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特許7566613対象物検出装置、対象物検出方法及び対象物検出プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】対象物検出装置、対象物検出方法及び対象物検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20241007BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020209543
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096438
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 勝大
(72)【発明者】
【氏名】助川 寛
(72)【発明者】
【氏名】横井 謙太朗
(72)【発明者】
【氏名】福井 雄大
【審査官】村山 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-149641(JP,A)
【文献】国際公開第2012/127618(WO,A1)
【文献】特開2012-221162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
G06V 10/00-20/90
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/959
H04N 5/222-5/257
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置から時系列に取得された画像の特徴量に基づいて前記画像における対象物の候補領域及び前記候補領域の尤度を抽出する特徴量抽出部と、
時系列に抽出された前記尤度を蓄積することで現在の前記画像における前記候補領域の中から前記対象物である確度が高い候補領域を追跡する追跡部と、
前記追跡部が追跡した候補領域に基づき最終的な前記対象物の位置を決定する決定部と、
を備え、
前記追跡部は、
過去の画像に基づいて抽出された第1の候補領域において尤度の値を有するフレーム尤度マップに現在の画像に基づいて抽出された第2の候補領域における尤度の値を加算し、
前記フレーム尤度マップの前記第2の候補領域を除く座標において尤度の値を一定値だけ減算し、
前記加算及び前記減算によって算出された総合尤度マップに基づいて追跡する対象物検出装置。
【請求項2】
撮像装置から時系列に取得された画像の特徴量に基づいて前記画像における対象物の候補領域及び前記候補領域の尤度を抽出する特徴量抽出部と、
時系列に抽出された前記尤度を蓄積することで現在の前記画像における前記候補領域の中から前記対象物である確度が高い候補領域を追跡する追跡部と、
前記追跡部が追跡した候補領域に基づき最終的な前記対象物の位置を決定する決定部と、
を備え、
前記追跡部は、
過去の画像に基づいて抽出された第1の候補領域において尤度の値を有する第1のフレーム尤度マップに現在の画像に基づいて抽出された第2の候補領域において尤度の値を有する第2のフレーム尤度マップを加算し、
前記加算によって算出された総合尤度マップに基づいて追跡し、
前記加算の際に前記第1のフレーム尤度マップを、前記第2のフレーム尤度マップとの時間差に応じて減衰させる対象物検出装置。
【請求項3】
前記特徴量抽出部は、抽出した前記候補領域のうち、前記尤度と、前記候補領域の中心領域の輝度値との少なくとも何れかが一定値よりも低い前記候補領域を削除する請求項1又は2に記載の対象物検出装置。
【請求項4】
前記特徴量抽出部は、前記候補領域の中心領域と周辺領域の平均輝度値の差に基づいて前記一定値を設定する請求項に記載の対象物検出装置。
【請求項5】
前記特徴量抽出部による前記抽出が実施される前記画像の探索範囲を設定する探索範囲設定部をさらに備え、
前記探索範囲設定部は、前記尤度の蓄積結果に基づいて前記探索範囲の位置を設定する請求項1に記載の対象物検出装置。
【請求項6】
前記探索範囲設定部は、さらに、前記尤度の蓄積結果に基づいて前記探索範囲の大きさを設定する請求項に記載の対象物検出装置。
【請求項7】
前記画像を撮像する撮像装置による撮像方向と画角の少なくとも何れかを前記尤度の蓄積結果に基づいて制御する撮像制御部をさらに備える請求項1に記載の対象物検出装置。
【請求項8】
飛しょう体に搭載される請求項1に記載の対象物検出装置。
【請求項9】
前記決定部で決定された前記対象物の位置の情報を前記飛しょう体の制御システムに出力する出力制御部をさらに備える請求項に記載の対象物検出装置。
【請求項10】
撮像装置から時系列に取得された画像の特徴量に基づいて前記画像における対象物の候補領域及び前記候補領域の尤度を抽出することと、
時系列に抽出された前記尤度を蓄積することで現在の前記画像における前記候補領域の中から前記対象物である確度が高い候補領域を追跡することと、
前記追跡された候補領域に基づき最終的な前記対象物の位置を決定することと、
を備え、
前記対象物である確度が高い候補領域を追跡することは、
過去の画像に基づいて抽出された第1の候補領域において尤度の値を有するフレーム尤度マップに現在の画像に基づいて抽出された第2の候補領域における尤度の値を加算することと、
前記フレーム尤度マップの前記第2の候補領域を除く座標において尤度の値を一定値だけ減算することと、
前記加算及び前記減算によって算出された総合尤度マップに基づいて追跡することと、
を含む対象物検出方法。
【請求項11】
撮像装置から時系列に取得された画像の特徴量に基づいて前記画像における対象物の候補領域及び前記候補領域の尤度を抽出することと、
時系列に抽出された前記尤度を蓄積することで現在の前記画像における前記候補領域の中から前記対象物である確度が高い候補領域を追跡することと、
前記追跡された候補領域に基づき最終的な前記対象物の位置を決定することと、
を備え、
前記対象物である確度が高い候補領域を追跡することは、
過去の画像に基づいて抽出された第1の候補領域において尤度の値を有する第1のフレーム尤度マップに現在の画像に基づいて抽出された第2の候補領域において尤度の値を有する第2のフレーム尤度マップを加算することと、
前記加算によって算出された総合尤度マップに基づいて追跡することと、
前記加算の際に前記第1のフレーム尤度マップを、前記第2のフレーム尤度マップとの時間差に応じて減衰させることと、
を含む対象物検出方法。
【請求項12】
撮像装置から時系列に取得された画像の特徴量に基づいて前記画像における対象物の候補領域及び前記候補領域の尤度を抽出することと、
時系列に抽出された前記尤度を蓄積することで現在の前記画像における前記候補領域の中から前記対象物である確度が高い候補領域を追跡することと、
前記追跡された候補領域に基づき最終的な前記対象物の位置を決定することと、
をプロセッサに実行させるための対象物検出プログラムであって、
前記対象物である確度が高い候補領域を追跡することは、
過去の画像に基づいて抽出された第1の候補領域において尤度の値を有するフレーム尤度マップに現在の画像に基づいて抽出された第2の候補領域における尤度の値を加算することと、
前記フレーム尤度マップの前記第2の候補領域を除く座標において尤度の値を一定値だけ減算することと、
前記加算及び前記減算によって算出された総合尤度マップに基づいて追跡することと、
を含む対象物検出プログラム
【請求項13】
撮像装置から時系列に取得された画像の特徴量に基づいて前記画像における対象物の候
補領域及び前記候補領域の尤度を抽出することと、
時系列に抽出された前記尤度を蓄積することで現在の前記画像における前記候補領域の
中から前記対象物である確度が高い候補領域を追跡することと、
前記追跡された候補領域に基づき最終的な前記対象物の位置を決定することと、
をプロセッサに実行させるための対象物検出プログラムであって、
前記対象物である確度が高い候補領域を追跡することは、
過去の画像に基づいて抽出された第1の候補領域において尤度の値を有する第1のフレーム尤度マップに現在の画像に基づいて抽出された第2の候補領域において尤度の値を有する第2のフレーム尤度マップを加算することと、
前記加算によって算出された総合尤度マップに基づいて追跡することと、
前記加算の際に前記第1のフレーム尤度マップを、前記第2のフレーム尤度マップとの時間差に応じて減衰させることと、
を含む対象物検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、対象物検出装置、対象物検出方法及び対象物検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線カメラ等の撮像装置によって取得された赤外線画像等を画像処理することによって、例えば空中を移動する対象物を検出する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5713939号公報
【文献】特許第6042146号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】領域間の分離度に基づく物体輪郭抽出, 電子情報通信学会論文誌 D, Vol.J80-D2, No.6, pp.1406-1414
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地表及び雲のような複数の対象物が混在した複雑な背景では、コントラストの変化及びノイズの影響等によって画像処理で検出される背景の領域の形状が変化することがある。この場合において、この背景の領域の変化が目的の対象物の移動と誤検出されることがある。また、輝度帯を指定して目的の対象物を検出することも考えられるが、この場合であっても複雑な背景の方で高い輝度値が連続している領域が目的の対象物と誤検出される可能性がある。
【0006】
実施形態は、複雑な背景があったとしても、目的の対象物を精度良く検出できる対象物検出装置、対象物検出方法及び対象物検出プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様の対象物検出装置は、特徴量抽出部と、追跡部と、決定部とを有する。特徴量抽出部は、撮像装置から時系列に取得された画像の特徴量に基づいて画像における対象物の候補領域及び候補領域の尤度を抽出する。追跡部は、時系列に抽出された尤度を蓄積することで現在の画像における候補領域の中から対象物である確度が高い候補領域を追跡する。決定部は、追跡部が追跡した候補領域に基づき最終的な対象物の位置を決定する。追跡部は、過去の画像に基づいて抽出された第1の候補領域において尤度の値を有するフレーム尤度マップに現在の画像に基づいて抽出された第2の候補領域における尤度の値を加算し、フレーム尤度マップの第2の候補領域を除く座標において尤度の値を一定値だけ減算し、加算及び減算によって算出された総合尤度マップに基づいて追跡する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、各実施形態に係る対象物検出装置を含む対象物検出システムの一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態にかかる対象物検出装置の機能ブロック図である。
図3A図3Aは、探索領域の例を示す図である。
図3B図3Bは、探索領域の例を示す図である。
図4A図4Aは、特徴量抽出処理において入力される画像の例を示す図である。
図4B図4Bは、特徴量抽出処理の結果の例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態における特徴量追跡処理の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態における対象物検出装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第1の実施形態における総合尤度マップの算出処理を示すフローチャートである。
図8図8は、撮像方向の制御の概要を示す図である。
図9A図9Aは、画角の制御の概要を示す図である。
図9B図9Bは、画角の制御の概要を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態の変形例における特徴量追跡処理の一例を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態の変形例における総合尤度マップの算出処理を示すフローチャートである。
図12図12は、第2の実施形態にかかる対象物検出装置の機能ブロック図である。
図13図13は、探索範囲設定処理の一例を示す図である。
図14A図14Aは、探索範囲設定処理の変形例を示す図である。
図14B図14Bは、探索範囲設定処理の変形例を示す図である。
図15図15は、第2の実施形態における対象物検出装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、各実施形態に係る対象物検出装置を含む対象物検出システムの一例を示す図である。対象物検出システム1は、撮像装置10と、対象物検出装置20とを備える。対象物検出システム1は、例えば飛しょう体の制御システム又は飛しょう体自身に設けられる。そして、対象物検出システム1は、撮像装置10を用いて取得された画像に対して画像処理を施すことによって目的の対象物を検出する。対象物は、例えば飛しょう体といった移動する対象物である。ここで、図1では、対象物検出システム1以外の構成については図示が省略されている。例えば、対象物検出システム1が搭載される飛しょう体は、推進力を得るための推進装置、移動方向を変えるための操舵装置等を有していてもよい。また、飛しょう体の制御システムは、飛しょう体自身に設けられてもよい。
【0010】
撮像装置10は、対象物を含むシーンの画像を逐次に撮像するカメラである。例えば、撮像装置10は、赤外領域に感度を有する撮像素子を有する赤外線カメラであってよい。撮像装置10は、可視光領域に感度を有する撮像素子を有するカメラであってもよい。撮像装置10は、撮像素子のそれぞれの画素で受光した光の強度に応じた輝度値を有する画像を生成する。そして、撮像装置10は、生成した画像を対象物検出装置20に出力する。ここで、撮像装置10は、撮像方向を変更できるようにパン・チルト機構を有していてよい。また、撮像装置10は、画角を変更できるようにズーム光学系を有していてもよい。撮像装置10は、撮像方向の変更と画角の変更の何れか一方だけができるように構成されていてもよい。
【0011】
対象物検出装置20は、入力装置201と、プロセッサ202と、メモリ203と、記憶装置204と、出力装置205とを有している。
【0012】
入力装置201は、撮像装置10で逐次に取得される画像をプロセッサ202に入力するためのインターフェイス装置である。
【0013】
プロセッサ202は、記憶装置204に記憶された対象物検出プログラム2041を実行することによって、入力装置201を介して取得された画像における対象物を検出する。プロセッサ202は、例えばCPUである。プロセッサ202は、MPU、GPU、ASIC、FPGA等であってもよい。プロセッサ202は、単一のCPU等であってもよいし、複数のCPU等であってもよい。
【0014】
メモリ203は、ROM及びRAMを含む。ROMは、対象物検出装置20の起動プログラム及び対象物検出装置20の動作に必要な各種のパラメータを記憶する。RAMは、プロセッサ202による各種の処理における作業メモリとして用いられ得る。例えば、RAMは、後で説明する尤度マップを一時的に保存しておくために用いられる。
【0015】
記憶装置204は、対象物検出プログラム2041を記憶している記憶装置である。記憶装置204は、フラッシュメモリ等であってよい。
【0016】
出力装置205は、プロセッサ202で検出された対象物の情報を必要に応じて外部に出力するためのインターフェイス装置である。例えば、出力装置205は、飛しょう体の制御システムに必要な情報を送信する通信インターフェイスを含む。
【0017】
図2は、第1の実施形態にかかる対象物検出装置20の機能ブロック図である。図2に示すように、本実施形態の対象物検出装置20は、撮像制御部301と、特徴量抽出部302と、追跡部303と、決定部304と、出力制御部305とを備える。例えば、プロセッサ202は、対象物検出プログラム2041を実行することによって撮像制御部301と、特徴量抽出部302と、追跡部303と、決定部304と、出力制御部305として動作する。撮像制御部301と、特徴量抽出部302と、追跡部303と、決定部304と、出力制御部305とは、専用のハードウェア等によって構成されてもよい。
【0018】
撮像制御部301は、撮像装置10の動作を制御する。撮像制御部301は、撮像装置10に対して撮像方向の指示をする。また、撮像制御部301は、撮像装置10における画角の変更、すなわちズームイン又はズームアウトを指示する。例えば、撮像制御部301は、後で説明する尤度の高い座標が次のフレームで撮像される画像の中心になるように撮像装置10をパン又はチルトさせる。また、例えば、撮像制御部301は、尤度の高さに応じて撮像装置10をズームイン又はズームアウトさせる。例えば、撮像制御部301は、尤度が高いときには撮像装置10をズームインさせ、尤度が低いときには撮像装置10をズームアウトさせる。また、撮像制御部301は、撮像装置10から入力装置201を介して時系列に入力された画像を取得し、取得した画像を特徴量抽出部302に送信する。
【0019】
特徴量抽出部302は、特徴量抽出処理をする。特徴量抽出処理は、撮像制御部301によって時系列に取得された画像における特徴量から対象物の候補領域及び尤度を抽出する処理である。尤度は、対象物の確からしさを表す値である。
【0020】
例えば、特徴量抽出部302は、画像の中に探索領域を設定する。探索領域は、例えば図3Aに示す中心領域401と周辺領域402とを有する。中心領域401は、2×2画素の領域である。周辺領域402は、中心領域401の外側の1画素の領域である。探索領域のサイズは、図3Aのサイズに限らない。例えば図3Bに示すように、周辺領域402が、中心領域401の外側の2画素の領域であってもよい。複数の探索領域が画像の中に設定されてもよい。これらの複数の探索領域は、同じサイズであってもよいし、異なるサイズであってもよい。
【0021】
探索領域を設定した後、特徴量抽出部302は、それぞれの探索領域における特徴量としての分離度を計算する。分離度は、中心領域401と周辺領域402との輝度値の分散の比である。そして、特徴量抽出部302は、分離度に基づいて探索領域の中から候補領域を抽出する。例えば、特徴量抽出部302は、分離度の高い探索領域を候補領域として抽出する。抽出される候補領域は、1つでもよいし、複数でもよい。
【0022】
図4A及び図4Bは、特徴量抽出処理の例である。図4Aは、特徴量抽出部302に入力された画像の例である。図4Aに示す画像500は、対象物Oを含む画像である。図4Bは、特徴量抽出処理がされた画像の例である。例えば、図4Bでは、候補領域501、502、503が抽出されている。候補領域501、502、503のうち、候補領域501は、中心領域に対象物Oを含むために候補領域として抽出された領域である。候補領域502、503は、背景の影響によって候補領域として抽出された領域である。
【0023】
図4Bに示すような候補領域を抽出した後、特徴量抽出部302は、候補領域501、502、503の左上X座標X1、X2、X3、左上Y座標Y1、Y2、Y3、幅W1、W2、W3、高さH1、H2、H3、尤度S1、S2、S3を追跡部303へ送る。ここで、尤度S1、S2、S3としては、例えば分離度が用いられ得る。
【0024】
ここで、特徴量抽出部302は、分離度によって候補領域を抽出する構成に限らない。特徴量抽出部302は、輝度値の二値化、大津の二値化(中心領域と周辺領域とのクラス間分散とクラス内分散との比によって算出される分離度による二値化)、エッジ検出等の公知の画像処理を用いて候補領域を抽出してもよい。また、特徴量抽出部302は、フレーム間差分等の、前のフレームの画像との差分を抽出することによって候補領域を抽出してもよい。
【0025】
また、特徴量抽出部302は、抽出した候補領域のうち、尤度の値と中心領域の平均輝度値の一方又は両方が予め設定された値よりも低い領域を候補領域から削除してもよい。尤度の値が低いことは、中心領域と周辺領域とがあまり分離されていない、すなわち対象物の確からしさが低いことを意味する。また、中心領域の輝度値が低いことは、その候補領域は背景である可能性が高いことを意味する。したがって、このような尤度の値と中心領域の平均輝度値の一方又は両方が予め設定された値よりも低い領域が候補領域から削除されることにより、背景の領域が対象物の領域として誤抽出されることが抑制され得る。候補領域が削除される際の閾値となる輝度値は、予め定められた値ではなく、中心領域と周辺領域の平均輝度値との差であってもよい。これにより、閾値が候補領域毎に自動で設定され得る。
【0026】
追跡部303は、特徴量追跡処理をする。特徴量追跡処理は、特徴量抽出部302から送られた候補領域の情報としての、左上X座標、左上Y座標、幅、高さ、尤度に基づいて算出される総合尤度マップに基づいて対象物を追跡する処理である。総合尤度マップは、複数フレームのフレーム尤度マップから算出される。総合尤度マップ及びフレーム尤度マップは、それぞれ、各座標が尤度の値を有しているマップである。
【0027】
図5は、第1の実施形態における特徴量追跡処理の一例を示す図である。追跡部303は、現在のフレームtにおいて入力された特徴量の抽出結果を含む画像500aから現在のフレームにおけるフレーム尤度マップ600aを算出する。フレームtにおけるフレーム尤度マップ600aは、画像500aにおいて抽出された候補領域501a、502a、503aにおける尤度の値を、予め保持されている初期値の尤度マップに加算することで算出される。初期値の尤度マップは、すべての座標における尤度の値が初期値、例えばゼロのマップである。具体的には、追跡部303は、初期値の尤度マップにおける候補領域501aと対応する候補領域601aのそれぞれの座標に、候補領域501aに含まれるそれぞれの座標の尤度の値を加算する。同様に、追跡部303は、初期値の尤度マップにおける候補領域502aと対応する候補領域602aのそれぞれの座標に、候補領域502aに含まれるそれぞれの座標の尤度の値を加算し、初期値の尤度マップにおける候補領域503aと対応する候補領域603aの座標に、候補領域503aに含まれるそれぞれの座標の尤度の値を加算する。ここで、図5では、候補領域毎に異なるハッチングが付されることによって、尤度の値の違いが示されている。図5の例では、候補領域601aの尤度の値は、候補領域602a、603aの尤度の値に比べて高いものとする。
【0028】
フレームtにおけるフレーム尤度マップ600aを算出した後、追跡部303は、フレーム尤度マップ600aと1つ前のフレームt-1において算出済みの総合尤度マップ700bとから現在のフレームtにおける総合尤度マップ700aを算出する。具体的には、追跡部303は、フレーム尤度マップ600aのそれぞれの座標の尤度の値を、総合尤度マップ700bの対応する座標の尤度の値に加算する。一方で、追跡部303は、加算された総合尤度マップ700bにおいて、フレーム尤度マップ600aにおいて尤度の値を有していない座標、すなわち候補領域601a、602a、603a以外の座標については予め設定された一定値を減算する。このようにして追跡部303は、総合尤度マップ700aを算出する。
【0029】
例えば、図5において、追跡部303は、フレーム尤度マップ600aにおける候補領域601a、601b、601cの尤度の値を総合尤度マップ700bにおける対応する座標の尤度の値に加算する。さらに、追跡部303は、総合尤度マップ700bにおける候補領域601a、602a、603a以外の領域については予め設定された一定値を減算する。
【0030】
ここで、総合尤度マップ700bにおいて尤度の値を有している候補領域701b、702b、703b、704b、705b、706bは、フレーム尤度マップ600aにおいて尤度の値を有している候補領域601a、602a、603aの何れとも一致していない。したがって、フレーム尤度マップ600aにおける候補領域701b、702b、703b、704b、705b、706bと対応する座標の尤度の値からは一定値が減算される。図5の総合尤度マップ700aにおいては、候補領域601a、602a、603aと対応する候補領域701a、702a、703aに加えて、候補領域703bと対応する候補領域704a、候補領域704bと対応する候補領域705a、候補領域706bと対応する候補領域706aだけが尤度の値を有している例が示されている。また、候補領域704a、705a、候補領域706aの尤度の値は、元の値よりも小さくなる。
【0031】
このようにして算出される総合尤度マップでは、1フレーム前の尤度マップにおける候補領域と同じ座標の候補領域が現在のフレームにおいても抽出された場合にはその候補領域における尤度はより高くなる。一方、1フレーム前の尤度マップにおける候補領域と異なる座標の候補領域が現在のフレームにおいて抽出された場合には1フレーム前において抽出された候補領域の尤度は低くなる。例えば、対象物と考えられる尤度の高い候補領域が画像の中心になるように撮像装置10が制御されている場合、この尤度の高い候補領域は、画像の中心から殆ど動かない。また、対象物は、時間経過に伴う形状の変化も殆どないと考えられる。一方で、雲等の背景については時間経過に伴う位置の変化及び形状の変化等により、候補領域の位置が変動し得る。このため、実施形態の特徴量追跡処理では、目的の対象物を含む確度の高い候補領域の尤度は時間経過とともに高くなり易く、対象物と似た背景が候補領域として抽出されてもこの背景の候補領域の尤度は時間経過とともに低くなり易い。このようにして、実施形態では、対象物と似た背景の領域が誤抽出された場合でも、誤抽出された背景の領域の尤度を下げることができ、結果として目的の対象物を精度良く検出することができる。
【0032】
追跡部303は、前述のようにして算出された総合尤度マップ700aのうちで最も高い尤度を有する候補領域の座標とその候補領域の尤度の値とを決定部304に送る。図5の例では、追跡部303は、候補領域701aの左上X座標、左上Y座標、幅、高さと、尤度を決定部304へ送る。
【0033】
ここで、前のフレームにおいて総合尤度マップが保持されていない場合には、前のフレームにおけるフレーム尤度マップが総合尤度マップとして用いられる。この場合、フレーム尤度マップの尤度の値がそのまま総合尤度マップの尤度の値として流用される。図5の例では、t-2フレームにおける画像500cの前のフレームは存在しない。この場合、画像500cに基づいて算出されるフレーム尤度マップ600cは、t-1フレームにおける総合尤度マップ700bを算出するための1フレーム前の総合尤度マップとして流用される。総合尤度マップ700bは、t-1フレームにおける画像500bに基づいて算出されるフレーム尤度マップ600bとフレーム尤度マップ600cとから算出される。
【0034】
また、前のフレームにおいてフレーム尤度マップが保持されていない場合、すなわち現在のフレームが最初のフレームである場合には、前述した予め保持されている初期値の尤度マップが総合尤度マップとして用いられてよい。
【0035】
また、図5では、フレーム尤度マップ600a、600b、600c及び総合尤度マップ700a、700bは、尤度の値を輝度値とした画像として示されている。しかしながら、フレーム尤度マップ及び総合尤度マップは、必ずしも画像化される必要はない。フレーム尤度マップ及び総合尤度マップは、座標毎の尤度の値を有していればよい。
【0036】
また、実施形態では、尤度の高い候補領域が画像の中心になるように撮像装置10が制御される前提で説明している。しかしながら、対象物の移動が撮像のフレームの間隔に比べて小さければフレーム間での画像上での対象物の移動も少ないため、結果として尤度の値は時間経過とともに高くなり易い。このような撮像のフレームの間隔に比べて移動の小さい対象物が追跡される場合には、尤度の高い候補領域が画像の中心になるように撮像装置10が制御されなくてもよい。
【0037】
決定部304は、追跡部303から現在のフレームにおける総合尤度マップを取得する。そして、決定部304は、総合尤度マップから画像における最終的な対象物の位置を決定する。具体的には、決定部304は、総合尤度マップの中で最も高い尤度の値が一定値以上であるか否かに応じて最終的な対象物の位置を決定する。決定部304は、例えば検出した尤度の値が一定値以上である場合、その尤度を有している候補領域の座標を最終的な対象物の位置として決定する。一方、決定部304は、例えば総合尤度マップの中で最も高い尤度の値が一定値以上でない場合、その尤度を有している候補領域の座標を最終的な対象物の位置として決定しない。
【0038】
出力制御部305は、決定部304で決定された対象物の位置の情報を出力するための制御をする。例えば、出力制御部305は、対象物の位置の情報を、出力装置204を介して飛しょう体の制御システムに出力する。
【0039】
図6は、第1の実施形態における対象物検出装置20の処理の一例を示すフローチャートである。図6の処理は、例えばプロセッサ202によって行われる。
【0040】
ステップS101において、プロセッサ202は、撮像装置10から画像を取得する。
【0041】
ステップS102において、プロセッサ202は、取得した画像の特徴量を抽出し、特徴量に基づいて候補領域及びその尤度を抽出する。
【0042】
ステップS103において、プロセッサ202は、特徴量が抽出されたか否かを判定する。ステップS103において、特徴量が抽出されたと判定されたときには、処理はステップS104に移行する。ステップS103において、例えば候補領域としての高い分離度を有する探索領域がなかったと判定されたときには、処理はステップS101に戻る。この場合、プロセッサ202は、次のフレームの画像の取得を実施して同様の処理を繰り返す。
【0043】
ステップS104において、プロセッサ202は、それぞれの候補領域の座標と尤度とから、現在のフレームにおけるフレーム度マップを算出する。
【0044】
ステップS105において、プロセッサ202は、現在のフレームにおけるフレーム尤度マップから現在のフレームにおける総合尤度マップを算出する。ここで、総合尤度マップの算出処理について説明する。
【0045】
図7は、第1の実施形態における総合尤度マップの算出処理を示すフローチャートである。ステップS201において、プロセッサ202は、現在のフレームにおけるフレーム尤度マップの候補領域に対応する座標から尤度の値を取得する。
【0046】
ステップS202において、プロセッサ202は、取得した尤度の値を、1つ前のフレームにおいて算出された総合尤度マップに加算する。前述したように、1つ前のフレームの総合尤度マップが存在しない場合には、1つ前のフレームにおけるフレーム尤度マップが総合尤度マップとして用いられてよい。さらに、現在のフレームが最初のフレームであるときには、初期値の尤度マップが総合尤度マップとして用いられてよい。
【0047】
ステップS203において、プロセッサ202は、1つ前のフレームにおいて算出された総合尤度マップにおける、現在のフレームにおけるフレーム尤度マップの候補領域外のそれぞれの座標の尤度の値から一定値を減算する。このようにして、現在のフレームにおける総合尤度マップが算出される。
【0048】
ステップS204において、プロセッサ202は、現在のフレームにおける総合尤度マップの中で、最も高い尤度を有する候補領域の座標及び尤度の情報を抽出する。その後、プロセッサ202は、図7の処理を終了する。
【0049】
ここで、図6の説明に戻る。現在のフレームにおける総合尤度マップを算出した後のステップS106において、プロセッサ202は、抽出した尤度が一定値以上であるか否かを判定する。ステップS106において、尤度が一定値以上でないと判定されたときには、処理はステップS107に移行する。ステップS106において、尤度が一定値以上であると判定されたときには、処理はステップS109に移行する。
【0050】
ステップS107において、プロセッサ202は、最も高い尤度を有する候補領域が次のフレームで撮像される画像の中心になるように撮像装置10の撮像方向を制御する。すなわち、プロセッサ202は、撮像装置10をパン又はチルトさせる。図8は、撮像方向の制御の概要を示す図である。プロセッサ202は、例えば、現在のフレーム500aから生成される総合尤度マップ700aのうちで最も高い尤度を有する候補領域701aの座標を取得する。そして、プロセッサ202は、取得した候補領域701aの例えば中心の座標と画像中心の座標との画像間の距離を算出する。そして、プロセッサ202は、画像間の距離に基づいて撮像装置10のパン量及びチルト量を決定し、決定したパン量及びチルト量に応じて撮像装置10をパン及びチルトさせる。このようにして、次のフレームにおいて撮像される画像500eでは、前のフレームにおいて最も高い尤度を有する候補領域701aと対応する候補領域501eが画像中心になる。最も高い尤度を有する候補領域は、対象物Oが存在する確度が高い領域である。対象物Oが存在する確度が高い領域が画像中心となるように撮像がされることにより、撮像される画像から対象物Oが失われる可能性が低減される。
【0051】
ステップS108において、プロセッサ202は、最も高い尤度を有する候補領域の尤度の値に応じて撮像装置10の画角を制御する。すなわち、プロセッサ202は、撮像装置10をズームイン又はズームアウトさせる。その後、処理はステップS101に戻る。この場合、プロセッサ202は、次のフレームの画像の取得を実施して同様の処理を繰り返す。
【0052】
図9A及び図9Bは、画角の制御の概要を示す図である。ここで、図9Aは、尤度の値が高い場合の制御の概要を示し、図9Bは、尤度の値が低い場合の制御の概要を示す。
【0053】
プロセッサ202は、例えば、総合尤度マップ700aにおいて取得した最大の尤度の値があらかじめ設定されている閾値よりも大きい場合には、図9Aに示すように、最大の尤度の値を有する座標を中心にして撮像装置10をズームインさせる。これにより、次のフレームにおいて撮像される画像500dでは、前のフレームにおいて最も高い尤度を有する座標を中心とした狭い範囲が拡大される。これにより、対象物Oである確度の高い座標の付近が拡大されることで対象物Oをより明確に撮像することが可能である。また、プロセッサ202は、例えば、総合尤度マップ700aにおいて取得した最大の尤度の値があらかじめ設定されている閾値よりも小さい場合には、図9Bに示すように、最大の尤度の値を有する座標を中心にして撮像装置10をズームアウトさせる。尤度の値が小さいことは、その座標を含む対象物が目的の対象物Oである確度が低いことを意味する。この場合において、撮像装置10がズームアウトされることにより、対象物の周辺領域を増やすことができる。これにより、撮像される画像から対象物Oが失われる可能性が低減される。なお、尤度の閾値は、手動によって設定されてよい。
【0054】
ここで、図6の説明に戻る。ステップS109において、プロセッサ202は、最も高い尤度を有する候補領域の座標を対象物Oの座標として例えば飛しょう体の制御システムに出力する。これを受けて、飛しょう体の制御システムは、対象物Oを追跡するように飛しょう体を制御し得る。
【0055】
以上説明したとおり、第1の実施形態によれば、複数のフレームにおいて抽出された特徴量から算出される尤度を蓄積することによって対象物の候補領域が選別される。つまり、尤度の高い候補領域が同じ座標に有り続ければ尤度は高くなり、異なる座標に変化すると尤度は低くなる。このようにして算出される尤度に基づいて対象物が決定されることにより、第1の実施形態では、複雑な背景に対する誤検出を抑制して安定してかつ精度良く対象物を検出することができる。
【0056】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態の変形例を説明する。第1の実施形態では、追跡部303は、過去の総合尤度マップに現在のフレーム尤度マップを加算することで現在の総合尤度マップを算出している。これに対し、追跡部303は、現在のフレーム尤度マップに過去の複数のフレーム尤度マップを加算することで現在の総合尤度マップを算出してもよい。
【0057】
図10は、第1の実施形態の変形例における特徴量追跡処理の一例を示す図である。図10の例では、現在のフレームtを含む4フレームのフレーム尤度マップから総合尤度マップが算出される。追跡部303は、現在のフレームtの画像500a、1つ前のフレームt-1の画像500b、2つ前のフレームt-1の画像500c、3つ前のフレームt-2の画像500dのそれぞれからフレーム尤度マップ600a、600b、600c、600dを算出する。フレーム尤度マップの算出手法は、第1の実施形態と同様でよい。具体的には、追跡部303は、抽出されたそれぞれの候補領域における尤度の値を、予め保持されている初期値の尤度マップに加算することでフレーム尤度マップを算出する。
【0058】
変形例の追跡部303は、これらの複数フレームのフレーム尤度マップに基づいて、総合尤度マップを算出する。具体的には、追跡部303は、現在のフレームに対して時間差の小さいフレーム尤度マップの尤度を高くし、現在のフレームに対して時間差の大きいフレーム尤度マップの尤度を低くして、それぞれのフレーム尤度マップが所持している各座標の尤度の値を加算することで総合尤度マップを算出する。
【0059】
例えば、追跡部303は、フレームtのフレーム尤度マップ600aのそれぞれの尤度の値を100%とした、すなわち尤度の値に係数1.0を乗じたフレーム尤度マップ800a、フレームt-1のフレーム尤度マップ600bのそれぞれの尤度の値を75%に減衰した、すなわち尤度の値に係数0.75を乗じたフレーム尤度マップ800b、フレームt-2のフレーム尤度マップ600cのそれぞれの尤度の値を50%に減衰した、すなわち尤度の値に係数0.5を乗じたフレーム尤度マップ800c、フレームt-3のフレーム尤度マップ600dの尤度を25%に減衰した、すなわち尤度の値に係数0.25を乗じたフレーム尤度マップ800dを算出する。そして、追跡部303は、これらの4つのフレームのフレーム尤度マップ800a、800b、800c、800dの各座標の尤度を合算して総合尤度マップ700aを算出する。このような総合尤度マップ700aであっても過去のフレームのフレーム尤度マップと現在のフレームのフレーム尤度マップとで同じ座標に尤度の値があれば、その座標の尤度の値が増加するように総合尤度マップが作成される。一方で、過去のフレームであるほど尤度の減衰量が大きいので、過去の尤度の値が現在のフレームの総合尤度マップに与える影響は少ない。このため、過去のフレームにおいて対象物の誤検出があってもその影響は時間の経過とともに補正される。このため、変形例においても複雑な背景に対する誤検出を抑制して安定してかつ精度良く対象物を検出することができる。
【0060】
図11は、第1の実施形態の変形例における総合尤度マップの算出処理を示すフローチャートである。ステップS301において、プロセッサ202は、現在のフレームにおけるフレーム尤度マップの候補領域に対応する座標から尤度の値を取得する。
【0061】
ステップS302において、プロセッサ202は、現在のフレーム、1つ前のフレーム、2つ前のフレーム、3つ前のフレームにおいて算出されたフレーム尤度マップのそれぞれの座標の尤度の値にフレーム毎に割り当てられた係数を乗じることでそれぞれのフレーム尤度マップを減衰させる。
【0062】
ステップS303において、プロセッサ202は、減衰されたそれぞれのフレーム尤度マップの対応する座標の尤度の値を加算する。このようにして、現在のフレームにおける総合尤度マップが算出される。
【0063】
ステップS304において、プロセッサ202は、現在のフレームにおける総合尤度マップの中で、最も高い尤度を有する候補領域の座標及び尤度の情報を抽出する。その後、プロセッサ202は、図11の処理を終了する。
【0064】
以上のような変形例であってもこのため、複雑な背景に対しても誤検出を抑制して安定して対象物を検出することができる。
【0065】
ここで、変形例で示した総合尤度マップの算出手法は一例である。例えば、減衰量は、現在のフレームが最も高くなるように設定されていれば、変形例で説明した量に限定されるものではない。同様に、加算するフレーム数も現在のフレームを含んでいればよく、4フレームに限定されるものではない。また、必ずしも連続したフレームのフレーム尤度マップが加算されなくてもよい。さらに、第1の実施形態と同様に過去のフレーム尤度マップとして過去の総合尤度マップが減衰されて用いられてもよい。
【0066】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を説明する。図12は、本実施形態にかかる対象物検出装置20の機能ブロック図である。ここで、図12において、図2と同じ構成要素については図2と同じ参照符号が付されている。図12と同じ参照符号が付されている構成要素については、必要に応じて説明を省略又は簡略化する。
【0067】
本実施形態の対象物検出装置20は、撮像制御部301と、探索範囲設定部306と、特徴量抽出部302と、追跡部303と、決定部304と、出力制御部305とを備える。例えば、プロセッサ202は、対象物検出プログラム2041を実行することによって撮像制御部301と、探索範囲設定部306と、特徴量抽出部302と、追跡部303と、決定部304と、出力制御部305として動作する。撮像制御部301と、探索範囲設定部306と、特徴量抽出部302と、追跡部303と、決定部304と、出力制御部305とは、専用のハードウェア等によって構成されてもよい。
【0068】
探索範囲設定部306は、特徴量抽出部302による特徴量抽出の際の探索範囲の位置を設定する。具体的には、探索範囲設定部306は、過去のフレームにおいて算出された総合尤度マップにおける尤度の値に基づき、現在のフレームにおける探索範囲の位置を設定する。
【0069】
図13は、探索範囲設定部306の探索範囲設定処理の一例を示す図である。例えば、1つ前のフレームにおいて得られた画像500aから算出された総合尤度マップ700aにおいて、候補領域701aの尤度の値が最も高かったとする。この場合、探索範囲設定部306は、候補領域701aの例えば中心座標を中心として予め設定された範囲を探索範囲として設定する。そして、探索範囲設定部306は、設定した探索範囲の左上X座標X4、左上Y座標Y4、幅W4、高さH4を特徴量抽出部302に送る。ここで、幅W4、高さH4は、手動で設定されてよい。特徴量抽出部302は、次のフレームの画像500eにおける探索範囲Aについて特徴量抽出処理を実施する。
【0070】
ここで、探索範囲は、最初のフレームについては総合尤度マップがないので、探索範囲設定部306は、例えば画像の全域を探索範囲に設定する。
【0071】
また、探索範囲設定部306は、画像内に複数の探索範囲を設定してもよい。この場合において、探索範囲設定部306は、例えば総合尤度マップにおける尤度の値の高い順に複数の探索範囲を設定してもよい。このとき、探索範囲設定部306は、複数の探索範囲が相互に重複しないように設定してもよい。
【0072】
また、探索範囲設定部306は、探索範囲の大きさ、すなわち幅W4及び高さH4を前のフレームにおいて算出された総合尤度マップにおける最も高い尤度の値に応じて設定してもよい。
【0073】
図14A及び図14Bは、探索範囲設定処理の変形例を示す図である。ここで、図14Aは、尤度の値が低いときの探索範囲設定処理の変形例を示す図である。また、図14Bは、尤度の値が高いときの探索範囲設定処理の変形例を示す図である。
【0074】
探索範囲設定部306は、例えば前のフレームにおいて算出された総合尤度マップにおける最大の尤度の値が、あらかじめ設定された閾値よりも低い場合は、図14Aに示すように尤度が最も高い座標を中心として、もとの探索範囲より一定の幅及び高さだけ拡大された探索範囲A1を設定し、探索範囲A1の左上X座標X5、左上Y座標Y5、幅W5、高さH5を特徴量抽出部302に送る。一方、探索範囲設定部306は、例えば前のフレームにおいて算出された総合尤度マップにおける最大の尤度の値が、あらかじめ設定された閾値よりも高い場合は、図14Bに示すように尤度が最も高い座標を中心として、もとの探索範囲より一定の幅及び高さだけ縮小された探索範囲A2を設定し、探索範囲A2の左上X座標X6、左上Y座標Y6、幅W6、高さH6を特徴量抽出部302に送る。ここで、閾値は、1つでもよいし、複数でもよい。複数の閾値がある場合において、閾値に応じて探索範囲の幅及び高さが設定されてよい。
【0075】
図15は、第2の実施形態における対象物検出装置20の処理の一例を示すフローチャートである。図15の処理は、例えばプロセッサ202によって行われる。ここで、図15において、図6と同様の処理については説明を適宜に省略又は簡略化する。
【0076】
ステップS401において、プロセッサ202は、撮像装置10から画像を取得する。
【0077】
ステップS402において、プロセッサ202は、取得した画像に対して探索範囲を設定する。前述したように、最初のフレームの探索範囲は、画像の全域であってよい。一方、最初のフレームの後の探索範囲は、前のフレームにおいて算出された総合尤度マップに基づいて設定される。プロセッサ202は、前のフレームにおいて算出された総合尤度マップにおける最も高い尤度の値を有する座標を中心とした範囲で探索範囲を設定する。このとき、プロセッサ202は、探索範囲の幅及び高さを、最も高い尤度の値と閾値との比較に応じて設定してもよい。
【0078】
ステップS403-S410の処理は、図6のステップS102-S109の処理と同じである。したがって、説明を省略する。
【0079】
以上説明したとおり、第2の実施形態では前のフレームにおいて算出された総合尤度マップの尤度の値に基づいて次のフレームの特徴量の探索範囲が設定される。前述したように対象物は、フレーム間で大きく移動することはないことがある。この場合においては、画像中で探索範囲を制限することで背景等を誤って抽出することが抑制され得る。
【0080】
[その他の変形例]
前述した各実施形態及びその変形例の対象物検出装置20において実行される対象物検出プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、対象物検出プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納されてもよく、対象物検出装置20は、必要に応じてネットワーク経由で対象物検出プログラムをダウンロードして利用してもよい。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 対象物検出システム、10 撮像装置、20 対象物検出装置、201 入力装置、202 プロセッサ、203 メモリ、204 記憶装置、205 出力装置、301 撮像制御部、302 特徴量抽出部、303 追跡部、304 決定部、305 出力制御部、306 探索範囲設定部。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15