(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ロータ、モータ、ファン、空気調和装置、及びロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2706 20220101AFI20241007BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20241007BHJP
H02K 21/16 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H02K1/2706
H02K15/03 G
H02K21/16 M
(21)【出願番号】P 2020533992
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2018029008
(87)【国際公開番号】W WO2020026406
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-08-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】麻生 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】下川 貴也
(72)【発明者】
【氏名】尾屋 隼一郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 直己
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】関口 哲生
【審判官】米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特許第3236578(JP,B2)
【文献】特開平11-299207(JP,A)
【文献】特開2013-162697(JP,A)
【文献】特開平2-311147(JP,A)
【文献】特開2013-219896(JP,A)
【文献】特開2000-287430(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046953(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/27
H02K15/03
H02K21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極異方配向を持つ第1の磁束発生部と、ラジアル配向を持つ
、ロータの回転位置の検出用の位置検出磁束発生部である第2の磁束発生部とを有する樹脂マグネットと、
前記樹脂マグネットに固定されたシャフトと
を備え、
前記第1の磁束発生部からの磁束密度のピークは、前記第2の磁束発生部からの磁束密度のピークよりも大きく、
前記第1の磁束発生部の外径をr1とし、前記第2の磁束発生部の外径をr2としたとき、r1>r2を満たす
ロータ。
【請求項2】
前記第2の磁束発生部は、軸方向における前記樹脂マグネットの端部に位置する請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記第1の磁束発生部は、
前記樹脂マグネットがモータのステータ鉄心の内側に配置されたときに、径方向において前記ステータ鉄心と対向する対向領域と、
前記樹脂マグネットが前記モータの前記ステータ鉄心の前記内側に配置されたときに、前記径方向において前記ステータ鉄心と対向しない非対向領域と
を含む
請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項4】
前記非対向領域は、
軸方向において前記第2の磁束発生部とは反対側に位置する第1の領域と、
前記軸方向において前記第2の磁束発生部と前記対向領域との間に位置する第2の領域と
を含む請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記第1の領域からの磁束密度のピークは、前記第2の磁束発生部からの磁束密度のピークよりも大きい請求項4に記載のロータ。
【請求項6】
前記対向領域からの磁束密度のピークは、前記第1の領域からの磁束密度のピークよりも大きい請求項4又は5に記載のロータ。
【請求項7】
周方向において前記第2の磁束発生部からの磁束の向きの変化は、前記第1の磁束発生部からの磁束の向きの変化よりも早い請求項1から6のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項8】
前記樹脂マグネットは、軸方向における前記樹脂マグネットの両端に形成されたゲート部を有する請求項1から7のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項9】
前記樹脂マグネットの両端に形成されたゲート部の位置は、周方向において互いに異なる請求項8に記載のロータ。
【請求項10】
前記樹脂マグネットは、周方向において前記第2の磁束発生部の極間部の位置と一致する位置に形成された突起を有する請求項1から9のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項11】
樹脂マグネットと前記樹脂マグネットに固定されたシャフトとを有するロータと、
ステータと
を備え、
前記樹脂マグネットは、
極異方配向を持つ第1の磁束発生部と、
ラジアル配向を持つ
、前記ロータの回転位置の検出用の位置検出磁束発生部である第2の磁束発生部と
を有し、
前記第1の磁束発生部からの磁束密度のピークは、前記第2の磁束発生部からの磁束密度のピークよりも大きく、
前記第1の磁束発生部の外径をr1とし、前記第2の磁束発生部の外径をr2としたとき、r1>r2を満たす
モータ。
【請求項12】
前記ロータの回転位置を検出する位置検出素子をさらに備える請求項11に記載のモータ。
【請求項13】
前記第1の磁束発生部は極異方配向を持ち、前記第2の磁束発生部はラジアル配向を持つ請求項12に記載のモータ。
【請求項14】
前記位置検出素子は、径方向において前記第2の磁束発生部と対向している請求項13に記載のモータ。
【請求項15】
羽根と、
前記羽根を駆動させるモータと
を備え、
前記モータは、
樹脂マグネットと前記樹脂マグネットに固定されたシャフトとを有するロータと、
ステータと
を有し、
前記樹脂マグネットは、
極異方配向を持つ第1の磁束発生部と、
ラジアル配向を持つ
、前記ロータの回転位置の検出用の位置検出磁束発生部である第2の磁束発生部と
を有し、
前記第1の磁束発生部からの磁束密度のピークは、前記第2の磁束発生部からの磁束密度のピークよりも大きく、
前記第1の磁束発生部の外径をr1とし、前記第2の磁束発生部の外径をr2としたとき、r1>r2を満たす
ファン。
【請求項16】
室内機と、
前記室内機に接続された室外機と
を備え、
前記室内機及び前記室外機の少なくとも1つはモータを有し、
前記モータは、
樹脂マグネットと前記樹脂マグネットに固定されたシャフトとを有するロータと、
ステータと
を有し、
前記樹脂マグネットは、
極異方配向を持つ第1の磁束発生部と、
ラジアル配向を持つ
、前記ロータの回転位置の検出用の位置検出磁束発生部である第2の磁束発生部と
を有し、
前記第1の磁束発生部からの磁束密度のピークは、前記第2の磁束発生部からの磁束密度のピークよりも大きく、
前記第1の磁束発生部の外径をr1とし、前記第2の磁束発生部の外径をr2としたとき、r1>r2を満たす
空気調和装置。
【請求項17】
樹脂マグネット及びシャフトを有するロータの製造方法であって、
前記樹脂マグネットを作製するステップと、
極異方配向を持つように前記樹脂マグネットの一部を着磁するステップと、
ラジアル配向を持つように前記樹脂マグネットの他の一部を着磁するステップと、
前記樹脂マグネットにシャフトを固定するステップと
を備え、
前記樹脂マグネットの前記一部である第1の磁束発生部の外径をr1とし、前記樹脂マグネットの前記他の一部である
とともに前記ロータの回転位置の検出用の位置検出磁束発生部である第2の磁束発生部の外径をr2としたとき、r1>r2を満たす
ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータのロータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのロータに用いられる樹脂マグネットとして、主磁極部とロータの回転位置の検出用のセンサ用磁極部とを備えた樹脂マグネットが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のロータでは、センサ用磁極部の外径を主磁極部の内径よりも小さくすることにより磁石ボリュームを低減させている。これにより、ロータ及びモータのコストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、回転方向におけるロータからの磁束の分布が正弦波である場合、トルクリップルが減少し、モータにおける騒音を低減することができる。しかしながら、ロータの回転位置を検出する位置検出素子に流入する磁束の分布(すなわち、検出値の波形)が正弦波である場合、ロータの回転位置の検出精度が悪いという問題がある。一方、特許文献1に記載のロータのように、センサ用磁極部の配向(磁場配向ともいう)が等方性である場合、ロータからの磁束が位置検出素子へ流入されにくいため、ロータの回転位置の検出精度が悪いという問題がある。したがって、従来の技術では、モータにおける騒音の低減及びロータの回転位置の検出精度の向上の両立が困難である。
【0005】
本発明の目的は、モータにおける騒音を低減するとともに、ロータの回転位置の検出精度を向上させることができるロータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータは、極異方配向を持つ第1の磁束発生部とラジアル配向を持つ、ロータの回転位置の検出用の位置検出磁束発生部である第2の磁束発生部とを有する樹脂マグネットと、前記樹脂マグネットに固定されたシャフトとを備え、前記第1の磁束発生部からの磁束密度のピークは、前記第2の磁束発生部からの磁束密度のピークよりも大きく、前記第1の磁束発生部の外径をr1とし、前記第2の磁束発生部の外径をr2としたとき、r1>r2を満たす。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モータにおける騒音を低減するとともに、ロータの回転位置の検出精度を向上させることができるロータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るモータの構造を概略的に示す部分断面図である。
【
図2】ロータの構造を概略的に示す部分断面図である。
【
図3】樹脂マグネットの構造を概略的に示す上面図である。
【
図4】
図3に示される、線C4-C4に沿った樹脂マグネットの断面図である。
【
図5】
図3に示される、線C4-C4に沿った樹脂マグネットの断面図である。
【
図6】樹脂マグネットの構造を概略的に示す下面図である。
【
図8】樹脂マグネットの磁場配向である、第1の配向及び第2の配向を示す図である。
【
図9】周方向における主磁束発生部及び位置検出磁束発生部からの磁束密度分布を示すグラフである。
【
図10】樹脂マグネットからの磁束密度分布を示すグラフである。
【
図11】モータの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【
図12】モータの製造方法における着磁工程の一例を示す図である。
【
図13】変形例に係るモータの構造を概略的に示す部分断面図である。
【
図14】変形例に係るモータにおける樹脂マグネットの磁場配向である、第1の配向及び第2の配向を示す図である。
【
図15】変形例に係るモータの製造方法における着磁工程の一例を示す図である。
【
図16】本発明の実施の形態2に係るファンの構造を概略的に示す図である。
【
図17】本発明の実施の形態3に係る空気調和装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
各図に示されるxyz直交座標系において、z軸方向(z軸)は、モータ1の軸線Axと平行な方向を示し、x軸方向(x軸)は、z軸方向(z軸)に直交する方向を示し、y軸方向(y軸)は、z軸方向及びx軸方向の両方に直交する方向を示す。軸線Axは、ロータ2の回転中心である。軸線Axと平行な方向は、「ロータ2の軸方向」又は単に「軸方向」ともいう。径方向は、軸線Axと直交する方向である。「周方向」とは、軸線Axを中心とするロータ2及び樹脂マグネット21の周方向を示す。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態1に係るモータ1の構造を概略的に示す部分断面図である。
モータ1は、ロータ2と、ステータ3と、位置検出素子4(磁極位置検出素子ともいう)とを有する。モータ1は、モールド電動機ともいう。
【0011】
図1に示される例では、モータ1は、さらに、プリント基板40と、駆動回路42と、樹脂5と、ベアリング6a及び6bと、ブラケット7とを有する。
【0012】
モータ1は、例えば、永久磁石同期モータなどの永久磁石モータである。ただし、モータ1は、永久磁石モータに限定されない。
【0013】
図2は、ロータ2の構造を概略的に示す部分断面図である。
ロータ2は、樹脂マグネット21と、シャフト22とを有する。ロータ2は、回転軸(すなわち、軸線Ax)を中心として回転自在である。ロータ2は、ステータ3の内側に、空隙を介して回転自在に配置されている。シャフト22は、樹脂マグネット21に固定されている。ベアリング6a及び6bは、ロータ2のシャフト22の両端を回転自在に支持する。
【0014】
樹脂マグネット21は、フェライト又はサマリウム-鉄-窒素などの磁粉を、ナイロン12又はナイロン6などの熱可塑性樹脂と混合させることにより形成されている。
【0015】
樹脂マグネット21は、軸方向においてステータ3よりも長い。これにより、モータ効率を高めることができる。
【0016】
図3は、樹脂マグネット21の構造を概略的に示す上面図である。
図4及び
図5は、
図3に示される、線C4-C4に沿った樹脂マグネット21の断面図である。
樹脂マグネット21は、第1の磁束発生部としての主磁束発生部21aと、第2の磁束発生部としての位置検出磁束発生部21bとを有する。主磁束発生部21a及び位置検出磁束発生部21bは、互いに異なる配向を持つ。
【0017】
図4に示されるように、主磁束発生部21aは、対向領域211と非対向領域212とを含む。対向領域211は、樹脂マグネット21がモータ1のステータ鉄心31の内側に配置されたときに、径方向においてステータ鉄心31と対向する。非対向領域212は、樹脂マグネット21がモータ1のステータ鉄心31の内側に配置されたときに、径方向においてステータ鉄心31と対向しない。
【0018】
図4に示されるように、非対向領域212は、第1の領域212aと第2の領域212bとを含む。第1の領域212aは、軸方向において位置検出磁束発生部21bとは反対側に位置する。第2の領域212bは、軸方向において位置検出磁束発生部21bと対向領域211との間に位置する。
【0019】
図6は、樹脂マグネット21の構造を概略的に示す下面図である。
図7は、ロータ2、具体的には、樹脂マグネット21の磁極を示す図である。
図6及び7において「N」はN極を示し、「S」はS極を示す。
【0020】
図6及び
図7に示される例では、樹脂マグネット21のハッチングされている部分がN極として機能し、樹脂マグネット21のハッチングされていない部分がS極として機能する。
【0021】
樹脂マグネット21は、互いに異なる2種類の磁場配向、具体的には、互いに異なる第1の配向R1及び第2の配向R2を持つ。具体的には、樹脂マグネット21は、第1の配向R1を持つ第1の磁束発生部としての主磁束発生部21aと、径方向(すなわち、xy平面)において第1の配向R1とは異なる第2の配向R2を持つ第2の磁束発生部としての位置検出磁束発生部21bとを有する。
【0022】
主磁束発生部21aは、第1の磁極中心A1及び第1の極間部B1を持つ。第1の磁極中心A1は、単に磁極中心ともいう。第1の極間部B1は、単に極間部ともいう。位置検出磁束発生部21bは、第2の磁極中心A2及び第2の極間部B2を持つ。第2の磁極中心A2は、単に磁極中心ともいう。第2の極間部B2は、単に極間部ともいう。
【0023】
磁極中心とは、樹脂マグネット21の磁極の中心、例えば、N極の中心又はS極の中心を示す。すなわち、第1の磁極中心A1は主磁束発生部21aの磁極の中心を示し、第2の磁極中心A2は、位置検出磁束発生部21bの磁極の中心を示す。
【0024】
極間部とは、N極とS極との境界である。すなわち、第1の極間部B1は主磁束発生部21aのN極とS極との境界であり、第2の極間部B2は位置検出磁束発生部21bのN極とS極との境界である。
【0025】
図3から
図7に示される例では、主磁束発生部21aは円筒形状であり、位置検出磁束発生部21bも円筒形状である。
【0026】
位置検出磁束発生部21bは、位置検出素子4と対向するように、軸方向における樹脂マグネット21の端部に位置する。したがって、位置検出磁束発生部21bは、主磁束発生部21aと位置検出素子4との間に位置する。
【0027】
主磁束発生部21a又は位置検出磁束発生部21bの内側表面に、シャフト22(例えば、シャフト22の表面に形成された溝)と係合する突起が形成されていてもよい。これにより、樹脂マグネット21の位置ずれを防ぐことができる。
【0028】
図4から
図6に示されるように、樹脂マグネット21は、少なくとも1つのゲート部21dを有する。ゲート部21dは、単に「ゲート」とも言う。
【0029】
図4から
図6に示される例では、軸方向における樹脂マグネット21の端部にゲート部21dが形成されている。具体的には、各第1の極間部B1にゲート部21dが形成されている。位置検出磁束発生部21bは、軸方向においてゲート部21dとは反対側に位置する。これにより、第1の配向R1と第2の配向R2との差異を顕著にすることができる。
【0030】
ゲート部21dは、金型を用いた樹脂マグネット21の成形工程において金型のゲート位置に形成されたゲート跡である。
図4から
図6に示される例では、ゲート部21dは凹部である。これにより、互いに異なる第1の配向R1及び第2の配向R2を容易に形成することができる。
【0031】
さらに、軸方向における樹脂マグネット21の両端にゲート部21dが形成されていてもよい。この場合、樹脂マグネット21の両端に形成されたゲート部21dの位置は、周方向において互いに異なる。これにより、互いに異なる第1の配向R1及び第2の配向R2をさらに容易に形成することができる。
【0032】
図3及び
図7に示されるように、樹脂マグネット21は、位置検出素子4に向けて突出した少なくとも1つの突起21cを有する。
図3及び
図7に示される例では、樹脂マグネット21は複数の突起21cを有する。各突起21cは、周方向において第2の極間部B2の位置と一致する位置に形成されている。
【0033】
これにより、樹脂マグネット21の第2の極間部B2が位置検出素子4を通過するとき、位置検出素子4に流入する磁束の向きを急峻に変化させることができる。すなわち、位置検出素子4によって検出される第2の極間部B2(すなわち、N極からS極又はS極からN極への変化点)の検出精度を向上させることができる。その結果、ロータ2(具体的には、樹脂マグネット21)の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0034】
図5に示されるように、主磁束発生部21aの外径をr1とし、位置検出磁束発生部21bの外径をr2としたとき、r1及びr2の関係は、r1≧r2を満たす。これにより、主磁束発生部21aに対する着磁工程において、主磁束発生部21aに対する着磁用の永久磁石Mg1(後述する
図12)で位置検出磁束発生部21bが着磁されることを防ぐことができる。すなわち、主磁束発生部21aに対する着磁工程において、位置検出磁束発生部21bの配向(すなわち、第2の配向R2)に対する影響を小さくすることができる。その結果、位置検出磁束発生部21bからの磁束の検出精度、すなわち、ロータ2(具体的には、樹脂マグネット21)の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0035】
さらに、r1及びr2の関係は、r1>r2を満たすことが望ましい。これにより、主磁束発生部21aに対する着磁工程において、位置検出磁束発生部21bの配向に対する影響をさらに小さくすることができる。その結果、位置検出磁束発生部21bからの磁束の検出精度をさらに向上させることができる。
【0036】
図8は、樹脂マグネット21の磁場配向である、第1の配向R1及び第2の配向R2を示す図である。
図8に示される例では、xy平面(具体的には、
図3に示される、線C4-C4に沿った面)における磁場配向、すなわち、第1の配向R1及び第2の配向R2を示す。
図9は、周方向における主磁束発生部21a及び位置検出磁束発生部21bからの磁束密度分布を示すグラフである。
図9において縦軸は磁束密度[任意単位]を示し、横軸はロータ2における電気角[度]を示す。
【0037】
主磁束発生部21aは、第1の配向R1を持つように着磁されている。
図8に示される例では、第1の配向R1は、極異方配向である。周方向における主磁束発生部21aの磁束密度分布は、
図9において波形m1で示される。すなわち、主磁束発生部21aは、位置検出素子4によって検出される磁束の検出値が正弦波となるように着磁されている。すなわち、第1の配向R1は、位置検出素子4によって検出される磁束の検出値が正弦波となる配向である。
【0038】
位置検出磁束発生部21bは、第2の配向R2を持つように着磁されている。すなわち、主磁束発生部21a及び位置検出磁束発生部21bは、互いに異なる配向を持つ。例えば、第2の配向R2は、径方向(すなわち、xy平面)において第1の配向R1と異なる。
図8に示される例では、第2の配向R2は、
ラジアル配向である。周方向における位置検出磁束発生部21bの磁束密度分布は、
図9において波形m2で示される。すなわち、位置検出磁束発生部21bは、位置検出素子4によって検出される磁束の検出値が矩形波となるように着磁されている。すなわち、第2の配向R2は、位置検出素子4によって検出される磁束の検出値が矩形波となる配向である。
【0039】
図9に示されるように、波形m1で示される磁束密度のピークは、波形m2で示される磁束密度のピークよりも大きい。第2の極間部B2(
図9では、180度、365度、及び540度付近)における波形m2の傾きは、第1の極間部B1(
図9では、180度、365度、及び540度付近)における波形m1の傾きよりも大きい。言い換えると、位置検出素子4によって検出される第2の極間部B2の位置を示す波形m2の傾きは、位置検出素子4によって検出される第1の極間部B1の位置を示す波形m1の傾きよりも大きい。
【0040】
すなわち、周方向において、位置検出磁束発生部21bからの磁束の向きの変化(すなわち、N極からS極又はS極からN極)は、主磁束発生部21aからの磁束の向きの変化(すなわち、N極からS極又はS極からN極)よりも早い。したがって、主磁束発生部21aからの位置検出磁束発生部21bの磁束への影響、すなわち、モータ1の騒音を低減することができる。さらに、位置検出素子4を用いて第2の極間部B2の位置を検出することにより、ロータ2の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0041】
図10は、樹脂マグネット21からの磁束密度分布を示すグラフである。
図10において縦軸は径方向における磁束密度[任意単位]を示し、横軸は軸方向における樹脂マグネット21の位置を示す。
【0042】
金型を用いた樹脂マグネット21の成形において、ゲートの反対側に位置する第2の領域212bでは、樹脂マグネット21の材料の粘度が上がるため、磁束密度が下がる。したがって、ゲート部21dを有する第1の領域212aからの磁束密度のピークP1は、第2の領域212bからの磁束密度のピークよりも大きい。
【0043】
主磁束発生部21aからの磁束密度のピークP2は、位置検出磁束発生部21bからの磁束密度のピークP3よりも大きい。これにより、モータ1における騒音を低減するとともに、ロータ2の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0044】
対向領域211からの磁束密度のピークP2は、非対向領域212の第1の領域212aからの磁束密度のピークP1よりも大きい。第1の領域212aからの磁束は、通常、乱れやすい。しかしながら、ピークP1及びP2の関係は、P2>P1を満たすので、対向領域211からステータ鉄心31に流入する磁束を増加させることができる。その結果、対向領域211からステータ鉄心31に流入する磁束の割合を増加させることができ、第1の領域212aからの磁束の乱れの影響を低減することができる。
【0045】
非対向領域212の第1の領域212aからの磁束密度のピークP1は、位置検出磁束発生部21bからの磁束密度のピークP3よりも大きい。これにより、モータ1における騒音を低減するとともに、ロータ2の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0046】
ステータ3は、ステータ鉄心31と、巻線32と、絶縁部としてのインシュレータ33とを有する。ステータ鉄心31は、例えば、複数の電磁鋼板で形成されている。この場合、複数の電磁鋼板は軸方向に積層されている。複数の電磁鋼板の各々は、打ち抜き処理によって、予め定められた形状に形成され、かしめ、溶接、又は接着等によって互いに固定される。
【0047】
図1に示されるように、モータ1は、プリント基板40と、プリント基板40に接続されたリード線41と、プリント基板40の表面に固定された駆動回路42とを有してもよい。この場合、位置検出素子4は、樹脂マグネット21、具体的には、位置検出磁束発生部21bと対向するようにプリント基板40に取り付けられている。
【0048】
巻線32は、例えば、マグネットワイヤである。巻線32を、ステータ鉄心31と組み合わされたインシュレータ33に巻回することによりコイルが形成される。巻線32の端部は、ヒュージング又は半田などによってプリント基板40に取り付けられた端子に接続されている。
【0049】
インシュレータ33は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂である。インシュレータ33は、ステータ鉄心31を電気的に絶縁する。インシュレータ33は、例えば、ステータ鉄心31と一体に成形される。ただし、予めインシュレータ33を成形し、成形されたインシュレータ33をステータ鉄心31と組み合わせてもよい。
【0050】
駆動回路42は、ロータ2の回転を制御する。駆動回路42は、例えば、パワートランジスタである。駆動回路42は、巻線32と電気的に接続されており、モータ1の外部又は内部(例えば、バッテリ)から供給された電流に基づくコイル電流を巻線32に供給する。これにより、駆動回路42は、ロータ2の回転を制御する。
【0051】
位置検出素子4は、径方向において樹脂マグネット21と対向している。具体的には、位置検出素子4は、径方向において位置検出磁束発生部21bと対向している。位置検出素子4は、第2の極間部B2の位置を検出する。具体的には、位置検出素子4は、位置検出磁束発生部21bからの磁束の向きの変化(すなわち、N極からS極又はS極からN極)を検出することにより、ロータ2の磁極の位置、すなわち、ロータ2の回転位置を検出する。位置検出素子4は、例えば、ホールICである。
【0052】
樹脂5は、例えば、BMC(バルクモールディングコンパウンド)などの熱硬化性樹脂である。ステータ3及びプリント基板40は、樹脂5によって一体化されている。このプリント基板40には位置検出素子4が取り付けられている。したがって、位置検出素子4も樹脂5によってステータ3と一体化されている。プリント基板40(位置検出素子4を含む)及びステータ3を固定子組立と称する。プリント基板40(位置検出素子4を含む)、ステータ3、及び樹脂5をモールド固定子と称する。
【0053】
モータ1の製造方法の一例について以下に説明する。モータ1の製造方法は、ロータの製造方法(例えば、ステップS4からS6)を含む。
図11は、モータ1の製造工程の一例を示すフローチャートである。本実施の形態では、モータ1の製造方法は、以下に説明されるステップを含む。しかしながら、モータ1の製造方法は、本実施の形態に限られない。
【0054】
ステップS1では、ステータ3を作製する。例えば、複数の電磁鋼板を軸方向に積層することにより、ステータ鉄心31を形成する。さらに、ステータ鉄心31に、予め形成されたインシュレータ33を取り付け、ステータ鉄心31及びインシュレータ33に巻線32を巻き付ける。これにより、ステータ3が得られる。
【0055】
ステップS2では、固定子組立を作製する。例えば、プリント基板40の位置決め穴に、インシュレータ33の突起を挿入する。これにより、プリント基板40が位置決めされ、固定子組立が得られる。本実施の形態では、プリント基板40の表面には、位置検出素子4及び駆動回路42が予め固定されている。リード線41も、プリント基板40に予め取り付けておくことが望ましい。熱溶着又は超音波溶着などによって、プリント基板40の位置決め穴から突出したインシュレータ33の突起を、プリント基板40に固定してもよい。
【0056】
ステップS3では、樹脂マグネット21と対向するように位置検出素子4を配置する。具体的には、ステップS3では、樹脂5を用いてプリント基板40をステータ3と一体化させる。この場合、プリント基板40上の位置検出素子4が樹脂マグネット21、具体的には、位置検出磁束発生部21bと対向する位置にプリント基板40を配置する。例えば、ステータ3及びプリント基板40を、金型に配置し、樹脂5の材料(例えば、バルクモールディングコンパウンドなどの熱硬化性樹脂)を金型に注入する。これにより、モールド固定子が得られる。
【0057】
ステップS4では、樹脂マグネット21を作製する。フェライト又はサマリウム-鉄-窒素などの磁粉を、ナイロン12又はナイロン6などの熱可塑性樹脂と混合させ、金型を用いて樹脂マグネット21の成形を行う。これにより、上述の構造を持つ樹脂マグネット21を作製する。
【0058】
図12は、ステップS5における着磁工程の一例を示す図である。
ステップS5では、樹脂マグネット21を着磁する。
図12に示されるように、第1の配向ヨーク(第1の着磁ヨークともいう)としての着磁用の永久磁石Mg1を樹脂マグネット21の主磁束発生部21aの外周面に対向するように配置し、第2の配向ヨーク(第2の着磁ヨークともいう)としての着磁用の永久磁石Mg2を、径方向において樹脂マグネット21の位置検出磁束発生部21bと対向するように配置する。この状態において、樹脂マグネット21の一部である主磁束発生部21a及び樹脂マグネット21の他の一部である位置検出磁束発生部21bを、上述の構造を持つように同時に着磁する。すなわち、永久磁石Mg1用いて第1の配向R1を持つように主磁束発生部21aを着磁し、永久磁石Mg2を用いて第2の配向R2を持つように位置検出磁束発生部21bを着磁する。
【0059】
ステップS5において、永久磁石Mg1の代わりに着磁コイルを第1の配向ヨークとして用いても良く、永久磁石Mg2の代わりに着磁コイルを第2の配向ヨークとして用いても良い。
【0060】
ステップS6では、ロータ2を作製する。例えば、樹脂マグネット21に形成された軸穴にシャフト22を挿入し、樹脂マグネット21にシャフト22を固定する。例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などの熱可塑性樹脂でシャフト22を樹脂マグネット21と一体化させる。これにより、ロータ2を得る。樹脂マグネット21及びシャフト22は、互いに異なる材料でもよく、互いに同じ材料でもよい。樹脂マグネット21及びシャフト22は、同じ材料で一体的に成形されてもよい。
【0061】
ステップS7では、シャフト22をベアリング6a及び6bに挿入する。
【0062】
ステップS8では、固定子組立(具体的には、ステータ3)の内側に、ロータ2をベアリング6a及び6bと共に挿入する。これにより、ステータ3の内側にロータ2(具体的には、樹脂マグネット21)を配置する。
【0063】
ステップS9では、モールド固定子(具体的には、樹脂5)の内側にブラケット7を嵌める。
【0064】
ステップS1からステップS9までの順序は、
図11に示される順序に限られない。例えば、ステップS1からステップS3までのステップと、ステップS4からステップS7までのステップとは、互いに並行して行うことができる。ステップS4からステップS7までのステップは、ステップS1からステップS3までのステップよりも先に行われてもよい。
【0065】
以上に説明した工程によりモータ1が組み立てられる。
【0066】
実施の形態1に係るモータ1によれば、主磁束発生部21aからの磁束密度のピークP2は、位置検出磁束発生部21bからの磁束密度のピークP3よりも大きい。これにより、モータ1における騒音を低減するとともに、ロータ2の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0067】
ロータ2は、互いに異なる第1の配向R1及び第2の配向R2を持つ。具体的には、第1の配向R1は、位置検出素子4によって検出される磁束の検出値が正弦波となる配向であるので、モータ1の騒音を低減することができ、第2の配向R2は、位置検出素子4によって検出される磁束の検出値が矩形波となる配向であるので、ロータ2の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0068】
さらに、極間部付近における波形m2の傾きは波形m1の傾きよりも大きい。すなわち、位置検出磁束発生部21bからの磁束の向きの変化(すなわち、N極からS極又はS極からN極)は、主磁束発生部21aからの磁束の向きの変化(すなわち、N極からS極又はS極からN極)よりも早い。したがって、位置検出素子4を用いて第2の極間部B2の位置を検出することにより、ロータ2の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0069】
さらに、非対向領域212の第1の領域212aからの磁束密度のピークP1は、位置検出磁束発生部21bからの磁束密度のピークP3よりも大きい。これにより、モータ1における騒音を低減するとともに、ロータ2の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0070】
さらに、対向領域211からの磁束密度のピークP2は、非対向領域212の第1の領域212aからの磁束密度のピークP1よりも大きい。これにより、対向領域211からステータ鉄心31に流入する磁束の割合を増加させることができ、第1の領域212aからの磁束の乱れの影響を低減することができる。
【0071】
さらに、位置検出素子4は、径方向において位置検出磁束発生部21bと対向するように配置されている。これにより、モータ1をより小型化することができる。この場合でも、第2の配向R2がラジアル配向であるので、位置検出磁束発生部21bからの磁束が位置検出素子4に流入しやすい。その結果、ロータ2の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0072】
r1及びr2の関係が、r1≧r2を満たすとき、主磁束発生部21aに対する着磁工程において、主磁束発生部21aに対する着磁用の永久磁石Mg1で位置検出磁束発生部21bが着磁されることを防ぐことができる。その結果、位置検出磁束発生部21bからの磁束の検出精度、すなわち、ロータ2(具体的には、樹脂マグネット21)の磁極の位置の検出精度を向上させることができる。
【0073】
樹脂マグネット21は、周方向において第2の極間部B2の位置と一致する位置に、位置検出素子4に向けて突出した突起を有する。これにより、樹脂マグネット21の第2の極間部B2が位置検出素子4を通過するとき、位置検出素子4に流入する磁束の向きを急峻に変化させることができる。すなわち、位置検出素子4によって検出される第2の極間部B2(すなわち、N極からS極又はS極からN極への変化点)の検出精度を向上させることができる。その結果、ロータ2(具体的には、樹脂マグネット21)の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0074】
実施の形態1に係るモータ1の製造方法及びロータ2の製造方法によれば、主磁束発生部21aに対する着磁及び位置検出磁束発生部21bに対する着磁を同時に行うので、製造工程を簡素化することができる。
【0075】
変形例.
図13は、変形例に係るモータ1aの構造を概略的に示す部分断面図である。
モータ1aでは、位置検出素子4は、軸方向において樹脂マグネット21と対向している。具体的には、位置検出素子4は、軸方向において位置検出磁束発生部21bと対向している。すなわち、モータ1aの位置検出素子4に関し、位置検出素子4の位置が実施の形態1と異なる。
図14は、モータ1aにおける樹脂マグネット21の磁場配向である、第1の配向R1及び第2の配向R2を示す図である。
図14に示される例では、xz平面(具体的には、
図3に示される、線C4-C4に沿った面)における磁場配向、すなわち、第1の配向R1及び第2の配向R2を示す。第2の配向R2は、径方向において第1の配向R1と異なる。モータ1aでは、第1の配向R1は極異方配向であり、第2の配向R2はアキシャル配向である。すなわち、モータ1aでは、第2の配向R2が実施の形態1と異なる。
モータ1aにおいて、その他の特徴は、実施の形態1と同じである。
【0076】
変形例に係るモータ1aによれば、実施の形態1で説明した効果と同じ効果を得ることができる。さらに、位置検出素子4は、軸方向において樹脂マグネット21、具体的には、位置検出磁束発生部21bと対向しているので、主磁束発生部21aからの磁束が位置検出素子4に流入することを低減することができ、位置検出磁束発生部21bからの磁束の検出精度を向上させることができる。その結果、ロータ2の回転位置の検出精度を向上させることができる。
【0077】
さらに、位置検出素子4が軸方向において位置検出磁束発生部21bと対向する場合、プリント基板40に位置検出素子4を取り付けることができる。これにより、モータ1aを小型化することができ、モータ1aのコストを低減することができる。
【0078】
変形例に係るモータ1aの製造方法及びロータ2の製造方法では、樹脂マグネット21の着磁工程が、モータ1の製造工程におけるステップS5と異なる。具体的には、変形例に係るモータ1aの製造方法では、主磁束発生部21aに対する着磁及び位置検出磁束発生部21bに対する着磁を別々に行う。
【0079】
図15は、変形例に係るモータ1aの製造方法における着磁工程の一例を示す図である。
図15に示されるように、主磁束発生部21aに対する着磁工程では、第1の配向ヨーク(第1の着磁ヨークともいう)としての着磁用の永久磁石Mg1を樹脂マグネット21の主磁束発生部21aの外周面に対向するように配置し、永久磁石Mg1を用いて第1の配向R1を持つように樹脂マグネット21の一部である主磁束発生部21aを着磁する。
【0080】
主磁束発生部21aに対する着磁工程の後、位置検出磁束発生部21bに対する着磁を行う。
図15に示されるように、位置検出磁束発生部21bに対する着磁工程では、第2の配向ヨーク(第2の着磁ヨークともいう)としての着磁用の永久磁石Mg2を、軸方向において位置検出磁束発生部21bと対向するように配置し、永久磁石Mg2を用いて第2の配向R2を持つように樹脂マグネット21の他の一部である位置検出磁束発生部21bを着磁する。
【0081】
これにより、第1の配向R1を持つように樹脂マグネット21の一部である主磁束発生部21aが着磁され、径方向において第1の配向R1とは異なる第2の配向R2を持つように樹脂マグネット21の他の一部である位置検出磁束発生部21bが着磁される。
【0082】
主磁束発生部21aに対する着磁工程及び位置検出磁束発生部21bに対する着磁工程以外の工程は、
図11に示されるステップS1からS4及びステップS6からS9と同じである。
【0083】
変形例に係るモータ1aの製造方法及びロータ2の製造方法によれば、第1の配向R1を持つ主磁束発生部21aを着磁する工程と第2の配向R2を持つ位置検出磁束発生部21bを着磁する工程とを別々に行うので、第1の配向R1と第2の配向R2との違いをはっきりと区別することができる。具体的には、永久磁石Mg2を、軸方向において樹脂マグネット21の位置検出磁束発生部21bと対向するように配置し、位置検出磁束発生部21bに対して着磁を行う。これにより、軸方向に流れる磁束密度を大きくすることができる。その結果、樹脂マグネット21の磁力を高めると共に、ロータ2(具体的には、樹脂マグネット21)の回転位置の検出精度を高めることができる。これにより、モータ1aにおける騒音を低減するとともに、ロータ2の回転位置の検出精度を向上させることができるロータ2を提供することができる。
【0084】
実施の形態2.
図16は、本発明の実施の形態2に係るファン60の構造を概略的に示す図である。
ファン60は、羽根61と、モータ62とを有する。ファン60は、送風機とも言う。モータ62は、実施の形態1に係るモータ1(変形例を含む)である。羽根61は、モータ62のシャフト(例えば、実施の形態1におけるシャフト22)に固定されている。モータ62は、羽根61を駆動させる。モータ62が駆動すると、羽根61が回転し、気流が生成される。これにより、ファン60は送風することができる。
【0085】
実施の形態2に係るファン60によれば、モータ62に実施の形態1で説明したモータ1(変形例を含む)が適用されるので、実施の形態1で説明した効果と同じ効果を得ることができる。これにより、ファン60の騒音を低減するとともに、ファン60の制御を改善することができる。
【0086】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る空気調和装置50について説明する。
図17は、本発明の実施の形態3に係る空気調和装置50の構成を概略的に示す図である。
【0087】
実施の形態3に係る空気調和装置50(例えば、冷凍空調装置)は、送風機(第1の送風機)としての室内機51と、冷媒配管52と、冷媒配管52によって室内機51に接続された送風機(第2の送風機)としての室外機53とを備える。
【0088】
室内機51は、モータ51a(例えば、実施の形態1に係るモータ1)と、モータ51aによって駆動されることにより、送風する送風部51bと、モータ51a及び送風部51bを覆うハウジング51cとを有する。送風部51bは、例えば、モータ51aによって駆動される羽根51dを有する。例えば、羽根51dは、モータ51aのシャフト(例えば、実施の形態1におけるシャフト22)に固定されており、気流を生成する。
【0089】
室外機53は、モータ53a(例えば、実施の形態1に係るモータ1)と、送風部53bと、圧縮機54と、熱交換器(図示しない)とを有する。送風部53bは、モータ53aによって駆動されることにより、送風する。送風部53bは、例えば、モータ53aによって駆動される羽根53dを有する。例えば、羽根53dは、モータ53aのシャフト(例えば、実施の形態1におけるシャフト22)に固定されており、気流を生成する。圧縮機54は、モータ54a(例えば、実施の形態1に係るモータ1)と、モータ54aによって駆動される圧縮機構54b(例えば、冷媒回路)と、モータ54a及び圧縮機構54bを覆うハウジング54cとを有する。
【0090】
空気調和装置50において、室内機51及び室外機53の少なくとも1つは、実施の形態1で説明したモータ1(変形例を含む)を有する。具体的には、送風部の駆動源として、モータ51a及び53aの少なくとも一方に、実施の形態1で説明したモータ1(変形例を含む)が適用される。さらに、圧縮機54のモータ54aとして、実施の形態1で説明したモータ1(変形例を含む)を用いてもよい。
【0091】
空気調和装置50は、例えば、室内機51から冷たい空気を送風する冷房運転、又は温かい空気を送風する暖房運転等の運転を行うことができる。室内機51において、モータ51aは、送風部51bを駆動するための駆動源である。送風部51bは、調整された空気を送風することができる。
【0092】
実施の形態3に係る空気調和装置50によれば、モータ51a及び53aの少なくとも一方に、実施の形態1で説明したモータ1(変形例を含む)が適用されるので、実施の形態1で説明した効果と同じ効果を得ることができる。これにより、空気調和装置50の騒音を低減するとともに、空気調和装置50の制御を改善することができる。さらに、低コストのモータ1を用いることにより、空気調和装置50のコストも低減することができる。
【0093】
さらに、送風機(例えば、室内機51)の駆動源として、実施の形態1に係るモータ1(変形例を含む)を用いることにより、実施の形態1で説明した効果と同じ効果を得ることができる。これにより、送風機の騒音を低減するとともに、送風機の制御を改善することができる。実施の形態1に係るモータ1とモータ1によって駆動される羽根(例えば、羽根51d又は53d)とを有する送風機は、送風する装置として単独で用いることができる。この送風機は、空気調和装置50以外の機器にも適用可能である。
【0094】
さらに、圧縮機54の駆動源として、実施の形態1に係るモータ1(変形例を含む)を用いることにより、実施の形態1で説明した効果と同じ効果を得ることができる。これにより、圧縮機54の騒音を低減するとともに、圧縮機54の制御を改善することができる。
【0095】
実施の形態1で説明したモータ1(変形例を含む)は、空気調和装置50以外に、換気扇、家電機器、又は工作機など、駆動源を有する機器に搭載できる。
【0096】
以上に説明した各実施の形態における特徴は、互いに適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0097】
1,1a,51a,53a,62 モータ、 2 ロータ、 3 ステータ、 4 位置検出素子、 5 樹脂、 6a,6b ベアリング、 7 ブラケット、 21 樹脂マグネット、 21a 主磁束発生部、 21b 位置検出磁束発生部、 21c 突起、 21d ゲート部、 22 シャフト、 40 プリント基板、 42 駆動回路、 50 空気調和装置、 51 室内機、 53 室外機、 60 ファン、 61 羽根。