IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-インプリント装置および物品の製造方法 図1
  • 特許-インプリント装置および物品の製造方法 図2
  • 特許-インプリント装置および物品の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】インプリント装置および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20241007BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241007BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20241007BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20241007BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20241007BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20241007BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10 ZNM
B05D1/26 Z
B05D3/12 C
H01L21/30 502D
H01L21/30 564Z
B41J2/175 101
B41J2/175 171
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020210325
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096996
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 裕一
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-004798(JP,A)
【文献】特開2020-179632(JP,A)
【文献】特開2019-125619(JP,A)
【文献】特開2008-087273(JP,A)
【文献】特開2011-108805(JP,A)
【文献】特開2006-228880(JP,A)
【文献】特開2015-221416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-5/04
B05C 7/00-7/08
B05C 9/00-9/14
B05C 11/10
B05D 1/26
B05D 3/12
H01L 21/027
B41J 2/175
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体とインプリント材とを収納する収納容器と、前記収納容器が収納するインプリント材を吐出する吐出手段と、
を備えた吐出装置であって、
前記収納容器が収納する気体の酸素含有量を低下させる脱酸素部を備えていることを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記脱酸素部は、前記収納容器が収納する気体を循環させる請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記収納容器内に気体を供給して前記収納容器内の圧力を調整する圧力調整手段を備え、
前記圧力調整手段は、前記収納容器の中の圧力を検出する圧力検出手段の検出結果に基づいて前記収納容器内の圧力を調整する請求項1または2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記脱酸素部と前記吐出手段と前記圧力調整手段とを制御する制御手段を備えている請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記脱酸素部は、酸素濃度計測機能を備え、
前記制御手段は、前記収納容器が収納する気体の酸素濃度を1%以下に維持するように前記脱酸素部を制御する請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記インプリント材が、感光性樹脂を含有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記気体は、不活性ガスである請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記インプリント材が更に、光重合開始剤を含有する請求項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
出された前記インプリント材に押印する型を備えている請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
気体と吐出物とを収納する収納容器と、前記収納容器が収納する吐出物を吐出する吐出手段と、を備えた吐出装置を用いた物品の製造方法であって、
前記収納容器が収納する気体の酸素含有量を低下させる脱酸素工程と、
前記脱酸素工程が行われた前記収納容器が収納する吐出物を吐出する吐出工程と、
前記吐出工程で吐出された前記吐出物に型を押印し、物品を製造する押印工程と、
を有する物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、収納容器の内部の空間に分離膜を設け、その分離膜によって、吐出物を収容する吐出物収容部と、充填液を収容する充填液収容部と、を隔てた収納容器が開示されている。
【0003】
吐出物は、酸素と接触すると不活性化され重合反応が停止してしまう酸素阻害(重合阻害)を生じる。特許文献1のように、充填液収容部と吐出物収容部とを分け、吐出物を隔離した状態で、充填液収容部の圧力を制御することで分離膜を介して吐出物収容部の圧力を制御することで、吐出物と酸素との接触を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-26129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような収納容器の構成は複雑であり、部品点数も多くなっている。
【0006】
そのため本発明は、構成が簡易であり、収納容器内で吐出物と酸素との接触を抑制することができるインプリント装置および物品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため本発明のインプリント装置は、気体とインプリント材とを収納する収納容器と、前記収納容器が収納するインプリント材を吐出する吐出手段と、を備えた吐出装置であって、前記収納容器が収納する気体の酸素含有量を低下させる脱酸素部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構成が簡易であり、収納容器内で吐出物と酸素との接触を抑制することができるインプリント装置および物品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インプリント装置を示した図である。
図2】吐出装置を示した概略図である。
図3】インプリント装置における、物品の製造方法を工程順に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態を適用可能なインプリント装置1を示した図である。インプリント装置1は、半導体デバイスに代表される物品の製造に使用される。インプリント装置1は、光照射部10と、型保持部11と、基板チャック12と、基板ステージ13と、吐出装置14と、吐出ノズル15と、圧力調整部16と、吐出装置制御部17と、を備える。
【0012】
インプリント装置1は、基板チャック12に固定された基板19上に、吐出装置14の吐出ノズル15から吐出物である液体状の感光性樹脂(感光性樹脂組成物、レジスト)21を吐出する。その後、型保持部11に保持された、パターンを有する型18を、基板19上に吐出された未硬化の感光性樹脂21に押し付ける(押印する)。そしてインプリント装置1は、型18を押し付けた状態で、感光性樹脂21に光照射部10から光20(例えば紫外線)を照射することによって硬化させる。その後、インプリント装置1は、型18を感光性樹脂21から分離することによって、型18にあるパターンを基板19上の感光性樹脂21に転写する。
【0013】
光照射部10は、型18を介して感光性樹脂21に光20を照射する。照射する光の波長は、硬化させる樹脂に応じた波長を用いればよい。型18の基板19に対向する面には、回路パターン等の転写すべきパターンが形成されている。型18の材質は、光20を透過させる材質、例えば石英等がよい。型保持部11は、型18を保持する不図示の型チャックと、型チャックを移動自在に保持する不図示の型駆動機構と、型18の形状を補正する不図示の倍率補正機構と、を備える。基板19は、シリコンウエハやSOI(Silicon on Insulaor)基板、またはガラス基板である。
【0014】
基板19上には、特定のショットレイアウトで配置されたパターン形成領域である複数のショットが存在し、それぞれのショットには、インプリント直前に吐出ノズル15から感光性樹脂21の液滴が吐出される。吐出された感光性樹脂21に、型18に形成されたパターンを押印することで、感光性樹脂21のパターンが基板19上に形成される。基板チャック12は、基板19を保持する。基板ステージ13は、基板19を移動可能に保持し、吐出ノズル15により感光性樹脂21を吐出した後、型18と基板19との位置合わせを行いながらインプリントを行う。吐出装置14は、感光性樹脂21を収納し、基板上に吐出する複数の吐出ノズル15から感光性樹脂21を吐出する。
【0015】
一連のインプリント動作は、インプリントショット位置への基板移動、樹脂の吐出/塗布、押印、位置合わせ、樹脂の硬化、離型、次のショット位置への移動の順に行われ、必要に応じてこの動作が繰り返される。
【0016】
図2は、吐出装置14を示した概略図である。吐出装置14は、吐出ノズル15、収納容器24、圧力調整部16、吐出装置制御部17、脱酸素部23、収納容器24内の圧力を計測する圧力検出部25を備えている。
【0017】
収納容器24には、感光性樹脂21が収容されており、収納容器24内において感光性樹脂21の上部にできた空間には気体22が収容されている。吐出装置14は、吐出装置制御部17で装置全体が制御され、圧力調整部16により収納容器内に気体22を供給して収納容器内の圧力を制御し、吐出ノズル15から感光性樹脂21が吐出される。吐出ノズル15はインクジェット技術を用いたものが好適である。
【0018】
圧力調整部16は、圧力検出部25の検出結果に基づいて、収納容器24内の液体状の感光性樹脂(感光性樹脂組成物、液体)の圧力を所定の圧力に維持するよう吐出装置制御部17によって制御される。インクジェット方式の吐出ノズル15において液滴を安定的に吐出するために、感光性樹脂の圧力を一定の微小負圧に保つことが求められる。そのため、収納容器24内の感光性樹脂は所定の圧力に制御され、その圧力は例えば-0.3kPaである。本実施形態では、吐出ノズル15の感光性樹脂の圧力を正確に計測するために吐出ノズル15と圧力検出部25とを略同一高さに設けている。なお、本実施形態では吐出ノズル15と圧力検出部25とを略同一高さに設けているが、吐出ノズル15内もしくは吐出ノズル15の近傍に圧力検出部25を設けてもよい。
【0019】
収納容器24内の気体22は、不活性ガスが望ましく、例えば、窒素、アルゴンなどが好適である。感光性樹脂21には主成分のモノマーに加えて、光重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などの添加剤が含まれる。これら添加剤などとの反応を防ぐために、気体22に不活性ガスを用いる。なお、本実施形態では不活性ガスを使用したが、不活性ガスに限らず、酸素を含有しない気体を使用してもよい。
【0020】
仮に、気体22が酸素を含有する気体である場合、感光性樹脂21の光重合開始剤と酸素とが反応することで重合反応が停止してしまう重合阻害が生じる虞がある。重合阻害が生じると、吐出後の感光性樹脂21で重合反応が停止し、感光性樹脂21の硬化が阻害される。収納容器24や配管類は、その素材にPTFEやPFAなどの樹脂を用いているため、気体が透過し得る。また、吐出装置14には、接合部があり、収納容器24内を完全密閉することは困難な場合がある。このように、収納容器24内には外部から空気と共に酸素が侵入し得る。その結果、感光性樹脂21と酸素とが接触し、重合阻害が生じる虞がある。
【0021】
そこで、本実施形態では、吐出装置14に、収納容器24内の気体22の酸素含有量を低下させる脱酸素部23を設けている。脱酸素部23には、任意の脱酸素装置を用いることができる。例えば、窒素ガスを用いる方法や、ヒドラジン等の脱酸素剤を用いた方法等を用いることができる。脱酸素部23は、収納容器24内の気体22を循環しつつ、気体22の酸素含有量を低下させることができる。また、脱酸素部23には酸素濃度計測機能が含まれ、脱酸素部23は、気体22の酸素濃度を、重合阻害を生じない酸素濃度である酸素濃度1%以下に維持するよう吐出装置制御部17によって制御される。一連のインプリント動作に基づいて、吐出ノズル15からの感光性樹脂21の吐出を繰り返すことで、収納容器24内の感光性樹脂21は減少する。樹脂21の減少に伴い、圧力調整部16から所定の制御に基づき気体22が供給される。
【0022】
このように、吐出装置14では、収納容器24内圧力、気体22の酸素濃度および気体循環の制御を行うことで、インプリントに最適な状態を維持した感光性樹脂21を吐出ノズル15から吐出することができる。
【0023】
なお、収納容器24内の圧力は、-0.3kPa程度の負圧に制御される。このように収納容器24内が負圧に制御されることで、収納されている感光性樹脂21は脱気される。感光性樹脂21が脱気されることで、吐出後にパターン欠陥を生じさせる可能性のある気泡を感光性樹脂21から除去することができる。
【0024】
図3(a)から(f)は、インプリント装置1における、物品の製造方法を工程順に示した図である。インプリント技術は、3次元構造が一括で形成可能であり、回折光学素子やバイオ系のチップ型検査素子の製造技術や、ナノメートルオーダーのパターン形成が可能なため、次世代半導体リソグラフィー技術等、広範な分野への適用が考えられる。
【0025】
インプリント装置1を用いて形成した3次元パターンは、各種の物品の少なくとも一部が恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に用いられる。ここで「物品」とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0026】
以下、工程順に、インプリント装置1における、物品の製造方法を説明する。まず、図3(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1z(被加工材2zとシリコンウエハ等の基板1zとを合わせて基板19(図1参照))を用意する。続いてインクジェット法等により、被加工材2zの表面に、(脱酸素工程で)酸素が低減されたインプリント材である感光性樹脂21を付与する(吐出工程)。ここでは、複数の液滴状になった感光性樹脂21が基板上に付与された様子を示している。次に、図3(b)に示すように、インプリント用の型18の凹凸パターンが形成された側を、基板上の感光性樹脂21と対向させる。
【0027】
そして、図3(c)に示すように、感光性樹脂21が付与された基板1zに型18を押印する(押印工程)。感光性樹脂21は、型18と被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を、型18を透して照射する。これによって、重合反応が開始され、感光性樹脂21は硬化する。感光性樹脂21は酸素との接触が抑制されているため、重合阻害が生じることなく硬化する。その後、図3(d)に示すように、感光性樹脂21を硬化させた後、型18と基板1zとを離型すると、基板1z上に感光性樹脂21のパターンが形成される。このパターンは、型18の凹部がパターンの凸部に、凸部がパターンの凹部に対応した形状になっている。即ち、感光性樹脂21に型18の凹凸パターンが転写される。
【0028】
凹凸パターンの転写後、図3(e)に示すように、パターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、パターンが無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zが形成される。その後、図3(f)に示すように、感光性樹脂21のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここではパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0029】
このように、吐出装置14は、収納容器24内の気体22の酸素濃度を所望の濃度にする脱酸素部23を備える。これによって、構成が簡易であり、収納容器内で感光性樹脂と酸素との接触を抑制することができるインプリント装置および物品の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 インプリント装置
14 吐出装置
15 吐出ノズル
16 圧力調整部
21 感光性樹脂
23 脱酸素部
24 収納容器
25 圧力計測部
図1
図2
図3