(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】プレス装置およびプレス方法
(51)【国際特許分類】
B30B 15/00 20060101AFI20241007BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20241007BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B30B15/00 G
H05K3/34 505A
H01L21/60 311T
(21)【出願番号】P 2021000824
(22)【出願日】2021-01-06
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】森國 俊充
(72)【発明者】
【氏名】石田 幸生
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195250(JP,A)
【文献】特開2001-203445(JP,A)
【文献】特開2015-109363(JP,A)
【文献】特開2006-041375(JP,A)
【文献】特開2020-181848(JP,A)
【文献】特開2001-185841(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171564(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/00
H05K 3/34
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上プレスヘッドと下プレスヘッドとを有し、上プレスヘッドと下プレスヘッドとで協働して、下プレスヘッドの上面よりも大形とされる基板における複数の粒子部材を押圧し、かつ、
基板上の押圧する粒子部材を変更してプレス加工していくプレス装置であって、
前記基板が下プレスヘッド上に載置される際に、下プレスヘッドの上面よりもはみ出した基板の一部を
支持体にて下方から受けて、少なくとも、上プレスヘッドと下プレスヘッドとの間の基板のヘッド対応部を上プレスヘッドの下面と下プレスヘッドの上面とに対して傾斜乃至湾曲させない状態に維持するバックアップ構造を備え
、かつ、押圧する粒子部材の位置に応じて基板を支持するバックアップ構造の前記支持体が変更されるように制御する制御機能を備えた制御手段を有することを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
バックアップ構造は、上下可能なロッドを有する複数本の支持体にて構成されることを
特徴とする請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
バックアップ構造の支持体は、その先端に設けられた回転自在な球体を介して基板を受
けることを特徴とする請求項2に記載のプレス装置。
【請求項4】
上プレスヘッドと下プレスヘッドとを有し、上プレスヘッドと下プレスヘッドとで協働して、下プレスヘッドの上面よりも大形とされる基板における複数の粒子部材を押圧するプレス装置であって、
前記基板が下プレスヘッド上に載置される際に、下プレスヘッドの上面よりもはみ出した基板の一部を下方から受けて、少なくとも、上プレスヘッドと下プレスヘッドとの間の板のヘッド対応部を上プレスヘッドの下面と下プレスヘッドの上面とに対して傾斜乃至湾曲させない状態に維持するバックアップ構造を備え、前記上プレスヘッドの下面が水平面に対して傾いた状態では、粒子部材の押圧時に、下プレスヘッドの上面を上プレスヘッドの下面の傾斜に倣って傾斜させ、下プレスヘッドの上面と上プレスヘッドの下面と平行状態とし、かつ、この傾斜に対して前記バックアップ構造が対応して、前記基板のヘッド対応部を上プレスヘッドの下面と下プレスヘッドの上面とに対して傾斜乃至湾曲させない状態に維持することを特徴とす
るプレス装置。
【請求項5】
基板の4辺をそれぞれ受ける支持構造と、支持構造をXY平面上を移動させるXY方向駆動機構と、支持構造をXY平面と直交するZ方向に移動させるZ方向駆動機構とを備えたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のプレス装置。
【請求項6】
バックアップ構造と支持構造とで、前記基板をXY平面と平行に支持することを特徴とする請求項5に記載のプレス装置。
【請求項7】
粒子部材の頂部を上プレスヘッドの下面平坦面で押圧して平坦化するコイニングに用いることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のプレス装置。
【請求項8】
基板を移動させつつ基板上の押圧する粒子部材を変更してプレス加工していくものであり、上プレスヘッドと下プレスヘッドとで協働して、下プレスヘッドの上面よりも大形とされる基板における複数の粒子部材を押圧するプレス方法であって、
前記基板が下プレスヘッド上に載置される際に、下プレスヘッドの上面よりもはみ出した基板の一部を支持体にて下方から受けて、少なくとも、上プレスヘッドと下プレスヘッドとの間の基板のヘッド対応部を上プレスヘッドの下面と下プレスヘッドの上面とに対して傾斜乃至湾曲させない状態に維持してプレス加工する
とともに、下プレスヘッドの上面よりもはみ出した基板の一部をバックアップ構造の支持体にて下方から受けてプレス加工するものであり、押圧する粒子部材の位置に応じて基板を支持するバックアップ構造の支持体が変更されることを特徴とするプレス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板やICチップ等の電子部品(バンプ形成体)に形成された粒子部材を押圧するプレス装置およびプレス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなプレス装置には、粒子部材形成体に形成された粒子部材の頂部をプレスヘッドの下面平坦面で押圧して平坦化するコイニング装置(特許文献1及特許文献2)がある。
【0003】
すなわち、従来のコイニング装置として、
図16に示すように、上治具(上プレスヘッド)1と治具(下プレスヘッド)2とを用いて、基板3の厚さ方向にバンプ4の頂部に押圧力を加えるものである。この場合、上プレスヘッド1及び下プレスヘッド2には、それぞれ加熱体5,6が付設される。
【0004】
従って、
図16に示すようなプレス装置にて、基板3上の粒子部材(バンプ4)の頂部を平坦化するプレス加工は、上プレスヘッド1と下プレスヘッド2とが所定寸だけ離間した開状態で、下プレスヘッド2上に基板3を設置(載置)する。その後、上プレスヘッド1を下降させて、上プレスヘッド1の下面平坦面でバンプ4を押圧してこのバンプ4を平坦化するものでる。このプレス加工時には、加熱体5にて上プレスヘッド1が加熱され、加熱体6にて下プレスヘッド2が加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-349602号公報
【文献】特開2002-270630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、
図17に示すように、下プレスヘッド2に対して基板が大形であって、例えば、基板3の一のコーナ部におけるバンプ4の平坦化を行う場合、
図17に示すように、基板3が下プレスヘッド2から大きくはみ出す。
【0007】
このように基板3が下プレスヘッド2から大きくはみ出すと、下プレスヘッド2上の基板3が、下プレスヘッド2の上面平坦面に対して傾斜したり、湾曲したりする。このように下プレスヘッド2の上面平坦面に対して傾斜等した状態で、上プレスヘッド1を下降させて各バンプ4に対する押圧動作を行えば、基板4のコプラナリティ(平坦度)が安定しない。また、傾斜度によっては、プレス時に基板3が損傷するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて、下プレスヘッドに対して大形の基板上の粒子部材のコプラナリティ(平坦度)が安定し、しかも、基板の損傷等(ダメージ化)を回避できるプレス装置およびプレス方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプレス装置は、上プレスヘッドと下プレスヘッドとを有し、上プレスヘッドと下プレスヘッドとで協働して、下プレスヘッドの上面よりも大形とされる基板における複数の粒子部材を押圧するプレス装置であって、前記基板が下プレスヘッド上に載置される際に、下プレスヘッドの上面よりもはみ出した基板の一部を下方から受けて、少なくとも、上プレスヘッドと下プレスヘッドとの間の基板のヘッド対応部を上プレスヘッドの下面と下プレスヘッドの上面とに対して傾斜乃至湾曲させない状態に維持するバックアップ構造を備えたものである。
【0010】
本発明のプレス装置によれば、下プレスヘッドの上面よりもはみ出した基板の一部を下方からバックアップ構造にて支持することができる。しかも、この支持によって、少なくとも、上プレスヘッドと下プレスヘッドとの間の基板のヘッド対応部を下プレスヘッドの上面に対して傾斜乃至湾曲させないので、上プレスヘッドを下降させて粒子部材を押圧するプレス加工において、粒子部材のコプラナリティ(平坦度)が安定する。しかも、プレス時において、基板に対して偏った外力を作用させない。
【0011】
バックアップ構造は、上下可能なロッドを有する複数本の支持体にて構成されるものであってもよい。このような支持体を用いることにより、基板の高さ位置に応じて安定して基板を支持できる。
【0012】
バックアップ構造の支持体は、その先端に設けられた回転自在な球体を介して基板を受けるものが好ましい。このような回転自在な球体を介して基板を受けることによって、基板を損傷等させることなく、安定して支持できる。
【0013】
上プレスヘッドの下面が水平面に対して傾いた状態では、粒子部材の押圧時に、下プレスヘッドの上面を上プレスヘッドの下面の傾斜に倣って傾斜させ、下プレスヘッドの上面と上プレスヘッドの下面と平行状態とし、かつ、この傾斜に対して前記バックアップ構造が対応して、前記基板のヘッド対応部を上プレスヘッドの下面と下プレスヘッドの上面とに対して傾斜乃至湾曲させない状態に維持するようにしてもよい。
【0014】
上プレスヘッドの粒子部材を押圧する下面(下面平坦面)が水平面に対して傾いた状態で、下降して粒子部材を押圧する場合がある。このため、下プレスヘッド側に例えばチルト機構を設け、押圧時に上プレスヘッドの下面平坦面が水平面に対して傾いた状態であっても、このチルト機構でもって、下プレスヘッドの上面(上面平坦面)を上プレスヘッドの下面平坦面の傾斜に倣って傾斜させ、下プレスヘッドの上面平坦面と上プレスヘッドの下面平坦面とを平行状態とすることができる。しかも、バックアップ構造もこの傾斜に対応して、基板のヘッド対応部を上プレスヘッドの下面と下プレスヘッドの上面とに対して傾斜乃至湾曲させない状態に維持するので、上プレスヘッドの下面平坦面が水平面に対して傾いていても、基板上の粒子部材のコプラナリティ(平坦度)が安定する。
【0015】
基板の4辺をそれぞれ受ける支持構造と、支持構造をXY平面上を移動させるXY方向駆動機構と、支持構造をXY平面と直交するZ方向に移動させるZ方向駆動機構とを備えたものが好ましい。このように構成することによって、基板上の全粒子部材の平坦化が可能となる。
【0016】
バックアップ構造と支持構造とで、前記基板をXY平面と平行に支持するのが好ましい。このようにすることによって、粒子部材のコプラナリティ(平坦度)がより安定し、しかも、プレス時において、基板に対して偏った外力を作用させない。
【0017】
本発明のプレス方法は、上プレスヘッドと下プレスヘッドとで協働して、下プレスヘッドの上面よりも大形とされる基板における複数の粒子部材を押圧するプレス方法であって、前記基板が下プレスヘッド上に載置される際に、下プレスヘッドの上面よりもはみ出した基板の一部を支持体にて下方から受けて、少なくとも、上プレスヘッドと下プレスヘッドとの間の基板のヘッド対応部を下プレスヘッドの下面に対して傾斜乃至湾曲させない状態に維持してプレス加工するものである。
【0018】
本発明のプレス方法によれば、下プレスヘッドの上面よりもはみ出した基板の一部を下方から支持することができる。しかも、この支持によって、少なくとも、上プレスヘッドと下プレスヘッドとの間の基板のヘッド対応部を上プレスヘッドの下面と下プレスヘッドの上面とに対して傾斜乃至湾曲させないので、上プレスヘッドを下降させて粒子部材を押圧するプレス加工において、粒子部材のコプラナリティ(平坦度)が安定し、しかも、プレス時において、基板に対して偏った外力を作用させない。
【0019】
基板を移動させつつ基板上の押圧する粒子部材を変更してプレス加工していくプレス方法であって、下プレスヘッドの上面よりもはみ出した基板の一部をバックアップ構造の支持体にて下方から受けてプレス加工するものであり、押圧する粒子部材の位置に応じて基板を支持するバックアップ構造の支持体が変更されるものであってもよい。このように構成することよって、基板上の全粒子部材の平坦化を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、粒子部材のコプラナリティ(平坦度)が安定するので、高精度のプレス加工を行うことができる。しかも、プレス時に基板に対して偏った外力を作用させないので、基板の損傷(ダメージ化)を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のプレス装置を示し、(a)は上プレスヘッドが下降する前の状態の簡略図であり、(b)は上プレスヘッドが下降して粒子部材を平坦化している状態の簡略図である。
【
図2】上プレスヘッドを省略した状態のプレス装置の平面図である。
【
図3】バックアップ構造にて基板を支持している状態のプレス装置の正面図である。
【
図5】バックアップ構造の支持体の他の実施形態の要部拡大図である。
【
図7】
図1に示すプレス装置の全体構成ブロック図である。
【
図8】基板の第2長辺と第2短辺との間のコーナの粒子部材を平坦化する場合の簡略平面図である。
【
図9】基板の第2短辺側の中間部位の粒子部材を平坦化する場合の簡略平面図である。
【
図10】基板の第2短辺と第1長辺との間のコーナの粒子部材を平坦化する場合の簡略平面図である。
【
図11】基板の第1長辺側の中間部位の粒子部材を平坦化する場合の簡略平面図である。
【
図12】基板の第1長辺と第1短辺との間のコーナの粒子部材を平坦化する場合の簡略平面図である。
【
図13】基板の第1短辺側の中間部位の粒子部材を平坦化する場合の簡略平面図である。
【
図14】基板の第1短辺と第2長辺との間のコーナの粒子部材を平坦化する場合の簡略平面図である。
【
図15】基板の第2長辺側の中間部位の粒子部材を平坦化する場合の簡略平面図である。
【
図17】従来のプレス装置の問題点を説明する簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を
図1~
図15に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明に係るプレス装置の簡略図である。このプレス装置は、例えば、ICチップ、チップコンデンサ、チップ抵抗、あるいはこれらを搭載する基板(粒子部材形成体)21の粒子部材20の頂部を平坦化するコイニングに用いる装置である。この実施形態において、粒子部材20をバンプ20と呼び、粒子部材形成体21をバンプ形成体と呼ぶ場合がある。基板21は、複数の回路パターンを形成したものであって、
図6に示すように、個片化して、CPU基板(マザーボード基板)である基板小片21aを形成するものである。このように、基板21にマトリックス状の切断線L1,L2を作成することによって、製品としての基板小片21aを形成した場合、基板21の4つの辺側に、廃材としての前記基板端材21bが形成される。
【0024】
プレス装置は、上プレスヘッド22と下プレスヘッド23とを備え、さらに、
図7に示すように、上プレスヘッド22を上下動させる上プレスヘッド上下動手段24を備える。上下動手段25によって上プレスヘッド22を下降させて、基板21に形成されたバンプ20の頂部をこの上プレスヘッド22の下面平坦面22aで押圧して平坦化する。このプレス装置では、下プレスヘッド23を上下動させる下プレスヘッド上下動手段25を備える。なお、各上下動手段24,25は、公知公用のシリンダ機構等の公知公用の往復動機構にて構成できる。また、上プレスヘッド22及び下プレスヘッド23にはそれぞれ図示省略の加熱板が付設されている。
【0025】
また、このプレス装置は、
図7に示すように、プレス加工時に基板21を受けるバックアップ構造26と、基板21を上下プレスヘッド22、23間に供給するための支持構造27とを備える。
【0026】
バックアップ構造26は、
図2に示すように複数本の支持体30を備えたものである。この支持体30は、例えば、
図3と
図4に示すように、シリンダ本体41と、シリンダ本体41に対して伸縮するロッド42とを有するシリンダ機構にて構成できる。なお、シリンダ機構として、流体シリンダであっても、電動シリンダであってもよい。この実施形態では、IAI社製のロボシリンダ(登録商標)を用いた。
【0027】
この場合、
図2に示すように、仮想矩形のコーナに配設される4つの支持板35(35a、35b、35c、35d)に、4機の支持体30が配置されている。すなわち、支持板35の各コーナ部に支持体30が配設されている。このため、支持体30は、この実施形態では全部で16機備えている。
【0028】
また、支持体30のロッド42の先端に、
図5に示すように、その先端に回転自在な球体33が付設されたものであってもよい。この場合、ロッド42の先端部をいわゆるボールプランジャにて構成してもよい。ボールプランジャとは、スプリングが収納された本体部と、この本体部の開口部(上方開口部)に配設されるボールとからなるものである。
【0029】
ところで、この実施形態では、基板21は、
図2に示すように、第1長辺31aと第1短辺32aと第2長辺31bと第2短辺32bとを有する平面視矩形を成すものであり、支持構造27は、第1長辺31aを受ける第1支持部材36(36a)と、第1短辺32aを受ける第2支持部材36(36b)と、第2長辺31bを受ける第3支持部材36(36c)と、第2短辺32bを受ける第4支持部材36(36d)とを備える。
【0030】
すなわち、各支持部材36には、基板21の辺31a、31b、32a、32bを受ける切り欠き部37(37a、37b、37c、37d)が設けられている。そして、4つの支持部材36で構成される支持構造27は、支持構造駆動手段38(
図7参照)にて、水平面(XY平面)上の移動及び水平面と直交する鉛直軸(Z軸)上の往復動(上下動)が可能とされる。このため、支持構造駆動手段38は、支持構造27をXY平面上を移動させるXY方向駆動機構39と、支持構造27をXY平面と直交するZ方向に移動させるZ方向駆動機構40とを備える。
【0031】
XY方向駆動機構39及びZ方向駆動機構40は、それぞれ、シリンダ機構、ボールねじ機構、リニアガイド機構等の公知・公用の往復動機構を用いることができる。また、XY方向駆動機構39及びZ方向駆動機構40は、全支持部材36を同時に移動させるものであっても、各支持部材36を独立して移動させるものであってもよい。
【0032】
ところで、上プレスヘッド上下動手段24、下プレスヘッド上下動手段25、バックアップ構造26、及び支持構造駆動手段38等は、
図7に示すように、コンピュータ50にて制御される。
【0033】
コンピュータは、基本的には、入力機能を備えた入力手段と、出力機能を備えた出力手段と、記憶機能を備えた記憶手段と、演算機能を備えた演算手段と、制御機能を備えた制御手段にて構成される。入力機能は、外部からの情報を、コンピュータに読み取るためのものであって、読み込まれたデータやプログラムは、コンピュータシステムに適した形式の信号に変換される。出力機能は、演算結果や保存されているデータなどを外部に表示するものである。記憶手段は、プログラムやデータ、処理結果などを記憶して保存するものである。演算機能は、データをプログラムの命令に随って、計算や比較して処理するものである。制御機能は、プログラムの命令を解読し、各手段に指示を出すものであり、この制御機能はコンピュータの全手段の統括をする。入力手段には、キーボード、マウス、タブレット、マイク、ジョイスティック、スキャナ、キャプチャーボード等がある。また、出力手段には、モニタ、スピーカー、プリンタ等がある。記憶手段には、メモリ、ハードディスク、CD・CD-R,PD・MO等がある。演算手段には、CPU等があり、制御手段には、CPUやマザーボード等がある。
【0034】
次に前記のように構成されたプレス装置を用いて基板21上の粒子部材(バンプ)20を平坦化する工程(方法)を説明する。この場合、本プレス方法の概略を
図1を用いて説明する。まず、上プレスヘッド22と下プレスヘッド23とが所定間隔に離間した金型開状態とする。そして、支持構造27(
図2参照)にて基板21を支持して、上下プレスヘッド間に搬送する。次に、上プレスヘッド22で基板21を持ち上げた状態とするとともに、バックアップ構造26で基板21を支持する。すなわち、基板21を水平状に維持させる。この状態で、上プレスヘッド22を下降させて粒子部材(バンプ)20を上プレスヘッド22の平坦下面で押圧する。この際、上プレスヘッド22の加熱板及び下プレスヘッド23の加熱板にて基板21を加熱することになる。これによって、粒子部材(バンプ)を平坦化できる。
【0035】
次に、
図8~
図15を用いて本プレス加工を説明する。
図8は、P(プレス位置)で示される、基板21の第2短辺32bと第2長辺31bとの間のコーナ部の粒子部材20を平坦化する場合である。この場合、
図8に示すように、基板21の第2短辺32bと第2長辺31bとの間のコーナ部を、下プレスヘッド23上に配置することになる。このため、基板21を、35aの支持板35の4本の支持体30を上昇させて支持することになる。
【0036】
このように、支持板35aの4本の支持体30にて基板21を支持する(受ける)ことによって、少なくとも、上下プレスヘッド22,23間の基板押圧部位(ヘッド対応部)が、下プレスヘッド23の上面に対して、傾斜したり、湾曲したりすることを防止できる。このため、安定して、粒子部材20を平坦化することができる。
【0037】
図9は、P(プレス位置)で示される、第2短辺32bの中間部位の粒子部材20を平坦化する場合を示している。
図9に示すように、基板21の第2短辺32bの中間部位を、下プレスヘッド23上に配置することになる。このため、基板21を、35aの支持板35の2本のハ及びニの支持体30と、35bの支持板35の2本のハ及びニの支持体30を上昇させて支持することになる。
【0038】
このように、支持板35aの2本の支持体30と支持板35bの2本の支持体30にて基板21を支持する(受ける)ことによって、少なくとも、上下プレスヘッド22,23間のヘッド対応部が、下プレスヘッド23に上面に対して、傾斜したり、湾曲したりすることを防止できる。このため、安定して、粒子部材20を平坦化することができる。
【0039】
図10は、P(プレス位置)で示される、基板21の第2短辺32bと第1長辺31aとの間のコーナの粒子部材20を平坦化する場合を示している。この場合、
図10に示すように、基板21の第2短辺32bと第1長辺31aとの間のコーナを、下プレスヘッド23上に配置することになる。このため、基板21を、35bの支持板35の4本の支持体30を上昇させて支持することになる。
【0040】
このように、支持板35bの4本の支持体30にて基板21を支持する(受ける)ことによって、少なくとも、上下プレスヘッド22,23間のヘッド対応部が、下プレスヘッド23に上面に対して、傾斜したり、湾曲したりすることを防止できる。このため、安定して、粒子部材20を平坦化することができる。
【0041】
図11は、P(プレス位置)で示される、基板21の第1長辺31aの中間部位の粒子部材20を平坦化する場合を示している。
図11に示すように、基板21の第1長辺31aの中間部位を、下プレスヘッド23上に配置することになる。このため、基板21を、35bの支持板35の4本の支持体30と、35cの支持板35の4本の支持体30を上昇させて支持することになる。
【0042】
このように、支持板35bの4本の支持体30と支持板35cの4本の支持体30にて基板21を支持する(受ける)ことによって、少なくとも、上下プレスヘッド22,23間のヘッド対応部が、下プレスヘッド23に上面に対して、傾斜したり、湾曲したりすることを防止できる。このため、安定して、粒子部材20を平坦化することができる。
【0043】
図12は、P(プレス位置)で示される、基板21の第1長辺31aと第1短辺32aとの間のコーナ部の粒子部材20を平坦化する場合を示している。この場合、
図12に示すように、基板21の第1長辺31aと第1短辺32aとの間のコーナ部を、下プレスヘッド23上に配置することになる。このため、基板21を、35cの支持板35の4本の支持体30を上昇させて支持することになる。
【0044】
このように、支持板35cの4本の支持体30にて基板21を支持する(受ける)ことによって、少なくとも、上下プレスヘッド22,23間のヘッド対応部が、下プレスヘッド23に上面に対して、傾斜したり、湾曲したりすることを防止できる。このため、安定して、粒子部材20を平坦化することができる。
【0045】
図13は、P(プレス位置)で示される、第1短辺32aの中間部位の粒子部材20を平坦化する場合を示している。
図13に示すように、基板21の第1短辺32aの中間部位を、下プレスヘッド23の上に配置することになる。このため、基板21を、35cの支持板35の2本のハ及びニの支持体30と、35dの支持板35の2本のハ及びニの支持体30を上昇させて支持することになる。
【0046】
このように、支持板35cの2本の支持体30と支持板35dの2本の支持体30にて基板21を支持する(受ける)ことによって、少なくとも、上下プレスヘッド22,23間のヘッド対応部が、下プレスヘッド23の上面に対して、傾斜したり、湾曲したりすることを防止できる。このため、安定して、粒子部材20を平坦化することができる。
【0047】
図14は、P(プレス位置)で示される、基板21の第1短辺32aと第2長辺31bとの間のコーナ部の粒子部材を平坦化する場合を示している。
図14に示すように、基板21の第1短辺32aと第2長辺31bとの間のコーナ部を、下プレスヘッド23上に配置することになる。このため、基板21を、35dの支持板35の4本の支持体30を上昇させて支持することになる。
【0048】
このように、支持板35dの4本の支持体30にて基板21を支持する(受ける)ことによって、少なくとも、上下プレスヘッド22,23間のヘッド対応部が、下プレスヘッド23の上面に対して、傾斜したり、湾曲したりすることを防止できる。このため、安定して、粒子部材20を平坦化することができる。
【0049】
図15は、P(プレス位置)で示される、基板21の第2長辺31bの中間部位の粒子部材20を平坦化する場合を示している。
図15に示すように、基板21の第2長辺31bの中間部位を、下プレスヘッド23上に配置することになる。このため、基板21を、35aの支持板35の4本の支持体30と、35dの支持板35の4本の支持体30を上昇させて支持することになる。
【0050】
このように、支持板35aの4本の支持体30と支持板35dの4本の支持体30にて基板21を支持(受ける)することによって、少なくとも、上下プレスヘッド22,23間のヘッド対応部が、下プレスヘッド23の上面に対して、傾斜したり、湾曲したりすることを防止できる。このため、安定して、粒子部材20を平坦化することができる。
【0051】
本発明のプレス装置によれば、下プレスヘッド23の上面23aよりもはみ出した基板21の一部を下方からバックアップ構造26にて支持することができる。しかも、この支持によって、少なくとも、上プレスヘッド22と下プレスヘッド23との間の基板21のヘッド対応部を下プレスヘッド23の上面23aに対して傾斜乃至湾曲させないので、上プレスヘッド22を下降させて粒子部材を押圧するプレス加工において、粒子部材20のコプラナリティ(平坦度)が安定する。しかも、プレス時において、基板21に対して偏った外力を作用させない。
【0052】
すなわち、本発明では、粒子部材20のコプラナリティ(平坦度)が安定するので、高精度のプレス加工を行うことができる。しかも、プレス時に基板21に対して偏った外力を作用させないので、基板21の損傷(ダメージ化)を防止できる。
【0053】
バックアップ構造26は、上下可能なロッド42を有する複数本の支持体30にて構成されるものであってもよい。このような支持体30を用いることにより、基板21の高さ位置に応じて安定して基板21を支持できる。
【0054】
バックアップ構造26の支持体30は、その先端に設けられた回転自在な球体を介して基板21を受けるものが好ましい。このような回転自在な球体を介して基板21を受けることによって、基板21を損傷等させることなく、安定して支持できる。
【0055】
また、上プレスヘッド22の粒子部材20を押圧する下面(下面平坦面)22aが水平面に対して傾いた状態で、下降して粒子部材20を押圧する場合がある。このため、下プレスヘッド23側にチルト機構(図示省略)を設け、押圧時に上プレスヘッド22の下面平坦面22aが水平面に対して傾いた状態であっても、このチルト機構でもって、下プレスヘッド23の上面(上面平坦面)23aを上プレスヘッド22の下面平坦面22aの傾斜に倣って傾斜させ、下プレスヘッド23の上面平坦面23aと上プレスヘッド22の下面平坦面と22aを平行状態とすることができる。しかも、バックアップ構造26もこの傾斜に対応して、基板21のヘッド対応部を上プレスヘッド22の下面22aと下プレスヘッド23の上面23aとに対して傾斜乃至湾曲させない状態に維持するので、上プレスヘッド22の下面平坦面22aが水平面に対して傾いていても、基板21上の粒子部材20のコプラナリティ(平坦度)が安定する。
【0056】
チルト機構として、例えば、下方の凹球面に上方の凸球面を嵌合させた状態で、凹球面と凸球面との間にエアを供給するもの等で構成でききる。すなわち、凹球面と凸球面との間に僅かな隙間を設け、上プレスヘッド22を下プレスヘッド23に対してチルト許容状態とするようにすればよい。また、バックアップ構造26を上プレスヘッド22及び下プレスヘッド23の傾斜に対応させるには、支持体30のロッド42の高さを調整すればよい。
【0057】
基板21の4辺をそれぞれ受ける支持構造27と、支持構造27をXY平面上を移動させるXY方向駆動機構39と、支持構造27をXY平面と直交するZ方向に移動させるZ方向駆動機構40とを備えたものが好ましい。このように構成することによって、基板21上の全粒子部材20の平坦化が可能となる。
【0058】
バックアップ構造26と支持構造27とで、基板21をXY平面と平行に支持するのが好まし水平状に支持するのが好ましい。このようにすることによって、粒子部材20のコプラナリティ(平坦度)がより安定する。
【0059】
また、実施形態のように、押圧する粒子部材20の位置に応じて基板21を支持するバックアップ構造26の支持体30が変更されるものであれば、大形の基板21上の全粒子部材20の平坦化を行うことができる。平坦化すべき粒子部材20の位置(つまり、プレス位置P)が、
図8~
図15に示す位置に限るにものではなく、平坦化すべき粒子部材20の位置に応じて、基板21をバックアップする支持体30を選択して用いることができる。
【0060】
本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えばバックアップ構造26の支持体30の数として4本が好ましいが、4本に限るものではなく、増減は任意である。支持体30の配設パターンや配設ピッチ等の平坦化すべき粒子部材20の大きさ、数、配設ピッチ等に応じて種々変更できる。
【0061】
プレス加工時には、バックアップ構造26にて基板21の一部をバックアップしているので、プレス加工時において、バックアップ構造26の支持のみで安定した平坦化が可能である。このため、通常は、プレス加工時において、支持構造27の各支持部材36を基板21から退避させていくことによって、プレス加工の妨げとならないようにできる。しかしながら、この支持構造27の各支持部材36も、基板21を受けることになるので、バックアップ構造26とともに、プレス加工の妨げとならない支持部材36にて基板21を受けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
20 粒子部材
21 基板
22 上プレスヘッド
22a 下面平坦面
23 下プレスヘッド
24 上プレスヘッド上下動手段
25 下プレスヘッド上下動手段
26 バックアップ構造
27 支持構造
30 支持体
33 球体
36(36a、36b、36c、36d) 支持部材
39 XY方向駆動機構
40 Z方向駆動機構
42 ロッド