IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-発電システム 図1
  • 特許-発電システム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
   F02C 6/00 20060101AFI20241007BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20241007BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20241007BHJP
   C10L 3/08 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
F02C6/00 E
H02P9/04 F
C10G2/00
C10L3/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021014744
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022118313
(43)【公開日】2022-08-15
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】小原 玲子
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正人
(72)【発明者】
【氏名】長田 憲和
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-200812(JP,A)
【文献】特開2014-020325(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0103661(US,A1)
【文献】特開2018-016500(JP,A)
【文献】特表2013-540933(JP,A)
【文献】特開2014-148934(JP,A)
【文献】特開2009-097507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 3/08
H02P 9/04
C10G 2/00
C10G 2/00
F02C 1/00
F02C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電を行う発電部と、
化学物質を製造する化学物質製造部と
を備える発電システムであって、
前記発電部は、
COを含む作動媒体によって駆動するタービンと、
前記タービンの駆動によって発電を行う発電機と
を含み、
前記化学物質製造部は、前記タービンのグランド部から漏れた媒体を原料ガスとして用いて、前記化学物質を製造する、
発電システム。
【請求項2】
前記化学物質製造部は、前記発電機が出力する電力を用いて、前記化学物質を製造する、
請求項1に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
COを含む作動媒体によってタービンが駆動し、そのタービンの駆動によって発電機が発電を行う発電システムが知られている。
【0003】
また、カーボンリサイクルの有効性を高めるために、COから炭化水素系燃料や化学合成品(たとえば、CH)などの化学物質を製造する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】US2011/0179799A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の発電システムでは、COを含む媒体がグランド部から漏れる場合がある。このため、地球温暖化の抑制を目的に、COが環境へ排出される量を低減することが要求されている。
【0006】
また、COから燃料などの化学物質を製造する方法では、通常、低濃度のCOを原料として用いている。このため、COを濃縮するためのエネルギーが必要であると共に、反応に多くのエネルギーが必要である。その結果、燃料などの化学物質の製造を行う際には、コストの低減、および、環境負荷の低減を効率的に実現することが困難な場合がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、コストの低減、および、環境負荷の低減を効率的に実現可能な発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の発電システムは、発電を行う発電部と、化学物質を製造する化学物質製造部とを備える。発電部は、COを含む作動媒体によって駆動するタービンと、タービンの駆動によって発電を行う発電機とを含み、化学物質製造部は、タービンのグランド部から漏れた媒体を原料ガスとして用いて、化学物質を製造する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態にかかる発電システムを模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態にかかる発電システムにおいて、タービン110のグランド部112を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[A]発電システムの構成
図1は、実施形態にかかる発電システムを模式的に示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の発電システムは、発電部100と化学物質製造部200とを備える。
【0012】
[A-1]発電部100
発電部100は、発電を行うために設けられている。ここでは、発電部100は、タービン110と発電機111と冷却器121と熱交換器131とポンプ151とを有し、COを含む媒体を作動媒体として用いたクローズサイクルの発電システムである。
【0013】
発電部100のうち、タービン110は、COを含む媒体が作動媒体(作動CO媒体)として供給され、その作動媒体が膨張し仕事を行うことによって、タービン110の回転軸(タービンロータ)が回転する。タービン110から排気された媒体は、冷却器121へ流れる。
【0014】
発電部100のうち、発電機111は、タービン110の駆動によって発電を行うように構成されている。ここでは、発電機111の回転軸(発電機ロータ)は、タービン110の回転軸(タービンロータ)に連結されており、タービン110の回転軸が回転することで、発電機111の回転軸が回転し、発電機111において発電が行われる。
【0015】
発電部100のうち、冷却器121では、タービン110から排気された媒体と、外部から供給された媒体とが流入し、両者の間において熱交換が行われるように構成されている。ここでは、タービン110から排気された媒体は、外部から供給された媒体との間の熱交換によって冷却される。そして、冷却器121で冷却された媒体は、ポンプ151へ供給される。
【0016】
発電部100のうち、ポンプ151は、冷却器121で冷却された媒体が供給され、その供給された媒体を昇圧する。ポンプ151は、たとえば、媒体の圧力が超臨界圧になるように昇圧を行う。そして、ポンプ151で昇圧された媒体は、熱交換器131へ供給される。
【0017】
発電部100のうち、熱交換器131では、ポンプ151で昇圧された媒体と、外部から供給された媒体とが流入し、両者の間において熱交換が行われるように構成されている。ここでは、ポンプ151で昇圧された媒体は、外部から供給された媒体との間の熱交換によって加熱される。そして、熱交換器131で加熱された媒体は、タービン110へ作動媒体として供給される。なお、熱交換器131において、ポンプ151で昇圧された媒体を加熱するための熱源としては、工場、廃棄処理施設などに由来する排熱、太陽光の熱、地熱、原子力による熱などのさまざまな熱を用いることができる。
【0018】
[A-2]化学物質製造部200
化学物質製造部200は、化学物質を製造するために設けられている。ここでは、化学物質製造部200は、第1の化学物質生成部201と第2の化学物質生成部202とを有する。
【0019】
[A-2-1]第1の化学物質生成部201
化学物質製造部200において、第1の化学物質生成部201は、COおよびHOが原料ガスとして導入され、その原料ガスから、少なくともCOおよびHを含む合成ガスや、合成ガスを原料とした炭化水素系合成物を生成するように構成されている。
【0020】
本実施形態では、第1の化学物質生成部201は、HO(水蒸気)が蒸気供給源(図示省略)から原料ガスとして供給される。これと共に、第1の化学物質生成部201は、発電部100において、タービン110のグランド部112から漏れた媒体が、原料ガスとして配管を介して供給される。タービン110のグランド部112から漏れた媒体は、COを含む媒体である。
【0021】
図2は、実施形態にかかる発電システムにおいて、タービン110のグランド部112を模式的に示す図である。
【0022】
図2に示すように、グランド部112においては、回転体であるタービンロータ10の周囲に、静止体であるグランドパッキンヘッド20が設置されている。グランドパッキンヘッド20の内周面には、グランドシール21が設置されている。
【0023】
グランド部112では、タービン110の内部である高圧側から、タービン110の外部である大気圧側に向かって、COを含む媒体が漏れる。そのCOを含む媒体は、グランド部112において、グランドパッキンヘッド20に形成された流路F20を介して、第1の化学物質生成部201へ供給される。
【0024】
第1の化学物質生成部201においては、触媒還元法や電気化学手法による還元反応が生ずることで、少なくともCOおよびHを含む合成ガス、および、酸素(O)が生成される。第1の化学物質生成部201は、たとえば、電気化学手法によってCOとHOとの両者を同時に還元するように構成されていることが好ましい。第1の化学物質生成部201では、COおよびHを含む合成ガスが主生成物として生成され、場合によっては、COが更に還元されることによって、CHなどの燃料が生成される。
【0025】
また、本実施形態では、第1の化学物質生成部201は、発電部100において発電機111が出力する電力が電力線を介して供給される。発電機111から供給された電力は、第1の化学物質生成部201において化学物質の製造に用いられる。たとえば、第1の化学物質生成部201は、原料ガスを電解する電解セル(図示省略)、原料ガスを昇圧するポンプ(図示省略)、原料ガスを加熱するヒータ(図示省略)などの電気機器を含み、第1の化学物質生成部201を構成する電気機器が、発電機111から供給された電力によって駆動するように構成されている。
【0026】
[A-2-2]第2の化学物質生成部202
化学物質製造部200において、第2の化学物質生成部202は、第1の化学物質生成部201で生成された合成ガスが原料ガスとして導入され、その原料ガスから燃料などを製造するように構成されている。
【0027】
第2の化学物質生成部202においては、第1の化学物質生成部201と同様に、触媒還元法や電気化学手法による還元反応が生ずることで、燃料およびOなどの化学物質が生成される。第2の化学物質生成部202では、CHなどの炭化水素化合物を燃料として生成される。その他、第2の化学物質生成部202は、CHOHなどを生成するように構成してもよい。
【0028】
[A-3]制御部300
発電システムは、上記の他に、制御部300を備えている。図示を省略しているが、制御部300は、演算器(図示省略)とメモリ装置(図示省略)とを含み、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うように構成されている。制御部300は、設定された条件で各部の動作を制御することで、発電システムの運用を実行する。
【0029】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の発電システムにおいて、化学物質製造部200は、タービン110のグランド部112から漏れたCOを含む媒体を原料ガスとして用いて化学物質を製造するように構成されている。具体的には、上述したように、化学物質製造部200においては、タービン110のグランド部112から漏れたCOを含む媒体が第1の化学物質生成部201に導入され、その媒体を第1の化学物質生成部201が原料ガスとして用いて化学物質を製造する。タービン110のグランド部112から漏れたCOを含む媒体は、温度が高く、かつ、COの濃度が高い。
【0030】
このため、本実施形態では、第1の化学物質生成部201に原料ガスとして供給するCOについて濃縮処理や加熱処理を実施するために必要なエネルギーを低減することができる。したがって、本実施形態では、コストの低減、および、環境負荷の低減を効率的に実現可能である。
【0031】
また、本実施形態の発電システムでは、化学物質製造部200は、発電部100の発電機111が出力する電力を用いて、化学物質を製造するように構成されている。具体的には、化学物質製造部200においては、発電機111が出力する電力を用いて、第1の化学物質生成部201が化学物質の生成を行う。本実施形態では、化学物質製造部200と共に発電システムを構成する発電部100から出力される電力を用いて、第1の化学物質生成部201において化学物質の生成が行われるため、コストの低減、および、環境負荷の低減を効率的に実現可能である。
【0032】
[C]変形例
上記の実施形態では、化学物質製造部200を構成する第1の化学物質生成部201に、発電部100の発電機111が出力する電力が供給される場合について説明したが、これに限らない。必要に応じて、第2の化学物質生成部202に発電部100の発電機111が出力する電力を供給するように、発電システムを構成してもよい。
【0033】
また、化学物質製造部200に原料ガスとして供給するHOとしては、たとえば、冷却器121での凝縮によって生じた水(液相水)を用いてもよい。
【0034】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0035】
なお、上記の実施形態では、発電部100が、クローズサイクルの発電システムである場合と、セミクローズサイクルの発電システムである場合とを例示したが、これに限らない。発電部100は、一般的なガスタービン発電システムのように、タービンから排出されたCOを含む媒体が外部(大気)へ放出されるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10:タービンロータ、20:グランドパッキンヘッド、21:グランドシール、100:発電部、110:タービン、111:発電機、112:グランド部、120:再生熱交換器、121:冷却器、131:熱交換器、151:ポンプ、200:化学物質製造部、201:第1の化学物質生成部、202:第2の化学物質生成部300:制御部
図1
図2