一で薄肉に延伸された壁部を有する胴部とを備えた、容器を製造するためのブロー成形装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
また、プリフォームを射出成形部に加えて温度調整部でも冷却し、成形サイクル時間を決定づける射出成形時間(具体的には冷却時間)の短縮を図ったブロー成形装置も提案されている(例えば、特許文献4参照)。更に近年では、温調ポッド型に収容したプリフォーム内に中空ロッドを挿入し、中空ロッド外周とプリフォーム内周との間の空隙に冷却用空気を流通させてプリフォーム全体を冷却して、成形サイクル時間の短縮及び容器の透明化を図るものも考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平06-315973号公報
【文献】国際公開第2017/098673号
【文献】国際公開第2013/012067号
【文献】特開平05-185493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来例では、中空ロッド外周とプリフォーム内周との間の空隙の半径方向寸法を微調整する作業が困難で空隙断面積が比較的大きくならざるを得ず、空気の流通速度がその分低下しやすく冷却効率が不十分であった。その結果、プリフォームの材料としてブロー成形時の温度帯で結晶化し易い熱可塑性樹脂を用いる場合は、得られた完成容器が透明にならず白化又は白濁化を生じ易いという問題があった。
【0007】
また、射出成形部から来たプリフォームの周方向に偏温があっても短時間の温度調整部での処理では解消が困難で、温度調整部の後工程のブロー成形部においてプリフォームをブロー成形して得られた容器の胴部に偏肉を生ずるという問題があった。
【0008】
本発明は、成形サイクル時間の短縮化を実現することのでき、しかも容器の透明化を図りつつ偏肉を解消し得るブロー成形装置におけるプリフォームの温度調整装置及びこれに使用する整流部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプリフォームの温度調整装置は、射出成形された、有底状のプリフォーム(1)を温度調整するため、保持部材(50)により保持されたプリフォーム(1)内に、中空ロッド部材(18)が挿入され、前記プリフォーム(1)及び中空ロッド部材(18)間に第1の空気流通路(21a)が形成されるプリフォームの温度調整装置(20)において、流路調整部材(19)が前記中空ロッド部材(18)外周に嵌合して取付けられ、これにより前記第1の空気流通路(21a)の断面の面積が少なくとも部分的に調整されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のプリフォームの温度調整方法は、射出成形された、有底状のプリフォーム(1)を、保持部材(50)により保持して、温度調整部(20)において温度調整する、プリフォームの温度調整方法において、流路調整部材(19)を取付けた中空ロッド部材(18)をプリフォーム(1)内に挿入することにより、前記プリフォーム(1)及び前記流路調整部材(19)間に第1の空気流通路(21a)を形成するステップと、前記中空ロッド部材(18)、流路調整部材(19)及びプリフォーム(1)を、温調ポット型(17)のキャビティ(17a)に挿入した後に、第1の空気流通路(21a)に冷却用空気を流通させるステップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の樹脂成形容器の製造装置は、有底状のプリフォーム(1)を射出成形する射出成形部(10)と、前記射出成形部(10)で成形した前記プリフォーム(1)を温度調整する温度調整部(20)と、前記温度調整部(20)で温度調整した前記プリフォーム(1)をブロー成形するブロー成形部(30)とを備えた樹脂成形容器の製造装置(100)であって、保持部材(50)により保持されたプリフォーム(1)内に、中空ロッド部材(18)が挿入されることにより、前記プリフォーム(1)及び中空ロッド部材(18)間に第1の空気流通路(21a)が形成される前記ブロー成形装置(100)において、流路調整部材(19)が前記中空ロッド部材(18)外周に嵌合して取付けられ、これにより前記第1の空気流通路(21a)の面積が少なくとも部分的に調整されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の樹脂成形容器の製造方法は、射出成形された、有底状のプリフォーム(1)を、保持部材(50)により保持して、温度調整部(20)において温度調整した後にブロー成形する、樹脂成形容器の製造方法において、前記温度調整部(20)での温度調整時に、流路調整部材(19)を取付けた中空ロッド部材(18)をプリフォーム(1)内に挿入することにより、前記プリフォーム(2)及び前記流路調整部材(19)間に第1の空気流通路(21a)を形成するステップと、前記中空ロッド部材(18)、流路調整部材(19)及びプリフォーム(1)を、温調ポット型(17)のキャビティに挿入した後に、第1の空気流通路(21a)に冷却用空気を流通させるステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、成形サイクル時間の短縮化を実現でき、しかも完成容器の透明化を図りつつ偏肉を解消し得るプリフォームの温度調整装置及び温度調整方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリフォームの温度調整装置を適用した樹脂成形容器の製造装置の一例であるブロー成形装置の斜視図を示す。
【
図2】前記射出成形部で射出成形されているプリフォームの一例の斜視図である。
【
図3】前記温度調整部を正面から見た断面図を示す。
【
図5】前記温度調整部の中空ロッドの正面図を示す。
【
図6】
図6(A)及び(B)は夫々、前記温度調整部で使用する整流ロッドの第1の実施形態の正面図、及び
図6(A)中VIB-VIB線に沿った断面図を示す。
【
図7】
図7(A)及び(B)は夫々、整流ロッドの第2の実施形態の一部断面正面図、及び
図7(A)中VIIB-VIIB線に沿った断面図を示す。
【
図8】
図8(A)及び(B)は夫々、整流ロッドの第3の実施形態の一部断面正面図、及び
図8(A)中VIIIB-VIIIB線に沿った断面図を示す。
【
図9】
図9(A)及び(B)は夫々、整流ロッドの第4の実施形態の正面断面図、及び
図9(A)中IXB-IXB線に沿った断面図を示す。
【
図10】
図9に示した整流ロッドを温度調整部で使用したときの
図4に対応する断面図を示す。
【
図11】
図11(A)乃至(C)は夫々、整流ロッドの第5の実施形態の正面断面図、及び
図11(A)中XIB-XIB線及びXIC-XIC線に沿った各断面図を示す。
【
図12】
図12(A)乃至(C)は夫々、整流ロッドの第6の実施形態の正面断面図である
図12(B)中XIIA―XIIA線に沿った断面図、前記正面断面図、及び
図12(B)中XIIC-XIIC線に沿った断面図を示す。
【
図13】
図13(A)及び(B)は夫々、
図12に示した整流ロッドが適用される中空ロッドの一例の正面断面図である
図13(B)中XIIIA―XIIIA線に沿った断面図、及び前記正面断面図である。
【
図15】
図15(A)乃至(C)は夫々、整流ロッドの第7の実施形態の正面断面図である
図15(B)中XVA―XVA線に沿った断面図、前記正面断面図、及び
図15(B)中XVIC-XVIC線に沿った断面図を示す。
【
図16】
図16(A)及び(B)は夫々、
図15に示した整流ロッドが適用される中空ロッドの他の例の正面断面図である
図16(B)中XVIA―XVIA線に沿った断面図、及び前記正面断面図である。
【
図17】
図17(A)乃至(C)は夫々、前記プリフォームをブロー成形した後に取出された完成容器の斜視図、正面図及び平面図を示す。
【
図19】
図19(A)及び(B)は夫々、完成容器の偏肉状態を示す第1及び第2の実験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係るプリフォームの温度調整装置を適用した樹脂成形容器の製造装置の一例であるブロー成形装置の斜視図を示し、
図2は、前記射出成形部で射出成形されたプリフォームの斜視図を示し、
図3は、前記温度調整部を正面から見た断面図を示し、
図4は
図3の要部の拡大断面図を示す。
【0016】
図1に示す如く、ブロー成形装置100は、射出成形部10と、温度調整部20と、ブロー成形部30と、取り出し部40とを備えており、プリフォーム1を射出成形部10で射出成形した後に、最後にブロー成形部30でブロー成形して容器101(
図1及び
図14参照)を製造するための装置である。
【0017】
射出成形部10、温度調整部20、ブロー成形部30、及び取り出し部40は、上から見たときに正方形の4つの辺を形成するような配列で配置されている。これらの上方には、射出成形部10で成形されたプリフォーム1のネック部3(
図2参照)を保持するネック型50(
図3参照)が設けられた不図示の回転盤が設けられている。この回転盤は、上方から見たときに正方形の4つの辺を形成するような配列で4組のネック型50が配置されている。これにより、回転盤が射出成形部10、温度調整部20、ブロー成形部30、及び取り出し部40上で垂直軸を中心に反時計回りに90度ずつ回転することにより、ネック型50に保持されたプリフォーム1に対して各工程が実施されるようになっている。
【0018】
射出成形部10は、射出コア型11、射出キャビティ型12、及び不図示の射出装置を備え、プリフォーム1を射出成形するように設けられている。射出コア型11および射出キャビティ型12には図示しない冷却回路が設けられ、5~20℃程度の冷却媒体が流されている。
プリフォーム1は熱可塑性の合成樹脂を材料として、
図2に示すように、開放側のネック部3及び閉鎖側の貯留部(本体部)2を有して有底状(有底中空状)に形成されている。貯留部2は、解放側のネック部3に連なる胴部2aと、閉鎖側に位置して胴部2aに連なる底部2bとから構成されている。プリフォーム1は、ブロー成形されることによりペットボトル等の完成容器102(
図1及び
図14参照)になるものであり、ブロー成形後の容器102を
図14中上下および左右方向に縮めて厚肉にしたような形状を有している。
【0019】
射出成形部10は熱可塑性の合成樹脂材料(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル系樹脂)を高温で加熱して溶かし、溶かした材料を不図示の射出装置により射出コア型11と射出キャビティ型12及びネック型50とで画定される成形空間(キャビティ)の間に射出(充填)し、射出した材料のうちキャビティ面に近い部分の材料を融点(例えばPETの場合は約255℃)よりも低い温度、例えば、20℃程度まで冷やして固めることにより貯留部2に表面層(適宜、外部層、外層、又はスキン層と呼ぶ)を形成し、プリフォーム1を成形するようになっている。このとき、プリフォーム1の貯留部2の内部層(適宜、内層、又はコア層と呼ぶ)は成形材料の融点以下-ガラス転移点温度以上の温度に保ち(例えば150~200℃)、貯留部2がブロー成形部30で延伸可能な熱量(保有熱)を有するように調整する。なお、本実施形態では成形サイクル時間、つまり、プリフォーム1の成形時間を従来よりも短縮化させている。具体的には、プリフォームの射出成形時間に関する射出時間(充填時間)と冷却時間のうち、冷却時間を従来法より著しく短く設定している。例えば、冷却時間は、射出時間の2/3以下、好ましくは1/2以下、更に好ましくは1/3以下に設定される。
【0020】
射出成形部10で射出成形された後にある程度固まったプリフォーム1は、ネック型50に保持されたまま回転盤と共に上方に持ち上げられて射出キャビティ型12および射出コア型11から引き抜かれ(離型され)、
図1に示すように、回転盤が反時計回りに90度回転することにより温度調整部20に搬送される。
【0021】
温度調整部20は、射出成形部10の隣に配置されており、
図3及び
図4に示すように、上方の筒形エアノズル16及び下方の温調ポット型17を備えている。エアノズル16の下端はプリフォーム1のネック部3に気密可能に当接する。温調ポット型17はプリフォーム1の上下方向で温度調整ができるよう、上下方向で複数の段部(温調ブロック)から構成されている。各段部には異なった温度(例えば10℃から90℃の範囲の所定の温度)の温調媒体(冷却媒体)を循環させることができる。
以下、筒形エアノズル16の内部構成について説明する。
【0022】
18は、プリフォーム1内に挿入される中空ロッドであり、
図3乃至
図5に示す如く、下端にスリーブ(中空ピース)18aを嵌合固着され、且つ筒形エアノズル16に対して同心的に且つ上部の固定部18bにて固着して配置される。この中空ロッド18は、
図5に示す如く、上端の冷却空気出口穴18cと、下方の周溝18dと、内部の空気流通路21bとを有する。なお、スリーブ18aは、プリフォーム1の軸方向長さが大きいときに設けられるものであって、プリフォーム1の長さが短いときは必ずしも設ける必要はない。
【0023】
19Aは筒形流路調整ロッド(以下、適宜整流ロッドという)の第1の実施形態であり、
図4及び6に示す如く、外周19aは真円形断面(
図6(B)参照)を有し、且つ上部から下部に向かって漸次外径が減少する円錐台形状であり、上端に設けた被係合部(ねじ穴)19bと、下端19c外周に後述する冷却用空気の流通を円滑にするように設けた比較的大きな湾曲面とを有する。この円錐台の傾斜角度は、プリフォーム1の内周の傾斜角度に応じて決められるが、この場合軸線に対して例えば0.34度である。
【0024】
この整流ロッド19Aは、
図3及び
図4に示す如く、中空ロッド18の下端及びスリーブ18aの外周に共通に嵌合して取付けられ、整流ロッド19A上端で係合部材(ねじ)24(
図4参照)を上記被係合部(ねじ穴)19bを介して周溝18dに係合することにより、強固に固着される。従って、整流ロッド19Aは中空ロッド18に対してねじどめ形式等で容易に着脱が行えるから、同一の中空ロッド18に対して種種の異なる形式の整流ロッドを容易に交換的に取付けることができる。即ち、中空ロッド自体を異なる形式のものを用意する必要が無くなり、コスト及び作業工数も低減し得る。
かくして、エアノズル16、中空ロッド18及び整流ロッド19Aは一体構成(以下、この一体構成を適宜、単にエア導入出部材と呼ぶ)となり、不図示の駆動装置により一体的に昇降される。
【0025】
また後述する如く、ネック型50により支持されたプリフォーム1を温調ポット型17のポットキャビティ17a(
図4参照)内に挿入してエア導入出部材を下降させてネック部3に当接させたときに、冷却空気流入口16a(
図3参照)から流入した冷却空気(圧縮空気)が、エアノズル16内周から、整流ロッド19A外周とプリフォーム1内周との間にリング状断面の第1の空気流通路21aが形成され、また整流ロッド19A下端部で半径方向内方へ移動した冷却後空気がスリーブ18aの下端開口から上方へ該スリーブ18a内部及び中空ロッド18内部を順次案内する第2の空気流通路21bが形成される。冷却後空気は、上部の冷却空気出口穴18c(
図3参照)を介して空気流出口16bから外部へ排出される。なお、場合によっては、空気は第2の空気流通路21bから流入して第1の空気流通路21aを通って流出させても良い。なお、第1の空気流通路21aのうち特に整流ロッド19A及びプリフォーム1内周との間の部分に形成される空間をリング状空隙22(
図4参照)と呼ぶ。このリング状空隙22の半径方向寸法は上流側の中空ロッド18とエアノズル16との間に形成される半径寸法より小さく、例えば0.5~1.5mm、好ましくは0.5mmから1.0mmの範囲に設定される。よって、リング状空隙22を通過する空気流れは絞られて、上流側よりも高速で流通する。つまり、流路調整ロッドを用いることにより、リング状空隙22において、その上流域よりも、冷却空気の高速化や整流化を図ることができる。
【0026】
次に、本発明のプリフォームの温度調整装置の動作について説明する。
図3及び
図4に示す如く、ネック型50により支持されたプリフォーム1が、射出成形部10から搬送されてきて、温調ポット型17のキャビティ17a内に挿入される。その前後に、エア導入出部材が下降され、中空ロッド18及び整流ロッド19がプリフォーム1内に挿入される。
このとき、ネック型50が、温調ポット型17上に取り付けられた芯出しリング60に対して芯出しされる。
【0027】
また、上述した如く、冷却空気が流入する第1の空気流通路21a(リング状空隙22)と、プリフォーム1冷却後の空気が流通する第2の空気流通路21bが形成されている。
【0028】
そして、
図3中、例えば、室温(例えば10℃~20℃)の冷却空気が、空気流入口16aから第1の空気流通路21a、即ちリング状空隙22の箇所を比較的高速で通過することにより、プリフォーム1の本体部2(胴部2aおよび底部2b)に対して大きな冷却効果を与えて、プリフォーム1の温度を、次のブロー工程に適した適温まで降下させる。なお、冷却空気をプリフォーム1内に流通させて冷却する前に、プリフォーム1内に圧縮空気を別途導入してプリフォーム1を温調ポット型17のキャビティ17aに密着させても構わない。これにより、プリフォーム1を内側から冷却させるのと共に外側からも確実な温調が可能になり、冷却効果に加えて偏温の除去や均温化の効率も向上できる。
冷却後の空気は第1の空気流通路21aの下端、即ち、整流ロッドの下端19cで円滑に半径方向内方へ流れ方向を変えた後に、更にスリーブ18a内部の第2の空気流通路21bを介して上昇して空気流出口16bから外部へ排出される。
【0029】
これによれば、整流ロッドを設けない従来例の場合と、本発明の如く整流ロッド19Aを設けた場合とを比較すると、本発明のリング状空隙22の半径方向寸法は、前者の如整流ロッドを設けない場合に比して、整流ロッド19Aを設けた分だけ微調整的に小さくなる。従って、この第1の空気流通路21aを通過する冷却空気の流速はその分大きくなり、プリフォームの冷却効率が向上する。
【0030】
なお、従来例のリング状空隙の断面積が比較的大きい場合でも、空気圧力や空気供給量を大きくして冷却空気の流速をより高めることとは可能であるが、その場合空気消費量が大きくなってしまうという問題点がある。
【0031】
(第2実施形態)
図7は、整流ロッドの第2の実施形態である整流ロッド19Bを示す。
この整流ロッド19Bは、外周の周方向の少なくとも一箇所に軸方向に伸びる切欠部19dを有する。
【0032】
この切欠部19dを有する整流ロッド19Bを使用して実験を行った結果(
図16(A)(B)参照)、プリフォーム貯留部2の切欠部19dに対応する部分の容器101の肉厚が非対応の部分の肉厚よりも大きくなる傾向を観察した。これについては後に詳述する。
【0033】
(第3実施形態)
図8は、整流ロッドの第3の実施形態である整流ロッド19Cを示す。
この整流ロッド19Cは、外周の直径方向に対向する周方向二箇所に軸方向に伸びる切欠部19d1及び19d2を有する。
従って、プリフォーム貯留部2の上記二つの切欠部19d1及び12d2dに対応する二箇所の容器101の肉厚が非対応の部分の肉厚よりも大きくなった。勿論、切欠部19dは外周の周方向3箇所以上に設けてもよい。
【0034】
(第4実施形態)
図9は、整流ロッドの第4の実施形態である整流ロッド19Dを示す。
この整流ロッド19Dは、上端の大径部19eと軸方向下方の部分を小径部19fとこれらを接続する略テーパ形状部19gとを有している。
図10に、この整流ロッド19Dを中空ロッド18及びスリーブ18aに取付け、更にネック型50により保持したプリフォーム1Aとは異なるプリフォーム1Bと共に温調ポッド型17のキャビティ17a内に挿入した状態を示し、同図中、
図4と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
これを見ると、第2のプリフォーム1Bは、ネック部3A箇所の大きな内径部1aと下方の小さな内径部1bとを接続する略テーパー形状内径部1cを有する。
【0035】
従って、整流ロッド19Dの大径部19e、テーパ形状部19g及び小径部19fが夫々、プリフォーム1Bの3つの内径部1a、1c及び1bの形状に順に倣ってほぼ均一の空隙寸法で接することにより、冷却空気の流れに沿って均一な断面積の第1の空気流通路21aを提供し得、このプリフォーム1Bの軸方向に沿って均一な冷却効果を与えることができる。
【0036】
(第5実施形態)
図11は、整流ロッドの第5の実施形態である整流ロッド19Eを示す。
この整流ロッド19Eは、
図9の整流ロッド19Dと同一形状であるが、更に外周の周方向一箇所に軸方向に伸びる切欠部19hを有する。勿論、切欠部19hは外周の周方向2箇所以上に設けてもよい。
【0037】
従って、これによれば、上記第3及び第4の実施形態(
図7及び
図8)の切欠部19d(19d1及び19d2)と同様の効果を奏する。
なお、上記各実施形態において、整流ロッド19の断面形状は基本的に円形であるが、これに限らず楕円形又は多角形であっても良く、またこれら楕円形又は多角形に更に一つ以上の切欠部を設けても良い。
また、上記各実施形態において、切欠部19d、19hは直線状であるが、これに限らず曲線状又は凹凸状と種種の形態を取りうる。
【0038】
(第6実施形態)
図12(A)乃至(C)は、整流ロッドの第6の実施形態である整流ロッド19Fを示す。
この整流ロッド19Fは、上端に多角形(例えば正八角形)状の係合凹部19iが設けられている。多角形係合凹部19iは略矩形状の内面部を複数(八個)備える。
【0039】
図13に、前記整流ロッド19Fを取り付けるための中空ロッド18Xを示す。
図4及び
図10に示した実施形態では中空ロッド18の下端に別部材のスリーブ18aを取付けていたが、この中空ロッド18Xは、下端にスリーブ部分18eを一体的に設けられ、且つ途中高さ位置に多角形状の角柱部で構成される係合凸部18fが形成されている。この角柱部は複数(八個)の略矩形状の外面部を複数備える。従って、
図14に示す如く、整流ロッド19Fは、中空ロッド18Xのスリーブ部分18eに対して図中下方(圧縮空気が流入出する開口端がある方向の側)から嵌合されて、その多角形係合凹部19iが中空ロッド18Xの多角形係合凸部18fに多角形係合に基づいて方向決めして係合される。より具体的には、係合凹部19iの複数の内面部と多角形係合凸部18fの角柱部の複数の外面部とが当接し、整流ロッド19Fは中空ロッド18Xに対し周方向の所定角度位置に方向決めされた状態で(位置決めされた状態で)係合される。更に整流ロッド19Fの下端は、スリーブ部分18e下端の止めリング用係合凹部18gに取付けられる係止部材(止めリング)23(
図14参照)により支持されて、中空ロッド18Xに係止される。
【0040】
これによれば、
図14中、例えばリング状空隙22の空隙寸法が周方向角度位置に応じて微妙に異なることに起因して冷却空気による冷却程度(冷却強度)を周方向の角度位置に応じて変更させることができる。具体的には、整流ロッド19Fを取り外して所定化角度(例えば45度)単位で回転させて中空ロッド18Xに再度取付けることにより、上記冷却程度の分布を調節可能である。つまり、整流ロッド19Fの切欠部19hをプリフォーム1の高温部位に相対させるように位置変更し、高温部位の冷却度合い(冷却強度)を高めることができる。なお、上記多角形係合凹部19i及び多角形係合凸部18fは、八角形以外に三角形以上であればそれ以外の多角形でもよい。
【0041】
(第7の実施形態)
図15(A)乃至(C)は、整流ロッドの第7の実施形態である整流ロッド19Gを示す。
この整流ロッド19Gは、上端の周方向等分位置に複数(例えば八個)の係合凹部19jが設けられている。各係合凹部19jは例えば略矩形状またはスリット状であり、整流ロッド19Gの上端に形成された略円筒状の陥没部の内周面に外径側に凹むように形成されている。
【0042】
図16に、この整流ロッド19Gを取り付ける中空ロッド18Xaを示す。この中空ロッド18Xaも、下端にスリーブ部分18eを一体的に設け、且つ途中高さ位置に半径方向に突出する単一突起部(略矩形平板状の凸部)で構成される単一係合凸部18hが形成されている。従って、整流ロッド19Gは、中空ロッド18Xaのスリーブ部分18eに対して図中下方(圧縮空気が流入出する開口端がある方向の側)から嵌合されて、その一つの係合凹部19jが中空ロッド18Xаの単一係合凸部18hに方向決めして係合される。より具体的には、複数の係合凹部19jの何れかに単一係合凸部18hが嵌合し、整流ロッド19Gは中空ロッド18Xaに対し周方向の所定角度位置へ方向決めされた状態で(位置決めされた状態で)係合される。更に整流ロッド19Gの下端は、スリーブ部分18eの下端の止めリング用係合凹部18gに取付けられる係止部材(止めリング)23により支持されて(
図14参照)、中空ロッド18Xaに係止される。
【0043】
これによれば、例えばリング状空隙22の空隙寸法が周方向角度位置に応じて微妙に異なることに起因して冷却空気による冷却程度(冷却強度)を周方向の角度位置に応じて変更させることができる。具体的には、整流ロッド19Gを取り外して回転させて以前と異なる係合凹部19jを中空ロッド18Xaの単一係合凸部18hに係合させて取り付けることで、上記冷却程度の分布を調節可能である。つまり、整流ロッド19Gの切欠部19hをプリフォーム1の高温部位に相対させるように位置変更し、高温部位の冷却度合い(冷却強度)を高めることができる。
【0044】
図14は、中空ロッド18Xと整流ロッド19F(中空ロッドXaと整流ロッド19Gの場合も同様である)が搭載された場合の温度調整部20の模式図あり、
図4と同一部分については詳しい説明は省略する。なお、
図14中、温調ポット型17のキャビティ17a(
図4参照)は、段部間の境い目(スリットやパーティングライン)が存在しない、単一の面で構成されている。
【0045】
なお、
図12及び13中の多角形係合凹部19i、多角形係合凸部18fは、多角形に限らず、少なくとも多角形の頂点に相当する部分を有して互いに選択的に係合し得る各種形状の係合部でもよい。また、
図15及び16中の複数の係合凹部19jは各種形状の複数の係合部でも良く、また単一の係合凸部18hは前記複数の係合部に選択的に係合する2個以上の係合凸部であってもよい。また、場合によっては、整流ロッドと中空ロッドとで係合凸部と係合凹部が上記実施形態の場合に比して逆配置になってもよい。
【0046】
(第1の実験例)
次に、
図17乃至
図19に第1の実験例を示す。
【0047】
図17はプリフォーム1を温度調整した後に、ブロー成形部30でブロー成形されて取り出されたペットボトル等の完成容器101を示し、この場合、容器101の胴部102は、正八角形の断面を有して、8個の辺部102aを有する。
【0048】
図18は本実験に使用する整流ロッド19Bの断面を図式的に示すものであり、90度の方向に一つの切欠部19dを有する。
【0049】
図19(A)及び(B)は、この容器102を成形する途中の温度調整部20において、整流ロッド19に切欠部を設けない場合(曲線A・実戦)、上記一つの切欠部19dを設けた場合(曲線B・点線)、及び切欠部19d以外の外周部分にアルミテープを貼って切欠部19d以外の空気流路面積を更に絞った場合(曲線C・一点鎖線)(これはアルミテープを貼らずに切欠部19d寸法を一層大きくした場合に相当する)について、容器101の時計方向に45度ずつの位置(上記八角形に対応した八箇所)で、プリフォーム1をブロー成形して得られた容器101の肉厚tを測定した結果であり、
図16中、中心からの半径方向距離は容器101の胴部の肉厚(mm)であり、その肉厚tは0.6~1.4mmの範囲で変動していることが分かる。
尚、この場合、
図15の整流ロッド19の切欠部19dが設けられた90度の方向が、
図16の90度の方向と一致している。
【0050】
実験手順としては、温度調整部20にて、一つの切欠部19dを設けた整流ロッド19Bを使用してプリフォーム1を温度調整した後に、ブロー成形部30でプリフォーム1をブロー成形して容器101を得て、容器101の底部からの高さが116mmの箇所で該胴部102の肉厚を測定した。
最初に、
図16(A)の測定結果を見ると、135度の方向において、切欠部19dを設けた場合(曲線B)と設けない場合(曲線A)とを比較して、前者の方が容器胴部102の肉厚が大きくなり、また切欠部19d以外にアルミテープを貼って空気流路面積を絞った場合(曲線C)は、上記胴部102の肉厚は一層大きくなることが分かり、切欠部19dを設けた効果が確認された。なお切欠部19dを設けた90度の方向でなく45度ずれた135度の方向の肉厚が大きくなった理由は、容器101が八角形の形状であったため、45度だけ隣接した辺部(又は頂部)に顕著にその傾向が現れたと考えられる。
【0051】
次に、
図16(B)は、容器102の底部から高さが84mmの箇所で該胴部102の肉厚を測定したことを除いては、
図16(A)の場合と同様の実験を行った結果を示す。
これによれば、容器101の135度の方向において、切欠部19dを設けた場合(曲線B)と設けない場合(曲線A)、及び切欠部19d以外にアルミテープを貼って空気流路面積を絞った場合(曲線C)を比較して、
図16(A)と同様の傾向が見られたが、切欠部19d以外にアルミテープを貼った場合(曲線C)に、
図16(A)の場合に比して一層肉厚が大きくなることが分かる。
【0052】
このような結果になった理由は、以下の通りと考えられる。即ち、第1の空気流通路21a(リング状空隙22)の切欠部19dに対応する部分の断面積が他の部分より部分的に大きくなるので、この箇所の空気の流路抵抗が下がるため、他の部分より多くの空気が流れ込むようになり、相対的に冷却効率(冷却強度)が高くなるのだと思われる。これに比して、第1の空気流通路21aの切欠部19dに対応しない他の部分は、流路断面積が小さいので流路抵抗が高くなって空気が流れ込む量が減ってしまうため、相対的に冷却効率が低くなるのだと思われる。よって、切欠部19d付きの整流ロッド19を備えるエアノズル16と温調ポット型17とで構成される温度調整部20では、プリフォーム1を効率的に急冷して白濁化(ヘイズ、結晶化)が抑制できるのと共に、プリフォーム1の貯留部2の局所的な(縦縞様の)高温部位を選択的に冷却して偏温も積極的に解消させることができる。
【0053】
これにより、プリフォーム1の貯留部2において、温度調整装置20へ至る以前にもともと存在した偏肉を、完成容器101において均一な厚さへ調整することが可能となり、又は場合によっては逆にあえて偏肉を与えることも可能である。
【0054】
特に、ブロー成形装置100で一つのネック型50に複数(
図1中では6個)のプリフォーム1を取付けて運ぶ、いわゆる多数個取りを行う場合、射出成形部10において例えば6個のうち三番目のプリフォームに由来して常に容器101において偏肉を生ずる傾向があるときに、次の温度調整部20で三番目の温調ポッド型17において上記切欠部19dを有する整流ロッド19Bにより、容器101の偏肉を解消し得る。
【0055】
(第2の実験例)
次に、下に示す「表1」に、整流ロッドを設けない場合(1)と、設けた場合(2)とでプリフォーム冷却用の空気流量がどのように変化したかの実験例を示す。尚、循環空気(冷却空気、圧縮空気)の設定圧力は整流ロッドを設けない場合と設けた場合とで夫々0.6MPa及び0.4MPaであり、循環空気はプリフォームのネック側から入り(IN)、プリフォームの底部から出て行く(OUT)状態である。また整流ロッドは、
図6及び
図9で示す如く、切欠部を設けないものを使用した。
【0056】
【0057】
そして上記(1)及び(2)の場合とで、容器102に白化や白濁等を生じないように同程度の良好な透明度を得られる温度まで冷却するように、循環空気の供給量を調整した。その結果、循環空気供給量(消費量)は、(1)の場合の407リットル/分から、(2)の場合は207リットル/分に減少した。これにより、整流ロッドを設けることにより、大幅に循環空気供給量を低減してプリフォーム1の冷却効率を向上させることができ、装置の負荷を低減できることが分った。
【符号の説明】
【0058】
1(1A、1B)…プリフォーム
2…貯留部(本体部)
2a…胴部
2b…底部
3、103…ネック部
10…射出成形部
11…射出コア型
12…射出キャビティ型
16…エアノズル
16a…空気流入口
16b…空気流出口
17…温調ポッド型
17a…温調ポッド型キャビティ
18、18X、18Xa…中空ロッド
18a…スリーブ
18b…固定部
18c…空気出口穴
18d…周溝
18e…スリーブ部分
18f…多角形係合凸部
18g…止めリング用係合凹部
18h…単一係合凸部
19A~19G…流路調整ロッド(整流ロッド)
19a…外周
19b…ねじ穴
19c…下端部
19d、19d1、19d2…切欠部
19e…大径部
19f…小径部
19g…テーパ形状部
19h…切欠部
19i…多角形係合凹部
19j…複数係合凹部
20…温度調整部
21a…第1の空気流通路
21b…第2の空気流通路
22…リング状空隙
23…止めリング
24…ねじ
30…ブロー成形部
40…取出し部
101…容器
102…胴部
102a…辺部