(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】混合物からポリペプチドを調製するための複数の疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 1/20 20060101AFI20241007BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20241007BHJP
G01N 30/46 20060101ALI20241007BHJP
G01N 30/38 20060101ALI20241007BHJP
B01D 15/32 20060101ALI20241007BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20241007BHJP
【FI】
C07K1/20
G01N30/88 J
G01N30/46 A
G01N30/38
B01D15/32
C07K16/00
(21)【出願番号】P 2020572544
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 US2019040148
(87)【国際公開番号】W WO2020010004
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-05-26
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】リヴィーニ、イザベル
(72)【発明者】
【氏名】マクダーモット、ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ライリー、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】マッティラ、ジョン
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520667(JP,A)
【文献】特表2010-530068(JP,A)
【文献】特表2009-511900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的ポリペプチドを含む混合物から標的ポリペプチドを調製する方法であって、
標的ポリペプチドを含む混合物を、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)装置の1つ以上のクロマトグラフィーカラム及び出口を有する第1のゾーンに接触させること、
標的ポリペプチドを含む流出物をHIC装置の第1のゾーンからHIC装置の第2のゾーンに通過させること、
1つ以上の移動相を、HIC装置の1つ以上のクロマトグラフィーカラム及び出口を有する第2のゾーンに接触させること、及び、
標的ポリペプチドを、HIC装置の少なくとも第1及び第2のゾーンの出口に通すこと
を含み、
第1のゾーンにおける標的ポリペプチドを含む混合物の滞留時間及び第2のゾーンにおける標的ポリペプチドを含む混合物の滞留時間の合計は、第2のゾーンにおける前記1つ以上の移動相の滞留時間と実質的に同じになるように構成される方法。
【請求項2】
標的ポリペプチドはモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の移動相は平衡化バッファー及び洗浄バッファーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の移動相をHIC装置の第2のゾーンに接触させることは、
洗浄バッファーをHIC装置の第2のゾーンに接触させること、及び
洗浄バッファーをHIC装置の第2のゾーンに接触させた後、第2のゾーンを再生することを含み、第2のゾーンを再生させることは、
水をHIC装置の第2のゾーンに接触させること、
アルカリ溶液をHIC装置の第2のゾーンに接触させること、
アルコール溶液をHIC装置の第2のゾーンに接触させること、及び
平衡化バッファーをHIC装置の第2のゾーンに接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
洗浄バッファーをHIC装置の第2のゾーンに接触させた後、標的ポリペプチドをHIC装置の第2のゾーンの出口に通す、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
滞留溶液の紫外線吸収率、電気伝導率、又はpHのうちの1つ以上が、第1のゾーン又は第2のゾーンのいずれかの出口で測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
標的ポリペプチドは、50g/L・時以上の生産性で調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1のゾーン又は第2のゾーンは2つ以上のクロマトグラフィーカラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
HIC装置は、1つ以上のクロマトグラフィーカラム及び出口を有する第3のゾーンをさらに含み、前記方法は、
第3のゾーンで再生サイクルを実行することをさらに含み、再生サイクルを実行することは、1つ以上の移動相を第3のゾーンに接触させることを含み、再生サイクルの持続時間は、標的ポリペプチドを含む混合物の第1のゾーンにおける滞留時間と実質的に同じになるように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
標的ポリペプチドを含む混合物から標的ポリペプチドを調製する方法であって、
標的ポリペプチドを含む混合物を、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)装置の複数のクロマトグラフィーカラムであって、複数のカラムのそれぞれは、複数のカラムのうちの別のカラムに接続可能な出口を含む複数のクロマトグラフィーカラムのうちの第1のカラムに通すこと、
第1のカラムからの標的ポリペプチドを含む流出物を、複数のカラムのうちの第2のカラムに通すこと、
1つ以上の移動相を、複数のカラムのうちの第3のカラムに通すこと、及び、
標的ポリペプチドを、複数のカラムのそれぞれの出口に通すことを含み、第1のカラム及び第2のカラムにおける標的ポリペプチドを含む混合物の滞留時間の合計は、第3のカラムにおける前記1つ以上の移動相の滞留時間の合計と実質的に同じである方法。
【請求項11】
1つ以上の移動相を複数のカラムのそれぞれに通すことをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の移動相をカラムに通すことは、
洗浄バッファーをカラムに通すこと、及び
洗浄バッファーをカラムに通した後、カラムを再生することを含み、カラムを再生することは、水、アルカリ性溶液、アルコール溶液、又は平衡化バッファーをカラムに通すことを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
標的ポリペプチドをカラムの出口に通すステップは、洗浄バッファーをカラムに通した後に行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
滞留溶液の紫外線吸収率、電気伝導率、又はpHのうちの1つ以上が、第1のカラム又は第2のカラムのいずれかの出口で測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
標的ポリペプチドは50g/L・時以上の生産性で調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
HIC装置は4つのカラムを含み、第1のカラム及び第2のカラムにおける標的ポリペプチドを含む混合物の滞留時間の合計は、第3のカラム及び第4のカラムの再生時間の合計と実質的に同じである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
複数のクロマトグラフィーカラムを使用して抗体を調製する方法であって、複数のクロマトグラフィーカラムのそれぞれは疎水性相互作用媒体を含み、前記方法は、
第1段階において、
抗体を含むある量の混合物を、複数のカラムのうちの第1のカラムに負荷すること、
第1のカラムを介して、ある量の前記混合物を複数のカラムのうちの第2のカラムに負荷すること、及び、
複数のカラムのうちの第3のカラムにおいて、洗浄、ストリッピング、及び平衡化プロセスのうちの少なくとも1つを含む非負荷ステップを実行すること;
第2段階において、
前記抗体を含むある量の前記混合物を第2のカラムに負荷すること、
第2のカラムを介して、ある量の前記混合物を第3のカラムに負荷すること、及び、
第1のカラムにおいて、洗浄、ストリッピング、及び平衡化プロセスのうちの少なくとも1つを含む非負荷ステップを実行すること;及び、
第3段階において、
前記抗体を含むある量の前記混合物を第3のカラムに負荷すること、
第3のカラムを介して、ある量の前記混合物を第1のカラムに負荷すること、及び、
第2のカラムにおいて、洗浄、ストリッピング、及び平衡化プロセスのうちの少なくとも1つを含む非負荷ステップを実行すること
を含み、
前記抗体は約50g/L・時以上の生産性で調製され、前記方法は、少なくとも約1.3の高分子量分子クリアランス率(HMW CF)を有
し、
負荷ステップのうちの1つの期間は、非負荷ステップの期間と実質的に同じになるように構成される、方法。
【請求項18】
前記第1、第2、及び第3段階をサイクル式に連続して繰り返すことをさらに含み、各段階は負荷ステップ及び非負荷ステップを同時に実行することを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ポリペプチドを調製するための方法に関する。より具体的には、本開示は、クロマトグラフィー法を使用して混合物からポリペプチドを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーは、医薬品調製プロセスの一部として実施することができる。場合によっては、クロマトグラフィーは、ポリペプチドを含む医薬品の調製に特に有用であり得る。しかし、標準バッチHICステップ又は他のバッチ式クロマトグラフィーステップに関する設備、材料、準備時間、及び実施時間は、医薬品調製プロセスのコストを追加したり、効率を低下させたりする可能性がある。具体的には、HIC又は他のクロマトグラフィー分離プロセスの各ステップを実行するために必要な時間、使用されるバッファー及び/又は分離媒体の量、及びプロセスの自動化されていないあらゆる態様は、医薬品調製の効率を低下させる可能性がある。
【0003】
本明細書に開示される方法及びシステムは、ポリペプチド調製法の効率及び/又は生産性を改善し得る。本明細書に開示される方法及びシステムはまた、医薬品調製方法の効率及び/又は生産性を改善することができ、上記で特定した1つ以上の問題に対処し得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示の実施形態は、標的ポリペプチドを含む混合物から標的ポリペプチドを調製する方法を対象とし得る。この方法は、標的ポリペプチドを含む混合物をHIC装置の第1のゾーンに接触させること、移動相をHIC装置の第2のゾーンに接触させること、及び、標的ポリペプチドをHIC装置の第1及び第2のゾーンの出口に通すことを含み得る。ここで、第1のゾーン及び第2のゾーンのそれぞれは、1つ以上のクロマトグラフィーカラム及び出口を有し得る。いくつかの実施形態では、第1のゾーンにおける標的ポリペプチドを含む混合物の滞留時間は、第2のゾーンにおける移動相の滞留時間と実質的に同じになるように構成され得る。
【0005】
いくつかの実施形態において、標的ポリペプチドはモノクローナル抗体であり得る。標的ポリペプチドは、50g/L・時以上の生産性で調製することができる。あるいは、又はさらに、移動相は平衡化バッファー及び洗浄バッファーを含み得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、標的ポリペプチドを含む流出物をHIC装置の第1のゾーンからHIC装置の第2のゾーンに通過させることをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、移動相をHIC装置の第2のゾーンに接触させることは、洗浄バッファーをHIC装置の第2のゾーンに接触させること、及び洗浄バッファーをHIC装置の第2のゾーンに接触させた後、第2のゾーンを再生することを含み得る。いくつかの実施形態では、第2のゾーンの再生は、水をHIC装置の第2のゾーンに接触させること、アルカリ溶液をHIC装置の第2のゾーンに接触させること、アルコール溶液をHIC装置の第2のゾーンに接触させること、及び平衡化バッファーをHIC装置の第2のゾーンに接触させることを含み得る。洗浄バッファーをHIC装置の第2のゾーンに接触させた後、標的ポリペプチドを、HIC装置の第2のゾーンの出口に通すことができる。いくつかの実施形態では、滞留溶液の紫外線吸収率、電気伝導率、又はpHのうちの1つ以上を、第1のゾーン又は第2のゾーンのいずれかの出口で測定することができる。第1のゾーン又は第2のゾーンは、複数のクロマトグラフィーカラムを含み得る。いくつかの実施形態では、HIC装置は、クロマトグラフィーカラム及び出口を有する第3のゾーンをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、第3のゾーンで再生サイクルを実行することをさらに含み得、再生サイクルを実行することは、移動相を第3のゾーンに接触させることを含み、再生サイクルの持続時間は、標的ポリペプチドを含む混合物の第1のゾーンにおける滞留時間と実質的に同じになるように構成される。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態において、標的ポリペプチドを含む混合物から標的ポリペプチドを調製する方法は、標的ポリペプチドを含む混合物を、HIC装置の複数のクロマトグラフィーカラムのうちの第1のカラムに通すこと、第1のカラムからの標的ポリペプチドを含む流出物を、複数のカラムのうちの第2のカラムに通すこと、1つ以上の移動相を、複数のカラムのうちの第3のカラムに通すこと、及び、標的ポリペプチドを、複数のカラムのそれぞれの出口に通すことを含んでもよく、ここで、複数のカラムのそれぞれは、複数のカラムのうちの別のカラムに接続可能な出口を含み、第1のカラム及び第2のカラムにおける標的ポリペプチドを含む混合物の滞留時間の合計は、第3のカラムにおける移動相の滞留時間の合計と実質的に同じである。
【0007】
いくつかの実施形態では、この方法は、1つ以上の移動相を複数のカラムのそれぞれに通すことをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の移動相をカラムに通すことは、洗浄バッファーをカラムに通すこと、及び洗浄バッファーをカラムに通した後、カラムを再生することを含んでもよく、ここでカラムの再生は、水、アルカリ性溶液、アルコール溶液、又は平衡化バッファーをカラムに通すことを含む。いくつかの実施形態において、標的ポリペプチドをカラムの出口に通すステップは、洗浄バッファーをカラムに通した後に起こり得る。いくつかの実施形態では、滞留溶液の紫外線吸収率、電気伝導率、又はpHのうちの1つ以上が、第1のカラム又は第2のカラムのいずれかの出口で測定される。いくつかの実施形態では、この方法は、50g/L・時以上の生産性で標的ポリペプチドを調製することを含み得る。さらなる実施形態において、HIC装置は、4つのカラムを含み得、第1のカラム及び第2のカラムにおける標的ポリペプチドを含む混合物の滞留時間の合計は、第3のカラム及び第4のカラムの再生時間の合計と実質的に同じであり得る。
【0008】
本開示のさらなる実施形態は、複数のクロマトグラフィーカラムを使用して抗体を調製する方法を含んでもよく、複数のクロマトグラフィーカラムのそれぞれは疎水性相互作用媒体を含む。この方法は、第1段階において、抗体を含むある量の混合物を複数のカラムのうちの第1のカラムに負荷(load)すること、第1のカラムを介して、ある量の混合物を複数のカラムのうちの第2のカラムに負荷すること、及び、複数のカラムのうちの第3のカラムにおいて、洗浄、ストリッピング、及び平衡化プロセスのうちの少なくとも1つを含む非負荷ステップを実行すること;第2段階において、抗体を含むある量の混合物を第2のカラムに負荷すること、第2のカラムを介して、ある量の混合物を第3のカラムに負荷すること、及び、第1のカラムにおいて、洗浄、ストリッピング、及び平衡化プロセスのうちの少なくとも1つを含む非負荷ステップを実行すること;第3段階において、抗体を含むある量の混合物を第3のカラムに負荷すること、第2のカラムを介して、ある量の混合物を第3のカラムに負荷すること、及び、第2のカラムにおいて、洗浄、ストリッピング、及び平衡化プロセスのうちの少なくとも1つを含む非負荷ステップを実行することを含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1、第2、及び第3段階をサイクル式に連続して繰り返すことをさらに含んでもよく、ここで各段階は、負荷ステップ及び非負荷ステップを同時に実行することを含む。いくつかの実施形態では、負荷ステップのうちの1つの期間は、非負荷ステップの期間と実質的に同じになるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、様々な例示的な実施形態を示し、明細書とともに、開示された実施形態の原理を説明する役割を果たす。本明細書に記載の実施形態又は実施例の任意の特徴(例えば、組成物、配合物、方法など)は、他の任意の実施形態又は実施例と組み合わせることができ、そのようなすべての組み合わせは、本開示に包含される。さらに、記載されたシステム及び方法は、単一の態様又はその実施形態、あるいはそのような態様及び実施形態の任意の組み合わせ又は順列に限定されない。簡潔にするために、特定の順列及び組み合わせは、本明細書では別個に議論及び/又は図示されていない。
【
図1】本開示のいくつかの実施形態による、クロマトグラフィー装置のゾーンの一部を示す模式図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態による、クロマトグラフィー装置の模式図である。
【
図3A】本開示のいくつかの実施形態による、標的ポリペプチドを調製する例示的な方法をグラフで描いたものである。
【
図3B】
図3Aに示されるように、標的ポリペプチドを調製する方法を示す簡略図である。
【
図3C】
図3Aに示されるように、標的ポリペプチドを調製する方法を示す簡略図である。
【
図3D】
図3Aに示されるように、標的ポリペプチドを調製する方法を示す簡略図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による、クロマトグラフィー装置の模式図である。
【
図5A】本開示のいくつかの実施形態による、標的ポリペプチドを調製するの例示的な方法をグラフで描いたものである。
【
図5B】
図5Aに示されるように、標的ポリペプチドを調製する方法を示す簡略図である。
【
図5C】
図5Aに示されるように、標的ポリペプチドを調製する方法を示す簡略図である。
【
図5D】
図5Aに示されるように、標的ポリペプチドを調製する方法を示す簡略図である。
【
図5E】
図5Aに示されるように、標的ポリペプチドを調製する方法を示す簡略図である。
【
図6】本開示のいくつかの実施形態による、標的ポリペプチドを調製する方法のフローチャートである。
【
図7A】本開示の一態様による、負荷の関数としての高分子量パーセンテージのプロットである。
【
図7B】本開示の一態様による、負荷の関数としての宿主細胞タンパク質量のプロットである。
【
図7C】本開示の一態様による、負荷濃度の関数としての高分子量パーセンテージのプロットである。
【
図8A】
本開示の一態様による、クロマトグラフィーカラムの数の関数としての生
産性のプロットである。
【
図8B】
本開示の一態様による、クロマトグラフィーカラムの数の関数としての生
産性のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される場合、「含む」又はその他の任意の活用形は、非排他的な包含を含むように、つまり、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、それらの要素のみを含むのではなく、リストに明示的に挙げられていない他の要素や、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有の他の要素を含み得るように意図されている。「例示的」という用語は、「理想的」ではなく「例」の意味で使用される。「例えば」及び「そのような」という用語、及びそれらの文法上の同等物については、特に明記しない限り、「ただし限定するものではないが」という句が続くものと理解される。
【0012】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、実験誤差による変動を説明することを意味する。数値に適用される場合、「約」という用語は、開示された数値からの+/-10%の変動を示し得る(異なる変動が指定されていない場合)。本明細書で使用される場合、単数形「1つの」、及び「その」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0013】
本明細書に開示されるすべての数値(すべての開示される値、上限・下限、及び範囲を含む)は、開示される数値から(異なる変動が指定されない限り)+/-10%の変動を有し得ることに留意されたい。さらに、特許請求の範囲において、値、上限・下限、及び/又は範囲は、その値、上限・下限、及び/又は範囲+/-10%を意味する。同様に、本明細書で使用される「実質的に同じ」という句は、+/-10%の変動内で同等であることを意味し得る。さらに、すべての範囲は、端点を含むと理解され、例えば、1センチメートル(cm)から5cmまでは、1cm、5cmの長さ、及び1cmから5cmの間のすべての距離を含み得る。
【0014】
[詳細な説明]
本開示は、当業者の技術的範囲内で多くの変形が可能であるため、本明細書に開示される特定の組成物、製剤、材料製造業者、医薬品、デバイス、システム、実験条件、又は特定の方法に限定されない。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。
【0015】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似の又は同等の任意の方法及び材料を、本開示の実施又は試験に使用することができるが、特定の方法がここに記載されている。言及されたすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
本明細書で使用される「接触する」という用語は、2つ以上の表面、溶液、又は化合物同士の触れ合い、接合、界面、又は他の物理的相互作用を指す。特定の流体は、本明細書では、領域中に通す、領域から通過する、領域に通す、又は領域を通過させると説明され得るが、流体は、それが通される任意の領域に必然的に接触することが理解される。同様に、流体又は構成要素を領域に導入することは、その領域に接触する流体又は構成要素を構成することになる。
【0017】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、アミド結合を介して共有結合された約20を超えるアミノ酸を有する任意のアミノ酸ポリマーを指す。タンパク質は、1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖(例えば、ポリペプチド)を含む。したがって、ポリペプチドはタンパク質であり得、タンパク質は、単一の機能的生体分子を形成する複数のポリペプチドを含み得る。
【0018】
翻訳後修飾は、ポリペプチドの構造をさらに修飾又は変更し得る。例えば、ジスルフィド架橋(例えば、システイン残基間のS-S結合)がいくつかのタンパク質に存在し得る。いくつかのジスルフィド架橋は、ポリペプチド、免疫グロブリン、タンパク質、補因子、基質などの適切な構造、機能、及び相互作用に不可欠である。ジスルフィド結合の形成に加えて、タンパク質は他の翻訳後修飾を受ける可能性がある。これらの修飾には、脂質化(例えば、ミリストイル化、パルミトイル化、ファルネソイル化(farnesoylation)、ゲラニルゲラニル化、及びグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー形成)、アルキル化(例えば、メチル化)、アシル化、アミド化、グリコシル化(例えば、アルギニン、アスパラギン、システイン、ヒドロキシリジン、セリン、スレオニン、チロシン、及び/又はトリプトファンでのグリコシル基の付加)、及びリン酸化(すなわち、セリン、スレオニン、チロシン、及び/又はヒスチジンへのリン酸基の付加)が含まれる。翻訳後修飾は、疎水性、静電表面特性、又はポリペプチドが関与する表面間相互作用を決定する他の特性に影響を与える可能性がある。
【0019】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、バイオセラピューティックタンパク質、研究又は治療に使用される組換えタンパク質、トラップタンパク質及び他のFc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメント、抗体様分子、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモンなどを含む。目的タンパク質(POI)には、単離、精製、又はその他の方法で調製することが望まれる任意のポリペプチド又はタンパク質が含まれ得る。POIは、標的ポリペプチド、又は、細胞によって産生される抗体を含む他のポリペプチドを含み得る。
【0020】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖から構成される免疫グロブリンを含む。典型的には、抗体は、100kDaを超える、例えば130kDa~200kDa、例えば約140kDa、145kDa、150kDa、155kDa、又は160kDaの分子量を有する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLを含む。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分化でき、超可変領域にはフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する。各VH及びVLは、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって次の順序で並んでいる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(重鎖CDRはHCDR1、HCDR2及びHCDR3と略され、軽鎖CDRはLCDR1、LCDR2及びLCDR3と略される場合がある。
【0021】
例えば、免疫グロブリンG(IgG)と呼ばれる免疫グロブリンのクラスは、ヒト血清で一般的であり、4つのポリペプチド鎖(2つの軽鎖と2つの重鎖)で構成されている。各軽鎖はシスチンジスルフィド結合を介して1つの重鎖に結合し、2つの重鎖は2つのシスチンジスルフィド結合を介して互いに結合している。他のクラスのヒト免疫グロブリンには、IgA、IgM、IgD、及びIgEが含まれる。IgGの場合、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4の4つのサブクラスが存在する。各サブクラスは定常領域が異なり、その結果、異なるエフェクター機能を有し得る。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、POIは、IgGを含む標的ポリペプチドを含み得る。少なくとも1つの実施形態において、標的ポリペプチドはIgG4を含む。
【0022】
本明細書で使用される「抗体」という用語はまた、完全な抗体分子の抗原結合フラグメントを含む。本明細書で使用される、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などの用語は、天然に存在する、酵素的に得られる、合成の、又は遺伝子操作された任意のポリペプチド又は糖タンパク質であって、抗原に特異的に結合して複合体を形成するポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、抗体可変ドメイン及び任意選択で定常ドメインをコードするDNAを操作し発現させることを含む、タンパク質分解消化又は組換え遺伝子工学技術などの任意の適切な標準技術を使用して、完全な抗体分子から誘導され得る。そのようなDNAは既知であり、かつ/又は、例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、又は合成することができる。DNAは配列決定され、化学的に、又は分子生物学技術を使用して、例えば、1つ以上の可変及び/又は定常ドメインを適切な構成に配置するため、又はコドンを導入するため、システイン残基を作成するため、アミノ酸を修飾、追加又は削除するためなどの目的で操作され得る。
【0023】
標的ポリペプチドは、昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えば、ピキア(Pichia)種)、哺乳動物系(例えば、CHO細胞及びCHO-K1細胞などのCHO誘導体)などの組換え細胞ベース生産システムを使用して産生され得る。「細胞」という用語は、組換え核酸配列を発現させるのに適した任意の細胞を含む。細胞には、原核生物及び真核生物(単一細胞又は複数細胞)の細胞、細菌細胞(例えば、大腸菌、バチルス(Bacillus)種、ストレプトマイセス(Streptomyces)種などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.セレビシエ(cerevisiae)、S.ポンベ(pombe)、P.パストリス(pastoris)、P.メタノリカ(methanolica)など)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルスに感染した昆虫細胞、キンウワバ(Trichoplusiani)など)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、又は例えば、ハイブリドーマ又はクアドローマなどの細胞融合物が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、又はマウスの細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は真核生物であり、以下の細胞から選択される:CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293EBNA、MSR293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC5、Colo205、HB8065、HL-60、(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT060562、セルトリ細胞、BRL3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、及び前述の細胞から誘導される細胞株。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のウイルス遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)を含む。細胞によって産生される標的ポリペプチド又はPOI以外のタンパク質又はポリペプチドは、宿主細胞タンパク質(HCP)と呼ばれることがある。POIが宿主細胞で作られ及び/又は宿主細胞から精製される場合、HCPは製品及びプロセスに関連する汚染物質又は不純物として特徴付けられる場合がある。
【0024】
一部のHCP(例えば、酵素)はPOI(例えば、標的ポリペプチド)と共精製され、POIを含む混合物、製剤、又は医薬品の成分に影響を与え得る。例えば、いくつかのHCPの存在は、製品の安定性に影響を与えたり、医薬品の貯蔵寿命を縮めたり、製品が公定書又は規制上の粒子状物質の仕様(例えば、米国食品医薬品局の仕様)を満たさなくなったりさえする可能性がある。さらなる例として、いくつかのHCPは、投与時の免疫原性反応などの臨床的影響を引き起こす可能性がある。HIC又は他のクロマトグラフィーを単独又は組み合わせて使用して、POIを精製及び/又は分離し、混合物、製剤、又は医薬品からHCPを除去して、医薬品に対するHCPの潜在的な影響を低減することができる。一方で、HIC又はアフィニティークロマトグラフィーの工程を追加すると、設備、材料(例えば、疎水性相互作用媒体)、及び準備の追加が必要となる。これは、時間、資源、実験、及びコストの追加に相当する。したがって、1つ以上の同時精製されたHCP又は他の不純物からPOI(例えば、標的ポリペプチド)を分離するためのクロマトグラフィープロセスを実施する効率的な方法があることが望ましい。
【0025】
本明細書で使用される「クロマトグラフィー」という用語は、混合物の成分が異なる速度で媒体を通り抜けるように混合物を媒体に通すことによって、混合物の成分を分離する任意のプロセスを指し、カラムクロマトグラフィー、平面クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、置換クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、向流クロマトグラフィー、周期的向流クロマトグラフィー、又はキラルクロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない。本明細書の実施形態は、例示的な種類のクロマトグラフィープロセス(例えば、HIC)又は装置に関して開示され得るが、本明細書に開示される実施形態は任意の種類のクロマトグラフィーに適用可能であり得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「水」という用語は、脱イオン水又は注射用水など、任意の適切な種類の実験室グレードの水を指し得る。いくつかの実施形態では、例えば、クロマトグラフィー装置は、脱イオン水又は注射用水と接触させることができる。本明細書における「水」の使用への言及は、脱イオン水、注射用水、又は別の種類の実験室グレードの水を指し得る。
【0027】
本開示で使用される場合、「移動相」という用語は、分離又は精製プロセスの一部としてクロマトグラフィーゾーン又はカラムに接触するのに適した任意の流体を指し得る。移動相は、例えば、水、緩衝液、酸性溶液、アルカリ性溶液、及び/又はアルコールを含む溶液を含み得る。「洗浄バッファー」、「ストリッピングバッファー」、及び「平衡化バッファー」という用語は、本明細書でさらに説明されるように、特定の特性を有する移動相を説明するために使用され得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、標的ポリペプチドを含む混合物から標的ポリペプチドを調製するための方法は、混合物をクロマトグラフィー装置に接触させることを含み得る。クロマトグラフィー装置は複数のゾーンを含むことができ、各ゾーンは1つ以上のクロマトグラフィーカラムを含み、1つ以上のクロマトグラフィーカラムは疎水性相互作用媒体を含む。このようなクロマトグラフィー装置には、事前に製造された装置(例えば、Cadence(登録商標)BioSMB(Pall Biosciences)、BioSC(商標)(novasep)、Varicol(登録商標)(novasep)、又はOctave(商標)(Semba Biosciences))、手作業で組み立てられた装置、又は直列で使用される、単に2つ以上のより標準的なバッチクロマトグラフィー装置が含まれ得る。
【0029】
本開示の態様は、標的ポリペプチド又は他の分子を調製するプロセスに様々な利益を提供し得る。例えば、クロマトグラフィー装置での複数のゾーンの同時使用は、個々のカラムのより効率的かつより完全な負荷、及び/又は標準的なクロマトグラフィープロセスよりも少ないクロマトグラフィー媒体を使用した分離プロセスの実行を可能にし得る。本開示の態様の追加の利益及び利点は、当業者には明らかであろう。
【0030】
ここで、本開示の図面を参照する。
図1は、本開示のいくつかの実施形態による、HIC装置のクロマトグラフィーカラムのセクション100を示す。クロマトグラフィーカラムは、疎水性相互作用媒体を含む。疎水性相互作用媒体は、支持構造110及び疎水性部分120を含み、疎水性部分120は、支持構造110に固定されている。媒体は、クロマトグラフィー媒体の形態、例えば、充填層カラムフォーマットで保持されたビーズ又は他の粒子、膜の形態、又は標的ポリペプチド(又はその他のPOI)及び汚染物質(例えばHCP)を含む混合物又は他の液体を収容することができる任意のフォーマットとすることができる。したがって、例示的な疎水性相互作用媒体は、アガロースビーズ(例えば、セファロース)、シリカビーズ、セルロース膜、セルロースビーズ、親水性ポリマービーズなどを含み得る。
【0031】
本開示のHIC装置のクロマトグラフィーカラムは、疎水性相互作用媒体が約0.5センチメートル(cm)~約40cmの深さ(例えば、ベッド高)を有するように構成され得る。いくつかの実施形態では、例えば、HIC装置のクロマトグラフィーカラムは、約0.5cm~約30cm、約0.5cm~約20cm、約0.5cm~約10cm、約0.5cm~約5cm、約1cm~20cm、約1cm~約10cm、又は約1cm~約5cmのベッド高を有し得る。いくつかの実施形態において、クロマトグラフィーカラムは、クロマトグラフィーカラムの内径が約0.5cm~約150cmであるように構成され得る。いくつかの実施形態では、例えば、クロマトグラフィーカラムの内径は、約0.5cm~約140cm、約0.5cm~約120cm、約0.5cm~約100cm、約0.5cm~約80cm、約0.5cm~約60cm、約0.5cm~約40cm、約0.5cm~約20cm、約0.5cm~約10cm、約0.75cm~約8cm、約1cm~約6cm、約1cm~約5cm、約1cm~約3cm、約1.5cm~約5cm、約1.5cm~約3cm、又は約1cm~約2cmである。例えば、いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーカラムの内径は、約0.5cm、約1cm、約5cm、約8cm、約10cm、約15cm、約20cm、約30cm、約40cm、約50cm、約60cm、約80cm、約100cm、約125cm、又は約150cmである。いくつかの実施形態では、本開示によるHIC装置のクロマトグラフィーカラムは、約0.4ミリリットル(mL)~約175Lの総容積(例えば、混合物、移動相、又は他の物質を保持するための総容量)を有する。いくつかの実施形態、例えば、本開示によるHIC装置のクロマトグラフィーカラムは、約0.5mL~約150L、約0.5mL~約130L、約0.5mL~約115L、約0.5mL~約100L、約0.5mL~約80L、約0.5mL~約60L、約0.5mL~約40L、約0.5mL~約20L、約0.5mL~約15L、約0.5mL~約10L、約0.5mL~約5L、約0.5mL~約1L、約1mL~約750mL、約1mL~約600mL、約1mL~約500mL、約1mL~約300mL、約1mL~約250mL、約1mL~約200mL、又は約1mL~約150mLの総容積を有する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示によるクロマトグラフィーカラムは、約0.5mL、約1mL、約5mL、約10mL、約50mL、約100mL、約150mL、約300mL、約400mL、約500mL、約1L、約5L、約10L、約50L、約80L、約100L、約120L、又は約150Lの総容積を有し得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、疎水性部分120は、ポリペプチドの疎水性領域及び疎水性表面に結合する。疎水性表面は、ペプチドを構成するアミノ酸の構造の一部、前述の又は他の翻訳後修飾、又はそれらの組み合わせであり得る。疎水性相互作用媒体の疎水性の程度は、適切な疎水性部分120を選択することによって制御することができる。疎水性部分120は、特定の標的ポリペプチド又はPOIに結合するように選択することができ、現在知られている、又は将来開発される任意の疎水性部分であり得る。いくつかの実施形態では、疎水性部分120は、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、及び/又はフェニル基を含み得る。当業者は、選択された疎水性部分120の疎水性が、標的ポリペプチド及び/又はHCP/所与の用途の他の不純物、ならびにクロマトグラフィープロセスからの所望の分離又は精製の種類及び程度に基づいて変化し得ることを理解するであろう。
【0033】
疎水性相互作用媒体を使用して、標的ポリペプチド又は他のPOIを製品及びプロセスに関連する汚染物質及び不純物(例えば、HCP)から分離することができる。引き続き
図1を参照すると、いくつかの実施形態では、標的ポリペプチド140及び汚染物質130など(例えば、不純物、HCPなど)の他の成分を含む混合物が、HIC装置に負荷される。混合物は、標的ポリペプチド140の疎水性基が疎水性相互作用媒体の疎水性部分120に結合するのを促進するように設計された溶液(例えば、バッファー)を含み得る。一部の標的ポリペプチド140は、分子内力を介して疎水性部分120に結合することによって培地に付着する一方で、他の標的ポリペプチド140は、クロマトグラフィーカラムを通過し得る。加えて、又はこれに代えて、混合物がカラムを通過する間、混合物からのいくつかの汚染物質130は、分子内力を介して疎水性部分120に結合することによって疎水性相互作用媒体に付着し得るが、他の汚染物質130は疎水性部分120に結合できない。いくつかの実施形態において、標的ポリペプチド140は、構成アミノ酸からの、翻訳後修飾からの、又は、特定の汚染物質又は不純物(例えば、HCP)よりも高い親和性で疎水性部分120に付着することを可能にするそれらの組み合わせからの特定の疎水性領域を含む。後でより詳細に説明するように、続いて追加の移動相をカラムに導入して、標的ポリペプチド140と疎水性部分120との間の親和性を低下させ、標的ポリペプチド140がHIC装置のクロマトグラフィーカラムを通過できるようにする。
【0034】
さらなる実施形態において、汚染物質130は、標的ポリペプチド140よりも高い親和性で疎水性部分120に付着し得る。続いて追加の移動相をカラムに導入して、汚染物質130と疎水性部分120との間の親和性を低下させ、汚染物質130がHIC装置のクロマトグラフィーカラムを通過できるようにすることができる。
【0035】
標的ポリペプチド140を含む混合物の組成は、例えば、ナトリウム、カリウム、リン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、クエン酸塩、又は酢酸塩などの塩を含む添加剤の添加によって変更することができる。標的ポリペプチド140、汚染物質130、疎水性部分120、又はそれらの組み合わせの疎水性又は他の分子内相互作用を変更するために、他の添加剤を添加することができる。
【0036】
本明細書に記載のいくつかの実施形態による、例示的なHIC装置200が
図2に模式的に示されている。HIC装置200は、第1のゾーン210、第2のゾーン220、及び第3のゾーン230を含み得る。第1のゾーン210、第2のゾーン220、及び第3のゾーン230のそれぞれは、
図1に関して説明したクロマトグラフィーカラムなどの1つ以上のクロマトグラフィーカラムを含み得る。第1のゾーン210は、標的ポリペプチド、1つ以上の移動相、又は他の液体を含む混合物を第1のゾーン210に通すことができるように構成された第1の入口212を有し得る。第1のゾーン210はまた、HIC装置200からの流出物(例えば、第1のゾーン210を通過した流体)を、収集又は廃棄のために通すことができる第1の出口214を有し得る。流出物はまた、第1の相互接続216を介して第1のゾーン210から第2のゾーン220に通すことができる。第1のゾーン210はまた、第3の相互接続236を介して第3のゾーン230からの流出物を受け取ることができる。
【0037】
第2のゾーン220は、第1の相互接続216を介して第1のゾーン210からの流出物を受け取ることができる。第2のゾーン220はまた、標的ポリペプチド、1つ以上の移動相、又は他の液体を含む混合物を第2のゾーン220に通すことができるように構成された第2の入口222を有し得る。第2のゾーン220はまた、HIC装置200からの流出物(例えば、第2のゾーン220を通過した流体)を、収集又は廃棄のために通すことができる第2の出口224を有し得る。流出物はまた、第2の相互接続226を介して第2のゾーン220から第3のゾーン230に通過することができる。
【0038】
第3のゾーン230は、第2の相互接続226を介して第2のゾーン220からの流出物を受け取ることができる。第3のゾーン230は、標的ポリペプチド、1つ以上の移動相、又は他の液体を含む混合物を第3のゾーン230に通すことができるように構成された第3の入口232を有し得る。第3のゾーン230はまた、HIC装置200からの流出物(例えば、第3のゾーン230を通過した流体)を、収集又は廃棄のために通すことができる出口234を有し得る。流出物はまた、第3の相互接続236を介して、第3のゾーン230から第1のゾーン220に通過することができる。
【0039】
当業者には理解されるように、クロマトグラフィー装置で使用されることが知られている様々な構成要素(例えば、フィルタ、センサ、ゲージ、温度計)をHIC装置200に組み込むことができるが、
図2の模式図には示されていない。いくつかの実施形態では、UV吸収率、電気伝導率、又はpH又は滞留溶液のうちの1つ以上が、HIC装置200内の1つ以上の箇所で測定され得る。UV吸収率、電気伝導率、又はpHを測定するための適切な箇所には、入口212、222、232、ゾーン210、220、230内、相互接続216、226、236、又は出口214、224、234が含まれる。入口212、222、232、相互接続216、226、236、及び出口214、224、234は、開いた構成から閉じた構成に移動するように動作可能であってもよく、開いた構成は、流体が入口212、222、232、相互接続216、226、236、又は出口214、224、234を通過することを可能にし、閉じた構成は、流体が入口212、222、232、相互接続216、226、236、又は出口214、224、234を通過することを防止する。HIC装置200は、ゾーン210、220、230、入口212、222、232、相互接続216、226、236、及び出口214、224、234の間で流体を伝達するための圧力を提供する1つ以上のポンプを含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の相互接続216、226、236を移動させて、異なるゾーン210、220、230に結合することができる。例えば、HIC装置200を使用するプロセス中に、相互接続226がゾーン220からの流出物を通す場所を再配置することが望ましい場合がある。これらの状況では、相互接続226は、クロマトグラフィープロセスを中断することなく、ゾーン220からゾーン210に流出物を通すように再構成され得る。これはほんの一例である。大抵の場合、相互接続216、226、236は、進行中のクロマトグラフィープロセスを中断することなく、異なるゾーンを接続するように再構成することができる。
【0040】
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による方法をグラフで描いたものである。グラフの左軸では、3つの別個の行が、HIC装置の第1のカラム、第2のカラム、及び第3のカラムを表すラベルC
1、C
2、及びC
3によって定義されている。上軸は時間を表し、左右に無限に伸びる。各カラムの連続的な占有期間は、本明細書に記載の実施形態の例示である。この配置は、従来のHIC法と比較して、カラムのアイドルタイム(例えば「デッドタイム」)を減少又は排除する。
図3Aの全体に示される時間のセグメントは、繰り返しパターンの1つの例示的なサイクルを表し、これは、
図3Aに示される時間セグメントの前及び/又は後に繰り返され得る。4つの時間が、T
1、T
2、T
3、及びT
4としてラベル付けされており、これらはグラフを通して縦に描くことができる任意の線T
0の例である。いくつかの実施形態では、T
1とT
2との間の間隔は、T
2とT
3との間の間隔と実質的に同じであり、いくつかの実施形態では、T
3とT
4との間の間隔と実質的に同じである。いくつかの実施形態では、隣接するラベル付けされた時間の間の間隔(例えば、T
1とT
2の間、又はT
3とT
4の間)は、30秒(s)以上、90分(min)以下、30秒~60分、30秒~30分、30秒~15分、30秒~10分、30秒~8分、30秒~7分、30秒~6分、30秒~5分、30秒~4分、30秒~3分、1分~5分、又は2分~5分であり得る。ボックス410、412、414、415、417、419、424、420、422、424、425、427、429、430、432、434、435、437、及び439は、各ボックスが現れる時間間隔で、C
1、C
2、及びC
3の各カラム内で発生するイベントを表す。例えば、各ボックスは、混合物、移動相、又はそれが現れるカラムの行内の他の滞留液体の存在を表し得る。
【0041】
図3Aを左から右へ横切って、時間的に「先へ」進行してT
1からT
2へと移動すると、混合物の2回目の負荷は、第1のカラムC
1(ボックス410)であり得る。T
2からT
3まで、混合物の初回負荷は、第1のカラムC
1(ボックス412)であり得、T
3からT
4まで、1つ以上の移動相は、第1のカラムC
1(ボックス414)であり得る。いくつかの実施形態では、カラムは、混合物の初回負荷又は混合物の2回目の負荷のいずれかを受けることができる。混合物の「初回負荷」とは、先にHIC装置の別のカラムに最初に通すことなく、HIC装置のカラムに通される混合物の負荷を指す。混合物の「2回目の負荷」は、所与のカラムに導入される前にHIC装置の別のカラムに通された混合物の負荷を指す(例えば、混合物の初回負荷からの流出物は、別のカラムに混合物の2回目の負荷として導入される)。あるカラムから別のカラムに標的ペプチドを含む流出物を通過させると、オーバーフローを無駄にする心配なくカラムを完全に負荷でき、各カラムの使用効率を向上させ、消費される疎水性相互作用媒体の量を減少させることができる。標的ポリペプチドを含む混合物の初回負荷を受けた、又は受けることのできる疎水性相互作用媒体上にオーバーフローを通すことにより、処理される負荷混合物の量に対する消費される疎水性相互作用媒体の量を減らすことができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、1つ以上の移動相をカラムに接触させることは、洗浄バッファーをカラムに接触させること、ストリッピングバッファーをカラムに接触させること、及び/又は平衡化バッファーをカラムに接触させることを含み得る。いくつかの実施形態では、洗浄バッファーは、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、トリス、又は他の塩などの1つ以上の塩を含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、ストリッピングバッファーは、水、アルカリ性溶液、又はアルコールを含む溶液を含み得る。例えば、脱イオン水は、5体積パーセント(vol.%)未満の溶存イオン、1vol.%未満の溶存イオン、0.1vol.%未満の溶存イオン、又は0.01vol.%未満の溶存イオンを含み得る。いくつかの実施形態によれば、アルカリ性溶液は、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)2、NH4OH又は他のアルカリ性化合物などの1つ以上のアルカリイオン性化合物を含み得る。ストリッピングバッファー中のアルカリ性化合物の濃度は、例えば、約0.1N~約1.5N、約0.1N~約1N、約0.1N~約1.5N、約0.5N~約1.5N、約0.1N~約0.8N、約0.1N~約0.6N、約0.1N~約0.5N、約0.1N~約0.4N、又は約0.1N~約0.3Nの範囲であり得る。例えば、ストリッピングバッファー中のアルカリ性化合物の濃度は、約0.1N、約0.2N、約0.3N、約0.4N、約0.5N、約0.6N、約0.7N、約0.8N、約0.9N、約1N、約1.1N、約1.2N、約1.3N、約1.4N、又は約1.5Nであり得る。アルコールを含むストリッピングバッファーは、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール、又は他のアルコールを含み得る。ストリッピングバッファー中のアルコールの濃度は、ストリッピングバッファーの総重量に基づいて、約0.1vol.%~約30vol.%、例えば約0.5vol.%~約30vol.%、約0.5vol.%~約25vol.%、約0.5vol.%~約25vol.%、約0.5vol.%~約25vol.%、約1vol.%~約20vol.%、約1vol.%~約15vol.%、約1vol.%~約10vol.%、約10vol.%~約50vol.%、約10vol.%~約40vol.%、約10vol.%~約30vol.%、約10vol.%~約25vol.%、約15vol.%~約25vol.%、又は約20vol.%~約25vol.%の範囲であり得る。例えば、ストリッピングバッファー中のアルコールの濃度は、約0.1vol.%、約0.5vol.%、約1vol.%、約2vol.%、約3vol.%、約5vol.%、約10vol.%、約15vol.%、約20vol.%、又は約25vol.%であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、平衡化バッファーは、組成において洗浄バッファーと類似又は同一であり得る。他の実施形態では、平衡化バッファーは、洗浄バッファーと比較して組成が異なり得る。いくつかの実施形態において、平衡化バッファーは、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、トリス、又は他の塩などの1つ以上の塩を含み得る
図3Aを参照すると、第1のカラム414における1つ以上の移動相との接触は、第1のカラムの洗浄バッファー(ボックス415)、第1のカラムのストリッピングバッファー(ボックス417)、及び第1のカラムの平衡化バッファー(ボックス419)を含むそれぞれ別個の相に分割され得る。次の行(C
2を表す)では、T
1からT
2まで、1つ以上の移動相は第2のカラム(ボックス424)にあり得る。これもまた、第2のカラムの洗浄バッファー(ボックス425)、第2のカラムのストリッピングバッファー(ボックス427)、及び第2のカラムの平衡化バッファー(ボックス429)を含むそれぞれ別個の相に分割され得る。右に移動すると、T
2からT
3まで、混合物の2回目の負荷は第2のカラム(ボックス420)であってもよく、T
3からT
4まで、混合物の初回負荷は第2のカラム(ボックス422)であってもよい。
【0045】
次の行では、T1からT2まで、混合物の初回負荷は第3のカラム(ボックス432)であってもよい。次に、T2からT3まで、1つ以上の移動相は第3のカラム(ボックス434)にあってもよく、T3からT4まで、混合物の2回目の負荷は第3のカラム(ボックス430)であってもよい。第3のカラム(ボックス434)の1つ以上の移動相は、第3のカラムの洗浄バッファー(ボックス435)、第3のカラムのストリッピングバッファー(ボックス437)、及び第3のカラムの平衡化バッファー(ボックス439)を含むそれぞれ別個の相に分割され得る。
【0046】
所与の時間T
0において、T
0からの縦線が接触する各番号付きボックスがその時点でのカラムの溶液を表すように、グラフを通して縦線を引くことができる。したがって、例えば、T
1において2回目の負荷混合物が第1のカラムC
1に導入されているとき(ボックス410)、1つ以上の移動相が第2のカラムC
2に通されている(ボックス424)。例えば、洗浄バッファーがC
2に通され(ボックス425)、初回負荷混合物が第3のカラムC
3に通されている(ボックス432)。例えば、細分425、427、及び429などのより広い相の細分は、第2のカラム424の1つ以上の移動相の等分を占めるように見えるが、いくつかの実施形態では、細分は、より広い相の不等分を占めることができる。
図3Aに示される方法はまた、本開示の実施形態による1つの例示的な進行にすぎないことが理解されるべきである。他の順序、構成、及びステップは、本開示の範囲内であると考えられる。
【0047】
図3B~3Dは、前述のように、標的ポリペプチドを含む混合物から標的ポリペプチドを調製する方法の例示的なサイクルを示す。
図3Bは、
図3Aの時間間隔T
1からT
2の間に発生し得る一連のイベントを示す。したがって、
図3Bは第1段階301にあるHIC装置を示しており、ここでは第1のゾーン310が、標的ポリペプチドを含む混合物306の2回目の負荷を受け取り、収集又は廃棄され得る2回目の負荷307の流出物を溶出している。第2のゾーン320は、1つ以上の移動相315を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相316の流出物を溶出している。第3のゾーン330は、混合物305の初回負荷を受け取り、混合物306の2回目の負荷を別のカラムに通している。
【0048】
図3Cは、第2段階302(
図3Aに示されるように、間隔T
2からT
3にわたって)にあるHIC装置を示しており、ここでは第1のゾーン310は、混合物305の初回負荷を受け取り、混合物306の2回目の負荷を別のカラムに通している。第2のゾーン320は、混合物306の2回目の負荷を受け取り、収集又は廃棄され得る2回目の負荷307の流出物を溶出している。第3のゾーン330は、1つ以上の移動相315を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相316の流出物を溶出している。
【0049】
図3Dは、第3段階303(
図3Aに示されるように、間隔T
3からT
4にわたって)にあるHIC装置を示しており、ここでは第1のゾーン310が1つ以上の移動相315を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相316の流出物を溶出している。第2のゾーン320は、混合物305の初回負荷を受け取り、混合物306の2回目の負荷を別のカラムに通している。第3のゾーン330は、1つ以上の移動相315を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相316の流出物を溶出している。
【0050】
本明細書に記載のいくつかの実施形態による別の例示的なHIC装置500が、
図4に模式的に示されている。HIC装置500は、第1のゾーン510、第2のゾーン520、第3のゾーン530、及び第4のゾーン540を含み得る。第1のゾーン510は、標的ポリペプチド、1つ以上の移動相、又は他の液体を含む混合物を第1のゾーン510に通すことができるように構成された第1の入口512を有し得る。第1のゾーン510はまた、HIC装置500からの流出物(例えば、第1のゾーン510を通過した流体)を収集又は廃棄のために通すことができる第1の出口514を有し得る。流出物はまた、第1の相互接続516を介して第1のゾーン510から第2のゾーン520に通すことができる。第1のゾーン510はまた、第4の相互接続546を介して第4のゾーン540からの流出物を受け取ることができる。
【0051】
第2のゾーン520は、第1の相互接続516を介して第1のゾーン510からの流出物を受け取ることができる。第2のゾーン520はまた、標的ポリペプチド、1つ以上の移動相、又は他の液体を含む混合物を第2のゾーン520に通すことができるように構成された第2の入口522を有し得る。第2のゾーン520はまた、HIC装置500からの流出物(例えば、第2のゾーン520を通過した流体)を収集又は廃棄のために通すことができる第2の出口524を有し得る。流出物はまた、第2の相互接続526を介して、第2のゾーン520から第3のゾーン530に通すことができる。
【0052】
第3のゾーン530は、第2の相互接続526を介して第2のゾーン520からの流出物を受け取ることができる。第3のゾーン530は、標的ポリペプチド、1つ以上の移動相、又は他の液体を含む混合物を第3のゾーン530に通すことができるように構成された第3の入口532を有し得る。第3のゾーン530はまた、HIC装置500からの流出物(例えば、第3のゾーン530を通過した流体)を収集又は廃棄のために通すことができる出口534を有し得る。流出物はまた、第3の相互接続536を介して、第3のゾーン530から第4のゾーン520に通すことができる。
【0053】
第4のゾーン540は、第3の相互接続536を介して第3のゾーン530からの流出物を受け取ることができる。第4のゾーン540は、標的ポリペプチド、1つ以上の移動相、又は他の液体を含む混合物を第4のゾーン540に通すことができるように構成された第4の入口542を有し得る。第4のゾーン540はまた、HIC装置500からの流出物(例えば、第4のゾーン540を通過した流体)を収集又は廃棄のために通すことができる出口544を有し得る。流出物はまた、第4の相互接続546を介して、第4のゾーン540から第1のゾーン510に通すことができる。
【0054】
クロマトグラフィー装置で使用されることが知られている様々な構成要素(例えば、フィルタ、センサ、ゲージ、温度計)をHIC装置500に組み込むことができるが、
図4の簡略化した模式図には示されていない。いくつかの実施形態では、UV吸収率、電気伝導率、又はpHの1つ以上、又は滞留溶液を、HIC装置500の1つ以上の箇所で測定することができる。UV吸収率、電気伝導率、又はpHを測定するための適切な箇所には、ゾーン510、520、530、540内の入口512、522、532、542、相互接続516、526、536、546、又は出口514、524、534、544が含まれる。入口512、522、532、542、相互接続516、526、536、546及び出口514、524、534、544は、開いた構成から閉じた構成に移動するように動作可能であり得る。開いた構成は、流体が入口512、522、532、542、相互接続516、526、536、546、又は出口514、524、534、544を通過することを可能にし、閉じた構成は、流体に入口512、522、532、542、相互接続516、526、536、546又は出口514、524、534、544を通過させない。HIC装置500は、ゾーン510、520、530、540、入口512、522、532、542、相互接続516、526、536、546、及び出口514、524、534、544の間で流体を伝達するための圧力を提供する1つ以上のポンプを含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の相互接続516、526、536、546は、異なるゾーン510、520、530、540を結合させるように移動され得る。例えば、HIC装置500を用いた1つ以上のクロマトグラフィープロセス中に、相互接続536がゾーン530からの流出物を通す場所を再配置することが望ましい場合がある。これらの状況では、相互接続536は、クロマトグラフィープロセスを中断することなく、ゾーン530からゾーン520に流出物を通すように再構成され得る。これは単なる一例であり、大抵の場合、相互接続516、526、536、546はいずれも、進行中のクロマトグラフィープロセスを中断することなく、異なるゾーン510、520、530、540を接続するように再構成することができる。
【0055】
図5Aは、本開示による1つ以上の方法をグラフで描いたものである。グラフの左軸では、HIC装置の第1のカラム、第2のカラム、第3のカラム、及び第4のカラムを表すラベルC
1、C
2、C
3、及びC
4によって4つの別個の行が定義されている。上軸は時間を表し、左右に無限に伸びる。各カラムの連続的な占有期間は、本明細書に記載の実施形態の例示であり、この配置は、従来のHIC法と比較して、カラムのアイドルタイム(例えば、「デッドタイム」)を低減又は排除する。示される時間のセグメントは、繰り返しパターンの1サイクルを表し、以下に説明される番号付けされたボックスのパターンを理解することは、
図5Aに示されるセグメントの両側で繰り返され得る。5つの時間が、T
1、T
2、T
3、T
4、及びT
5としてラベル付けされており、これらはグラフを通して縦に描くことができる任意の線T
0の例である。いくつかの実施形態では、T
1とT
2との間の間隔は、T
2とT
3との間の間隔と実質的に同じであり、いくつかの実施形態では、T
3とT
4との間の間隔と実質的に同じであり、いくつかの実施形態では、T
4とT
5との間の間隔と実質的に同じである。いくつかの実施形態では、これらの時間のそれぞれの間の間隔は異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、隣接するラベル付けされた時間の間の間隔(例えば、T
1とT
2の間又はT
4とT
5の間)は、30秒以上、90分以下、30秒~60分、30秒~30分、30秒~15分、30秒~10分、30秒~8分、30秒~7分、30秒~6分、30秒~5分、30秒~4分、30秒~3分、1分~5分、又は2分~5分であり得る。ボックス710、712、714、724、720、722、734、730、732、742、744、及び740は、C
1、C
2、C
3、及びC
4の各カラム内の混合物、バッファー、又は他の滞留液体を表す。
【0056】
図5Aを左から右へ横切って、第1の行(第1のカラムC
1を表す)をT
1からT
2へと移動すると、混合物の2回目の負荷は、第1のカラム(ボックス710)であり得る。T
2からT
3まで、混合物の初回負荷は、第1のカラム(ボックス712)であり得、T
3からT
5まで、1つ以上の移動相は、第1のカラム(ボックス714)であり得る。
【0057】
引き続き
図5Aを参照すると、第1のカラム714における1つ以上の移動相は、第1のカラムの洗浄バッファー(ボックス715)、第1のカラムのストリッピングバッファー(ボックス717)、及び第1のカラムの平衡化バッファー(ボックス719)を含むそれぞれ別個の相に分割され得る。次の行(第2のカラムC
2を表す)では、T
1からT
2まで、1つ以上の移動相は第2のカラム(ボックス724)にあってもよく、前のサイクルのT
4からT
5まで継続する。これもまた、第2のカラムの洗浄バッファー(ボックス725)、第2のカラムのストリッピングバッファー(ボックス727)、及び第2のカラムの平衡化バッファー(ボックス729)を含むそれぞれ別個の相に分割され得る。右に移動すると、T
2からT
3まで、混合物の2回目の負荷は第2のカラム(ボックス720)であってもよく、T
3からT
4まで、混合物の初回負荷は第2のカラム(ボックス722)であってもよい。
【0058】
次の行(カラムC3を表す)では、T1からT3まで、1つ以上の移動相は第3のカラム(ボックス734)であってもよい。第3のカラム734の1つ以上の移動相は、第3のカラムの洗浄バッファー(ボックス735)、第3のカラムのストリッピングバッファー(ボックス737)、及び第3のカラムの平衡化バッファー(ボックス739)を含むそれぞれ別個の相に分割され得る。次に、T3からT4まで、2回目の負荷は第3のカラム(ボックス730)であってもよく、T4からT5まで、混合物の初回負荷は第3のカラム(ボックス732)であってもよい。
【0059】
次の行(カラムC4を表す)では、T1からT2まで、混合物の初回負荷は第4のカラム(ボックス732)であってもよい。次に、T2からT4まで、1つ以上の移動相は第4のカラム(ボックス744)にあってもよく、T4からT5まで、混合物の2回目の負荷は第3のカラム(ボックス740)であってもよい。第4のカラム744の1つ以上の移動相は、第3のカラムの洗浄バッファー(ボックス745)、第3のカラムのストリッピングバッファー(ボックス747)、及び第3のカラムの平衡化バッファー(ボックス749)を含むそれぞれ別個の相に分割され得る。
【0060】
所与の時間T
0において、T
0からの縦線が接触する各番号付きボックスがその時点でのカラムの溶液を表すように、グラフを通して縦線を引くことができる。したがって、例えば、時間T
1において2回目の負荷混合物が第1のカラム710に導入されているとき、1つ以上の移動相、例えばストリッピングバッファー727は第2のカラム724にあり、初回負荷混合物は第3のカラム732に通されている。例えば、細分725、727、及び729などのより広い相の細分は、第2のカラム724の1つ以上の移動相の等分を占めるように見えるが、いくつかの実施形態では、細分は、より広い相の不等分を占めることができる。
図5Aに示される方法はまた、本開示の実施形態の方法の一例にすぎないことが理解されるべきである。他の順序、構成、及びステップは、本開示の範囲内であると考えられる。
【0061】
図5B~5Eは、前述のように、標的ポリペプチドを含む混合物から標的ポリペプチドを調製する方法の例示的なサイクルを示す。
図5Bは、
図5Aの時間間隔T
1からT
2の間に発生し得る一連のイベントを示す。
図5Bは第1段階601にあるHIC装置を示しており、ここでは第1のゾーン610が、標的ポリペプチドを含む混合物606の2回目の負荷を受け取り、収集又は廃棄され得る2回目の負荷607の流出物を溶出している。第2のゾーン620は、1つ以上の移動相615を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相616の流出物を溶出している。第3のゾーン630は、1つ以上の移動相615を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相616の流出物を溶出している。第4のゾーン640は、混合物605の初回負荷を受け取り、混合物606の2回目の負荷を別のカラムに通している。
【0062】
図5Cは、第2段階602(
図5Aに示されるように、間隔T
2からT
3にわたって)にあるHIC装置を示しており、ここでは第1のゾーン610が混合物605の初回負荷を受け取り、収集又は廃棄され得る標的ポリペプチドを含む混合物606の2回目の負荷を別のカラムに通している。第2のゾーン620は、標的ポリペプチドを含む混合物606の2回目の負荷を受け取り、収集又は廃棄され得る2回目の負荷607の流出物を溶出している。第3のゾーン630は、1つ以上の移動相615を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相616の流出物を溶出している。第4のゾーン640は、1つ以上の移動相615を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相616の流出物を溶出している。
【0063】
図5Dは、第3段階603(
図5Aに示されるように、間隔T
2からT
3にわたって)にあるHIC装置を示しており、ここでは第1のゾーン610が1つ以上の移動相615を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相616の流出物を溶出している。第2のゾーン620は、混合物605の初回負荷を受け取り、混合物606の2回目の負荷を、収集又は廃棄され得る標的ポリペプチドを含む別のカラムに通す。第3のゾーン630は、標的ポリペプチドを含む混合物606の2回目の負荷を受け取り、収集又は廃棄され得る2回目の負荷607の流出物を溶出している。第4のゾーン640は、1つ以上の移動相615を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相616の流出物を溶出している。
【0064】
図5Eは、第4段階604(
図5Aに示されるように、間隔T
2からT
3にわたって)にあるHIC装置を示しており、ここでは第1のゾーン610が1つ以上の移動相615を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相616の流出物を溶出している。第2のゾーン620は、1つ以上の移動相615を受け取り、収集又は廃棄され得る1つ以上の移動相616の流出物を溶出している。第3のゾーン630は、混合物605の初回負荷を受け取り、混合物606の2回目の負荷を、収集又は廃棄され得る標的ポリペプチドを含む別のカラムに通す。第4のゾーン640は、標的ポリペプチドを含む混合物606の2回目の負荷を受け取り、収集又は廃棄され得る2回目の負荷607の流出物を溶出している。
【0065】
図6は、標的ポリペプチドを含む混合物から標的ポリペプチドを調製する例示的な方法800のフローチャートを示す。この方法は、標的ポリペプチドを含む混合物を複数のカラムのうちの第1のカラム(例えば、
図3Aのボックス410)に通すことを含み得る(ステップ810)。この方法は、標的ポリペプチドを含む流出物を、複数のカラムのうちの第1のカラムから第2のカラムに通すことをさらに含み得る(例えば、
図3Bに示されるような混合物306の第2の負荷)(ステップ820)。この方法は、1つ以上の移動相を第1のカラム(例えば、ボックス414)に通すことをさらに含み得る(ステップ830)。いくつかの実施形態では、この方法は、標的ポリペプチドを複数のカラムのそれぞれの出口に通すことをさらに含み得る(例えば、
図3B~3Dに示されるような1つ以上の移動相316の流出物)(ステップ840)。
図3A~3Dに関して比較しているが、当業者には、
図5A~5Eに関する比較も行われ得ることが明らかであろう。
【0066】
本開示の実施形態において、標的ポリペプチドを含む混合物はまた、1つ以上のHCPを含み得る。1つ以上の実施形態の方法を使用して混合物から標的ポリペプチドを調製した後、いくつかの流出物サンプルを得ることができる。サンプルは、混合物の1つ以上の負荷の流出物及び/又は1つ以上の移動相の流出物から収集することができる。例えば、サンプルは、混合物の初回負荷又は混合物の2回目の負荷(又は混合物の他の任意の負荷)の流出物から収集され得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、1つ以上の洗浄バッファーの流出物からのみ収集され得る。他の実施形態では、サンプルは、他の移動相の流出物及び/又は混合物の初回又は2回目の負荷から収集され得る。標的ポリペプチドを含む収集されたすべてのサンプルの収集物を集めたものは、プールと呼ばれる。
【0067】
いくつかの実施形態では、1つ以上の測定を行って、標的ポリペプチドを調製するために使用される方法の効率を確認することができる。本開示で使用される場合、効率とは、高分子量分子クリアランス率(HMW CF)、収率、及び生産性の3つの異なる要因の組み合わせを指す。いくつかの実施形態において、効率の高い方法であるほど、効率の低い方法よりも高いHMW CF、高い収率、及び高い生産性を有する。他の実施形態では、より効率的な方法は、効率の低い方法よりも高い生産性を有しつつ、1.3以上のHMW CFを維持し、80%以上の収率を維持する。さらなる実施形態では、より効率的な方法は、効率の低い方法よりも高い生産性を有しつつ、1.5以上のHMW CFを維持し、90%以上の収率を維持する。
【0068】
高分子量分子クリアランス率(HMW CF)は、負荷された混合物と比較した、収集されたプール中の相対的なタンパク質含有量の近似値である。いくつかの実施形態では、分析的サイズ排除クロマトグラフィーを実施して、高分子量分子(例えば、タンパク質)に起因するサンプルのパーセンテージ(HMW%)を決定することができる。他の実施形態では、遠心分離技術を使用することができる。サンプルを遠心分離すると、サンプルの構成成分の質量に基づいて階層に分離し、最も重い層である下澄は、一般に、タンパク質を含む最も重い分子を含む。HMW%は、遠心分離したサンプルの下澄をひとまとめにし、サンプルの総質量で割ることによって計算できる。どちらの方法を使用しても、HMW CFは、以下に示すように、式1に従って計算できる。
【0069】
【0070】
式(1)に示すように、HMW CFは、負荷された混合物のHMW%をプールのHMW%で割ることによって計算できる。いくつかの実施形態において、混合物から標的ポリペプチドを調製する方法は、1.3以上のHMW CFを有する。他の実施形態では、混合物から標的ポリペプチドを調製する方法は、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.8以上、又は2.0以上のHMW CFを有する。
【0071】
収率は、負荷混合物中にあった標的ポリペプチドの量と比較した、プールに収集された標的ポリペプチドの量の測定値である。サンプル中の標的ポリペプチドの量は、UV吸収率、電気伝導率、又は酵素免疫測定法(例えば、ELISA)によって定量化することができる。収率は、以下に示すように、式2に従って計算できる。
【0072】
【0073】
式2に示すように、収率は、HIC装置に負荷された標的ポリペプチドの質量を、プールに収集された標的ポリペプチドの質量で割ることによって計算され得る。サンプル中の標的ポリペプチドの質量は直接測定できないため、濃度(UV吸収率、電気伝導率、又は酵素免疫測定法によって計算される)を体積と掛けて質量を決定することができる。いくつかの実施形態において、混合物から標的ポリペプチドを調製する方法は、55%以上の収率を有する。他の実施形態において、混合物から標的ポリペプチドを調製する方法は、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上の収率を有する。
【0074】
生産性は、ある量の標的ポリペプチドを調製するために必要な時間とコストの定量化である。生産性は、以下に示すように、式3に従って計算できる。
【0075】
【0076】
式3に示すように、生産性は、プールに収集された標的ポリペプチドの質量を、使用した疎水性相互作用媒体の体積とプールに収集されたポリペプチドの質量を調製するために費やした時間(例えば、サイクルタイム)との積で割ることによって計算できる。いくつかの実施形態において、混合物から標的ポリペプチドを調製する方法は、約35g/L・時以上の生産性を有する。他の実施形態では、混合物から標的ポリペプチドを調製する方法は、約40g/L・時以上、約50g/L・時以上、約75g/L・時以上、約100g/L・時以上、約125g/L・時以上、約150g/L・時以上、以上約175g/L・時、約200g/L・時以上、又は約220g/L・時以上の生産性を有する。。
【0077】
実施例
以下の実施例は、本質的に限定することなく、本開示を説明することを意図している。本開示は、前述の説明及び以下の例と矛盾しない追加の態様及び実施形態を包含することが理解される。
【0078】
以下の実施例において、標的ポリペプチドは、標的ポリペプチド及びHCPを含む混合物から調製された。標的ポリペプチドは、本開示の実施形態による3つの異なる方法を使用して調製された。標的ポリペプチドはまた、比較例として従来のバッチ処理法を使用して調製された。
【0079】
実施例1
最初の例では、標的抗体を調製した。標的抗体を含む12.2g/Lの混合物300mLを、負荷流量1.67mL/分で3カラムHIC装置に負荷した。各カラムのベッド高は2.5cm、内径は1.6cm、カラム容積は5mLであった。負荷バッファー/混合物は、クエン酸ナトリウムの30ミリモーラー(mM)溶液を含み、2M酢酸溶液でpH6.0に調整された。負荷バッファー/混合物を、3つのカラムのうちの第1及び第2のカラムに負荷した。第2のカラムには第1のカラムを介して負荷した(つまり、第1のカラムからの出口により、負荷バッファーが第2のカラムに通されるようにした)。混合物をHIC装置の第1及び第2のカラムに負荷した後、混合物を3つのカラムのうちの第2及び第3に負荷し、ただし第3のカラムには第2のカラムを介して負荷した(つまり、第2のカラムからの出口により、負荷バッファーが第3のカラムに通されるようにした)。
【0080】
負荷バッファー/混合物が第2及び第3のカラムに負荷されている間に、一連の移動相をHIC装置の第1のカラムに通して、第1のカラムにおいて標的抗体を混合物の他の成分から分離し、標的抗体を収集した。続いて、カラムを再生するために一連のストリッピングバッファーを第1のカラムに通した。第2及び第3のカラムの負荷は、第1のカラムの洗浄及びストリッピングと同時に行った。このステップの後、負荷バッファー/混合物を第3及び第1のカラムに負荷し、ただし第1のカラムには第3のカラムを介して負荷した(つまり、第3のカラムからの出口により負荷バッファーが第1のカラムに通されるようにした)。この間、バッファーを第2のカラムに通して、第2のカラムに負荷した混合物から標的抗体を分離及び収集した後、一連のストリッピングバッファーを第2のカラムに通して第2のカラムを再生した。第3及び第1のカラムの負荷は、第2のカラムの洗浄及びストリッピングと同時に行った。最後に、負荷バッファー/混合物を第1及び第2のカラムに再度負荷し、前述のように第2のカラムを第1のカラムから負荷し、その間にバッファーを第3のカラムに通して、混合物から標的抗体を分離及び収集した。その後、一連のストリッピングバッファーを第3のカラムに通して第3のカラムを再生した。第1及び第2のカラムの負荷は、第3のカラムの洗浄及びストリッピングと同時に行った。このプロセスを周期的に2回繰り返した。
【0081】
一連の移動相は、洗浄バッファー、一連のストリッピングバッファー、及び平衡化バッファーを含んでいた。洗浄バッファーは40mMトリス及び30mMクエン酸ナトリウムを含み、pH6.0に調整された。各カラムを洗浄するために、4カラム容積の洗浄バッファーをカラムに加えた。
【0082】
洗浄バッファーを適用し、標的抗体を含む流出液をプールの一部としてカラムから収集した後、一連のストリッピングバッファーをカラム再生プロセスの一部としてカラムに通した。最初のストリッピングバッファーは脱イオン水を含み、2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。本明細書で使用される場合、カラム容量は、所与のカラムが保持できる液体の量を指す。次のストリッピングバッファーは1N NaOHを含み、最初のストリッピングバッファーの後に2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。次のストリッピングバッファーは脱イオン水を含み、前回のアルカリ性ストリッピングバッファーの後に2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。次のストリッピングバッファーは20vol.%のエタノールを含み、前回の脱イオン水ストリッピングバッファーの後に、2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。脱イオン水を含む最後のストリッピングバッファーをカラムに添加した(2カラム容量に等しい量)。ストリッピングバッファーを適用した後、4カラム容量分の平衡化バッファーをカラムに添加した。平衡化バッファーは、40mMトリス及び30mMクエン酸ナトリウムを含み、pH6.0に調整された。
【0083】
実施例1で実行した方法からプールを収集した後、この方法のHMW CF、収率、及び生産性を、本明細書で前述したように測定及び計算した。結果を下記の表1にまとめる。
【0084】
実施例2
第2の例では、標的抗体を調製した。標的ポリペプチドを含む729mLの12.4g/L混合物を、1.67mL/分の負荷流量で3カラムHIC装置に負荷した。各カラムのベッド高は2.5cm、内径は1.6cm、カラム容積は5mLであった。負荷バッファー/混合物は、クエン酸ナトリウムの30ミリモーラー(mM)溶液を含み、2M酢酸溶液でpH6.0に調整された。負荷バッファー/混合物を、3つのカラムのうちの第1及び第2のカラムに負荷した。第2のカラムには第1のカラムを介して負荷した(つまり、第1のカラムからの出口により負荷バッファーが第2のカラムに通されるようにした)。混合物をHIC装置の第1及び第2のカラムに負荷した後、混合物を3つのカラムのうちの第2及び第3に負荷し、ただし第3のカラムには第2のカラムを介して負荷した(つまり、第2のカラムからの出口により負荷バッファーが第3のカラムに通されるようにした)。
【0085】
負荷バッファー/混合物を第2及び第3のカラムに負荷している間に、一連の移動相をHIC装置の第1のカラムに通して、標的抗体を第1のカラムの混合物の他の成分から分離し、標的抗体を収集した。続いて、一連のストリッピングバッファーを第1のカラムに通してカラムを再生した。第2及び第3のカラムの負荷は、第1のカラムの洗浄及びストリッピングと同時に行った。このステップの後、負荷バッファー/混合物を第3及び第1のカラムに負荷し、ただし第1のカラムには第3のカラムを介して負荷した(つまり、第3のカラムからの出口により負荷バッファーが第1のカラムに通されるようにした)。この間、バッファーを第2のカラムに通して、第2のカラムに負荷した混合物から標的抗体を分離及び収集し、その後、一連のストリッピングバッファーを第2のカラムに通して第2のカラムを再生した。第3及び第1のカラムの負荷は、第2のカラムの洗浄及びストリッピングと同時に行った。最後に、負荷バッファー/混合物を第1及び第2のカラムに再度負荷し、ただし第2のカラムには前述のように第1のカラムから負荷し、その間にバッファーを第3のカラムに通して、第3のカラムに負荷した混合物から標的抗体を分離及び収集した。その後、一連のストリッピングバッファーを第3のカラムに通し、第3のカラムを再生した。第1及び第2のカラムの負荷は、第3のカラムの洗浄及びストリッピングと同時に行った。このプロセスを周期的に4回繰り返した。
【0086】
一連の移動相は、洗浄バッファー、一連のストリッピングバッファー、及び平衡化バッファーを含んでいた。洗浄バッファーは40mMトリス及び30mMクエン酸ナトリウムを含み、pH6.0に調整された。各カラムを洗浄するために、4カラム容量分の洗浄バッファーをカラムに添加した。
【0087】
洗浄バッファーを適用し、標的抗体を含む流出液をプールの一部としてカラムから収集した後、一連のストリッピングバッファーをカラム再生プロセスの一部としてカラムに通した。最初のストリッピングバッファーは脱イオン水を含み、2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。本明細書で使用される場合、カラム容量は、所与のカラムが保持できる液体の量を指す。次のストリッピングバッファーは1N NaOHを含み、最初のストリッピングバッファーの後に2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。次のストリッピングバッファーは脱イオン水を含み、前回のアルカリ性ストリッピングバッファーの後に2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。次のストリッピングバッファーは20vol.%のエタノールを含み、前回の脱イオン水ストリッピングバッファーの後に、2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。脱イオン水を含む最後のストリッピングバッファーをカラムに添加した(2カラム容量に等しい量)。ストリッピングバッファーを適用した後、4カラム容量分の平衡化バッファーをカラムに添加した。平衡化バッファーは、40mMトリス及び30mMクエン酸ナトリウムを含み、pH6.0に調整された。
【0088】
実施例2で実行した方法からプールを収集した後、HMW CF、収率、及び生産性を、本明細書で前述したように測定及び計算した。結果を下記の表1にまとめる。
実施例3
第3の例では、標的ポリペプチドを調製した。標的ポリペプチドを含む726mLの12.4g/L混合物を、6.70mL/分の負荷流量で3カラムHIC装置に負荷した。各カラムのベッド高は2.5cm、内径は1.6cm、カラム容積は5mLであった。負荷バッファー/混合物は、クエン酸ナトリウムの30ミリモーラー(mM)溶液を含み、2M酢酸溶液でpH6.0に調整された。負荷バッファー/混合物を、3つのカラムのうちの第1及び第2のカラムに負荷した。第2のカラムには第1のカラムを介して負荷した(つまり、第1のカラムからの出口により負荷バッファーが第2のカラムに通されるようにした)。混合物をHIC装置の第1及び第2のカラムに負荷した後、混合物を3つのカラムのうちの第2及び第3に負荷し、ただし第3のカラムには第2のカラムを介して負荷した(つまり、第2のカラムからの出口により負荷バッファーが第3のカラムに通されるようにした)。
【0089】
負荷バッファー/混合物を第2及び第3のカラムに負荷している間に、一連の移動相をHIC装置の第1のカラムに通して、標的抗体を第1のカラムの混合物の他の成分から分離し、標的抗体を収集した。続いて、一連のストリッピングバッファーを第1のカラムに通してカラムを再生した。第2及び第3のカラムの負荷は、第1のカラムの洗浄及びストリッピングと同時に行った。このステップの後、負荷バッファー/混合物を第3及び第1のカラムに負荷し、ただし第1のカラムには第3のカラムを介して負荷した(つまり、第3のカラムからの出口により負荷バッファーが第1のカラムに通されるようにした)。この間、バッファーを第2のカラムに通して、第2のカラムに負荷した混合物から標的抗体を分離及び収集し、その後、一連のストリッピングバッファーを第2のカラムに通して第2のカラムを再生した。第3及び第1のカラムの負荷は、第2のカラムの洗浄及びストリッピングと同時に行った。最後に、負荷バッファー/混合物を第1及び第2のカラムに再度負荷し、ただし第2のカラムには前述のように第1のカラムから負荷し、その間にバッファーを第3のカラムに通して、第3のカラムに負荷した混合物から標的抗体を分離及び収集した。その後、一連のストリッピングバッファーを第3のカラムに通し、第3のカラムを再生した。第1及び第2のカラムの負荷は、第3のカラムの洗浄及びストリッピングと同時に行った。このプロセスを周期的に4回繰り返した。
【0090】
一連の移動相は、洗浄バッファー、一連のストリッピングバッファー、及び平衡化バッファーを含んでいた。洗浄バッファーは40mMトリス及び30mMクエン酸ナトリウムを含み、pH6.0に調整された。各カラムを洗浄するために、4カラム容量分の洗浄バッファーをカラムに添加した。
【0091】
洗浄バッファーを適用し、標的抗体を含む流出液をプールの一部としてカラムから収集した後、一連のストリッピングバッファーをカラム再生プロセスの一部としてカラムに通した。最初のストリッピングバッファーは脱イオン水を含み、2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。本明細書で使用される場合、カラム容量は、所与のカラムが保持できる液体の量を指す。次のストリッピングバッファーは1N NaOHを含み、最初のストリッピングバッファーの後に2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。次のストリッピングバッファーは脱イオン水を含み、前回のアルカリ性ストリッピングバッファーの後に2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。次のストリッピングバッファーは20vol.%のエタノールを含み、前回の脱イオン水ストリッピングバッファーの後に、2カラム容量分のこのバッファーを各カラムに添加した。脱イオン水を含む最後のストリッピングバッファーをカラムに添加した(2カラム容量に等しい量)。ストリッピングバッファーを適用した後、4カラム容量分の平衡化バッファーをカラムに添加した。平衡化バッファーは、40mMトリス及び30mMクエン酸ナトリウムを含み、pH6.0に調整された。
【0092】
実施例3で実行した方法からプールを収集した後、HMW CF、収率、及び生産性を、本明細書で前述したように測定及び計算した。結果を下記の表1にまとめる。
比較例
実施例1~3の方法との比較として、標的ポリペプチドを、本明細書に記載の従来のバッチプロセスを使用して混合物から調製した。負荷添加剤、洗浄バッファー、ストリッピングバッファー、及び平衡化バッファーは、実施例の方法で使用したものと同じであったが、従来のバッチ方法を採用した。13.1g/Lの負荷混合物590gをクロマトグラフィーカラムに添加した。混合物がカラムを通過した後、4カラム容量分の洗浄バッファーをカラムに添加し、流出物を収集した。比較例の方法からプールを収集した後、HMW CF、収率、及び生産性を特性評価した。結果を表1にまとめる。
【0093】
【0094】
表1のデータからわかるように、実施例2及び3は、比較例のバッチ法よりも高い生産性を有する。さらに、実施例3は、1.5以上のHMW CFを維持し、90%以上の収率を維持しながら、他の実施例よりも高い生産性を達成することができた。
【0095】
実施例4
様々な速度での不純物破過を比較するために、3つの異なる負荷速度でHICを使用して標的抗体を調製した。表2に記載するようにカラムを調製した。
【0096】
【0097】
負荷速度は、実行した順に、300cm/時(3.93mL/分、すなわちカラム内の滞留時間4.0分)、200cm/時(2.62mL/分、すなわちカラム内の滞留時間6.0分)、及び400cm/時(5.24mL/分、すなわちカラム内の滞留時間3.0分)であった。すべて同じカラムで実行した。400cm/時を実行する前に、0.5N NaOH中で一晩の浸漬を行った。
【0098】
図7Aに示すように、高分子量パーセンテージ(HMW%)を負荷の関数としてプロットした。負荷材料のHMW%は1.78%であった。200g/L-樹脂及び400g/L-樹脂での累積プールHMW%を以下の表3に示す。
【0099】
【0100】
各負荷速度について、宿主細胞タンパク質を、F665 CHO HCP ELISAキット(Cygnus Technologies)を使用して百万分率で定量化した。得られた量を、
図7Bに示すように、負荷の関数としてプロットした。比較として、宿主細胞タンパク質を、同じ負荷材料の陰イオン交換クロマトグラフィープールから定量化し、549.61ppmで存在することがわかった。
【0101】
実施例5
標的抗体を、異なるベッド高(実施例4で使用したような20cm、及び2.5cm)を有する2つのカラムにおいてHICを使用して調製した。両方の実行は、各カラムでの滞留時間が3分になるように行われた(つまり、ベッド高20cmのカラムでの線流速は400cm/時)。負荷材料のHMW%は2.2%であった。
図7Cに示すように、各カラムのプールのHMW%を、負荷濃度の関数としてプロットした。
【0102】
当業者は、本開示の基礎となる概念が、本開示の解決策及び目的を実行するための他の方法及びシステムを設計するための基礎として容易に使用できることを理解するであろう。したがって、特許請求の範囲は、前述の説明によって制限されると見なされるべきではない。