(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241007BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20241007BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G03G21/00 502
G03G15/08 235
G03G15/06 101
(21)【出願番号】P 2020199396
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2019219647
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 延喜
(72)【発明者】
【氏名】今村 一晴
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-224209(JP,A)
【文献】特開2012-027249(JP,A)
【文献】特開2010-224071(JP,A)
【文献】特開2015-129872(JP,A)
【文献】特開2013-044859(JP,A)
【文献】特開2015-194682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/08
G03G 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記像担持体に対して非接触状態で対向するように設けられ、現像剤を担持する回転可能な現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアスを印加する印加部と、
前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる電流値を検出する検出部と、
前記像担持体と前記現像剤担持体が回転され、前記現像剤担持体に前記現像バイアスが印加された状態で、前記検出部により検出された第1の電流値と前記第1の電流値よりも小さい第2の電流値との差から前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する制御部と、
を有
し、
前記制御部は、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する動作を行う場合に、前記現像剤担持体又は前記像担持体のうち1回転する時間が長い方を少なくとも1回転させる、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出部により検出された前記第1の電流値と前記第2の電流値との差が閾値を超えた場合に、前記現像剤担持体に印加される前記交流電圧を、前記電流値を検出する検出時に前記現像剤担持体に印加された交流電圧より小さい値に設定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の電流値と前記第2の電流値との差が閾値を超えたと検知した場合に、前記現像剤担持体に印加する交流電圧を段階的に下げて、再び前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる前記第1の電流値と前記第2の電流値との差が閾値を超えたか否かを検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出部により検出された前記第1の電流値と前記第2の電流値との差が閾値以下の場合に、前記現像剤担持体に印加する交流電圧の設定を変更しないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記現像剤担持体又は前記像担持体が少なくとも1回転する時間において前記検出部により検出される前記第1の電流値と前記第2の電流値との差から前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の電流値は前記検出部により検出された前記電流値の最大値であり、前記第2の電流値は前記検出部により検出された前記電流値の最小値であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記現像剤担持体に印加する交流電圧の正側において前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる第3の電流値、又は前記現像剤担持体に印加する交流電圧の負側において前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる第4の電流値を検出し、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記第3の電流値の最大値と最小値の差又は前記第4の電流値の最大値と最小値の差が閾値を超えた場合に、前記現像剤担持体に印加される前記交流電圧を、前記電流値を検出する検出時に前記現像剤担持体に印加された交流電圧より小さい値に設定することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記現像剤担持体に印加する交流電圧の正側において前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる第3の電流値、又は前記現像剤担持体に印加する交流電圧の負側において前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる第4の電流値を検出し、
前記制御部は、前記交流電圧の周期時間において前記検出部により検出された前記第3の電流値を平均化した第1の平均値又は前記第4の電流値を平均化した第2の平均値を算出し、前記算出した前記第1の平均値の最大値と最小値の差、又は前記第2の平均値の最大値と最小値の差が閾値を超えた場合に、前記現像剤担持体に印加される前記交流電圧を、前記電流値を検出する検出時に前記現像剤担持体に印加された交流電圧より小さい値に設定することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記検出部は、前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる電流を整流した電流値を出力し、
前記制御部は、前記交流電圧の周期時間において前記検出部から出力された電流値を平均化した値を出力することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
回転可能な像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記像担持体に対して非接触状態で対向するように設けられ、現像剤を担持する回転可能な現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアスを印加する印加部と、
前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる電流値を検出する検出部と、
前記像担持体と前記現像剤担持体が回転され、前記現像剤担持体に前記現像バイアスが印加された状態で、前記現像剤担持体に印加する交流電圧が負から正又は正から負になるタイミングから一定の時間が経過したときに前記検出部により検出された電流値から前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する制御部と、
を有
し、
前記制御部は、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する動作を行う場合に、前記現像剤担持体又は前記像担持体のうち1回転する時間が長い方を少なくとも1回転させる、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記現像剤担持体に印加する交流電圧が負から正又は正から負になるタイミングから一定の時間が経過したときに前記検出部により検出された電流値が閾値を超えた場合に、前記現像剤担持体に印加される前記交流電圧を、前記電流値を検出する検出時に前記現像剤担持体に印加された交流電圧より小さい値に設定することを特徴とする請求項
10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記検出部により検出された電流値が閾値以下の場合に、前記現像剤担持体に印加する交流電圧の設定を変更しないことを特徴とする請求項10又は11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記電流値が閾値を超えたと検知した場合に、前記現像剤担持体に印加する交流電圧を段階的に下げて、再び前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる電流値が閾値を超えたか否かを検知することを特徴とする請求項10又は11に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記検出部は、前記現像剤担持体に印加される交流電圧が一定となる領域において前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる電流値を検出することを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
帯電された像担持体に露光する露光部を有し、
前記現像剤担持体の軸方向において、前記帯電部材により帯電される前記像担持体の帯電領域は、前記現像剤担持体の現像剤を担持する現像剤担持領域より広く、
前記露光部は、前記現像剤担持体の軸方向において、前記像担持体に対して前記現像剤担持体の前記現像剤担持領域より広い領域に露光することが可能であり、
前記制御部により閾値との比較を行う時には、前記現像剤担持体の軸方向において、前記像担持体の前記現像剤担持領域に対向する領域の電位が、前記現像剤担持体に印加される前記直流電圧と、前記像担持体の帯電領域において前記露光部により露光されない非露光領域の電位との間になるように、前記露光部は前記像担持体の前記現像剤担持領域に対向する領域を露光することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記現像剤担持体又は前記像担持体が少なくとも1回転する時間において前記検出部により検出される前記電流値から前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御することを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記現像剤担持体又は前記像担持体の駆動時間に合わせて前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する動作を行うことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記制御部は、温湿度もしくは気圧が変化した時に前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する動作を行うことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記現像剤担持体に印加される交流電圧が矩形波状であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式(電子写真プロセス)を用いたプリンタ等の画像形成装置では、像担持体に形成された静電潜像を現像するために、様々な現像装置が使用されている。その一例として、像担持体とこれに対向する現像剤担持体とが所定の間隙(ギャップ)を設けて配置されている非接触現像方式が知られている。
【0003】
非接触現像方式では、現像剤担持体に直流電圧と交流電圧が重畳された現像バイアスが印加されることで、帯電したトナーが現像剤担持体から像担持体へと飛翔し、像担持体に形成された静電潜像へトナー像が現像される。像担持体に現像されたトナー像は、用紙などの記録媒体に転写、定着される。
【0004】
ところで、非接触現像方式では、像担持体および現像剤担持体に駆動がかかることで、像担持体と現像剤担持体との間に設けられている前記ギャップが変動する場合がある。前記ギャップの変動により像担持体と現像剤担持体の間の電界強度が変動することで、形成された画像に濃度ムラが発生する等の問題があった。
【0005】
この問題に対して、現像バイアスにおける交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク値)を大きくすることで、トナーが現像剤担持体から像担持体へと十分飛翔し、濃度ムラの発生を抑制することが可能である。しかし、前記現像バイアスにおける交流電圧のピーク間電圧を大きくすると、像担持体の表面電位との電位差が大きくなる。そのため、現像剤担持体と像担持体との間に放電が生じ、放電によって放電電流が流れる電流リーク(以下、リークと称する)が発生し、形成される画像にノイズが発生するという問題があった。
【0006】
前記リークが発生する交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク値)は、前記ギャップや気圧などで変化するため、個々の画像形成装置や使用環境の変化によって変化する。
【0007】
そのため、特許文献1においては、像担持体と現像剤担持体との間に印加される現像バイアスにおける交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク値)を、リークが発生しない値から徐々に増加させている。そして、像担持体と現像剤担持体との間に流れる電流値に基づいてインピーダンスを測定し、インピーダンスの測定値と前記電流値からリークの発生を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では像担持体と現像剤担持体との間のリークの発生を検知するために、インピーダンスを事前に測定する必要があり、リークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間が長くなるという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、リークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、回転可能な像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電部材と、前記像担持体に対して非接触状態で対向するように設けられ、現像剤を担持する回転可能な現像剤担持体と、前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアスを印加する印加部と、前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる電流値を検出する検出部と、前記像担持体と前記現像剤担持体が回転され、前記現像剤担持体に前記現像バイアスが印加された状態で、前記検出部により検出された第1の電流値と前記第1の電流値よりも小さい第2の電流値との差から前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する動作を行う場合に、前記現像剤担持体又は前記像担持体のうち1回転する時間が長い方を少なくとも1回転させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】現像バイアス印加と放電検出に関する構成を示す説明図
【
図3】(a)Vppを変化させたときの電流値の波形図、(b)実施例における交流電圧と電流値の最大値と最小値の差の関係図
【
図4】(a)比較例における交流電圧と電流値の関係図、(b)実施例における交流電圧と電流値の変化量の関係図
【
図5】(a)比較例における放電発生検出時の交流電圧設定のタイミングチャート、(b)実施例における放電発生検出時の交流電圧設定のタイミングチャート
【
図6】実施例1における放電検出制御を示すフローチャート
【
図7】実施例2における現像バイアス印加の交流電圧と電流値の波形図
【
図8】実施例2における放電検出制御を示すフローチャート
【
図9】実施例3における画像形成部の各部材の大小関係を説明するための説明図
【
図10】実施例3における放電検出制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲を以下の実施例に限定する趣旨のものではない。
【0015】
〔実施例1〕
図1を参照して、画像形成装置の全体構成を画像形成動作とともに説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置の概略構成を示す模式断面図である。
【0016】
<画像形成装置の説明>
画像形成装置は、電子写真方式を用いたレーザプリンタであり、装置本体Mに対してプロセスカートリッジ20が着脱可能に構成されている。ここで、画像形成装置の装置本体Mとは、画像形成装置においてプロセスカートリッジ20を除いた構成部品を示すものである。また、本発明が適用可能な画像形成装置はここに示すものに限られない。例えば、複数のプロセスカートリッジ20を備え、中間転写ベルト(中間転写体)を用いて複数像のトナー像を記録媒体に転写してカラー画像を形成するカラーレーザプリンタにも本発明は適用可能である。
【0017】
像担持体(被帯電体)としての感光ドラム1は、導電性ドラムの外周面にOPC(有機光半導体)感光層を形成したものであり、装置本体の不図示の駆動機構から駆動伝達され、所定のプロセススピードをもって
図1の矢印r1方向に回転駆動される。
【0018】
帯電部材としての帯電ローラ4は、所定のタイミングで帯電バイアスが印加され、感光ドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する。露光部としてのレーザビームスキャナ6は、帯電された感光ドラム1に対して画像情報に応じたレーザ光を走査露光(照射)することで、感光ドラム1の表面に静電潜像を形成する。
【0019】
現像部としての現像装置は、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像に対して現像剤としてのトナーにより現像を行う。現像装置は、現像ローラ7、現像ブレード8、現像容器9によって構成されている。現像ローラ7は、感光ドラム1に対向して配設され、感光ドラム1にトナーを供給するための現像剤担持体である。現像ブレード8は、現像ローラ7に担持されたトナーの層厚を規制し、トナーに電荷を付与するための規制部材である。現像容器9は、感光ドラム1に供給するトナーを収容するための現像剤収容部である。
【0020】
現像ローラ7は、装置本体の不図示の駆動機構から駆動伝達され、
図1の矢印r2方向に回転駆動される。現像ローラ7の表面には、現像ブレード8によって電荷が付与されたトナー層(磁性穂)が形成される。そして、現像ローラ7は交流電圧と直流電圧を重畳させた現像バイアスが印加されることで、現像バイアスの電界により現像ローラ7に担持されたトナーが感光ドラム1へ飛翔し、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像がトナー像として現像される。
【0021】
一方、記録媒体10は不図示の給送ローラなどによって給送され、感光ドラム1と転写ローラ11とのニップ部にて、感光ドラム1の表面に現像されたトナー像(現像剤像)が転写される。トナー像が転写された記録媒体10は、感光ドラム1の表面から分離されて定着装置12に送られ、加熱・加圧されて、転写されたトナー像が記録媒体10に定着される。
【0022】
記録媒体10に転写されず感光ドラム1の表面に残ったトナーは、感光ドラム1に当接して感光ドラム1をクリーニングするクリーニング部としてのクリーニングブレード2により除去され、クリーニング容器5に収容される。その後、感光ドラム1の表面は再び帯電ローラ4により帯電され、上述の工程を繰り返し、一連の画像形成のサイクルが行われる。
【0023】
本実施例では、感光ドラム1、帯電ローラ4、クリーニングブレード2、クリーニング容器5、及び現像ローラ7、現像ブレード8、現像容器9が、プロセスカートリッジ20として一体化されている。そしてプロセスカートリッジ20は、画像形成装置の装置本体Mに対して着脱可能となっている。
【0024】
<感光ドラムと現像ローラ間の放電検出構成の説明>
次に
図2を用いて、現像ローラ7への現像バイアスの印加、及び感光ドラム1と現像ローラ7間の放電検出に関する構成を説明する。
図2は、現像バイアス印加と放電検出に関する構成を示す説明図である。
【0025】
図2に示すように、現像ローラ7は、画像形成時にトナーを担持するスリーブ7aを有し、スリーブ7aの長手方向の両端には円形のキャップ7bが嵌入されている。現像ローラ7は、ローラ軸7cを中心に回転駆動される。ここでは、感光ドラム1の外径は30mm、現像ローラ7の外径は感光ドラム1の外径より小さい15mmとし、感光ドラム1と現像ローラ7は共に300mm/sの周速で回転駆動される。
【0026】
また、現像ローラ7は、感光ドラム1との間に所定のギャップ(SDギャップ)を設けた非接触状態で対向するように設けられている。本実施例では、キャップ7bはスリーブ7aより外径が大きく、キャップ7bの外周面が感光ドラム1の表面に当接する構成となっている。これにより、現像ローラ7と感光ドラム1との間に所定のギャップが設けられ、現像ローラ7と感光ドラム1とが非接触状態で対向する。ここでは、所定のギャップとして、200μmのSDギャップが設けられている。
【0027】
なお、現像ローラ7と感光ドラム1との間に所定のギャップを設ける構成はこれに限定されるものではない。例えば、現像ローラ7と感光ドラム1を回転可能に支持する枠体によって現像ローラ7と感光ドラム1との間に所定のギャップを設けた構成としてもよい。
【0028】
また、現像ローラ7のローラ軸7cには、感光ドラム1へのトナーの供給のため、直流電圧印加部30と交流電圧印加部31が接続されている。直流電圧印加部30と交流電圧印加部31は、現像ローラ7に直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアスを印加するための印加部である。
【0029】
直流電圧印加部30は、現像ローラ7に印加する直流成分を発生させる回路であり、その出力は交流電圧印加部31に入力される。そして、直流電圧印加部30は、出力制御部32を有している。出力制御部32は、直流電圧印加部30が出力するバイアスの値を制御部としてのCPU40の指示に応じて制御する。
【0030】
また、交流電圧印加部31は、直流電圧印加部30の出力する直流電圧を平均値(面積中心値)とする交流電圧を出力する回路である。交流電圧印加部31は、例えば、周波数f=2.5kHz、Duty50%の矩形波状(パルス状)の交流電圧を出力する。そして、交流電圧印加部31は、Vpp制御部33を有している。Vpp制御部33は、交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク値)であるVppを制御部としてのCPU40の指示に応じて制御する。
【0031】
検出部35は、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値を検出する検出部である。検出部35は、整流部34と、検出回路36と、アンプ37とで構成される。整流部34は、直流電圧と交流電圧を重畳した現像バイアスを印加した時に現像ローラ7と感光ドラム1との間に流れる電流を整流する。検出回路36は、整流された電流を電圧に変換する。アンプ37は、変換された電圧信号を増幅し、放電検出信号としてCPU40に出力する。A/D変換器38は、アンプ37からの放電検出信号をA/D変換する。CPU40は、A/D変換器38によりA/D変換されたアンプ37の出力から、現像ローラ7と感光ドラム1との間に発生した電流の大きさを認識し、交流電圧の周期時間Tで平均化した電流値を出力する。ここでは、CPU40は、交流電圧の10周期の時間Tである4msで平均化した電流値(平均値)を出力(算出)する。後述するが、CPU40は、検出部35により検出された電流値から現像ローラ7に印加する現像バイアスを制御する制御部である。
【0032】
<リーク電流の検出の説明>
図3を用いて、検出部35によるリーク電流の検出(放電検出)について説明する。
図3(a)はVppを変化させたときの電流値の波形図であり、
図3(b)は実施例1における交流電圧と電流値の変化量(交流電圧の最大値と最小値の差)の関係図である。
【0033】
図3(a)は現像バイアスにおける交流電圧のピーク間電圧であるVppを変化させたときの現像ローラ7と感光ドラム1間に流れる電流値をプロットしており、横軸は時間、縦軸は整流後の電流値となっている。測定条件としては、不図示の駆動機構により、感光ドラム1と現像ローラ7を駆動させる。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加して感光ドラム1の表面電位を-500Vにし、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する。次に、交流電圧印加部31によって現像ローラ7に交流電圧のピーク間電圧Vppを印加する。このとき、
図3(b)に示したように、交流電圧のピーク間電圧Vppを1600Vから所定の時間間隔(ここでは1s)で200Vずつ段階的に増加させ、各交流電圧Vppにおける時間と電流値の出力値の関係をプロットする。交流電圧Vppが1.8kVと2.0kVでリーク電流は未発生であったが、交流電圧Vppが2.2kVではリーク電流が発生している。リーク電流の未発生時と比較し、リーク電流の発生時は、リーク電流が現像ローラ7の回転周期で変動する。これは、リーク電流が発生している領域が現像ローラ7の回転周期で変動していることによるものである。現像ローラ7と感光ドラム1との間の距離(SDギャップ)は、現像ローラ7や感光ドラム1、キャップ7bの形状のムラによって変動する。
【0034】
現像ローラ7が回転すると、現像ローラ7や感光ドラム1の回転周期で、現像ローラ7と感光ドラム1との間の距離が変動する。パッシェンの法則により、本実施例の現像ローラ7と感光ドラム1との間の距離である200μmのギャップ領域では、現像ローラ7と感光ドラム1との間の距離が近づくと放電開始電圧が低くなることが分かっている。現像ローラ7と感光ドラム1との間の距離(SDギャップ)は、現像ローラ7の軸方向において均一ではないため、リーク電流は現像ローラ7と感光ドラム1との間の軸方向におけるギャップ領域のうち、一部の距離が近い領域で発生する。現像ローラ7の軸方向においてSDギャップが変化すると、リーク電流が発生する領域も変化するため、電流値は前記リーク電流が発生する領域の変化に応じた変動をする。よって、
図3(a)に示したように、リーク電流が発生している交流電圧のピーク間電圧Vpp=2.2kVの状況では、感光ドラム1や現像ローラ7の回転周期で電流値が変動する。電流値の変動は感光ドラム1の回転周期より小さい現像スリーブの回転周期(ここでは157ms)で変動する。そのため、CPU40は、交流電圧の周期時間(1周期以上の時間)Tで平均化した電流値を出力することで、突発的なノイズとリークによる電流変化の区別をすることができる。尚、本実施例では交流電圧の周期時間Tとして10周期の時間である4msで平均化した電流値を出力しているが、ノイズ除去の観点から平均化する時間Tを数十msまで増やしても良い。
【0035】
本実施例では現像ローラ7が1回転するまでの時間157ms(時間T1)に対して感光ドラム1が1回転するまでの時間314ms(時間T2)の方が長い。そのため、制御部であるCPU40は、1回転する時間が長い方である感光ドラム1が1回転する時間T2における電流値の出力値(平均値)の第1の電流値である最大値と第2の電流値である最小値の差である電流値の変化量を用いて閾値との比較を行う。
図3(b)は交流電圧のピーク間電圧Vppを変化させたときの前記電流値の出力値の最大値の推移(実線)と最小値の推移(点線)をプロットしている。なお、前記電流値の出力値の最大値と最小値の差分である電流値の変化量と交流電圧の関係は
図4(b)に示す。
図3(b)の横軸は現像ローラ7に印加する交流電圧のピーク間電圧Vpp、縦軸は感光ドラム1が1回転する時間における電流値(出力値)の最大値(図中の実線)と最小値(図中の点線)を示している。この電流値の最大値と最小値の差が電流値の変化量である。測定条件としては、不図示の駆動機構により、感光ドラム1と現像ローラ7を駆動させる。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加して感光ドラム1の表面電位を-500Vにし、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する。次に、交流電圧印加部31によって現像ローラ7に交流電圧のピーク間電圧Vppを印加する。このとき、交流電圧のピーク間電圧Vppを1600Vから所定の時間間隔(ここでは1s)で200Vずつ段階的に増加させ、各Vppにおける電流値の最大値と最小値をそれぞれプロットする。この各Vppにおける電流値の最大値と最小値の差が電流値の変化量である。現像バイアスにおけるVppを段階的に増加させると、リーク未発生時の電流値の変化量に対して、リーク発生タイミングで電流値の変化量が急激に増加する。すなわち、電流値の変化量が所定の値である閾値以下(ここでは2.0kV以下)ではリークは発生しないが、閾値を超えるとリークが発生することがわかる。
【0036】
以上のことから、制御部であるCPU40は、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる前記電流値の変化量から、所定の交流電圧Vppにおけるリーク発生の有無を検知することができる。
【0037】
次に
図4(a)及び
図4(b)を参照して、比較例と本実施例の交流電圧のピーク間電圧と電流値の変化量の関係を説明する。
図4(a)は比較例における交流電圧のピーク間電圧と電流値の変化量の関係を示す図である。
図4(b)は実施例における交流電圧のピーク間電圧と電流値の変化量の関係を示す図である。なお、
図4(b)に示す電流値の変化量は、
図3(b)に示す電流値の最大値と最小値の差を表したものである。
【0038】
比較例の構成は、感光ドラム1と現像ローラ7との間の電流値の絶対値を、交流電圧の周期時間Tの期間積算した値が出力値となっている。横軸は交流電圧のピーク間電圧、縦軸は前記出力値である。測定条件としては、不図示の駆動機構により、感光ドラム1と現像ローラ7を駆動させる。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加して感光ドラム1の表面電位を-500Vにし、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する。次に、交流電圧印加部31によって現像ローラ7に交流電圧のピーク間電圧Vppを印加する。このとき、Vppを0Vから徐々に増加させ、Vppと電流値の出力値の関係をプロットする。
図4(a)では、閾値以下である放電開始電圧Vpp以下の電圧であっても、電流値である出力値が電圧Vppに比例して増加しているのがわかる。
【0039】
閾値以下(放電開始電圧以下)の電圧Vppにおける出力値の傾きは、感光ドラム1と現像ローラ7間のインピーダンスによって決まるため、SDギャップなどによって変化する。そのため、キャップ7bの部品のバラつきや耐久による摩耗で出力値がばらつく。よって、使用状況でキャップ7bの摩耗や部品のバラつきなどによるSDギャップの変動に対して、リーク発生の電流値を正確に算出することができない。リークの発生の有無を正確に判断するためには、リークが発生しない電圧Vppを用いて感光ドラム1と現像ローラ7間のインピーダンスを求める必要がある。リーク検出にはリークが発生しない電圧Vppでインピーダンス測定をする必要があるため、リーク発生を検知するのに時間がかかる。
【0040】
一方、本実施例の構成は、
図3(b)を用いて説明した通りである。本実施例の構成では、感光ドラム1が1回転する時間T2における電流値の出力値(平均値)の最大値と最小値の差である電流値の変化量を用いてリーク発生の有無の判断を行う。
図4(b)に示すように、閾値以下である放電開始電圧Vpp以下の電圧では、電流値の変化量がほぼ変化していないことがわかる。そして、電圧Vppが閾値である放電開始電圧Vppを超えると、電流値の変化量は急激に増加していくのがわかる。すなわち、電流値の変化量が所定の値である閾値以下(放電開始電圧Vpp以下)ではリークは発生しないが、閾値を超えるとリークが発生することがわかる。よって、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値の変化量から現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧)を決定することで、SDギャップの変動などによる電流値のバラつきを取り除くことができる。そのため、本実施例では、感光ドラム1と現像ローラ7間のインピーダンスの測定をすることなく、任意の印加電圧において感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値の変化量から現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧)を決定することができ、リークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間を短縮することができる。
【0041】
<放電発生検出動作の交流電圧の設定>
次に
図5に基づき、実施例1に係る画像形成装置の放電発生検出動作時の各印加電圧のタイミングについて比較例と比較して説明する。
図5(a)は比較例における放電発生検出時の交流電圧Vppの設定とリーク電流に対するタイミングチャートであり、
図5(b)は実施例における放電発生検出時の交流電圧Vppの設定とリーク電流に対するタイミングチャートである。
【0042】
図5(a)が比較例の構成であり、
図5(b)が実施例1の構成である。
図5(a)に示す比較例の構成では、
図5(b)に示す実施例1の構成に対して、まず感光ドラム1と現像ローラ7間のインピーダンスを測定する測定時間が必要となる。感光ドラム1と現像ローラ7の間のインピーダンスは、感光ドラム1と現像ローラ7の駆動によるSDギャップの変動によって変化する。そのため、感光ドラム1が1回転するまでの時間T2の期間、感光ドラム1と現像ローラ7間に流れる電流を測定し、SDギャップが最も狭いタイミングで最大値となる電流値を用いて、インピーダンスを求める。その後の動作としては本実施例と同様の電圧Vpp設定とタイミングであるため、
図5(b)で説明する。
図5(b)の放電発生検出動作時の電圧Vppは、画像形成時の電圧Vppを基に決められている。画像形成時の電圧Vppは、初期設定として1.8kVに設定している。電圧Vppが1.8kVを超えると記録媒体10の白地部にトナーが現像されてしまう、いわゆる地かぶりが悪化するため、電圧Vppの上限は1.8kVに設定している。
【0043】
放電発生検出時の電圧Vppとしては、通紙中の温湿度の変化やSDギャップの変動で、閾値である放電開始電圧が変化することを考慮し、初期の放電発生検出動作時の電圧Vppは1.8kVに、オフセット値200Vを足した2.0kVとしている。すなわち、閾値との比較を行う際に現像ローラ7に印加する交流電圧Vppは、画像形成中に現像ローラ7に印加する交流電圧(ここでは1.8kV)より高い交流電圧(ここでは2.0kV)である。CPU40は、初期の放電発生検出時の電圧Vppを2.0kVとした場合の、電流値の出力値(平均値)から感光ドラム1と現像ローラ7間の電流値の変化量が閾値以下と判断した場合、画像形成中の電圧Vppは変更しない。一方、CPU40は、感光ドラム1と現像ローラ7間の電流値の変化量が閾値を超えたと判断した場合には、
図5(b)に示すように、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを段階的に下げ、電流値の変化量が閾値以下となる電圧Vppまで下げる。そして、電流値の変化量が閾値以下となる電圧Vppからオフセット値である200Vを引いた電圧Vppを画像形成時の印加電圧Vppに再設定する。これにより、画像形成時にリークが発生するのを防ぐことができる。
【0044】
更に、本実施例のように放電発生検出時の電圧Vppを段階的に下げる構成を採用することで、従来のように電圧Vppを増加させて放電開始電圧を求める制御と比較して、リークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間を短縮することができる。理由として、電圧Vppを段階的に下げる構成は、リーク検知時の初期条件の電圧Vppで電流値の変化量が閾値以下と判断された時点で検知が終了するため、最短で1条件の電圧Vppで検知が終了する。一方、電圧Vppを徐々に上げる従来の構成は、確実にリークが発生しない電圧Vppから徐々に電圧Vppを増加させる。そのため、従来の構成は、確実に電流値の変化量が閾値以下となる電圧Vppと画像形成で使用したい電圧Vppの少なくとも2条件以上の電圧Vppで閾値との比較を行う必要がある。以上のことから、放電発生検出時の電圧Vppを段階的に下げる構成を採用することで、リークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間を短縮することができる。
【0045】
<放電発生検出動作のフローチャート>
次に
図6を用いて、実施例1に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れについて説明する。
【0046】
図6は、実施例1に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れの一例を示すフローチャートである。以下に説明する、放電発生検出動作では、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値の変化量が閾値を超えたか否かを判断し、その結果から現像ローラ7に印加する現像バイアスを設定する。この放電発生検出動作は、制御部であるCPU40(
図2参照)により実行する。なお、この放電発生検出動作は、気圧もしくは温湿度などの画像形成装置の設置環境が変化した時に実行する。あるいは、現像ローラ7又は感光ドラム1の駆動時間(例えばSDギャップが変化する可能性のある現像装置の通紙履歴や現像装置の交換のタイミング)に合わせて実行する。また、放電発生検出動作の実施タイミングは、前述の例に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0047】
まず、画像形成装置の電源がONされ、放電発生検出動作が開始されると(スタート)、CPU40の指示で、不図示の駆動機構により、感光ドラム1、現像ローラ7等の各回転体の駆動が開始される(ステップS1)。この各回転体の駆動は、放電発生検出動作が終了するまで継続する。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加し、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する(ステップS2)。ステップS2から感光ドラム1が1回転する時間(T2)が経過することで(ステップS3)、感光ドラム1の表面が全周にわたって設定した表面電位-500Vになる。次に、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを設定する。通紙中の温湿度の変化やSDギャップの変動を考慮し、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを画像形成時の設定よりオフセット値分だけ高い交流電圧Vppに設定する(ステップS4)。ここでは、現像ローラ7に印加する交流電圧を、画像形成時の交流電圧より200V高い交流電圧Vppに設定する。次に、
図4(b)を用いて説明したように、前記設定した交流電圧Vppを現像ローラ7に印加した際に、現像ローラ7と感光ドラム1との間に流れる電流値の変化量が所定値である閾値を超えたかどうかを判断する(ステップS5)。本実施例では閾値を1μAとしている。ここで、電流値の変化量は、感光ドラム1が1回転する時間T2において検出部35により検出された電流値の出力値(平均値)の第1の電流値である最大値と第2の電流値である最小値の差である。
【0048】
そしてステップS5で前記電流値の変化量が前記閾値を超えていた場合、感光ドラム1と現像ローラ7との間にリークが発生しているため、CPU40は現像バイアスの交流電圧VppをOFFする(ステップS6)。ステップS6で一度VppをOFFする理由として、一たび現像リークが発生すると連続的に電流が流れることによって現像リークが続いてしまうことがあり、連続的に生じる現像リークを一度断絶させている。このようにリークが発生していた場合、画像形成時に現像ローラ7に印加する交流電圧Vppの設定を前記電流値の検出時に現像ローラ7に印加された交流電圧の設定より小さくする必要がある。そこで、制御部であるCPU40は、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を前記電流値の検出時より低い電圧に下げる(ステップS7)。ここでは、画像形成時の交流電圧(例えば1.8kV)より100V低い電圧(例えば1.7kV)に下げる。そしてステップS4に戻り、現像ローラ7に印加する交流電圧を、設定が変更された画像形成中の交流電圧よりオフセット値分だけ高い交流電圧Vppに設定する。このようにして、リーク検知時に現像ローラ7に印加する交流電圧を2.0kVから1.9kVに下げる。そして、再びステップS5で電流値の変化量が閾値を超えるかどうかを確認する。
【0049】
なお、CPU40は、ステップS5で電流値の変化量が閾値を超えていた場合、リーク検知時に現像ローラ7に印加する交流電圧を段階的に下げて、電流値の変化量が閾値以下となるまで前述の動作を繰り返す。すなわち、制御部であるCPU40は、ステップS5で電流値の変化量が閾値を超えたと検知した場合に、現像ローラ7に印加する交流電圧を段階的に下げて、再び電流値の変化量が閾値を超えたか否かの検知を行う。
【0050】
ステップS5で電流値の変化量が閾値を超えていない場合、すなわち電流値の変化量が閾値以下の場合、Vppを印加してから感光ドラム1が1回転する時間T2の期間、ステップS5を繰り返す(ステップS8)。前記期間において電流値の変化量が閾値以下の場合、その時点のリーク検知時の交流電圧Vppからオフセット値分(200V)下げた値を画像形成中の交流電圧Vppに決定する(ステップS9)。すなわち、CPU40は、画像形成中に現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を変更せず、現像ローラ7に印加する現像バイアスを決定する。そして、現像バイアスと帯電バイアスをOFFし、その後、感光ドラム1と現像ローラ7の駆動を停止させ(ステップS10)、放電発生検出動作を終了する(エンド)。
【0051】
以上から、本実施例によれば、感光ドラム1と現像ローラ7との間を流れる電流値の変化量が閾値を超えたか否かを判断することで、リークが発生しない現像バイアス(電流値の変化量が閾値以下となる現像バイアス)に設定するために要する時間を短縮することができる。
【0052】
なお、本実施例に記載されているSDギャップ、帯電バイアス、現像バイアス、電流値の閾値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0053】
また本実施例では、交流電圧の10周期の時間において検出部35から出力された電流値を平均化した平均値を算出する構成を例示したが、交流電圧の周期時間Tはこれに限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0054】
また本実施例では、感光ドラム1が1回転する時間の期間において、電流値の変化量を用いた閾値との比較を行う構成を例示したが、閾値との比較を行う期間はこれに限定されるものではない。感光ドラム1が複数回転する時間であってもよいし、現像ローラ7が回転する時間であってもよい。また、感光ドラム1又は現像ローラ7が1回転し終わる前に閾値との比較を終えるようにしてもよい。しかし、感光ドラム1と現像ローラ7との間の距離(SDギャップ)は現像ローラ7と感光ドラム1の回転周期で変動するため、現像ローラ7又は感光ドラム1のうち1回転する時間が長い方を回転させる方が好ましい。また、リークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間を短縮する目的から、現像ローラ7又は感光ドラム1を回転させる時間は短い方が好ましい。
【0055】
また本実施例では、
図2に示す検出部35が整流部34を有する構成であり、現像ローラ7に流れる電流を整流しているが、この構成に限定されるものではなく、例えば検出部35が整流部34を持たない構成であってもよい。この場合、放電発生検出動作は、以下のように行ってもよい。
【0056】
例えば、検出部35は、現像ローラ7に印加する交流電圧の正側において感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる第3の電流値、又は現像ローラ7に印加する交流電圧の負側において感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる第4の電流値を検出する。そして、制御部であるCPU40は、現像ローラ7又は感光ドラム1が少なくとも1回転する時間において検出部35により検出された前記第3の電流値の最大値と最小値の差又は前記第4の電流値の最大値と最小値の差から閾値との比較を行う。CPU40は、最大値と最小値の差である前記第3の電流値の変化量又は前記第4の電流値の変化量が閾値を超えた場合に現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定を前記電流値の検出時に現像ローラ7に印加された交流電圧の設定より下げる。CPU40は、前記第3の電流値の変化量又は前記第4の電流値の変化量が前記閾値以下の場合に現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定を変更しない。
【0057】
あるいは、制御部であるCPU40は、交流電圧の周期時間において検出部35により検出された前記第3の電流値を平均化した第1の平均値又は前記第4の電流値を平均化した第2の平均値を算出する。そして、CPU40は、現像ローラ7又は感光ドラム1が少なくとも1回転する時間において前記算出した第1の平均値の最大値と最小値の差、又は第2の平均値の最大値と最小値の差から閾値との比較を行う。CPU40は、最大値と最小値の差である前記第1の平均値の変化量又は前記第2の平均値の変化量が閾値を超えた場合に現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定を前記電流値の検出時に現像ローラ7に印加された交流電圧の設定より下げる。CPU40は、前記第1の平均値の変化量又は前記第2の平均値の変化量が前記閾値以下の場合に現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定を変更しない。
【0058】
このように構成しても、感光ドラム1と現像ローラ7との間を流れる電流値の変化量が閾値を超えたか否かを判断することができ、リークが発生しない現像バイアス(電流値の変化量が閾値以下となる現像バイアス)に設定するために要する時間を短縮することができる。
【0059】
本実施例においては、画像形成中のVppを制御したが、画像形成中のVppに限らず、Vppを印加するいかなるタイミングのVppでもよい。本実施例では、リーク検知時に、画像形成時の設定より高いVppを現像ローラ7に印加して(
図6のステップS4)、感光ドラムと現像ローラの間に流れる電流値の変化量を閾値と比較(
図6のステップS5)したが、これに限定されるものではない。例えば、現像ローラに印加するVppを高くすることなく、その時点で設定されているVppを現像ローラに印加して、感光ドラムと現像ローラの間に流れる電流値を閾値と比較してもよい。このようにすることで、画像形成中のVppに限らず、いかなるタイミングでも、その時点のVppを現像ローラに印加して、感光ドラムと現像ローラの間に流れる電流値の変化量を閾値と比較することができる。この場合、リークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間をさらに短縮することができる。
【0060】
また、本実施例では、
図6において、電流値の変化量が閾値を超えたらリークが発生したと判断(ステップS5)し、現像VppをOFFするステップS6に移行したが、これに限定されるものではない。例えば、Vpp印加(
図6のステップS4)から感光ドラム1が1回転した(
図6のステップS7)後に、電流値の変化量が閾値を超えたか判断(
図6のステップS5)してもよい。このようにすることで、前述した実施例1よりもリークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間はかかるものの、従来より前述の時間を短縮することができる。また、突発的なノイズによる電流変化と、感光ドラムと現像ローラとの間のギャップの変化に起因するリークによる電流変化の区別をすることができ、より精度の高い検知を行うことができる。
【0061】
また、実施例1の構成において、現像Vppを設定するために電流値の出力値(平均値)の第1の電流値である最大値と第2の電流値である最小値の差を変化量とし、閾値と比較したが、この形態に限られない。言い換えると、第1の電流値は最大値でなくてもよく、第2の電流値は最小値でなくてもよい。以下に他の変形例を示す。
【0062】
実施例1に記載したように、閾値と比較する値に最大値、最小値を採用すると、ノイズによって検知精度が低下する恐れがある。よって、変形例1として、例えば、感光ドラム1周以上の期間における電流値の最大値をヒストグラムで上位n%の値とし、最小値を下位m%の値としてもよい。変形例1の具体的な例として、出力値は4ms毎に平均化された電流値で、感光ドラム1周以上である400msの期間サンプリングする(データは100データ)。サンプリングされたデータに対してnを97%、mを3%とすると、100データ中の3番目に高い出力値を最大値の代わりとし、3番目に低い出力値を最小値の代わりとする。上記、3番目に高い出力値と3番目に低い出力値の差が閾値以上になった場合に、リークが発生したと判断することができる。なおm、nについては適宜設定することが可能である。更に、最大値(最小値)の代わりに、上位n%(下位m%)以上の値を平均化した値を用いてもよい。
【0063】
また、変形例2として、単位時間当たりの電流値の出力値(平均値)の変化量である、横軸を時間で縦軸を電流値としたときの傾き、もしくは、傾きの絶対値が、ある閾値を超えたときにリークが発生したと判断してもよい。リークが発生していない場合、SDギャップが変動すると、電流値はSDギャップに反比例し変動する。リークが発生した場合、発生位置で急激に電流が変化することで傾きが急激に変化する。よって、SDギャップの変動以上に電流が急激に変化した場合、リークが発生したと判断することができる。傾きの閾値としては、例えば、SDギャップ変動の影響で、電流値が感光ドラム1周(314ms)で1μA変化し、時間に対するSDギャップの変動が正弦波であると仮定すると、傾きの閾値は2π/314[μA/ms]と設定することができる。
図3(a)では、Vpp1.8kVと2.0kVで傾きがほぼ変化していない状態であるのに対し、2.2kVでは傾きが大きく変動している。
【0064】
また、変形例3として、電流値のバラツキである標準偏差を見ることでもリークを判断することが可能である。電流値の出力値(平均値)のデータを、例えば、感光ドラム1周分サンプリングすると78サンプル分の電流の出力値を取得することができる。
図3(a)のVpp1.8kVと2.0kVでは、時間が経過しても電流値はほぼ変わらないため、上記電流値の標準偏差としては小さい。一方、リークが発生している2.2kVでは標準偏差が大きくなる。よって、電流値の標準偏差がある閾値を超えたときにリークが発生したと判断することが可能である。閾値としては、例えば、SDギャップ変動の影響で、電流値が感光ドラム1周(314ms)で1μA変化し、時間に対するSDギャップの変動が正弦波であると仮定すると、標準偏差は0.315μAとなる。よって、標準偏差の閾値の一例として0.315μAを標準偏差の閾値として採用してもよい。
【0065】
なお、変形例1~3について、それぞれの算出方法は一例であり、それぞれの値が算出される手法であれば算出方法は上記方法に限られない。
【0066】
〔実施例2〕
図7及び
図8を用いて、実施例2に係る画像形成装置について説明する。なお、本例では、放電検出制御が実施例1と異なるだけであり、その他の構成は実施例1とほぼ同様である。従って、本例では、上述した実施例1と同様な構成に関しては同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0067】
<リーク電流の検出の説明>
本実施例の特徴である検出部35によるリーク電流の検出について、
図7を用いて説明する。
図7は実施例2における現像バイアス印加の交流電圧と電流値の波形図である。
【0068】
図7は、べた白画像を形成中の交流電圧印加部31によって現像ローラ7に印加された交流電圧の波形(図中の点線)と、現像ローラ7と感光ドラム1の間に流れる電流値の波形(図中の実線)をプロットしたものである。感光ドラム1と現像ローラ7との電位差によって現像ローラ7表面の電荷が移動するため、交流電圧の電位が変化した時に電流が流れる。本実施例の構成は、交流電圧印加部31が印加する交流電圧が矩形波状であるため、
図7に示すように、交流電圧が負から正に変化する時間t=0のタイミングでは、電位差の変化に伴い電流値が流れる。一方、交流電圧が負から正に変化するタイミングから一定の時間が経過したタイミングでは、交流電圧が一定となり、これに応じて電流値が0付近の値となっている。ここで、時間Tは交流電圧の1周期の時間であり、T=1/周波数fである。また、交流電圧が負から正に変化するタイミングから一定の時間としてt=T/4のタイミングを例示している。
【0069】
なお、本実施例では感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値を検出するタイミングを、交流電圧が負から正になるタイミングから一定時間であるT/4経過後としているが、これに限定されるものではない。
図7に点線で示すように、交流電圧は正側(又は負側)において負から正(又は正から負)に変化する領域から、交流電圧が一定となる領域に変化している。このように交流電圧が一定となる領域に相当するタイミングであれば、交流電圧が負から正になるタイミングから一定の時間はT/4に限定されるものではない。また負から正になるタイミングから一定の時間が経過したときだけでなく、正から負になるタイミングから一定の時間が経過したときであってもよい。交流電圧が一定となる領域に相当するタイミング(電圧の変化がおおよそ0となるタイミング)であれば、交流電圧が負から正又は正から負になるタイミングから任意の一定時間後でも同様の効果が得られる。
【0070】
本実施例では、制御部であるCPU40は、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppが負から正になるタイミングから一定の時間が経過したときに検出部35により検出された電流値を用いて閾値との比較を行う。このように構成することで、現像ローラ7に印加する交流電圧が変化した時に、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値によってリーク電流を直接検知することができる。
【0071】
<放電発生検出動作のフローチャート>
次に
図8に基づき、実施例2に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れの一例を説明する。
【0072】
図8は、実施例2に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れの一例を示すフローチャートである。以下に説明する、放電発生検出動作では、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値の変化量が閾値を超えたか否かを判断し、その結果から現像ローラ7に印加する現像バイアスを設定する。この放電発生検出動作は、制御部であるCPU40(
図2参照)により実行する。なお、この放電発生検出動作は、気圧もしくは温湿度などの画像形成装置の設置環境が変化した時に実行する。あるいは、現像ローラ7又は感光ドラム1の駆動時間(例えばSDギャップが変化する可能性のある現像装置の通紙履歴や現像装置の交換のタイミング)に合わせて実行する。また、放電発生検出動作の実施タイミングは、前述の例に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0073】
まず、画像形成装置の電源がONされ、放電発生検出動作が開始されると(スタート)、CPU40の指示で、不図示の駆動機構により、感光ドラム1、現像ローラ7等の各回転体の回転が開始される(ステップS11)。この各回転体の駆動は、放電発生検出動作が終了するまで継続する。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加し、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する(ステップS12)。ステップS2から感光ドラム1が1回転する時間(T2)が経過することで(ステップS13)、感光ドラム1の表面が全周にわたって設定した表面電位-500Vになる。次に、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを設定する。通紙中の温湿度の変化やSDギャップの変動を考慮し、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを画像形成時の設定より高い交流電圧Vppに設定する(ステップS14)。ここでは、現像ローラ7に印加する交流電圧を、画像形成時の交流電圧より200V高い交流電圧Vppに設定する。次に、
図7を用いて説明したように、交流電圧が負から正となるタイミングから一定の時間(ここではT/4)が経過したときの電流値の絶対値が所定値である閾値を超えたかどうかを判断する(ステップS15)。本実施例では閾値を10μAとしている。
【0074】
そしてステップS15で前記電流値の絶対値が前記閾値を超えていた場合、感光ドラム1と現像ローラ7との間にリークが発生しているため、CPU40は現像バイアスの交流電圧VppをOFFする(ステップS16)。このようにリークが発生していた場合、画像形成中に現像ローラ7に印加する交流電圧Vppの設定を前記電流値の検出時に現像ローラ7に印加された交流電圧の設定より小さくする必要がある。そこで、制御部であるCPU40は、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を前記電流値の検出時より低い電圧に下げる(ステップS17)。ここでは、画像形成中の交流電圧(1.8kV)より100V低い電圧(1.7kV)に下げる。そしてステップS14に戻り、現像ローラ7に印加する交流電圧を、設定が変更された画像形成中の交流電圧(1.7kV)より200V高い交流電圧Vppに設定する。このようにして、リーク検知時に現像ローラ7に印加する交流電圧を2.0kVから1.9kVに下げる。そして、再びステップS15で電流値の絶対値が閾値を超えるかどうかを確認する。
【0075】
なお、CPU40は、ステップS15で電流値の絶対値が閾値を超えていた場合、リーク検知時に現像ローラ7に印加する交流電圧を段階的に下げて、電流値の絶対値が閾値以下となるまで前述の動作を繰り返す。すなわち、制御部であるCPU40は、ステップS15で電流値の絶対値が閾値を超えたと検知した場合に、現像ローラ7に印加する交流電圧を段階的に下げて、再び電流値の絶対値が閾値を超えたか否かの検知を行う。
【0076】
ステップS15で電流値(絶対値)が閾値を超えていない場合、すなわち電流値が閾値以下の場合、Vppを印加してから感光ドラム1が1回転する時間T2の期間、ステップS15を繰り返す(ステップS18)。前記期間において電流値が閾値以下の場合、その時点のリーク検知時の交流電圧Vppから200V下げた値を画像形成中の交流電圧Vppに決定する(ステップS19)。すなわち、CPU40は、画像形成中に現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を変更せず、現像ローラ7に印加する現像バイアスを決定する。そして、現像バイアスと帯電バイアスをOFFし、その後、感光ドラム1と現像ローラ7の駆動を停止させ(ステップS20)、放電発生検出動作を終了する(エンド)。
【0077】
以上から、本実施例によれば、所定のタイミングで現像ローラ7との間を流れる電流値を検知し、この電流値の絶対値が閾値を超えたか否かを判断する。これにより、リークが発生しない現像バイアス(電流値の絶対値が閾値以下となる現像バイアス)に設定するために要する時間を短縮することができる。
【0078】
なお、本実施例に記載されているSDギャップ、帯電バイアス、現像バイアス、電流値の閾値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0079】
また本実施例では、交流電圧の10周期の時間において検出部35から出力された電流値を平均化した平均値を算出する構成を例示したが、交流電圧の周期時間Tはこれに限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0080】
〔実施例3〕
図9及び
図10を用いて、実施例3に係る画像形成装置について説明する。なお、本例では、画像形成部の各部材の大小関係と放電検出制御が実施例2と異なるだけであり、その他の構成は実施例2とほぼ同様である。従って、本例では、上述した実施例2と同様な構成に関しては同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0081】
実施例2では、放電発生検出動作シーケンス時に、放電によって感光ドラムの表面電位が変化し、トナーが現像されることでトナーが無駄に消費される場合があった。実施例3では、感光ドラムの非露光領域とこの領域に対向する現像ローラとの間に流れる電流値のみを閾値と比較することで、トナーを消費せずにリークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間を短縮することが可能となる。
【0082】
<画像形成部の各部材の大小関係>
実施例3における画像形成部の各部材の大小関係について
図9を用いて説明する。
図9は実施例3における画像形成部の各部材の大小関係の一例を説明するための説明図である。
図9において、現像ローラ7の軸方向において、トナーコート領域L1は、現像ローラ7のトナーが担持される現像剤担持領域である。トナーコート領域L1は、現像ローラ7の現像剤担持領域に対向し、現像ローラ7からトナーが付与される感光ドラム1の領域に相当する。L2は帯電ローラ4の軸方向におけるローラ幅である。帯電ローラ4のローラ幅L2は、帯電ローラ4により帯電される感光ドラム1の帯電領域に相当する。L3は感光ドラム1の外周面に形成された感光層の幅に相当するドラム塗工幅である。実施例3の構成では、現像ローラ7の軸方向において、現像ローラ7のトナーコート領域L1に対して帯電ローラ4のローラ幅L2と、感光ドラム1のドラム塗工幅L3の長さの関係(大小関係)が、L1<L2,L1<L3となっている。すなわち、現像ローラ7の軸方向において、帯電ローラ4により帯電される感光ドラム1の帯電領域(ローラ幅L2)は、現像ローラ7のトナーコート領域L1より広い(L1<L2)。また、レーザビームスキャナ6は、現像ローラ7の軸方向において、感光ドラム1に対して現像ローラ7のトナーコート領域L1より広い領域(走査露光可能幅L4(不図示))に露光することが可能である(L1<L4)。そして、帯電ローラ4により帯電される感光ドラム1の帯電領域(ローラ幅L2)の表面電位をVDとする。レーザビームスキャナ6により露光される感光ドラム1の露光領域の表面電位をVLとする。ここで、レーザビームスキャナ6により露光される感光ドラム1の露光領域は、現像ローラ7のトナーコート領域L1に対応する感光ドラム1の領域であり、レーザビームスキャナ6の走査露光可能幅L4より狭い領域である。現像ローラ7に印加する直流電圧VDCは、負に帯電されたトナー3が現像ローラ7から感光ドラム1へ現像されることを防ぐために、VL<VDCの関係となるように設定する。なお、トナーが正に帯電している場合はVL>VDCの関係となる。
【0083】
上記関係にすることにより、
図9に示した感光ドラム1の露光されない非露光領域H1,H2の表面電位がVD、トナーコート領域L1に対向する感光ドラム1の露光領域の表面電位がVLとなり、VD<VL<VDCの関係となる。すなわち、現像ローラ7のトナーコート領域L1に対向する感光ドラム1の領域の電位VLが、現像ローラ7に印加される直流電圧VDCと、感光ドラム1の帯電領域(ローラ幅L2)においてレーザビームスキャナ6により露光されない非露光領域(非画像領域)の電位VDとの間になる。なお、トナーが正帯電の場合は、VD>VL>VDCとなる。よって感光ドラム1の非露光領域H1,H2とこの領域H1,H2に対向する現像ローラ7との間の電位差が、現像ローラ7のトナーコート領域L1に対向する感光ドラム1との間の電位差に対して大きくなる。そのため、感光ドラム1の非露光領域H1,H2でリークが発生しやすくなる。本実施例ではリーク検知時にトナーコート領域L1で確実にリークしない電位差に設定する必要がある。本実施例では、SDギャップのバラつきや気圧を考慮し、パッシェンの法則を基に放電開始電圧を算出することで、Vppに対してVLとVDCの電位差を決定している。本実施例ではリーク検知時のVppを1.2kV、VDを-600V、VLを-200V、VDCを0Vとしている。このように設定にすることで、感光ドラム1と現像ローラ7との間の最大の電位差ΔVmax=Vpp/2+|VDC-VD|=1200Vとなり、実施例2の初期の放電発生検出動作時のΔVmax(Vpp=2.0kV、VD=-500V、VDC=-300V)と同等の電位差とすることができる。
【0084】
以上のことから、上記構成にすることで、放電発生検出動作時にトナーコート領域でリークが発生することなく、非露光領域でリークの有無を検知することが可能となる。
【0085】
<放電発生検出動作のフローチャート>
次に
図10に基づき、実施例2に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れの一例を説明する。
図10は、実施例3に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【0086】
まず、画像形成装置の電源がONされ、放電発生検出動作が開始されると(スタート)、CPU40の指示で、不図示の駆動機構により、感光ドラム1、現像ローラ7等の各回転体の回転が開始される(ステップS21)。この各回転体の駆動は、放電発生検出動作が終了するまで継続する。次に、感光ドラム1の帯電領域の表面電位が-600Vとなる帯電バイアスを帯電ローラ4に印加し、トナーコート領域L1に対向する感光ドラム1の現像剤担持領域に対してレーザビームスキャナ6により露光することで感光ドラム1のトナーコート領域L1の表面電位を-200Vにする(ステップS22)。ステップS22から感光ドラム1が1回転する時間(T2)が経過することで(ステップS23)、感光ドラム1の表面を全周にわたって設定した表面電位にする。次に、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを設定する。実施例1の初期の放電発生検出動作時のΔVmaxと同等になるように、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを画像形成時の設定より低い交流電圧Vppに設定する(ステップS24)。ここでは、現像ローラ7に印加する交流電圧を、画像形成時の交流電圧より600V低い交流電圧Vppに設定する。次に、交流電圧が負から正となるタイミングから一定の時間T/4が経過したときの電流値の絶対値が所定値である閾値を超えたかどうかを判断する(ステップS25)。本実施例では閾値を10μAとしている。
【0087】
そしてステップS25で前記電流値が前記閾値を超えていた場合、感光ドラム1と現像ローラ7との間にリークが発生しているため、CPU40は現像バイアスの交流電圧VppをOFFする(ステップS26)。このようにリークが発生していた場合、画像形成中に現像ローラ7に印加する交流電圧Vppの設定を前記電流値の検出時に現像ローラ7に印加された交流電圧の設定より小さくする必要がある。そこで、制御部であるCPU40は、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を前記電流値の検出時より低い電圧に下げる(ステップS27)。ここでは、画像形成中の交流電圧(1.8kV)より100V低い電圧(1.7kV)に下げる。そしてステップS24に戻り、現像ローラ7に印加する交流電圧を、設定が変更された画像形成中の交流電圧(1.7kV)より600V低い交流電圧Vppに設定する。このようにして、リーク検知時に現像ローラ7に印加する交流電圧を1.2kVから1.1kVに下げる。そして、再びステップS25で電流値が閾値を超えるかどうかを確認する。
【0088】
なお、CPU40は、ステップS25で電流値が閾値を超えていた場合、リーク検知時に現像ローラ7に印加する交流電圧を段階的に下げて、電流値が閾値以下となるまで前述の動作を繰り返す。すなわち、制御部であるCPU40は、ステップS25でリークが発生したと検知した場合に、現像ローラに印加する交流電圧を段階的に下げて、感光ドラム1と現像ローラ7との間のリークの検知を行う。
【0089】
ステップS25で電流値が閾値を超えていない場合、すなわち電流値が閾値以下の場合、Vppを印加してから感光ドラム1が1回転する時間T2の期間、ステップS25を繰り返す(ステップS28)。前記期間において電流値が閾値以下の場合、その時点のリーク検知時の交流電圧Vppから600V上げた値を画像形成中の交流電圧Vppに決定する(ステップS29)。すなわち、CPU40は、画像形成中に現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を変更せず、現像ローラ7に印加する現像バイアスを決定する。そして、現像バイアスと帯電バイアスをOFFし、その後、感光ドラム1と現像ローラ7の駆動を停止させ(ステップS30)、放電発生検出動作を終了する(エンド)。
【0090】
以上から、本実施例によれば、放電発生検出動作時にトナーコート領域に対向する感光ドラム1を露光し、トナーコート領域の非露光領域でリーク検知を行う。これにより、無駄にトナーを消費することを防ぎ、かつ、リークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間を短縮することができる。
【0091】
なお、本実施例に記載されているSDギャップ、帯電バイアス、現像バイアス、電流値の閾値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0092】
〔他の実施例〕
前述した実施例では、露光部としてレーザビームスキャナを使用したが、これに限定されるものではなく、例えばLEDアレイ等を使用しても良い。
【0093】
また前述した実施例では、画像形成装置の装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジとして、感光ドラム1と、該感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電部,現像部,クリーニング部を一体に有するプロセスカートリッジ20を例示した。しかし、プロセスカートリッジ20は、これに限定されるものではない。感光ドラム1の他に、帯電部材、現像部、クリーニング部のうち、いずれか1つを一体に有するプロセスカートリッジであっても良い。
【0094】
更に前述した実施例では、感光ドラム1を含むプロセスカートリッジ20が画像形成装置の装置本体に対して着脱可能な構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば感光ドラム1とこれに作用する各プロセス手段がそれぞれ組み込まれた画像形成装置、或いは感光ドラム1とこれに作用するプロセス手段がそれぞれ着脱可能な画像形成装置としても良い。
【0095】
また前述した実施例では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であってもよい。あるいは、記録媒体担持体を使用し、該記録媒体担持体に担持された記録媒体に各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置であってもよい。あるいは、中間転写体を使用し、該中間転写体に各色のトナー像を順次重ねて転写し、該中間転写体に担持されたトナー像を記録媒体に一括して転写する画像形成装置であってもよい。これらの画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0096】
H1,H2 …非露光領域
L1 …トナーコート領域
L2 …帯電ローラのローラ幅
L3 …ドラム塗工幅
M …画像形成装置本体
1 …感光ドラム(像担持体)
2 …クリーニングブレード
4 …帯電ローラ(帯電部材)
6 …レーザビームスキャナ
7 …現像ローラ(現像剤担持体)
7a …スリーブ
7b …キャップ
7b …ローラ軸
8 …現像ブレード
9 …現像容器
10 …記録媒体
20 …プロセスカートリッジ
30 …直流電圧印加部
31 …交流電圧印加部
32 …出力制御部
33 …Vpp制御部
34 …整流部
35 …検出部
36 …検出回路
37 …アンプ
38 …A/D変換器
40 …CPU(制御部)