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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20241007BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G03G21/16 180
G03G21/16 185
G03G15/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021000703
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2022106033
(43)【公開日】2022-07-19
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 崇夫
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203868(JP,A)
【文献】特開2015-004795(JP,A)
【文献】特開2006-098904(JP,A)
【文献】特開2016-173490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0037582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/02
G03G 13/14-13/16
G03G 13/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/14-15/16
G03G 15/20
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/16-21/18
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナー像を形成する画像形成部と、
回転可能に設けられ、トナー像が転写され転写ベルトと、
前記転写ベルトから記録材にトナー像を転写する転写部と、
前記転写ベルトの表面に接触して、前記転写ベルトの表面を清掃する清掃部材と、
記転写部の鉛直方向上方に設けられ、記録材に転写されたトナー像を定着ニップ部で記録材に定着させる定着装置と、
前記転写ベルトと対向するように前記転写ベルトの上方に設けられ、記録材の搬送方向に関して前記定着ニップ部の上流で空気を吸引するために記転写部と前記定着装置の間に向けて開口する開口部と、前記開口部から吸引した空気を排気するダクト部とを有する排気装置と、
前記排気装置から前記転写ベルトに向けて突出するように前記排気装置に設けられたシート部材であって、前記転写ベルトの表面に対して所定の隙間を介して対向し、前記転写ベルトの回転方向に関して前記転写部の下流で且つ前記清掃部材の上流に配置されて、前記排気装置と前記転写ベルトの間の空気が記転写ベルトの回転方向下流に流れることを遮るシート部材と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記シート部材は、前記転写ベルトの回転方向に関して前記転写部との距離が、前記転写ベルトの周長の1/3以下となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記シート部材は、長手方向が前記転写ベルトの回転方向に交差する幅方向に沿うように設けられており、前記画像形成部により形成される最大幅のトナー像よりも前記幅方向の長さが長く、且つ、前記転写ベルトの幅よりも前記幅方向の長さが短く、記転写ベルトに転写された前記最大幅のトナー像の全と重なるように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記所定の隙間は、5mm未満であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記シート部材は、可撓性を有することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
記転写ベルトと、前記転写ベルトを張架する複数の張架ローラとを有するベルトユニットを備え、
前記ベルトユニットは、前記画像形成装置の装置本体に対して着脱可能であり、着脱動作において前記シート部材が前記転写ベルトに接触することを特徴とする請求項1ないしの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ダクトは、前記開口部から吸引された空気が通過するフィルタと、前記フィルタを通過した空気を外部に排気する排気口と、を有することを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記シート部材は、前記転写ベルトの回転方向に関して前記開口部の下流に配置されていることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置として、像担持体としての感光ドラムに形成されたトナー像を一次転写部において中間転写ベルトに転写し、更に二次転写部において中間転写ベルトから記録材にトナー像を転写する中間転写方式の構成が、従来から知られている。中間転写ベルトから記録材に転写されたトナー像は、定着装置で加圧、加熱されることで記録材に定着される。また、トナー像が中間転写ベルトから記録材に転写された後は、クリーニングブレードなどの清掃部材により中間転写ベルトの表面を清掃する。
【0003】
定着装置は、二次転写部を通過した記録材にトナー像を定着するために二次転写部の記録材搬送方向下流に配置されており、例えば、特許文献1には、二次転写部の上方に定着装置が配置された構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-158600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、記録材が定着装置を通過している間に記録材の水分が蒸発し、蒸発した水分が中間転写ベルトを清掃する清掃部材に到達する場合があった。蒸発した水分は、中間転写ベルトの回転に伴って生じる気流と共に移動することにより、或いは、中間転写ベルト自体に付着することにより清掃部材に到達する。
【0006】
この際、中間転写ベルトと清掃部材の当接部(クリーニングニップ)は、二次転写部を通過する記録材が小サイズである場合、中間転写ベルトの表面のうち、記録材が通過した通過部に付着した紙粉や転写残トナーによって潤滑される。一方、中間転写ベルトの表面のうち、記録材が通過していない非通過部では水分が蓄積され、クリーニングニップで摩擦抵抗が増加する。
【0007】
中間転写ベルトの記録材の非通過部が摩擦抵抗を継続的に受け続けた場合、中間転写ベルトが塑性変形した状態で二次転写部に小サイズより大きなサイズの記録材を通過させた際、塑性変形の影響を受けた部分で転写画質が低下する虞がある。
【0008】
本発明は、転写画質の低下を抑制できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様、トナー像を形成する画像形成部と、回転可能に設けられ、トナー像が転写される転写ベルトと、前記転写ベルトから記録材トナー像を転写する転写部、前記転写ベルトの表面に接触して、前記転写ベルトの表面を清掃する清掃部材と、前記転写部の鉛直方向上方設けられ、記録材に写さたトナー像を定着ニップ部で記録材に定着させる定着装置と、前記転写ベルトと対向するように前記転写ベルトの上方に設けられ、記録材の搬送方向に関して前記定着ニップ部の上流で空気を吸引するために前記転写部と前記定着装置の間に向けて開口する開口部と、前記開口部から吸引した空気を排気するダクト部とを有する排気装置と、前記排気装置から前記転写ベルトに向けて突出するように前記排気装置に設けられたシート部材であって、記転写ベルトの表面に対して所定の隙間を介して対向し、記転写ベルトの回転方向に関して記転写部の下流で且つ前記清掃部材の上流に配置されて、前記排気装置と前記転写ベルトの間の空気が記転写ベルトの回転方向下流に流れることを遮るシート部材と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、転写画質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図。
図2】(a)中間転写ユニットの斜視図、(b)中間転写ベルトを取外した状態の中間転写ユニットの斜視図。
図3】ベルト自動調芯機構の斜視図。
図4】ベルト自動調芯機構の端部の拡大斜視図。
図5】実施形態に係る離間スライダの模式図。
図6】中間転写ユニットにおいて、(a)カラーモードにおける離間機構の状態を模式図、(b)モノクロモードにおける離間機構の状態を模式図、(c)全離間モードにおける離間機構の状態を模式図。
図7】実施形態に係る定着装置及び送風装置の斜視図。
図8】実施形態に係る二次転写部及び定着装置周辺の拡大断面図。
図9図8のA-Aで切断した画像形成装置の概略構成断面図。
図10】中間転写ユニットを装置本体から着脱するための構成を示す概略構成断面図。
図11】中間転写ユニットを装置本体から取り外す際の、二次転写部及び定着装置周辺の拡大断面図。
図12】中間転写ユニットを装置本体に装着する際の、二次転写部及び定着装置周辺の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態について、図1ないし図12を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置200の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0013】
[画像形成装置]
画像形成装置200は、装置本体の内部に4つの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pd及び中間転写ユニット20を備えた、所謂中間転写タンデム方式のプリンタである。画像形成装置200は、原稿から読取った画像情報や、外部機器から入力された画像情報に基づいて記録材Sに画像を形成して出力する。なお、記録材Sは、普通紙の他にも、コート紙等の特殊紙、封筒やインデックス紙等の特殊形状を有するもの、オーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルム、布等のシートを含むものとする。
【0014】
複数の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックのトナー像を形成する画像形成ユニットであり、それぞれ電子写真用の像担持体である感光ドラム1a、1b、1c、1dを備えている。各画像形成部の構成は、現像に用いるトナーの色が異なる以外は基本的に同様であるため、以下、イエローの画像形成部Paの構成を例にして説明する。
【0015】
画像形成部Paは、ドラム状の感光体である感光ドラム1aの周囲に、帯電装置としての帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、及びドラムクリーニング装置6を備えている。画像形成動作が開始すると、像担持体としての感光ドラム1aが矢印R1方向に回転駆動される。回転する感光ドラム1aの表面は、帯電ローラ2によって所定の極性(本実施形態では負極性)の所定の電位に一様に帯電させられる。帯電処理された感光ドラム1aの表面は、露光装置(本実施形態ではレーザスキャナ)3によって、画像情報にしたがって走査露光され、ドラム表面に静電潜像が形成される。
【0016】
感光ドラム1aに形成された静電潜像は、現像容器41の内部に現像剤を収容する現像装置4からイエローのトナーを供給されることで可視化(現像)されてトナー像となる。本実施形態では、現像装置4は、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性(本実施形態では負極性)と同極性に帯電したトナーが付着する(反転現像)。本実施形態では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。また、本実施形態では、帯電ローラ2、露光装置3及び現像装置4は、感光ドラム1上にトナー像を形成するトナー像形成手段を構成する。
【0017】
なお、画像形成装置200の装置本体201には、補給用の現像剤を収容する現像剤収容容器Ta、Tb、Tc、Tdが着脱可能に装着されている。例えば、現像剤収容容器Taには、イエローのトナーを含む現像剤が収容されており、補給装置70aを介して現像容器41に適宜補給される。また、現像剤としては、磁性キャリア及び非磁性トナーを含む二成分現像剤、磁性トナーによって構成される一成分現像剤、又はキャリア液中にトナー粒子を分散させた液体現像剤を用いることができる。
【0018】
ベルトユニットとしての中間転写ユニット20は、無端状のベルト部材である中間転写ベルト(転写ベルト)7と、中間転写ベルト7が張架される複数の張架部材としての張架ローラとを備えている。中間転写ベルト7は、具体的には、複数の張架ローラである二次転写内ローラ8、ステアリングローラ17、離間ローラ19、及び上流ガイドローラ18に巻き回され、外周面において画像形成部Pa~Pdの感光ドラム1a~1dに対向している。
【0019】
また、中間転写ベルト7の内周側には、複数の転写部材としての一次転写ローラ5a、5b、5c、5dが配置されている。一次転写ローラ5a~5dは、画像形成部Pa~Pdの感光ドラム1a~1dのそれぞれに対応する位置に配置され、感光ドラム1a~1dから中間転写ベルト7へのトナー像の転写が行われる一次転写部T1a、T1b、T1c、T1dを形成している。また、一次転写ローラ5a~5dは、中間転写ベルト7の内周面を感光ドラム1a~1dに向けて押圧し、感光ドラム1a~1dと中間転写ベルト7とを接触させて、一次転写部(一次転写ニップ)T1a~T1dとしている。
【0020】
中間転写ベルト7は、二次転写ローラとしての二次転写内ローラ8が不図示のモータによって所定方向(矢印R3)に回転駆動されることで、感光ドラム1a~1dの回転(矢印R1)に連れ回る方向(矢印R2)に回転(周回移動)する。即ち、二次転写内ローラ8は、中間転写ベルト7を回転駆動する駆動ローラでもある。
【0021】
また、二次転写内ローラ8は、中間転写ベルト7の回転方向に関して、上流ガイドローラ18の更に下流側に配置されている。このような二次転写内ローラ8は、中間転写ベルト7を挟んで二次転写外ローラ9に対向しており、中間転写ベルト7の二次転写内ローラ8に張架された部分と二次転写外ローラ9の間にニップ部として二次転写部(転写部)T2を形成している。即ち、二次転写外ローラ9は、二次転写内ローラ8に向けて押圧され、中間転写ベルト7を介して二次転写内ローラ8に当接し、中間転写ベルト7と二次転写外ローラ9とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)T2を形成する。二次転写内ローラ8は、中間転写ベルト7から記録材Sにトナー像を転写させるためのローラでもある。
【0022】
ステアリングローラ17は、中間転写ベルト7の回転方向に関して、二次転写内ローラ8の下流かつ離間ローラ19の上流に配置されている。このようなステアリングローラ17は、詳しくは後述するように、中間転写ベルト7の回転方向に交差する(本実施形態では略直交する)幅方向の位置を制御する調芯機能を有する。また、ステアリングローラ17は、中間転写ベルト7に張力を付与するテンションローラでもある。
【0023】
上流ガイドローラ18は、中間転写ベルト7の回転方向に関して、二次転写内ローラ8の上流かつ一次転写ローラ5a~5d(最下流の一次転写ローラ5d)の下流に配置されている。そして、中間転写ベルト7が一定の方向から二次転写部T2に進入するように中間転写ベルト7を案内する。また、上流ガイドローラ18及び離間ローラ19は、中間転写ベルト7の回転方向に関して、中間転写ベルト7のうち複数の感光ドラム1a~1dに対向する部分の上流側及び下流側に配置される一対の張架ローラである。上流ガイドローラ18は、一対の張架ローラのうち対向する部分の下流側に配置された張架ローラである。そして、上流ガイドローラ18及び離間ローラ19により、複数の感光ドラム1a~1dから中間転写ベルト7にトナー像が転写される転写面を形成可能である。
【0024】
離間ローラ19は、移動可能で、中間転写ベルト7の回転方向に関して、ステアリングローラ17の下流かつ一次転写ローラ5a~5d(最上流の一次転写ローラ5a)の上流に配置される。また、一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19は、離間機構300(後述、図6(a)~(c)参照)により移動させられることで、中間転写ベルト7の回転方向に沿った断面である張架断面を変更可能である。即ち、離間機構300は、詳しくは後述するように、離間ローラ19及び一次転写ローラ5a~5dを移動させることで、中間転写ベルト7の外周面を感光ドラム1a~1dの一部又は全部から離間させることが可能である。
【0025】
他の画像形成部Pb~Pdにおいても画像形成部Paと同様の画像形成動作によって感光ドラム1b~1dに、それぞれマゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が形成される。そして、感光ドラム1a~1dに形成されたトナー像は、一次転写ローラ5a~5dに印加される静電バイアス(転写バイアス)により、一次転写部T1a~T1dにおいて中間転写ベルト7に一次転写される。このとき、フルカラー画像を形成する場合には、各感光ドラム1a~1dに担持されたトナー像が互いに重なり合った状態となるように多重転写される。一次転写部T1a~T1dを通過した後に感光ドラム1a~1dに残った転写残トナー等の付着物は、ドラムクリーニング装置6によって除去される。
【0026】
中間転写ベルト7に担持されたトナー像は、二次転写外ローラ9に静電バイアス(二次転写バイアス)が印加されることにより、二次転写部T2において記録材Sに二次転写される。二次転写部T2を通過した後に中間転写ベルト7に残った転写残トナー等の付着物は、ベルトクリーニング装置11によって除去されて回収される。
【0027】
本実施形態では、ベルトクリーニング装置11は、中間転写ベルト7の回転方向に関して二次転写部T2の下流で、最上流の画像形成部Paの上流に配置されている。本実施形態では、ベルトクリーニング装置11は、中間転写ベルト7を介してステアリングローラ17と対向する位置に配置されている。ベルトクリーニング装置11は、清掃部材としてのクリーニングブレード111と、クリーニング容器112とによって構成される。クリーニングブレード111は、中間転写ベルト7を介してステアリングローラ17に向けて押圧され、中間転写ベルト7とクリーニングブレード111の当接部(クリーニングニップ113)において、中間転写ベルト7の表面を清掃する。即ち、ベルトクリーニング装置11は、回転している中間転写ベルト7の表面から、クリーニングニップ113において、クリーニングブレード111によって二次転写残トナー、紙粉などの付着物を掻き取る。そして、クリーニングブレード111によって掻き取られた付着物は、クリーニング容器112内に収容される。
【0028】
クリーニング容器112に収容されたトナーなどの付着物は、クリーニング容器112内の搬送部材(図示せず)によってクリーニング容器112から排出され、搬送経路(図示せず)を介して回収容器(図示せず)へと搬送されて回収される。本実施形態では、ドラムクリーニング装置6も、上記ベルトクリーニング装置11と同様の構成としている。
【0029】
このような画像形成動作に並行して、給送カセット90に収容された記録材Sが給送ローラ91などによって1枚ずつ給送され、レジストレーションローラ対92に向けて搬送される。レジストレーションローラ対92は、記録材Sの斜行補正を行うと共に、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdによる画像形成動作の進行に合わせて記録材Sを二次転写部T2に送り込む。
【0030】
二次転写部T2において未定着のトナー像を転写された記録材Sは、定着装置13へと受け渡される。定着装置13は、セラミックヒータなどの熱源によって加熱される加熱回転体としての加熱ベルト14と、加熱ベルト14に圧接する加圧回転体としての加圧ローラ15と、を有する。定着装置13は、加熱ベルト14と加圧ローラ15とによって記録材Sを挟持して搬送しながら記録材Sに熱及び圧力を付与する。これにより、定着装置13は、トナーを記録材Sに溶融・固着させて、画像を記録材Sに定着させる。なお、加熱ベルト14は、厚さが薄いフィルム状のベルトである。但し、加熱回転体は、フィルム以外のベルトやローラであっても良い。また、加圧回転体はベルトであっても良い。
【0031】
定着装置13を通過した記録材Sは、装置本体201の上部に設けられた排出トレイ93へと排出される。また、両面印刷を行う場合は、不図示の反転搬送路を介して第1面(表面)と第2面(裏面)とを反転した状態の記録材Sがレジストレーションローラ対92に再搬送される。そして、二次転写部T2及び定着装置13を通過して裏面に画像を形成された記録材Sが排出トレイ93に排出される。
【0032】
なお、装置本体201の上面には、ユーザーインターフェースとなる操作表示部40が設けられている。操作表示部40は、現在の設定情報などを表示可能な液晶パネルなどの表示部と、ユーザーやサービス担当者などの操作者が情報を入力可能な各種ボタンなどの操作部と、を有する。操作者は、操作表示部40から、例えば、出力画像をカラー画像とモノクロ画像との間で切り換える設定などを行うことができる。
【0033】
また、装置本体201には、操作表示部40を介して入力される情報に基づいて画像形成装置200の動作を統括制御する制御部50が搭載されている。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0034】
また、装置本体201は、中間転写ベルト7の外周面に担持されたトナー像の濃度を検知可能な濃度検知手段としてのパッチセンサPSを有する。パッチセンサPSは、中間転写ベルト7の回転方向に関して、最も下流側の画像形成部Pdの感光ドラム1dの下流側で、上流ガイドローラ18の上流側に、中間転写ベルト7の外周面に対向するように配置されている。このようなパッチセンサPSは、例えば、発光部と受光部とを有し、発光部から中間転写ベルト7の外周面に向けて光を照射し、反射した光を受光部で受光することで、中間転写ベルト7上のトナー像の濃度を検知可能である。制御部50は、パッチセンサPSを用いて出力画像の濃度調整のための制御を実行可能である。例えば、制御部50は、所定枚数毎に中間転写ベルト7の外周面に制御用画像としてのパッチ画像を形成し、パッチ画像の濃度をパッチセンサPSにより検知する。そして、この検知結果に基づいて現像装置4へのトナー補給量を調整することで、出力画像の濃度を適正に保つようにする。
【0035】
また、本実施形態では、各画像形成部Pa~Pdにおいて、感光ドラム1a~1dと、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ2及びドラムクリーニング装置6とは、一体的に装置本体201に対して着脱可能なドラムユニットを構成している。また、各画像形成部Pa~Pdにおいて、現像装置4は、実質的に単独で装置本体201に対して着脱可能な現像ユニットを構成している。また、中間転写ベルト7、各張架ローラ8、17、18、19、各一次転写ローラ5a~5d及びベルトクリーニング装置11は、一体的に装置本体201に対して着脱可能な中間転写ユニット20を構成している。
【0036】
[中間転写ユニット]
次に、ベルト搬送装置の一例である中間転写ユニット20の内部構成及び中間転写ベルト7のステアリングを行うための構成について、図2(a)ないし図4を用いて説明する。ここで、画像形成装置200及びその要素に関して、図1の紙面手前側を「正面(前)」側、紙面奥側を「背面(後)」側とする。この正面側と背面側とを結ぶ方向は、感光ドラム1a~1dの回転軸線方向と略平行であるものとする。また、画像形成装置200及びその要素に関して、上下方向は重力方向(鉛直方向)の上下を言うものであるが、それぞれ直上、直下のみを意味するものではなく、それぞれ注目する要素又は位置を通る水平面よりも上側、下側を含む。
【0037】
図2(a)は、中間転写ユニット20を背面側の斜め上から見た斜視図である。また、図2(b)は、中間転写ベルト7を取り外した状態の中間転写ユニット20を背面側の斜め上から見た斜視図である。なお、図2(a)及び図2(b)では、簡単のため、ベルトクリーニング装置11の図示は省略されている。
【0038】
図2(a)、(b)に示すように、中間転写ユニット20は、後述するガイド部材としての転写レールによって支持される、中間転写ユニット20の枠体(保持部材)としての転写フレーム21を有する。二次転写内ローラ8、上流ガイドローラ18及び離間ローラ19は、それぞれ転写フレーム21の正面側の側部と背面側の側部とに挟まれる形で、それぞれの回転軸線方向の両端部が上記各側部に軸受部材を介して回転可能に支持されている。
【0039】
ここでは、これら二次転写内ローラ8、上流ガイドローラ18及び離間ローラ19の回転軸線方向を中間転写ベルト7の幅方向(中間転写ベルト7の搬送方向と略直交する方向)とする。なお、二次転写内ローラ8、上流ガイドローラ18及び離間ローラ19の回転軸線方向は、各感光ドラム1a~1dの回転軸線方向と略平行である。また、詳しくは後述するように、ステアリングローラ17を含む自動調芯機構17Uは、転写フレーム21に設けられたステアリング支持部(図示せず)によって支持されている。
【0040】
駆動ローラの機能を有する二次転写内ローラ8の回転軸線方向の一端部(本実施形態では背面側の端部)には、駆動伝達手段としての駆動カップリング34が取り付けられている。駆動カップリング34は、中間転写ユニット20が装置本体201に装着された状態で、装置本体201に設けられたベルト駆動ユニット(図示せず)の出力軸に連結され、ベルト駆動ユニットからの駆動力を二次転写内ローラ8に伝達する。ベルト駆動ユニットは、モータなどの駆動源と、駆動カップリング34に係合するカップリング部材と、を有する。
【0041】
二次転写内ローラ8は、ゴムなどの中間転写ベルト7に対する摩擦係数が比較的高い材質で構成された表面を有しており、駆動カップリング34を介して駆動力が伝達されることで中間転写ベルト7を図2(a)中の矢印R2方向に搬送する。なお、本実施形態では、駆動伝達手段として駆動カップリング34を用いたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、駆動伝達手段として接離可能なギアを用いて、装置本体201に設けられた駆動源と中間転写ユニット20に設けられた駆動ローラとを連結してもよい。
【0042】
図3及び図4は、本実施形態における自動調芯機構17Uの構成について説明するための斜視図である。図3は、自動調芯機構17Uの全体を背面側の斜め上から見た斜視図であり、図4は、自動調芯機構17Uの背面側の端部の近傍の斜視図である。本実施例では、自動調芯機構17Uは、ステアリングローラ17、並びに、後述するステアリング軸受23、スライドガイド24、テンションバネ25及び揺動板26などを有して構成される。
【0043】
本実施形態では、中間転写ユニット20は、ステアリング機構としての自動調芯機構17Uを有する。自動調芯機構17Uは、前述のようにして搬送される中間転写ベルト7に対し、ステアリングローラ17がその回転軸線方向の両端部の摩擦力のバランスを維持するように自動的に傾動する構成とされている。これにより、自動調芯機構17Uは、センサーやアクチュエータを必要とせずに、中間転写ベルト7の傾動を制御して、中間転写ベルト7の調芯(ステアリング)、すなわち、中間転写ベルト7の幅方向の位置を制御することが可能である。
【0044】
図3に示すように、ステアリングローラ17は、円筒状のローラ本体17aと、ステアリングローラ17の回転軸線方向に関するローラ本体17aの両端部から外側に突出するローラ軸17bと、を有する。ローラ本体17aの回転軸線方向の両端部に対向する位置には、それぞれ軸受部材としてのステアリング軸受23が配置されている。各ローラ軸17bは、図4に示すように、それぞれ対応するステアリング軸受23に設けられた支持部(軸受部)23aに嵌挿される形でステアリング軸受23に回転可能に支持される。
【0045】
一対のステアリング軸受23は、ステアリングローラ17の回転軸線方向の両端部を支持した状態で、支持部材としての揺動板26に支持されている。つまり、各ステアリング軸受23は、ステアリングローラ17の回転軸線方向と略平行な揺動板26の長手方向の両端部に取り付けられた軸受支持部材としてのスライドガイド24により、スライド移動可能に支持されている。ステアリング軸受23とスライドガイド24との間には、付勢手段としての付勢部材である圧縮コイルバネで構成されたテンションバネ25が圧縮された状態で設けられている。一対のテンションバネ25は、揺動板26の長手方向の両端部において一対のステアリング軸受23に対してそれぞれ付勢力を付与する。
【0046】
揺動板26は、ステアリングローラ17を揺動(回動、傾動)させることで、二次転写内ローラ8などの他の張架ローラに対するステアリングローラ17の相対的なアライメントを変更可能な状態でステアリングローラ17を支持する、揺動部材を構成する。なお、ここでは、二次転写内ローラ8などの他の張架ローラに対するステアリングローラ17のアライメントを、単にステアリングローラ17のアライメントともいう。また、テンションバネ25は、ステアリングローラ17を中間転写ベルト7の内周面に押圧して中間転写ベルト7に張力を付与する張力付与手段を構成する。
【0047】
図3及び図4に示すように、スライドガイド24は、ステアリング軸受23を、図4中の矢印K1方向、すなわち、テンションバネ25の中間転写ベルト7に対する付勢方向(加圧方向)に沿う方向に移動するようにガイドする嵌合溝(凹部)243を有する。テンションバネ25は、嵌合溝243内において、一端部がスライドガイド24に設けられた座面に当接し、他端部がステアリング軸受23に設けられた座面に当接する。つまり、一対のスライドガイド24は、一対のステアリング軸受23を、それぞれテンションバネ25の中間転写ベルト7に対する付勢方向(加圧方向)に沿って案内する案内部を構成する。これにより、各テンションバネ25の付勢力を、それぞれ対応するステアリング軸受23に対して有効に伝達することができる。
【0048】
図2(a)に示すように、中間転写ベルト7が複数の張架ローラ8、17、18、19に張架された状態では、ステアリング軸受23は、テンションバネ25を圧縮する方向に移動する。したがって、この状態では、テンションバネ25の弾発力によってステアリングローラ17が中間転写ベルト7の内周面に押し付けられ、中間転写ベルト7に張力が発生する。このように、本実施形態では、ステアリングローラ17は、テンションバネ25からの付勢力によって中間転写ベルト7に適度な張力を付与するテンションローラ(張力付与ローラ)を兼ねている。
【0049】
図3に示すように、揺動板26には、その長手方向の中央部に、支持軸としての回動軸部材27が、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿って転写フレーム21側に突出した状態で固定されている。また、揺動板26は、その長手方向の両端部に、それぞれスライドガイド24が取り付けられている。図2(b)及び図4に示すように、回動軸部材27は、転写フレーム21に設けられたステアリング支持部に回動可能な状態で嵌合される。これにより、揺動板26は、転写フレーム21によって揺動可能(回動可能、傾動可能)に支持される。図3に示すように、揺動板26は、ステアリングローラ17を支持した状態で、回動軸部材27の軸線であるステアリング軸線Jを中心とする揺動方向Roに揺動可能である。これにより、揺動板26の長手方向の端部は、図4中の矢印ST1方向に沿って図中上下方向に移動可能である。このように、ステアリングローラ17のアライメントを変化させるためのアライメント変化手段としての自動調芯機構17Uは、ステアリングローラ17と共に転写フレーム21に対して揺動可能なユニットとして構成される。
【0050】
[中間転写ベルトの離間機構]
次に、中間転写ベルト7を感光ドラム1a~1dから離間可能とするための第2離間機構としての離間機構300について、図5及び図6(a)~(c)を用いて説明する。図5は、離間機構300を構成する後述する離間スライダ30を正面側から見た模式的な側面図である。図6(a)~(c)は、離間機構300による離間動作を説明するための離間機構300を正面側から見た模式的な側面図である。図6(a)は、カラーモード(以下、「CLモード」ともいう。)、図6(b)は、モノクロモード(以下、「BKモード」ともいう。)、図6(c)は、全離間モードの状態を示している。
【0051】
移動機構としての離間機構300は、スライド部材としての離間スライダ30、カム部材としての離間カム31、離間カム軸32などを有する。制御部50は、離間機構300を制御して離間ローラ19を移動させることにより、中間転写ベルト7の回転方向に沿った断面である張架断面を変形可能である。また、離間機構300は、複数の一次転写ローラ5a~5dも移動可能である。
【0052】
前述のように、中間転写ベルト7の内周面側には、4つの感光ドラム1a~1dのそれぞれに対応して4つの一次転写ローラ5a~5dが配置されている。本実施形態では、これらの一次転写ローラ5a~5dと、中間転写ベルト7の回転方向に関してこれらの一次転写ローラ5a~5dよりも上流に位置する離間ローラ19とは、転写フレーム21に対して相対移動可能である。本実施形態では、各一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19は、図6(a)~(c)の上下方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に対して近付く方向及び離れる方向に沿ってスライド移動可能とされている。
【0053】
一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19の移動は、図5に示す移動部材としての離間スライダ30のスライド動作によって行われる。離間スライダ30は、中間転写ユニット20の転写フレーム21(図2(a)及び図2(b)参照)の正面側の側部と背面側の側部とに隣接して、それぞれ転写フレーム21の内部に収容されている。転写フレーム21の正面側と背面側とにそれぞれ配置される離間スライダ30は、同様(中間転写ベルト7の幅方向の中央に対して略対称)の形状を有している。
【0054】
離間スライダ30は、4つの一次転写ローラ5a~5dのそれぞれに対応する4つのカム面30a、30b、30c、30d、及び離間ローラ19に対応する1つのカム面30eを有する。離間スライダ30は、図中左右方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿う方向に沿ってスライド移動可能に転写フレーム21に保持されている。転写フレーム21の正面側と背面側とにそれぞれ配置される離間スライダ30は、同期して上記移動方向にスライド移動するように構成されている。
【0055】
離間スライダ30の各カム面30a~30eは、それぞれ離間スライダ30のスライド移動方向に対して傾斜した傾斜面301と、離間スライダ30のスライド移動方向と略平行な平坦部302と、を有する。各カム面30a~30eは、後述するモードの切り換えにおける各一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19の動作を達成できるように形成されている。例えば、離間ローラ19に対応するカム面30eは、離間ローラ19の図中下方の位置に対応する傾斜面301と、離間ローラ19の図中上方の位置に対応する平坦部302と、を有する。
【0056】
図6(a)、(b)、(c)に示すように、各一次転写ローラ5a~5dは、それぞれの回転軸線方向の両端部が、対応する一次転写軸受29a~29dによって回転可能に支持されている。各一次転写軸受29a~29dは、各一次転写ローラ5a~5dの回転軸線方向の両端部側において、転写フレーム21に保持されている。各一次転写軸受29a~29dは、図中上下方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に対して近付く方向及び離れる方向に沿って移動可能に嵌合された状態で、転写フレーム21に保持されている。また、各一次転写軸受29a~29dは、図中左右方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿う方向への移動を規制されている。
【0057】
各一次転写軸受29a~29dには、それぞれ離間スライダ30の各カム面30a~30dに当接する当接部a1~d1が設けられている。また、各一次転写軸受29a~29dと転写フレーム21との間には、付勢手段としての付勢部材である圧縮コイルバネで構成された一次転写バネSPa~SPdが設けられている。一次転写バネSPa~SPdは、それぞれ各一次転写軸受29a~29dをカム面30a~30dに押圧するように図中下方へ向けて付勢する。離間スライダ30がスライド移動すると、各当接部a1~d1が各カム面30a~30dに当接した状態で、各一次転写軸受29a~29dが図中上下方向に沿って移動することにより、各一次転写ローラ5a~5dが図中上下方向に沿って移動する。
【0058】
図6(a)、(b)、(c)に示すように、離間ローラ19も、各一次転写ローラ5a~5dと同様にして移動可能とされている。つまり、離間ローラ19は、回転軸線方向の両端部が、離間ローラ軸受29eによって回転可能に支持されている。離間ローラ軸受29eは、離間ローラ19の回転軸線方向の両端部側において、転写フレーム21に保持されている。離間ローラ軸受29eは、図中上下方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に対して近付く方向及び離れる方向に沿って移動可能に嵌合された状態で、転写フレーム21に保持されている。離間ローラ軸受29eは、図中左右方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿う方向への移動を規制されている。
【0059】
離間ローラ軸受29eには、離間スライダ30のカム面30eに当接する当接部e1が設けられている。また、離間ローラ軸受29eと転写フレーム21との間には、付勢手段としての付勢部材である圧縮コイルバネで構成された離間ローラバネSPeが設けられている。離間ローラバネSPeは、離間ローラ軸受29eをカム面30eに押圧するように図中下方へ向けて付勢する。離間スライダ30がスライド移動すると、当接部e1がカム面30eに当接した状態で、離間ローラ軸受29eが図中上下方向に沿って移動することにより、離間ローラ19が図中上下方向に沿って移動する。
【0060】
離間スライダ30は、離間カム軸32に取り付けられた離間カム31と係合するスライド付勢面30f(図5)を有する。離間スライダ30は、離間カム31によってスライド付勢面30fが押圧されることで、図中左右方向、すなわち、複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿う方向に付勢される。離間カム軸32は、転写フレーム21の正面側の側部と背面側の側部との間に挟まれる形で、その回転軸線方向の両端部が軸受部材を介して上記各側部に回転可能に支持されている。
【0061】
また、離間カム軸32の回転軸線方向の両端部に、それぞれ離間カム31が固定されている。離間カム軸32の回転軸線方向の一端部(本実施形態では背面側の端部)には、中間転写ユニット20が装置本体201に装着された状態で、装置本体201に設けられた駆動源に連結される、離間カップリング33(図2(a))が取り付けられている。離間スライダ30は、一次転写軸受29a~29d及び離間ローラ軸受29eの移動方向と交差する方向に移動可能である。
【0062】
本実施形態では、このように離間スライダ30及び離間カム31を備えた離間機構300により各一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19の移動が行われ、図6(a)、(b)、(c)にそれぞれ示すモードの切り換えが行われる。なお、このモードの切り換えは、画像形成装置200に設けられた制御部50(図1)からの制御信号に基づき、離間カム軸32の回転位相が制御されることで達成される。また、ここではCLモード、BKモード、全離間モードの順に切り換わる場合の動作を例に説明するが、動作を逆にたどることで任意のモード間で切り換え可能である。
【0063】
図6(a)に示すCLモードでは、各一次転写ローラ5a~5d及び離間ローラ19がいずれも図中下方の位置に保持され、中間転写ベルト7は各感光ドラム1a~1dに当接する。この状態では、各感光ドラム1a~1dにトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト7を介して記録材Sに転写することで、フルカラー画像を記録材Sに形成することができる。
【0064】
図6(a)に示すCLモードから、図6(b)に示すBKモードに切り換わる場合、離間カム31が図中矢印R4方向(時計回り方向)に90度回転し、離間スライダ30が図中右方向(図6(b)中の矢印K2方向)にスライド移動する。BKモードでは、イエロー、マゼンタ、シアンの各色用の一次転写ローラ5a、5b、5cが図中上方の位置へ移動して中間転写ベルト7の内周面から離間すると共に、離間ローラ19も図中上方の位置へと移動する。このとき、中間転写ベルト7は、図中上方の位置の離間ローラ19と図中下方の位置に保持されたままのブラック色用の一次転写ローラ5dとに張架された状態となり、ブラック色用の感光ドラム1d以外の感光ドラム1a、1b、1cから離間する。この状態では、ブラック色用の感光ドラム1dにトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト7を介して記録材Sに転写することで、ブラック単色画像を記録材Sに形成することができる。
【0065】
図6(b)に示すBKモードから、図6(c)に示す全離間モードに切り換わる場合、離間カム31が図中矢印R4方向(時計回り方向)に更に90度回転し、離間スライダ30が更に図中右方向(図6(c)中の矢印K2方向)にスライド移動する。全離間モードでは、全ての一次転写ローラ5a~5dが図中上方の位置へ移動して中間転写ベルト7の内周面から離間すると共に、離間ローラ19は図中上方の位置に留まる。このとき、中間転写ベルト7は、図中上方の位置の離間ローラ19と上流ガイドローラ18(図1)とに張架された状態となり、全ての感光ドラム1a~1dから離間する。中間転写ユニット20は、中間転写ベルト7の交換作業が行われる場合の他、例えば、画像形成装置200が画像形成動作(印刷ジョブ)の開始を指令する信号の待機中である場合に、全離間モードとされる。
【0066】
[送風装置]
次に、定着装置13を送風により冷却する送風装置(冷却装置)について説明する。図7は、送風装置500を背面側から見た斜視図である。送風装置500は、定着装置13に隣接して配置され、定着装置13の所定の領域に送風する。具体的には、送風装置500は、画像形成装置200において使用可能な記録材Sのうち、幅方向の長さである幅サイズが最大Wmaxの記録材Smaxよりも幅が狭いWsmallの記録材Ssmallに対して定着処理(画像加熱処理)を施す際に用いる。これは、加熱ベルト14の記録材Sと接触しない領域(以下、非接触領域或いは非通過部と呼ぶ)の過度な温度上昇を防止するために、この非接触領域を送風により選択的に冷却するためのものである。
【0067】
送風装置500は、冷却ファン501a、501b、送風ダクト502a、502b、開口部503a、503bを有している。冷却ファン501a、501bは、図示しないサーミスタによる加熱ベルト14表面の検出温度が所定の温度(本実施形態では200℃)に上昇すると、制御部50からの命令(動作を開始させる信号)を受けて、駆動を開始する。冷却ファン501a、501bからの冷却風は、それぞれ送風ダクト502a、502bを介し、各々の開口部503a、503bを通って加熱ベルト14の長手方向(幅方向)の一部の領域、本実施形態では両端付近の領域(所定の領域)に吹き付けられる。なお、冷却ファン501a、501bは、制御部50により、サーミスタに応じて回転速度を任意に変更することが可能である。
【0068】
[UFP発生の仕組み]
定着装置13においては、記録材Sの定着処理の際にトナーに含有された離型剤に起因する、UFP(微小ダスト)が発生することが知られている。ここでUFP発生の仕組みについて説明する。
【0069】
定着装置13は、記録材Sに高温の回転体対(加熱ベルト14、加圧ローラ15)を接触させることでトナー像を定着させている。このような構成を用いて定着処理を行う場合、定着処理時に一部のトナーが加熱ベルト14に転移(付着)してしまうことがある。これをオフセット現象と呼ぶが、オフセット現象は画像不良の原因となるため、対策を行うことが求められる。
【0070】
そこで、一般に画像形成装置200に用いられるトナーには、離型剤としてのワックスを内包させている。このトナーは、加熱される際に、内部のワックスが溶解して染み出すようになっており、そのため、このトナー像に定着処理を行うと、溶解したワックスによって加熱ベルト14の表面が覆われることになる。表面がワックスによって覆われた加熱ベルト14は、ワックスの持つ離型作用により、トナーが付着し難くなる効果が得られる。
【0071】
なお、本実施形態では、純粋なワックスの他に、ワックスの分子構造を含んだ化合物もワックスと呼んでいる。例えば、トナーの樹脂分子と炭化水素鎖等のワックス分子構造が反応した化合物もワックスと称する。また、離型剤としては、ワックスの他にシリコンオイル等の離型作用を有する物質を用いてもよい。
【0072】
ワックスは、溶融する際に、その一部が気化(揮発)してしまう。これは、ワックスが含有する分子成分の大きさにバラつきがあるためであると考えられる。つまり、ワックスには、鎖が短く沸点の低い低分子成分と、鎖が長く沸点の高い高分子成分が含まれており、沸点の低い低分子成分が先に気化すると考えられる。気化(ガス化)したワックス成分が空気中で冷やされると、数nm~数百nm程度の微粒子が発生する(発生する微粒子の多くは数nm~数十nmの粒径であると推察される)。すわなち、この微粒子が前述のUFPである。
【0073】
上記の仕組みによりUFPが発生するため、UFPは熱をワックスに加える定着ニップ部Nから最も発生する。また、加熱ベルト14が最も高温となるのは、加熱ベルト14の回転やヒータ39(図8など)の配置等から定着ニップ部Nの上流側であるため、UFPの発生もまた定着ニップ部Nの上流で最大となることが推察できる。更には、記録材Sに転写されたトナー像からもUFPが発生するため、UFPは定着ニップ部Nの画像領域全域から発生することも分かる。
【0074】
[UFP低減構成及び排熱構成]
次に、UFPを低減する構成を説明する。UFPの低減は、装置本体内に配置したフィルタおよびエア吸引を用いて発生したUFPを捕集し、機外に排出されるUFP量を低減する構成が一般的である。ここで、フィルタの配置であるが、UFPの最大発生位置である定着ニップ部Nの上流側の画像領域近傍にフィルタを配置する。
【0075】
図8は、二次転写部T2および定着ニップ部Nの拡大模式図であり、図9は、図8における排気装置600及び画像形成装置200の断面図(A-A断面)である。UFP低減構成としての排気装置600は、記録材の搬送方向に関して、二次転写部T2と定着装置13の定着ニップ部Nとの間に配置され、二次転写部T2と定着装置13の間の空気を外部に排気する。
【0076】
排気装置600は、長手方向が幅方向に沿うダクト61と、ダクト61内に気流(エアフロー)を発生させる排気ファンFとを有する。また、ダクト61は、吸気口(開口部)62と、フィルタ63と、排気口64とを有する。吸気口62は、二次転写部T2と定着装置13の間に向けて開口し、長手方向が幅方向に沿うように形成されている。フィルタ63は、吸気口62から吸気された空気が通過するように配置され、上述のUFPを回収(濾過)する。排気口64は、フィルタ63を通過した空気を外部(機外)に排気する。また、ダクト61には、可撓性を有するシート材で構成されたシート部材SHが設置されているが、詳細は後述する。
【0077】
以下、排気装置600について詳しく説明する。本実施形態におけるダクト61は、定着装置13の長手に沿って長い横断面矩形の中空体である。吸気口62は、当該ダクト61の長手方向の一側面(定着装置13側の面)に長手に沿う開口部として形成されている。即ち、吸気口62は、定着ニップ部Nの長手方向に沿って延伸している。そして、フィルタ63は、吸気口62を覆うように吸気口62に沿って配設されている。つまり、フィルタ63は、長手方向が記録材の搬送方向と直交する方向に延伸するように形成された平面状の部材であり、吸気口62に固定されている。
【0078】
ダクト61の一方の端部(手前端部)は閉鎖されており、他方の端部は排気口64として開放されている。ダクト61の内部の排気口64寄りの位置に排気ファンFが配設され、排気ファンFが駆動することでダクト61内のエアが排気口64から排気され、フィルタ63でカバーされている吸気口62からダクト61内にエアが吸入される。また、ダクト61は、二次転写部T2と定着ニップ部Nとの間において定着装置13の加熱ベルト14側に配置されている。これは前述の通り、ワックスを揮発させる熱源が加熱ベルト14側にあり、UFPの発生源に近いため、より効果的にUFPの捕集が可能となるように配置している。
【0079】
吸気口62は、二次転写部T2と定着ニップ部Nとの間の中間よりも定着ニップ部N側に位置しており、さらに、定着ニップ部Nの近傍に位置している。即ち、フィルタ63でカバーされている吸気口62は定着ニップ部Nの上流側の近傍に配置されている。具体的には、定着装置13の加熱ベルト14や加圧ローラ15を収容している筐体131の、記録材の入口近傍に配置されている。
【0080】
上記構成の排気装置600は、排気ファンFの駆動により、フィルタ63でカバーされている吸気口62から二次転写部T2と定着ニップ部Nとの間におけるUFPを含むエアをフィルタ63で濾過しながらダクト61内に吸入する。そして、フィルタ63によりUFPが濾過されたエアを排気口64から機外に排気するように構成されている。この結果、この排気装置600により機外に排出されるUFPは減少する。
【0081】
吸気口62は、図9に示すように、記録材の搬送方向と直角方向(幅方向)に一定の長さを有している。これにより、記録材Sのトナー像から加熱ベルト14に移行したワックスから発生するUFPを加熱ベルト14の長手方向(幅方向)において確実に捕集できるように構成されている。図9において、WFは吸気口62の長手方向の長さ、WTは記録材上の画像形成可能領域の幅(最大画像幅)である。W7は中間転写ベルト7の幅である。吸気口62の長さWFは最大画像幅WTを上回るように設定されている。本実施形態では、WFは、中間転写ベルト7の幅方向の長さであるW7よりも大きくしている。
【0082】
[排熱構成]
次に、画像形成部Pa~Pdの内部の排熱構成を説明する。当構成では、排気装置600の動作により、UFPの低減と共に装置本体201内部からの排熱も実施している。画像形成部Pa~Pdは、それぞれ内部にトナー像を形成するためのトナーを内封しているが、トナーは熱で溶融するという仕組み上、装置本体201内部の昇温に弱いということが言える。例えば、装置本体201の内部が昇温し、トナーの融点を超えれば、画像形成部Pa~Pdの内部でトナーが融着して凝集塊となり、適切にトナー像を形成することができず、不良画像となることなどが知られている。
【0083】
更には、装置本体201の昇温がトナーの融点を大きく超える場合などでは、画像形成部Pa~Pdの内部でトナーが固着し、画像形成部Pa~Pdの動作それ自体に影響を与える虞がある。したがって、装置本体201内部の、特に画像形成部Pa~Pdの近傍の排熱を行うことは、装置本体を適切に動作させるために極めて重要であるといえる。
【0084】
ここで、画像形成部Pa~Pdの近傍を昇温させる熱源としては、画像形成部Pa~Pdの駆動源などが挙げられるが、寄与度の大きい熱源としては、定着装置13となる。理由としては、上述した通り、トナー像を溶融するための熱を記録材Sに与えるという仕組み上、溶融に用いられる以外の余熱の大部分を、その周囲に放散しているためである。したがって、定着装置13の周囲、特に定着ニップ部Nの近傍に、装置本体201内部から外部へと排熱を行う気流経路を配置することが望ましい。更には、気流経路は、画像形成部Pa~Pdとの境界でもある、定着ニップ部Nの上流部に配置することが適切であるといえる。以上の理由から、当構成では、排気装置600の動作により、UFPの低減と共に装置本体201内部からの排熱も実施している。
【0085】
[シート部材]
次に、ダクト61に設けられた遮蔽部材としてのシート部材SHに関して説明する。図8及び図9に示すように、シート部材SHは、二次転写部T2と清掃部材としてのクリーニングブレード111の間の中間転写ベルト7の表面に対して所定の隙間H1を介して対向するように配置されている。また、シート部材SHは、長手方向が中間転写ベルト7の回転方向に交差する幅方向に沿うように配置されている。そして、シート部材SHは、二次転写部T2と定着装置13の間から中間転写ベルトの回転方向下流に流れる空気を遮る。このようなシート部材SHは、板状部材であり、排気装置600に固定されている。
【0086】
本実施形態では、定着装置13は、二次転写部T2の上方に配置されているため、シート部材SHも中間転写ベルト7の上方に、中間転写ベルト7の搬送方向R2と直交する幅方向に延伸するように配置されている。また、定着装置13に隣接して配置される排気装置600も中間転写ベルト7の上方に位置しており、シート部材SHは、この排気装置600のダクト61に接着によって設置されている。また、シート部材SHは、可撓性を有するシート材により構成されており、本実施形態では、厚さ100μmのウレタンシート材によって構成されている。
【0087】
また、シート部材SHと中間転写ベルト7とは、所定の隙間H1を隔てており、本実施形態では、所定の隙間H1は5mm未満(H1<5mm)としている。このようにシート部材SHと中間転写ベルト7との間に僅かな隙間を設ける理由は、次の通りである。即ち、前述の通り画像形成動作中は中間転写ベルト7の表面には二次転写残トナーなどが付着し、付着物を掻き取るためのベルトクリーニング装置11がシート部材SHの下流側に設けられているためである。つまり、接触によるシート部材SHへの二次転写残トナー付着を防止するためである。
【0088】
また、シート部材SHは、中間転写ベルト7の回転方向に関して二次転写部T2との距離L1が、中間転写ベルトの周長の1/3以下となる位置に配置されている。即ち、シート部材SHは、ベルトクリーニング装置11よりも二次転写部T2に近い位置に配置されている。
【0089】
更に、シート部材SHは、画像形成部Pa~Pdにより形成される最大幅のトナー像よりも幅方向の長さが長く、中間転写ベルトに転写された最大幅のトナー像の幅方向全域と中間転写ベルト7の回転方向に関して重なるように配置されている。即ち、図9に示すように、シート部材SHの幅WSは、最大幅のトナー像の幅(最大画像幅)WTより大きくなるように構成され、WS>WTの関係が成立する。また、シート部材SHは、最大画像幅WTが幅WSの範囲内に位置するように配置されている。本実施形態では、トナー像の幅方向中央が中間転写ベルト7の幅方向中央に位置するように中央基準で転写されるため、シート部材SHもその幅方向中央位置が中間転写ベルト7の幅方向中央位置に位置するように配置されている。そして、WS>WTの関係が成立するようにしている。また、クリーニングブレード111の幅W11も、二次転写残トナーを掻き取る構成上、W11>WTの関係が成立するように構成されている。
【0090】
このようなシート部材SHの機能としては、二次転写部T2と定着装置13の定着ニップ部Nとの間(定着前空間)の空気がベルトクリーニング装置11へと到達することを抑制することにある。記録材Sが定着ニップ部Nを通過する際には、記録材の水分が蒸発する。また、前述の通り、送風装置500は定着装置13の加熱ベルト14に対して冷却風を吹き付けるが、記録材Sが定着ニップ部Nを通過中はこの冷却風が記録材Sにも到達する。画像形成装置200が設置されている環境が多湿である場合、記録材Sは吸湿しており、冷却風により記録材Sの水分が蒸発させられる。そして、定着ニップ部Nでの記録材Sの加熱に伴って蒸発した水分や、冷却風により蒸発した水分が定着前空間に滞留する場合があった。そして、中間転写ベルト7のR2方向への搬送動作に伴い、定着前空間からベルトクリーニング装置11へと向かう気流が発生し、蒸発した水分がベルトクリーニング装置11に到達する虞があった。前述したように、水分がクリーニングブレード111と中間転写ベルト7との当接部(クリーニングニップ)に到達すると、中間転写ベルト7の表面のうち、記録材が通過していない非通過部では水分が蓄積されてしまう。そして、クリーニングニップで摩擦抵抗が増加する虞がある。
【0091】
本実施形態では、上述のようにシート部材SHを設けることで、シート部材SH、定着装置13、中間転写ユニット20、二次転写外ローラ9、外装カバーや搬送路を含む右扉RD(図10)、排気装置600によって定着前空間を略閉空間とするができる。これにより、前述の水分を帯びた空気を定着前空間内に留めておくことが可能となる。加えて、定着前空間には排気装置600が配置されていることから、水分や熱、さらにはUFPも効率的に装置本体201の外部へと排気することが可能となっている。
【0092】
ここで、シート部材SHは水分をベルトクリーニング装置11へ到達することを抑制しているが、水分がベルトクリーニング装置11へと到達する場合の影響に関して以下説明する。前述の通り、ベルトクリーニング装置11は、クリーニングブレード111によって中間転写ベルト7の付着物を掻き取る。掻き取られた付着物は、クリーニングニップ113に付着し、付着物が追加で掻き取られた場合に一部が入れ替わる形で落下してクリーニング容器112内に収容される。つまり、クリーニングニップ113には基本的に付着物が滞留し続ける。したがって、前述の水分を帯びた空気がベルトクリーニング装置11まで到達すると、クリーニングニップ113の付着物と混合し、粘性を有した混合物となる。
【0093】
この混合物は、中間転写ベルト7が搬送されるうえで抵抗となる。中間転写ベルト7は、例えば厚さ100μm以下の合成樹脂を主成分とするので、クリーニングブレード111と混合物とによって抵抗を付与され続けられた場合、中間転写ベルト7に疲労変形(永久伸び)が発生する虞がある。中間転写ベルト7が幅W7の全領域、あるいは最大画像幅WTの領域で疲労変形により一様に伸びた場合は記録材Sに対する転写画質に影響は無いが、部分的に伸びた場合は転写画質に影響が発生する。この原理に関して以下説明する。
【0094】
二次転写部T2に記録材Sを通過させると、前述の通り、二次転写部T2において二次転写残トナーと共に、記録材Sが紙である場合には紙粉が中間転写ベルト7表面に付着する。紙粉は、裁断時に発生した切りくずや、剥離した紙繊維、クレー、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の填料などを主成分とすることは一般的に知られている。二次転写残トナーや紙粉は、最終的にはベルトクリーニング装置11のクリーニングブレード111によって掻き取られる。そして、前述の通り、二次転写残トナーや紙粉が供給され続けていれば、クリーニングニップ113で付着物は入れ替わり、クリーニングニップ113は潤滑される。
【0095】
例えば、幅がWsmallの記録材Ssmallが連続して二次転写部T2を通過した場合、図9に示すWsmallの領域(記録材Ssmallの通過部)は二次転写残トナーや紙粉により、クリーニングニップ113の付着物は入れ替わる。しかし、Wsmallより外側の領域(非通過部)は、二次転写残トナーや紙粉の供給が無いため、クリーニングニップ113の付着物は入れ替わらない。つまり、Wsmallより外側の領域は水分を帯びた混合物が滞留し続け、摩擦抵抗が上昇することで中間転写ベルト7に疲労変形(永久伸び)が発生し易い。そして、この領域で疲労変形が発生した場合、中間転写ベルト7に伸びが発生している領域(Wsmallより外側でクリーニングブレード111端部までの領域)と、伸びが発生していない領域(Wsmallで示す領域)が生まれる。この結果、中間転写ベルト7の伸びは外周方向へと不規則な凹凸を伴って発生し、凹部は平常時より一次転写効率が低下(画像が薄くなる)し、凸部は平常時より一次転写効率が上昇(画像が濃くなる)する。
【0096】
これらの状態が発生した場合、そのまま幅がWsmallの記録材Ssmallを通過し続ける分には画質影響は判明しない。但し、Wsmallよりも幅の広い記録材、例えば幅サイズが最大Wmaxの記録材Smaxを通過した際、Wsmallよりも外側(記録材Ssmallの非通紙部)で転写画質の低下が顕在化してしまう。
【0097】
つまりは、中間転写ベルト7の疲労変形(永久伸び)は、記録材Sの吸湿した水分がベルトクリーニング装置11へと到達することで発生する現象である。このため、本実施形態では、シート部材SHによって吸湿した水分を遮蔽することで、このような中間転写ベルト7の疲労変形による転写画質の低下を抑制することが可能となる。
【0098】
また、本実施形態では、シート部材SHの幅WSが最大画像幅WTより大きくなるように、WS>WTとしている。この理由は、前述の通り、中間転写ベルト7の疲労変形(永久伸び)する領域を、少なくとも最大画像幅WTの外側とすることで記録材Sに対する転写画質影響を抑制するためである。
【0099】
また、前述の通り、定着前空間では水分を帯びた空気が滞留するため、中間転写ベルト7自体に水分が付着したままベルトクリーニング装置11まで運搬される場合もある。このため、中間転写ベルト7の定着前空間での露出(図8のL1として示す部分)面積を低減することも求められる。そこで、本実施形態では、中間転写ベルト7の二次転写部T2からシート部材SHまでのベルト長L1を、中間転写ベルト7の周長L7の1/3以下となるように構成している。以上により、本実施形態によれば、シート部材SHによって吸湿した水分を遮蔽することで、中間転写ベルト7の疲労変形と、それに伴う転写画質の低下を抑制することが可能となる。
【0100】
[中間転写ユニットの着脱]
本実施形態では、シート部材SHを可撓性のあるシート材で構成しているが、その理由に関して、図10ないし図12を用いて説明する。中間転写ユニット20は、中間転写ベルト7の交換などの際に装置本体201に対して着脱可能に構成されている。図10は、中間転写ユニット20を装置本体201に対して着脱する際の様子を示す画像形成装置200の概略断面図である。
【0101】
中間転写ユニット20は、離間機構35により全離間モードに保持された状態で装置本体201に対して着脱可能である。本実施形態では、装置本体201の正面側から見て右側の側部に設けられた開閉カバーである右扉RDを操作者(交換作業者)が開くことで、中間転写ユニット20が露出する。そして、操作者が中間転写ユニット20を図中左右方向、即ち、図10中の矢印K1で示す複数の感光ドラム1a~1dの中間転写ベルト7側の接平面に沿う方向に移動させることで、中間転写ユニット20を装置本体201に対して着脱することができる。なお、図10の前後方向に中間転写ユニット20を移動させて装置本体201に対して着脱するように構成することも可能である。ただし、その場合、画像形成部Pa~Pdに対する中間転写ユニット20の位置決め精度が低下しやすいという観点や、中間転写ユニット20を覆うような筐体が必要であり構成が複雑化しやすいという観点などから、本実施形態では前述の着脱方向としている。
【0102】
次に、図2(a)、(b)、図8図10ないし図12を参照して、中間転写ユニット20の装置本体201に対する着脱動作について更に説明する。装置本体201の正面側の内面及び背面側の内面に、中間転写ユニット20を着脱可能とするガイド部材としての転写レール(図示せず)が配置されている。これら転写レールは、それぞれ、転写フレーム21に設けられた第1位置決め部211、第2位置決め部212が移動可能に嵌合するように構成されている。中間転写ユニット20が全離間モードとされた状態で、中間転写ユニット20を図10中矢印K1方向に沿って図中右方向に移動させると装置本体201から取り外し可能となる。
【0103】
この時、図11に示すように、中間転写ユニット20は感光ドラム1a~1dやパッチセンサPSなどとの接触を避けるために、中間転写ユニット20ごと上方へ、移動量H2上昇する。その際、中間転写ユニット20はシート部材SHと接触し、シート部材SHは図11に示すように弾性変形して撓む。前述の通り、シート部材SHは中間転写ベルト7と5mm未満の隙間H1を隔てて設置されているが、移動量H2(昇降量)は所定の隙間H1より大きくなるように構成されている。即ち、中間転写ユニット20は、装置本体201に対して着脱可能であり、着脱動作においてシート部材SHが配置されている方向に所定の隙間以上に移動する。これは、前述のシート部材SHの空気を遮蔽する効果を得るとともに、中間転写ユニット20の着脱による中間転写ベルト7の破損を抑制するため、前述の近接するユニットと距離を隔てるためである。
【0104】
中間転写ユニット20の装置本体201に対する装着手順は、前述の取り外し手順とは逆の手順となり、その際に、シート部材SHは、図12に示すように弾性変形して撓む。中間転写ユニット20が装置本体201に装着完了すると、シート部材SHは再び図8に示す状態へと戻る。このように本実施形態では、シート部材SHを可撓性を有する部材により構成することで、中間転写ユニット20の着脱動作時に弾性変形可能である。この結果、中間転写ユニット20の着脱動作によりシート部材SH或いは中間転写ユニット20が破損してしまうことを抑制できる。
【0105】
なお、シート部材SHは、中間転写ユニット20の着脱動作時に中間転写ユニット20と接触しない構成である場合には、可撓性を有する部材でなくても良い。
【0106】
[他の実施形態]
本発明の画像形成装置は、プリンタ以外に、複写機、ファクシミリ、複合機などに適用可能である。また、画像形成装置は、上述のように複数の画像形成部を備えた構成外に、1つの画像形成部を備えたモノクロ画像形成装置であっても良い。
【符号の説明】
【0107】
1a、1b、1c、1d・・・感光ドラム(像担持体)/7・・・中間転写ベルト/8・・・二次転写内ローラ8(張架ローラ)/11・・・ベルトクリーニング装置/13・・・定着装置/17・・・ステアリングローラ(張架ローラ)/18・・・上流ガイドローラ(張架ローラ)/19・・・離間ローラ(張架ローラ)/20・・・中間転写ユニット(ベルトユニット)/61・・・ダクト/62・・・吸気口/63・・・フィルタ/64・・・排気口/111・・・クリーニングブレード(清掃部材)/200・・・画像形成装置/201・・・装置本体/500・・・送風装置/600・・・排気装置/SH・・・シート部材/T1a、T1b、T1c、T1d・・・一次転写部/T2・・・二次転写部
図1
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図12