(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】レンズ装置、撮像装置、及び撮像システム
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20241007BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20241007BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/04 D
G03B17/14
(21)【出願番号】P 2021004607
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/003921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
G03B 17/14
H04N 5/222- 5/222
H04N 5/253- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
H04N 23/90 -23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズーミングにおいて光軸方向に移動する第1レンズユニットと、
ズーミングおよびフォーカシングにおいて光軸方向に移動する第2レンズユニットと、
前記第2レンズユニットを保持する第2レンズ鏡筒と、
前記第2レンズ鏡筒を光軸方向に移動可能に保持するガイドバーを保持し、かつ前記第1レンズユニットを保持する第1レンズ鏡筒と、
フォーカシングにおいて前記第2レンズ鏡筒を光軸方向に駆動させる駆動手段と、
前記第2レンズ鏡筒と前記駆動手段を連結する連結部材と、
前記連結部材を前記駆動手段に付勢し、前記ガイドバーに対して前記第2レンズ鏡筒を付勢する第1付勢部材と、
前記駆動手段を保持し、前記駆動手段を前記第1レンズ鏡筒に対して光軸方向に移動させる移動ベースと、
前記移動ベースを前記第1レンズ鏡筒に対して光軸直交方向に支持する第1支持部、第2支持部および第3支持部を通る平面に直交する方向に前記移動ベースを付勢する第2付勢部材とを備え、
前記第1支持部、前記第2支持部および前記第3支持部を通る平面に直交する方向から見た際に前記第1支持部と前記第2支持部をつないだ線と交差するように前記連結部材が移動し、
前記第2付勢部材の付勢力による前記第1支持部と前記第2支持部をつないだ軸周りのモーメントが、前記第1付勢部材の付勢力による前記第1支持部と前記第2支持部をつないだ軸周りのモーメントよりも大きいことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記第2付勢部材は、前記第1レンズ鏡筒に対して前記移動ベースを前記第1支持部、前記第2支持部および前記第3支持部を通る平面に沿った方向に付勢することを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記第1レンズ鏡筒は光軸方向に沿って直進溝が設けられ、前記移動ベースは前記直進溝に沿って移動し、前記第2付勢部材は前記移動ベースを前記直進溝に対して光軸に直交した方向に付勢することを特徴とする請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記第2付勢部材
は前記第1レンズ鏡筒と前記移動ベースとの間に配置され、前記移動ベースを光軸直交方向に付勢することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
ズーミングにおいて光軸方向に移動する第3レンズユニットと、
前記第3レンズユニットを保持し、前記移動ベースと一体となって光軸方向に移動する第3レンズ鏡筒とを備え、
前記移動ベースまたは前記第3レンズ鏡筒の一方に光軸に沿った方向の幅よりも周方向の幅が大きい長穴が形成され、
前記長穴と接触することで前記移動ベースに対して前記第3レンズ鏡筒を固定する固定部材を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記長穴と前記固定部材が接触する箇所は光軸方向から見たときに前記駆動手段と少なくとも一部が重なっていることを特徴とする請求項5に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記第1付勢部材は、前記駆動手段を光軸から径方向に向かって付勢することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記第2付勢部材は、前記移動ベースを光軸から径方向に向かって付勢することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記第2支持部および前記第3支持部は、前記移動ベースに形成され、
前記第2支持部および前記第3支持部は、それぞれ前記第1レンズ鏡筒に形成された開口部に挿入されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記第1支持部は、前記移動ベースと前記第1レンズ鏡筒を固定するビスであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項11】
レンズマウントを有する固定筒とを備え、
ズーミングにおいて前記第1レンズ鏡筒は前記固定筒に対して光軸方向に移動することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のレンズ装置と、
該レンズ装置からの光を受光する撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載のレンズ装置と、
該レンズ装置が着脱可能な撮像装置とを備えることを特徴とする撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置、撮像装置、及び撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等のアクチュエータを用いてレンズを光軸方向に駆動するレンズ装置として、レンズをベース部材に対して駆動できるとともに、ベース部材をユーザ操作によるカムリングの回転によって光軸方向に駆動するレンズ駆動アシスト構成を有するものがある。このレンズ駆動アシスト構成によればレンズをベース部材の駆動量(ベース駆動量)とベース部材に対するレンズの駆動量(モータ駆動量)との合計駆動量だけ駆動することができる。
【0003】
また、特許文献1には、変倍レンズの移動に伴うピント変動を補正するために、電子カムデータを用いてモータを制御しフォーカスレンズを移動させる技術が開示されている。電子カムデータは、被写体距離ごとに変倍レンズの位置(ズーム位置)に対して合焦状態が得られるフォーカスレンズの位置(フォーカス合焦位置)を示すデータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された電子カムデータのように、一般的にはズーム位置が広角端であるときの無限遠距離に対するフォーカス合焦位置とズーム位置が望遠端であるときの至近距離に対するフォーカス合焦位置との差は大きい。このような電子カムデータに従ってフォーカスレンズを上述したレンズ駆動アシスト構成により駆動する場合は、広角端と望遠端間のベース駆動量(カムリフト)は被写体距離に関係なく一定であるので、フォーカスレンズのモータ駆動量を大きくする必要がある。この結果、レンズ装置が大型化する。
【0006】
本発明は、レンズの駆動を安定して制御可能なレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレンズ装置は、ズーミングにおいて光軸方向に移動する第1レンズユニットと、ズーミングおよびフォーカシングにおいて光軸方向に移動する第2レンズユニットと、前記第2レンズユニットを保持する第2レンズ鏡筒と、前記第2レンズ鏡筒を光軸方向に移動可能に保持するガイドバーを保持し、かつ前記第1レンズユニットを保持する第1レンズ鏡筒と、フォーカシングにおいて前記第2レンズ鏡筒を光軸方向に駆動させる駆動手段と、前記第2レンズ鏡筒と前記駆動手段を連結する連結部材と、前記連結部材を前記駆動手段に付勢し、前記ガイドバーに対して前記第2レンズ鏡筒を付勢する第1付勢部材と、前記駆動手段を保持し、前記駆動手段を前記第1レンズ鏡筒に対して光軸方向に移動させる移動ベースと、前記移動ベースを前記第1レンズ鏡筒に対して光軸直交方向に支持する第1支持部、第2支持部および第3支持部を通る平面に直交する方向に前記移動ベースを付勢する第2付勢部材とを備え、前記第1支持部、前記第2支持部および前記第3支持部を通る平面に直交する方向から見た際に前記第1支持部と前記第2支持部をつないだ線と交差するように前記連結部材が移動し、前記第2付勢部材の付勢力による前記第1支持部と前記第2支持部をつないだ軸周りのモーメントが、前記第1付勢部材の付勢力による前記第1支持部と前記第2支持部をつないだ軸周りのモーメントよりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レンズの駆動を安定して制御可能なレンズ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例の交換レンズの広角端での構成を示す断面図
【
図2】実施例の交換レンズの望遠端での構成を示す断面図
【
図4】実施例の交換レンズにおける後群ユニットの分解斜視図
【
図5】実施例の交換レンズにおける後群ユニットの分解斜視図
【
図6】実施例の後群ユニットの広角端での構成を示す断面図
【
図7】実施例の後群ユニットの望遠端での構成を示す断面図
【
図9】実施例における7群ユニット基準の第6レンズ合焦位置を示す図
【
図10】実施例における後群ユニットと7群ユニットの位置とこれらの差分を示す図
【
図11】実施例の後群ユニットとモータ移動ベースを示す図
【
図12】実施例におけるフォーカスアシスト構成の力の作用位置関係を示す図
【
図13】本発明におけるレンズ装置および撮像装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例】
【0011】
図1および
図2は、本発明の実施例であるレンズ装置としての交換レンズ1の構成を示している。
図1は広角端にある交換レンズ1を光軸に平行に切断したときの断面を示し、
図2は望遠端にある交換レンズ1を光軸に平行に切断したときの断面を示している。図
3は後群ユニットの斜視図を示している。
図4および
図5は本発明の実施例の交換レンズにおける後群ユニットの分解斜視図を示している。
【0012】
(交換レンズの構成)
交換レンズ1は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を備えた不図示の撮像装置としてのカメラ本体に着脱可能に装着される。交換レンズ1は、被写体側(前側)から順に配置された第1レンズ群L1~第7レンズ群L7により構成される撮像光学系を有する。撮像光学系は、不図示の被写体からの光を結像させてカメラ本体内の撮像素子上に被写体像を形成する。第4レンズ群L4としてのフローティングレンズ群と第6レンズ群L6としてのフォーカスレンズ群とが光軸方向に移動することでフォーカシング(焦点調節)が行われる。また、第1レンズ群L1~第7レンズ群L7が光軸方向に移動することでズーミング(変倍)が行われる。なお、本実施例では交換レンズについて説明するが、レンズ装置はレンズ一体型の撮像装置であってよい。
【0013】
1群ユニット10は第1レンズ群L1、1群鏡筒11、1群筒106およびフィルター枠107により構成される。1群鏡筒11は第1レンズ群L1を保持している。1群鏡筒11は1群筒106に固定されている。フィルター枠107は1群筒106に固定されている。1群ユニット10は1群筒106に設置された不図示のコロがカム環105に設けられたカム溝および案内筒104に設けられた直進溝に係合されており、カム環105の光軸周りの回転に伴い光軸方向に移動する。
【0014】
2群鏡筒21は第2レンズ群L2を保持している。2群鏡筒21は防振ユニット20の一部を構成している。防振ユニット20は、2群鏡筒21を光軸に直交する方向に移動可能に保持しており、マグネットとコイルにより構成されるアクチュエータによって第2レンズ群L2を駆動することで像振れを補正する像振れ補正装置である。防振ユニット20は防振ユニット20に設置された不図示のコロを介して案内筒104に固定されている。
【0015】
3群ユニット30は第3レンズ群L3、3群鏡筒31および絞りユニット34により構成される。3群鏡筒31は第3レンズ群L3を保持している。絞りユニット34は光量調節を行う絞りユニットであって、3群鏡筒31に固定されている。3群ユニット30は後群ベース81に対して3群コロ32を介して固定されている。3群コロ32は3群鏡筒31に対して3群コロ止めビス33により固定されている。
【0016】
4群ユニット40は第4レンズ群L4、4群鏡筒41、ラック42およびラックバネ43により構成される。4群鏡筒41は第4レンズ群L4を保持している。4群ユニット40は後群ベース81とガイドバーカバー93により挟持されたガイドバー92によって直進案内される。後群ベース81(第1レンズ鏡筒)がズーミングに際して光軸方向に移動することで、第4レンズ群L4(第1レンズユニット)は光軸方向に移動する。また、後群ベース81に対して第4レンズ駆動モータユニット96によって光軸方向に駆動されることで移動する。ラック42はラックバネ43によって第4レンズ駆動モータユニット96と嵌合するように光軸直交方向に付勢されている。また、ラックバネ43によりラック42は4群鏡筒41に対して光軸方向に付勢されている。ラックバネ43の光軸直交方向の付勢力によりガイドバー92に対して4群鏡筒41は付勢されている。また、4群鏡筒41は光軸方向の位置を検出するための不図示のスケールを備えている。また、スケールに対向する不図示の第4レンズ位置検出用光学センサが、後群ベース81にフレキシブルプリント基板を介して固定されている。スケールと光学センサにより後群ベース81に対する4群鏡筒41の相対位置を検出している。
【0017】
5群ユニット50は第5レンズ群L5、5群鏡筒51により構成される。5群鏡筒51は第5レンズ群L5を保持している。5群ユニット50は後群ベース81に対して5群コロ52を介して固定されている。5群コロ52は5群コロ止めビス53により固定されている。
【0018】
6群ユニット60は第6レンズ群L6、6群鏡筒61、ラック62(連結部材)およびラックバネ63(第1付勢部材)により構成される。6群鏡筒61(第2レンズ鏡筒)は第6レンズ群L6(第2レンズユニット)を保持している。6群鏡筒61は後群ベース81とガイドバーカバー93により挟持されたガイドバー92によって直進案内される。後群ベース81がズーミングに際して光軸方向に移動することで第6レンズ群L6は光軸方向に移動する。また、後群ベース81に対して第6レンズ駆動モータユニット95(駆動手段)によって光軸方向に駆動されることで移動する。ラック62はラックバネ63によって第6レンズ駆動モータユニット95と嵌合するように光軸直交方向に付勢されている。また、ラックバネ63によりラック62は6群鏡筒61に対して光軸方向に付勢されている。また、6群鏡筒61は光軸方向の位置を検出するための不図示のスケールを備えている。また、スケールに対向する不図示の第6レンズ位置検出用光学センサが、後群ベース81にフレキシブルプリント基板を介して固定されている。スケールと光学センサにより後群ベース81に対する6群鏡筒61の相対位置を検出している。
【0019】
後群ユニット80は上述したように3群ユニット30、4群ユニット40、5群ユニット50および6群ユニット60を保持している。第4レンズ駆動モータユニット96はモータユニット止めビス91により後群ユニット80に固定されている。第6レンズ駆動モータユニット95はモータ移動ベース85に対してモータユニット止めビス87により固定されている。モータ移動ベース付勢部材84(第2付勢部材)は後群ベース81とモータ移動ベース85の間に配置され、移動ベース85とともに後群ベース81とモータ移動ベース浮き止めビス86により挟持されている。後群ベース81に後群コロ82が後群コロ止めビス83により固定されている。後群ユニット80は後群コロ82がカム環105に設けられたカム溝および案内筒104に設けられた直進溝に係合されており、カム環105の光軸周りの回転に伴い光軸方向に一体的に移動する。
【0020】
モータ移動ベース85は7群連結ビス88が固定されている。また、モータ移動ベース付勢部材89がモータ移動ベース付勢部材止めビス90により固定されている。モータ移動ベース85は、後群ベース81に設けられた直進溝812および直進溝813に係合する不図示の突起形状を備える。直進溝812および直進溝813に案内されモータ移動ベース85は後群ユニット80に対して光軸方向に移動可能である。
【0021】
7群ユニット70は、第7レンズ群L7および7群鏡筒71により構成される。7群鏡筒71(第3レンズ鏡筒)は第7レンズ群L7(第3レンズユニット)を保持している。7群鏡筒71に7群コロ72が7群コロ止めビス73により固定されている。7群ユニット70は7群コロ72がカム環105に設けられたカム溝および案内筒104に設けられた直進溝に係合されており、カム環105の光軸周りの回転に伴い光軸方向に一体的に移動する。また、モータ移動ベース85に固定されている7群連結ビス88は7群鏡筒71に設けられた長穴710に嵌合している。7群連結ビス88が長穴710に嵌合していることでモータ移動ベース85および第6レンズ駆動モータユニット95は7群ユニット70と一体的に光軸方向に移動する。
【0022】
第4レンズ駆動モータユニット96と第6レンズ駆動モータユニット95として圧電素子を用いた振動型リニアモータを用いている。振動型リニアモータは、モータ固定子と圧電素子により振動が励起されてモータ固定子に対して光軸方向に移動するモータ可動子と、前記モータ可動子とともに光軸方向に移動するモータ出力部により構成されている。このように、本実施例のモータユニットはアクチュエータを用いてレンズ等の光学素子を駆動させることができる。
【0023】
レンズマウント101は、カメラ本体に着脱可能に装着するためのバヨネット部を有し、固定筒102に対して固定されている。外装筒103は、固定筒102に固定されている。外装筒103には、不図示のズーム指標や操作スイッチが取り付けられている。
【0024】
案内筒104は光軸方向に延びる複数の直進溝が設けられている。案内筒104の外周に回転可能にカム環105が嵌合している。固定筒102は案内筒104を固定する。プリント基板108は交換レンズ1の駆動用IC、マイコン等が配置されており、固定筒102に固定されている。マニュアルフォーカスリング109はフロントリング110と固定筒102に狭持され、固定筒102を軸とし回転可能に支持されている。マニュアルフォーカスリング109を回転させると、その回転を不図示のセンサが検出し回転量に応じて合焦制御する。マウントリング112はレンズマウント101により固定筒102に狭持されることで固定されている。マウントリング112の内周にはマウントゴム113がレンズマウント101との間で狭持されている。裏蓋114はレンズマウント101に固定されている。接点ブロック115(接点部)はプリント基板108と不図示の配線(フレキシブルプリント基板など)によって電気的に接続されレンズマウント101に固定されている。
【0025】
カメラ本体に交換レンズ1が固定されると、各レンズの動作を制御するプリント基板108は接点ブロック115を介してカメラ本体と通信可能となる。被写体からの光を交換レンズ1はカメラ本体内の撮像素子上に結像させ、その光を電気信号に変換することで記録画像を作成する。
【0026】
ズームリング111は固定筒102と外装筒103により狭持され、固定筒102を軸とし回転可能に支持されている。ズームリング111は不図示のキーを介してカム環105に連結されている。ズームリング111を回転操作することでカム環105が回転し、前述したような各鏡筒が光軸方向に移動する。各鏡筒の間隔が変化することで広角から望遠までの焦点距離での撮影が可能となる。ズームリング111の回転操作量は不図示のセンサによって検出され、その信号をプリント基板108のICで判断することで各焦点距離に応じたフォーカス、像振れ補正、絞り駆動の制御を行う。プリント基板108のICは、ズーミングが行われる際に変動するピント位置と諸収差量が一定値以下に保たれるように第4レンズ群L4および第6レンズ群L6の移動を制御する。
【0027】
(フォーカス群の駆動制御)
次に、フォーカス群である第6レンズ群L6のズーミング時における駆動制御とこれに用いられるデータについて説明する。以下、第6レンズ群L6およびこれを駆動する第6レンズ駆動モータユニット95について説明するが、第4レンズ群L4およびこれを駆動する第4レンズ駆動モータユニット96についても同様である。
【0028】
図6は、後群ユニット80および7群ユニット70が広角端の状態での断面図を示している。
図7は、後群ユニット80および7群ユニット70が望遠端の状態での断面図を示している。
図6(a)および
図7(a)はそれぞれ無限遠距離にピントが合う状態を示す。
図6(b)および
図7(b)はそれぞれ最至近距離にピントが合う状態を示す。
図6および
図7のいずれも光軸に平行に切断したときの断面を示している。
【0029】
図8は、焦点距離(ズーム位置)に対する第6レンズ群L6の合焦位置(以下、第6レンズ合焦位置という)を示している。不図示の第6レンズ位置検出用光学センサは後群ベース81に固定されてズーミング時に後群ユニット80とともにレンズマウント101に対して光軸方向に移動する。このため
図8は、レンズマウント101に対する第6レンズ合焦位置ではなく、第6レンズ位置検出用光学センサによって検出される(位置センサ基準または後群ユニット基準の)第6レンズ合焦位置を示す。
【0030】
図8において、横軸は焦点距離(ズーム位置)であり、広角端から望遠端までを連続的に示している。縦軸は広角側の無限遠距離にピントが合う合焦位置を基準位置(0)とした第6レンズ合焦位置を示し、撮像面側を正、被写体側を負としている。また、実線は無限遠距離にピントが合う第6レンズ合焦位置を、破線は最至近距離にピントが合う第6レンズ合焦位置を示している。第6レンズ合焦位置の軌跡は不図示の第6レンズ位置検出用光学センサで検出される位置情報に等しく、第6レンズ駆動モータユニット95のフィードバック制御に用いられる位置情報である。
【0031】
図9は、
図8と同様にズーム位置に対する第6レンズ合焦位置を示している。ただし、
図9では7群ユニット70基準の第6レンズ合焦位置を示している。7群ユニット70と後群ベース81および第6レンズ駆動モータユニット95は一体的に光軸方向に移動する。したがって、
図9は後群ベース81あるいは第6レンズ駆動モータユニット95基準の第6レンズ合焦位置でもある。
図9における横軸、縦軸、正、負、実線、破線の意味は
図8と同じである。
【0032】
図10は、ズーム位置に対する後群ユニット80の位置(一点鎖線)と7群ユニット70の位置(点線)を示している。また、後群ユニット80と7群ユニット70の位置の差分を実線で示している。横軸はズーム位置であり、広角端から望遠端までを連続的に示している。縦軸は広角端において無限遠距離にピントが合う位置を基準位置(0)としたときの後群ユニット80と7群ユニット70の位置を示している。
【0033】
図10の実線で示す後群ユニット80と7群ユニット70の位置の差分は、ズーミング中に第6レンズ駆動モータユニット95を駆動していないときに不図示の第6レンズ位置検出用光学センサで検出される6群ユニットの位置の変化量を示している。このように7群ユニット70により第6レンズ駆動モータユニット95(あるいは第6レンズ群L6)の移動を補助する構成をフォーカスアシストと定義する。
図10の実線は言い換えると後群ユニット80に対する7群ユニット70によるフォーカスアシスト量である。また、
図8に示した後群ユニット80基準の第6レンズ合焦位置から
図10に示したフォーカスアシスト量を差し引いたものが
図9に相当する。
図9に示した第6レンズ駆動モータユニット95基準の第6レンズ合焦位置を示す電子カムデータ(すなわちフォーカスアシスト量に基づいて得られるデータ)をプリント基板108のレンズ制御部に記憶しておく。レンズ制御部は、ズーミング時にその記憶された電子カムデータを用いて第6レンズ駆動モータユニット95の駆動を制御する。
【0034】
(フォーカスアシストによるメリット)
図8に示す範囲Aは、第6レンズ群L6の移動に必要な範囲を示している。
図9に示す範囲Bは、第6レンズ駆動モータユニット95が第6レンズ群L6を駆動するために必要な範囲を示している。フォーカスアシストにより範囲A>範囲Bの関係となりモータ駆動量を小さくすることができる。その結果、第6レンズ駆動モータユニット95を光軸方向に短くすることができ交換レンズ1の小型化に寄与する。言い換えるとモータ駆動量を抑えつつ第6のレンズ群L6の移動可能範囲を大きく確保することができる。
【0035】
また、
図9に示すズーム範囲Cおよび位置変化量Eによる傾き(すなわち位置変化量E/ズーム範囲C)は、
図8に示すズーム範囲Cおよび位置変化量Dによる傾き(すなわち位置変化量D/ズーム範囲C)より小さい。その結果、第6レンズ駆動モータユニット95の駆動速度を抑えることができる。すなわち第6レンズ群L6の駆動速度を抑えることに等しくズーミング時のピント追従性を向上させることができる。
【0036】
(フォーカスアシスト構成の力の作用関係)
次に実施例のフォーカスアシスト構成に関係する力の作用関係について説明する。
【0037】
図11は後群ユニットとモータ移動ベースを示した図である。
図11はフォーカスアシスト構成の各箇所の位置関係を示している。
図11(a)は後群ユニット80を上面から見た図である。
図11(b)は後群ユニット80および7群ユニット70を上面から見た図である。
図11(a)および
図11(b)のいずれも説明に不要な部品は省略した図を示している。
【0038】
図12はフォーカスアシスト構成の力の作用位置関係を示した概略図である。
図12(a)はモータ移動ベース付勢部材84による付勢力が無いとき、
図12(b)はモータ移動ベース付勢部材84による付勢力が有るときを示している。
【0039】
上述したようにモータ移動ベース付勢部材84はモータ移動ベース85とともに後群ベース81とモータ移動ベース浮き止めビス86により挟持されている。
図11(a)中に示すようにモータ移動ベース付勢部材84はL点およびK点においてモータ移動ベース85を付勢するための付勢部840および付勢部841を備えている。
【0040】
また、
図4および
図5に示すようにモータ移動ベース85は浮き防止部850、浮き防止部851および浮き防止部852を備えている。浮き防止部850は後群ベース81に固定されているモータ移動ベース浮き止めビス86に対してラックバネ63およびモータ移動ベース付勢部材84からの付勢力を受けて当接している。また、浮き防止部851および浮き防止部852は引っ掛け形状となっており、後群ベース81に設けられ浮き防止穴810および浮き防止穴811にそれぞれ挿入されている。このように、モータ移動ベース85に形成された浮き防止部が後群ベース81に形成された開口部としての浮き防止穴に挿入されることで、モータ移動ベース85が後群ベース81に支持される。その上で浮き防止部851および浮き防止部852は、浮き防止穴810および浮き防止穴811にラックバネ63およびモータ移動ベース付勢部材84からの付勢力により当接している。これらの浮き防止部は後群ベース81に対してモータ移動ベース85を径方向に支持する支持部として機能する。すなわち第6レンズ駆動モータユニット95を保持しているモータ移動ベース85は浮き防止部850(第1支持部)、浮き防止部851(第3支持部)および浮き防止部852(第2支持部)の3箇所により決まる平面に沿って保持されている。
【0041】
ここで、浮き防止部850の位置を点H、浮き防止部851の位置を点F、浮き防止部852の位置を点Gと定義する。また、第6レンズ駆動モータユニット95がラックバネ63からの付勢力を受ける位置(ラック62と第6レンズ駆動モータユニット95が係合する位置)として無限距離合焦時の位置を点I、最至近距離合焦時の位置を点Jと定義する。
【0042】
図11(b)および
図12(a)に示すように本実施例では点Gと点Hを結んだG-H軸に対してモータ移動ベース85がラックバネ63から受ける付勢力Pが点Iから点J間を横断するように移動する。このように、第1支持部、第2支持部および第3支持部を通る平面に直交する方向から見た際に、第1支持部と第2支持部をつないだ線を交差するように連結部材であるラック62が移動する。この時、G-H軸周りのモーメントを考えた際に付勢力Pが点Iから点J間を移動する際にG-H軸を跨ぐ前後でモーメントの正負が反転する。つまりG-H軸付近ではG-H軸周りのモーメントが小さいためモータ移動ベース85に対する付勢が不安定となる。
【0043】
その結果、モータ移動ベース85に保持されている第6レンズ駆動モータユニット95をフィードバック制御により駆動した際に第6レンズ位置検出用光学センサにより検出される位置が安定せずに発振を引き起こす恐れがある。発振が発生してしまった場合は第6レンズ群L6の位置精度を確保することが難しくなる。また、ユーザの耳に発振時の音が届いてしまい品位としても好ましくない。F-H軸、F-G軸およびG-H軸のいずれにおいても軸回りのモーメントを常に同一方向に保つことが発振を抑制することに有効である。
【0044】
図12(a)に示すようにモータ移動ベース付勢部材84からの付勢力が無い場合には点F、点G、点Hをつないで形成される三角形の内側に点Iから点Jの軌跡を配置する必要がある。その場合、点F、点G、点Hをつないで形成される三角形を大きくする必要があり交換レンズ1の全長および外径の大型化につながる。あるいは点F、点G、点Hをつないで形成される三角形の外側に点Iから点Jの軌跡を配置する必要がある。その場合は光軸方向に大きくなり交換レンズ1の全長の大型化につながる。
【0045】
本実施例では
図11および
図12(b)に示すようにモータ移動ベース付勢部材84による付勢力Qが点Kに作用する。G-H軸回りのモーメントで考えた際に点Iに付勢力Pが作用した際のモーメントよりも点Kに付勢力Qが作用することによるモーメントが大きくなるように点Kの位置および付勢力Qの大きさが決められている。点Gと点Hを結んだ線に対する、点Kの距離は点I及び点Jの距離よりも長い。したがって、G-H軸回りのモーメントが常に同じ方向となりモータ移動ベース85に対する付勢が安定した状態となる。点F、点G、点Hをつないで形成される三角形と点Iから点Jの軌跡を重ねて配置することが可能となり交換レンズ1の全長および外径の小型化が可能になる。また、モータ移動ベース85に保持されている第6レンズ駆動モータユニット95をフィードバック制御により駆動した際にも発振を低減することができる。
【0046】
上述のようにモータ移動ベース85は後群ベース81に対して直進溝812および直進溝813に案内され光軸方向に移動可能である。モータ移動ベース付勢部材84はモータ移動ベース85を直進溝812および直進溝813に対しても付勢している。直進溝812および直進溝813への付勢は溝方向と直交した方向への力の作用が必要である。直進溝812および直進溝813への付勢の観点だけでは光軸方向位置で直進溝812および直進溝813の中間位置に付勢力を作用させることが好ましい。しかしながら、直進溝812および直進溝813の中間位置は6群鏡筒61の移動範囲やモータ移動ベース浮き止めビス86を配置する必要がある。
【0047】
そこで本実施例ではモータ移動ベース付勢部材84は点Lおよび点Kにおいて直進溝812および直進溝813の溝方向と直交した方向に付勢している。点Lでは、モータ移動ベース85を、後群ベース81に対して点F、点Gおよび点Hを通る平面に沿った方向に付勢している。また、点Lでは、直進溝812および直進溝813の溝方向と直交した方向に付勢している。点Kでは、直進溝812および直進溝813の溝方向と直交した方向への付勢と点F、点Gおよび点Hを通る平面に略直交した方向への付勢(付勢力Q)を行っている。点Kに発生させている付勢力の方向はそれらの力の合成した方向である。このような構成とすることで部品点数を増やすことが無くモータ移動ベース85を安定して付勢することが可能となる。その結果、交換レンズ1の全長および外径の小型化に寄与する。
【0048】
また、本実施例では7群連結ビス88が長穴710に嵌合していることでモータ移動ベース85および第6レンズ駆動モータユニット95は7群ユニット70と一体的に光軸方向に移動する。7群連結ビス88の円筒形状の頭部が長穴710と線接触で嵌合している。長穴710と固定部材である7群連結ビス88が線接触する個所は、光軸方向から見たときに駆動手段である第6レンズ駆動モータユニット95と少なくとも一部が重なっている。したがって、ズーミング時に7群ユニット70の移動によりモータ移動ベース85に伝達される力は光軸方向のみに限定することが可能である。モータ移動ベース85は後群ベース81に対して光軸方向のみに移動可能である。その他の方向への移動はラックバネ63およびモータ移動ベース付勢部材84により安定的に付勢されることが必要である。
【0049】
ズーミング時に7群ユニット70の移動によりモータ移動ベース85に光軸方向以外の力が伝達された場合には、その力よりも大きな力をラックバネ63やモータ移動ベース付勢部材84の付勢力として発生させる必要があり、それぞれが大型化し得る。その結果、交換レンズ1の大型化につながる可能性がある。また、モータ移動ベース85と7群ユニット70の連結を、例えばバヨネットのような構成とする場合は連結時に7群ユニット70が後群ユニット80に干渉しないように互いに避けた形状とする必要があり交換レンズ1の大型化につながる可能性がある。
【0050】
したがって、本実施例の7群連結ビス88が長穴710に嵌合していることでモータ移動ベース85および第6レンズ駆動モータユニット95は7群ユニット70と一体的に光軸方向に移動する構成とするのが好ましい。
【0051】
図11(b)に示すように直進溝812の位置を点M、直進溝813の位置を点Nとしている。本実施例では、7群連結ビス88から点Mおよび点Nまでの直進溝の溝方向と直交した方向の距離が短い。また、7群連結ビス88から点F、点Gおよび点Hを通る平面までの距離が短い。言い換えると像面側から見た際に、7群連結ビス88がモータ移動ベース85あるいは第6レンズ駆動モータユニット95と一部が重なる状態である。これによりズーミング時に7群ユニット70の移動によりモータ移動ベース85に伝達される光軸方向の力のモータ移動ベース85を安定保持させる付勢力への影響を低減することができる。
【0052】
図13は、本発明の実施例に係る交換レンズ1を備える撮像装置1000を示す模式図である。撮像装置1000はレンズ装置である交換レンズ1と、交換レンズ1がマウントで着脱可能に取り付けられるカメラボディ200とを備える。交換レンズ1は、制御部、レンズ駆動指示手段、カメラボディ200と通信可能な接点部を有している。カメラボディ200は、制御部、撮像素子、交換レンズ1と通信可能な接点部を有している。なお、本発明の撮像装置1000は、撮像システムに限定されず、レンズ交換可能なカメラ、レンズ一体型のカメラなどを含む。カメラは、デジタルスチルカメラおよびビデオカメラなどの撮像装置を含む。
【0053】
交換レンズ1は、物体(被写体)の光学像を形成する撮影光学系を収納する。物体からの撮影光束は撮影光学系を通り、撮像素子の受光面(撮像面)上に結像する。撮像素子は、撮影光学系が形成した物体の光学像を光電変換する。
【0054】
本発明によれば、レンズのモータ駆動量の増加を抑えつつ、レンズの駆動可能量を大きく確保し制御的に安定した小型なレンズ装置を提供することができる。以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 交換レンズ
30 3群ユニット
40 4群ユニット
50 5群ユニット
60 6群ユニット
62 ラック
63 ラックバネ
70 7群ユニット
80 後群ユニット
81 後群ベース
84 モータ移動ベース付勢部材
85 モータ移動ベース
86 モータ移動ベース浮き止めビス
88 7群連結ビス
95 第6レンズ駆動モータユニット