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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】コネクタの製造方法及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/00 20060101AFI20241007BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H01R43/00 B
H01R13/03 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020205791
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092847
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100210239
【弁理士】
【氏名又は名称】富永 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】柚木 亨
(72)【発明者】
【氏名】森下 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】大崎 凌汰
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116925(JP,A)
【文献】特開2008-059884(JP,A)
【文献】特開平10-172631(JP,A)
【文献】特開昭60-170179(JP,A)
【文献】特開昭63-098990(JP,A)
【文献】国際公開第2009/001436(WO,A1)
【文献】特開2019-016548(JP,A)
【文献】特開2010-205475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/00
H01R 13/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金具と、第2の金具と、前記第1の金具及び前記第2の金具を保持するハウジングとを備えたコネクタの製造方法であって、
前記第1の金具と前記第2の金具をインサート品としてインサート成形して前記ハウジングを形成するインサート成形工程と、
前記インサート成形工程後に、前記第1の金具を、前記第1の金具に接続された第1接続部から切り離す第1切離し工程と、
前記第1切離し工程後に、前記第2の金具に貴金属のめっきを施す電解めっき工程と、
を備えた、コネクタの製造方法。
【請求項2】
前記インサート成形工程前に、前記第1の金具のうちの基板に実装される第1実装部に貴金属のめっきを施す部分めっき工程を備えた、
請求項1に記載のコネクタの製造方法。
【請求項3】
前記部分めっき工程は、前記第1実装部に貴金属のめっきを施す前に、前記第1の金具に前記貴金属のめっきの下地となるめっきを施すめっき工程を備えた、
請求項2に記載のコネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタの製造方法及びコネクタに関し、特に、第1の金具と、第2の金具と、第1の金具及び第2の金具を保持するハウジングとを備えたコネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金具と当該金具を保持するハウジングとを備えたコネクタは、金具をインサート成形することによってハウジングを形成して製造されることが知られている。また、金具には、電気抵抗の低減、基板への実装強度の向上、又は耐腐食性の向上の観点から、貴金属のめっきが施される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-225195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金具をインサート成形して製造されるコネクタにおいては、信号端子となる金具の他に、シールドや補強などの他の目的で金具が設けられる場合がある。このような場合、第1の金具と第2の金具をインサート成形により、第1の金具及び第2の金具を保持するハウジングを形成してコネクタを得る手法が用いることができる。
【0005】
一方、めっきに使用される貴金属は高価であるため、その使用量が多くなるに伴い、生産コストが増大する。第1の金具と第2の金具をインサート成形する前に、これらの金具の全面に貴金属のめっきを設けると、貴金属の使用量が多くなり、生産コストが上昇してしまう。また、第1の金具と第2の金具をインサート成形した後に、電解めっきにより貴金属のめっきを設ける場合、第1の金具及び第2の金具のうち、ハウジングにより保持された面には電解液に触れず、貴金属のめっきが設けられないことから、貴金属の使用を削減することができる。
【0006】
しかし、第1の金具及び第2の金具の何れか一方(例えば第2の金具とする)のハウジングからの露出面にのみ電解めっきにより貴金属のめっきを施したい場合であっても、双方の金具のハウジングからの露出面が電解液に触れることから、他方の第1の金具のハウジングからの露出面全体にも貴金属のめっきが施されてしまう。その結果、貴金属の使用量が多くなり、生産コストの低減効果が小さくなる。特に、第1の金具のハウジングからの露出面積が第2の金具のハウジングからの露出面積より大きい場合に生産コスト低減効果が限定的になってしまう。このように、インサート成形後の電解めっきによる貴金属のめっきの要否についてコネクタが二種類以上の金具を備える場合、生産コストの低減効果が限定的になる又は生産コストが増大する傾向にあった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、貴金属の使用量を削減し、生産コストの低減を図ることのできるコネクタの製造方法及びコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコネクタの製造方法は、第1の金具と、第2の金具と、前記第1の金具及び前記第2の金具を保持するハウジングとを備えたコネクタの製造方法であって、前記第1の金具と前記第2の金具をインサート品としてインサート成形して前記ハウジングを形成するインサート成形工程と、前記インサート成形工程後に、前記第1の金具を、前記第1の金具に接続された第1接続部から切り離す第1切離し工程と、前記第1切離し工程後に、前記第2の金具に貴金属のめっきを施す電解めっき工程と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明のコネクタは、第1の金具と、第2の金具と、前記第1の金具及び前記第2の金具をインサート成形により保持するハウジングとを備えたコネクタであって、前記第1の金具と前記第2の金具とが電気的に絶縁され、前記第1の金具は、基板に実装される第1実装部と、前記ハウジングに保持される第1保持部と、を有し、前記第2の金具は、前記基板に実装される第2実装部と、前記ハウジングに保持される第2保持部と、相手コネクタと接触する接触部と、を有し、前記第2実装部及び前記接触部は、前記ハウジングから露出するとともに、各表面上又は表面に設けられためっき上に前記貴金属のめっきが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貴金属の使用量を削減し、生産コストの低減を図ることのできるコネクタの製造方法及びコネクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るコネクタの上面側斜視図である。
図2】実施形態に係るコネクタの底面側斜視図である。
図3】実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図4】実施形態に係るコネクタの上面図である。
図5図4のA-A断面図である。
図6】実施形態に係るコネクタの製造方法のフローチャートである。
図7】第1の金具と第2の金具の位置合わせを示す上面図である。
図8】第1の金具と第2の金具のインサート成形後の様子を示す上面図である。
図9】第1切離し工程を説明するための上面図である。
図10】電解めっき工程を説明するための上面図である。
図11】第2切離し工程を説明するための上面図である。
【0012】
[実施形態]
[構成]
図1は、本実施形態に係るコネクタの上面側斜視図である。図2は、本実施形態に係るコネクタの底面側斜視図である。図3は、本実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。図4は、本実施形態に係るコネクタの上面図である。図5は、図4のA-A断面図である。
【0013】
以下の実施の形態において、説明の便宜上、コネクタ1の長手方向(端子の配列方向)をX(X12)方向とし、短手方向(端子の対向方向)をY(Y12)方向とし、高さ方向(嵌合・抜去方向)をZ(Z12)方向とする。なお、各方向は、コネクタを構成する部位の相対的な位置関係を説明するためのものであり、絶対的な方向を示すものではない。高さ方向のうち、相対的にZ1側を上方又は上側、上、相対的にZ2側を下方、下側、下又は底側と称する場合がある。
【0014】
コネクタ1は、不図示の基板に実装されるレセプタクルコネクタであり、第1の金具11と、第2の金具12と、第1の金具11及び第2の金具12の少なくとも一部を保持するハウジング20とを備える。コネクタ1は、ハウジング20の凹部22に不図示の相手コネクタが嵌合され、凹部22に保持された第2の金具12と相手コネクタの端子とが接触することで、両コネクタが電気的に接続される。
【0015】
ハウジング20は、第1の金具11と第2の金具12を保持する部材であり、樹脂などの絶縁材料で構成されている。ハウジング20は、少なくとも一部が第1の金具11、第2の金具12の形状に倣った形状を有している。具体的には、ハウジング20は、第1の金具11と第2の金具12の少なくとも一部を保持するようにインサート成形により形成されたものである。ハウジング20は、第1の金具11と第2の金具12とを電気的に絶縁する。ハウジング20は、矩形状の側壁部21と、側壁部21の内側に位置する凹部22と、側壁部21と凹部22とを繋ぐ連結底部23とを有する。
【0016】
側壁部21は、X方向に延びる一対の側壁21aと、Y方向に延びる一対の側壁21bと、を有する。図1及び図3に示すように、一対の側壁21aの端部と一対の側壁21bの端部とが繋がることで矩形状を成す。側壁部21は、第1の金具11の一部を保持し、側壁部21の少なくとも一部(例えば、上部)が第1の金具11の形状に倣った形状を有する。
【0017】
凹部22は、図1図3に示すように、有底の概略箱型形状を有する。具体的には、凹部22は、X方向に延びる一対の壁部22aと、Y方向に延びる一対の壁部22bと、一対の壁部22aの下端と一対の壁部22bの下端とを繋ぐ底部22cとを有する。一対の壁部22aの端部と一対の壁部22bの端部とが繋がることで凹部22の上部に矩形状の開口20aを形成する。底部22cは、凹部22の底部を塞いで凹部22の底面を構成する。凹部22は、開口20aをZ1方向に向けてZ1方向に延びており、凹部22の開口20aからZ2方向に相手コネクタが嵌合される。凹部22は、第2の金具12の一部を保持し、凹部22の少なくとも一部が第2の金具12の形状に倣った形状を有する。本実施形態では、壁部22aが第2の金具12を保持するため、壁部22aにはその分の隙間がY方向に所定間隔毎に設けられている。
【0018】
連結底部23は、側壁部21と凹部22とを繋ぐ部位である。具体的には、側壁部21及び凹部22の底側の端部を繋ぎ、側壁部21と凹部22とを一体化する。
【0019】
第1の金具11及び第2の金具12は、一部がハウジング20に埋設されて保持され、その他の部分がハウジング20から露出した金属部材である。第1の金具11と第2の金具12とは、電気的に絶縁されている。第1の金具11と第2の金具12は、その少なくとも保持された部分(例えば、後述の第1保持部112、第2保持部122)でハウジング20と密着している。第1の金具11は、第2の金具12によりハウジング20から露出する面積が大きくても良い。第1の金具11及び第2の金具12を構成する金属、すなわち母材金属は、例えばリン青銅などの銅合金を用いることができる。第1の金具11は、銅合金に限られず、加工性のあるステンレスなどの他の金属であっても良い。また、本実施形態では、第1の金具11は、その全面(全表面)にニッケルめっきが施されている。このニッケルめっきは、第1の金具11の母材金属の腐食を防止するとともに、母材金属に貴金属のめっきを設け易くすることができる。本実施形態では後述するように第2の金具12の一部にニッケルめっきが設けられ、全面にニッケルめっきは設けられていないが、全面に設けるようにしても良い。また、ニッケルめっきに代えて、耐腐食性を有する金属であれば、任意の金属を用いても良い。
【0020】
第1の金具11は、本実施形態では、概略矩形状を成す電磁波を遮蔽するシールド部材であり、図1及び図3に示すように、矩形状を成す側壁部21上を覆うように設けられ、一部がハウジング20(例えば側壁部21)に保持され、他の一部がハウジング20から露出する。本実施形態の第1の金具11は、略U字形状の第1部材11a及び第2部材11bを有し、互いの端部を所定間隔を空けて対向するように配置され、略矩形状を構成する。
【0021】
この第1の金具11は、図1図3に示すように、基板に実装される第1実装部111と、ハウジング20に保持される第1保持部112と、シールド部113とを有する。第1保持部112は、少なくとも一部がハウジング20の内部に埋設されてハウジング20から露出せず、第1実装部111及びシールド部113がハウジング20から露出する。
【0022】
シールド部113は、側壁部21上を覆って概略矩形状を成す部位であり、ハウジング20から露出している。より具体的には、シールド部113は、凹部22に設けられた複数の第2の金具12を囲うように凹部22の外側に位置している。シールド部113は、グラウンド接続されることにより、コネクタ1の外部から凹部22へ到来する電磁波を遮蔽するとともに、凹部22内からコネクタ1の外部に向かって放出される電磁波を遮蔽する。なお、電磁波の遮蔽効果はシールド部113だけでなく、第1保持部112も有している。
【0023】
第1保持部112は、ハウジング20に保持される部位である。具体的には、第1保持部112は、図3及び図5に示すように、ハウジング20の内部に埋設された部位又はハウジング20と密着する部位であり、第1実装部111及び/又はシールド部113と繋がる。
【0024】
第1実装部111は、基板に実装される部位であり、コネクタ1又はハウジング20の底面においてハウジング20から露出し、XY平面に平行な部位である。第1実装部111は、第1保持部112と繋がっている。
【0025】
本実施形態では、図2に示すように、第1実装部111は、各側壁21aの底面に6つ設けられ、各側壁21bの底面に2つ設けられており、合計16か所に設けられている。なお、第1実装部111の数は任意に設計することができる。
【0026】
第1実装部111には、貴金属のめっきが施されている。すなわち、第1実装部111は、第1の金具11の銅合金などの母材金属上にニッケルめっきが設けられ、このニッケルめっき上に貴金属のめっきが設けられている。貴金属は、金、白金などを含むことができ、本実施形態では、金である。貴金属のめっきは、コネクタ1が基板にはんだ付けされる際に、基板又ははんだと接する部分に少なくとも設けられていれば良い。貴金属のめっきを設けるのは、基板にはんだを用いて実装する際に実装強度(基板に対するコネクタ1の固着強度)を高めるためである。本実施形態では、第1の金具11は、第1実装部111以外では貴金属のめっきが施されていない。
【0027】
本実施形態では、第1実装部111には、端面111aが設けられている。端面111aは、ニッケルめっきも貴金属のめっきも設けられておらず、第1の金具11の母材金属が露出している。この端面111aは、後述するように第1の金具11(より具体的には、第1部材11a、第2部材11b)が第1接続部31cから切り離されて形成された切断面である。
【0028】
第2の金具12は、信号端子であり、相手コネクタが凹部22に嵌合されたときに当該相手コネクタの端子と電気的に接続される。図1に示すように、第2の金具12は、ハウジング20(具体的には、凹部22の一対の壁部22a)に保持されており、X軸対称となるように、各壁部22aにX方向に等間隔に5つ配列されている。なお、第2の金具12の数は、5つに限定されず、任意とすることができる。
【0029】
図5に示すように、第2の金具12は、基板に実装される第2実装部121と、第2実装部121から繋がり、ハウジング20に保持される第2保持部122と、第2保持部122から繋がり、相手コネクタと接触する接触部123と、接触部123から繋がる導入部124と、を有する。
【0030】
図3及び図5に示すように、第2実装部121は、ハウジング20(凹部22)の底面において、ハウジング20(凹部22)から露出したXY平面に平行な部位である。第2実装部121には、貴金属のめっきが施されている。本実施形態では、第2実装部121には、第2の金具12の銅合金などの母材金属上にニッケルめっきが設けられ、このニッケルめっき上に貴金属のめっきが設けられている。貴金属は、金、白金などを含むことができ、本実施形態では、金である。第2実装部121において貴金属のめっきを設けるのは、基板にはんだを用いて実装する際に実装強度(基板に対するコネクタ1の固着強度)を高めるためである。
【0031】
第2実装部121には、端面121aが設けられている。端面121aは、例えば、XZ平面に略平行な面である。本実施形態では、端面121aには、ニッケルめっきも貴金属のめっきも設けられておらず、第2の金具12の母材金属が露出している。この端面121aは、後述するように第2の金具12が第2接続部41bから切り離されて形成された切断面である。
【0032】
第2保持部122は、ハウジング20に保持される部位である。第2保持部122は、図3及び図5に示すように、第2実装部121からXZ平面と平行になるように屈曲され、ハウジング20(例えば凹部22)の内部に埋設された部位であり、ハウジング20の内面と密着している。本実施形態では、第2保持部122を構成する母材金属にはニッケルめっきが設けられておらず、当該母材金属がハウジング20の内面と密着する。なお、第2保持部122は、本実施形態では第2の金具12がニッケルめっきされている場合には、ニッケルめっきを介してハウジング20と接する。
【0033】
接触部123は、凹部22の内部空間に露出しており、相手コネクタの端子と接触する。本実施形態では、接触部123は、XZ平面に平行な面である。接触部123は、貴金属のめっきが施されている。本実施形態では、接触部123には、第2の金具12の銅合金などの母材金属上にニッケルめっきが設けられ、このニッケルめっき上に貴金属のめっきが設けられている。貴金属は、金、白金などを含むことができ、本実施形態では、金である。接触部123においてニッケルめっきを設けるのは、母材金属の腐食を防止するため、及び、貴金属めっきを設け易くするためである。接触部123において貴金属のめっきを設けるのは、相手コネクタの端子との接触抵抗を低減するためである。
【0034】
導入部124は、接触部123から逆U字状に湾曲し、下方に延びる部位であり、相手コネクタの、凹部22への嵌合を容易にする。導入部124は、壁部22aの上縁及び外面に没入している。換言すれば、導入部124は、一部の面が壁部22a(ハウジング20)の面と密着し、残りの面がハウジング20から露出している。この一部の面は、第2の金具12の母材金属がハウジング20の面と密着し、残りの面には、第2の金具12の銅合金などの母材金属上にニッケルめっきが設けられ、このニッケルめっき上に貴金属のめっきが設けられている。貴金属は、金、白金などを含むことができ、本実施形態では、金である。接触部123においてニッケルめっきを設けるのは、母材金属の腐食を防止するため、及び、貴金属めっきを設け易くするためである。
【0035】
[コネクタの製造方法]
本実施形態のコネクタ1の製造方法について、図6図11を用いて説明する。図6は、本実施形態に係るコネクタ1の製造方法のフローチャートである。
【0036】
図6に示すように、本実施形態のコネクタ1の製造方法は、部分めっき工程S1、インサート成形工程S2、第1切離し工程S3、電解めっき工程S4、及び第2切離し工程S5を備えている。
【0037】
部分めっき工程S1は、第1の金具11の一部に貴金属のめっきを施す工程である。本実施形態では、部分めっき工程S1は、第1の金具11の一部に貴金属のめっきを施す前に、第1の金具11の全面に貴金属のめっきの下地となるめっき(以下、「下地めっき」ともいう。)を施す下地めっき工程S11を備えている。ここでいう第1の金具11の一部とは、第1の金具11のうちの基板に実装される第1実装部111であり、下地めっきとは、ニッケルめっきである。下地めっき工程S11は、下地めっきが第1の金具11の母材金属の表面に形成されるのであれば、電解めっきなどの公知の手法を用いることができる。部分めっき工程S1では、第1の金具11の全面に下地めっきを形成した後、第1実装部111に貴金属のめっきを施す。部分めっき工程S1により、第1実装部111のニッケルめっき上に貴金属のめっきが形成される。この部分めっき工程S1で用いられるめっき手法は、貴金属のめっきがニッケルめっき上に形成されるのであれば、電解めっきなどの公知の手法を用いることができる。なお、本実施形態の下地めっき工程S11は、下地めっき上に貴金属のめっきを形成することを前提としているが、貴金属のめっきを設けずに単に腐食防止目的でめっきを施すめっき工程としても良い。
【0038】
インサート成形工程S2は、第1の金具11と第2の金具12をインサート品としてインサート成形してハウジング20を形成する工程である。図7は、第1の金具11と第2の金具12の位置合わせを示す上面図である。図7に示すように、第1の金具11と第2の金具12は、対応するキャリア30、40の一部として含まれており、第1の金具11及び第2の金具12は、キャリア30、40を介して位置合わせされる。キャリア30、40は、金属板を打ち抜き加工して形成されたものである。
【0039】
キャリア30は、略U字形状の一対のキャリア部材31からなり、キャリア部材31は、一対の平板部31aと、一対の平板部31aを繋ぐ連結部31bとを有する。各キャリア部材31は、一方のキャリア部材31の一対の平板部31aが他方のキャリア部材31の一対の平板部31aと向かい合うように配置されている。すなわち、一対の平板部31aは、X方向に沿ってY方向に所定間隔隔てて配置され、連結部31bは、他方の一対の平板部31aとは反対側においてY方向に沿って配置されている。各キャリア部材31の連結部31bからは1又は複数の第1接続部31cが他方のキャリア部材31に向けてX方向に延びて設けられ、その先端に第1部材11a、第2部材11bが設けられている。第1部材11a、第2部材11bは、第1接続部31c及び連結部31bを介して各一対の平板部31aと電気的に接続されている。第1部材11a、第2部材11bは、X方向に所定間隔を空けて全体として第1の金具11が矩形状を成すように配置される。
【0040】
キャリア40は、一方向に長い一対のキャリア部材41からなる。各キャリア部材41は、一方向に長い帯平板部41aと第2接続部41bとを有する。一対のキャリア部材41は、帯平板部41aがX方向に沿ってY方向に所定間隔を空けて配列されている。各帯平板部41aの互いに対向する辺からは1又は複数(ここでは5本)の第2接続部41bがX方向に等間隔に並んで設けられており、それぞれY方向に延びている。この第2接続部41bの先端に第2の金具12が設けられている。各第2の金具12は、対応の第2接続部41bを介してキャリア部材41と電気的に接続されており、同電位とすることができる。
【0041】
キャリア30及びキャリア40には、それぞれ位置合わせ孔50が設けられており、キャリア30の位置合わせ孔50とキャリア40の位置合わせ孔50とを重ね合わせるようにキャリア40上にキャリア30を位置合わせし、当該位置合わせ孔50に不図示のピンなどの部材を差し込んでキャリア30、40の相対位置を固定する。これにより、第1の金具11と第2の金具12の相対位置、及び、第1部材11aと第2部材11bの相対位置が固定される。図7に示す例では、位置合わせ孔50は、一対の平板部31aの一方にX方向に沿って2つ、各帯平板部41aにX方向に所定間隔に4つ設けられている。一方のキャリア部材31が一方のキャリア部材41の位置合わせ孔50を介して固定され、他方のキャリア部材31が他方のキャリア部材41の位置合わせ孔50を介して固定されている。キャリア30とキャリア40は、この固定された状態において、互いに接触する。
【0042】
この固定された状態で、第1の金具11及び第2の金具12の少なくも一部を内包するように上下から金型(不図示)を配置して上下の金型を組み合わせる。この配置及び組み合わせは、第1の金具11と一対のキャリア部材31との間の隙間G1や、第1の金具11内の第2の金具12又は第2接続部41bのない隙間G2から行うことができる。そして、金型を組み合わせた状態で金型内に樹脂を充填して固化させることにより、図8に示すように、第1の金具11及び第2の金具12を保持したハウジング20を形成する。ハウジング20の形成後、金型を退避させる。
【0043】
図9に示すように、キャリア部材41(ここでは帯平板部41a)には、搬送孔51がX方向に所定間隔で設けられており、不図示の搬送装置がピンなどの部材を搬送孔51に差し込んだ状態でピンなどの部材をX方向に搬送することで第1の金具11と第2の金具12の相対位置を保って第1の金具11及び第2の金具12を搬送することが可能になっている。例えば、インサート成形工程S2後、第1切離し工程S3のポジションに搬送することができる。なお、キャリア部材41は、一方向に長い帯状の金属板を打ち抜き加工して構成し、図7に示すような第2の金具12、位置合わせ孔50、搬送孔51の組を当該一方向(例えばX方向)に配列しており、各組においてキャリア30を位置合わせして相対的に固定し、一方向(例えばX方向)に配列されたインサート工程ポジション、第1切離し工程ポジション、電解めっき工程ポジション、第2切離し工程ポジションに順次搬送するようにしても良い。なお、ここでいうインサート工程ポジション、第1切離し工程ポジション、電解めっき工程ポジション、第2切離し工程ポジションは、それぞれ、インサート成形工程S2を行うポジション、第1切離し工程S3を行うポジション、電解めっき工程S4を行うポジション、第2切離し工程S5を行うポジションである。
【0044】
図9に示すように、第1切離し工程S3は、インサート成形工程S2後に、第1の金具11を、第1の金具11に接続された第1接続部31cから切り離す工程である。この工程では、不図示の切断装置により、各キャリア部材31の第1接続部31cを切断することにより、第1の金具11をキャリア30から切り離す。これにより、第1の金具11をキャリア30から電気的に孤立させ、第2の金具12から物理的にも電気的にも切り離す。なお、図9に示す例では、キャリア30のうち、連結部31b及び第1接続部31cを図示して一対の平板部31aの図示を省略している。
【0045】
図10に示すように、電解めっき工程S4は、第1切離し工程S3後に、第2の金具12に貴金属のめっきを施す工程である。電解めっき工程S4は、公知の電解めっきの手法を用いることができる。電解めっき工程S4では、貴金属のめっきを施す前のコネクタ1を電解液に浸漬し、電解液内の貴金属を陽極とし、電解液内の第2の金具12を陰極として、キャリア40(例えば、帯平板部41a)を介して第2の金具12に通電することで第2の金具12に貴金属を析出させ、貴金属のめっきを形成する。貴金属のめっきは、第2の金具12が電解液に触れる面、すなわち、ハウジング20から露出又は延出する第2実装部121、接触部123及び導入部124の面に形成される。換言すれば、第2の金具12のハウジング20と密着している部分(例えば、第2保持部122、接触部123、導入部124のハウジング20の対面と密着している面)は電解液に触れないので、当該部分には貴金属のめっきは形成されない。そのため、貴金属の使用量を削減することができる。ここで、キャリア30とキャリア40の位置合わせによりそれぞれが電気的に接続されていても、第1の金具11は、第1接続部31cから物理的に切り離されているので、電解めっき工程S4により第1の金具11に貴金属のめっきが形成されることはない。すなわち、本実施形態では、第1の金具11は、部分めっき工程S1で第1実装部111が貴金属のめっきが形成される以外で貴金属のめっきは形成されない。
【0046】
本実施形態の第2の金具12には、その母材金属上にニッケルめっきが施されている。このニッケルめっきは、インサート成形工程S2後かつ電解めっき工程S4前に電解めっきなどの公知の手法により施すことができる。そのため、電解めっき工程S4では、貴金属のめっきを施す前のコネクタ1を電解液に浸漬して第2の金具12において電解液に触れるのは、ハウジング20から露出した第2実装部121、接触部123、及び導入部124上のニッケルめっきである。このようにして、第2の金具12では、ハウジング20から露出した面にのみ貴金属のめっきが設けられる。
【0047】
図11に示すように、第2切離し工程S5は、電解めっき工程S4後に、不図示の切断装置により第2接続部41bを切断し、第2の金具12をキャリア40から切り離す工程である。これにより、コネクタ1が構成される。なお、図11に示す例では、キャリア40のうち、帯平板部41aの図示が省略されている。
【0048】
[作用・効果]
(1)本実施形態のコネクタ1の製造方法は、第1の金具11と、第2の金具12と、第1の金具11及び第2の金具12を保持するハウジング20とを備えたコネクタの製造方法であって、第1の金具11と第2の金具12をインサート品としてインサート成形してハウジング20を形成するインサート成形工程S2と、インサート成形工程S2後に、第1の金具11を、第1の金具11に接続された第1接続部31cから切り離す第1切離し工程S3と、第1切離し工程S3後に、第2の金具12に貴金属のめっきを施す電解めっき工程S4と、を備えるようにした。
【0049】
これにより、電解めっき工程S4よりも前に、第1の金具11を電気的に孤立させることができるので、電解めっき工程S4により第1の金具11に貴金属のめっきが形成されるのを防止することができる。このように貴金属の使用量を削減することができるので、生産コストを低減することができる。特に、第1の金具11が第2の金具12よりもハウジング20からの露出面積が大きい場合に生産コスト低減効果を大きくすることができる。また、電解めっき工程S4よりも前にインサート成形しているので、第2の金具12の一部がハウジング20内に埋没するため、第2の金具12の露出面積を少なくすることができる。そのため、貴金属の使用量を削減することができ、生産コストを低減することができる。
【0050】
(2)インサート成形工程S2前に、第1の金具11のうちの基板に実装される第1実装部111に貴金属のめっきを施す部分めっき工程S1を備えるようにした。
【0051】
これにより、基板にはんだを用いてコネクタ1を実装する際に実装強度を高めることができる。また、インサート成形工程S2より前に部分めっきを行うことにより、貴金属の使用量を削減することができる。例えば、部分めっき工程S1において、第1実装部111を特定し、それ以外の部分(例えば、第1保持部112、シールド部113)については貴金属のめっきが形成されないようにマスキングする場合、ハウジング20や第2の金具12がマスキングの障害となることがないので、適切にマスキングできる。その結果、不要な部分に貴金属のめっきが形成される事態を防止することができる。
【0052】
(3)部分めっき工程S1は、第1実装部111に貴金属のめっきを施す前に、第1の金具11に貴金属のめっきの下地となるめっきを施すめっき工程S11を備えるようにした。
【0053】
これにより、第1実装部111のように下地めっきの上に貴金属のめっきを施す場合に、貴金属のめっきを形成しやすくすることができる。例えば、母材金属が銅合金であり、貴金属が金である場合など、貴金属のめっきの際、貴金属の原子又はイオンが母材金属の表面層に分散又は拡散する傾向にあり、母材金属表面上に貴金属が析出しづらい場合がある。これに対し、本実施形態のように母材金属上にニッケルめっきなどの下地めっきを設けることで金のめっきを設け易くすることができる。また、めっき工程により第1の金具11の全面に下地めっきを施すことにより、第1の金具11の母材金属の腐食を防止することができる。
【0054】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0055】
例えば、図1図5に示すコネクタ1は、レセプタクルコネクタであるが、第1の金具11、第2の金具12、並びに、第1の金具11及び第2の金具12を保持するハウジング20を備えているのであれば、プラグコネクタであっても良い。
【0056】
上記実施形態では、第1の金具11をシールドとしたが、電源端子又は補強金具としても良い。第1の金具11としては、ハウジング20からの露出面全体に貴金属のめっきを施す必要のないものであれば良い。
【0057】
上記実施形態では、第1の金具11及び/又は第2の金具12にニッケルめっきを施すようにしたが、これに限定されず、耐腐食性を向上させるため、貴金属のめっきを形成しやすくするため、及び/又は、接触抵抗を低減させるため、ニッケル以外の金属を用いても良い。
【0058】
上記実施形態では、第1の金具11及び第2の金具12において母材金属が露出する部分は、第1実装部111の端面111a、第2実装部121の端面121aであるが、第1実装部111、第2実装部121の他の箇所でも良い。すなわち、第1の金具11、第2の金具12と、第1接続部31c、第2接続部41bとの接続箇所を切断することになるので、母材金属が露出する部分は、第1の金具11、第2の金具12と、第1接続部31c、第2接続部41bとの接続箇所に依存する。
【0059】
上記の実施形態では、コネクタ1の製造方法は部分めっき工程S1を備えるようにしたが、部分めっき工程S1は必ずしも備えなくても良い。
【0060】
上記実施形態では、第1の金具11の全面に下地めっきとしてニッケルめっきを設けるようにしたが、第2の金具12の全面にニッケルめっきなどの下地めっきを設けても良い。この場合、コネクタ1の製造方法は、インサート成形工程S2よりも前に第2の金具12に下地めっきを設ける工程を備える。
【0061】
上記実施形態では、インサート成形工程S2において、キャリア30とキャリア40とを位置合わせ孔50を介して位置合わせして固定したが、さらに、位置合わせ孔50を介して位置合わせの後、キャリア30の一部を加締めてキャリア40にキャリア30を固定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 コネクタ
11 第1の金具
11a 第1部材
11b 第2部材
111 第1実装部
111a 端面
112 第1保持部
113 シールド部
12 第2の金具
121 第2実装部
121b 端面
122 第2保持部
123 接触部
124 導入部
20 ハウジング
20a 開口
21 側壁部
21b 側壁
21a 側壁
22 凹部
22b 壁部
22a 壁部
22c 底部
23 連結底部
30 キャリア
31 キャリア部材
31a 平面部
31b 連結部
31c 第1接続部
40 キャリア
41 キャリア部材
41a 帯平板部
41b 第2接続部
50 位置合わせ孔
51 搬送孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11