(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】複合粒子
(51)【国際特許分類】
C01G 25/00 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
C01G25/00
(21)【出願番号】P 2020204809
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000226954
【氏名又は名称】日清エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 周
(72)【発明者】
【氏名】上村 直仁
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/130772(WO,A1)
【文献】特開2020-158377(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124100(WO,A1)
【文献】特表2006-523593(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0175836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00
C01B 21/076
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZrNと、Alとが
単一粒子内で複合化され、
粒径が1~200nmであり、
前記Alの含有量が
22.3~43質量%であることを特徴とする複合粒子。
【請求項2】
前記Alの含有量は
22.3~38質量%である、請求項1に記載の複合粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ジルコニウムとアルミニウムとが複合化された複合粒子に関し、特に、光学特性に特徴がある、窒化ジルコニウムとアルミニウムとが複合化された複合粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種の微粒子が種々の用途に用いられている。例えば、金属微粒子、酸化物微粒子、窒化物微粒子、炭化物微粒子等の微粒子は、各種電気絶縁部品等の電気絶縁材料、切削工具、機械工作材料、センサ等の機能性材料、焼結材料、燃料電池の電極材料、および触媒に用いられている。
特許文献1には、カラーフィルターのブラックマトリックス等の黒色成分として好適な、高い遮光性を有する黒色複合微粒子が記載されている。黒色複合微粒子は、チタン窒化物粒子と金属微粒子からなる黒色複合微粒子であり、組成式:TiNxOy・zX(組成式中、Tiはチタン原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Xは金属原子を表す。xは、0より大きく2未満の数、yは0以上2未満の数、zは0より大きく10未満の数を表す)で表される。
【0003】
非特許文献1には、電子ビーム加熱による反応性ガス蒸発法による遷移金属窒化物の超微粒子の成長が記載されており、2~10nmのZrN微粒子が記載されている。特許文献2には、X線回折プロファイルにおいて、低次酸化ジルコニウムのピークと窒化ジルコニウムのピークを有し、比表面積が10~60m2/gである微粒子低次酸化ジルコニウム・窒化ジルコニウム複合体が記載されている。
特許文献3には、BET法により測定される比表面積が20~90m2/gであって、窒化ジルコニウムを主成分とし、マグネシウム及び/又はアルミニウムを含有する黒色遮光膜形成用粉末であって、マグネシウムを含有するとき、マグネシウムの含有割合が黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01~1.0質量%であり、アルミニウムを含有するとき、アルミニウムの含有割合が黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01~1.0質量%である黒色遮光膜形成用粉末が記載されている。特許文献3の黒色遮光膜形成用粉末は、ナノ粒子化した窒化ジルコニウム粒子の極表面層にアルミニウムないしはマグネシウムの酸化被膜層または窒化被膜層が生じたものである。
非特許文献2には、窒素ガス流通下(150~200ml/min)、500℃~1100℃の温度範囲でMg還元によってZrO2から合成されたZrN粉末が記載されている。また、非特許文献2には、ZrN粉末はX線回折試験によりZrN単相であることが確かめられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-227282号公報
【文献】特許第4931011号公報
【文献】特開2019-112275号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Saburo IWAMA, Kenji HAYAKAWA and Tetsuya ARIZUMI, GROWTH OF ULTRAFINE PARTICLES OF TRANSITION METAL NITRIDES BY THE REACTIVE GAS EVAPORATION TECHNIQUE WITH ELECTRON BEAM HEATING, Journal of Crystal Growth 66 (1984) 189-194
【文献】池田勉、森利之、野口文雄、飯田武揚、三田村孝、マグネシウム還元によるジルコニアからの窒化ジルコニウム超微粉体の合成、窯業協会誌 93 [9] 1985 505
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように各種の微粒子が種々の用途に用いられており、上述の特許文献1のように、チタン窒化物粒子と金属微粒子からなる黒色複合微粒子が提案されている。
上述の非特許文献1および非特許文献2に記載されているようにZrN微粒子が知られている。このZrN(窒化ジルコニウム)微粒子の性質として、紫外光領域における透過率が高く、波長400~800nmの可視光領域における透過率が低いことが知られている。しかしながら、工業的には、特許文献2のように窒化ジルコニウム単相が得られていないのが現状である。
また、特許文献3の黒色遮光膜形成用粉末は、ナノ粒子化した窒化ジルコニウム粒子の極表面層にアルミニウムないしはマグネシウムの酸化被膜層または窒化被膜層が生じたものであるが、アルミニウムの含有割合が1.0質量%を超えると、黒色遮光膜の遮光性能が低下することが記載されている。
さらには、微粒子に関し、更なる用途の拡大、および他の機能の付加等が現状では要求されている。現在、窒化ジルコニウム単相が有する光学特性に比して、可視光領域における高い遮光性は維持したまま、紫外光領域において透過率がより高いことが求められている。さらには、可視光領域に比して、波長が1000nm以上の近赤外光領域においても高い透過率が要求されている。
【0007】
本発明の目的は、可視光領域における高い遮光性を維持したまま、可視光領域に比して紫外光領域および近赤外光領域の透過率が高い光学特性を有する複合粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、ZrNと、Alとが複合化され、Alの含有量は9.5~43質量%であることを特徴とする複合粒子を提供するものである。
Alの含有量は14~38質量%であることが好ましい。
粒径が1~200nmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可視光領域における高い遮光性を維持したまま、紫外光領域において透過率がより高く、さらには、近赤外光領域において透過率が高い光学特性を有する複合粒子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る複合粒子の製造に用いられる微粒子製造装置の一例を示す模式図である。
【
図2】窒化ジルコニウムとアルミニウムとが複合化された複合粒子の透過率を示すグラフである。
【
図3】窒化ジルコニウムとアルミニウムとが複合化された複合粒子、および窒化ジルコニウムと窒化アルミニウムとの混合粒子の透過率を示すグラフである。
【
図4】窒化ジルコニウムとアルミニウムとが複合化された複合粒子、および窒化ジルコニウムと窒化アルミニウムとの混合粒子について、波長600nmを基準とした、波長365nmの透過率比、および波長1100nmの透過率比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の複合粒子を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
【0012】
[複合粒子]
複合粒子は、窒化ジルコニウム(ZrN)と、アルミニウム(Al)とが複合化された、窒化ジルコニウム(ZrN)の粒子を含有する粒子であり、アルミニウム(Al)の含有量が9.5~43質量%である。
上述のZrNとAlとの複合化とは、ZrNと、Alとを単一粒子内に含めることであり、その場合Alの形態は、特に限定されるものではなく、金属単体のみならず、窒化物、酸化物、酸窒化物、不定比酸化物および不定比窒化物等の化合物の形態であってもよく、ZrN粒子内に固溶してもよく、ZrN粒子内に固溶せずに存在してもよい。また、複合粒子とは、上述の複合化された粒子を含有する粒子である。
なお、窒化ジルコニウム(ZrN)とアルミニウム(Al)とが複合化された粒子を含有する粒子を窒化ジルコニウム(ZrN)とアルミニウム(Al)との複合粒子ともいう。
【0013】
複合粒子は、ナノ粒子と呼ばれるものである。複合粒子の粒径は1~200nmであり、好ましくは10~150nmであり、特に好ましくは25~40nmである。粒径はBET法を用いて測定された平均粒径である。また、複合粒子は、例えば、後述の製造方法で製造され、溶媒内等に分散されている状態ではなく、粒子状態で得られ、複合粒子単独で存在する。このため、溶媒との組合せ等も特に限定されるものではなく、溶媒の選択の自由度は高い。
【0014】
ZrNとAlとの複合粒子は、Alの含有量が9.5~43質量%の範囲であれば、後述のように可視光領域における高い遮光性を維持したまま、すなわち、可視光領域において透過率が低い状態を維持して、紫外光領域において透過率がより高く、さらには、近赤外光領域において透過率が高い光学特性を有する。
なお、上述のAl(アルミニウム)の含有量(質量%)は、XRF(蛍光X線分析)で測定して求めることができるが、Alの含有量(質量%)は、不純物を省いて得られたものである。
具体的には、Alの含有量は、XRF(蛍光X線分析)で測定して求めた各元素の含有量(質量%)からZrとAl以外の元素の含有量(質量%)を省いてZrとAlの合計質量%が100となるようにした際のAlの質量%のことである。
【0015】
[複合粒子の製造装置]
次に、複合粒子の製造装置の一例について説明する。複合粒子の製造装置は下記
図1に示すものに限定されるものではない。
図1は本発明の実施形態に係る複合粒子の製造に用いられる微粒子製造装置の一例を示す模式図である。
図1に示す微粒子製造装置10(以下、単に製造装置10という)により、窒化ジルコニウム(ZrN)とアルミニウム(Al)との複合粒子が製造される。
製造装置10は、熱プラズマを発生させるプラズマトーチ12と、複合粒子の原料粉末をプラズマトーチ12内へ供給する材料供給装置14と、複合粒子の1次微粒子15を生成させるための冷却槽としての機能を有するチャンバ16と、複合粒子の1次微粒子15から任意に規定された粒径以上の粒径を有する粗大粒子を除去するサイクロン19と、サイクロン19により分級された所望の粒径を有する複合粒子の2次微粒子18を回収する回収部20とを有する。
材料供給装置14、チャンバ16、サイクロン19、回収部20については、例えば、特開2007-138287号公報の各種装置を用いることができる。なお、複合粒子の1次微粒子15のことを単に1次微粒子15ともいう。
【0016】
本実施形態において、複合粒子の製造には、例えば、窒化ジルコニウム(ZrN)の粉末と、アルミニウム(Al)の粉末とを原料粉末として用いる。例えば、上述の原料粉末から、粒径が1~100nmのナノサイズの窒化ジルコニウム(ZrN)とアルミニウム(Al)との複合粒子を得る。
原料粉末に用いる窒化ジルコニウム(ZrN)の粉末と、アルミニウム(Al)の粉末とは、いずれも熱プラズマ炎中で容易に蒸発するように、その平均粒径が適宜設定されるが、平均粒径は、例えば、100μm以下であり、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0017】
プラズマトーチ12は、石英管12aと、その外側を取り巻く高周波発振用コイル12bとで構成されている。プラズマトーチ12の上部には複合粒子の原料粉末をプラズマトーチ12内に供給するための後述する供給管14aがその中央部に設けられている。プラズマガス供給口12cが、供給管14aの周辺部(同一円周上)に形成されており、プラズマガス供給口12cはリング状である。
【0018】
プラズマガス供給源22は、プラズマガスをプラズマトーチ12内に供給するものであり、例えば、気体供給部22aを有する。気体供給部22aは配管22bを介してプラズマガス供給口12cに接続されている。気体供給部22aには、図示はしないが供給量を調整するためのバルブ等の供給量調整部が設けられている。プラズマガスは、プラズマガス供給源22からリング状のプラズマガス供給口12cを経て、矢印Pで示す方向と矢印Sで示す方向からプラズマトーチ12内に供給される。
【0019】
プラズマガスには、例えば、アルゴンガスと窒素ガスの混合ガスが用いられる。熱プラズマ炎は、アルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方に由来するものである。
気体供給部22aにアルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスが貯蔵される。プラズマガス供給源22の気体供給部22aからアルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスが配管22bを介してプラズマガス供給口12cを経て、矢印Pで示す方向と矢印Sで示す方向からプラズマトーチ12内に供給される。なお、矢印Pで示す方向にはアルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスだけを供給してもよい。
高周波発振用コイル12bに高周波電圧が印加されると、プラズマトーチ12内で熱プラズマ炎24が発生する。
【0020】
熱プラズマ炎24の温度は、原料粉末の沸点よりも高い必要がある。一方、熱プラズマ炎24の温度が高いほど、容易に原料粉末が気相状態となるので好ましいが、特に温度は限定されるものではない。例えば、熱プラズマ炎24の温度を6000℃とすることもできるし、理論上は10000℃程度に達するものと考えられる。
また、プラズマトーチ12内における圧力雰囲気は、大気圧以下であることが好ましい。ここで、大気圧以下の雰囲気については、特に限定されないが、例えば、0.5~100kPaである。
また、プラズマガスには、例えば、アルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスを用いたが、これに限定されるものではなく、アルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスとヘリウムガスとの組合せ、アルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスと水素ガスとの組合せでもよい。
【0021】
なお、石英管12aの外側は、同心円状に形成された管(図示されていない)で囲まれており、この管と石英管12aとの間に冷却水を循環させて石英管12aを水冷し、プラズマトーチ12内で発生した熱プラズマ炎24により石英管12aが高温になりすぎるのを防止している。
【0022】
材料供給装置14は、供給管14aを介してプラズマトーチ12の上部に接続されている。材料供給装置14は、例えば、粉末の形態で原料粉末をプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中に供給するものである。
【0023】
原料粉末の形態で供給する材料供給装置14としては、例えば、特開2007-138287号公報に開示されているものを用いることができる。この場合、材料供給装置14は、例えば、原料粉末を貯蔵する貯蔵槽(図示せず)と、原料粉末を定量搬送するスクリューフィーダ(図示せず)と、スクリューフィーダで搬送された原料粉末が最終的に散布される前に、これを一次粒子の状態に分散させる分散部(図示せず)と、キャリアガス供給源(図示せず)とを有する。
【0024】
キャリアガス供給源から押出し圧力がかけられたキャリアガスとともに原料粉末は供給管14aを介してプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中へ供給される。
材料供給装置14は、原料粉末の凝集を防止し、分散状態を維持したまま、原料粉末をプラズマトーチ12内に散布することができるものであれば、その構成は特に限定されるものではない。キャリアガスには、例えば、アルゴンガス等の不活性ガスが用いられる。キャリアガス流量は、例えば、フロート式流量計等の流量計を用いて制御することができる。また、キャリアガスの流量値とは、流量計の目盛り値のことである。
【0025】
チャンバ16は、プラズマトーチ12の下方に隣接して設けられており、気体供給装置28が接続されている。チャンバ16内で複合粒子の1次微粒子15が生成される。また、チャンバ16は冷却槽として機能するものである。
【0026】
気体供給装置28は、チャンバ16内に冷却ガスと、窒化ガスとを供給するものである。気体供給装置28は、気体供給源28aと配管28bと配管28dとを有する。配管28bは冷却ガスをチャンバ16内に供給するためのものである。配管28bには気体供給源28aからのガス供給量を制御する圧力制御弁28cが設けられている。配管28dは窒化ガスをチャンバ16内に供給するためのものである。配管28dには気体供給源28aからのガス供給量を制御する圧力制御弁28eが設けられている。なお、冷却ガスのことを冷却用ガスともいう。
気体供給装置28は、さらに、チャンバ16内に供給する冷却ガスに押出し圧力をかけるコンプレッサ、またはブロア等の圧力付与手段(図示せず)を有する。気体供給源28aから圧力付与手段により、配管28bを介して冷却ガスが供給され、配管28dを介して窒化ガスが供給される。
例えば、気体供給源28aにアルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスが貯蔵されている。冷却ガスはアルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスであり、窒化ガスは窒素ガスである。
【0027】
気体供給装置28は、熱プラズマ炎24の尾部、すなわち、プラズマガス供給口12cと反対側の熱プラズマ炎24の端、すなわち、熱プラズマ炎24の終端部に向かって、例えば、45°の角度で、矢印Qの方向に、冷却ガスとしてアルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスを供給し、かつチャンバ16の内側壁16aに沿って上方から下方に向かって、すなわち、
図1に示す矢印Rの方向に上述の冷却ガスを供給する。
【0028】
気体供給装置28からチャンバ16内に供給される冷却ガスにより、熱プラズマ炎24で気相状態にされた原料粉末が急冷されて、複合粒子の1次微粒子15が得られる。これ以外にも上述の冷却ガスはサイクロン19における1次微粒子15の分級に寄与する等の付加的作用を有する。
複合粒子の1次微粒子15の生成直後の微粒子同士が衝突し、凝集体を形成することで粒径の不均一が生じると、品質低下の要因となる。しかしながら、熱プラズマ炎の尾部(終端部)に向かって矢印Qの方向に供給される冷却ガスが1次微粒子15を希釈することで、微粒子同士が衝突して凝集することが防止される。
また、矢印R方向に冷却ガスにより、1次微粒子15の回収の過程において、1次微粒子15のチャンバ16の内側壁16aへの付着が防止され、生成した1次微粒子15の収率が向上する。
【0029】
さらに、窒化ガスとして窒素ガスを
図1に示す矢印Gの方向に供給する。これにより、1次微粒子15に更に窒素が供給され、安定した窒化が可能になる。なお、冷却ガスに窒素ガスを用いており、冷却ガスにより十分に窒化することができ、複合粒子を得ることができれば、窒化ガスは必ずしも必要がない。
冷却ガスと窒化ガスとは同じであってもよく、違っていてもよい。冷却ガスと窒化ガスとが異なる場合、冷却ガスおよび窒化ガス毎に気体供給源28aを設ける。
【0030】
図1に示すように、チャンバ16には、複合粒子の1次微粒子15を所望の粒径で分級するためのサイクロン19が設けられている。このサイクロン19は、チャンバ16から1次微粒子15を供給する入口管19aと、この入口管19aと接続され、サイクロン19の上部に位置する円筒形状の外筒19bと、この外筒19b下部から下側に向かって連続し、かつ、径が漸減する円錐台部19cと、この円錐台部19c下側に接続され、上述の所望の粒径以上の粒径を有する粗大粒子を回収する粗大粒子回収チャンバ19dと、後に詳述する回収部20に接続され、外筒19bに突設される内管19eとを備えている。
【0031】
サイクロン19の入口管19aから、1次微粒子15を含んだ気流が、外筒19b内周壁に沿って吹き込まれ、これにより、この気流が
図1中に矢印Tで示すように外筒19bの内周壁から円錐台部19c方向に向かって流れることで下降する旋回流が形成される。
そして、上述の下降する旋回流が反転し、上昇流になったとき、遠心力と抗力のバランスにより、粗大粒子は、上昇流にのることができず、円錐台部19c側面に沿って下降し、粗大粒子回収チャンバ19dで回収される。また、遠心力よりも抗力の影響をより受けた微粒子は、円錐台部19c内壁での上昇流とともに内管19eから系外に排出される。
【0032】
また、内管19eを通して、後に詳述する回収部20から負圧(吸引力)が生じるようになっている。そして、この負圧(吸引力)によって、上述の旋回する気流から分離した複合粒子が、符号Uで示すように吸引され、内管19eを通して回収部20に送られるようになっている。
【0033】
サイクロン19内の気流の出口である内管19eの延長上には、所望のナノメートルオーダの粒径を有する2次微粒子18(複合粒子)を回収する回収部20が設けられている。回収部20は、回収室20aと、回収室20a内に設けられたフィルター20bと、回収室20a内下方に設けられた管を介して接続された真空ポンプ30とを備える。サイクロン19から送られた微粒子は、真空ポンプ30で吸引されることにより、回収室20a内に引き込まれ、フィルター20bの表面で留まった状態にされて回収される。
なお、上述の製造装置10において、使用するサイクロンの個数は、1つに限定されず、2つ以上でもよい。
【0034】
[複合粒子の製造方法]
次に、複合粒子の製造方法の一例を、上述の製造装置10を用いて説明する。
まず、複合粒子の原料粉末として、窒化ジルコニウム(ZrN)の粉末と、アルミニウム(Al)の粉末とを用意する。原料粉末を材料供給装置14に投入する。
原料粉末は、作製する複合粒子におけるAlの含有量に応じて適宜決定されるものであり、例えば、ZrNの粉末の量、およびAlの粉末の量は、Alの含有量に応じて適宜調整される。
原料粉末において、ZrNの粉末およびAlの粉末は、いずれもサイズが製造方法等によって、適宜決定されるものであるが、上述のように熱プラズマ炎を用いる場合には、熱プラズマ炎中で容易に蒸発するように、ZrNの粉末およびAlの粉末は、それぞれ平均粒径が、例えば、100μm以下であり、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0035】
プラズマガスに、例えば、アルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスを用いて、高周波発振用コイル12bに高周波電圧を印加し、プラズマトーチ12内に熱プラズマ炎24を発生させる。
また、気体供給装置28から熱プラズマ炎24の尾部、すなわち、熱プラズマ炎24の終端部に、矢印Qの方向に、冷却ガスとして、例えば、アルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスを供給する。このとき、矢印Rの方向にも、冷却ガスとして、アルゴンガスおよび窒素ガスのうち、少なくとも一方のガスを供給する。さらに、窒化ガスとして、窒素ガスを矢印Gの方向に供給する。
【0036】
次に、キャリアガスとして、例えば、アルゴンガスを用いて原料粉末を気体搬送し、供給管14aを介してプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中に供給する。供給された原料粉末は、熱プラズマ炎24中で蒸発して気相状態となり、窒素と反応して窒化され、かつ冷却ガス(冷却用ガス)により急冷されることにより、窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の1次微粒子15が得られる。さらに、窒化ガスにより1次微粒子15に十分な窒素が供給され、窒化が安定し、窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子を安定して得ることができる。
なお、上述のように、原料粉末が分散されたキャリアガスを熱プラズマ炎中に供給する工程と、熱プラズマ炎の終端部に、冷却用ガスを供給して、複合粒子を生成する工程とを有する複合粒子を製造する方法のことを熱プラズマ法という。
【0037】
そして、チャンバ16内で得られた複合粒子の1次微粒子15は、サイクロン19の入口管19aから、気流とともに外筒19bの内周壁に沿って吹き込まれ、これにより、この気流が
図1の矢印Tに示すように外筒19bの内周壁に沿って流れることにより、旋回流を形成して下降する。そして、上述の下降する旋回流が反転し、上昇流になったとき、遠心力と抗力のバランスにより、粗大粒子は、上昇流にのることができず、円錐台部19c側面に沿って下降し、粗大粒子回収チャンバ19dで回収される。また、遠心力よりも抗力の影響をより受けた微粒子は、円錐台部19c内壁での上昇流とともに内管19eから系外に排出される。
【0038】
排出された、窒化ジルコニウム(ZrN)とアルミニウム(Al)との2次微粒子18(複合粒子)は、真空ポンプ30による回収部20からの負圧(吸引力)によって、
図1中、符号Uに示す方向に吸引され、内管19eを通して回収部20に送られ、回収部20のフィルター20bで回収される。このときのサイクロン19内の内圧は、大気圧以下であることが好ましい。また、2次微粒子18(複合粒子)の粒径は、目的に応じて、ナノメートルオーダの任意の粒径が規定される。
このように、窒化ジルコニウム(ZrN)とアルミニウム(Al)との複合粒子(ZrN+Al複合粒子)は、窒化ジルコニウム(ZrN)の粉末と、Alの粉末とをプラズマ処理するだけで容易かつ確実に得ることができる。
しかも、本実施形態の複合粒子の製造方法により製造される複合粒子は、その粒度分布幅が狭い、すなわち、均一な粒径を有し、1μm以上の粗大粒子の混入が殆どない。
【0039】
原料粉末に用いる、ZrNの粉末と、Alの粉末との割合は、最終的に得る複合粒子の組成に応じて適宜決定されるものである。上述の割合については、例えば、予め最終的に得られる組成と、ZrNの粉末と、Alの粉末との割合を求めておく。求めておいた割合を用いて、所定の組成の複合粒子を得ることができる。
【0040】
なお、熱プラズマ炎を用いた、熱プラズマ法により複合粒子の1次微粒子を形成しているが、気相法を用いて複合粒子の1次微粒子を形成することができる。このため、気相法であれば、熱プラズマ炎を用いた、熱プラズマ法に限定されるものではなく、火炎法、アークプラズマ法、マイクロ波加熱法またはパルスワイヤ法により、複合粒子の1次微粒子を形成する製造方法でもよい。
【0041】
ここで、火炎法とは、火炎を熱源として用い,気相または液相の原料粉末を火炎に通すことにより複合粒子を合成する方法である。火炎法では、原料粉末を気相または液相の状態で、火炎に供給し、そして、冷却ガスを火炎に供給し、火炎の温度を低下させて複合粒子の1次微粒子15を得る。
気相の状態の原料粉末とは、例えば、上述のキャリアガスに原料粉末が分散した状態のことをいう。液相の状態の原料粉末とは、原料粉末が溶媒に分散した状態のことをいう。
なお、冷却ガスは、上述の熱プラズマ法と同じものを用いることができる。また、原料粉末についても、上述の熱プラズマ炎と同じものを用いることができる。原料粉末としては、上述のように、ZrNの粉末とAlの粉末とを用いる。
【0042】
<複合粒子の光学特性>
次に、窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の光学特性について説明する。
図2は窒化ジルコニウムとアルミニウムとが複合化された複合粒子の透過率を示すグラフである。
図2の横軸は波長(nm)であり、縦軸は透過率(%)である。
図2の測定線50、52で示される透過率は、それぞれ波長600nmの透過率の値で規格化されている。また、
図2の符号53は波長365nm(i線)を示す線である。波長365nmは、i線と呼ばれる紫外光領域の波長である。なお、波長1100nmは近赤外光領域の波長である。
【0043】
[透過率の測定方法]
以下、透過率の測定方法について説明する。
まず、測定対象の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子(ZrN+Al複合粒子)の粉末を0.005g秤量し、全量が50gとなるようにエタノールを加え、超音波装置(日科機バイオス株式会社製、Tetora150)で5分間分散処理を行う。次に、得られた溶液から10g採取し、全量が50gとなるようにエタノールを加え、超音波装置で1分間分散処理を行い質量濃度20ppmの溶液を得る。そして、得られた溶液を紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社(JASCO Corporation)製、V-670)を用いて透過率を測定する。
【0044】
図2の測定線50は、Alの含有量が32.7質量%である、窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。なお、測定線50の複合粒子はAlの含有量が本発明の範囲内にある。測定線50の複合粒子の粒径は28.1nmである。
また、測定線52は、Alの含有量が3.5質量%である、窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。なお、測定線52の複合粒子はAlの含有量が本発明の範囲外である。測定線52の複合粒子の粒径は29.8nmである。
なお、
図2に示す測定線50の複合粒子の粒径、および測定線52の複合粒子の粒径は、いずれもBET法を用いて測定された平均粒径である。
【0045】
図2に示すように、本発明の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率(測定線50)と、本発明の範囲外の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率(測定線52)は、可視光領域における高い遮光性を維持したまま、可視光領域に比して、波長が300~400nmの波長が短い領域での透過率が高く、波長365nmのi線付近(紫外光領域)の光を多く透過させることができる。
測定線50と測定線52とを比較した場合、測定線50に示される本発明の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子は、本発明の範囲外の複合粒子(測定線52)に比して、紫外光領域における透過率が高く、さらには、近赤外光領域における透過率も高い光学特性を有する。
このように、本発明の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子は、可視光領域における高い遮光性を維持したまま、すなわち、可視光領域において透過率が低い状態を維持して、可視光領域に比して、紫外光領域において透過率がより高く、さらには、近赤外光領域において透過率が高い光学特性を有する粒子である。
【0046】
[複合粒子の透過率]
図3は窒化ジルコニウムとアルミニウムとが複合化された複合粒子、および窒化ジルコニウムと窒化アルミニウムとの混合粒子の透過率を示すグラフである。
図3の横軸は波長(nm)であり、縦軸は透過率(%)である。
図3に示す各測定線で示される透過率は、それぞれ測定線毎に波長600nmの透過率の値で規格化されている。
図3の符号53は波長365nm(i線)を示す線である。
図3に示す測定線60は、Alの含有量が9.7質量%の窒化ジルコニウム(ZrN)とアルミニウム(Al)との複合粒子の透過率を示す。測定線62は、Alの含有量が12.4質量%の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。測定線64は、Alの含有量が14.3質量%の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。
測定線60の複合粒子の粒径は33.8nmであり、測定線62の複合粒子の粒径は35.1nmであり、測定線64の複合粒子の粒径は31.1nmである。
測定線66は、Alの含有量が17.9質量%の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。測定線68は、Alの含有量が22.3質量%の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。測定線70は、Alの含有量が27.3質量%の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。測定線72は、Alの含有量が32.7質量%の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。測定線72は
図2に示す測定線50である。測定線74は、Alの含有量が42.2質量%の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。
測定線66の複合粒子の粒径は33.0nmであり、測定線68の複合粒子の粒径は26.8nmであり、測定線70の複合粒子の粒径は29.4nmであり、測定線72の複合粒子の粒径は28.1nmであり、測定線74の複合粒子の粒径は28.8nmである。
【0047】
図3に示す測定線100は、Alの含有量が3.5質量%の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。測定線100は
図2に示す測定線52である。測定線102は、Alの含有量が8.4質量%窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。測定線100の複合粒子の粒子は、29.8nmである。測定線102の複合粒子の粒子は、36.9nmである。
測定線104は、窒化ジルコニウムと、窒化アルミニウムとの混合粒子の透過率を示す。混合粒子において、アルミニウムの含有量は37質量%である。
混合粒子は、窒化ジルコニウムの微粒子と、窒化アルミニウムの微粒子とを、アルミニウムの含有量が37質量%になるように混合したものである。混合粒子において、窒化ジルコニウムの微粒子は、Alの含有量が3.5質量%であり、粒径が29.8nmである。窒化アルミニウムの微粒子は、粒径が30.9nmである。
測定線106は、Alの含有量が44質量%の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。測定線108は、Alの含有量が56.1質量%の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子の透過率を示す。測定線106の複合粒子の粒子は、29.2nmである。測定線108の複合粒子の粒子は、31.5nmである。
なお、
図3に示す複合粒子の粒径、および混合粒子の粒径は、いずれもBET法を用いて測定された平均粒径である。
【0048】
透過率については、上述のように測定対象の窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子(ZrN+Al複合粒子)の粉末を0.005g秤量し、全量が50gとなるようにエタノールを加え、超音波装置(日科機バイオス株式会社製、Tetora150)で5分間分散処理を行う。次に、得られた溶液から10g採取し、全量が50gとなるようにエタノールを加え、超音波装置で1分間分散処理を行い質量濃度20ppmの溶液を得る。そして、得られた溶液を紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社(JASCO Corporation)製、V-670)を用いて透過率を測定した。
また、窒化ジルコニウムと、窒化アルミニウムとの混合粒子についても、窒化ジルコニウムとアルミニウムとの複合粒子と同様にして透過率を測定した。
【0049】
測定線60、62、64、66、68、70、72、74に示される透過率は、本発明の範囲内の複合粒子の透過率である。測定線100、102、106、108に示される透過率は、本発明の範囲外の複合粒子の透過率である。測定線104に示される透過率は、本発明の範囲外の混合粒子の透過率である。
本発明の範囲内の測定線60、62、64、66、68、70、72、74は、本発明の範囲外の測定線100、102、104、106、108に比して、紫外光領域および近赤外光領域の透過率が高い。また、Alの含有量が9.5~43質量%の範囲において、Alの含有量を変えることにより、測定線100、102、104、106、108に比して紫外光領域および近赤外光領域の透過率が高い状態を維持したまま、透過率を変えることができる。
【0050】
次に、紫外光領域および近赤外領域における透過率について説明する。
図4は窒化ジルコニウムとアルミニウムとが複合化された複合粒子、および窒化ジルコニウムと窒化アルミニウムとの混合粒子について、波長600nmを基準とした、波長365nmの透過率比T
UV、および波長1100nmの透過率比T
IRを示すグラフである。
図4において、▲は透過率比T
UVを示し、●は透過率比T
IRを示す。
図4の横軸はAlの含有量(質量%)であり、縦軸は透過率比である。透過率比は上述のT
UVおよびT
IRである。
なお、透過率比T
UVおよび透過率比T
IRは、下記式により得られた値である。
透過率比T
UV=(波長365nmの透過率)/(波長600nmの透過率)
透過率比T
IR=(波長1100nmの透過率)/(波長600nmの透過率)
【0051】
図4に示すように、Alの含有量が9.5~43質量%であれば、上述の透過率比T
UVおよび透過率比T
IRのいずれもが、1.40を超えており、可視光領域における高い遮光性を維持したまま、紫外光領域および近赤外領域における透過率が高い。
また、Alの含有量が14~38質量%であれば、上述の透過率比T
UVおよび透過率比T
IRのいずれもが、1.60を超えており、紫外光領域および近赤外領域の透過率が更に高くなるため、Alの含有量は14~38質量%であることが好ましい。
さらには、Alの含有量が14~20質量%であれば、上述の透過率比T
UVが、1.90以上であり、紫外光領域の透過率比T
UVが更に一層高くなるため、Alの含有量は14~20質量%であることがさらに好ましい。
【0052】
<複合粒子の用途>
以下、複合粒子の用途について説明する。複合粒子は、可視光領域で遮光が必要な用途、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置等のブラックマトリックスで使用することができる。この様な用途では、フォトリソグラフィ技術を利用して基板上にパターンを作成するものがあり、高圧水銀灯の輝線の一つであるi線を利用してパターンが生成されるフォトレジスト樹脂が普及している。複合粒子をフォトレジスト樹脂に分散させたとき、複合粒子がi線を吸収しないため、フォトレジスト樹脂の光化学反応を邪魔せず、良好な可視光域における遮光性能を持ったパターンを基板上に得ることができる。
また、複合粒子は、上述以外に、印刷インク、インクジェットインク、フォトマスク作製材料、印刷用プルーフ作製用材料、エッチングレジスト、ソルダーレジストにも利用することができる。
【0053】
また、上述以外に、複合粒子は、例えば、触媒担体に利用することができ、この場合、粒径を小さくすることができるため、触媒の性能を高めることができる。
また、光電変換素子、および光熱変換素子にも利用することができる。
また、金属、酸化物、プラスチック等と混合し、色調を調整する顔料等にも利用することができる。
その他、半導体基板、プリント基板、各種電気絶縁部品等の電気絶縁材料、切削工具、ダイス、軸受等の高硬度高精度の機械工作材料、粒界コンデンサ、湿度センサ等の機能性材料、精密焼結成形材料等の焼結体の製造、エンジンバルブ等の高温耐摩耗性が要求される材料等の溶射部品製造、さらには燃料電池の電極、電解質材料および各種触媒等に用いることができる。
本実施形態においては、窒化物微粒子の粒径をナノサイズにできるため、例えば、焼結体に利用する場合、焼結性を高めることができ、高い強度の焼結体を得ることができる。これより、例えば、切削性が良好な工具を得ることができる。
【0054】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の複合粒子について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0055】
10 微粒子製造装置(製造装置)
12 プラズマトーチ
14 材料供給装置
15 1次微粒子
16 チャンバ
18 2次微粒子
19 サイクロン
20 回収部
22 プラズマガス供給源
24 熱プラズマ炎
28 気体供給装置
30 真空ポンプ
50、52、60、62、64、66、68、70、72、74 測定線
100、102、104、106、108 測定線